JP2005263791A - ビシナルジチオールの製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】ビシナルジチオールが高収率で得られる製造方法を提供すること。
【解決手段】一般式(1)のような1分子中に1個以上のチイラン環を有するエピスルフィド化合物とチオカルボンS―酸とを塩基の存在下で反応させてチオカルボンS−酸エステルを製造し、これを塩基存在下で加水分解し、酸によりビシナルジオ−ルに変換する三段階の工程よりなる方法。
Figure 2005263791

【選択図】なし

Description

本発明は、プラスチックレンズ、プリズム、光ファイバー、情報記録基盤、フィルター、光学素子接着剤等の光学材料用途に有用なビシナルジチオールを製造する方法に関するものである。
チオール化合物等の含硫黄化合物によるプラスチックレンズ材料は、屈折率とアッベ数のバランスに優れた光学特性によって、眼鏡用プラスチック用途で、現在広く利用されている。中でもビシナルジチオールは、硫黄含有率が高く屈折率が高くなり、さらには得られる重合体の架橋密度が高められるためにこの用途に理想的な構造である。
ビシナルジチオールの製法としては、ビシナルジオールおよびビシナルジハライドとチオ尿素の反応によるものが多く提案されているが、重合や転位反応等を伴い、収率が低かった。また、チイラン環を有する化合物と硫化水素または水硫化アルカリ金属によるものが提案されているが、多量化反応等を併発し、収率が低かった。例えばエチレンスルフイドと硫化水素の室温での反応ではエタンジチオールは収率49%であった(例えば、非特許文献1参照。)。また、シクロヘキセンスルフィドと水硫化カリウムの反応ではシクロヘキサンジチオールは収率38%であった(例えば、非特許文献2参照。)。
E.M.J.Meadeら,J.Chem.Soc.,1894(1948) C.C.J.Cu1venorら,J.Chem.Soc.,282(1949)
ビシナルジチオールを高収率で得られる製造方法を開発することにある。
本願発明者らは1分子中に1個以上のチイラン環を有するエピスルフィド化合物とチオ酢酸等のチオカルボンS−酸とを反応させることにより、効率的にビシナルジチオールを製造できるようになることを見出し、本発明に到達した。
本発明の1分子中に1個以上のチイラン環を有するエピスルフィド化合物とチオカルボンS−酸とを反応させる方法により、ビシナルジチオールを高収率で製造することが可能となった。また、本製造方法では、第二および第三工程の反応温度を比較的低温で行うこと、全工程を酸素が少ない不活性ガス雰囲気下で実施することが、反応成績を向上させる上で効果的であった。
本発明で使用する原料エピスルフィド化合物は、1分子中に1個以上のチイラン環を有していればその他の構造は任意であり、別途官能基を有していても構わず、チイラン環の個数も制限はない。
得られるビシナルジチオールの架橋性およびこれを添加して得られる硬化材料の屈折率を考慮した場合、一般式(1)で表されるエピスルフィド化合物を原料として用いることが望ましい。
Figure 2005263791

(式中、R〜Rはそれぞれ炭素数1〜10の炭化水素または水素であり、mは0〜6の整数、nは0〜4の整数である。)
原料エピスルフィド化合物の具体例としては、エチレンスルフィド、プロピレンスルフィド、シクロヘキセンスルフィド、スチレンスルフィド、チオグリシドール、チオグリシジル酢酸エステル、チオグリシジルプロピオン酸エステル、チオグリシジル安息香酸エステル、1,1−ビス(エピチオエチル)メタン、1−(エピチオエチル)−1−(β−エピチオプロピル)メタン、1,1−ビス(β−エピチオプロピル)メタン、1−(エピチオエチル)−1−(β−エピチオプロピル)エタン、1,2−ビス(β−エピチオプロピル)エタン、1−(エピチオエチル)−3−(β−エピチオプロピル)ブタン、1,3−ビス(β−エピチオプロピル)プロパン、1−(エピチオエチル)−4−(β−エピチオプロピル)ペンタン、1,4−ビス(β−エピチオプロピル)ブタン、1−(エピチオエチル)−5−(β−エピチオプロピル)ヘキサン、1−(エピチオエチル)−2−(γ−エピチオブチルチオ)エタン、1−(エピチオエチル)−2−〔2−(γ−エピチオブチルチオ)エチルチオ〕エタン、テトラキス(β−エピチオプロピル)メタン、1,1,1−トリス(β−エピチオプロピル)プロパン、1,3−ビス(β−エピチオプロピル)−1−(β−エピチオプロピル)−2−チアプロパン、1,5−ビス(β−エピチオプロピル)−2,4−ビス(β−エピチオプロピル)−3−チアペンタン、(1,3または1,4)−ビス(エピチオエチル)シクロヘキサン、(1,3または1,4)−ビス(β−エピチオプロピル)シクロヘキサン、ビス〔4−(エピチオエチル)シクロヘキシル〕メタン、ビス〔4−(β−エピチオプロピル)シクロヘキシル〕メタン、2,2−ビス〔4−(エピチオエチル)シクロヘキシル〕プロパン、2,2−ビス〔4−(β−エピチオプロピル)シクロヘキシル〕プロパン、ビス〔4−(β−エピチオプロピル)シクロヘキシル〕スルフィド、ビス〔4−(エピチオエチル)シクロヘキシル〕スルフィド、2,5−ビス(エピチオエチル)−1,4−ジチアン、2,5−ビス(β−エピチオプロピル)−1,4−ジチアン、4−エピチオエチル−1,2−シクロヘキセンスルフィド、4−エポキシ−1,2−シクロヘキセンスルフィド、メチルチオグリシジルエーテル、エチルチオグリシジルエーテル、プロピルチオグリシジルエーテル、ブチルチオグリシジルエーテル、ビス(β−エピチオプロピル)エーテル、ビス(β−エピチオプロピルオキシ)メタン、1,2−ビス(β−エピチオプロピルオキシ)エタン、1,3−ビス(β−エピチオプロピルオキシ)プロパン、1,2−ビス(β−エピチオプロピルオキシ)プロパン、1−(β−エピチオプロピルオキシ)−2−(β−エピチオプロピルオキシメチル)プロパン、1,4−ビス(β−エピチオプロピルオキシ)ブタン、1,3−ビス(β−エピチオプロピルオキシ)ブタン、1−(β−エピチオプロピルオキシ)−3−(β−エピチオプロピルオキシメチル)ブタン、1,5−ビス(β−エピチオプロピルオキシ)ペンタン、1−(β−エピチオプロピルオキシ)−4−(β−エピチオプロピルオキシメチル)ペンタン、1,6−ビス(β−エピチオプロピルオキシ)ヘキサン、1−(β−エピチオプロピルオキシ)−5−(β−エピチオプロピルオキシメチル)ヘキサン、1−(β−エピチオプロピルオキシ)−2−〔(2−β−エピチオプロピルオキシエチル)オキシ〕エタン、1−(β−エピチオプロピルオキシ)−2−[〔2−(2−β−エピチオプロピルオキシエチル)オキシエチル〕オキシ]エタン、ビス(5,6−エピチオ−3−オキサヘキシル)セレニド、ビス(5,6−エピチオ−3−オキサヘキシル)テルリド、テトラキス(β−エピチオプロピルオキシメチル)メタン、1,1,1−トリス(β−エピチオプロピルオキシメチル)プロパン、1,5−ビス(β−エピチオプロピルオキシ)−2−(β−エピチオプロピルオキシメチル)−3−チアペンタン、1,5−ビス(β−エピチオプロピルオキシ)−2,4−ビス(β−エピチオプロピルオキシメチル)−3−チアペンタン、1−(β−エピチオプロピルオキシ)−2,2−ビス(β−エピチオプロピルオキシメチル)−4−チアヘキサン、1,5,6−トリス(β−エピチオプロピルオキシ)−4−(β−エピチオプロピルオキシメチル)−3−チアヘキサン、1,8−ビス(β−エピチオプロピルオキシ)−4−(β−エピチオプロピルオキシメチル)−3,6−ジチアオクタン、1,8−ビス(β−エピチオプロピルオキシ)−4,5−ビス(β−エピチオプロピルオキシメチル)−3,6−ジチアオクタン、1,8−ビス(β−エピチオプロピルオキシ)−4,4−ビス(β−エピチオプロピルオキシメチル)−3,6−ジチアオクタン、1,8−ビス(β−エピチオプロピルオキシ)−2,4,5−トリス(β−エピチオプロピルオキシメチル)−3,6−ジチアオクタン、1,8−ビス(β−エピチオプロピルオキシ)−2,5−ビス(β−エピチオプロピルオキシメチル)−3,6−ジチアオクタン、1,9−ビス(β−エピチオプロピルオキシ)−5−(β−エピチオプロピルオキシメチル)−5−〔(2−β−エピチオプロピルオキシエチル)オキシメチル〕−3,7−ジチアノナン、1,10−ビス(β−エピチオプロピルオキシ)−5,6−ビス〔(2−β−エピチオプロピルオキシエチル)オキシ〕−3,6,9−トリチアデカン、1,11−ビス(β−エピチオプロピルオキシ)−4,8−ビス(β−エピチオプロピルオキシメチル)−3,6,9−トリチアウンデカン、1,11−ビス(β−エピチオプロピルオキシ)−5,7−ビス(β−エピチオプロピルオキシメチル)−3,6,9−トリチアウンデカン、1,11−ビス(β−エピチオプロピルオキシ)−5,7−〔(2−β−エピチオプロピルオキシエチル)オキシメチル〕−3,6,9−トリチアウンデカン、1,11−ビス(β−エピチオプロピルオキシ)−4,7−ビス(β−エピチオプロピルオキシメチル)−3,6,9−トリチアウンデカン、(1,3または1,4)−ビス(β−エピチオプロピルオキシ)シクロヘキサン、(1,3または1,4)−ビス(β−エピチオプロピルオキシメチル)シクロヘキサン、ビス〔4−(β−エピチオプロピルオキシ)シクロヘキシル〕メタン、2,2−ビス〔4−(β−エピチオプロピルオキシ)シクロヘキシル〕プロパン、ビス〔4−(β−エピチオプロピルオキシ)シクロヘキシル〕スルフィド、2,5−ビス(β−エピチオプロピルオキシメチル)−1,4−ジチアン、2,5−ビス(β−エピチオプロピルオキシエチルオキシメチル)−1,4−ジチアン、(1,3または1,4)−ビス(β−エピチオプロピルオキシ)ベンゼン、(1,3または1,4)−ビス(β−エピチオプロピルオキシメチル)ベンゼン、ビス〔4−(β−エピチオプロピル)フェニル〕メタン、2,2−ビス〔4−(β−エピチオプロピルチオ)フェニル〕プロパン、ビス〔4−(β−エピチオプロピルチオ)フェニル〕スルフィド、ビス〔4−(β−エピチオプロピルチオ)フェニル〕スルフオン、4,4‘−ビス(β−エピチオプロピルチオ)ビフェニル、ビス(β−エピチオプロピル)スルフィド、ビス(β−エピチオプロピル)ジスルフィド、ビス(β−エピチオプロピル)トリスルフィド、ビス(β−エピチオプロピルチオ)メタン、1,2−ビス(β−エピチオプロピルチオ)エタン、1,3−ビス(β−エピチオプロピルチオ)プロパン、1,2−ビス(β−エピチオプロピルチオ)プロパン、1−(β−エピチオプロピルチオ)−2−(β−エピチオプロピルチオメチル)プロパン、1,4−ビス(β−エピチオプロピルチオ)ブタン、1,3−ビス(β−エピチオプロピルチオ)ブタン、1−(β−エピチオプロピルチオ)−3−(β−エピチオプロピルチオメチル)ブタン、1,5−ビス(β−エピチオプロピルチオ)ペンタン、1−(β−エピチオプロピルチオ)−4−(β−エピチオプロピルチオメチル)ペンタン、1,6−ビス(β−エピチオプロピルチオ)ヘキサン、1−(β−エピチオプロピルチオ)−5−(β−エピチオプロピルチオメチル)ヘキサン、1−(β−エピチオプロピルチオ)−2−〔(2−β−エピチオプロピルチオエチル)チオ〕エタン、1−(β−エピチオプロピルチオ)−2−[〔2−(2−β−エピチオプロピルチオエチル)チオエチル〕チオ]エタン、テトラキス(β−エピチオプロピルチオメチル)メタン、1,1,1−トリス(β−エピチオプロピルチオメチル)プロパン、1,5−ビス(β−エピチオプロピルチオ)−2−(β−エピチオプロピルチオメチル)−3−チアペンタン、1,5−ビス(β−エピチオプロピルチオ)−2,4−ビス(β−エピチオプロピルチオメチル)−3−チアペンタン、1−(β−エピチオプロピルチオ)−2,2−ビス(β−エピチオプロピルチオメチル)−4−チアヘキサン、1,5,6−トリス(β−エピチオプロピルチオ)−4−(β−エピチオプロピルチオメチル)−3−チアヘキサン、1,8−ビス(β−エピチオプロピルチオ)−4−(β−エピチオプロピルチオメチル)−3,6−ジチアオクタン、1,8−ビス(β−エピチオプロピルチオ)−4,5−ビス(β−エピチオプロピルチオメチル)−3,6−ジチアオクタン、1,8−ビス(β−エピチオプロピルチオ)−4,4−ビス(β−エピチオプロピルチオメチル)−3,6−ジチアオクタン、1,8−ビス(β−エピチオプロピルチオ)−2,4,5−トリス(β−エピチオプロピルチオメチル)−3,6−ジチアオクタン、1,8−ビス(β−エピチオプロピルチオ)−2,5−ビス(β−エピチオプロピルチオメチル)−3,6−ジチアオクタン、1,9−ビス(β−エピチオプロピルチオ)−5−(β−エピチオプロピルチオメチル)−5−〔(2−β−エピチオプロピルチオエチル)チオメチル〕−3,7−ジチアノナン、1,10−ビス(β−エピチオプロピルチオ)−5,6−ビス〔(2−β−エピチオプロピルチオエチル)チオ〕−3,6,9−トリチアデカン、1,11−ビス(β−エピチオプロピルチオ)−4,8−ビス(β−エピチオプロピルチオメチル)−3,6,9−トリチアウンデカン、1,11−ビス(β−エピチオプロピルチオ)−5,7−ビス(β−エピチオプロピルチオメチル)−3,6,9−トリチアウンデカン、1,11−ビス(β−エピチオプロピルチオ)−5,7−〔(2−β−エピチオプロピルチオエチル)チオメチル〕−3,6,9−トリチアウンデカン、1,11−ビス(β−エピチオプロピルチオ)−4,7−ビス(β−エピチオプロピルチオメチル)−3,6,9−トリチアウンデカン、(1,3または1,4)−ビス(β−エピチオプロピルチオ)ベンゼン、(1,3または1,4)−ビス(β−エピチオプロピルチオメチル)ベンゼン、ビス〔4−(β−エピチオプロピルチオ)フェニル〕メタン、2,2−ビス〔4−(β−エピチオプロピルチオ)フェニル〕プロパン、ビス〔4−(β−エピチオプロピルチオ)フェニル〕スルフィド、ビス〔4−(β−エピチオプロピルチオ)フェニル〕スルフォン、4,4‘−ビス(β−エピチオプロピルチオ)ビフェニル、ビス(β−エピチオプロピル)セレニド、ビス(β−エピチオプロピル)ジセレニド、ビス(β−エピチオプロピル)トリセレニド、ビス(β−エピチオプロピルセレノ)メタン、ビス(β−エピチオプロピル)テルレド、ビス(β−エピチオプロピル)ジテルレド、ビス(β−エピチオプロピル)トリテルレド、ビス(β−エピチオプロピルテルロ)メタン、1,2−ビス(β−エピチオプロピルテルロ)エタン、ビニルフェニルチオグリシジルエーテル、ビニルベンジルチオグリシジルエーテル、チオグリシジルメタクリレート、チオグリシジルアクリレート、アリルチオグリシジルエーテル等があげられ、さらには、以上列記のエピスルフィド化合物のエピチオ基の水素の1個以上がメチル基で置換されたエピスルフィド類等があげられる。
この中で、ビス(β−エピチオプロピル)スルフィド、ビス(β−エピチオプロピル)ジスルフィドが望ましい。
以上、具体的に列記したが本発明で使用する1分子中に1個以上のチイラン環を有するエピスルフィド化合物は、上記の例示化合物だけに限定されるものではなく、また1種類でも2種類以上を混合して使用しても構わない。
本発明の製造方法は、(1)エピスルフィド化合物と一般式(2):
Figure 2005263791


(式中、Rは炭素数1〜7の炭化水素基を表す)で表されるチオカルボンS−酸とを塩基の存在下反応させチオカルボン酸S−エステルを製造する第一の工程、(2)チオカルボン酸S−エステルを塩基存在下で加水分解し、メルカプチドを製造する第二の工程、および(3)メルカプチドを酸によりビシナルジチオールに変換する第三の工程を含むことを特徴とする。反応の一例を以下に示した。
Figure 2005263791
(式中、R、R、RおよびRは前記と同様。)
第一工程では、塩基存在下で、チイラン環を開環させてチオカルボン酸のS−エステルを製造する。一般式(2)のチオカルボンS−酸としては、チオ酢酸、チオプロピオン酸、チオ酪酸、チオ安息香酸などが挙げられ、チオ酢酸が特に好ましい。
チオカルボンS−酸の使用量は、エピスルフィド化合物中のチイラン環の総計のモル数に対するチオカルボンS―酸中のメルカプトカルボニル基の総計のモル数の比が、0.1〜10モルが好ましく、0.5〜5モルがさらに好ましく、0.9〜2モルが最も好ましい。
