JP2005264113A - ポリエステルフィルムからエステルモノマーを回収する方法 - Google Patents

ポリエステルフィルムからエステルモノマーを回収する方法 Download PDF

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Abstract

【課題】 回収したポリエステルフィルムから、その種類を問うことなくエステルモノマーを効率良く回収する方法を提供する。
【解決手段】 本発明は、(1)ポリエステル基材フィルムの少なくとも片面に機能層が形成されているフィルムのフレークを、ポリエステル解重合触媒を含まないグリコールに浸漬し、100〜200℃の温度で加熱処理して該機能層の少なくとも一部を溶解または剥離するグリコール前処理工程、
(2)グリコール前処理工程で得られた固液混合物からフレークを分離する分離工程(I)、
(3)分離工程で分離されたフレークのポリエステル成分を解重合触媒の存在下ジオールで解重合する解重合工程、および
(4)解重合工程で得られたエステルモノマーを含有する解重合溶液から浮遊物を分離除去する分離工程(II)
を含む、ポリエステルフィルムからエステルモノマーを回収する方法である。
【選択図】 なし

Description

本発明はポリエステルフィルムからエステルモノマーを回収する方法に関し、さらに詳しくはポリエステル基材フィルムの少なくとも片面に機能層が形成されているポリエステルフィルムから機能層の少なくとも一部を分離する処理と、分離処理したポリエステルフィルムを解重合処理してからエステルモノマーを回収する処理とを含む工程によって、ポリエステルフィルムからエステルモノマーを効率良く回収する方法に関する。
ポリエステル、特にポリエチレンテレフタレートは、化学特性、熱安定性、物理特性等に優れ、フィルムとして種々の用途に使用されている。
ポリエステルフィルムは、通常、その少なくとも片面に機能層(要求特性に応える機能を発揮する層)を設けた機能フィルム(複合フィルム)として使用されている。
例えば、X線写真フィルムは、ポリエステル基材フィルムの少なくとも片面に下塗り層を介して銀または銀化合物を含む感光層を設けた複合フィルムの構造をとっている。離形フィルムはポリエステル基材フィルムの少なくとも片面に下塗り層を介して離形層(例えば、シリコーン樹脂系離形層等)を設けた複合フィルムとして使用されている。また、転写印刷フィルムはポリエステル基材フィルムの少なくとも片面に下塗り層を介して転写インク層(例えば、熱転写インク層、熱昇華インク層等)を設けた複合フィルムとして使用されている。磁気フィルムは,ポリエステル基材フィルムの少なくとも片面に下塗り層を介して磁性層を設けた複合フィルムとして使用されている。
ポリエステルフィルムは、従来、ポリエステルの自然環境での分解、例えば光分解や微生物分解等が殆ど進まないことから、使用後に焼却するか埋立て処分にするのが殆どであった。しかし近年、これらの処分では資源の再利用化ができず、また自然環境が悪化することが問題となり、その対策が求められている。
かかる状況にあって、従来から資源の一部を回収再利用する処理に回されているものに医療用撮影に供したX線写真フィルムがある。すなわち、このX線写真フィルムは高価な銀成分を含む感光層を有することから、銀回収の処理に回されることが殆どであった。この回収処理では、通常、X線写真フィルムを焼却して灰分を回収し、この灰分をケミカル処理して銀成分を回収する方法が採用されている。しかし、かかる銀回収の処理には、ポリエステル成分を回収するという技術思想はなく、またフィルムを焼却することによる環境悪化の問題を解消することはできない。そこで、X線写真フィルムから銀成分の回収と共にポリエステル成分も回収できる方法の開発が課題となっている。
また、転写印刷フィルムは、ポリエステル基材フィルムの上に下塗り層を介して転写インク層を設け、この転写インク層を印刷信号に応じて被印刷材に熱転写し、または転写インク層のインクを昇華転写するものが殆どであるが、使用後の転写印刷フィルムからポリエステル成分を回収することは行われておらず、この方法の開発が課題となっている。これには、ポリエステル基材フィルムの表面に残っている機能層を効率良く分離、除去することが必要である。本発明者の検討において、転写印刷フィルムは、その目的によって構成成分が全く違ったものになることがあり、化学処理において著しく違った挙動を示すことが明らかになった。例えば、ある印刷フィルムは、このインク層を残した状態でポリエステルの解重合処理に付すと、解重合溶液がお粥状になって、実質的に後工程(エステルモノマーの分離、精製処理工程)へ進むことができない。他方、ある転写印刷フィルムは、インク層を残した状態で転写印刷フィルムをポリエステルの解重合処理に付すと、溶液中にインク層成分が浮遊する状態の解重合溶液が得られ、この場合には浮遊物が簡単な分離処理で分離でき、後工程(エステルモノマーの精製処理工程)へ進めることができる。しかし、これら特性の違いを回収した転写印刷フィルムの肉眼観察で見出すことは極めて難しく、実質的に不可能といえる。そこで、これらの現象に対応できる方法の開発が必要となる。
また、離形フィルムは、ポリエステル基材フィルムの少なくとも片面に下塗り層を介して離形層(例えば、シリコーン樹脂系離形層等)を設けた構造をとっているが、この下塗り層や離形層を構成する成分は離形フィルムの用途によって違ったものになっている。この点では印刷フィルムと同様の課題を有し、また離形フィルムについてもポリエステル成分を回収することは実施されていない。
上述のようにポリエステルフィルムからポリエステル成分を回収するには、基材フィルムの上に設けられている機能層や下塗り層をその種類の影響を受けない状況下で効率良く分離する手段を開発する必要がある。
ポリエステル基材フィルムから機能層や下塗り層を分離、剥離する方法は、従来から検討され、幾つかの提案がされている。
例えば、特許文献1には、共重合体ビニリデンハライド下塗り物質を塗設したポリエステルスフィルムのスクラップ(ポリエステルスクラップ)を強アルカリ性のグリコールと接触せしめる工程と、ここで得られる混合物を撹拌して約90℃乃至前記ポリエステルの5重量%が前記グリコール中に溶ける温度の間の温度に、前記ポリエステルベースから前記下塗り物質の少なくとも一部がフレークとして取り去られるに充分時間混合物を保つ工程と、得られる清浄化されたポリエステルベースを前記グリコールから分離する工程からなることを特徴としたポリエステルスクラップから共重合体ビニリデンハライド下塗り物質を除去する方法が提案されている。また、特許文献1には、この下塗り層の上に設けた乳剤層(未感光乳剤層)は温水で剥離できることが記載されている。
特許文献2には、印刷製版フィルムをアルカリ金属塩の水溶液中でカチオン系界面活性剤とともに加熱処理することにより、印刷製版フィルム下塗り層を剥離する方法が提案されている。また、特許文献2には、従来技術として、ポリエステルフィルム廃物をハロゲン化脂肪族炭化水素溶媒で洗浄してベースフィルムに付与された被覆を溶解または分散し、得られた該被覆成分を含むハロゲン化脂肪族炭化水素溶媒からポリエステルフィルム(ベースフィルム)を分離し、乾燥する方法(特開昭50−80371号公報)、記録層を担持したフィルム廃品から記録材料および/または下塗り層を脱膜除去する際に超音波の作用を利用する方法(特開昭52−138131号公報)、スクラップフィルムの塗膜に強いアルカリ性溶液を含浸させ塗膜がアルカリ溶液中に溶解または剥離する以前に高圧のジェット水により強制的に塗膜を剥離してフィルムベースと分離する方法(特開昭55−166221号公報)等が紹介されている。
特許文献3には、ポリエステル基材フィルムの少なくとも片面に易溶解性樹脂層を介して離形層が形成されてなる離形フィルムを、易溶解性樹脂が溶解可能な溶媒中に浸漬して、易溶解性樹脂を溶媒中に溶解させることにより、フィルム表面の離形層を分離除去し、基材フィルムのみを回収する方法が提案されている。具体例としては、易溶解性樹脂として水溶性(または水分散性)樹脂を、溶媒として温水または熱水を用いる態様が記載されている。
