JP2005261938A - 留置針構造およびそれに用いるシール材 - Google Patents

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Abstract

【課題】 血管を捕捉した後の金属針(内針)を安全にその場で処理でき、経年劣化にも強い留置針構造を提供する。
【解決手段】 留置針本体(10)は、パイプ状の外針(11)と連通する筒状の本路(13)と、外針(11)の内部へ輸液を送り込むために本路(13)へ連通するように連結分岐した分岐路(14)と、本路(13)の内部において分岐路(14)との境目を形成する自己閉塞機能を備えたシール材(16)とを備える。シール材(16)は、内針(21)が貫通する近傍の部位を内針貫通部(16a)とし、その内針貫通部(16a)は、留置針本体(10)へ内針収納体(30)が装着されるとともに内針(21)がシール材(16)を貫通している場合に、内針収納体(30)における外針(11)側の端部には、シール材(16)の内針貫通部(16a)を外針(11)側に向かって押圧するように弾性変形させるようなシール材押圧部を備える。
【選択図】 図1

Description

本発明は、治療のために血管へ留置して使用する留置針であって、例えば輸液や人工透析に用いる留置針の構造に関する。
輸液や透析のラインを形成する手段には、代表的には以下の二種類の手段がある。
第一の手段は、金属針と、輸液または透析のラインとを接続するためのチューブと、患者皮膚への固定を補助するための可撓性材料によって形成された翼とを備えた翼状針を用いる手段である。この翼状針は、輸液注入または透析の最中に、穿刺されて血管の中にある金属針が腕の動きで血管を傷つけたり、血管を破いたりする事故が生じたりする問題がある。このため、患者を長時間拘束する場合や治療中に体を動かすことの多い幼児には不向きである。
第二の手段は、可撓性のある留置針と、その留置針の内側に位置させる金属製の内針とを組み合わせた留置針構造を用いる手段である。この留置針構造は、内針を伴った留置針にて患者の皮膚を貫通させて血管を捉え、留置針にて血管を捕捉したら内針を抜き取るものである。
患者の血管を捉えた内針およびその内針に連続する留置針の後端開口部からの血液の垂れを生じさせないように輸液または透析ラインが確保するという操作が必要であること、および抜き取った金属針を廃棄処理する必要があるが、患者への負担が小さいことから、第二の手段が採用される割合は高まりつつある。例えば、特許文献1に開示される技術である。
特開平10−179734号公報
上記の特開平10−179734号に開示される発明では、図9に示すが、分岐流路を形成するチューブ(7)において、分岐の一方にて穿刺のための内針(2)を外針(4)に対して進退させるとともに、他方にて輸液の流路を確保するものである。内針(2)の基端部に、気体は透過するが液体を透過させないフィルター部材(栓体6)を設置し、穿刺後の留置針内に血液が満ちるのを待たずに、輸液をプライミング(留置針内が満たされる状態)することができる。したがって、留置針ライン形成の時間を短縮できるとともに、その作業に集中しやすいので、細菌に汚染されたり留置針が血管からずれたり外れたりする事故の発生確率を低めることに寄与する。また、フィルター部材(6)の存在により、留置針の後端における開口部からの血液の垂れを生じさせないという構造上の特徴もある。
特開2000−217925号公報
上記の特開2000−217925号に開示される発明は、図10に示すような分岐管(5)を有する翼付留置穿刺針である。この発明もまた、分岐管(5)の一方にて穿刺のための内針(2)を進退させるとともに、他方にて輸液の流路を確保するものである。また、穿刺後の使用済み内針(2)を保護するための保護キャップを備えている。このため、患者から抜き去った内針による針刺し事故の発生確率を低めることもできる。
前述した二つの技術のほか、輸液または透析ライン確保の作業中における安全性を確保するため、使用後の針をその場で覆ってしまう安全に配慮した収納機構の設けられた留置針構造も提供されるようになった。例えば、特開2000−116791号に開示される技術である。
特開2000−116791号公報
特開2000−116791号に開示された技術は、図11に示すが、中空の外針と、その外針の基端部に設けられ前記外針内を連通する内腔部を有する外針ハブと、前記外針内に挿通される内針と、前記内針の基端部に設けられた内針ハブと、前記外針ハブの内腔部に該内腔部を封止するように設置された弁体とを有する留置針組立体であって、前記弁体は、前記内針を挿通可能な孔を有し、反転可能な弾性膜で構成されていることを特徴とする(請求項1から引用)。
この技術は更に、経時劣化が問題となる弁体について、製造価格が上昇してしまいがちな材質面からの改善ではなく形態面からの改善を行うことによって、その問題の解決を試みている。
分岐型の留置針については、米国などで製品や特許文献1,2,3に示された技術では、血管を捕捉したことを確認するための血液流路の体積が比較的大きく、血液や輸液の滞留が課題となる。すなわち、血液の滞留は、血液の凝固や細菌の増殖を誘発する場合があり、輸液の滞留は、輸液の無駄が発生するのである。その欠点を解決する技術として、例えば、特開2003−175112号に開示される技術がある。
特開2003−175112号公報
この特開2003−175112号に開示される技術では、図12に示すが、材質や構造を工夫することで血液流路において滞留が起きる空間を極めて小さくしている。加えて、トリガー(34)の操作によって内針(21)を内針収納体(30)へ収納することによって安全性も確保している。
さて、輸液ラインまたは透析ラインの活用について、送液路(輸液ラインまたは透析ライン)の外部から液を混注したり、逆に送液路の内部から液を採取したりする際に、その操作を容易にかつ確実に行うための医療器具に装着される医療用混注ポートに関する以下のような技術がある。
特開2003−199807号公報
上述してきた技術における第一の課題は、注射をする医師や看護士(以下、「医師等」と略記する)による経験や力量が考慮されていない点である。すなわち、輸液または透析ラインを確保するためには、内針にて血管を捕捉するとともに内針先端の直後に位置する外針の先端もが血管を捕捉しなければならない。そのためには、患者の皮膚へ穿刺した後に内針および外針が血管を捕捉するように細かい操作が必要となる。この細かい操作に慣れていないと内針が血管を捕捉したものの外針が血管に到達しなかったり、内針が血管を貫通してしまったりしてしまうことがあり、いわば熟練を要する。あるいは、注射をする医師が看護士などの補助者を伴って作業する必要性が高い。換言すれば、ある程度の熟練がなければ上述の技術に係る留置針構造を使いこなすことができないのであり、穿刺後に内針および外針が血管を捕捉する操作性に熟練を要さない留置針構造が望まれている。