塩基としては、アンモニア、アミン、ホスフィン、金属アルコラート、金属水素化物、金属水酸化物、金属炭酸塩および金属硫化物を使用する。塩基の使用量は、塩基/エピスルフィド化合物のモル比が0.0001〜1の範囲が好ましく、0.001〜0.3の範囲が更に好ましく、0.001〜0.1の範囲が最も好ましい。
塩基の具体例を以下に示す。
(1)アンモニア
(2)アミン:
エチルアミン、n−プロピルアミン、sec−プロピルアミン、n−ブチルアミン、sec−ブチルアミン、i−ブチルアミン、tert−ブチルアミン、ペンチルアミン、ヘキシルアミン、ヘプチルアミン、オクチルアミン、デシルアミン、ラウリルアミン、ミリスチルアミン、1,2−ジメチルヘキシルアミン、3−ペンチルアミン、2−エチルヘキシルアミン、アリルアミン、アミノエタノール、1−アミノプロパノール、2−アミノプロパノール、アミノブタノール、アミノペンタノール、アミノヘキサノール、3−エトキシプロピルアミン、3−プロポキシプロピルアミン、3−イソプロポキシプロピルアミン、3−ブトキシプロピルアミン、3−イソブトキシプロピルアミン、3−(2−エチルヘキシロキシ)プロピルアミン、アミノシクロペンタン、アミノシクロヘキサン、アミノノルボルネン、アミノメチルシクロヘキサン、アミノベンゼン、ベンジルアミン、フェネチルアミン、α−フェニルエチルアミン、ナフチルアミン、フルフリルアミン等の1級アミン;エチレンジアミン、1,2−ジアミノプロパン、1,3−ジアミノプロパン、1,2−ジアミノブタン、1,3−ジアミノブタン、1,4−ジアミノブタン、1,5−ジアミノペンタン、1,6−ジアミノヘキサン、1,7−ジアミノヘプタン、1,8−ジアミノオクタン、ジメチルアミノプロピルアミン、ジエチルアミノプロピルアミン、ビス(3−アミノプロピル)エーテル、1,2−ビス(3−アミノプロポキシ)エタン、1,3−ビス(3−アミノプロポキシ)−2,2'−ジメチルプロパン、アミノエチルエタノールアミン、1,2−、1,3−あるいは1,4−ジアミノシクロヘキサン、1,3−あるいは1,4−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1,3−あるいは1,4−ビス(アミノエチル)シクロヘキサン、1,3−あるいは1,4−ビス(アミノプロピル)シクロヘキサン、水添4,4'−ジアミノジフェニルメタン、2−あるいは4−アミノピペリジン、2−あるいは4−アミノメチルピペリジン、2−あるいは4−アミノエチルピペリジン、N−(アミノエチル)ピペリジン、N−(アミノプロピル)ピペリジン、N−(アミノエチル)モルホリン、N−(アミノプロピル)モルホリン、イソホロンジアミン、メンタンジアミン、1,4−ビス(アミノプロピル)ピペラジン、o−、m−、あるいはp−フェニレンジアミン、2,4−あるいは2,6−トリレンジアミン、2,4−トルエンジアミン、m−アミノベンジルアミン、4−クロロ−o−フェニレンジアミン、テトラクロロ−o−キシリレンシアミン、4−メトキシ−6−メチル−m−フェニレンジアミン、m−、あるいはp−キシリレンジアミン、1,5−あるいは、2,6−ナフタレンジアミン、ベンジジン、4,4'−ビス(o−トルジン)、ジアニシジン、4,4'−ジアミノジフェニルメタン、2,2−(4,4'−ジアミノジフェニル)プロパン、4,4'−ジアミノジフェニルエーテル、4,4'−チオジアニリン、4,4'−ジアミノジフェニルスルホン、4,4'−ジアミノジトリルスルホン、メチレンビス(o−クロロアニリン)、3,9−ビス(3−アミノプロピル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン、ジエチレントリアミン、イミノビス(プロピルアミン)、メチルイミノビス(プロピルアミン)、ビス(ヘキサメチレン)トリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミン、N−(アミノエチル)ピペラジン、N−(アミノプロピル)ピペラジン、1,4−ビス(アミノエチル)ピペラジン、1,4−ビス(アミノプロピル)ピペラジン、2,6−ジアミノピリジン、ビス(3,4−ジアミノフェニル)スルホン等の1級ポリアミン;ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジ−n−ブチルアミン、ジ−sec−ブチルアミン、ジイソブチルアミン、ジ−n−ペンチルアミン、ジ−3−ペンチルアミン、ジヘキシルアミン、ジオクチルアミン、ジ(2−エチルヘキシル)アミン、メチルヘキシルアミン、ジアリルアミン、ピロリジン、ピペリジン、2−、3−、4−ピコリン、2,4−、2,6−、3,5−ルペチジン、ジフェニルアミン、N−メチルアニリン、N−エチルアニリン、ジベンジルアミン、メチルベンジルアミン、ジナフチルアミン、ピロール、インドリン、インドール、モルホリン等の2級アミン;N,N'−ジメチルエチレンジアミン、N,N'−ジメチル−1,2−ジアミノプロパン、N,N'−ジメチル−1,3−ジアミノプロパン、N,N'−ジメチル−1,2−ジアミノブタン、N,N'−ジメチル−1,3−ジアミノブタン、N,N'−ジメチル−1,4−ジアミノブタン、N,N'−ジメチル−1,5−ジアミノペンタン、N,N'−ジメチル−1,6−ジアミノヘキサン、N,N'−ジメチル−1,7−ジアミノヘプタン、N,N'−ジエチルエチレンジアミン、N,N'−ジエチル−1,2−ジアミノプロパン、N,N'−ジエチル−1,3−ジアミノプロパン、N,N'−ジエチル−1,2−ジアミノブタン、N,N'−ジエチル−1,3−ジアミノブタン、N,N'−ジエテル−1,4−ジアミノブタン、