以下、本発明の実施形態を説明する。
本発明の実施形態に係る半導体装置は、各々、チャネル形成領域、ソース領域及びドレイン領域を含む半導体層と、前記半導体層上に設けられたゲート絶縁膜と、前記ゲート絶縁膜上に設けられ前記チャネル形成領域の導電性を制御するゲート電極と、を有する複数のTFTを備える。そして、複数のTFTは、ゲート電極長によって規定されるチャネル長の設定、及び、チャネル形成領域に含まれるn型又はp型不純物の量の設定によりしきい値電圧が相互に異なる複数の群、具体的には、表示用スイッチング素子を構成するTFT(以下「画素部TFT」という。)の群と、ドライバ回路部を構成するTFT(以下「ドライバ回路部TFT」という。)の群と、に分かれている。つまり、この半導体装置は表示装置である。ここで、ドライバ回路はCMOS回路である。
求められている値として、画素部TFTでは、しきい値電圧(Vth)が0.0V〜1.0V程度であり、一方、ドライバ回路部TFTでは、nチャネルのしきい値電圧(Vth)が2.0V〜3.0V程度であり、pチャネルのしきい値電圧(Vth)が−2.0V〜−3.0V程度である。つまり、これら異なるしきい値電圧(Vth)は、チャネルドープのみで制御することなく、チャネル長の制御との相乗効果により、更に安定性を高めた方法で製造することが可能になる。また、チャネルドープ量の調整を最小限に抑えられることで、しきい値電圧(Vth)のバラツキもなくなり、生産において最も大切である歩留まり向上にも繋がる。
これらのしきい値電圧(Vth)では、チャネル長は、画素部TFTの方が、ドライバ回路部TFTよりも短くなるようコントロールし、且つ、前記半導体層のチャネル形成領域に含まれるp型不純物の量は、前記画素部TFTの方が、前記ドライバ回路部TFTよりも少なく、また、前記半導体層のチャネル形成領域に含まれるn型不純物の量は、前記画素部TFTの方が、前記ドライバ回路部TFTよりも、多くすることで、上述課題が達成される。更に、画素部TFTではLDD構造であっても比較的オン電流が上がり、ゲート電圧(Vg)を深くした時のオフ電流の跳ね上りが軽減されオフ動作時におけるリーク電流不良を防ぐことができる。これにより、駆動電圧の上ではオン/オフ比を向上することができる。例えば、図1に示す通り、画素の駆動がオフ動作時のゲート電圧がVg=−3〜−9Vの場合、AよりBの方がオフ時のリーク電流が小さくなる。逆にオン動作時のゲート電圧が5〜10Vの場合、AよりBの方がオン電流が大きくなる。こうすることで、画素は、オン/オフ比が上がり従来の特性よりも有利となる。しかし、ドライバは、回路上、Vg=0Vでオフ動作させる必要があり、Vg=0Vでオフ動作させる必要がある。このようにドライバと画素とで求められる特性が異なり、本発明によれば、工程数を増やすことなく、それを両立できる。
一般に、低温ポリシリコン(LPS)などは、チャネル長によるしきい値電圧(Vth)の変化は少ないものである。しかし、本発明者らにより、触媒元素を用いて得られた結晶質シリコンは、チャネル長によるしきい値電圧(Vth)の変化は低温ポリシリコンに比べ大きいものであることが分かり、これを積極的に利用するといった観点が本発明の出発点になっている。ここで、図2に低温ポリシリコンと結晶質シリコンのチャネル長の変化によるしきい値電圧(Vth)の関係を示す。縦軸にしきい値電圧(Vth)、横軸にチャネル長Lとし、Vds=1が線形領域、Vds=8Vが飽和領域を示している。例えばLをそれぞれ、ドライバ回路部TFTは10μm、画素部TFTは3μmとする。この時、低温ポリシリコンのしきい値電圧(Vth)のズレは、0.8V程度である。同様に、触媒元素を用いて得られた結晶質シリコンのしきい値電圧(Vth)のズレは、1.3Vである。一般的な低温ポリシリコンでは、チャネル長の変更によって、しきい値電圧(Vth)を異ならせることは出来るが、触媒元素を用いた結晶質半導体膜では、より有効であると言える。また、前記結晶質シリコンを用いた方は、しきい値電圧(Vth)の変化は大きく、その制御がより正確、簡易的に行え、異なるしきい値電圧(Vth)を持ったTFTも容易に作り分けることが出来る。
このように、チャネル長によりしきい値電圧(Vth)を制御し、目的に見合ったTFTを作り分けることができるが、注目すべきは、従来技術のものとは異なり、TFTの特性を作り分けるための付加工程が全く必要ない。TFTを作製する際、必要とするしきい値電圧(Vth)に対して、それぞれのグループのTFTで、ゲート電極長をそれぞれ設定した値に形成するだけでよい。チャネル長はオン電流やTFTの設計にもよるが、本発明においては、チャネル長をしきい値電圧(Vth)を制御する目的から決定し、必要とするオン電流はチャネル幅により設定される。
更に、本発明の効果を上げるためには、チャネル領域へのn型又はp型の不純物の導入を補佐的に行ってもよい。一般の低温ポリシリコンを用いた場合におけるチャネルドープと比べ、前記結晶質シリコンでは、上述の相乗効果によって最小限の調整によりしきい値電圧(Vth)が得られることも明瞭である。
本発明は、結晶質シリコンを有した複数のTFTを設けられた表示装置において、チャネル長は、画素部TFTの方がドライバ回路部TFTよりも短く、半導体層のチャネル形成領域に含まれるp型不純物の量は、画素部TFTの方がドライバ回路部TFTよりも少なく、また、半導体層のチャネル形成領域に含まれるn型不純物の量は、画素部TFTの方がドライバ回路部TFTよりも多くし、画素部TFTとドライバ回路部TFTのしきい値電圧(Vth)などの特性をそれぞれ異ならせる。本発明は、簡易な手段で前記課題の解決を図るものである。
画素部ゲート電極におけるチャネル長は4μm以下であり、ドライバ回路部ゲート電極におけるチャネル長は4μm以上であることが望ましい。図2より、Vds=8Vの飽和領域では、チャネル長が短くなるにつれ、緩やかにしきい値電圧(Vth)が低下するが、Vds=1Vの線形領域では、チャネル長が4μm程度を境として、それ以下ではしきい値電圧(Vth)の低下が見られ、それ以上は飽和傾向にある。したがって、4μmを境界として、表示部では4μm以上、ドライバ部では4μm以下と設定することが本発明においては有効である。
更に、前記半導体層のチャネル形成領域に含まれるp型不純物の量は、画素部TFTの方がドライバ回路部TFTよりも少なく、また、前記半導体層のチャネル形成領域に含まれるn型不純物の量は、画素部TFTの方がドライバ回路部TFTよりも多くする。