しかし、これら特許文献は回収したポリエステルフィルムからエステルモノマーを回収する方法については何ら言及していない。
特公昭46−21944号公報 特開平11−302580号公報 特開2002−265665号公報
ポリエステルフィルムを回収する場合、その製造過程で発生した屑を回収するとき以外はその素性が不明である。また、製造業者や加工業者から出されるポリエステルフィルムであってもその素性が明らかにされることは稀である。従って、回収したポリエステルフィルムからエステルモノマーを回収する方法としては、該ポリエステルフィルムの表面に如何なる成分が塗布され、または積層されていてもエステルモノマーを効率よく回収できる方法を開発する必要がある。
本発明者は、かかる要求を満足できる方法を開発すべく鋭意検討した結果、回収した、ポリエステル基材フィルムの少なくとも片面に機能層が形成されているポリエステルフィルムのフレークを、ポリエステル解重合触媒を含まないグリコールに浸漬し、100〜200℃の温度で加熱処理して機能層の少なくとも一部を溶解または剥離するグリコール前処理工程、グリコール前処理工程で得られた混合液からフレークを分離する分離工程、分離工程で分離されたフレークのポリエステル成分を解重合触媒の存在下ジオールで解重合する解重合工程並びに解重合工程で得られたエステルモノマーを含有する解重合溶液から浮遊物を分離除去する分離工程を含む工程からなる方法を用いて、回収したポリエステルフィルムからエステルモノマーを回収すると、効率よくエステルモノマーが回収できることを見出し、本発明に到達した。
すなわち、本発明は、(1)ポリエステル基材フィルムの少なくとも片面に機能層が形成されているポリエステルフィルムのフレークを、ポリエステル解重合触媒を含まないグリコールに浸漬し、100〜200℃の温度で加熱処理して機能層の少なくとも一部を溶解または剥離するグリコール前処理工程、
(2)グリコール前処理工程で得られた固液混合物からフレークを分離する分離工程(I)、
(3)分離工程(I)で分離されたフレークのポリエステル成分を解重合触媒の存在下ジオールで解重合する解重合工程および
(4)解重合工程で得られたエステルモノマーを含有する解重合溶液から浮遊物を分離除去する分離工程(II)
を含むポリエステルフィルムからエステルモノマーを回収する方法である。
また、本発明は、(1)ポリエステル基材フィルムの少なくとも片面に機能層が形成されているポリエステルフィルムのフレークを、ポリエステル解重合触媒を含まないグリコールに浸漬し、100〜200℃の温度で加熱処理して機能層の少なくとも一部を溶解または剥離するグリコール前処理工程、
(2)グリコール前処理工程で得られた固液混合物からフレークを分離する分離工程(I)、
(3)分離工程で分離されたフレークのポリエステル成分を解重合触媒の存在下ジオールで解重合する解重合工程、
(4)解重合工程で得られたエステルモノマーを含有する解重合溶液から浮遊物を分離除去する分離工程(II)、
(5)分離工程(II)で浮遊物を除去した解重合溶液を精製して精製エステルモノマーを得るモノマー精製工程
を含む、ポリエステルフィルムからエステルモノマーを回収する方法である。
本発明によれば、回収したポリエステルフィルムから、その種類を問うことなくエステルモノマーを効率良く回収することができる。
<ポリエステルフィルム>
本発明におけるポリエステルフィルムは、ポリエステル基材フィルムの少なくとも片面に機能層(すなわち、要求特性に応える機能を発揮する層)が形成されている機能フィルム(複合フィルム)である。この機能層は、下塗り層を介してポリエステル基材フィルムの上に形成(好ましくは塗設)されていることが好ましい。かかるポリエステルフィルムは、如何なる用途に用いられたものでもよく、例えば写真フィルム、転写印刷フィルム、離形フィルム、磁気記録フィルム等を好ましく挙げることができる。
前記ポリエステルとしては、線状芳香族ポリエステルが好ましく、さらには芳香族ジカルボン酸を主たる酸成分とし、炭素数2〜8の脂肪族グリコールを主たるグリコール成分とする芳香族ポリエステルが好ましく、特にポリエチレンテレフタレートが好ましい。かかるポリエステルはホモポリマーでもコポリマーでもよい。コポリマーの場合には、主たる繰返し単位が全繰返し単位の80%以上、さらには85%以上を占めるコポリマーであることが好ましい。例えば、コポリエチレンテレフタレートの場合、(主たる繰返し単位の)エチレンテレフタレートが全繰返し単位の80%以上、さらには85%以上を占めるコポリマーであることが好ましい。
コポリエチレンテレフタレートの共重合成分としては、例えば、フタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、アジピン酸等のジカルボン酸成分、トリメチレングリコール、テトラメチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、シクロへキサンジメタノール等のグリコール成分を挙げることができる。また、ポリエステルは他の熱可塑性樹脂を小割合(例えば、全重量に対し20重量%以下)混合させたブレンドポリマーであっても良い。
これらポリマーには、通常、基材フィルムとして要求される特性を付与するための改質剤(例えば、滑剤、着色剤、安定剤等)が含まれている。例えば、X線写真フィルム用ポリマーは、通常、淡いブルーに着色されている。この基材フィルムは単層フィルムでも2層以上を積層した積層フィルムでも良い。積層フィルムの場合、上述のポリマーからなる2種以上のフィルムを貼り合わせたものであって良い。
ポリエステルフィルムのフレーク形状は、特に限定されないが、三角形、正方形、長方形等のほか不規則な形でもよい。厚みは、通常、5〜350μm、好ましくは15〜250μmである。大きさは、機能層を溶解または剥離する工程の条件や解重合の条件にもよるが、平均的には1〜10cm角、さらに2〜8cm角、特に3〜6cm角程度であることが好ましい。
本発明における機能層は、ポリエステル基材フィルムの少なくとも片面に形成されているが、通常、下塗り層を介して形成されている。この機能層の形成には、通常、機能層成分を含む塗剤を塗布する方法が採用される。この機能層は、さらにその上に保護層が形成されていてもよい。
<機能層>
機能層は、特に限定されないが、写真感光層、転写印刷層、離形層、磁性層等を好ましく例示することができる。
(写真感光層)
写真感光層としては、現像するために溶液系の処理薬品(化学薬品)を必要とするウエットタイプでも、処理薬品を必要としないドライタイプのどちらでも良い。そして、写真感光層は露光処理をしたものでも、露光処理をしてないものでもよい。
ウエットタイプの写真感光層としては、例えばハロゲン化銀−ゼラチン乳剤、少量のセルローズナイトレート、セルローズエステル、カーボン、界面活性剤(分散剤、乳化剤)、ジアゾ物質、静電防止剤、静電気伝導物質等を含むものを挙げることができる。写真感光層の塗布量(乾燥状態)は、好ましくは5〜200g/m2である。さらに該写真感光層は、その上にゼラチン等からなる保護層が形成されていることが好ましい。
ドライタイプの写真感光層としては、その現像処理方式(例えば、レーザ露光熱現像方式、サーマルヘッド方式、レーザヒートモード方式等)により様々なタイプがあるが、感光性銀塩(例えば、ハロゲン化銀等)、非感光性銀塩(例えば、有機酸銀等)、還元剤(例えば、レゾルシノール類、m−アミノフェノール類、m−フェニレンジアミン類、5−ピラゾロン類、フェノール類、p−アルコキシフェノール類、アミノナフトール類、ナフタレン−ジオール類等)、架橋性化合物(例えば、アクリル酸、メタクリル酸、スチレン、ビニルエーテル、ビニルエステル、およびこれらの誘導体等)、調色剤(例えば、フタル酸誘導体、フタラジン類等)、分光増感色素、カーボン、レーザ感知成分等の何れかの成分を含み、必要に応じてバインダー(例えば、ゼラチン、ヒドロキシエチルセルロース、メチルセルロース、カルボメトキシセルロース、ナイロン、ポリビニルブチラール、ポリビニルアルコール、ポリビニルベンザール、ポリビニルピロリドン、ポリビニルメチルイミダゾール、ポリヒドロキシエチルアクリレート等)を含むものを好ましく挙げることができる。写真感光層の塗布量は、好ましくは5〜300g/m2である。さらに写真感光層は、その上にゼラチン等からなる保護層が形成されていることが好ましい。
