JP2005263517A - Hud用コンバイナー付き車両用ガラス板、およびその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】 特に斜め入射光の反射を抑えた低反射膜を有し、しかもHUD用コンバイナーを備えた車両用ガラス板において、高次元で低反射膜とコンバイナー機能を両立できる車両用ガラス板の提供する。
【解決手段】 一主表面に2層からなる低反射膜が形成されている車両用ガラス板であって、前記低反射膜は、第1層の屈折率n1が1.75〜2.10で膜厚d1が100〜140nm、第2層の屈折率n2が1.4〜1.47で膜厚d2が80〜120nmであり、前記第1層の所定領域にて、前記第2層が形成されず前記第1層が露出され、HUD用コンバイナーとなる増反射膜として機能し、前記増反射膜部分の膜厚dCが80〜120nmであり、かつ前記第1層の膜厚d1と異なっていることを特徴とするHUD用コンバイナー付き車両用ガラス板である。
【選択図】 図2
【解決手段】 一主表面に2層からなる低反射膜が形成されている車両用ガラス板であって、前記低反射膜は、第1層の屈折率n1が1.75〜2.10で膜厚d1が100〜140nm、第2層の屈折率n2が1.4〜1.47で膜厚d2が80〜120nmであり、前記第1層の所定領域にて、前記第2層が形成されず前記第1層が露出され、HUD用コンバイナーとなる増反射膜として機能し、前記増反射膜部分の膜厚dCが80〜120nmであり、かつ前記第1層の膜厚d1と異なっていることを特徴とするHUD用コンバイナー付き車両用ガラス板である。
【選択図】 図2
Description
本発明は、ヘッドアップディスプレイ(HUD)用コンバイナーが設けられた車両用ガラス板、およびその製造方法に関する。特に、自動車のウインドシールドガラスであって、低反射膜が設けられている車両用ガラス板のHUD用コンバイナーに、好ましく適用しうる技術に関する。
(1)特開平6−305775号公報には、「ガラス板状体の表面に形成した低反射薄膜において、該低反射薄膜を構成する薄膜のうち、ガラス面から第1層目の薄膜が所定領域で少なくとも露出するようにし、該所定領域が最外表層薄膜の比較的低い屈折率より高い屈折率の薄膜でなるようにすることを特徴とする車輌用の窓ガラス」なる技術が開示されている。
さらに、「前記低反射薄膜が、異なる屈折率を有する薄膜を2層または3層に被覆積層して」なり、「前記構成の車輌用の窓ガラスを、ヘツドアツプデイスプレイ用コンバイナーガラスとして用いること」が示されている。
(2)特開平6−340450号公報には、「ガラス板状体の表面に形成した低反射薄膜において、該低反射薄膜上の所定領域に、あるいは該低反射薄膜を構成する薄膜のうち、ガラス面から第1層目の薄膜を所定領域で少なくとも露出させ、該所定領域が最外表層薄膜の比較的低い屈折率より高い屈折率の薄膜でなるようにし、該所定領域の全域または部分域に、少なくとも1層の積層薄膜を被覆して成ることを特徴とする車輌用の窓ガラス」なる技術が開示されている。
さらに、「前記低反射薄膜上に少なくとも1層の積層薄膜を被覆した所定領域が、波長選択反射性膜」であり、「前記低反射薄膜でガラス面から第1層目の薄膜を少なくとも露出した所定領域が、非波長選択反射性膜」であるとされる。
(3)上記(1)と(2)を基礎出願とする米国特許であるUS5,496,621では、第1層が屈折率が1.80〜2.10で膜厚が70〜230nm、第2層の屈折率が1.40〜1.50で膜厚が110〜130nm等の数値限定がされている。
(4)実用新案登録第2500821号公報では、HUDコンバイナーとして、「屈折率が1.8〜2.3の金属酸化物からなる透明な増反射幕を400〜1500Å(40〜150nm)の光学膜厚で形成」する技術が示されている。
さらに、本出願人は、特開2003−48756号公報にて、「一主表面に2層からなる低反射膜が形成されている車両用ガラス板であって、前記低反射膜は、第1層の屈折率n1が1.70〜1.80で物理膜厚d1が110〜130nm、第2層の屈折率n2が1.40〜1.47で物理膜厚d2が81〜100nmであり、前記低反射膜の所定領域において前記第2層が形成されておらず、前記第1層を増反射膜とし、前記領域をHUD用コンバイナーとしたことを特徴とするHUD用コンバイナー付き車両用ガラス板」を開示している。
上記(1)では、低反射膜の膜厚や屈折率は、請求項では何も限定されておらず、2層構成の低反射膜としては、第1層目の薄膜の屈折率n1が1.8〜2.1で膜厚d1が700〜2300Å(70〜230nm)、第2層の薄膜の屈折率n2が1.4から1.5で膜厚d2が1100〜1300Å(110〜130nm)の数値が、例示されているだけである。
上記(2)でも、低反射膜の膜厚や屈折率は、請求項では何も限定されておらず、2層構成の低反射膜としては、同様の数値範囲が例示されているだけである。
また上記(1)や(2)では、低反射膜をガラス板の片面にのみ形成する必要があるので、ガラス板の片面のみを全面マスキングテープで覆う必要がある。
さらに、第1層目の薄膜を所定領域で少なくとも露出させる方法としては、まず浸漬法にて低反射膜を形成し、その後アルコキシド分解ペーストを2層目の不要な領域にスクリーン印刷し焼成する。焼成により焼き付いたアルコキシド分解ペーストを、水酸化ナトリウムと硫酸の水溶液にて除去する剥離処理方法が示されている。
上述した(1)や(2)の剥離処理方法では、2層目のみをきれいに除去することが困難である。またきれいに除去できたとしても、工程が多いためコストアップとなり、好ましくない。また上記(3)も、(2)と同様の方法である。
例えば、2層からなる低反射膜をある領域のすべて切り欠いて、その部分に上記(4)で示された膜をコーティングする方法も考えられる。しかし、工程が増えてコストアップとなり、好ましくない。
なお、特開2003−48756号公報に開示した技術において、さらに改善すべき点があった。すなわち、形成される第1層は、所定領域の増反射膜として機能し、さらに2層式低反射膜の中屈折率層としても、機能しなければならない。つまり、2つの機能をバランスさせながら満足する必要があった。
さらに、増反射膜(コンバイナー)部分と低反射膜部分との反射色調の差を、より小さくすることが望まれていた。
そこで本発明は上述した状況を鑑み、特に斜め入射光の反射を抑えた低反射膜を有し、しかもHUD用コンバイナーを備えた車両用ガラス板において、高次元で低反射膜とコンバイナー機能を両立しうる車両用ガラス板の提供を目的とする。さらに本発明は、このようなHUD用コンバイナー付き車両用ガラス板の製造方法の提供を目的とする。
まず、本発明によるHUD用コンバイナー付き車両用ガラス板は、2層からなる低反射膜を構成する第1層目を、HUD用コンバイナーとするべく増反射膜となるように、屈折率および膜厚を特定し、さらに、増反射膜部分の膜厚を第1層の膜厚と異ならせ、その境界部分の膜厚が連続的に変化させていることを特徴とする。
すなわち、本発明によるHUD用コンバイナー付き車両用ガラス板は、請求項1に記載の発明として、
一主表面に2層からなる低反射膜が形成されている車両用ガラス板であって、
前記低反射膜は、第1層の屈折率n1が1.75〜2.10で膜厚d1が100〜140nm、第2層の屈折率n2が1.4〜1.47で膜厚d2が80〜120nmであり、
前記第1層の所定領域にて、前記第2層が形成されず前記第1層が露出され、HUD用コンバイナーとなる増反射膜として機能し、
前記増反射膜部分の膜厚dCが80〜120nmであり、かつ前記第1層の膜厚d1と異なっていることを特徴とするHUD用コンバイナー付き車両用ガラス板である。
一主表面に2層からなる低反射膜が形成されている車両用ガラス板であって、
前記低反射膜は、第1層の屈折率n1が1.75〜2.10で膜厚d1が100〜140nm、第2層の屈折率n2が1.4〜1.47で膜厚d2が80〜120nmであり、
前記第1層の所定領域にて、前記第2層が形成されず前記第1層が露出され、HUD用コンバイナーとなる増反射膜として機能し、
前記増反射膜部分の膜厚dCが80〜120nmであり、かつ前記第1層の膜厚d1と異なっていることを特徴とするHUD用コンバイナー付き車両用ガラス板である。
請求項2に記載の発明として、
請求項1に記載のHUD用コンバイナー付き車両用ガラス板において、
d1>dCであるHUD用コンバイナー付き車両用ガラス板である。
請求項1に記載のHUD用コンバイナー付き車両用ガラス板において、
d1>dCであるHUD用コンバイナー付き車両用ガラス板である。
請求項3に記載の発明として、
請求項1または2に記載のHUD用コンバイナー付き車両用ガラス板において、
前記増反射膜と前記第1層の境界部分の膜厚が変化していることを特徴とするHUD用コンバイナー付き車両用ガラス板である。
請求項1または2に記載のHUD用コンバイナー付き車両用ガラス板において、
前記増反射膜と前記第1層の境界部分の膜厚が変化していることを特徴とするHUD用コンバイナー付き車両用ガラス板である。
請求項4に記載の発明として、
請求項1〜3いずれか1項に記載のHUD用コンバイナー付き車両用ガラス板において、
前記低反射膜の60°入射における膜面可視光線反射率が11%以下で、コンバイナー領域の膜面可視光線反射率が少なくとも15%であるHUD用コンバイナー付き車両用ガラス板である。
請求項1〜3いずれか1項に記載のHUD用コンバイナー付き車両用ガラス板において、
前記低反射膜の60°入射における膜面可視光線反射率が11%以下で、コンバイナー領域の膜面可視光線反射率が少なくとも15%であるHUD用コンバイナー付き車両用ガラス板である。
請求項5に記載の発明として、
請求項1〜4いずれか1項に記載のHUD用コンバイナー付き車両用ガラス板において、
前記車両用ガラス板のガラス面における反射色調をLab表色系で表したとき、前記低反射膜領域と前記コンバイナー領域との反射色調の差をΔaとしたとき、Δaの絶対値が2以下であるHUD用コンバイナー付き車両用ガラス板である。
請求項1〜4いずれか1項に記載のHUD用コンバイナー付き車両用ガラス板において、
前記車両用ガラス板のガラス面における反射色調をLab表色系で表したとき、前記低反射膜領域と前記コンバイナー領域との反射色調の差をΔaとしたとき、Δaの絶対値が2以下であるHUD用コンバイナー付き車両用ガラス板である。
請求項6に記載の発明として、
請求項1〜5いずれか1項に記載のHUD用コンバイナー付き車両用ガラス板において、
前記車両用ガラス板のガラス面における反射色調をLab表色系で表したとき、前記低反射膜領域と前記コンバイナー領域との反射色調の差をΔbとしたとき、Δbの絶対値が6以下であるHUD用コンバイナー付き車両用ガラス板である。
請求項1〜5いずれか1項に記載のHUD用コンバイナー付き車両用ガラス板において、
前記車両用ガラス板のガラス面における反射色調をLab表色系で表したとき、前記低反射膜領域と前記コンバイナー領域との反射色調の差をΔbとしたとき、Δbの絶対値が6以下であるHUD用コンバイナー付き車両用ガラス板である。
請求項7に記載の発明として、
請求項1〜6いずれか1項に記載のHUD用コンバイナー付き車両用ガラス板において、
前記合わせガラスは、2枚のグリーンガラスを中間膜を介して接着されているHUD用コンバイナー付き車両用ガラス板である。
請求項1〜6いずれか1項に記載のHUD用コンバイナー付き車両用ガラス板において、
前記合わせガラスは、2枚のグリーンガラスを中間膜を介して接着されているHUD用コンバイナー付き車両用ガラス板である。
請求項8に記載の発明として、
請求項1〜7いずれか1項に記載のHUD用コンバイナー付き車両用ガラス板において、
