JP2005263087A - 空気入りタイヤ - Google Patents
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Abstract
【課題】周方向溝の溝底部分のクラックの発生とウエット性能の低下とを抑制しつつ、走行時に気柱共鳴音に起因して発生するタイヤからの騒音を低減すること。
【解決手段】タイヤ周方向Rに連続している少なくとも一本の周方向溝Gを有する空気入りタイヤにおいて、その少なくとも一本の周方向溝Gにおける少なくとも一方の溝側壁面Gsに、この溝側壁面Gs近傍のトレッド面Tに対して当該トレッド面側の端部1aが略平行な突出体1を他方の溝側壁面Gsに向けて設け、更に、この突出体1とトレッド面T及び溝底Gbとの間に夫々所定の間隔d1,d2を設けること。ここで、その突出体1は、タイヤ周方向Rに連続したものであってもよく、切り込みや切り欠きが設けられていてもよい。
【選択図】 図2
【解決手段】タイヤ周方向Rに連続している少なくとも一本の周方向溝Gを有する空気入りタイヤにおいて、その少なくとも一本の周方向溝Gにおける少なくとも一方の溝側壁面Gsに、この溝側壁面Gs近傍のトレッド面Tに対して当該トレッド面側の端部1aが略平行な突出体1を他方の溝側壁面Gsに向けて設け、更に、この突出体1とトレッド面T及び溝底Gbとの間に夫々所定の間隔d1,d2を設けること。ここで、その突出体1は、タイヤ周方向Rに連続したものであってもよく、切り込みや切り欠きが設けられていてもよい。
【選択図】 図2
Description
本発明は、走行時にタイヤから発生する気柱共鳴音を起因とした騒音を低減し得る空気入りタイヤに係り、特に、溝底部分のクラックの発生とウエット性能の低下の抑制をも両立し得る空気入りタイヤに関する。
従来、走行時にタイヤから発生する騒音の発生メカニズムの一つとして、トレッド面においてタイヤ周方向に形成された周方向溝内の気柱共鳴が知られており、その周方向溝の断面積を減少させることが、かかる走行時の気柱共鳴音の低減に有効であると認識されている。
ここで、周方向溝の断面積を減少させる為には、その溝幅を狭めたり、溝深さを浅くしたりする手法が考えられる。しかしながら、かかる手法により断面積を減少させると、排水性能の低下によるウエット性能の低下を招来してしまう、という不都合があった。そこで、ウエット性能の低下を抑制しつつ走行時の騒音を低減する為に、例えば、特許文献1には、周方向溝Gに、溝底Gb及び溝側壁面Gs(即ち主溝の隅部分)から突出させた図10に示す凸部100を設けることで上記不都合を改善する、という技術が開示されている。
また、これとは別に、直方体状に形成された図11に示す突出体101を周方向溝Gの溝側壁面Gsの一箇所以上に設け、これによりタイヤの車外騒音を低減する、という技術が特許文献2に開示されている。
また更に、周方向溝内に設けた凸部等の突出部分としては、周方向溝の少なくとも一方の溝側壁面においてトレッド面側に向けて斜めに突出させた突起であって、タイヤ周方向に連続させたものが特許文献3に開示されている。
しかしながら、上記特許文献1に開示された技術にあっては、凸部100が溝底部分を狭めてしまう形状である為、その溝底部分にクラックが発生し易くなる、という不都合が生じてしまう。また、上記特許文献2に開示された突出体101は、溝側壁面Gsから部分的に突出させた所謂突出片ともいえるものであり、その剛性の低さ故に気柱共鳴音の低減には効果を発揮しない、という不都合があった。また、上記特許文献3に記載のトレッド面側に向けて斜めに突出させている連続突起は、そもそも耐石噛み性の向上と排水性能の向上を目的として設けられたものであり、その形状は、気柱共鳴音の低減には有効ではない。