N,N'−ジエチル−1,6−ジアミノヘキサン、ピペラジン、2−メチルピペラジン、2,5−あるいは2,6−ジメチルピペラジン、ホモピペラジン、1,1−ジ−(4−ピペリジル)メタン、1,2−ジ−(4−ピペリジル)エタン、1,3−ジ−(4−ピペリジル)プロパン、1,4−ジ−(4−ピペリジル)ブタン、テトラメチルグアニジン等の2級ポリアミン;トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリ−n−プロピルアミン、トリ−iso−プロピルアミン、トリ−1,2−ジメチルプロピルアミン、トリ−3−メトキシプロピルアミン、トリ−n−ブチルアミン、トリ−iso−ブチルアミン、トリ−sec−ブチルアミン、トリ−ペンチルアミン、トリ−3−ペンチルアミン、トリ−n−ヘキシルアミン、トリ−n−オクチルアミン、トリ−2−エチルヘキシルアミン、トリ−ドデシルアミン、トリ−ラウリルアミン、ジシクロヘキシルエチルアミン、シクロヘキシルジエチルアミン、トリ−シクロヘキシルアミン、N,N−ジメチルヘキシルアミン、N−メチルジヘキシルアミン、N,N−ジメチルシクロヘキシルアミン、N−メチルジシクロヘキシルアミン、N,N−ジエチルエタノールアミン、N,N−ジメチルエタノールアミン、N−エチルジエタノールアミン、トリエタノールアミン、トリベンジルアミン、N,N−ジメチルベンジルアミン、ジエチルベンジルアミン、トリフェニルアミン、N,N−ジメチルアミノ−p−クレゾール、N,N−ジメチルアミノメチルフェノール、2−(N,N−ジメチルアミノメチル)フェノール、N,N−ジメチルアニリン、N,N−ジエチルアニリン、ピリジン、キノリン、N−メチルモルホリン、N−メチルピペリジン、2−(2−ジメチルアミノエトキシ)−4−メチル−1,3,2−ジオキサボルナン等の3級アミン;テトラメチルチレンジアミン、ピラジン、N,N'−ジメチルピペラジン、N,N'−ビス((2−ヒドロキシ)プロピル)ピペラジン、ヘキサメチレンテトラミン、N,N,N’,N'−テトラメチル−1,3−ブタンアミン、2−ジメチルアミノ−2−ヒドロキシプロパン、ジエチルアミノエタノール、N,N,N−トリス(3−ジメチルアミノプロピル)アミン、2,4,6−トリス(N,N−ジメチルアミノメチル)フェノール、ヘプタメチルイソビグアニド等の3級ポリアミン;イミダゾール、N−メチルイミダゾール、2−メチルイミダゾール、4−メチルイミダゾール、N−エチルイミダゾール、2−エチルイミダゾール、4−エチルイミダゾール、N−ブチルイミダゾール、2−ブチルイミダゾール、N−ウンデシルイミダゾール、2−ウンデシルミダゾール、N−フェニルミダゾール、2−フェニルイミダゾール、N−ベンジルイミダゾール、2−ベンジルイミダゾール、1−ベンジル−2−メチルイミダゾール、N−(2'−シアノエチル)−2−メチルミダゾール、N−(2'−シアノエチル)−2−ウンデシルミダゾール、N−(2'−シアノエチル)−2−フェニルイミダゾール、3,3−ビス(2−エチル−4−メチルイミダゾリル)メタン、2−メルカプトイミダゾール、2−メルカプト−N−メチルミダゾール、2−メルカプトベンゾイミダゾール、3−メルカプト−4−メチル−1,2,4−トリアゾール、5−メルカプト−1−メチルテトラゾール、2,5−ジメルカプト−1,3,4−チアジアゾール、アルキルイミダゾールとイソシアヌール酸の付加物、アルキルイミダゾールとホルムアルデヒドの縮合物等の各種イミダゾール類;1,8−ジアザビシクロ(5,4,0)ウンデセン−7,1,5−ジアザビシクロ(4,3,0)ノネン−5,6−ジブチルアミノ−1,8−ジアザビシクロ(5,4,0)ウンデセン−7等のアミジン類。
(3)ホスフィン:
トリメチルホスフィン、トリエチルホスフィン、トリ−iso−プロピルホスフィン、トリ−n−ブチルホスフィン、トリ−n−ヘキシルホスフィン、トリ−n−オクチルホスフィン、トリシクロヘキシルホスフィン、トリフェニルホスフィン、トリベンジルホスフィン、トリス(2−メチルフェニル)ホスフィン、トリス(3−メチルフェニル)ホスフィン、トリス(4−メチルフェニル)ホスフィン、トリス(ジエチルアミノ)ホスフィン、トリス(4−メチルフェニル)ホスフィン、ジメチルフェニルホスフィン、ジエチルフェニルホスフィン、ジシクロヘキシルフェニルホスフィン、エチルジフェニルホスフィン、ジフェニルシクロヘキシルホスフィン、クロロジフェニルホスフィン等。
(4)金属アルコラート:
リチウムメトキシド、ナトリウムメトキシド、カリウムメトキシド、マグネシウムメトキシド、カルシウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、カリウムエトキシド、ナトリウム−t−ブトキシド、カリウム−t−ブトキシド等。
(5)金属水素化物:
水素化リチウム、水素化ナトリウム、水素化カリウム、水素化マグネシウム、水素化カルシウム、水素化ホウ素ナトリウム、水素化アルミニウムリチウム等。
(6)金属水酸化物:
水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化バリウム、水酸化アルミニウム等。
(7)金属炭酸塩:
炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素カリウム、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸バリウム、炭酸アルミニウム、炭酸カドミウム、炭酸ニッケル、炭酸銅、炭酸ストロンチウム、炭酸コバルト、炭酸マンガン等。