前記低反射膜の第1層は、SiO2とTiO2が混合された、あるいはTiO2のみからなる層であり、第2層はSiO2を主成分とする層であるHUD用コンバイナー付き車両用ガラス板である。
請求項1〜7いずれか1項に記載のHUD用コンバイナー付き車両用ガラス板において、
前記低反射膜の第1層は、SiO2とTiO2が混合された、あるいはTiO2のみからなる層であり、第2層はSiO2を主成分とする層であるHUD用コンバイナー付き車両用ガラス板である。
請求項9に記載の発明として、
一主表面に2層からなる低反射膜を形成した車両用ガラス板の製造方法であって、
前記低反射膜は、ゾル−ゲル溶液を用いてフレキソ印刷法にて形成し、第1層の屈折率n1が1.75〜2.10で膜厚d1が100〜140nm、第2層の屈折率n2が1.4〜1.47で膜厚d2が80〜120nmとなるようにし、
前記低反射膜第1層は、第1フレキソ版にて形成し、
前記低反射膜第2層は、所定領域に対応する部分を凹部とした第2フレキソ版にて形成し、前記所定領域に第2層を塗布しないようにして増反射膜とし、前記領域をHUD用コンバイナーとし、
前記増反射膜領域と前記低反射膜領域とにおける前記第1フレキソ版の表面形状を異ならせて、インク保持量を異なるようにしたことを特徴とするHUD用コンバイナー付き車両用ガラス板の製造方法である。
一主表面に2層からなる低反射膜を形成した車両用ガラス板の製造方法であって、
前記低反射膜は、ゾル−ゲル溶液を用いてフレキソ印刷法にて形成し、第1層の屈折率n1が1.75〜2.10で膜厚d1が100〜140nm、第2層の屈折率n2が1.4〜1.47で膜厚d2が80〜120nmとなるようにし、
前記低反射膜第1層は、第1フレキソ版にて形成し、
前記低反射膜第2層は、所定領域に対応する部分を凹部とした第2フレキソ版にて形成し、前記所定領域に第2層を塗布しないようにして増反射膜とし、前記領域をHUD用コンバイナーとし、
前記増反射膜領域と前記低反射膜領域とにおける前記第1フレキソ版の表面形状を異ならせて、インク保持量を異なるようにしたことを特徴とするHUD用コンバイナー付き車両用ガラス板の製造方法である。
請求項10に記載の発明として、
請求項9に記載のHUD用コンバイナー付き車両用ガラス板の製造方法において、
さらに、前記増反射膜領域と前記第1層の低反射膜領域との境界部に対応する部分における前記第1フレキソ版の表面形状を変化させたHUD用コンバイナー付き車両用ガラス板の製造方法である。
請求項9に記載のHUD用コンバイナー付き車両用ガラス板の製造方法において、
さらに、前記増反射膜領域と前記第1層の低反射膜領域との境界部に対応する部分における前記第1フレキソ版の表面形状を変化させたHUD用コンバイナー付き車両用ガラス板の製造方法である。
請求項11に記載の発明として、
請求項9または10に記載のHUD用コンバイナー付き車両用ガラス板の製造方法において、
前記低反射膜の第1層を、SiO2とTiO2が混合された、あるいはTiO2のみからなる層とし、第2層をSiO2を主成分とする層としたHUD用コンバイナー付き車両用ガラス板の製造方法である。
請求項9または10に記載のHUD用コンバイナー付き車両用ガラス板の製造方法において、
前記低反射膜の第1層を、SiO2とTiO2が混合された、あるいはTiO2のみからなる層とし、第2層をSiO2を主成分とする層としたHUD用コンバイナー付き車両用ガラス板の製造方法である。
請求項12に記載の発明として、
請求項9〜11のいずれか1項に記載のHUD用コンバイナー付き車両用ガラス板の製造方法において、
前記第1層を、モル比でSiO2:TiO2=60:40〜0:100であるSiO2とTiO2が混合された層とし、前記第2層はSiO2の層としたHUD用コンバイナー付き車両用ガラス板の製造方法である。
請求項9〜11のいずれか1項に記載のHUD用コンバイナー付き車両用ガラス板の製造方法において、
前記第1層を、モル比でSiO2:TiO2=60:40〜0:100であるSiO2とTiO2が混合された層とし、前記第2層はSiO2の層としたHUD用コンバイナー付き車両用ガラス板の製造方法である。
まず、車両用ガラス板、特にウインドシールドガラスの用途に好ましく適用される低反射膜について検討しておく。
一般に、透明基板に形成される低反射膜は、その層の数によりいくつかのグループに分けられる。すなわち、単層構成,2層構成,3層構成や多層構成である。
まず単層構成の低反射膜は、例えば透明基板としてガラス板上に、該ガラス板の屈折率より低い屈折率の膜を形成している。実用的な低屈折率材料としては、MgF2やSiO2が挙げられる。
このような単層構成では、反射防止の効果が十分でないので、ガラス板の屈折率より高い屈折率層と低い屈折率層の2層を組み合わせた2層構成の低反射膜が用いられている。
さらに、2層構成でも反射防止の効果が十分でない場合は、低屈折率層と中屈折率層と高屈折率層からなる3層構成としたり、さらに4層以上の構成からなる低反射膜も用いられる。
なお、いずれにせよ、低反射膜の最上層には、透明基板の屈折率より低い屈折率層を形成することになる。例えば、ガラス板に対する低屈折率材料は、上述したMgF2やSiO2のみが実用的である。しかし、MgF2では、耐久性や耐候性が悪く、ガラス板の曲げ工程における加熱には耐えられないので、このような用途に適用可能な材料は、実質的にSiO2のみとなる。
ここで、車両用の曲げガラス板への低反射膜を適用する場合を考えると、膜厚の均一性などから、平板の状態で低反射膜を形成し、その後加熱してガラス板を曲げるのが好ましい。本発明のHUD用コンバイナー付き車両用ガラス板は、曲げ加工されていることが好ましい。