そこで、本発明は、かかる従来例の有する不都合を改善し、溝底部分のクラックの発生とウエット性能の低下とを抑制しつつ、更に気柱共鳴音に起因して走行時にタイヤから発生する騒音を低減し得る空気入りタイヤを提供することを、その目的とする。
上記目的を達成する為、請求項1記載の発明では、タイヤ周方向に連続している少なくとも一本の周方向溝を有する空気入りタイヤにおいて、少なくとも一本の前記周方向溝における少なくとも一方の溝側壁面に、この溝側壁面近傍のトレッド面に対して当該トレッド面側の端部が略平行な突出体を他方の溝側壁面に向けて設け、この突出体と前記トレッド面及び溝底との間に夫々所定の間隔を設けている。
上記目的を達成する為、請求項2記載の発明では、上記請求項1記載の空気入りタイヤにおいて前記周方向溝の夫々の溝側壁面に前記突出体を設ける場合に、一方の当該突出体の前記トレッド面からの間隔と、他方の当該突出体の前記トレッド面からの間隔とを異にしている。
上記目的を達成する為、請求項3記載の発明では、上記請求項1記載の空気入りタイヤにおいて複数本の前記周方向溝の内の少なくとも二本以上に前記突出体を設ける場合に、各突出体は夫々の周方向溝毎に前記トレッド面からの間隔を異にしている。
上記目的を達成する為、請求項4記載の発明では、上記請求項1,2又は3に記載の空気入りタイヤにおいて、前記突出体の少なくとも一箇所に切込み又は切欠きを設けている。
上記目的を達成する為、請求項5記載の発明では、上記請求項1,2,3又は4に記載の空気入りタイヤにおいて、前記周方向溝の断面積をS,この周方向溝に設けた突出体の断面積をsとした場合に、その断面積比s/Sを0.1≦s/S<0.3にしている。
本発明に係る空気入りタイヤによれば、周方向溝の溝底部分のクラックの発生とウエット性能の低下とを抑制しつつ、気柱共鳴音に起因して走行時にタイヤから発生する騒音を低減することができる。また、複数の突出体を設ける場合には、夫々の突出体のトレッド面からの間隔を変えることによって、ウエット性能を緩やかに変化させることができる。更にまた、突出体の少なくとも一箇所に切込み又は切欠きを設けることによって、突出体を形成する際に懸念される金型の抜け性の悪化を改善することができる。
以下に、本発明に係る空気入りタイヤの実施例を図面に基づいて詳細に説明する。尚、この実施例により本発明が限定されるものではない。
本発明に係る空気入りタイヤの実施例1を図1から図3に基づいて説明する。
本実施例1の空気入りタイヤは、図1に示す如くタイヤ周方向Rに向けて連続している周方向溝Gを少なくとも一本有するタイヤであって、その周方向溝Gと略同心円の環状の突出体(以下「環状突出体」という。)1を当該周方向溝Gの図2に示す一方の溝側壁面Gsに設けたものである。尚、本実施例1にあっては、説明の便宜上、一本の周方向溝Gに着目して環状突出体1の説明を行う。以下、その環状突出体1について詳述する。
本実施例1の環状突出体1は、図2に示す如く、上記溝側壁面Gs近傍のトレッド面T(具体的には溝側壁面Gsを有するリブやブロックの接地面の内の溝側壁面Gs近傍部分)に対して略平行な上端(トレッド面T側の端部)1aを有するタイヤ幅方向TWの断面からなるものであって、その断面を図1に示すタイヤ周方向Rに一周連続させた形状のものである。本実施例1にあっては、図2に示す如く、溝幅GWが溝底Gbに向かって狭められている(即ち溝側壁面Gsが傾斜している)周方向溝Gを例示しているので、環状突出体1の断面の形状としては台形のものを例示する。
ここで、周方向溝Gの断面積(環状突出体1が無い場合の断面積)を「S」,環状突出体1の断面積を「s」とする。上述した如く断面積Sの周方向溝Gに断面積sの環状突出体1を設けることによって、本実施例1の空気入りタイヤは、周方向溝Gの断面積Sを全周に亘って減少させることができるので、走行時における周方向溝G内の空気の移動量の制約が可能となり、気柱共鳴音の低減が図れる。そして、これにより気柱共鳴音に起因して発生する走行時のタイヤからの騒音を低減することができる。