(8)金属硫化物:
硫化ナトリウム、水硫化ナトリウム、硫化カリウム、水硫化カリウム、硫化亜鉛、硫化水銀、硫化鉄等。
以上、具体的に列記したが本発明で使用する塩基は上記の例示化合物だけに限定されるものではなく、また1種類でも2種類以上を混合して使用しても構わない。
例示化合物の中でも比較的好ましいのが金属水酸化物であり、中でも水酸化ナトリウム、水酸化カリウムが好ましい。
第一工程において使用する溶媒は、チオカルボンS―酸ならびに塩基の溶解力が高い極性有機溶媒が好ましく、その中でもアルコール類が特に好ましい。溶媒の使用量は、エピスルフィド化合物の重量/(溶媒とエピスルフィド化合物の総重量)比が0.05〜0.5の範囲が好ましく、0.1〜0.4の範囲が更に好ましく、0.2〜0.3の範囲が最も好ましい。
溶媒の具体例を以下に示すが、下記の例示化合物だけに限定されるものではなく、また
1種類でも2種類以上を混合して使用しても構わない。
メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、イソブタノール、第二ブタノール、第三ブタノール、n−アミルアルコール、活性アミルアルコール、イソアミルアルコール、第ニアミルアルコール、3−ペンタノール、第三アミルアルコール、フーゼル油、n−ヘキサノール、メチルアミルアルコール、2−エチルブタノール、n−ヘプタノール、2−ヘプタノール、3−ヘプタノール、n−オクタノール、2−オクタノール、2−エチルヘキサノール、3,5,5−トリメチルヘキサノール、ノナノール、n−デカノール、ウンデカノール、n−ドデカノール、トリメチルノニルアルコール、テトラデカノール、ヘプタデカノール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、ヘキシレングリコール、オクチレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、1,2,6−ヘキサントリオールのアルコール、中でもメタノール、エタノールが好ましい。
第一工程における反応温度は使用する溶媒、塩基等を考慮し適宜選択できるが、20℃〜100℃の範囲が好ましく、30℃〜80℃の範囲が更に好ましく、40℃〜60℃の範囲が最も好ましい。
第一工程の反応は、例えば、チオカルボンS−酸、塩基、溶媒を含む均一溶液に、エピスルフィド化合物を直接または溶媒に溶解した後、撹拌下、前記均一溶液に滴下することにより行う。滴下は1分〜6時間で行うのが好ましく、5分〜3時間が更に好ましく、15分〜2時間が最も好ましい。滴下終了後、反応液をさらに10分〜24時間撹拌して反応を継続するのが好ましく、30分〜20時間が更に好ましく、1〜12時間が最も好ましい。後述するように、窒素ガスなどの不活性ガスを導入して反応雰囲気の酸素濃度を5体積%以下にするのが好ましい。反応終了後、第一工程の反応生成液は通常分離、精製などの操作を行うことなく第二工程の反応を行う。
第二工程では、塩基存在下でチオカルボン酸S−エステルを加水分解してメルカプチドを製造する。第二工程において使用する塩基は、第一工程で説明した塩基から好ましく選択される。
塩基の使用量は、第一工程で使用したチオカルボンS−酸中のメルカプトカルボニル基の総計のモル数に対する塩基(第一工程で使用した塩基+第二工程で加える塩基)の塩基総量(塩基総量=塩基の価数×塩基のモル数)の比が、0.1〜10が好ましく、0.5〜5の範囲が更に好ましく、0.9〜3の範囲が最も好ましい。第二工程で使用する塩基は、第一工程で使用した塩基と別種でもよいが、製造効率を考慮して同種にするのが好ましい。
第二工程における反応温度は、オリゴマー等の副生物の生成に大きく影響を与える。低温で反応を行うことによりオリゴマー等の副生成物の生成を抑制できるが、反応時間が長くなるため、むやみに反応温度を下げることは効率的ではない。特に第二工程の反応時間は反応温度に大きく依存する。オリゴマー等の副生物の生成を抑制し、かつ短時間で反応を終了させるには、−20℃〜40℃の範囲が好ましく、−10℃〜30℃の範囲が更に好ましく、0℃〜20℃の範囲が最も好ましい。第二工程の反応も、酸素濃度が5体積%以下の雰囲気中で行うことが好ましい。
第二工程では第一工程の反応生成液に塩基を直接または水溶液(好ましくは20重量%〜飽和濃度、もしくは飽和濃度が20重量%以下のものは飽和濃度)の形態で、好ましくは1分〜6時間、更に好ましくは10分〜3時間、最も好ましくは30分〜2時間かけて滴下する。滴下終了後、反応液を好ましくは10分〜24時間、更に好ましくは30分〜20時間、最も好ましくは1〜12時間、更に撹拌して反応を継続するのが好ましい。第二工程の反応生成液は通常分離、精製などの操作を行うことなく第三工程の反応を行う。
第三工程では、第二工程の反応生成液を酸で中和、酸性化してメルカプチドをビシナルジチオールに変換する。第三工程における反応温度は、オリゴマー等の副生物の生成に大きく影響を与える。低温で反応を行うことによりオリゴマー等の副生成物の生成を抑制できるが、反応時間が長くなるため、むやみに反応温度を下げることは効率的ではない。反応温度は、−20℃〜40℃の範囲が好ましく、−10℃〜30℃の範囲が更に好ましく、0℃〜20℃の範囲が最も好ましい。第三工程の反応も、第一工程、第二工程同様、不活性ガス雰囲気中で行うことが好ましい。