また、広い面積にSiO2を安価にコーティングするには、好ましい方法の一つとして、ロールコート法を挙げることができる。さらにこの場合、SiO2層はゾル−ゲル法によるものが好ましい。またSiO2層を多孔質状として、見かけ上の屈折率を下げてもよい。さらにSiO2層に、低屈折率の無機微粒子を混入させて、屈折率を下げてもよい。第2層の屈折率を下げると、反射防止の効果が大きくなる。なお第2層はSiO2を主成分とするが、B2O3やAl2O3を含ませてもよい。
比較的簡単な膜構成で、反射防止の効果が大きな2層構成の低反射膜において、低屈折率材料であるn2=1.46のSiO2と組み合わせられる高屈折率材料の屈折率n1を算出する。n1とn2の関係の一例としては、ガラスの屈折率(=1.52)をng、空気の屈折率(=1.0)をn0とすると、次式で与えられる。この式からn1を求めると、n1=1.80となる。
(数1)
n1=[(n2)2×ng/n0]1/2
n1=[(n2)2×ng/n0]1/2
ゾル−ゲル法にて成膜可能な単一材料において、n1=1.80付近の屈折率を有する適切な材料はない。そこでいずれもゾル−ゲル法にて成膜可能な、n=1.46のSiO2とn=2.2のTiO2とを混合した層を適用することが考えられる。さらにn=1.95のZrO2や、CeO2、Bi2O3などを含ませて、高屈折率層を形成してもよい。
本発明に用いられる2層からなる低反射膜には、斜めからの入射光に対する反射低減機能を持たせるべく、設計されている。しかも、2層からなる低反射膜を構成する第1層目が、HUD用コンバイナーとしても活用できるように、屈折率を特定している。また、第1層目の所定部分は、他の部分と膜厚を異ならせて、反射率を高めた増反射膜としている。この結果、HUD用コンバイナーとして有効に機能させることができる。さらに、増反射膜の膜厚を低反射膜の第1層部分と異ならせているため、反射色調の差を小さくすることができる。
さらに、第2層の屈折率および膜厚も、第1層目の屈折率および膜厚を考慮して、低反射膜としても機能するように設計されている。しかも低反射膜として、ニュートラルな色調が得られるようにも考慮されている。
また、本発明によるHUD用コンバイナー付き車両用ガラス板は、低反射膜の60°入射における膜面可視光線反射率が11%以下となるようにしている。このような反射率であれば、ウインドシールドの用途における反射低減の効果を得ることができる。
さらに、本発明によるHUD用コンバイナー付き車両用ガラス板は、コンバイナー部の膜面可視光線反射率を少なくとも15%であるようにしている。このような反射率であれば、当該部分をコンバイナーとして機能させることができる。
上述のような斜め入射光の反射を低減させる低反射膜について、本出願人は、特開2000−256042号公報にて、請求項1の発明として、「透明ガラス基体の少なくとも片側表面に、ガラス面側から数えて第1層の膜の屈折率(n1)が1.65〜2.20で、かつ膜厚が110〜150nmである薄膜層であり、次いで該第1層薄膜上に、第2層として屈折率(n2)が1.37〜1.49でかつ膜厚が81〜100nmであるシリカを主成分とする薄膜層を被覆積層してなり、可視光を膜面側から12度および60度の入射角でそれぞれ入射したときの反射光がそれぞれ22%以下および10%以下の刺激純度を有する自動車用低反射ガラス物品」なる技術を開示している。
さらに、斜めからの入射光に対する反射低減機能を持たせたガラスとして、特開平8−152501号には、「フロントガラスとして用いた際、反射を低減し干渉色の呈色が少なくかつ高耐久性の薄膜で以て、ダッシュボードもしくはその周辺部の映り込み現象と人や環境に対するギラツキ感を低減し、ドライバーの透視性を高め、誤認や眼の疲労等を防いで安全性を向上し、人や環境等に優しいガラスを得る」ことを目的として、以下の技術が開示されている。
すなわち、「透明ガラス基板の少なくとも片側表面に、ガラス面から第1層目に屈折率1.7 〜1.8 、膜厚90〜110nm 、第2層目に屈折率1.4〜1.5 、膜厚105 〜130nm の薄膜層を被覆積層してなり、該表面の垂直線に対し入射角50〜70°で入射し反射する反射率がガラス面の反射率に比し、4.5 〜6.5 %低減するようにせしめ、しかも前記50〜70°の入射光に対する反射光の刺激純度を18%以下としたことで成る車輌用反射低減ガラス」である。
なお、本発明に用いるグリーンガラスは、Fe2O3換算で少なくとも0.5質量%の酸化鉄を、より好ましくは少なくとも0.52質量%の酸化鉄を含むソーダライムガラス組成からなるガラスである。
また、本明細書でいうクリアガラスは、Fe2O3換算で、0.2質量%未満の酸化鉄を含むソーダライムガラス組成からなるガラスである。
また、本明細書でいうクリアガラスは、Fe2O3換算で、0.2質量%未満の酸化鉄を含むソーダライムガラス組成からなるガラスである。
以上説明したように、本発明によるHUD用コンバイナー付き車両用ガラス板では、2層からなる低反射膜を構成する第1層の所定領域にて第2層を形成しないようにし、前記第1層を露出させることにより増反射膜とし、その膜厚を第1層の膜厚とは異ならせたことを特徴とする。
このため、第2層を形成しない所定領域をコンバイナーとして機能させることができる。その上、増反射膜と低反射膜のそれぞれについて、最適な光学膜設計を行うことができる。さらに、増反射膜と低反射膜との反射色調の差を小さくすることができる。
さらに、本発明では、増反射膜(コンバイナー)領域と低反射膜領域との境界部分における膜厚を、連続的に変化させたことを特徴とする。このため、コンバイナー部分の視覚的な違和感が和らげられる。
また本発明によれば、HUD用コンバイナー付き低反射膜を、第1層用と第2層用のフレキソ版をそれぞれ用意さえすれば、通常の低反射膜形成の工程のみで得ることができる。つまり、工程の増加がないので、HUD用コンバイナー付き車両用ガラス板を低コストで提供することができる。
第1層コート用のフレキソ版は、増反射膜領域と低反射膜領域において、その表面に多数設けた凹部の大きさを互いに異ならせておくだけで、2つの領域の膜厚を変えることができる。