写真感光層を設けたポリエステルフィルム(写真フィルム)としては、業務用のX線写真フィルムおよび製版用フィルムを好ましく挙げることができるが、これらはそれぞれ医療および出版・印刷分野で多量に使用されている。本発明におけるポリエステルフィルムは、このような写真フィルムを用い、撮影、現像、定着等の処理を施して基材フィルム上に所望の写真画像、例えばX線写真画像、製版画像等を形成したものであってもよい。この使用済み写真フィルムは、銀微粒子が写真感光層に分散した状態で含まれている。この使用済み写真フィルムは、通常、モノクローム写真フィルムであるが、特に多量に発生するのは医療分野における使用済みX線写真フィルムおよび出版・印刷分野の使用済み製版用モノクロームフィルムであり、これらは本発明の原料として有用である。
(転写印刷層)
転写印刷層としては、転写インク層を含む層からなるものであれば、特に限定されない。溶融転写の場合、通常、剥離層、溶融インク層、接着層を含む層からなり、昇華転写の場合、通常、昇華インク層からなる。
剥離層は、印刷時に、インク層が基材フィルムから剥離するのを容易にする層である。この剥離層を構成する成分としては、インク層の組成にもよるが、例えばセルロース系樹脂、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂等を挙げることができる。
溶融インク層としては、例えばビニル系樹脂、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、オレフィン系樹脂、ポリオール樹脂などのバインダーを単独または混合し、顔料を分散させたものを挙げることができる。
接着層は、溶融転写したインク層が被印刷材に密着(接着)する作用を高めるものであり、インク層が接着性に優れたものであれば省略することができる。通常、この接着層を用いてインク層の接着特性が高められている。この接着層を構成する成分としては、インク層の組成にもよるが、例えば、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂等を挙げることができる。
また、昇華インク層としては、バインダー(例えば、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、オレフィン系樹脂、ポリオール樹脂等)に昇華性染料を分散させたものを挙げることができる。
ウレタン系樹脂はポリオール成分とポリイソシアネート成分からなるが、このポリオール成分としてはフッ素ポリオール、アクリルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、低級アルキレングリコール等を例示することができ、またポリイソシアネート成分としてはp−フェニレンジイソシアネート、ビフェニルジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、2,2,4−トリメチル−1,6−へキシレンジイソシアネート、メチルシクロへキシルジイソシアネート、末端イソシアネート基を有するプレポリマー等を例示することができる。
アクリル系樹脂としては、アクリル系モノマーを重合させた単一重合体もしくは共重合体、または該アクリル系モノマーと他のモノマーとの共重合体が挙げられる。該アクリル系モノマーとしては、例えばブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、シクリヘキシル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフリル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシ(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、N−メチロール(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、アクリルアミド、メタクリルアミド、N−メチル(メタ)アクリルアミド、N−メトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−エトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−プロポキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−tert−ブチルアクリルアミド、N−オクチルアクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、アクリル酸、メタアクリル酸等を挙げることができる。また他のモノマーとしては、例えばクロトン酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸等を挙げることができる。
ポリエステル系樹脂としては、ジカルボン酸成分とジオール成分の縮重合体が好ましい。該ジカルボン酸成分としてテレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、アジピン酸、セバチン酸、ナフタレンジカルボン酸などを例示することができ、ジオール成分としてはエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ネオペンチルグリコール、シクロヘキサンジオールなどを例示することができる。転写印刷層の厚みは、公知の厚みでよいが、1〜10μmの範囲にあることが好ましい。
(離形層)
離形層としては、離形層を形成する材料からなるものであれば特に限定されるものではないが、硬化型シリコーン樹脂を主成分とするもの、あるいはウレタン樹脂、エポキシ樹脂等とのグラフト重合等による変性シリコーン樹脂等を好ましく挙げることができる。中でも、硬化型シリコーン樹脂を主成分とするものが、より好ましく用いられる。
この硬化型シリコーン樹脂としては、溶剤付加型、溶剤縮合型、溶剤紫外線硬化型、無溶剤付加型、無溶剤縮合型、無溶剤紫外線硬化型、無溶剤電子線硬化型等いずれの硬化反応タイプでも用いることができる。具体的には、東レ・ダウコーニング・シリコーン社製のLTC750A、LTC300B、SD7223、SD7226、SD7229、SRX−210等、東芝シリコーン社製のYSR−3022、TPR−6700、TPR−6720、TPR−6721等、信越化学工業社製のKS−774、KS−775、KS−778、KS−779H、KS−856、X−62−2422、X−62−2461、KNS−305、KNS−3000、X−62−1256等が好ましく使用される。
離形層の塗工量は、0.01〜10g/m2の範囲であることが好ましく、より好ましくは0.05〜5g/m2である。
(磁性層)
磁性層としては、ポリエステルフィルムを基材とする非磁性支持体上に強磁性粉末が結合剤中に分散された磁性層が設けられているものであれば、特に限定されるものではない。強磁性粉末の例としてはγ−Fe23、Fe34、Co変形酸化鉄、鉄を主成分とする合金微粉末等が挙げられる。また、結合剤としては、通常使用される有機溶剤に可溶な樹脂であれば特に制限は無い。