ここで、本発明では、前記半導体層のチャネル形成領域とソース領域との接合部、又は、チャネル形成領域とドレイン領域との接合部には、低濃度不純物領域(LDD領域)を備えていることが好ましい。その場合、前記半導体層において、階段状の断面形状を有するゲート電極における階段部の下部の領域は、低濃度不純物領域(LDD領域)である。あるいは、前記半導体層において、その上層に、前記二層の異なる導電膜の積層構造から成るゲート電極の下層および上層の導電膜が存在している領域は、チャネル形成領域であり、下層の導電膜のみが存在している領域は低濃度不純物領域(LDD領域)である。
ゲート電極を前述のような階段状あるいは積層構成とすることにより、チャネル形成領域とソース領域あるいはドレイン領域との接合部に、自己整合的に形成されたLDD領域を有する構造とすることができる。領域は、TFTのオフ電流を下げる目的やホットキャリア耐性を高めるために設けられ、信頼性を向上させる手段であるが、この領域の長さが変動すると、素子としての信頼性がばらつくだけでなく、それが寄生抵抗となり、オン特性までもがばらつく。以上のようなゲート電極の構成とし、そのゲート電極の階段部あるいは積層構造では下層の導電膜のみが存在している下部をLDD領域とすることで、一定のLDD領域を安定して得ることができる。
画素部TFTは、複数個が直列接続されたマルチゲート構造を構成しており、チャネル長が、それらの各々のチャネル長であるものであってもよい。
ドライバ回路部TFTは、複数個が直列接続されたマルチゲート構造を構成しており、それらの各々のチャネル長が4μm以下であるものであってもよい。
また、画素部TFT及びドライバ回路部TFTからなる複数のTFTは、半導体層に非晶質半導体膜の結晶化を促進する触媒元素が含まれたTFTを包含していてもよい。かかる触媒元素は、ニッケル(Ni)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、スズ(Sn)、鉛(Pb)、ルテニウム(Ru)、ロジウム(Rh)、パラジウム(Pd)、オスミウム(Os)、イリジウム(Ir)、白金(Pt)、銅(Cu)及び金(Au)から選ばれた一種または複数種の元素である。
半導体層は、結晶の面配向が主として<111>晶帯面で構成されている結晶質半導体膜で形成されているものであってもよい。
この場合、半導体層を形成する結晶質半導体膜の<111>晶帯面は、(110)面配向と(211)面配向とが50%を占めるものであってもよい。また、半導体層を形成する結晶質半導体膜は、ドメイン径が2〜10μmである結晶ドメインを有するものであってもよい。
さて、次に本発明の半導体装置を得るために製造方法としては、 結晶質領域を含む半導体膜を形成する工程と、前記半導体膜にパターニングを施して各々が結晶質領域を備えた複数の島状半導体層を形成する工程と、前記複数の島状半導体層の上にゲート絶縁膜を形成する工程と、前記ゲート絶縁膜上に導電膜を堆積させる工程と、前記導電膜にパターニング及びエッチングを施して前記複数の島状半導体層のそれぞれに対応するようにゲート電極を形成する工程と、前記各島状半導体層の一部にn型又はp型不純物元素をドーピングしてチャネル形成領域、ソース領域及びドレイン領域を構成して薄膜トランジスタを形成する工程と、を包含し、形成される複数の薄膜トランジスタがしきい値電圧の相互に異なる複数の群に分かれるように、前記ゲート電極を形成する工程において、チャネル長を規定するゲート電極長が相互に異なる複数の群に分かれるゲート電極を形成する。
また、従来法のように、ドーピングでしきい値電圧(Vth)を制御することより、チャネル長との相乗効果によって、今まで以上にバラツキ抑え、しきい値電圧(Vth)の制御性が高くなり、簡易な方法によって従来の課題が解決することができる。
また、本発明では、前記結晶質領域を含む半導体膜を形成する工程において、非晶質半導体膜にレーザー光を照射することにより結晶化させるようにしてもよい。さらに、前記結晶質領域を含む半導体膜を形成する工程において、非晶質半導体膜の少なくとも一部に結晶化を促進する触媒元素を添加して加熱処理することにより結晶化させてもよい。
加えて、この製造方法では、結晶化を促進する触媒元素を用い、加熱処理により結晶化された結晶質半導体膜に対して、レーザ照射を行なうことで、面方位の揃ったより良好な結晶質半導体膜を得ることができる。この場合、先ほどのように非晶質半導体膜を直接溶融固化し、結晶化する方法に比べて、TFTの電界効果移動度で2倍以上の高い電流駆動能力が得られる。しかしながら、この場合には、触媒元素として用いる金属元素の半導体への悪影響が懸念される。そのため、このような製造方法を用いた場合には、結晶成長させた後、触媒元素を、チャネル形成領域やチャネル形成領域とソース・ドレイン領域との接合部近傍から取り除く(移動させる)手法が採られる。本発明者らは、この工程をゲッタリングと称する。これらの触媒元素は、n型を付与する5族Bに属する元素(例えばリン)や、p型を付与する3族B元素(例えばホウ素)が存在している領域に集まり易いという性質があり、それらの元素が導入された領域(ゲッタリング領域)を形成し、そこに触媒元素を移動させるという手法が用いられる。
ここで、導電膜を第1の導電膜と第2の導電膜との積層構造としたときに、それらにパターニング及びエッチングを施すことにより、前記第1の導電膜よりも第2の導電膜の方が幅が狭くなるような階段状で積層構造となるゲート電極を形成するには、第2の導電膜を第1のテーパー角度を有するようにエッチング加工する工程と、第1の導電膜を第2のテーパー角度を有するようにエッチング加工する工程と、第1のテーパー角度を有するようにエッチング加工された第2の導電膜を、さらに選択的にエッチング加工し、第1のテーパー角度よりも大きなテーパー角度となる第3のテーパー角度を有するようにエッチング加工する工程と、を有すればよい。このようにすることで、前記第1の導電膜よりも第2の導電膜の方が幅が狭くなるような階段状で積層構造となるゲート電極を、制御性よく簡易に形成することができる。
また、前記第2の導電膜を第1のテーパー角度を有するようにエッチング加工する工程と、第1の導電膜を第2のテーパー角度を有するようにエッチング加工する工程と、第1のテーパー角度を有するようにエッチング加工された第2の導電膜を、さらに選択的にエッチング加工し、第1のテーパー角度よりも大きなテーパー角度となる第3のテーパー角度を有するようにエッチング加工する工程と、は、エッチング装置内にて、連続的に行なわれるものであってもよい。これにより、製造プロセスを増やすことなく、前記形状のゲート電極が容易に得られ、製造コストを低減できる。