第二の課題は、特許文献3に示すような弁体を採用する構造における組立精度の問題である。すなわち、弁体には内針を挿通可能な孔が予め設けられているため、高い精度の組立を要することとなる。このため、簡易な組立作業または自動組立が困難であったり、組
立速度を速めることに限界があるなどの問題が残っていた。
第三の課題は、輸液ラインまたは透析ラインの活用に関する問題である。すなわち、留置針構造によって輸液ラインまたは透析ラインが確保されているのであるから、の外部から液を混注したり、逆に送液路の内部から液を採取したりする医療用混注ポートとの協働
が考えられても良い。しかし、そのような留置針構造は提供されていなかった。
なお、前述した先行技術の他に、
検索および検討した米国の特許公報USP4747831,USP3306290,USP4488543,USP4507117,USP4592744,USP4664654,USP5147515,USP5163913,USP4177809
などがあるが、上記のような課題を解決できる先行技術について、発見できなかった。
本発明が解決しようとする課題は、留置針(外針)による血管の捕捉作業が医師等の経験や力量に左右されにくく、血管を捕捉した後の金属針(内針)を安全にその場で処理でき、現在よりも簡易な組立が可能であること、輸液ラインまたは透析ラインの活用も考慮されている、といった留置針構造に関する技術を提供することである。
請求項1および請求項9に記載の発明の目的は、血管を捕捉した後の金属針(内針)を安全にその場で処理でき、経年劣化にも強い留置針構造を提供することにある。
請求項3および請求項4に記載の発明の目的は、更に、現在よりも簡易な組立が可能で、輸液ラインまたは透析ラインの活用も考慮された留置針構造を提供することにある。
請求項5に記載の発明の目的は、更に、ライン確保のために捕捉したことによる滞留血液をなくし、輸液の無駄もこれまでよりも抑制できる留置針構造を提供することにある。
請求項6から請求項9に記載の発明の目的は、更に、留置針(外針)による血管の捕捉作業が医師等の経験や力量に左右されにくい留置針構造を提供することにある。
請求項10および請求項11に記載の発明の目的は、留置針構造に採用されることによって、留置針(外針)による血管の捕捉作業が医師等の経験や力量に左右されにくく、血管を捕捉した後の金属針(内針)を安全にその場で処理でき、現在よりも簡易な組立が可能であること、輸液ラインまたは透析ラインの活用も考慮されている、といった留置針構造となるようなシール材を提供することにある。
上記した課題を解決するため、本出願では、請求項1から請求項8に記載の発明を提供する。
(請求項1)
請求項1に記載の発明は、 血管に留置する留置針の構造に関し、血管と輸液とを連通させる外針(11)を備えた留置針本体(10)と、血管を捕捉するために外針(11)の内側に位置する金属製極細パイプ状の内針(21)を備えた内針体(20)と、血管確保後の内針(21)を収納するために留置針本体(10)に対して装着される内針収納体(30)とを備えて構成される留置針の構造に係る。
留置針本体(10)は、パイプ状の外針(11)と連通する筒状の本路(13)と、外針(11)の内部へ輸液を送り込むために本路(13)へ連通するように連結分岐した分岐路(14)と、本路(13)の内部において分岐路(14)との境目を形成する自己閉塞機能を備えたシール材(16)とを備える。
前記シール材(16)は、内針(21)が貫通する近傍の部位を内針貫通部(16a)とし、その内針貫通部(16a)は、留置針本体(10)へ内針収納体(30)が装着されるとともに内針(21)がシール材(16)を貫通している場合に、内針収納体(30)における外針(11)側の端部には、シール材(16)の内針貫通部(16a)を外針(11)側に向かって押圧するように弾性変形させるようなシール材押圧部を備える。
以上のような特徴をなす留置針構造に係る。
(用語説明)
内針体(20)は、その全体を金属製極細パイプ状の内針(21)としてもよいが、必要最低限の部位だけ金属製極細パイプ状の内針(21)とするとともにそれ以外の部位を単なる金属線にて形成してもよい。
シール材(16)の「自己閉塞性」とは、細くて硬い材質の例えば針を貫通させることができる柔らかい材質であるとともに、貫通されたその針を抜去した際にその貫通孔を塞いでしまう性質をいう。具体的な材質としては、例えば、シリコンゴム、ウレタン、ブチルゴムなどである。
(作用)
まず、本発明に係る留置針構造について、使用前の状態を説明する。まず、留置針本体(10)の本路(13)および外筒(32)が、内針体(20)を伴った内針収納体(30)を装着している。
次に、医師等が本発明に係る留置針構造を用いて、患者に対して輸液または透析ラインを確保するまでの使用状態を説明する。
まず、内針(21)を用いて患者の皮膚へ穿刺し、患者の皮膚を貫通して血管まで到達したら、外針(11)も血管を捉えられるようにする。輸液または透析ラインは、外針(11)の内部へ輸液を送り込むために本路(13)と、その本路(13)へ連通するように連結分岐した分岐路(14)と、その分岐路(14)と本路(13)との境目に位置したシール材(16)とによって確保される。
輸液または透析ラインを確保されたら、内針(21)は引き抜かれ、内針収納体(30)が、血管確保後の内針(21)を収納する。
貫通していた内針(21)が引き抜かれた後のシール材(16)は、内筒(31)側に患者の血液や輸液などが漏れないように自己閉塞機能によって閉塞する。
シール材(16)は、その内針貫通部(16a)がシール材押圧部によって外針(11)側に向かって押圧するように弾性変形させられている。したがって、経年劣化しても、予め与えられた弾性変形によって自己閉塞機能を補完する。すなわち、輸液または透析ラインを確保されたのちにシール材(16)から引き抜かれ、内針(21)の存在していた貫通孔を塞ぐという自己閉塞機能を長年に渡って保つことができる。
(請求項2)
請求項2記載の発明は、請求項1に記載した留置針構造を限定したものである。
すなわち、シール材押圧部がシール材(16)に対して与える弾性変形の割合は、外針(11)側への変位量がシール材(16)の半径を基準として30%以上100%以下となるようにした留置針構造に係る。
(用語説明)