第三工程において使用する酸は、第一、第二工程で使用した塩基を中和できるものであればよい。酸としては公知の有機酸および/または無機酸の使用が可能であり、これらを直接あるいは希釈して用いても構わない。具体例を以下に示す。
(1)有機酸:
蟻酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、カプリル酸、ナフテン駿、メチルメルカプトプロピオネート、修酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、マレイン酸、シクロヘキサンカルボン酸、安息香酸、フェニル酢酸、o−トルイル酸、m−トルイル酸、p−トルイル酸、サリチル酸、2−メトキシ安息香酸、3−メトキシ安息香酸、ベンゾイル安息香酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ベンジル酸、α−ナフタレンカルボン酸、β−ナフタレンカルボン酸、チオジプロピオン酸、ジチオジプロピオン酸酢酸、過酢酸、チオ酢酸、酒石酸、無水マレイン酸、無水安息香酸、無水フタル酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸等のカルボン酸類およびその無水物;モノおよびジメチルホスフェート、モノおよびジエチルホスフェート、モノおよびジイソブチルホスフェート、モノおよびジブチルホスフェート、モノおよびジラウリルホスフェート等のリン酸モノおよびジエステル類;モノおよびジメチルホスファイト、モノおよびジエチルホスファイト、モノおよびジイソブチルホスファイト、モノおよびジブチルホスファイト、モノおよびジラウリルホスファイト等の亜リン酸モノおよびジエステル類;ジメチルジチオリン酸に代表されるジアルキルジチオリン酸類;フェノール、カテコール、t−ブチルカテコール、2,6−ジ−t−ブチルクレゾール、2,6−ジ−t−ブチルエチルフェノール、レゾルシン、ハイドロキノン、フロログルシン、ピロガロール、クレゾール、エチルフェノール、ブチルフェノール、ノニルフェノール、ヒドロキシフェニル酢酸、ヒドロキシフェニルプロピオン酸、ヒドロキシフェニル酢酸アミド、ヒドロキシフェニル酢酸メチル、ヒドロキシフェネチルアルコール、ヒドロキシフェネチルアミン、ヒドロキシベンズアルデヒド、フェニルフェノール、ビスフェノール−A、2,2'−メチレン−ビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、ビスフェノール−F、ビスフェノールS、α−ナフトール、β−ナフトール、アミノフェノール、クロロフェノール、2,4,6−トリクロロフェノール等のフェノール類;メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、ブタンスルホン酸、ドデカンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、o−トルエンスルホン酸、m−トルエンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、エチルベンゼンスルホン酸、ブチルベンゼンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、p−フェノールスルホン酸、o−クレゾールスルホン酸、メタニル酸、スルファニル酸、4B−酸、ジアミノスチルベンスルホン酸、ビフェニルスルホン酸、α−ナフタレンスルホン酸、β−ナフタレンスルホン酸、ペリ酸、ローレント酸、フェニルJ酸等のスルホン酸類;ベンゼンスルフィン酸、トルエンスルフィン酸等のスルフィン酸類など。
(2)無機酸:
硝酸、塩酸、過塩素酸、次亜塩素酸、二酸化塩素、フッ酸、硫酸、発煙硫酸、ホウ酸、ヒ酸、亜ヒ酸、ピロヒ酸、リン酸、亜リン酸、次亜リン酸、オキシ塩化リン、オキシ臭化リン、硫化リン、三塩化リン、三臭化リン、五塩化リン、青酸、クロム酸、無水硝酸、無水硫酸、酸化ホウ素、五酸化ヒ酸、五酸化燐、無水クロム酸、塩化スルフリル、シリカゲル、シリカアルミナ等。
以上、具体的に列記したが本発明で使用する酸は上記の例示化合物だけに限定されるものではなく、また1種類でも2種類以上を混合して使用しても構わない。例示化合物の中で比較的好ましいものは無機酸であり、中でも塩酸、硫酸、硝酸、ホウ酸、リン酸が好ましい。酸は、直接加えてもいいが、水溶液(好ましくは5重量%〜飽和濃度、もしくは、飽和濃度が5重量%以下のものは飽和濃度)として加えるのが好ましい。

酸の使用量は、第一工程と第二工程で使用した塩基の塩基総量(塩基総量=塩基の価数×塩基のモル数)に対する酸の酸総量(酸総量=酸の価数×酸のモル数)の比が0.1〜10が好ましく、0.5〜5が更に好ましく、0.9〜3が最も好ましい。
第三工程では、酸またはその水溶液を第二工程の反応生成液に撹拌下で、好ましくは1分〜6時間、更に好ましくは10分〜3時間、最も好ましくは30分〜2時間かけて滴下し、pHを好ましくは1〜7にする。滴下終了後、好ましくは1分〜3時間、更に好ましくは2分〜2時間、最も好ましくは5分〜1時間、反応液をさらに撹拌して反応を継続するのが好ましい。
反応終了後、ビシナルジチオールは溶媒抽出、洗浄、溶媒留去などの公知の操作により第三工程の反応生成液から分離される。抽出溶媒としては、エーテル系溶媒、芳香族炭化水素系溶媒、脂肪族炭化水素系溶媒、ハロゲン化炭化水素系溶媒等が挙げられる。抽出溶媒は、酸を添加する前に反応生成液に加えてもよい。
抽出溶媒の具体例を以下に示す。