また、前述の製造方法において、前記第2の導電膜を第1のテーパー角度を有するようにエッチング加工する工程と、第1の導電膜を第2のテーパー角度を有するようにエッチング加工する工程と、を行なった後、第1のテーパー角度を有するようにエッチング加工された第2の導電膜と、第2のテーパー角度を有するようにエッチング加工された第1の導電膜とをマスクとして、前記島状半導体層の一部にn型あるいはp型を付与する不純物元素をドーピングする工程を行なうようにしてもよい。この場合には、最終的に得られる階段状のゲート電極において、最終的な第1の導電膜の幅に対して、ドーピング工程が完全に選択的に行なわれ、このときのドーピング工程時に第1の導電膜を越えて半導体層に予定外の(あるいは予定外の濃度の)不純物がドーピングされるのを防止できる。
また、同じく前述の製造方法において、前記ゲート電極をマスクとして、前記島状半導体層の一部にn型あるいはp型を付与する不純物元素をドーピングする工程は、前記ゲート電極の第2の導電膜をマスクとし、第1の導電膜を越して、前記ドーピングが行なわれるものであってもよい。さらには、前記ゲート電極をマスクとして、前記島状半導体層の一部にn型あるいはp型を付与する不純物元素をドーピングする工程は、前記ゲート電極の第2の導電膜をマスクとし、第1の導電膜を越して、前記n型あるいはp型を付与する不純物元素が低濃度にドーピングされ、前記ゲート電極の第1の導電膜をマスクとして、前記n型あるいはp型を付与する不純物元素が高濃度にドーピングされるものであってもよい。このような工程を行なうことにより、第1の導電膜と第2の導電膜との導電膜の幅の差(階段状部分の長さ)を利用して、LDD領域を自己整合的に形成することができる。
さらに、前記ゲート電極をマスクとして、前記島状半導体層の一部にn型あるいはp型を付与する不純物元素をドーピングする工程の後、前記ゲート電極の第2の導電膜をマスクとし、露呈している領域の第1の導電膜をエッチング除去するようにしてもよい。このような工程を行なった場合、第1の導電膜がエッチング除去された下部の半導体層において、そこはLDD領域となっており、その上層にはゲート電極が存在しない構造となる。このような構造とした場合、LDD領域は、特にTFTのオフ動作時のリーク電流の低減に効果がある。反対に、第1の導電膜をエッチングせずに残した状態では、第1の導電膜のみの領域下部では、そのLDD領域上にゲート電極が存在する状態となる。このような構造の場合には、TFTのオフ電流の低減効果は薄れるが、ホットキャリア耐性が高くなり、信頼性を向上できる。このように、例えば、一部のTFTにおいてのみ、第1の導電膜を、第2の導電膜をマスクとして露呈している領域をエッチング除去することで、それぞれの素子の目的に応じた特性を有するTFTを作り分けることもできる。
以上の本発明の製造方法においては、前記導電膜にパターニング及びエッチングを施してゲート電極を形成する工程は、ICP(Inductively Coupled Plasma:導結合型プラズマ)エッチング法、あるいはRIE(リアクティブイオンエッチング)法により行なわれるようにしてもよい。このような手法を用いることで、本発明に適応できるテーパー形状のエッチングが精度よく行なえる。特に、前述のように第1の導電膜と第2の導電膜を積層構造とし、それを階段状にエッチングすることが可能となり、そのときのエッチング精度も確保できる。
さて、以上の本発明の製造方法において、前記非晶質半導体膜あるいは前記結晶質領域を含む半導体膜から、結晶質領域を含む半導体膜を得る工程は、前記非晶質半導体膜あるいは前記結晶質領域を含む半導体膜にレーザー光を照射することにより行なうようにしてもよい。さらには、前記非晶質半導体膜あるいは前記結晶質領域を含む半導体膜に照射するレーザー光として、パルスレーザー光を用い、前記非晶質半導体膜あるいは前記結晶質領域を含む半導体膜の任意の一点につき、複数回、連続的に照射するようにしてもよい。これにより、基板に熱的損傷を与えることなく、良好な結晶性を有する結晶質半導体膜が得られる。このとき得られる結晶質半導体膜は、非晶質半導体膜に対して直接レーザー光を照射した場合、その結晶粒径は、100nmから1000nmであることが望ましい。このような結晶粒径のときに良好な特性のTFTが安定して得られる。すなわち、本発明の半導体装置においては、前記半導体層において前記結晶粒界に囲まれて成る結晶粒の粒径は、100nmから1000nmである。
また、以上のような製造方法により作製された本発明の半導体装置では、触媒元素を利用して結晶化を行なった場合には、前記半導体層の少なくとも一部には、非晶質半導体膜の結晶化を促進する触媒元素が含まれる。特に、触媒元素をチャネル領域以外に移動させるゲッタリングを行った場合には、ソース・ドレイン領域やソース・ドレイン領域の外側の専用のゲッタリング領域に、触媒元素が高濃度で存在した状態となる。このときに利用できる触媒元素としては、ニッケル(Ni)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、スズ(Sn)、鉛(Pb)、ルテニウム(Ru)、ロジウム(Rh)、パラジウム(Pd)、オスミウム(Os)、イリジウム(Ir)、白金(Pt)、銅(Cu)及び金(Au)から選ばれた一種または複数種の元素であり、これらの元素であれば、微量で結晶化助長の効果がある。それらの中でも、特にNiを用いた場合に最も顕著な効果を得ることができる。
以下に、具体的な構成について図面に基づいて説明する。
(第1実施形態)
本発明の第1実施形態を図3A及び図3Bを用いて説明する。
第1実施形態では、アクティブマトリクス型の液晶表示装置の画素部nチャネルTFTとドライバ回路部nチャネルTFTとをガラス基板上に作製する工程について説明する。
図3A及び図3Bは、第1実施形態で説明するTFTの作製工程を示す断面図であり、図3A(A)から図3B(I)の順にしたがって工程が順次進行する。
まず、ガラス基板201のTFTを形成する表面に、ガラス基板201からの不純物拡散を防ぐために、酸化シリコン膜、窒化シリコン膜または酸化窒化シリコン膜などの下地膜を形成する。例えば、プラズマCVD法でSiH4、NH3、N2Oから作製される酸化窒化シリコン膜の第1下地膜202を100nm、同様にSiH4、N2Oから作製される酸化窒化シリコン膜の第2下地膜203を100nmの厚さに積層形成すればよい。