また、本実施例1の環状突出体1は、図2に示す如く、その上端1aがトレッド面Tから間隔d1を設けた位置に形成されている。このように間隔d1を設けることによって、本実施例1の空気入りタイヤは、新品時や摩耗初期の排水性能を確保することができ、ウエット性能の低下を抑制し得る。ここで、ウエット性能の低下の抑制という観点からすれば、周方向溝Gの溝幅GWと比して環状突出体1の図2に示す突出高さh1が高過ぎることは好ましくない。そこで、本実施例1にあっては、その突出高さh1が0.2GW≦h1≦0.5GWの範囲内になるよう環状突出体1の形状を定めている。
更にまた、本実施例1の環状突出体1は、図2に示す如く、その下端(溝底Gb側の端部)1bが溝底Gbから間隔d2を設けた位置に形成されている。このように間隔d2を設けることによって、本実施例1の空気入りタイヤは、溝底Gbにおけるクラックの発生を防止することができる。本実施例1にあっては、その間隔d2をd2≧0.25GD(GD:周方向溝Gの溝深さ)にして環状突出体1を形成している。
ここで、以上示した如き環状突出体1を具備する空気入りタイヤの騒音レベル,ウエット性能及び耐グルーブクラック性の評価試験を以下の如き試験条件で行った。
先ず、騒音レベルの評価試験は、試験タイヤをJATMA YEAR/BOOK 2003年版指定リムに装着し、空気圧を200kPaにして2000ccの乗用車に取り付け、JASO C606の通過騒音の試験方法により音の強さ(エネルギ)を測定した。かかる試験の評価は、環状突出体1の無い従来のタイヤの測定値を100とする指数で表し、指数値が大きいほど低騒音であることを意味する。
また、ウエット性能の評価試験は、試験タイヤの空気圧を220kPaにして2000ccの乗用車に装着し、水深平均4mmの平地のウエット路面において半径30mの円を描きつつ速度を上げていき、ハイドロの発生速度を測定した。かかる試験の評価は、従来のタイヤの測定値を100とする指数で表し、指数値が大きいほど旋回排水性(ウエット性能)に優れていることを意味する。
また、耐グルーブクラック性の評価試験は、試験タイヤに夫々200kPaの空気圧を充填して車輌の前輪に装着し、JATMA規定の最大荷重を負荷して舗装路99%、悪路1%を3万km完走した後、細溝の溝底におけるクラックの発生状況を肉眼で調べ、クラックの発生有無を調べた。
かかる評価試験では、断面積sの異なる環状突出体1が形成された複数のパターンの空気入りタイヤ(下記の表1〜表3に示すパターンA〜D)を使用した。また、かかる評価時の比較対象として、周方向溝Gに環状突出体1が設けられていない空気入りタイヤ,前述した図10に示す凸部100を周方向溝Gに設けた空気入りタイヤ(下記の表1〜表3に示す従来例1),及び前述した図11に示す突出体101を周方向溝Gに設けた空気入りタイヤ(下記の表1〜表3に示す従来例2)についても同様の試験を行った。ここで、上記各パターンA〜Dの空気入りタイヤ,更に上記比較対象の空気入りタイヤには、図2に示す溝幅GW及び溝深さGDが夫々8mmの同一形状及び同一断面積Sの周方向溝Gが形成されている。尚、表1〜表3における上記従来例2の空気入りタイヤについては、突出体101の存在する部分と突出体101の存在しない部分とがあるので、その前者の断面積比(s/S)は「0」となり、後者の断面積比(s/S)は「0.2」となる。
先ず、下記の表1に、新品時の上記各空気入りタイヤについての本評価試験の試験結果を示す。尚、騒音レベル及びウエット性能の評価においては、上記環状突出体1の無い空気入りタイヤの評価指数を「100」とし、これと比してその指数が大きいほど性能に優れている(即ち、騒音が低く、またウエット性能が高い)。
上記表1によれば、従来例1の空気入りタイヤは、騒音の低減を図ることはできるが耐グルーブクラック性に劣っていることが判り、従来例2の空気入りタイヤは、ウエット性能を低下させることなく騒音の低減を図れているが、その騒音の低減代が小さいことが判る。