シール押圧部は、シール材(16)の中央を押圧することでシール材(16)に弾性変形Mを生じさせる。押圧方向の距離をL、シール材(16)の半径をRとすると、三平方の定理より、RR+LL=MM であり、Mを求めることができる。求めたMとNとの差が「変位量」である。その変位量は、Rを基準として1.3倍以上2.0倍以下であることを、本請求項では限定している。
この数値限定により、患者に対して輸液または透析ラインを確保するために用いられる内針(11)の直径サイズのほとんどが、経年劣化を想定した加速試験でも、自己閉塞性の確認のための耐水実験をクリアした。また、留置針構造の全長寸法を合理的なサイズに治めることができた。
(請求項3)
請求項3記載の発明は、請求項1または請求項2のいずれかに記載の留置針構造を限定したものである。
すなわち、前記シール材(16)の内針貫通部内針貫通部(16a)は、内針(21)の外径よりも広く、且つ内針貫通部(16a)以外の部位である周囲部(16b)よりも肉厚に形成したことを特徴とする留置針構造に係る。
(作用)
シール材(16)の内針貫通部(16a)を、内針(21)の外径よりも広く形成しているので、本請求項に係る留置針構造を組み立てる際に、内針(21)がその内針貫通部(16a)を貫通するように組み立てれば良く、いわゆるダッグビル構造のシール材を採用した場合に比べて高い組立精度が要求されない。
一方、内針貫通部(16a)は周囲部(16b)よりも肉厚に形成しているため、内針(21)を引き抜いた後に輸液または透析ラインとして確保されている本路(13)および分岐路(14)の内圧が上昇した場合には、内針貫通部(16a)が肉厚の薄い周囲部(16b)へめり込むように変形する。したがって、内針(21)を引き抜いた後の貫通孔は、シール材(16)の自己閉塞機能とあいまって、密閉性を高めることとなる。このため、シール材(16)の経年劣化(自己閉塞機能の衰え)への懸念も軽減する。
(請求項3)
請求項3記載の発明は、請求項1または請求項2のいずれかに記載の留置針構造を限定したものであり、
シール材(16)は、内針(20)が貫通する近傍の部位を内針貫通部(16a)とし、その内針貫通部(16a)は、内針(20)の外径よりも広く、且つ内針貫通部(16a)以外の部位である周囲部(16b)よりも肉厚に形成し、 留置針本体(10)の本路(13)においては、周囲部(16b)を反外針(11)側から支持するシール支持部材(17)に支持されることとしたことを特徴とする。
(作用)
シール材(16)の内針貫通部(16a)を、内針(21)の外径よりも広く形成しているので、本請求項に係る留置針構造を組み立てる際に、内針(21)がその内針貫通部(16a)を貫通するように組み立てれば良く、いわゆるダッグビル構造のシール材を採用した場合に比べて高い組立精度が要求されない。
一方、内針貫通部(16a)は周囲部(16b)よりも肉厚に形成しているため、内針(21)を引き抜いた後に輸液または透析ラインとして確保されている本路(13)および分岐路(14)の内圧が上昇した場合には、内針貫通部(16a)が肉厚の薄い周囲部(16b)へめり込むように変形する。したがって、内針(21)を引き抜いた後の貫通孔は、シール材(16)の自己閉塞機能とあいまって、密閉性を高めることとなる。このため、シール材(16)の経年劣化(自己閉塞機能の衰え)への懸念も軽減する。
(請求項4)
請求項4記載の発明は、請求項1から請求項3のいずれかに記載の留置針構造を限定したものであり、
シール材(16)は、直径3mm〜8mmの円盤状をなし、内針貫通部(16a)の肉厚を2〜5mmとしたことを特徴とする。
(作用)
シリコンゴム、ウレタン、ブチルゴムなどの自己閉塞機能を備えた材質を採用した場合に、患者の血液による圧力への対応や、シール材(16)による自己閉塞機能や、更には、医療用混注ポートとしての活用も可能な寸法となった。
なお、内針貫通部(16a)の肉厚が2mm未満であると、自己閉塞機能の経年劣化が問題となる可能性があり、肉厚が5mmよりも厚いと内針(21)の貫通作業および引き抜き作業や、医療用混注ポートとしての活用が行いにくくなる可能性があるからである。
(請求項5)
請求項5記載の発明は、請求項1から請求項4のいずれかに記載の留置針構造を限定したものであり、
シール材(16)およびシール支持部材(17)は、シール支持部材(17)に支持されることによって分岐路(14)における尾栓(37)側の壁面とシール材(16)の周囲部(16b)とがほぼ面一となるように形成したことを特徴とする留置針構造に係る。
(作用)
上記のような構成は、本路(13)および分岐路(14)を形成することによる無駄な空間をできるだけなくした構成となる。そのため、ライン確保のために捕捉したことによる滞留血液をなくし、輸液の無駄もこれまでよりも抑制できる。
(請求項6)
請求項6記載の発明は、請求項1から請求項5のいずれかに記載の留置針構造を限定したものである。
すなわち、 内針体(20)は、内針(21)における反尖端(21a)側を内針収納体(30)に固定されるとともに、留置針本体(10)へ内針収納体(30)が装着されている場合に内針(21)の尖端(21a)が外針(11)の尖端から適正な長さ分突出する軸方向長さを有してシール材(16)を貫通させている。
内針収納体(30)は、本路(13)と係合する筒状の外筒(32)と、その外筒(32)に収納されるとともに内針(21)における尖端(21a)側を収納するための内筒(31)とによって二重筒収納構造をなす。
外筒(32)は、外筒(32)における反本路(13)側を閉塞する尾栓(37)と、その尾栓(37)側と内筒(31)の尾栓(37)側の端部との間において外筒(32)が内筒(31)を収納した場合に縮装されるコイルスプリング(33)と、コイルスプリング(33)を縮装させて本路(13)と係合するための係止部(例えば係止突起34)と、その係止部(34)に対して本路(13)との係合状態を変化させることによって内針(21)の尖端(21a)と外針(11)の尖端との相対位置を調整可能なノックボタン(35)とを備える。
内筒(31)は、外針(11)側の端部が本路(13)のシール材(16)側に位置し、コイルスプリング(33)の縮装状態が解除された場合には外筒(32)に対して相対移動して内針(21)の尖端(21a)までを内部へ収納する軸方向長さを有し、 コイルスプリング(33)の縮装状態が解除された場合には、内部空間を連続させた外筒(32)および内筒(31)が内針(21)の全体を覆うように形成する。以上のような特徴をなす留置針構造に係る。
(用語説明)