次に、20〜150nm(好ましくは30〜70nm)の厚さで非晶質構造を有する半導体膜を、プラズマCVD法やスパッタ法などの公知の方法で形成する。例えば、プラズマCVD法で非晶質シリコン膜(a−Si膜)204を40nmの厚さに形成すればよい。非晶質構造を有する半導体膜としては、非晶質半導体膜や微結晶半導体膜がある。また、第1及び第2下地膜202,203とa−Si膜204とは同じ成膜法で形成することが可能であるので、両者を連続形成してもよい。第1及び第2下地膜202,203を形成した後、一旦大気雰囲気に晒さないことでその表面の汚染を防ぐことが可能となり、作製するTFTの特性バラツキやしきい値電圧(Vth)の変動を低減させることができる。以上までの状態が図3A(A)である。
次に、a−Si膜204の脱水素処理を行い、図3A(B)に示すように、レーザー光を照射することで、a−Si膜204を瞬間的に溶融させて結晶化させる。これによりa−Si膜204は、結晶質ケイ素膜204aとなる。このときのレーザー光としては、XeClエキシマレーザー(波長308nm、パルス幅40nsec)やKrFエキシマレーザー(波長248nm)が適用できる。また、レーザ発振器から放出されたレーザ光を光学系で線状に集光し、ガラス基板201表面で長尺形状となるようにし、長尺方向に対して垂直方向に順次走査を行うことで、基板全面の結晶化を行うようにすればよい。レーザー光の一部が重なるようにして走査することで、a−Si膜204の任意の一点において、複数回のレーザー照射が行われ、それによって均一性の向上が図れる。このとき、レーザー光の照射エネルギー密度を350〜500mJ/cm2(例えば420mJ/cm2)とし、任意の一点における照射回数を10〜40ショット(例えば20ショット)となるように設定することで、結晶粒径が200〜500nm、平均300nm程度の結晶質ケイ素膜が得られる。また、このときの結晶質ケイ素膜204a表面の平均表面粗さRaは4〜9nm(例えば6nm程度)であることが望ましい。この時使用するレーザーとしては、前記エキシマレーザー以外にYAGレーザーやYVO4レーザー等も用いることができる。また、結晶化の条件は、上記の条件に拘らず、実施者が適宜選択すればよい。
そして、図3A(C)に示すように、結晶質ケイ素膜204aを所定の形状に分割して、島状半導体層206g,206nを形成する。このとき、TFTを形成する島状半導体層206g,206nの全面にしきい値電圧を制御する目的で1×1016〜5×1017/cm3程度の濃度でp型を付与する不純物元素としてボロン(B)205を添加してもよい。ボロンの添加はイオンドープ法で実施してもよいし、非晶質ケイ素膜を成膜するときに同時に添加しておいてもよい。また、nチャネル型TFTのみのしきい値電圧(Vth)をコントロールする目的であり、ここでのボロン添加は必ずしも必要でないが、ボロンを添加した島状半導体層206g,206nは、nチャネル型TFTのしきい値電圧を所定の範囲内に収めるために好ましい。
次いで、プラズマCVD法またはスパッタ法を用いて10〜150nmの厚さでシリコンを含むゲート絶縁膜207を形成する。例えば、100nmの厚さで酸化ケイ素膜を形成する。ゲート絶縁膜207には、他のシリコンを含む絶縁膜を単層または積層構造として用いてもよい。
次に、ゲート電極を形成するための導電膜(A)208および導電膜(B)209を成膜する。例えば、導電性の窒化物金属膜から成る導電層(A)208と金属膜から成る導電層(B)209とを積層させる。導電層(B)209は、タンタル(Ta)、チタン(Ti)、モリブデン(Mo)、タングステン(W)から選ばれた元素、若しくは、これらの元素を主成分とする合金、又は、これらの元素を組み合わせた合金膜(代表的にはMo−W合金膜、Mo−Ta合金膜)で形成すればよく、導電層(A)208は、窒化タンタル(TaN)、窒化タングステン(WN)、窒化チタン(TiN)、窒化モリブデン(MoN)から選ばれたもので形成すればよい。また、導電層(A)208の代替材料として、タングステンシリサイド、チタンシリサイド、モリブデンシリサイドを適用してもよい。更に、導電層(B)は低抵抗化を図るために含有する不純物濃度を低減させるとよい。
導電層(A)208は10〜50nm(好ましくは20〜30nm)とし、導電層(B)209は200〜400nm(好ましくは250〜350nm)とするのがよい。例えば、導電層(A)208を30nmの厚さの窒化タンタル(TaN)膜とし、導電層(B)209を350nmのタングステン(W)膜とし、いずれもスパッタ法で形成すればよい。このスパッタ法による成膜では、スパッタ用のガスのArに適量のXeやKrを加えておくと、形成する膜の内部応力を緩和して膜の剥離を防止することができる。以上までの状態が図3A(D)である。
次いで、図3A(E)に示すように、チャネル長をそれぞれ異ならせたレジストからなるマスク210g、210nを形成し、それぞれのTFTのゲート電極およびを形成するための第1のエッチング処理を行う。第1のエッチング条件として、例えば、ICP(Inductively Coupled Plasma:誘導結合型プラズマ)エッチング法を用い、エッチング用ガスにCF4とCl2とO2とを用い、それぞれのガス流量比を25/25/10(sccm)とし、1Paの圧力でコイル型の電極に500WのRF(13.56MHz)電力を投入してプラズマを生成してエッチングを行う。基板側(試料ステージ)にも150WのRF(13.56MHz)電力を投入し、実質的に負の自己バイアス電圧を印加する。この第1のエッチング条件によりW膜をエッチングして導電層(B)の端部をテーパー状とする。これにより、導電膜(B)は、符号212g及び符号212nのようにパターニング形成される。
この後、マスク210g、210nを除去せずに第2のエッチング条件に変え、エッチング用ガスにCF4とCl2とを用い、それぞれのガス流量比を30/30(sccm)とし、1Paの圧力でコイル型の電極に500WのRF(13.56MHz)電力を投入してプラズマを生成して約30秒程度のエッチングを行う。基板側にも20WのRF(13.56MHz)電力を投入して、実質的に負の自己バイアス電圧を印加する。このようにして、CF4とCl2とを混合した第2のエッチング条件で導電膜(A)TaN膜208がエッチングされる。該エッチング工程において、導電膜(A)は、211g及び211nのようにチャネル長の異なるパターニング形成される。以上までの状態が図3B(F)である。