使用する樹脂の例として、セルロース誘導体(例えば、ニトロセルロース、酢酸セルロース、セルロースアセテート等)、塩化ビニル/酢酸ビニル共重合体樹脂(例えば、塩化ビニル/酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル/酢酸ビニル/ビニルアルコール共重合体、塩化ビニル/酢酸ビニル/無水マレイン酸共重合体等)、塩化ビニリデン樹脂(例えば、塩化ビニリデン/塩化ビニル共重合体、塩化ビニリデン/アクリロニトリル共重合体等)、ポリエステル樹脂(例えば、アルキッド樹脂、線状ポリエステル共重合体等)、アクリル樹脂(例えば、アクリル酸/アクリロニトリル共重合体、アクリロニトリル共重合体等)、ポリビニルアセタール樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、フェノキシ樹脂、エポキシ樹脂、ブタジエン/アクリロニトリル共重合体、ポリウレタン樹脂、およびウレタンエポキシ樹脂を挙げることができる。特にポリエステル樹脂が好ましい。また、結合剤の使用に際して、上記の樹脂とポリイソシアネート化合物を併用して磁性層を硬化させたものであっても良い。さらに、上記の結合剤と強磁性粉末に、カーボンブラックや研磨剤が含有されたものでも良い。
(下塗り層)
下塗り層は、通常、ポリエステル基材フィルムと機能層との親和性を有し、両者の接着性(密着性)を高める機能を奏する。かかる下塗り層としては、ポリエステルに親和性のある水溶性または水分散性の樹脂であることが好ましい。該水溶性の樹脂は水に40重量%の樹脂を添加し、60℃に加熱して溶解する特性を有するものであり、また水分散性の樹脂は60重量%の樹脂を添加し、50℃に加熱したとき安定した懸濁液を示すものであることが好ましい。これら樹脂は水溶媒を用いた塗液としてポリエステルフィルムへ塗布できる特徴を有する。
水溶性または水分散性の樹脂としては、水溶性または水分散性のポリエステル系樹脂、ポリエステルウレタン系樹脂、アクリル系樹脂、エチレンアイオノマー系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂およびエチレン−ビニルアルコール系樹脂から選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。これらの樹脂は、その分子構造中に親水性の官能基を含むものが好ましく、中でも水酸基、エーテル基、アミド基、カルボキシル基、リン酸エステル基、スルホン酸基、アミノ基、イミノ基、カルボン酸塩基、スルホン酸塩基およびアンモニウム塩基から選ばれる少なくとも一種を含むものが好ましく、特に水酸基、カルボキシル基、スルホン酸塩基およびカルボン酸塩基から選ばれる少なくとも1種を含むものが好ましい。
また、他の水溶性または水分散性の樹脂の具体例として、かんしょ澱粉、ばれいしょ澱粉、小麦澱粉、コーンスターチ、こんにゃく、ふのり、寒天、アルギン酸ナトリウム、トロロアオイ、トラガントゴム、アラビアゴム、デキストラン、レバン、にかわ、ゼラチン、カゼイン、コラーゲン、ビスコース、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、可溶性澱粉、カルボキシメチル澱粉、ジアルデヒド澱粉、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリエチレンオキシド、ポリアクリルアミド、ポリアクリル酸、ポリN−ビニルピロリドンなどの水溶性樹脂を好ましく挙げることができる。これらは1種のみを単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
中でも、離形フィルムでは、強度、耐熱性、耐有機溶剤性等の点で、ポリビニルアルコールおよびその共重合体がより好ましく用いられる。
具体的には、(株)クラレ製“ポバール”PVA−102、PVA−103、PVA−105、PVA−110、PVA−117、PVA−117H、PVA−120、PVA−124、PVA−CSA、PVA−CST、PVA−HC、PVA−203、PVA−205、PVA−210、PVA−217、PVA−220、PVA−224、PVA−217E、PVA−217EE、PVA−220E、PVA−403、PVA−405、PVA−420、PVA−420H、L−8、L−9、L−10、PVA−505、PVA−617、PVA−613、PVA−706等、日本合成化学工業(株)製“ゴーセノール”NH−26、NH−20、NH−18、N−300、NM−14、NM−11、NL−05、AH−26、AH−22、AH−17、A−300、C−500、GH−23、GH−20、GH−17、GM−14、GM−14L、GL−05、GL−03、KH−20、KH−17、KM−11、KL−05、KP−08、KP−06等が好ましく使用される。
水溶性または水分散性の樹脂としては、さらに、水溶性化または水分散性化を容易にするため、スルホン酸塩基を含む化合物およびカルボン酸塩基を含む化合物から選ばれる少なくとも1種を構成成分とするポリエステル樹脂が好ましく用いられ、より好ましくはスルホン酸塩基を含む化合物およびカルボン酸塩基を含む化合物から選ばれる少なくとも1種を、好ましくは1〜50モル%共重合されてなるポリエステル樹脂が好ましく用いられる。かかるポリエステル樹脂は、他の水溶性ポリマーと混合して用いることもできる。
スルホン酸塩基を含む化合物としては、例えばスルホテレフタル酸、5−スルホイソフタル酸、4−スルホイソフタル酸、4−スルホナフタレン−2,7−ジカルボン酸、スルホ−p−キシレングリコール、2−スルホ−1,4−ビス(ヒドロキシエトキシ)ベンゼンなどのアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アンモニウム塩などを挙げることができる。また、前記カルボン酸塩基を含む化合物としては、例えばトリメリット酸、無水トリメリット酸、ピロメリット酸、無水ピロメリット酸、4−メチルシクロヘキセン−1,2,3−トリカルボン酸、トリメシン酸、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸、1,2,3,4−ペンタンテトラカルボン酸、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸、5−(2,5−ジオキソテトラヒドロフルフリル)−3−メチル−3−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸、5−(2,5−ジオキソテトラヒドロフルフリル)−3−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸、シクロペンタンテトラカルボン酸、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸、1,2,5,6−ナフタレンテトラカルボン酸、エチレングリコールビストリメリテート、2,2’,3,3’−ジフェニルテトラカルボン酸、チオフェン−2,3,4,5−テトラカルボン酸、エチレンテトラカルボン酸などのアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アンモニウム塩などを挙げることができる。
また、写真感光層の下塗り層としては、少なくとも約30重量%のビニリデンハライド、例えばビニリデンクロライド、ブロマイドまたはハライドの如きものを含むコポリマーから主としてなるものが挙げられる。コポリマーの残りは、通常、(a)アルキルアクリレート、アルキルメタクリレート、またはアルキルイタコネートでアルキル基に炭素原子を1〜18有するもの(例えば、メチルアクリレート、ブチルアクリレート、モノメチルイタコネート、メチルメタクリレート、モノブチルイタコネート、オクタデシルメタクリレート等)、および/または(b)イタコン酸、アクリル酸またはメタクリル酸の如き酸を含むものが挙げられる。
前記下塗り層の厚みは、0.01〜10μmの範囲であることが好ましく、より好ましくは0.05〜5μmである。
<グリコール前処理工程>
本発明におけるグリコール前処理工程は、ポリエステルフィルムを粉砕、切断、破断等の処理に付して得たフレークを、ポリエステル解重合触媒を含まないグリコールに浸漬し、100〜200℃の温度で加熱処理して機能層の少なくとも一部を溶解または剥離する工程である。ここで、“ポリエステル解重合触媒を含まない”とは、前記加熱処理時に、ポリエステルの解重合作用を奏する量の触媒を含まないことを意味する。