これらと比して、上記環状突出体1を有するパターンB,C(断面積比s/S=0.1,0.2)の空気入りタイヤは、ウエット性能を低下させることなく騒音を大幅に低減させることができ、更にクラックも発生しないことが判る。また、上記環状突出体1を有するパターンA(断面積比s/S=0.05)は、ウエット性能の低下とクラックの発生を抑制できているが、騒音の低減代は小さいことが判る。更にまた、上記環状突出体1を有するパターンD(断面積比s/S=0.3)は、騒音を更に低減することはできるが、ウエット性能の低下が見られる。
以上の試験結果から、本実施例1の環状突出体1は、周方向溝Gとの断面積比s/Sが0.1≦s/S<0.3の範囲内にある断面で形成することが好ましい。
続いて、下記の表2に、50%摩耗時の上記各空気入りタイヤについての本評価試験の試験結果を示す。尚、ここでの環状突出体1,凸部100又は突出体101は、新品時に周方向溝Gの溝深さGDの略中間位置に設けられているものとする。これが為、断面積比s/Sは、従来例1を除いて新品時と変わらない。また、騒音レベル及びウエット性能の評価においては、上記環状突出体1の無い空気入りタイヤの評価指数を「100」とし、これと比してその指数が大きいほど性能に優れている(即ち、騒音が低く、またウエット性能が高い)。
上記表2によれば、新品時において騒音レベル,ウエット性能及び耐グルーブクラック性に優れている上記パターンB,Cの空気入りタイヤは、この50%摩耗時において新品時よりもウエット性能が劣るが、従来例1,2の50%摩耗時と比して同等以上のウエット性能が確保されている。
ここで、タイヤの摩耗の進行によるウエット性能の変化について図3に示す。ここでは、上記環状突出体1の無い空気入りタイヤと、上記本実施例1の環状突出体1を設けた空気入りタイヤ及び上記従来例1の空気入りタイヤとを比較する。
この図3によれば、本実施例1の空気入りタイヤは、摩耗中期において一旦ウエット性能の低下が進むが、摩耗初期及び摩耗後期においては環状突出体1の無い空気入りタイヤと同等のウエット性能を確保していることが判る。これに対して、従来例1の空気入りタイヤは、摩耗中期から摩耗後期においてウエット性能の急激な低下が見られる。即ち、従来例1の空気入りタイヤは、環状突出体1の無い空気入りタイヤよりも摩耗後期においてウエット性能が大幅に低下してしまうが、本実施例1の空気入りタイヤは、新品時から摩耗後期に至るまで環状突出体1の無い空気入りタイヤと略同等のウエット性能の範囲内を確保することができる。
次に、断面積比s/Sがs/S=0.2の上記パターンCの空気入りタイヤ(新品)において、その環状突出体1の上端1aとトレッド面Tとの間隔d1を下記の表3に示す如く変化させたもの(パターンC1〜C5)を用意し、上記と同様のウエット性能試験を行った。かかる試験結果を下記の表3に示す。尚、ここでは、環状突出体1が設けられていない空気入りタイヤのウエット性能を指数「100」として、各パターンC1〜C5との比較を行う。
上記表3によれば、上記間隔d1が0(即ち環状突出体1とトレッド面Tとが面一)〜1mmの範囲内にあるパターンC1〜C3は、ウエット性能の低下が大きいことが判る。これに対して、その間隔d1が1.5mm以上のパターンC4,C5であれば、ウエット性能を然程低下させずともすむことが判る。以上のことから、環状突出体1の上端1aとトレッド面Tとの間隔d1は、1.5mm以上にすることが好ましい。
以上示した如く本実施例1の空気入りタイヤによれば、上述したが如き環状突出体1を具備しているので、気柱共鳴音に起因して走行時にタイヤから発生する騒音を低減することができる。更に、本実施例1の空気入りタイヤは、従来の如き突出体を設けたことによる溝底Gbのクラックの発生やウエット性能の低下という弊害をも抑制することができる。