そして、図3B(G)に示すように、マスク210g、210nを除去せずに、n型不純物元素213を添加する処理を行い、n型不純物領域214、215を形成する。n型不純物元素としては、リン(P)や砒素(As)を用いればよく、リン(P)を添加するには、フォスフィン(PH3)を用いたイオンドープ法を採用すればよい。このとき、加速電圧を50〜80kV(例えば70kV)、ドーズ量を1×1015〜8×1015cm-2(例えば2×1015cm-2)とする。この工程により、島状半導体層206g、206nにおいて、TaN膜211g、211nおよびW膜212g、212nに覆われている下の領域には、これらの導電膜がドーピングマスクとして作用し、高濃度のリン213はドーピングされない。
さらに、マスク210g、210nを除去せずに第3のエッチング処理を行う。ここでは、エッチング用ガスにCF4とCl2とO2とを用い、それぞれのガス流量比を20/20/20(sccm)とし、1Paの圧力でコイル型の電極に500WのRF(13.56MHz)電力を投入して、実質的に負の自己バイアス電圧を印加する。第3のエッチング条件によると、W膜212g、212nが異方性をもって選択的にエッチングされる。このとき、TaN膜211g、211nはエッチングされず、W膜のみが横方向にエッチングが進行する。その結果、エッチング後のW膜216g、216nの端部のテーパー角度は80〜90°となる。そして、図3B(H)に示すように、W膜/TaN膜の積層構造で階段状となったゲート電極216g/211g、216n/211nが完成する。
次いで、半導体層に低濃度のn型不純物元素217を添加する処理を行う。前記複数回のエッチング処理により形成されたゲート電極の上層導電膜W216g、216nをマスクとして用い、下層導電膜TaN211g、211nが露呈している領域では、下方の半導体層にもn型不純物元素が添加されるようにドーピングして、低濃度のn型不純物領域218、219を形成する。例えば、ドーピングガスとして、フォスフィン(PH3)を用い、加速電圧を80〜100kV(例えば90kV)、ドーズ量を5×1012〜5×1014cm-2(例えば1×1014cm-2)とすればよい。この工程により、後のnチャネル型TFTの島状半導体層206g,206nにおいて、ゲート電極の上層導電膜W216g,216nに覆われ、リンが注入されない領域は、後にnチャネル型TFTのチャネル形成領域220となる。また、ゲート電極の下層導電膜TaN211g,211nのみが存在する領域下部は、LDD領域218,219となり、下層導電膜211g,211nから露呈している領域はソース・ドレイン領域214となる。このとき形成されるソース・ドレイン領域214の不純物(リン(P))濃度は、1×1020〜1×1021/cm3となるようにすればよい。また、LDD領域218,219の不純物濃度は、5×1017〜5×1019/cm3となるようにすればよい。
次いで、半導体層に添加された不純物元素を活性化する工程を行う。この活性化工程は、ファーネスアニール炉を用いて行う。熱アニール法としては、酸素濃度が1ppm以下、好ましくは、0.1ppm以下の窒素雰囲気下で400〜700℃、代表的には500〜550℃で行う(具体的条件としては、550℃、4時間の熱処理)。なお、熱アニール法の他にも、レーザアニール法、またはラピッドサーマルアニール(RTA)法を適用することができる。
次いで、先ほどのnチャネル型TFT上に形成したマスクを除去して、層間絶縁膜を形成する。窒化シリコン膜、酸化シリコン膜、または窒化酸化シリコン膜を300〜1000nmの厚さに形成する。例えば、膜厚200nmの窒化ケイ素膜221と膜厚700nmの酸化ケイ素膜222とを積層形成し、2層構造としてもよい。このときの成膜方法としては、プラズマCVD法を用い、窒化ケイ素膜はSiH4とNH3を原料ガスとして、酸化ケイ素膜はTEOSとO2を原料として連続形成してもよい。もちろん、層間絶縁膜としては、これに限定されるものではなく、他のシリコンを含む絶縁膜を単層または積層構造としてよい。
さらに、300〜500℃で1〜数時間の熱処理を行い、半導体層を水素化する工程を行う。この工程は、活性領域/ゲート絶縁膜の界面へ水素原子を供給し、TFT特性を劣化させる不対結合手(ダングリングボンド)を終端化し不活性化する工程である。例えば、水素を約3%含む窒素雰囲気下で410℃、1時間の熱処理を行う。前記層間絶縁膜(特に窒化ケイ素膜225)に含まれる水素の量が十分である場合には、窒素雰囲気で熱処理を行っても効果が得られる。水素化の他の手段としては、プラズマ水素化(プラズマにより励起された水素を用いる)を行ってもよい。
次に、層間絶縁膜にコンタクトホールを形成して、金属材料、例えば、窒化チタンとアルミニウムの二層膜によってTFTの電極・配線223を形成する。窒化チタン膜は、アルミニウムが半導体層に拡散するのを防止する目的のバリア膜として設けられる。そして最後に、350℃、1時間のアニールを行い、図3B(I)に示す画素部nチャネル型TFT224とドライバ回路部nチャネル型TFT225とを完成させる。さらに必要に応じて、ゲート電極216gおよび216nの上にもコンタクトホールを設けて、配線223により必要な電極間を接続する。また、TFTを保護する目的で、それぞれのTFT上に窒化ケイ素膜などからなる保護膜を設けてもよい。
以上の方法にしたがって作製したTFTでは、チャネル長を異ならせることにより、TFTのしきい値電圧(Vth)などの特性を異ならせることができる。また工程や製造装置を複雑化し、高コスト化を招くことなく、簡易な手段で制御よく前記課題の解決を図ることができる。
(第2実施形態)
本発明の第2実施形態について説明する。
第2実施形態では、周辺駆動回路を同一基板上に一体形成するドライバモノリシックのアクティブマトリクス型液晶表示装置の作製工程について説明する。すなわち、ガラス基板上に、nチャネル型TFTとpチャネル型TFTを相補型に構成したCMOS構造の回路と、画素電極をスイッチング駆動する画素TFT(Nチャネル型)とを同時形成する場合の作製工程について説明する。
図4A、図4B及び図4Cは、第2実施形態で説明するTFTの作製工程を示す断面図であり、図4A(A)〜図4C(I)の順にしたがって工程が順次進行する。