さらに、本発明によるHUD用コンバイナー付き車両用ガラス板は、斜め入射光の反射を抑えた低反射膜を有しており、自動車のウインドシールドガラスに適用された場合、ダッシュボードの写り込みを抑えることができる。
またこの車両用ガラス板を、2枚のグリーンガラスと中間膜からなる合わせガラスとした場合、グリーンガラスによる日射透過率が55%以下という優れた日射遮蔽性を有しつつ、70%以上という可視光線透過率の規格を満足できる。さらに、HUD用コンバイナーを併せて備えた車両用ガラス板である。
図1は、本発明によるHUD用コンバイナー付き車両用ガラス板1を、車内側から平面視した模式図である。車両用ガラス板1は、例えば、ウインドシールド用合わせガラス10である。運転席前方に設けられた所定領域3が、HUD用コンバイナーとなる。
図2は、図1のA−Aにおけるコンバイナー部の断面図である。合わせガラス10は、2枚のガラス板11,12を、ポリビニルブチラール(PVB)などの中間膜13を介して、接着されている。なお図2において、車両用ガラス板1の紙面左側が車外であり、紙面右側が車内である。
車内側に配置されるガラス板11には、まず、2層式低反射膜の第1層で中屈折率を有する膜21が形成されている。さらに、この第1層上に、第2層で低屈折率を有する膜22が形成され、2層からなる低反射膜2が構成されている。なお、HUD用コンバイナーとする所定領域3には、第2層を形成しないようにしてある。
コンバイナーとする第1層の所定領域3は、その膜厚dCを低反射膜領域の厚みd1とは異なるようにしている。具体的には、光学膜設計の観点から、増反射膜とするために、低反射膜領域の第1層の厚みより、薄くなるようにしている。すなわち、dC<d1である。
さて、2層からなる低反射膜を構成する第1層は、上述した検討を考慮して、その屈折率n1を1.75から2.10とし、その膜厚d1を100〜140nmとしている。さらに、第2層は、その屈折率n2を1.4〜1.47とし、その膜厚d2を80〜120nmとしている。また、コンバイナー領域はその膜厚dCを80〜120nmとし、さらにdC<d1としている。
ここで、増反射膜について検討しておく。
ガラス基板の屈折率ng(=1.5)より大きな屈折率nを持ち、膜厚dの光学薄膜をガラス基板上に形成すると、この膜は増反射膜として機能する。光がガラス基板の法線方向から入射するとき、光学膜厚ndが波長λの1/4倍,3/4倍,・・・のとき、反射率が極大となることが知られている。この反射率の光学膜厚による変化の様子を図3に示す。図3において、横軸は光学膜厚(nd)、縦軸は反射率(R)であり、光学薄膜の屈折率はn=1.2〜2.0の場合が示してある。
ガラス基板の屈折率ng(=1.5)より大きな屈折率nを持ち、膜厚dの光学薄膜をガラス基板上に形成すると、この膜は増反射膜として機能する。光がガラス基板の法線方向から入射するとき、光学膜厚ndが波長λの1/4倍,3/4倍,・・・のとき、反射率が極大となることが知られている。この反射率の光学膜厚による変化の様子を図3に示す。図3において、横軸は光学膜厚(nd)、縦軸は反射率(R)であり、光学薄膜の屈折率はn=1.2〜2.0の場合が示してある。
(斜め入射時のコンバイナー部の膜厚の検討)
さて、本発明によるコンバイナーは、斜め入射の光を効率よく反射するように設計している。そこで、増反射膜における入射角の違いによる最適な膜厚について検討しておく。
光がガラス基板の法線方向から入射したとき、最大の反射率となる膜厚をd0とし、法線方向からθの角度で入射したとき、最大の反射率となる膜厚をdθとする。膜の屈折率をnとしたとき、dθは以下の式のように表される。
dθ=d0/(1−sin2θ/n2)1/2
ここで、dθ/d0=kとおき、入射角度を60°として、n=1.75〜1.95のときのkを算出する。その結果を表1に示す。
さて、本発明によるコンバイナーは、斜め入射の光を効率よく反射するように設計している。そこで、増反射膜における入射角の違いによる最適な膜厚について検討しておく。
光がガラス基板の法線方向から入射したとき、最大の反射率となる膜厚をd0とし、法線方向からθの角度で入射したとき、最大の反射率となる膜厚をdθとする。膜の屈折率をnとしたとき、dθは以下の式のように表される。
dθ=d0/(1−sin2θ/n2)1/2
ここで、dθ/d0=kとおき、入射角度を60°として、n=1.75〜1.95のときのkを算出する。その結果を表1に示す。
(表1)
―――――――――――――――
n k
−−−−−−−−−−−−−−
1.75 1.151
1.79 1.143
1.80 1.141
1.85 1.132
1.90 1.123
1.95 1.116
―――――――――――――――
―――――――――――――――
n k
−−−−−−−−−−−−−−
1.75 1.151
1.79 1.143
1.80 1.141
1.85 1.132
1.90 1.123
1.95 1.116
―――――――――――――――
この算出結果を用いて、コンバイナーの斜め入射時におけるλ/4での光学膜厚を表すと、
λ/4=(dC/k)・n
となる。したがって、
dC=k・λ/(4n)
となる。
λ/4=(dC/k)・n
となる。したがって、
dC=k・λ/(4n)
となる。
さらに、ガラス板の法線方向から光が入射したときの増反射膜の膜厚は、以下に示すパラメータにより行うことが好ましい。すなわち、増反射膜の反射率が最大となる膜厚をdC0とし、増反射膜の屈折率をnとし、ガラス板の法線方向から角度θで光が入射したとき、コンバイナー領域の膜厚dCθをdCθ=dC0/(1−sin2θ/n2)1/2、λを所定の波長(nm)としたときに、dCθ・n/λのパラメータにて増反射膜の膜厚を設計する。
(塗布溶液の調整)