内針体(20)は、その全体を金属製極細パイプ状の内針(21)としてもよいが、必要最低限の部位だけ金属製極細パイプ状の内針(21)とするとともにそれ以外の部位を単なる金属線にて形成してもよい。
まず、本発明に係る留置針構造について、使用前の状態を説明する。留置針本体(10)に対しては、留置針本体(10)の本路(13)と外筒(32)とが係止部(34)を介して係合することによって、内針体(20)を伴った内針収納体(30)が装着される。このとき、内針(21)は、その尖端(21a)が外針(11)の尖端(11c)から適正な長さ分突出する。また、内筒(31)は、外筒(32)の尾栓(37)側と内筒(31)の尾栓(37)側の端部との間においてコイルスプリング(33)を縮装するとともに、外針(11)側の端部が留置針本体(10)の本路(13)内にて当接する。
次に、医師等が本発明に係る留置針構造を用いて、患者に対して輸液または透析ラインを確保するまでの使用状態を説明する。
まず、尖端(21a)が外針(11)の尖端(11c)から適正な長さ分突出した内針(21)を用いて患者の皮膚へ穿刺する。内針(21)の尖端(21a)が患者の皮膚を貫通して血管まで到達したら、外針(11)も血管を捉えられるようにする。すなわち、ノックボタン(35)を医師等が操作することによって外針(11)の尖端(11c)を内針(21)に対して相対移動させ、外針(11)が血管を捉えるようにする。外針(11)が血管を容易に捉えることが、ノックボタン(35)の操作によって可能となるので、留置針(外針)による血管の捕捉作業が医師等の経験や力量に左右されにくい。
輸液または透析ラインは、外針(11)の内部へ輸液を送り込むために本路(13)と、その本路(13)へ連通するように連結分岐した分岐路(14)と、その分岐路(14)と本路(13)との境目に位置したシール材(16)とによって確保される。
輸液または透析ラインの確保後は、ノックボタン(35)の操作によってコイルスプリング(33)の縮装状態を解除する。すると、外筒(32)が内筒(31)に対して相対移動し、内針(21)の尖端(21a)までを内筒(31)の内部へ収納する。このとき、外筒(32)および内筒(31)が内部空間を連続させて内針(21)の全体を覆うので、患者の血液が付着した鋭利な金属針である内針(21)に、医師等が触れる危険性を低めることができる。
(請求項7)
請求項7記載の発明は、請求項1から請求項6のいずれかに記載の留置針構造を限定したものである。
すなわち、 外針(11)は、先端に向かって外径を小さく絞った尖端部を備えるとともに、血液を捕捉したことが視認できる光透過性を備えた材質にて形成し、内針(21)の長手方向の中間部分において長手方向のパイプ内へ連通する横孔(21b)と備えた留置針構造に係る。
ここで、外針(11)についての材質は、例えば、ウレタン、ポリテトラフルオロエチレンである。これらの材質は柔軟性もあり、患者への負担軽減に寄与する。
(作用)
外針(11)の尖端部(11c)は、先端に向かって外径を小さく絞った形状をなし、穿刺の際の患者への負担を軽減できる。
また、内針(21)が患者の血管を捕捉した後に内針(21)の中へ流れ込む血液は、横孔(21b)から溢れて外針(11)と内針(21)との隙間へ流れ出ることに加え、外針(11)が光透過性を備えているので、外針(11)と内針(21)との隙間の体積を少なくするので、血管を捕捉したことがいち早く視認できる。
(請求項8)
請求項8記載の発明は、請求項1から請求項7のいずれかに記載の留置針構造を限定したものである。
すなわち、内筒(31)の尾栓(37)側の端部と、外筒(32)の外針(11)側の端部には、コイルスプリング(33)による弾発力によって内針(21)の尖端(21a)までを内部へ収納した場合に内筒(31)と外筒(32)とが係合する係合部(例えば内筒に備えた係合突起36)を備えた留置針構造に係る。
前記係合部としては、外筒(32)側に備えることによって内筒(31)と係合するもの、内筒(31)側に備えることによって外筒(32)と係合するもの、両者に備えて両者が係合するもの、のいずれでもよい。
(作用)
収納した内針(21)の尖端(21a)が再露出することを防止するための機構である。すなわち、コイルスプリング(33)による弾発力によって内針(21)の尖端(21a)までを内部へ収納した場合に内筒(31)と外筒(32)とが係合するので、その係合が解除されない限り内針(21)の尖端(21a)が露出することはなく、内針(21)による針刺し事故の発生確率を、更に低めることができる。
(請求項9)
請求項9記載の発明は、請求項1から請求項8のいずれかに記載の留置針構造を限定したものである。
すなわち、ノックボタン(35)は、外筒(32)の外周から外針(11)側に向かって湾曲したカンティレバー形状にて形成する。また、係止部(34)は、本路(13)の反外針(11)側に形成された横孔から突出するとともにノックボタン(35)の先端に向かう係止突起として形成した留置針構造に係る。
(作用)
ノックボタン(35)および係止部(34)を以上のような形状にて形成することによって、簡易な成形や組立を可能とする。また、カンティレバー形状のノックボタン(35)は、片手(例えば利き手)の親指にて操作しやすく、もう片方の手(例えば利き手ではない方の手)で留置針本体(10)や外針(11)を支えながら内針(21)の尖端(21a)と外針(11)との尖端とを相対的に移動させるなどの操作性にも優れている。このため、医療行為の処置に要する時間の短縮化にも寄与する。
(請求項10)
請求項10に記載の発明は、血管に留置する留置針の構造に関し、血管と輸液とを連通させる外針を備えた留置針本体と、血管を捕捉するために外針の内側に位置する金属製極細パイプ状の内針を備えた内針体と、血管確保後の内針を収納するために留置針本体に対して装着される内針収納体とを備えて構成される留置針構造に用いるシール材に係る。
すなわち、内針(21)が貫通する近傍の部位を内針貫通部(16a)とし、 その内針貫通部内針貫通部(16a)は、留置針本体(10)へ内針収納体(30)が装着されるとともに内針(21)がシール材(16)を貫通している場合に、内針収納体(30)における外針(11)側の端部には、シール材(16)の内針貫通部(16a)を外針(11)側に向かって押圧するように弾性変形させるようなシール材押圧部を備えたシール材である。
(請求項11)
請求項11に記載の発明は、請求項10に記載のシール材を限定したものである。
すなわち、シール材押圧部がシール材(16)に対して与える弾性変形の割合は、外針(11)側への変位量がシール材(16)の半径を基準として30%以上100%以下となるようにしたシール材に係る。