まず、ガラス基板301のTFTを形成する表面に、基板301からの不純物拡散を防ぐために、酸化シリコン膜、窒化シリコン膜または酸化窒化シリコン膜などの下地膜を形成する。例えば、プラズマCVD法でSiH4、NH3、N2Oから作製される酸化窒化シリコン膜の第1下地膜302を100nm、同様にSiH4、N2Oから作製される酸化窒化シリコン膜の第2下地膜303を100nmの厚さに積層形成すればよい。
次に、20〜150nm(好ましくは30〜70nm)の厚さで非晶質構造を有する半導体膜を、プラズマCVD法やスパッタ法などの公知の方法で形成する。例えば、プラズマCVD法で非晶質シリコン(a−Si)膜304を40nmの厚さに形成すればよい。非晶質構造を有する半導体膜としては、非晶質半導体膜や微結晶半導体膜がある。また、第1及び第2下地膜302,303とa−Si膜304とは同じ成膜法で形成することが可能であるので、両者を連続形成してもよい。第1及び第2下地膜302,303を形成した後、一旦大気雰囲気に晒さないことでその表面の汚染を防ぐことが可能となり、作製するTFTの特性バラツキやしきい値電圧の変動を低減させることができる。以上までの状態が図4A(A)である。
次に、第1実施形態と同様にa−Si膜304の脱水素処理を行い、図4A(B)に示すように、レーザー光305を照射することで、瞬間的に溶融させて結晶化させる。これによりa−Si膜304は、結晶質ケイ素膜304aとなる。このときのレーザー光305としては、XeClエキシマレーザー(波長308nm、パルス幅40nsec)やKrFエキシマレーザー(波長248nm)が適用できる。また、レーザ発振器から放出されたレーザ光を光学系で線状に集光し、ガラス基板301表面で長尺形状となるようにし、長尺方向に対して垂直方向に順次走査を行うことで、基板全面の結晶化を行うようにすればよい。レーザー光の一部が重なるようにして走査することで、a−Si膜304の任意の一点において、複数回のレーザー照射が行われ、均一性の向上が図れる。このとき、レーザー光の照射エネルギー密度を350〜500mJ/cm2(例えば420mJ/cm2)とし、任意の一点における照射回数を10〜40ショット(例えば20ショット)となるように設定することで、結晶粒径が200〜500nm、平均300nm程度の結晶質ケイ素膜が得られた。また、このときの結晶質ケイ素膜304b表面の平均表面粗さRaは4〜9nmであることが望ましく、本実施形態では6nm程度であった。この時使用するレーザーとしては、前記エキシマレーザー以外にYAGレーザーやYVO4レーザー等も用いることができる。また、結晶化の条件は、本実施例の条件に拘らず、実施者が適宜選択すればよい。
そして、図4A(C)に示すように、結晶質ケイ素膜304aを所定の形状に分割して、島状半導体層306n、306p,306gを形成する。このとき、TFTを形成する島状半導体層306n、306p,306gの全面にしきい値電圧を制御する目的で1×1016〜5×1017/cm3程度の濃度でp型を付与する不純物元素としてボロン(B)を添加してもよい。ボロンの添加はイオンドープ法で実施してもよいし、非晶質ケイ素膜を成膜するときに同時に添加しておいてもよい。また、nチャネル型TFTのみのしきい値電圧(Vth)をコントロールする目的であり、ここでのボロン添加は必ずしも必要でないが、ボロンを添加した島状半導体層306n、306p,306gは、nチャネル型TFTのしきい値電圧を所定の範囲内に収めるために好ましい。
次いで、プラズマCVD法またはスパッタ法を用いて10〜150nmの厚さでシリコンを含むゲート絶縁膜307を絶縁膜を形成する。例えば、100nmの厚さで酸化ケイ素膜を形成する。ゲート絶縁膜307には、他のシリコンを含む絶縁膜を単層または積層構造として用いてもよい。
次に、ゲート電極を形成するために導電膜(A)308および導電膜(B)309を成膜する。例えば、導電性の窒化物金属膜から成る導電層(A)308と金属膜から成る導電層(B)309とを積層させる。導電層(B)309はタンタル(Ta)、チタン(Ti)、モリブデン(Mo)、タングステン(W)から選ばれた元素、若しくは、これらの元素を主成分とする合金、又は、これらの元素を組み合わせた合金膜(代表的にはMo−W合金膜、Mo−Ta合金膜)で形成すればよく、導電層(A)308は、窒化タンタル(TaN)、窒化タングステン(WN)、窒化チタン(TiN)、窒化モリブデン(MoN)から選ばれたもので形成すればよい。また、導電層(A)308の代替材料として、タングステンシリサイド、チタンシリサイド、モリブデンシリサイドを適用してもよい。更に、導電層(B)は低抵抗化を図るために含有する不純物濃度を低減させるとよい。
導電層(A)308は10〜50nm(好ましくは20〜30nm)とし、導電層(B)309は200〜400nm(好ましくは250〜350nm)とするのがよい。例えば、導電層(A)308を30nmの厚さの窒化タンタル(TaN)膜とし、導電層(B)309を350nmの厚さのタングステン(W)膜とし、いずれもスパッタ法で形成すればよい。このスパッタ法による成膜では、スパッタ用のガスのArに適量のXeやKrを加えておくと、形成する膜の内部応力を緩和して膜の剥離を防止することができる。以上までの状態が図4B(D)である。
次いで、図4B(E)に示すように、チャネル長を画素部とドライバ回路部でそれぞれ異ならせたレジストからなるマスク310n,310p,310gを形成し、それぞれのTFTのゲート電極およびを形成するための第1のエッチング処理を行う。第1のエッチング条件として、例えば、ICP(Inductively Coupled Plasma:誘導結合型プラズマ)エッチング法を用い、エッチング用ガスにCF4とCl2とO2とを用い、それぞれのガス流量比を25/25/10(sccm)とし、1Paの圧力でコイル型の電極に500WのRF(13.56MHz)電力を投入してプラズマを生成してエッチングを行う。基板側(試料ステージ)にも150WのRF(13.56MHz)電力を投入し、実質的に負の自己バイアス電圧を印加する。この第1のエッチング条件によりW膜をエッチングして導電層(B)の端部をテーパー状とする。これにより、導電膜(B)は、312n,312p、312gのようにパターニング形成される。