そして、かかる三つの性能要件(気柱共鳴音の低減,クラックの防止及びウエット性能の低下の抑制)をバランス良く満たす為には、前述したが如く、本実施例1の環状突出体1を、その上端1aがトレッド面Tから1.5mm以上の間隔d1を空けた位置で且つその下端1bが溝底Gbから0.25GD以上の間隔d2を空けた位置になるよう設け、更に、その断面積sが0.1S≦s<0.3Sの範囲内にあり且つその突出高さh1が0.2GW≦h1≦0.5GWの範囲内になるよう形成することが好ましい。
次に、本発明に係る空気入りタイヤの実施例2を図4に基づいて説明する。
前述した実施例1の空気入りタイヤにおいては、タイヤの周方向Rに一周連続している環状突出体1が設けられている。このような連続する環状突出体1は、その剛性を確保する為には好ましいが、それ故にその断面形状や断面の大きさ如何では周方向溝Gを形成する為の金型の抜け性が悪化してしまう虞がある。
そこで、本実施例2においては、前述した実施例1の空気入りタイヤにおいて、その環状突出体1の少なくとも一箇所に切込みを設けた。例えば、図4に示す本実施例2の空気入りタイヤにおいては、溝側壁面Gsに、タイヤの径方向に四つの切込み11cを入れて四分割した環状突出体11を設けている。このような切込み11cを設けることによって、本実施例2の空気入りタイヤは、金型の抜け性が良くなり、生産性の向上が図れる。
また、このような切込み11cを設けたとしても、本実施例2の空気入りタイヤは、前述した実施例1の空気入りタイヤと同様に、気柱共鳴音に起因する走行時のタイヤからの騒音の低減、溝底Gbのクラックの発生やウエット性能の低下の抑制が図れる。
尚、図4に示す環状突出体11は切込み11cを設けることで分割構造にしているが、本実施例2にあっては必ずしもこのような分割構造にせずともよい。例えば、そのような切込み11cに替えて、前述した実施例1の環状突出体1の少なくとも一箇所に、その自由端側から一部を切り欠く切欠きを設けてもよい。
次に、本発明に係る空気入りタイヤの実施例3を図5及び図6に基づいて説明する。
本実施例3の空気入りタイヤは、前述した実施例1の空気入りタイヤが具備する環状突出体1を図5に示す波形の突出体21に変更したものである。ここで、本実施例3にあっては、図6に示す如く、実施例1の環状突出体1と同様の断面の波形突出体21を例示する。
このような波形突出体21を溝側壁面Gsに設けることによっても、前述した実施例1の空気入りタイヤと同様に、溝底Gbのクラックの発生やウエット性能の低下を抑制しつつ、気柱共鳴音に起因する走行時のタイヤからの騒音を低減することができる。
尚、この波形突出体21は、実施例1の環状突出体1と同様に、その上端21aがトレッド面Tから1.5mm以上の間隔d1を空けた位置で且つその下端21bが溝底Gbから0.25GD以上の間隔d2を空けた位置になるよう設け、更に、波形突出体21と周方向溝Gとの断面積比s/Sが0.1≦s/S<0.3の範囲内にあり且つその突出高さh1が0.2GW≦h1≦0.5GWの範囲内になるよう形成することが好ましい。
ここで、この波形突出体21は、その形状ゆえに周上において上記間隔d1,d2が変化する。これが為、この波形突出体21を設けることによって、実施例1の空気入りタイヤよりも摩耗進行時のウエット性能の低下を緩やかに変化させることができる。
尚、この波形突出体21にあっても、前述した実施例2の環状突出体11と同様に切込みを設けて金型の抜け性を向上させてもよい。
次に、本発明に係る空気入りタイヤの実施例4を図7に基づいて説明する。
本実施例4の空気入りタイヤは、上記実施例1,2又は3で例示した突出体(環状突出体1,環状突出体11,又は波形突出体21)を図7に示す如く周方向溝Gの両方の溝側壁面Gsに対向させて設けたものである。ここで、この図7には、実施例1の環状突出体1を夫々の溝側壁面Gsに対向させて設けた空気入りタイヤを例示している。かかる場合にあっても、本実施例4の空気入りタイヤは、その各実施例1,2,3と同様の効果を奏することができる。