グリコールとしては、炭素数2〜8の脂肪族グリコールが好ましく挙げられるが、特にポリエステルを構成する主たるグリコール成分と同じグリコールであることが好ましい。例えば、ポリエステルがポリエチレンテレフタレートである場合、グリコールとしてはエチレングリコールが特に好ましい。
解重合触媒としては、エステル化触媒、エステル交換触媒、重縮合触媒として知られているもの、例えばアルカリ金属、アルカリ土類金属およびこれらの化合物、亜鉛、マグネシウム、マンガンの酢酸塩等の化合物等を挙げることができる。もっとも、これら触媒は、グリコール前処理工程で実質的にポリエステルの解重合作用を奏さない量範囲であれば、グリコール中に存在しても構わない。例えば、処理時間や温度にもよるが、0.03重量%以下、さらには0.02重量%以下、特に0.01重量%以下であることが好ましい。
グリコール前処理においてグリコールの使用量は、ポリエステルフィルムのフレーク1重量部当り、1〜10重量部、さらには2〜5重量部であることが好ましい。
加熱処理の温度は通常100〜200℃であるが、好ましくは150〜190℃、さらに好ましくは160〜180℃である。処理時間は、通常5〜120分であるが、好ましくは10〜90分、さらに好ましくは15〜60分である。
このグリコール前処理において、ポリエステル基材フィルムの少なくとも片面に設けられていた機能層の一部または全部が、好ましくは全部がグリコールに溶解するか、または基材フィルムから剥離される。また、この処理において、通常、下塗り層も溶解または剥離されるが、該下塗り層が基材フィルムの上に残っていても構わない。この場合、この基材フィルム上に残った層は、通常、後述する解重合処理で得られた溶液において浮遊物として存在することになり、後述する分離工程(II)でポリエステル成分から分離される。
<分離工程(I)>
本発明における分離工程(I)は、前記グリコール前処理工程で得られた固液混合物からフレークを分離する分離工程である。この固液混合物からフレークを分離する手段としては、如何なる分離手段も用いることができるが、濾過処理が簡便で好ましい。なお、混合物中に剥離した機能層や下塗り層の成分が浮遊している場合、浮遊物をデカンテーション法で分離するのが好ましい。この分離工程で得られるフレークは、乾燥処理を施す必要は特になく、通常表面がグリコールで濡れていても良い。
この分離工程(I)でフレークを分離した後のグリコールは精製処理の工程に回されるが、このグリコールが多くの解重合触媒を含んでいると、該触媒を分離する負荷が増大するので好ましくない。この精製処理としては、蒸留処理を含むものが好ましい。
<解重合工程>
本発明における解重合工程は、分離工程(I)で分離されたフレークのポリエステル成分を解重合触媒の存在下ジオールで解重合する工程である。このジオールとしては、例えば炭素数2〜8の脂肪族グリコール、ポリエステルのエステルモノマー、そのオリゴマー等を例示することができる。これらは単独使用でも2種以上の併用でもよいが、特に炭素数2〜8の脂肪族グリコールとポリエステルのエステルモノマーまたは(/および)オリゴマーとを組合せて用いるのが好ましい。例えば、前記分離工程(I)で分離された基材フィルムのポリエステル成分をそのエステルモノマーまたは(/および)オリゴマーを用いて予備解重合し、さらに予備解重合物を脂肪族グリコールで解重合して解重合溶液とするのが好ましい。
以下、ポリエステルの代表としてポリエチレンテレフタレートを、ジオールの代表としてビスヒドロキシエチルテレフタレートまたは(/および)そのオリゴマー並びにエチレングリコールを用いて説明する。
例えば、ポリエチレンテレフタレートを、先ずそのエステルモノマー(ビスヒドロキシエチルテレフタレート:BHET)または(/および)オリゴマー(好ましくは、重合度が約2〜10の範囲内にあるオリゴマー)を主成分とするジオール(好ましくは、後述する粗BHETの蒸留処理の残渣)と高められた温度で接触させて予備的に解重合(予備解重合)し、次いで過剰のエチレングリコール(EG)を用いて解重合(本解重合)をさらに進めて粗BHETを主たる固形分として含有する解重合溶液を調製するのが好ましい。このEGは精製されたEGでも良いが、他のジオールを小割合含有しているEGや晶析・固液分離において発生した粗EGを混合したEGも使用することができる。
予備解重合において、ポリエチレンテレフタレートとジオールであるBHETまたは(/および)オリゴマーとの量比は、ポリエチレンテレフタレート1重量部当り、BHETまたは(/および)オリゴマーを0.1〜4.5重量部、さらには0.1〜2.0重量部、特に0.1〜1.0重量部用いることが好ましい。予備解重合の温度は、180〜290℃、さらには190〜270℃、特に200〜260℃であることが好ましい。反応時間は、0.1〜5.0時間、さらには0.3〜1.5時間であることが好ましい。予備的解重合により得られる分解生成物は重合度が約2〜40、さらには3〜30のものが好ましい。
予備分解は、通常、常圧下で実施するが、その際フレークと一緒に系内に供給されるエチレングリコールや水のような低沸点成分は系外に蒸発除去しながら行うことが好ましい。また、反応系からの蒸発物が反応の進行を阻害しない程度の減圧下で実施してもよい。場合によっては加圧下、好ましくはエチレングリコールの蒸気圧以下の加圧下で蒸発物を系内に戻さないようにしながら行うこともできる。
次いで、予備解重合によって得られる予備解重合物とEGとの解重合反応(本解重合反応)は、170〜265℃、さらには180〜230℃であることが好ましい。この予備解重合物とEGとの量比は、予備解重合物1重量部当り、EGを0.5〜8重量部、さらには2〜7重量部用いるのが好ましい。予備解重合物の量がEGに対して少なすぎると、生成するBHETの量がEGへの飽和溶解度より小さくなり、脱イオン処理に付される全液量に対して得られる最大の収量より少ない量でしかBHETが得られなくなるため経済的でない。一方、予備解重合物の量がEGに対して多すぎると、BHETのオリゴマーが増加してBHETの収率が低下する。また、BHETがEGの飽和溶解度を超えて存在すると、BHETが析出するために脱イオン処理ができなくなる。
この解重合処理においては解重合触媒を用いるのが好ましい。この触媒としては、例えば、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、ナトリウムメチラート、酢酸亜鉛等を挙げることができる。また、その使用量としては、ポリエステルに対し、0.05〜0.50重量%、さらには0.15〜0.40重量%であることが好ましい。解重合反応時間は、0.5〜5.0時間、さらには0.5〜4.0時間であることが好ましい。この解重合によって得られる予備解重合物はBHETを主成分とし、少ない割合(例えば、全溶質当り20重量%以下、さらには10重量%以下)で重合度が2〜20、さらには2〜10のオリゴマーを含むことのできるものである。
また、解重合剤(ジオール)としてEGを最初から用いる場合には、解重合温度は170〜230℃、さらには190〜220℃であることが好ましい。解重合(グリコリシス)時のポリエチレンテレフタレートとEGの量比は、重量比で1:9〜3:7であることが好ましい。ポリエチレンテレフタレートの量がEGに対して少なすぎると、生成するBHETの量がEGへの飽和溶解度より小さくなり、脱イオン処理に付される全液量に対して得られる最大の収量より少ない量でしかBHETが得られなくなるため経済的でない。一方、ポリエチレンテレフタレートの量がEGに対して多すぎると、BHETのオリゴマーが増加してBHETの収率が低下する。また、BHETがEGの飽和溶解度を超えて存在すると、BHETが析出するために脱イオン処理ができなくなる。
この解重合処理時、解重合触媒を用いるのが好ましい。この触媒としては、例えば、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、ナトリウムメチラート、酢酸亜鉛等を挙げることができる。また、その使用量としては、ポリエステルに対し、0.05〜0.50重量%、さらには0.15〜0.40重量%であることが好ましい。解重合反応時間は、0.5〜7.0時間、さらには0.5〜5.0時間であることが好ましい。