つぎに、低反射膜を形成するための塗布溶液の調整について説明する。
エチルシリケート40 500gを、エチレングリコールモノエチルエーテル(エチルセロソルブ) 410gおよび0.1mol/Lの塩酸 90gにて加水分解し、さらに撹拌して、Siを含む溶液Aを調整した。
つぎに、低反射膜を形成するための塗布溶液の調整について説明する。
エチルシリケート40 500gを、エチレングリコールモノエチルエーテル(エチルセロソルブ) 410gおよび0.1mol/Lの塩酸 90gにて加水分解し、さらに撹拌して、Siを含む溶液Aを調整した。
チタニウムテトライソプロポキシド 65.5gとアセチルアセトン 64.1gとを混合し、Tiを含む溶液Bを調整した。
(第1層コーティング溶液)
この溶液Aと溶液Bとを、SiO2とTiO2のモル比がSiO2:TiO2=60:40〜34:66の割合となるように混合し、さらにエチレングリコールモノエチルエーテル溶媒にて適宜希釈して、第1層コーティング溶液Cを調整した。このとき、得られた層の屈折率は、1.75〜1.95となる。SiO2とTiO2のモル比と屈折率を表2に示す。
この溶液Aと溶液Bとを、SiO2とTiO2のモル比がSiO2:TiO2=60:40〜34:66の割合となるように混合し、さらにエチレングリコールモノエチルエーテル溶媒にて適宜希釈して、第1層コーティング溶液Cを調整した。このとき、得られた層の屈折率は、1.75〜1.95となる。SiO2とTiO2のモル比と屈折率を表2に示す。
(第2層コーティング溶液)
上述した溶液Aを、エチレングリコールモノエチルエーテル溶媒にて適宜希釈し、調整したものを、第2層コーティング溶液Dとした。
上述した溶液Aを、エチレングリコールモノエチルエーテル溶媒にて適宜希釈し、調整したものを、第2層コーティング溶液Dとした。
なお、SiO2とTiO2の比率を、モル比でSiO2:TiO2=60:40〜0:100となるように調整すれば、SiO2とTiO2が混合された層の屈折率n1を1.75〜2.20とすることができる。
なおゾル−ゲル法において、SiO2とTiO2は、出発原料であるそれぞれのアルコキシドを、種々の混合比で混ぜ合わせることが可能であり、その結果得られる混合膜の屈折率を自由に制御することができるので、好適である。また、この混合膜は耐久性に優れているので、好ましい。さらにSiO2とTiO2の出発原料であるアルコキシドは、ともに安定であり成膜性もよく、均質な膜が得られやすいので、好適である。さらに必要に応じて、ゾル−ゲル法にて成膜可能なZrO2(n=1.95)を、SiO2やTiO2に適宜混合させてもよい。
SiO2の出発原料であるシリコンアルコキシドとしては、シリコンメトキシド,シリコンエトキシドあるいはそれらのオリゴマー体などを挙げることができる。
TiO2の出発原料であるチタンアルコキシドとしては、チタンメトキシド,チタンエトキシド,チタンn-プロポキシド,チタンイソプロポキシド,チタンn-ブトキシド,チタンイソブトキシド,チタンメトキシプロポキシド,チタンステアリルオキシド,チタン2-エチルヘキシオキシドなどを例示することができる。チタンアルコキシド塩化物としては、チタンクロリドトリイソプロポキシド,チタンジクロリドジエトキシドなどが挙げられる。
スパッタリング法などの真空成膜法を適用する場合は、ThO2(n=1.8),SnO2(n=1.9),SiO(n=1.7〜2.0),ZrO2(n=2.1),CeO2(n=2.2),TiO2(n=2.4)などの材料を用いるとよい。なお、上述したゾル−ゲル法によるTiO2では、n=2.2程度の膜しか得られないが、このスパッタリング法によるTiO2では、n=2.4程度の膜が得られる。
なお増反射膜の屈折率が1.7未満であると、コンバイナーとして必要な反射率が得られない。また屈折率が2.4を越える増反射膜を得ることは、工業的に困難である。
(HUD用コンバイナー付き車両用ガラス板の製造例)
まず、SiO2とTiO2の比率を適宜調整した塗布溶液Cを、所定の寸法に切断され洗浄されたフロート法によるソーダライム珪酸塩ガラス板(グリーンガラス板:約0.53質量%の酸化鉄(Fe2O3換算)を含む)上に、周知のフレキソ印刷法にて塗布した。塗布に用いた印刷装置の模式的説明図を図4に示した。また、このとき用いた第1層用フレキソ版81を図5に模式的に示した。
まず、SiO2とTiO2の比率を適宜調整した塗布溶液Cを、所定の寸法に切断され洗浄されたフロート法によるソーダライム珪酸塩ガラス板(グリーンガラス板:約0.53質量%の酸化鉄(Fe2O3換算)を含む)上に、周知のフレキソ印刷法にて塗布した。塗布に用いた印刷装置の模式的説明図を図4に示した。また、このとき用いた第1層用フレキソ版81を図5に模式的に示した。
図5(a)の第1層用フレキソ版81の印刷面83において、コンバイナーを形成する部分84は、他の部分と表面形状を異ならせて、インク保持量が異なるようにしている。このように、本発明では、増反射膜領域の膜厚を低反射膜領域の膜厚より薄くするために、増反射膜領域に対応する部分のインク保持量が少なくなるようにしている。なお、図5(a)のB−Bにおける断面図を図5(b)に示した。
具体的には、第1層用フレキソ版81のコンバイナー対応領域84の表面に設けられた凹部において、その体積や密度を小さくするとよい。図6に、第1層用フレキソ版81のコンバイナー対応領域84の断面模式図を示した。図中(a)は凹部の深さを変えた例であり、(b)凹部の面積を変えた例である。(c)は増反射膜に対応する部分には、凹部を形成しない例である。
なお、図2のコンバイナー部の断面図では、増反射膜領域と低反射膜領域との間に、段差があるように描いている。これは模式的に示したものであって、実際には塗布溶液が粘性を有しているので、その表面張力によって、この段差は緩和されて、テーパー部分が存在する。