請求項10記載の発明に係るシール材(16)は、請求項1等の留置針構造に採用することもできるが、他の留置針構造に採用することも可能である。「他の留置針構造」としては、例えば、特開2000−116791号に開示される留置針組立体である。
シール材(16)の具体的な材質としては、例えば、合成イソプレンゴム、シリコーンゴム、天然ゴム、ブチルゴム、ニトリルゴムなどである。
請求項1および請求項9に記載の発明によれば、血管を捕捉した後の金属針(内針)を安全にその場で処理でき、経年劣化にも強い留置針構造を提供することができた。
請求項3および請求項4に記載の発明によれば、更に、現在よりも簡易な組立が可能で、輸液ラインまたは透析ラインの活用も考慮された留置針構造を提供することができた。
請求項5に記載の発明によれば、更に、ライン確保のために捕捉したことによる滞留血液をなくし、輸液の無駄もこれまでよりも抑制できる留置針構造を提供することができた。
請求項6から請求項9に記載の発明によれば、更に、留置針(外針)による血管の捕捉作業が医師等の経験や力量に左右されにくい留置針構造を提供することができた。
請求項10および請求項11に記載の発明によれば、留置針構造に採用されることによって、留置針(外針)による血管の捕捉作業が医師等の経験や力量に左右されにくく、血管を捕捉した後の金属針(内針)を安全にその場で処理でき、現在よりも簡易な組立が可能であること、輸液ラインまたは透析ラインの活用も考慮されている、といった留置針構造となるようなシール材を提供することができた。
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。ここで用いる図面は、図1から図8までと、図13から図15である。
図1等に基づいて、全体構成について説明する。
図1に示すのは、血管と輸液とを連通させる外針(11)を備えた留置針本体(10)と、血管を捕捉するために外針(11)の内側に位置する金属製極細パイプ状の内針(21)を備えた内針体(20)と、血管確保後の内針(21)を収納するために留置針本体(10)に対して装着される内針収納体(30)とを備えて構成される留置針の構造である。
留置針本体(10)は、パイプ状の外針(11)と連通する筒状の本路(13)と、外針(11)の内部へ輸液を送り込むために本路(13)へ連通するように連結分岐した分岐路(14)と、本路(13)の内部において分岐路(14)との境目を形成する自己閉塞機能を備えたシール材(16)とを備える。
内針体(20)は、内針(21)における反尖端(21a)側を内針収納体(30)に固定されるとともに、留置針本体(10)へ内針収納体(30)が装着されている場合に内針(21)の尖端(21a)が外針(11)の尖端から適正な長さ分突出する軸方向長さを有してシール材(16)を貫通している。
内針収納体(30)は、本路(13)と係合する筒状の外筒(32)と、その外筒(32)に収納されるとともに内針(20)における尖端側を収納するための内筒(31)とによって二重筒収納構造をなしている。
外筒(32)は、外筒(32)における反本路(13)側を閉塞する尾栓(37)と、その尾栓(37)側と内筒(31)の尾栓(37)側の端部との間において外筒(32)が内筒(31)を収納した場合に縮装されるコイルスプリング(33)と、コイルスプリング(33)を縮装させて本路(13)と係合するための係止部(例えば係止突起34)と、その係止部(34)に対して本路(13)との係合状態を変化させることによって内針(21)の尖端(21a)と外針(11)の尖端との相対位置を調整可能なノックボタン(35)とを備える。
内筒(31)は、外針(11)側の端部が本路(13)のシール材(16)側に位置し、コイルスプリング(33)の縮装状態が解除された場合には外筒(32)に対して相対移動して内針(21)の尖端(21a)までを内部へ収納する軸方向長さを有している。
シール材(16)は、内針(20)が貫通する近傍の部位を内針貫通部(16a)とし、その内針貫通部(16a)は、内針(20)の外径よりも広く、且つ内針貫通部(16a)以外の部位である周囲部(16b)よりも肉厚に形成する。留置針本体(10)の本路(13)においては、周囲部(16b)を反外針(11)側から支持するシール支持部材(17)に支持されることとしている。
(図2) 図2は、コイルスプリング(33)の縮装状態が解除された状態の外筒(32)および内筒(31)の様子を示している。
コイルスプリング(33)の縮装状態が解除された場合には、内部空間を連続させた外筒(32)および内筒(31)が内針(21)の全体を覆うように形成している。また、内筒(31)の尾栓(37)側の端部と、外筒(32)の外針(11)側の端部には、コイルスプリング(33)による弾発力によって内針(21)の尖端(21a)までを内部へ収納した場合に内筒(31)と外筒(32)とが係合するように、内筒側に係合突起(36)を備えている。
なお、内筒(31)と外筒(32)との係合部としては、外筒(32)側に備えることによって内筒(31)と係合するもの、両者に備えて両者が係合するものでもよい。
内筒(31)の先端は、内針(21)が外針(11)の内側に位置している場合に内針(21)を貫通させる内針貫通孔(31a)を設けている。また、内針(21)の根元開口部は、液体の漏洩防止材(22)による封入しつつ、内針収納体(30)の尾栓(37)に固定している。
ノックボタン(35)は、外筒(32)の外周から外針(11)側に向かって湾曲したカンティレバー形状にて形成し、係止部(34)は、本路(13)の反外針(11)側に形成されたノック孔(13a)から突出するとともにノックボタン(35)の先端に向かう係止突起として形成している。
(図3)
図3は、内針体(30)を内針収納体(30)が収納し始めた状態を示す断面側面図である。内筒(31)が外筒(32)をコイルスプリング(33)によって反外針(11)側へ押し出そうとするが、医者等は外筒(32)に設けられたノックボタン(35)を握った状態であれば、急激に内針体(30)を内針収納体(30)が収納することはない。
(図4)
留置針本体(10)には、留置針本体(10)を患者の身体に固定する際の補助となる翼部材(12)を備えている。この翼部材(12)は、長い時間人体に接し、留置針本体(10)を固定させるための目的を持つので、ゴムあるいはエラストマーなどの弾力があり、肌への感触の悪くない素材であることが一般的である。