解重合は、解重合反応装置に精留塔を設け、反応溶液から水分を系外へ留去しながら行うのが好ましい。その際、蒸発したEGは系内へ戻すようにするのが好ましい。解重合反応をこのようにして行うことでカチオン交換体と接触せしめるEG溶液中の水分量を少なくすることができるので、脱カチオン処理に伴う加水分解反応を抑制することができる。カチオン交換体と接触せしめるEG溶液中に含まれる水分量が0.5重量%以下となるように調整することが好ましい。水分量は、該EG溶液を京都電子工業(株)製MK−SS型カールフィッシャー水分計により計測することで得られる。
解重合により得られる解重合溶液は、通常、BHETを主たる溶質とし、EGを主たる溶媒とし、副溶質として、原料のポリエステル(特にPET)に含まれていたり、解重合処理時の副反応により発生したりするジエチレングリコール(以下、DEGと略称することがある)のエステル(DEGエステル)を含み、さらに他の溶質成分としてBHETのオリゴマーやモノ(2−ヒドロキシエチル)テレフタレート(以下、MHETと略称することがある)を、また非溶質成分として原料ポリエステルに含まれていたDEG成分や解重合処理時の副反応により発生したDEG成分による遊離DEG等を含むことができる。さらに、解重合反応に用いた触媒(例えば、アルカリ化合物)、ポリエステルの重縮合反応に用いた触媒(例えば、アンチモン化合物、ゲルマニウム化合物等)、リン化合物などの安定剤、および種々の予想し難い汚れ等に由来する不純物イオン等を含むことができる。
解重合溶液(グリコール溶液)の固形分は主としてポリエステルのモノマー(エステルモノマー)からなり、オリゴマーの割合が1〜30重量%、さらには2〜20重量%、特に2〜10重量%に低減されたものである。この固形分の濃度は10〜30重量%、さらには15〜25重量%であることが好ましい。
<分離工程(II)>
本発明における分離工程(II)は、解重合工程で得られたエステルモノマーを含有する解重合溶液から浮遊物を分離除去する工程である。この浮遊物は、主として分離工程(I)で分離できずフレークと一緒に解重合工程へ持ち込まれた浮遊物、またはグリコール前処理工程で溶解または剥離しなかった機能層や下塗り層の成分からなる。この浮遊物を分離除去する方法としては、固液分離、比重分離、濾過等を挙げることができる。この工程では、解重合溶液を85〜200℃に維持するのが好ましい。
<モノマー精製工程>
本発明においてはさらに、濾過処理、活性炭処理、脱イオン処理、晶析処理、蒸留処理、またはこれらの組み合わせにより精製することが好ましい。
即ち、分離工程(II)で浮遊物を除去した解重合溶液を活性炭処理する工程、活性炭処理で得られた解重合溶液を脱イオン処理する工程、および脱イオン処理で得られた脱イオン処理溶液を蒸留処理してからエステルモノマーを回収するのが好ましい。さらに、脱イオン処理で得られた脱イオン処理溶液を晶析処理し、析出したエステルモノマーを濾別した後に蒸留処理することが好ましい。
これらの精製工程においては、好ましくはその中に含まれる不純物や副反応促進成分等を濾過処理、活性炭処理および脱イオン処理の組み合わせによって除去し、またグリコール可溶性不純物や副反応物を晶析処理で除去し、さらに晶析処理では除去しきれない残存低沸点物やオリゴマー等の高沸点不純物を蒸留処理で除去して、ポリエステルのモノマーを回収することが好ましい。
さらに説明すると、解重合処理で得られた解重合溶液(グリコール溶液)は、通常、基材フィルムに含まれている顔料、滑剤等の微粒子、解重合剤(ジオール)に含まれているグリコール不溶成分等の不溶物粒子を含んでいるが、これらのうち比較的大きい粒子は濾過処理で除去し、そして濾過しきれなかった微量の微粒子は活性炭処理で吸着して除去し、活性炭処理で発生した活性炭微粉は再度濾過処理で除去し、さらに触媒残渣等のイオン性物質は脱イオン処理で除去して精製する。こうして精製された解重合溶液は晶析処理でさらに精製し、次いで得られた晶析物(主としてポリエステルのモノマーからなる晶析物)は蒸留処理或は蒸留処理の前にさらにイソプロピルアルコールなどの有機溶媒を用いた再結晶処理を繰り返すことにより、高純度のエステルモノマーとして回収することができる。このエステルモノマーを公知の方法で重合すると、特性に優れたポリエステル樹脂を得ることができる。
(濾過処理)
濾過処理としては、解重合溶液を50〜100℃、好ましくは70〜90℃に降温して、解重合反応で分解されなかった固形異物、例えば平均粒径が1〜500μm程度の固形異物(例えば、顔料、滑剤、グリコール不溶成分等)を濾過する処理であることが好ましい。例えば、解重合溶液を、3〜20dtexの繊維(ポリエステル繊維、ポリプロピレン繊維等)からなる濾材を空隙率70〜98%で充填した濾過装置に通すことで濾過することが好ましい。
(活性炭処理)
活性炭処理は、解重合溶液を50〜100℃、好ましくは70〜90℃の温度に維持し、活性炭を充填した吸着塔に空間速度0.1〜5.0hr-1で通液する処理(吸着処理)であることが好ましい。この活性炭処理は顔料等の着色剤を除去するものでもあり、脱色処理と云えるものである。この活性炭としては、例えば三菱化学(株)製「ダイアホープ006」、「ダイアホープ008」等を挙げることができる。活性炭微紛の濾過処理としては、解重合溶液の濾過処理と同じ方法で行うのが好ましい。
(脱イオン処理)
脱イオン処理としては、解重合溶液を50〜100℃、好ましくは70〜90℃の温度に維持し、カチオン交換体を充填した脱カチオン塔に空間速度1〜12hr-1、好ましくは4〜9hr-1で通液してカチオン交換処理し、その後連結配管内を3秒〜10分で通過させてからアニオン交換体を充填した脱アニオン塔に空間速度0.5〜10hr-1、好ましくは1〜8hr-1で通液してアニオン交換処理するのが好ましい。カチオン交換体としては、例えばロームアンドハース社製カチオン交換樹脂「アンバーライトIR−120B」等を好ましく挙げることができる。また、アニオン交換体としては、例えばロームアンドハース社製アニオン交換樹脂「アンバーライトIRA96SB」とカチオン交換樹脂「アンバーライトIR−120B」の混合物等を好ましく挙げることができる。このアニオン交換樹脂とカチオン交換樹脂の混合割合(容量比)は1:3〜5:1であることが好ましい。
(晶析処理)
晶析処理としては、脱イオン処理を行なった後の溶液(脱イオン処理溶液)を晶析槽において飽和溶解度以上の温度から15〜30℃の範囲の温度まで冷却し、この範囲の温度に1〜12時間維持して、析出物の平均粒子径が40〜200μm(島津製作所製SALD−200V ERを用いて、EGで10倍希釈して測定)になるようにエステルモノマーを析出させるのが好ましい。この脱イオン処理溶液を飽和溶解度以上の温度から冷却する場合、例えば0.1〜0.5℃/分の速度でゆっくりと冷却するのが好ましい。この析出処理ではEG溶媒との溶解度の差によって、例えばエステルモノマーと前記解重合工程等で副反応により生成する不純物(例えば、モノ(2−ヒドロキシエチル)テレフタレート、2−ヒドロキシエチル[2−(2−ヒドロキシエトキシ)エチル]テレフタレート等)や黄色系の着色成分との分離をより一層行なうことができる。
得られた晶析物は固液分離により固形分を分離する。固液分離は、晶析処理時の温度、すなわち15〜30℃の範囲の温度を維持しながら行なうのが好ましい。さらには、析出物を通気度が3〜30cm3/min・cm2の濾布を用いたフィルタープレスで濾別するのが好ましく、吸引濾過する場合は、保留粒子径が1〜30μmの濾紙を用いて濾別することが好ましい。