(1)エーテル系溶媒
エチルエーテル、ジクロロエチルエーテル、イソプロピルエーテル、n−ブチルエーテル、イソアミルエーテル、n−へキシルエーテル、メチルフェニルエーテル、エチルフェニルエーテル、n−ブチルフェニルエーテル、アミルフェニルエーテルなど。
(2)芳香族炭化水素系溶媒
ベンゼン、トルエン、キシレンなど。
(3)脂肪族炭化水素系溶媒
ヘプタン、ペンタン、オクタン、ノナン、デカンなど。
(4)ハロゲン化炭化水素系溶媒
塩化メチル、塩化エチレン、クロロホルム、四塩化炭素、塩化エチル、1,1,1−トリクロロエタン、クロロベンゼンなど。
以上、具体的に列記したが、本発明で使用する抽出溶媒は上記の例示化合物だけに限定されるものではなく、また、1種類でも2種類以上を混合して使用してもかまわない。例示化合物の中でも比較的好ましいものは芳香族炭化水素系溶媒であり、中でもトルエンが好ましい。
第一工程から第三工程に至るまで、反応系内に酸素が存在するとオリゴマー等の副生物が生成しやすくなり、目的化合物の純度が低下する。空気下の反応においてもある程度の純度で目的生成物は得られるが、反応雰囲気の酸素濃度は5%以下にすることが好ましく、3%以下にすることが更に好ましく、1%以下にすることが最も好ましい。
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、化合物中の純度分析は以下の方法で行った。
純度分析はGPCにより行った。分析条件は以下の通りである。
カラム:Shodex GPC K−801、温度:35℃
移動相:クロロホルム、検出器:RID
実施例1
(第一工程)攪拌機、温度計、冷却管、滴下ロート、窒素導入管を装着したフラスコにメタノール180g、水酸化ナトリウム(固形、含量93%)0.290g(6.74mmol)、チオ酢酸61.5g(808mmol)を入れた。フラスコに窒素ガスを吹き込みながら攪拌を行い均一溶液にするとともに、系内の酸素濃度を1%以下とした。その後、液温を50℃まで昇温し、50℃を保ちながらビス(β−エピチオプロピル)スルフィド60.0g(336mmol)を滴下した。滴下終了後、更に50℃で4時間反応を行った。
(第二工程)反応後、液温を10℃まで降温し、10℃を保ちながら40%水酸化ナトリウム水溶液84.1g(841mmol)を滴下した。滴下終了後、更に10℃で9時間反応を行った。
(第三工程)反応後、トルエン180gを加え、10℃を保ちながら12%塩酸水溶液270.5g(890mmol)を滴下して中和酸性化し、その後トルエン層を分液した。次いで、トルエン層を1%炭酸水素ナトリウム水溶液120gで1回洗浄し、更に水12
0gで2回洗浄した。得られたトルエン層のトルエンを留去することにより、下記構造式で表される淡黄色液状の1,2,6,7−テトラメルカプト−4−チアヘプタン78g(粗体収率94%、純度94%)を得た。
Figure 2005263791
実施例2
実施例1の第一工程で用いた水酸化ナトリウム(6.74mmol)をナトリウムメトキサイド(6.74mmol)に替えた以外は、実施例1と全く同様に反応を行った。結果を表1に示した。
実施例3
実施例1の第二工程、第三工程の温度を10℃から30℃に替えた以外は、実施例1と全く同様に反応を行った。結果を表1に示した。
実施例4
実施例1で行った窒素ガスの吹き込みを行わなかった以外は、実施例1と全く同様に反応を行った。結果を表1に示した。
Figure 2005263791

Claims (7)

  1. 1分子中に1個以上のチイラン環を有するエピスルフィド化合物と、チオカルボンS−酸とを反応させる工程を含むことを特徴とするビシナルジチオールの製造方法。
  2. エピスルフィド化合物が一般式(1)で表されることを特徴とする、請求項1記載のビシナルジチオールの製造方法。
    Figure 2005263791

    (式中、R〜Rはそれぞれ炭素数1〜10の炭化水素基または水素であり、mは0〜6の整数、nは0〜4の整数である。)
  3. チオカルボンS−酸が一般式(2)で表されることを特徴とする、請求項1または2記載のビシナルジチオールの製造方法。
    Figure 2005263791

    (式中、Rは炭素数1〜7の炭化水素基を表す。)
  4. エピスルフィド化合物とチオカルボンS−酸とを塩基の存在下反応させチオカルボン酸S−エステルを製造する第一の工程、該チオカルボン酸S−エステルを塩基の存在下で加水分解し、メルカプチドを製造する第二の工程、および該メルカプチドを酸によりビシナルジチオールに変換する第三の工程を含むことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のビシナルジチオールの製造方法。
  5. 第一工程および第二工程で使用される塩基が、アンモニア、アミン、ホスフイン、金属アルコラート、金属水素化物、金属水酸化物、金属炭酸塩および金属硫化物から選ばれた1種以上である請求項4記載のビシナルジチオールの製造方法。
  6. 第二工程および第三工程の反応をそれぞれ−20℃〜40℃の範囲で行うことを特徴とする請求項4または5記載のビシナルジチオールの製造方法。
  7. 第一工程〜第三工程の反応を、酸素濃度が5体積%以下の雰囲気下で行うことを特徴とする請求項4〜6のいずれかに記載のビシナルジチオールの製造方法。
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