外針(11)は、本路(13)の内壁に固定される固定部(11a)と、本路(13)の先端から突出する中間部(11b)と、その中間部(11b)から先端に向かって外径を小さく絞った尖端部(11c)とからなり、柔らかな材質(例えば、ウレタン、ポリテトラフルオロエチレン)にて極細チューブ状に成形されている。また、血液を捕捉したことが分かるように、光透過性を備えた材質を採用する。
(図5、図6)
内針(21)は、斜めにカットすることによって鋭利な尖端を形成した尖端部(21a)と、内針(21)の長手方向の中間部分において長手方向のパイプ内へ連通する横孔(21b)と備えている。
図5に示すように、外針(11)の尖端部(11c)は、内針(21)の尖端(21a)のやや後方において内針(21)に密着している。
(図7、図8)
図7および図8は、シール材(16)およびその周辺部材を示すものである。
シール材(16)は、内針(20)が貫通する近傍の部位を内針貫通部(16a)とし、その内針貫通部(16a)は、内針(20)の外径よりも広く、且つ内針貫通部(16a)以外の部位である周囲部(16b)よりも肉厚に形成している。いわば、円盤に円錐台を一体化したような形状をなしている。外形寸法としてより具体的には、直径3mm〜8mmの円盤状をなし、内針貫通部(16a)の肉厚を2〜5mmとしている。
留置針本体(10)の本路(13)においては、周囲部(16b)を反外針(11)側から支持するシール支持部材(17)に支持される。
シール材(16)およびシール支持部材(17)は、シール支持部材(17)に支持されることによって分岐路(14)における尾栓(37)側の壁面とシール材(16)の周囲部(16b)とがほぼ面一となるように形成している。
図7[a]にて示すのは、シール材押圧部(31b)がシール材(16)の内針貫通部(16a)を外針(11)側へ向かって押圧している。そして、内針(21)が引き抜かれた場合には、図7[b]にて示すように内針貫通部(16a)が内針(21)の存在していた貫通孔を塞ぐ機能に対して、シール材(16)は弾性変形状態から無負荷の状態に戻ろうとする機能が加えられる。このため、このシール材(16)が、使用前の状態で経年劣化したとしても、自己閉塞機能を補完する変形機能があるので、内針(21)の存在していた貫通孔を塞ぐ機能を長年に渡って保つことができる。
図8[d]にて示すのは、内針(21)を抜いた後に本路(13)へ圧力が掛かった場合のシール材(16)の変形状体を示したものである。内針貫通部(16a)に形成されたであろう内針(21)の貫通孔は、自己閉塞性とあいまって、更に強く閉じられるように変形することなる。
(上記実施形態の作用)
まず、本発明に係る留置針構造について、使用前の状態を説明する。留置針本体(10)に対しては、留置針本体(10)の本路(13)と外筒(32)とが係止部(34)を介して係合することによって、内針体(20)を伴った内針収納体(30)が装着される。このとき、内針(21)は、その尖端(21a)が外針(11)の尖端(11c)から適正な長さ分突出する。また、内筒(31)は、外筒(32)の尾栓(37)側と内筒(31)の尾栓(37)側の端部との間においてコイルスプリング(33)を縮装するとともに、外針(11)側の端部が留置針本体(10)の本路(13)内にて当接する。
シール材(16)の内針貫通部(16a)を、内針(21)の外径よりも広く形成しているので、組み立ての際に、内針(21)がその内針貫通部(16a)を貫通するように組み立てれば良く、いわゆるダッグビル構造のシール材を採用した場合に比べて高い組立精度が要求されない。
次に、医師等が本発明に係る留置針構造を用いて、患者に対して輸液または透析ラインを確保するまでの使用状態を説明する。
まず、尖端(21a)が外針(11)の尖端(11c)から適正な長さ分突出した内針(21)を用いて患者の皮膚へ穿刺する。内針(21)の尖端(21a)が患者の皮膚を貫通して血管まで到達したら、外針(11)も血管を捉えられるようにする。すなわち、ノックボタン(35)を医師等が操作することによって外針(11)の尖端(11c)を内針(21)に対して相対移動させ、外針(11)が血管を捉えるようにする。外針(11)が血管を容易に捉えることが、ノックボタン(35)の操作によって可能となるので、留置針(外針)による血管の捕捉作業が医師等の経験や力量に左右されにくい。
特に、ノックボタン(35)および係止部(34)は、簡易な成形や組立を可能としている。また、カンティレバー形状のノックボタン(35)は、例えば利き手の親指にて操作しやすく、もう片方の手で留置針本体(10)や外針(11)を支えながら内針(21)の尖端(21a)と外針(11)との尖端とを相対的に移動させるなどの操作性にも優れている。このため、医療行為の処置に要する時間の短縮化にも寄与する。
外針(11)の尖端部(11c)は、先端に向かって外径を小さく絞った形状をなし、穿刺の際の患者への負担を軽減できる。また、内針(21)が患者の血管を捕捉した後に内針(21)の中へ流れ込む血液は、横孔(21b)から溢れて外針(11)と内針(21)との隙間へ流れ出ることに加え、外針(11)が光透過性を備えているので、外針(11)と内針(21)との隙間の体積を少なくするので、血管を捕捉したことがいち早く視認できる。
輸液または透析ラインは、外針(11)の内部へ輸液を送り込むために本路(13)と、その本路(13)へ連通するように連結分岐した分岐路(14)と、その分岐路(14)と本路(13)との境目に位置したシール材(16)とによって確保される。本路(13)および分岐路(14)を形成することによる無駄な空間をできるだけなくした構成となる。そのため、ライン確保のために捕捉したことによる滞留血液をなくし、輸液の無駄もこれまでよりも抑制できる。
輸液または透析ラインの確保後は、ノックボタン(35)の操作によってコイルスプリング(33)の縮装状態を解除する。すると、外筒(32)が内筒(31)に対して相対移動し、内針(21)の尖端(21a)までを内筒(31)の内部へ収納する。このとき、外筒(32)および内筒(31)が内部空間を連続させて内針(21)の全体を覆うので、患者の血液が付着した鋭利な金属針である内針(21)に、医師等が触れる危険性を低めることができる。
コイルスプリング(33)による弾発力によって内針(21)の尖端(21a)までを内部へ収納した場合に内筒(31)と外筒(32)とが係合するので、その係合が解除されない限り内針(21)の尖端(21a)が露出することはなく、内針(21)による針刺し事故の発生確率を、更に低めることができる。