この後、マスク310n,310p、310gを除去せずに第2のエッチング条件に変え、エッチング用ガスにCF4とCl2とを用い、それぞれのガス流量比を30/30(sccm)とし、1Paの圧力でコイル型の電極に500WのRF(13.56MHz)電力を投入してプラズマを生成して約30秒程度のエッチングを行う。基板側にも20WのRF(13.56MHz)電力を投入して、実質的に負の自己バイアス電圧を印加する。このようにして、CF4とCl2とを混合した第2のエッチング条件で導電膜(A)TaN膜308がエッチングされる。該エッチング工程において、導電膜(A)は、311n,3101、311gのようにチャネル長の異なるパターニング形成される。以上までの状態が図4B(F)である。
更に、図4B(F)に示すように、マスク310n,310p、310gを除去せずに第3のエッチング処理を行う。ここでは、エッチング用ガスにCF4とCl2とO2とを用い、それぞれのガス流量比を20/20/20(sccm)とし、1Paの圧力でコイル型の電極に500WのRF(13.56MHz)電力を投入して、実質的に負の自己バイアス電圧を印加する。第3のエッチング条件によると、W膜312n,312p、312gが異方性をもって選択的にエッチングされる。このとき、TaN膜311n,311p、311gはエッチングされず、W膜のみが横方向にエッチングが進行する。その結果、エッチング後のW膜316n,316p、316gの端部のテーパー角度は80〜90°となる。そして、図4C(G)に示すように、W膜/TaN膜の積層構造で階段状となるゲート電極316n/311n,316p/311p、316g/311pが完成する。
次いで、図4C(G)に示すように、pチャネル型TFTの半導体層上には、フォトレジスト319pで覆い、半導体層に低濃度のn型不純物元素317を添加する処理を行う。n型不純物元素としては、リン(P)や砒素(As)を用いればよく、リン(P)を添加するには、フォスフィン(PH3)を用いたイオンドープ法を採用すればよい。このとき、加速電圧を50〜80kV(例えば70kV)、ドーズ量を1×1015〜8×1015cm−2、例えば2×1015cm−2とする。前記複数回のエッチング処理により形成されたゲート電極の上層導電膜W316n、316gをマスクとして用い、314の領域には、317リンは、直接打ち込まれ高濃度領域となり、318の領域には、311n、311nが薄いマスクとなり、n型低濃度領域(LDD)が形成される。これにより、一回のチャネルドープで高濃度領域、低濃度領域を形成することができる。
次に図4C(H)に示す通り、ドライバ回路部nチャネル型TFTと画素部nチャネル型TFT上にフォトレジスト321n、321gで覆い、ドライバ回路部pチャネルTFTのみに、各々の半導体層にp型を付与する不純物(ホウ素)320をイオンドーピング法によって注入する。ドーピングガスとして、ジボラン(B2H6)を用い、加速電圧を40kV〜80kV(例えば60kV)とし、ドーズ量を1×1015〜1×1016cm-2(例えば5×1016cm-2)とする。この工程により、pチャネル型TFTの半導体層306pにおいては、ゲート電極311p/312p下部のチャネル領域以外の領域324に高濃度にホウ素320が注入される。また、323pの領域には、311pが薄いマスクとなり、低濃度のホウ素320が注入されp型低濃度領域(LDD)が形成される。該工程において、nチャネル型TFTの半導体層は、マスクで覆われているため、ホウ素は全くドーピングされず、nチャネル型TFTとpチャネル型TFTとを作り分けることができる。
次いで、半導体層に添加された不純物元素を活性化する工程を行う。この活性化工程は、ファーネスアニール炉を用いて行う。熱アニール法としては、酸素濃度が1ppm以下、好ましくは、0.1ppm以下の窒素雰囲気下で400〜700℃、代表的には500〜550℃で行う(具体的条件としては、550℃、4時間の熱処理)。なお、熱アニール法の他にも、レーザアニール法、またはラピッドサーマルアニール(RTA)法を適用することができる。
次いで、先ほどのnチャネル型TFT上に形成したマスクを除去して、層間絶縁膜を形成する。窒化シリコン膜、酸化シリコン膜、または窒化酸化シリコン膜を300〜1000nmの厚さで形成する。例えば、膜厚200nmの窒化ケイ素膜325と膜厚700nmの酸化ケイ素膜326とを積層形成し、2層構造としてもよい。このときの成膜方法としては、プラズマCVD法を用い、窒化ケイ素膜はSiH4とNH3を原料ガスとして、酸化ケイ素膜はTEOSとO2を原料として連続形成してもよい。もちろん、層間絶縁膜としては、これに限定されるものではなく、他のシリコンを含む絶縁膜を単層または積層構造としてよい。
さらに、300〜500℃で1〜数時間の熱処理を行い、半導体層を水素化する工程を行う。この工程は、活性領域/ゲート絶縁膜の界面へ水素原子を供給し、TFT特性を劣化させる不対結合手(ダングリングボンド)を終端化し不活性化する工程である。例えば、水素を約3%含む窒素雰囲気下で410℃、1時間の熱処理を行う。前記層間絶縁膜(特に窒化ケイ素膜325)に含まれる水素の量が十分である場合には、窒素雰囲気で熱処理を行っても効果が得られる。水素化の他の手段としては、プラズマ水素化(プラズマにより励起された水素を用いる)を行ってもよい。
次に、層間絶縁膜にコンタクトホールを形成して、金属材料、例えば、窒化チタンとアルミニウムの二層膜によってTFTの電極・配線327を形成する。窒化チタン膜は、アルミニウムが半導体層に拡散するのを防止する目的のバリア膜として設けられる。そして最後に、350℃、1時間のアニールを行い、図4C(I)に示すドライバ回路部nチャネル型TFT328、pチャネル型TFT329と、画素部nチャネル型TFT330とを完成させる。さらに必要に応じて、ゲート電極315g、316nおよび316pの上にもコンタクトホールを設けて、配線327により必要な電極間を接続する。また、TFTを保護する目的で、それぞれのTFT上に窒化ケイ素膜などからなる保護膜を設けてもよい。
以上の方法にしたがって作製したTFTでは、チャネル長を制御することにより、TFTのしきい値電圧(Vth)などの特性を制御よく作り分けることができ、ドライバ回路部においても同時に、nチャネル型TFTとpチャネル型TFTとを作り分けることもできる。また工程や製造装置を複雑化し、高コスト化を招くことなく、簡易な手段で制御良く前記課題の解決を図ることができる。