なお、晶析処理で得られた濾過ケークには、15〜60wt%のEG等のジオールを含んでいるので、ジオール可溶性で、なおかつ蒸留条件でエステルモノマー(BHET)に同伴する物質(例えば合成染料)が含まれている場合は、低粘度の極性有機溶剤で再晶析処理することが好ましい。ジオール可溶性でかつ蒸留条件でエステルモノマー(BHET)に同伴する物質としては、基材フィルムの染色に用いた染料、例えばオキソノール染料、アゾ染料、アゾメチン染料、アントラキノン染料、アリーリデン染料、スチリル染料、トリアリールメタン染料、メロシアニン染料、シアニン染料等が挙げられる。極性有機溶剤として、例えば2−プロパノール等の炭素数1〜5の脂肪族モノアルコールが挙げられる。
再晶析処理は、極性有機溶剤を用いて、固液比が1:1〜10の範囲で、50℃〜沸点の温度範囲で、5〜30分掛けて溶解し、これを−10〜30℃の範囲にまで0.1〜3℃/分の速度で冷却して、エステルモノマー(BHET)を晶析分離することにより混合されているジオールおよびジオール可溶性物質を除去することが好ましい。
本発明においては、ジオール可溶性かつ蒸留条件でエステルモノマーに同伴する物質を含有するポリエステル基材フィルムからエステルモノマーを回収する場合には、炭素数1〜5の脂肪族モノアルコールで再晶析処理することが好ましい。
(蒸留処理)
蒸留処理としては、晶析処理で得られた濾過ケークを70〜120℃で溶解し、融解液を第一蒸発装置に導入し、温度130〜170℃、圧力300〜1,000Paの条件で低沸点成分を蒸発(第一蒸発)させ、次いで第一蒸発を経た融解液を第二蒸発装置に導入し、温度130〜170℃、圧力50〜250Paの条件で、低沸点成分を蒸発(第二蒸発)させるのが好ましい。次いで、第二蒸発を経た融解液を流下薄膜式分子蒸留装置に導入し、温度180〜220℃、圧力25Pa以下の条件で蒸留(分子蒸留)するのが好ましい。
なお、晶析処理において低粘度の極性有機溶媒で再晶析処理を行った場合は、上記第一蒸発を経ることなく第二蒸発装置に導入し、次いで上記流下薄膜式分子蒸留装置に導入して、温度180〜220℃、圧力25Pa以下の条件で蒸留(分子蒸留)することが出来る。
解重合溶液を上述の操作により精製することにより、効率良く高品質なエステルモノマー、特に好ましくはビス(2−ヒドロキシエチル)テレフタレート(BHET)を得ることができる。この精製ビス(2−ヒドロキシエチル)テレフタレートは、重合触媒の存在下重合せしめることにより高品質の(例えば、色調に優れた)ポリエチレンテレフタレートを製造することができる。
ポリエステル基材フィルムは、前述のように、ポリエステルの製造において用いられた添加剤、例えば触媒、着色剤、安定剤等を含んでいるが、場合によっては微量のゼラチンを含んでいることもある。この場合においても、本発明によれば、高純度のエステルモノマーを回収することができる。
本発明の方法で得られる高純度エステルモノマーは、光学密度が0.000〜0.010、さらには0.000〜0.006であり、純度が95重量%以上、さらには98重量%以上であることが好ましい。
以下、実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。なお、例中の特性は下記の方法で測定した。
1)光学密度
試料5gをメタノールに溶解して10重量%メタノール溶液とし、UVmini−1240((株)島津製作所製)によりセル長10mmで、ブランクはメタノールを用いてゼロ点補正し、この溶液の380nmの吸光度を測定した。
2)エステルモノマーの純度
試料50mgを精秤し、クロロホルムを用いて100ppmの溶液を調製し、これを液体クロマトグラフ法にて分析して、エステルモノマー(例えばビス(2−ヒドロキシエチル)テレフタレート)の量を求めた。
〔実施例1〕
<グリコール前処理工程>
2リットルの攪拌機および還流装置付きガラス製セパラブルフラスコに、使用済み転写印刷フィルム(ポリエチレンテレフタレートからなる基材フィルムの上に剥離層、図柄に合ったインク層を含む印刷層が設けられた転写印刷フィルムで印刷に使用したもの)のフレーク0.2kgおよびエチレングリコール(EG)0.8kgを加え、該EGにポリエステル解重合触媒を添加することなく180℃に加熱し、この温度を維持しながら常圧下30分間攪拌した。この加熱攪拌処理で、転写印刷層のEG可溶分は溶出し、かつ該転写印刷層のEG不溶分は収縮して基材フィルムから剥離し、浮遊した。そして、この加熱攪拌処理では基材フィルムの変化は観察することができず、溶解現象は実質的に起こっていないと解された。
<分離工程(I)>
得られた固液混合物を180℃の温度に維持しながら、フラスコを傾けて浮遊物を含むEGを抜き出した。次いで、抜き出したEGを4メッシュの金網フィルターに通し、不溶分とEGに分離した。この処理で得られたEGは再度前記セパラブルフラスコに戻して加熱攪拌し、該フラスコ中に残したフレークに付着していた不溶物を再度浮遊させ、上記と同じ方法で不溶物の浮遊したEGを抜き出した。この2回の抜き出し処理で、肉眼で見て目立つレベルの浮遊物を除去することが出来た。前記フラスコに残されたフレークは白色であったので、組成分析を行ったところ、酸化チタンを10重量%含有していることがわかった。
<解重合工程>
この白色フレークを、溶融ビス(2−ヒドロキシエチル)テレフタレート(BHET)を0.1kg仕込んだ2リットルの攪拌機および還流装置付きガラス製セパラブルフラスコに投入し、230℃で予備解重合を行い、続いて1.2kgの温EGおよび0.5gのNaOHを加えて200℃で本解重合を行った。得られた解重合溶液は、180℃に維持した状態で、25メッシュの金網フィルターに通して残存浮遊物や粗大粒子を除去した。
<分離工程(II)>
得られた解重合溶液は肉眼で見て白濁をしていたので、80℃にまで溶液温度を下げ、空隙率89%にポリプロピレン繊維(6dtex)を充填した内容積150mlのファイバーフィルターで濾過したが、白濁物を除去することができなかった。そこで、この解重合溶液に、80℃の温度を維持しながら、凝集剤としてグリース(昭和シェルアルバニアグリースS)0.03重量%を加え攪拌したところ、酸化チタンの凝集が起こった。そして、解重合溶液を6dtexのポリプロピレン繊維を空隙率85%に充填した内容積150mlのファイバーフィルターで濾過したところ、肉眼で判定してほぼ透明なレベルの溶液を得ることができた。
<モノマー精製工程>
次いで、解重合溶液を、80℃の温度に下げてから、三菱化学(株)製「ダイアホープ006」を充填した吸着塔へ空間速度3.0hr-1で通液して含まれている着色性物質や微小異物を吸着除去し、さらに80℃を維持したままロームアンドハース社製カチオン交換樹脂「アンバーライトIRA−120B」を充填した脱カチオン塔へ空間速度7hr-1で、ロームアンドハース社製カチオン交換樹脂「アンバーライトIRA−120B」を充填した脱アニオン塔へ空間速度7hr-1で通液して脱イオンを行った。得られた処理溶液の光学密度は0.10であった。
処理溶液の温度を0.3℃/分の降温速度で25℃に下げ3時間保持してBHETを主成分とするエステルモノマーを晶析させ、この晶析物を含んだ溶液を、No.5Aの濾紙を敷いたブフナー漏斗から吸引瓶を通して吸引ポンプにより吸引濾過して固液分離を行った。得られた粗エステルモノマーの結晶の平均サイズは65μmであった。得られた粗エステルモノマーの晶析物を、1リットルの蒸留装置付きガラス製三口フラスコに投入し窒素雰囲気下で120℃で溶融し、さらに、温度150℃、圧力500Paの条件下で蒸留してEGを主成分とする低沸点物を溜去し、さらに温度150℃、圧力133Paの条件下で残された低沸物を蒸留してから温度190℃、圧力8Paの条件下で分子蒸留して精製BHETを得た。この精製BHETの光学密度は0.003、純度は98.1重量%であった。
〔実施例2〕
使用済み印刷版下用ポリエステルフィルム(転写印刷層がアクリル樹脂層、ウレタン樹脂層の積層構造からなる層である)のフレークを実施例1と同じ手順でEGを用いてグリコール前処理を行ったところ、転写印刷層がEG中に浮遊分離したフレークを得ることが出来た。次いで、実施例1と同じ手順で、EGと浮遊物を分離し、さらに得られたフレークを予備解重合および本解重合した。得られた解重合溶液は肉眼でみて透明であったので、凝集剤を添加することなく、実施例1と同じ手順で、180℃で金網フィルターおよび80℃でファイバーフィルターに通して残存異物を除去した後、精製処理を行った。得られた精製BHETの光学密度は0.002、純度は98.2重量%であった。