貫通していた内針(21)が引き抜かれたシール材(16)であるが、内筒(31)側に患者の血液や輸液などが漏れないように自己閉塞機能によって閉塞する。内針貫通部(16a)は周囲部(16b)よりも肉厚に形成しているため、内針(21)を引き抜いた後に輸液または透析ラインとして確保されている本路(13)および分岐路(14)の内圧が上昇した場合には、内針貫通部(16a)が肉厚の薄い周囲部(16b)へめり込むように変形する。したがって、内針(21)を引き抜いた後の貫通孔は、シール材(16)の自己閉塞機能とあいまって、密閉性を高めることとなる。このため、シール材(16)の経年劣化(自己閉塞機能の衰え)への懸念も軽減する。
シール材(16)は合成イソプレンゴムなどの自己閉塞機能を備えた材質を採用し、直径3mm〜8mmの円盤状をなし、内針貫通部(16a)の肉厚を2〜5mmとしているので、患者の血液による圧力への対応や、シール材(16)による自己閉塞機能が十分であり、更には、医療用混注ポートとしての活用も可能な寸法となった。
なお、シール材(16)の材質としては、現在最も適していると考えられている合成イソプレンゴムのほか、シリコーンゴム、天然ゴム、ブチルゴム、ニトリルゴムなどがある。硬度がJIS−A:20〜55の範囲である熱可塑性エラストマーであれば、同様の機能と効果が期待できる。
なお、図3に示す状態では、本路(13)と外筒(32)との摩擦抵抗の存在により、一気に図2に示す状態にはならないように操作することが容易である。このため、図3の状態となってからプライミングが不十分であると判断されるような場合には、図1の状態に戻すことも可能である。なお、係止突起(34)は、図1の状態に戻すことができるように、外針(11)に向かって先細りとなる形状をなしている。
(バリエーション)
内針体(20)は、その全体を金属製極細パイプ状の内針(21)としてもよいが、必要最低限の部位だけ金属製極細パイプ状の内針(21)とするとともにそれ以外の部位を単なる金属線にて形成してもよい。
内筒(31)と外筒(32)とが係合する係合部としては、内筒(31)側に備えることによって外筒(32)と係合するものを実施形態として説明したが、外筒(32)側に備えることによって内筒(31)と係合するもの、両者に備えて両者が係合するもの、のいずれでもよい。
(保護キャップ)
図示は省略するが、留置針本体(10)、内針体(20)および内針収納体(30)が組み立てられた状態において、内針(21)および外針(11)を保護する保護キャップを備える。この保護キャップは、互いに係合している留置針本体(10)および内針収納体(30)に対して着脱自在に係合する係合構造を備える。保護キャップが装着された状態では、内針(21)および外針(11)を保護するので、使用前の状態を清潔且つ安全に保持できる。
なお、保護キャップを破損するほどの力で動かさない限り、ノックボタン(35)を動かすことはできないような構造を採用するとより望ましい。
(図13)
図13は、シール材(16)についての劣化を調べるために行った加速試験の主要部を示す。
円盤状をなしたシール材(16)の直径方向の寸法を、弾性変形させずに、筒状のシール材固定器(40)にて固定する。そして、シール材(16)の中央を、内針(21)を保持した押圧器(50)にて押圧する。
シール材固定器(40)に固定されたシール材(16)の寸法(シール材固定器40の内径)D1は、6.4mmであり、押圧器の直径D2は、3.0mmである。また、押圧長さLは、実験1では1mm、実験2では2mmとしている。更に、押圧器(50)に支持されてシール材(16)を貫通する内針(21)の直径は、実験1,実験2とも、18G、22G、24G、27Gという4種類を用意している。18Gは直径1.25mm、22Gは直径0.71mm、24Gは直径0.56mm、27Gは直径0.41mmである。
前述のLを用いて伸び率を定義すると、図13の右欄に示すような関係が成り立つ。すなわち、弾性変形する前の寸法Nは、(D1−D2)/2である。LとNとを用いて、弾性変形後のMを算出するには、三平方の定理を用いればよい。実験1では、M=2.6となるので、変形率は0.53が求められる。実験2では、M=1.9となるので、変形率は0.13が求められる。
加速試験は、シール材固定器(40)にて固定されたシール材(16)に対して、摂氏50度にて三週間を経過させる。そして、その経過後に、押圧器(50)および内針(21)を取り除き、シール材(16)に対して穿刺されていた貫通孔に対して耐水圧試験を施す。使用した内針の種類毎に同一条件で10本を用意し、水漏れがなかった数をカウントする。
図14に試験結果を示している。実験2では、全ての内針直径にて耐水圧試験をクリアしている。一方、実験1では、貫通させていた内針の直径が太いものにおいて、耐水圧試験をクリアできないものがあった。これらの試験結果から、シール材(16)に予め弾性変形を加えておくことで、シール材(16)の自己閉塞性に関する経時劣化を補うのに最適な値は、概ね以下の通りとなった。
すなわち、外針(11)側への変位量がシール材(16)の半径を基準として30%以上100%以下となるようにしたものである。なお、この数値は、現在、シール材の材料として好ましく用いられている合成イソプレンゴム、シリコーンゴム、または後述する「EPDM」によるものである。
続いて、外針(11)側への変位量がシール材(16)の半径を基準として30%以上であるという条件を設定した根拠を、図15を用いて説明する。図15は、EPDMと耐熱性ポリ塩化ビニルとについて、温度と圧縮歪みとの関係を示すグラフである。
ここで、EPDMとは、エチレンプロピレンジエン三元共重合体(Ethylene Propylene Diene Methylene Linkage)であり、熱安定性、耐老化性に優れている材料である。
図15によれば、EPDMが摂氏30度にて圧縮された場合の永久歪みが25%程度(図中「α」にて示す点)、摂氏50度にて圧縮された場合の永久歪みが30%強程度(図中「α」にて示す点)である。保管状態としては摂氏50度にまで達することはないと考えられる。一方、実験1にて与えた伸び率は13%であったが、この数値では水漏れの発生する確率がゼロではない。
以上のことから、外針(11)側への変位量がシール材(16)の半径を基準として30%以上である、との条件を設定した。
続いて、外針(11)側への変位量がシール材(16)の半径を基準として100%以下であるという条件を設定した根拠を説明する。
シール材の材料として用いられているゴム類は、300%ほど伸びることができる。したがって、原理的には、伸び率の最大値が(たとえば300%)が限界である。
しかし、本件発明に係る留置針構造にて使用するシール材は、その構造上、コンパクトであれば留置針構造の全長寸法を抑えることができる。したがって、200%以上という条件は意味がない。