この塗布されたガラス板を、約300℃にて乾燥した。このようにして、第1層目を形成した。
つぎに、このガラス板に塗布溶液Dを、同様にフレキソ印刷法にて塗布した。このとき、第2層用フレキソ版82のコンバイナーとなる領域84には、塗布溶液Dが塗布されないように、切り欠きを設けておいた。第2層用フレキソ版82を図7に模式的に示した。塗布後、約300℃にて乾燥した。このようにして、第2層目を形成した。この結果、塗布溶液Dはコンバイナーとなる領域を除き、印刷面83を介して、ガラス板の主表面全面に塗布された。なお、図7(a)のC−Cにおける断面図を図7(b)に示した。
このガラス板を620〜630℃にて焼成し、さらに自動車用ガラスとして曲げ成形を行った。曲げ成形は、このガラス板と、同様の形状に加工された別のガラス板(グリーンガラス板)を積み重ねて自重曲げ型上に載せ、加熱炉内にて自重により行った。
この低反射膜付きガラス板の低反射膜の膜面側を車内側とし、別のガラス板を車外側として、さらに中間膜であるPVB膜を用いて、通常の合わせ工程を経て、低反射膜付きの曲げ合わせガラス板である、HUD用コンバイナー付き車両用ガラス板を得た(図1参照)。なお、低反射膜面におけるコンバイナー部の境界部分は、所定の位置に正確に形成されており、しかも外観も良好であった。
(実施例1−1〜3−3)
各実施例における合わせガラスの構成、第1層の屈折率、SiO2:TiO2のモル比、第1層の膜厚(HUD部,低反射部)、第2層の膜厚を表2に示す。また、各実施例における光学性能を表3に示す。なお透過率は0°入射の測定値であり、反射率は60°入射の測定値である。ただし、コンバイナー部については膜面のみの反射率である。
各実施例における合わせガラスの構成、第1層の屈折率、SiO2:TiO2のモル比、第1層の膜厚(HUD部,低反射部)、第2層の膜厚を表2に示す。また、各実施例における光学性能を表3に示す。なお透過率は0°入射の測定値であり、反射率は60°入射の測定値である。ただし、コンバイナー部については膜面のみの反射率である。
なお反射色調は、Lab表色系により表した。本明細書における反射色調とは、HUD用コンバイナー付き車両用ガラス板において、車外側から見たときの車両用ガラス板のガラス面の反射色調をいう。言い換えると、この車両用ガラス板のガラス面、すなわち低反射膜が形成されていない主表面での反射色調である。
さらに、上述したように、増反射膜における60°の斜め入射を考慮した光学膜厚を表4に示す。
表3から明らかなように、本発明によるHUD用コンバイナー付き車両用ガラス板において、透過率YAはいずれも70%以上であり、ウインドシールドガラスの規格を満足していた。
60°入射における反射率RF60は、コンバイナー部において、何も形成していないガラスの反射率に比べて増加しており、第1層は増反射膜となっていることがわかる。その結果、この部分はコンバイナーとして機能させることができる。また、低反射部は、すべての実施例で11%以下を示し、低反射膜として機能することがわかった。
反射色調については、低反射部とコンバイナー部のいずれもニュートラルに近く、自然な色調であった。低反射部とコンバイナー部との反射色調の差についても、Δaが2以下、Δbが6以下と大きくなく、コンバイナー部が特に目立つことはなかった。
(斜め入射時のコンバイナー部の膜厚)
上述の検討に従って、コンバイナー部の膜について、その光学膜厚を算出した結果を表5に示す。上述の実施例から、入射角60°において、(dC/k)・n/λを1/4近傍に設計すると、増反射の効果が大きいことがわかる。
上述の検討に従って、コンバイナー部の膜について、その光学膜厚を算出した結果を表5に示す。上述の実施例から、入射角60°において、(dC/k)・n/λを1/4近傍に設計すると、増反射の効果が大きいことがわかる。
さらに、所定領域と低反射膜領域との境界部分は、その膜厚が変化するようにするとよい(図8参照)。図8において、境界部分211は、所定領域から低反射膜領域に向かって、連続的に膜厚が増加している。なお、車両用ガラス板1の紙面左側が車外であり、紙面右側が車内である。
積極的に、境界部分211の膜厚を変化させるには、第1層用フレキソ版の当該部分の表面形状を段階的に変化させるとよい。図9(a)は、凹部の深さを段階的に変化させた例であり、図9(b)は、凹部のピッチを段階的に変化させた例である。
このように、第1層用フレキソ版の当該部分の表面形状を段階的に変化させれば、塗布溶液の粘性によって、上述した境界部分211の膜厚がなだらかに変化することになる。
本発明によれば、HUD用コンバイナー付き低反射膜を、低反射膜の形成工程のみで得ることができる。これは、2層からなる低反射膜をフレキソ印刷法で塗布し、第2層の塗布工程時にコンバイナー部を塗布しないようにしたためである。
(比較例1)
この比較例1は、上述の実施例1−2において、HUD部と低反射部の膜厚を同じにした以外は、同様にしてHUD用コンバイナー付き車両用ガラス板を得た。得られた合わせガラスについても、上述した表2と表3に示す。なお測定条件は、上述の実施例と同様である。
この比較例1は、上述の実施例1−2において、HUD部と低反射部の膜厚を同じにした以外は、同様にしてHUD用コンバイナー付き車両用ガラス板を得た。得られた合わせガラスについても、上述した表2と表3に示す。なお測定条件は、上述の実施例と同様である。
この比較例1では、低反射膜やHUD部はそれぞれ良好な性能を持っている。しかし、Δaが5.1、Δbが12.4と大きく、低反射部とコンバイナー部との反射色調に大きな差が見られた。
1:HUD用コンバイナー付き車両用ガラス板、
10:ガラス板、
2:低反射膜、
21:高屈折率層(TiO2+SiO2)、
211:高屈折率層のテーパー部分、
22:低屈折率層(SiO2)、
3:コンバイナー部、
5:フレキソ印刷装置、
6:ディスペンサー、
71:ドクターロール、