尚、本実施例4にあっても、上記各溝側壁面Gsの突出体(環状突出体1,環状突出体11,又は波形突出体21)は、夫々の実施例1,2,3の場合と同様に、その上端1aがトレッド面Tから1.5mm以上の間隔d1を空けた位置で且つその下端1bが溝底Gbから0.25GD以上の間隔d2を空けた位置になるよう設けることが好ましい。
また、各突出体の突出高さh1についても同様に、0.2GW≦h1≦0.5GWの範囲内にすることが好ましい。但し、図7に示す夫々の突出体(環状突出体1)の間隔d3が狭すぎるとウエット性能の低下が懸念される。これが為、その間隔d3が周方向溝Gの溝幅GWの50%以上になるように夫々の突出体の突出高さh1を決めることが望ましい。
ここで、前述した各実施例1,2,3においては、突出体と周方向溝Gとの断面積比s/Sを0.1≦s/S<0.3の範囲内にすることが好適であるとしている。しかしながら、かかる断面積比s/Sの範囲は突出体を一本のみ設けた場合のものであり、本実施例4においてはその突出体を一本の周方向溝Gに二本設けている。これが為、本実施例4にあっては、周方向溝Gの断面積Sと、この周方向溝Gに設けられている全ての突出体の総断面積sallとの断面積比sall/Sを0.1≦sall/S<0.3の範囲内にすることが好ましい。
次に、本発明に係る空気入りタイヤの実施例5を図8に基づいて説明する。
本実施例5の空気入りタイヤは、上記実施例4の空気入りタイヤに設けた二本の突出体(環状突出体1,環状突出体11,又は波形突出体21)のトレッド面Tからの位置(即ち実施例4の突出体における間隔d1)を夫々ずらしたものである。
例えば図8には、実施例1の環状突出体1と同形状の環状突出体1A,1Bをトレッド面Tからの位置をずらして夫々の溝側壁面Gsに設けた空気入りタイヤを例示している。換言すれば、この図8に示す本実施例5の空気入りタイヤには、環状の径の夫々異なる環状突出体1A,1Bが各溝側壁面Gsに設けられている。
このように、一つの周方向溝Gにおいて、トレッド面Tから環状突出体1Aまでの間隔dAと、トレッド面Tから環状突出体1Bまでの間隔dBとを異なるものにすることによって、前述した実施例4と同様の効果を奏するだけでなく、摩耗進行に伴うウエット性能の急激な低下を回避する,換言すれば摩耗進行に伴うウエット性能の低下を緩やかに変化させることができるという効果をも奏することが可能になる。尚、本実施例5の突出体として前述した波形突出体21を設けた場合には、より緩やかにウエット性能を変化させることができる。
次に、本発明に係る空気入りタイヤの実施例6を図9に基づいて説明する。
上述した各実施例1〜5では、便宜上、一本の周方向溝Gについてのみ説明してきた。しかしながら、空気入りタイヤには複数本の周方向溝Gが設けられている場合もあり、かかる場合には、突出体を全ての周方向溝Gに設けてもよく、又はその内の少なくとも一本の周方向溝Gに設けるだけでもよい。
本実施例6では、複数本の周方向溝Gを有する空気入りタイヤおいて、上記実施例1〜5の何れかで例示した突出体(環状突出体1,環状突出体11,波形突出体21又は環状突出体1A,1B)を設けたもの,例えば五本の周方向溝を有する空気入りタイヤのタイヤセンタ部分以外の四本の周方向溝に上記突出体を設けたものを例示する。尚、図9には、説明の便宜上、周方向溝G1,G2が形成されているタイヤの片側のみを図示する。
この図9に例示する空気入りタイヤは、夫々の周方向溝G1,G2において、前述した実施例1の環状突出体1と同形状の環状突出体31A,31Bを一方の溝側壁面Gsに設けたものである。このような空気入りタイヤによっても、前述した各実施例と同様に、溝底Gbのクラックの発生やウエット性能の低下を抑制しつつ、気柱共鳴音に起因する走行時のタイヤからの騒音を低減することができる。