そこで、設計上は100%以下であることが合理的であることから、外針(11)側への変位量がシール材(16)の半径を基準として100%以下である、との条件を設定した。なお、より好ましくは、80%以下である。留置針構造の全長寸法が合理的なサイズとなる一方、経年劣化後の耐水性についての信用も得られると考えられるからである。
本発明の実施形態の全体を示す断面側面図である。 本発明の実施形態において、内針を安全に収納した状態を示す断面側面図である。 内針体の収納し始めた状態を示す断面側面図である。 留置針本体を示す正面図および断面側面図である。 外針と内針の尖端部分の構造を示す正面図および断面側面図である。 内針体を示す断面側面図である。 シール部材の機能を示す図である。 シール部材の斜視図や機能を示す図である。 先行技術を示す図である。 先行技術を示す図である。 先行技術を示す図である。 先行技術を示す図である。 加速試験の主要部を示す概念図である。 加速試験の結果を示す表である。 温度と圧縮歪みとの関係を示すグラフである。
符号の説明
10 留置針本体
11 外針 11a 固定部
11b 中間部 11c 尖端部
12 翼
13 本路 13a ノック孔
14 分岐路
15 部材
16 シール部材 16a 内針貫通部
16b 周囲部
17 シール支持部材
21 内針 21a 尖端部
21b 横孔
22 充填材
30 内針収納体
31 内筒 31a 内針貫通孔
31b シール材押圧部
32 外筒
33 コイルスプリング
34 係止突起
35 ノックボタン
36 再露出防止用係止部
37 尾栓
40 シール材固定器
50 押圧器

Claims (11)

  1. 血管に留置する留置針の構造に関し、血管と輸液とを連通させる外針を備えた留置針本体と、血管を捕捉するために外針の内側に位置する金属製極細パイプ状の内針を備えた内針体と、血管確保後の内針を収納するために留置針本体に対して装着される内針収納体とを備えて構成される留置針の構造であって、
    留置針本体は、パイプ状の外針と連通する筒状の本路と、外針の内部へ輸液を送り込むために本路へ連通するように連結分岐した分岐路と、本路の内部において分岐路との境目を形成する自己閉塞機能を備えたシール材とを備え、
    前記シール材は、内針が貫通する近傍の部位を内針貫通部とし、
    その内針貫通部は、留置針本体へ内針収納体が装着されるとともに内針がシール材を貫通している場合に、内針収納体における外針側の端部には、シール材の内針貫通部を外針側に向かって押圧するように弾性変形させるようなシール材押圧部を備えたことを特徴とする留置針構造。
  2. シール材押圧部がシール材に対して与える弾性変形の割合は、外針側への変位量がシール材の半径を基準として30%以上100%以下となるようにしたことを特徴とする請求項1に記載の留置針構造。
  3. 前記シール材の内針貫通部内針貫通部は、内針の外径よりも広く、且つ内針貫通部以外の部位である周囲部よりも肉厚に形成したことを特徴とする請求項1または請求項2のいずれかに記載の留置針構造。
  4. シール材は、直径3mm〜8mmの円盤状をなし、内針貫通部の肉厚を2〜5mmとした請求項3に記載の留置針構造。
  5. シール材およびシール支持部材は、シール支持部材に支持されることによって分岐路における尾栓側の壁面とシール材の周囲部とがほぼ面一となるように形成した請求項1から請求項4のいずれかに記載の留置針構造。
  6. 内針体は、内針における反尖端側を内針収納体に固定されるとともに、留置針本体へ内針収納体が装着されている場合に内針の尖端が外針の尖端から適正な長さ分突出する軸方向長さを有してシール材を貫通し、
    内針収納体は、本路と係合する筒状の外筒と、その外筒に収納されるとともに内針における尖端側を収納するための内筒とによって二重筒収納構造をなし、
    外筒は、外筒における反本路側を閉塞する尾栓と、その尾栓側と内筒の尾栓側の端部との間において外筒が内筒を収納した場合に縮装されるコイルスプリングと、コイルスプリングを縮装させて本路と係合するための係止部と、その係止部に対して本路との係合状態を変化させることによって内針の尖端と外針の尖端との相対位置を調整可能なノックボタンとを備え、
    内筒は、外針側の端部が本路のシール材側に位置し、コイルスプリングの縮装状態が解除された場合には外筒に対して相対移動して内針の尖端までを内部へ収納する軸方向長さを有し、
    コイルスプリングの縮装状態が解除された場合には、内部空間を連続させた外筒および内筒が内針の全体を覆うように形成したこととした請求項1から請求項5のいずれかに記載の留置針構造。
  7. 外針は、先端に向かって外径を小さく絞った尖端部を備えるとともに、血液を捕捉したことが視認できる光透過性を備えた材質にて形成し、
    内針の長手方向の中間部分において長手方向のパイプ内へ連通する横孔と備えた請求項1から請求項6のいずれかに記載の留置針構造。
  8. 内筒の尾栓側の端部と、外筒の外針側の端部には、コイルスプリングによる弾発力によって内針の尖端までを内部へ収納した場合に内筒と外筒とが係合する係合部を備えたことを特徴とする請求項1から請求項7のいずれかに記載した留置針構造。
  9. ノックボタンは、外筒の外周から外針側に向かって湾曲したカンティレバー形状にて形成し、
    係止部は、本路の反外針側に形成された横孔から突出するとともにノックボタンの先端に向かう係止突起として形成したことを特徴とする請求項1から請求項8のいずれかに記載した留置針構造。
  10. 血管に留置する留置針の構造に関し、血管と輸液とを連通させる外針を備えた留置針本体と、血管を捕捉するために外針の内側に位置する金属製極細パイプ状の内針を備えた内針体と、血管確保後の内針を収納するために留置針本体に対して装着される内針収納体とを備えて構成される留置針構造に用いるシール材であって、
    内針が貫通する近傍の部位を内針貫通部とし、
    その内針貫通部内針貫通部は、留置針本体へ内針収納体が装着されるとともに内針がシール材を貫通している場合に、内針収納体における外針側の端部には、シール材の内針貫通部を外針側に向かって押圧するように弾性変形させるようなシール材押圧部を備えたことを特徴とするシール材。
  11. その弾性変形の割合は、外針側への変位量がシール材の半径を基準として30%以上100%以下となるようにしたことを特徴とする請求項10に記載のシール材。
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