〔実施例3〕
使用済み磁気テープ(TDK(株)製、T−120HSU)をカセットから抜き出し、長さ約10cmにカットしたフレーク0.2kgを実施例1と同じ手順でEGを用いてグリコール前処理を行ったところ、磁性層がEG中に浮遊分離された基材フィルムフレークを得ることができた。次いで、実施例1と同じ手順でEGと浮遊物を分離し、さらに得られた基材フィルムのフレークを、予備解重合および本解重合した。得られた解重合溶液は半透明であったので、凝集剤を添加することなく、実施例1の手順で、180℃で25メッシュの金網フィルターおよび、80℃で充填密度89%に6dtexのポリプロピレン繊維を充填したファイバーフィルターに通して残存浮遊物や滑剤を主とする異物を除去した後、精製処理を行った。得られた精製BHETの光学密度は0.005、純度は98.0重量%であった。
〔実施例4〕
X線写真フィルム(コニカメディカルアンドグラフィック(株)社製、SD−P)を平均サイズ3cm角にカットしたフレーク0.2kgを実施例1と同じ手順でEGを用いてグリコール前処理を行ったところ、感光層が浮遊分離された基材フィルムフレークの固液混合物を得ることができた。次いで、実施例1と同じ要領で固液混合物から溶液と浮遊物を分離し、残されたフレークを、予備解重合および本解重合した。次いで、得られた解重合溶液を180℃に維持して、25メッシュの金網フィルターを通すことにより、粗大固形物や残存浮遊物を除去した。得られた該重合溶液は青味掛かった透明であったので、凝集剤を添加することなく、実施例1の手順で、80℃で空隙率89%に6dtexのポリプロピレン繊維を充填したファイバーフィルターに通して不溶性異物を除去した後、活性炭処理、脱イオン処理を行い、晶析処理を行ったところ、青味掛かった晶析物0.4kgが得られた。
続いて、晶析物を3リットルの攪拌装置および還流装置を備えたセパラブルフラスコに投入し、1.2リットルの2−プロパノールを加えて、80℃の温度で25分掛けて溶解したところ、薄い青みをもった透明な溶液が得られた。これを10℃にまで0.5℃/分の速度で冷却して、エステルモノマーを再度晶析させ、濾過処理を行ったところ、目視で見て白色の結晶が得られた。さらに、この晶析物を含んだ溶液をNo.5Aの濾紙を敷いたブフナー漏斗から吸引濾過して濾過ケークを得た。
上記の再晶析処理を2回行って得られた濾過ケークを100℃のメルト槽で溶解し、融解液を直接第二蒸発装置に導入し、温度150℃、圧力133Paの条件で処理して残った低沸点成分を蒸発させ、その後、第二蒸発を経た融解液を流下薄膜式分子蒸留装置に導入し、温度190℃、圧力8Paの条件下で分子蒸留に供して精製BHETを得た。この精製BHETの光学密度は0.005、純度は98.0重量%であった。
また、EG中に浮遊分離した感光層成分は、10メッシュの金網フィルターで濾過することで固液分離を行い、得られた感光層成分は、乾燥後電気炉で焼却して銀化合物の回収に供した。
〔比較例1〕
実施例1において、EGを用いるグリコール前処理を省略して解重合を行い、25メッシュの金網フィルターを通して浮遊物や不溶物を除去したところ、1kgの解重合溶液を濾過した時点で閉塞が起こり、フィルターの交換が必要となった。得られた解重合溶液を80℃に降温した後、凝集剤を添加して酸化チタンを凝集させ、充填密度89%に6dtexのポリプロピレン繊維を充填したファイバーフィルターで濾過したところ、該ファイバーフィルターも2.0kgの解重合溶液を流した時点で閉塞を起こし、交換が必要となった。このように、解重合溶液段階で、度々フィルター交換を行うか、或は容量の大きいフィルターを使う必要があると言うことは、経済性の面だけではなく、副反応をもたらすために品質面からも好ましいことではない。
〔比較例2〕
実施例2において、EGを用いるグリコール前処理を省略して解重合を行ったところ、解重合液として全体が褐色泥状のスラリー液が得られた。該スラリー液を180℃で25メッシュの金網フィルターで粗大固形異物や浮遊異物を除いたあと、80℃に降温して6dtexのポリプロピレン繊維を空隙率85%に充填したファイバーフィルターで濾過して固形異物を分離しようとしたところ、早くから閉塞が起こり、安定した異物の濾過を行うことができなかった。また、得られた濾液について活性炭処理、脱イオン処理を行い、晶析処理工程へ進んだところ、結晶粒子が平均20μmと小さくて、長時間掛けても晶析分離が進まず、安定して高純度の精製BHETを得ることができなかった。
〔比較例3〕
実施例3において、EGを用いるグリコール前処理を省略して解重合を行ったところ、濃褐色の解重合溶液が得られた。この溶液を25メッシュの金網フィルターに掛けて粗大異物や浮遊物を除去した後、90℃に降温し、6dtexのポリプロピレン繊維を空隙率85%に充填したファイバーフィルターで濾過したのち、150mlの容積をもつ活性炭を充填した吸着塔に供したところ、通液を200ml行った段階で破過が起こり、脱色処理を継続することができなかった。
産業上の利用分野
本発明の方法は、ポリエステルフィルムからエステルモノマーを効率良く回収することを可能にし、該ポリエステルフィルムのケミカルリサイクル化に有用である。

Claims (9)

  1. (1)ポリエステル基材フィルムの少なくとも片面に機能層が形成されているポリエステルフィルムのフレークを、ポリエステル解重合触媒を含まないグリコールに浸漬し、100〜200℃の温度で加熱処理して機能層の少なくとも一部を溶解または剥離するグリコール前処理工程、
    (2)グリコール前処理工程で得られた固液混合物からフレークを分離する分離工程(I)、
    (3)分離工程(I)で分離されたフレークのポリエステル成分を解重合触媒の存在下ジオールで解重合する解重合工程および
    (4)解重合工程で得られたエステルモノマーを含有する解重合溶液から浮遊物を分離除去する分離工程(II)、
    を含むポリエステルフィルムからエステルモノマーを回収する方法。
  2. ポリエステルフィルムが、転写印刷フィルム、離形フィルム、写真フィルムまたは磁気記録フィルムである、請求項1に記載の方法。
  3. ポリエステルが、ポリエチレンテレフタレートである、請求項1に記載の方法。
  4. グリコールがエチレングリコールである、請求項1に記載の方法。
  5. (1)ポリエステル基材フィルムの少なくとも片面に機能層が形成されているポリエステルフィルムのフレークを、ポリエステル解重合触媒を含まないグリコールに浸漬し、100〜200℃の温度で加熱処理して機能層の少なくとも一部を溶解または剥離するグリコール前処理工程、
    (2)グリコール前処理工程で得られた固液混合物からフレークを分離する分離工程(I)、
    (3)分離工程(I)で分離されたフレークのポリエステル成分を解重合触媒の存在下ジオールで解重合する解重合工程、
    (4)解重合工程で得られたエステルモノマーを含有する解重合溶液から浮遊物を分離除去する分離工程(II)、
    (5)分離工程(II)で浮遊物を除去した解重合溶液を精製して精製エステルモノマーを得るモノマー精製工程、
    を含むポリエステルフィルムからエステルモノマーを回収する方法。
  6. モノマー精製工程が、濾過処理、活性炭処理、脱イオン処理、晶析処理、蒸留処理またはこれらの組み合わせからなる請求項5に記載の方法。
  7. ポリエステルフィルムが、転写印刷フィルム、離形フィルム、写真フィルムまたは磁気記録フィルムである、請求項5に記載の方法。
  8. ポリエステルがポリエチレンテレフタレートである、請求項5に記載の方法。
  9. グリコールがエチレングリコールである、請求項5に記載の方法。

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