72:アニックスロール、
73:プリンターロール、
8:フレキソ版、
81:第1層用フレキソ版、
82:第2層用フレキソ版、
83:(フレキソ版の)印刷面、
84:コンバイナー形成対応領域、
9:搬送テーブル
10:ガラス板、
2:低反射膜、
21:高屈折率層(TiO2+SiO2)、
211:高屈折率層のテーパー部分、
22:低屈折率層(SiO2)、
3:コンバイナー部、
5:フレキソ印刷装置、
6:ディスペンサー、
71:ドクターロール、
72:アニックスロール、
73:プリンターロール、
8:フレキソ版、
81:第1層用フレキソ版、
82:第2層用フレキソ版、
83:(フレキソ版の)印刷面、
84:コンバイナー形成対応領域、
9:搬送テーブル
Claims (12)
- 一主表面に2層からなる低反射膜が形成されている車両用ガラス板であって、
前記低反射膜は、第1層の屈折率n1が1.75〜2.10で膜厚d1が100〜140nm、第2層の屈折率n2が1.4〜1.47で膜厚d2が80〜120nmであり、
前記第1層の所定領域にて、前記第2層が形成されず前記第1層が露出され、HUD用コンバイナーとなる増反射膜として機能し、
前記増反射膜部分の膜厚dCが80〜120nmであり、かつ前記第1層の膜厚d1と異なっていることを特徴とするHUD用コンバイナー付き車両用ガラス板。 - 請求項1に記載のHUD用コンバイナー付き車両用ガラス板において、
d1>dCであるHUD用コンバイナー付き車両用ガラス板。 - 請求項1または2に記載のHUD用コンバイナー付き車両用ガラス板において、
前記増反射膜と前記第1層の境界部分の膜厚が変化していることを特徴とするHUD用コンバイナー付き車両用ガラス板。 - 請求項1〜3いずれか1項に記載のHUD用コンバイナー付き車両用ガラス板において、
前記低反射膜の60°入射における膜面可視光線反射率が11%以下で、コンバイナー領域の膜面可視光線反射率が少なくとも15%であるHUD用コンバイナー付き車両用ガラス板。 - 請求項1〜4いずれか1項に記載のHUD用コンバイナー付き車両用ガラス板において、
前記車両用ガラス板のガラス面における反射色調をLab表色系で表したとき、前記低反射膜領域と前記コンバイナー領域との反射色調の差をΔaとしたとき、Δaの絶対値が2以下であるHUD用コンバイナー付き車両用ガラス板。 - 請求項1〜5いずれか1項に記載のHUD用コンバイナー付き車両用ガラス板において、
前記車両用ガラス板のガラス面における反射色調をLab表色系で表したとき、前記低反射膜領域と前記コンバイナー領域との反射色調の差をΔbとしたとき、Δbの絶対値が6以下であるHUD用コンバイナー付き車両用ガラス板。 - 請求項1〜6いずれか1項に記載のHUD用コンバイナー付き車両用ガラス板において、
前記合わせガラスは、2枚のグリーンガラスを中間膜を介して接着されているHUD用コンバイナー付き車両用ガラス板。 - 請求項1〜7いずれか1項に記載のHUD用コンバイナー付き車両用ガラス板において、
前記低反射膜の第1層は、SiO2とTiO2が混合された、あるいはTiO2のみからなる層であり、第2層はSiO2を主成分とする層であるHUD用コンバイナー付き車両用ガラス板。 - 一主表面に2層からなる低反射膜を形成した車両用ガラス板の製造方法であって、
前記低反射膜は、ゾル−ゲル溶液を用いてフレキソ印刷法にて形成し、第1層の屈折率n1が1.75〜2.10で膜厚d1が100〜140nm、第2層の屈折率n2が1.4〜1.47で膜厚d2が80〜120nmとなるようにし、
前記低反射膜第1層は、第1フレキソ版にて形成し、
前記低反射膜第2層は、所定領域に対応する部分を凹部とした第2フレキソ版にて形成し、前記所定領域に第2層を塗布しないようにして増反射膜とし、前記領域をHUD用コンバイナーとして機能させ、
前記増反射膜領域と前記低反射膜領域とにおける前記第1フレキソ版の表面形状を異ならせて、インク保持量を異なるようにしたことを特徴とするHUD用コンバイナー付き車両用ガラス板の製造方法。 - 請求項9に記載のHUD用コンバイナー付き車両用ガラス板の製造方法において、
さらに、前記増反射膜領域と前記第1層の低反射膜領域との境界部に対応する部分における前記第1フレキソ版の表面形状を変化させたHUD用コンバイナー付き車両用ガラス板の製造方法。 - 請求項9または10に記載のHUD用コンバイナー付き車両用ガラス板の製造方法において、
前記低反射膜の第1層を、SiO2とTiO2が混合された、あるいはTiO2のみからなる層とし、第2層をSiO2を主成分とする層としたHUD用コンバイナー付き車両用ガラス板の製造方法。 - 請求項9〜11のいずれか1項に記載のHUD用コンバイナー付き車両用ガラス板の製造方法において、
前記第1層を、モル比でSiO2:TiO2=60:40〜0:100であるSiO2とTiO2が混合された層とし、前記第2層はSiO2の層としたHUD用コンバイナー付き車両用ガラス板の製造方法。
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JP2016501812A (ja) * | 2012-11-09 | 2016-01-21 | エルジー・ハウシス・リミテッドLg Hausys,Ltd. | 超断熱複層ガラス |
US10800143B2 (en) | 2014-03-07 | 2020-10-13 | Corning Incorporated | Glass laminate structures for head-up display system |
-
2004
- 2004-03-16 JP JP2004075114A patent/JP2005263517A/ja active Pending
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