ここで、本実施例6の如く、複数本の周方向溝Gを有する空気入りタイヤにおいて少なくとも二本以上の周方向溝Gに上記突出体を設ける場合、各周方向溝Gの突出体は、トレッド面Tからの位置を夫々ずらして形成することが好ましい。例えば図9に示す空気入りタイヤにおいては、トレッド面Tから周方向溝G1の環状突出体31Aまでの間隔dAよりも、トレッド面Tから周方向溝G2の環状突出体31Bまでの間隔dBを大きくしている。即ち、タイヤセンタ側よりもタイヤショルダ側の間隔を大きくしている(dA>dB)。
このように各環状突出体31A,31Bのトレッド面Tからの位置をずらすことによって、本実施例6の空気入りタイヤは、上記効果に加え、前述した実施例5と同様に摩耗進行に伴うウエット性能の低下を緩やかに変化させることもできる。
尚、以上示した各実施例1〜6においては断面形状が台形の突出体(環状突出体1,1A,1B,11,31A,31B,波形突出体21)を例示したが、その断面形状は、必ずしもその形状に限定するものではなく、例えば正方形や略矩形であってもよく、また三角形であってもよい。但し、その断面は、前述した如く、その上端がトレッド面Tに対して略平行であることが好ましい。
また、周方向溝G,G1,G2に連通するラグ溝が設けられる場合には、そのラグ溝が形成される部分において上述した環状突出体1,1A,1B,11,31A,31B,波形突出体21を設ける必要は無い。換言すれば、かかる部分においては、環状突出体1,1A,1B,11,31A,31B,波形突出体21に切り欠きを設けてもよい。
以上のように、本発明に係る空気入りタイヤは、走行時に気柱共鳴音に起因して発生するタイヤからの騒音の低減に有用であり、特に、周方向溝の溝底部分のクラックの発生とウエット性能の低下を抑制しつつ、その騒音を低減させるのに適している。
1,1A,1B,11,31A,31B 環状突出体
1a,21a 上端
11c 切込み
21 波形突出体
d1,dA,dB トレッド面との間隔
d2 溝底との間隔
G,G1,G2 周方向溝
Gs 溝側壁面
Gb 溝底
R タイヤ周方向
TW タイヤ幅方向
T トレッド面
1a,21a 上端
11c 切込み
21 波形突出体
d1,dA,dB トレッド面との間隔
d2 溝底との間隔
G,G1,G2 周方向溝
Gs 溝側壁面
Gb 溝底
R タイヤ周方向
TW タイヤ幅方向
T トレッド面
Claims (5)
- タイヤ周方向に連続している少なくとも一本の周方向溝を有する空気入りタイヤにおいて、
少なくとも一本の前記周方向溝における少なくとも一方の溝側壁面に、該溝側壁面近傍のトレッド面に対して当該トレッド面側の端部が略平行な突出体を他方の溝側壁面に向けて設け、
この突出体と前記トレッド面及び溝底との間に夫々所定の間隔を設けたことを特徴とする空気入りタイヤ。 - 前記周方向溝の夫々の溝側壁面に前記突出体を設ける場合、一方の当該突出体の前記トレッド面からの間隔と、他方の当該突出体の前記トレッド面からの間隔とを異にすることを特徴とした請求項1記載の空気入りタイヤ。
- 複数本の前記周方向溝の内の少なくとも二本以上に前記突出体を設ける場合、該各突出体は、夫々の周方向溝毎に前記トレッド面からの間隔を異にすることを特徴とした請求項1記載の空気入りタイヤ。
- 前記突出体の少なくとも一箇所に切込み又は切欠きを設けたことを特徴とする請求項1,2又は3に記載の空気入りタイヤ。
- 前記周方向溝の断面積をS,該周方向溝に設けた突出体の断面積をsとした場合に、その断面積比s/Sを0.1≦s/S<0.3とすることを特徴とした請求項1,2,3又は4に記載の空気入りタイヤ。
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