画素部TFTのしきい値電圧(Vth)は、ドライバ回路部TFTのしきい値電圧(Vth)より小さくコントロールし、作り分けることによって、画素部ではLDD構造であっても比較的オン電流が上がり、Vgを深くした時のオフ電流の跳ね上りが軽減されオフ動作時のリーク電流の異常な増大を抑えることができた。繰り返し測定やバイアスや温度ストレスによる耐久性試験を行っても、ほとんど特性劣化は見られなかった。また、上記のようにして作製したnチャネル型TFTとpチャネル型TFTとを相補的に構成したCMOS構造回路でインバーターチェーンやリングオシレーター等の回路を形成した場合、従来のものと比べて信頼性が高く、安定した回路特性を示す。
(第3実施形態)
本発明の第3実施形態を図5を用いて説明する。
第3実施形態では、アクティブマトリクス型の液晶表示装置の画素部nチャネルTFTとドライバ回路部nチャネルTFTとをガラス基板上に作製する工程について説明する。
図5は、第3実施形態で説明するTFTの作製工程を示す断面図であり、図5(A)から(C)の順にしたがって工程が順次進行する。なお、その前後の工程は、第1実施形態の図3A及び図3Bと同様である。
まず、第1実施形態の図3A(C)と同様の工程を実施し、次に、図5(A)に示す通り、結晶質ケイ素膜を所定の形状に分割して、島状半導体層401g、401n上に、ゲート絶縁膜402を形成する。ゲート絶縁膜402はプラズマCVD法またはスパッタ法を用いて10〜150nmの厚さでシリコンを含む絶縁膜で形成する。例えば、100nmの厚さで酸化ケイ素膜を形成する。ゲート絶縁膜402には、他のシリコンを含む絶縁膜を単層または積層構造として用いてもよい。
次に、TFTを形成する島状半導体層401g、401nの全面にしきい値電圧(Vth)を制御する目的で1×1016〜5×1017/cm3程度の濃度でp型を付与する不純物元素としてボロン(B)404を添加してもよい。ここで、画素部TFTとドライバ回路部TFTとでしきい値電圧(Vth)を制御よく作り分けるため、つまり画素部TFTのみ、マイナス側に潜り込ます必要がある。そこで、図5(B)に示すとおり、全画素部nチャネル型TFTの半導体層上401gには、フォトレジスト403gで覆い、ボロン(B)404をドライバ回路部TFT側401nに多く添加されるようにする。これにより、p型不純物濃度を異ならせることができる。以降、第1実施形態と同様の工程によって、TFTを形成していく。
以上の方法にしたがって作製したTFTでは、チャネル長とp型不純物の打ち分けを制御することでしきい値電圧(Vth)などの特性を作り分けることができる。つまり、チャネル長と不純物の打ち分けの相乗効果によってしきい値電圧(Vth)などの特性は、制御性が向上し、その結果、工程や製造装置を複雑化し、高コスト化を招くことなく、前記課題の解決を図ることができる。
(第4実施形態)
図6は、本発明の方法を用いて作製された半導体装置のブロック図を示す。なお、図6(A)は、アナログ駆動を行うための回路構成であって、ソース側駆動回路60、画素部61およびゲート側駆動回路62を有している半導体装置を示す。なお、以下では、駆動回路とは、ソース側処理回路およびゲート側駆動回路を含めた総称を意味する。
ソース側駆動回路60は、シフトレジスタ60a、バッファ60b、サンプリング回路(トランスファゲート)60cが設けられている。また、ゲート側駆動回路62は、シフトレジスタ62a、レベルシフタ62b、バッファ62cが設けられている。また、必要であればサンプリング回路とシフトレジスタとの間にレベルシフタ回路が設けられていてもよい。
また、画素部61は複数の画素からなり、その複数の画素各々がTFT素子を含んでいる。
なお、画素部61を挟んでゲート側駆動回路62の反対側にさらにゲート側駆動回路が設けられていてもよい。
また、図6(B)は、デジタル駆動を行うための回路構成であって、ソース側駆動回路63、画素部64およびゲート側駆動回路65を有している半導体装置を示す。デジタル駆動させる場合は、図6(B)に示すように、サンプリング回路の代わりにラッチ(A)63b、ラッチ(B)63cが設けられていればよい。ソース側駆動回路63は、シフトレジスタ63a、ラッチ(A)63b、ラッチ(B)63c、D/Aコンバータ63d、バッファ63eが設けられている。また、ゲート側駆動回路65は、シフトレジスタ65a、レベルシフタ65b、バッファ65cが設けられている。また、必要であればラッチ(B)63cとD/Aコンバータ63dとの間にレベルシフタ回路が設けられていてもよい。
なお、上記構成は、前述の第1〜第3実施形態に示した製造工程に従って実現することができる。また、画素部と駆動回路の構成のみ示しているが、本発明の製造工程に従えば、メモリやマイクロプロセッサをも形成しうる。
(第5実施形態)
本発明の方法を実施して形成されたCMOS回路や画素部はアクティブマトリクス型液晶表示装置や有機EL表示装置などに用いることができる。即ち、これら液晶表示装置や有機EL表示装置を表示部に組み込んだ電子機器の全てに本発明の方法を適用することができる。
その様な電子機器としては、ビデオカメラ、デジタルカメラ、プロジェクター(リア型またはフロント型)、ヘッドマウントディスプレイ(ゴーグル型ディスプレイ)、パーソナルコンピュータ、携帯情報端末(モバイルコンピュータ、携帯電話または電子書籍等)などを挙げることができる。
本発明を適用することにより、触媒元素を用いた良好な結晶性を有する結晶質半導体膜を形成することができ、さらに十分に触媒元素をゲッタリングできるため、nチャネル型TFTとpチャネル型TFTとの特性を向上させ、信頼性の高い、安定した回路特性の、良好なCMOS駆動回路を実現することができる。また、オフ動作時のリーク電流が問題となる画素におけるスイッチングTFTや、アナログスイッチ部のサンプリング回路のTFT等でも、触媒元素の偏析によると考えられるリーク電流の発生を十分に抑制することができる。その結果、表示ムラのない良好な表示が可能になる。また表示ムラがない良好な表示であるため、光源を必要以上に使用する必要がなく無駄な消費電力を低減することができ、低消費電力化も可能な電気器具(携帯電話、携帯書籍、ディスプレイ)を実現することができる。
以上の様に、本発明の適用範囲は極めて広く、あらゆる分野の電子機器に適用することが可能である。また、この電子機器は、前記第1から第4実施形態の組み合わせで作製された表示装置を用いて実現することができる。
以上、本発明の実施形態について具体的に説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想に基づく各種の変形が可能である。
例えば、本発明で対象となる半導体膜としては、前記実施形態で示した純粋なケイ素膜以外に、ゲルマニウムとケイ素との混成膜(シリコン・ゲルマニウム膜)や純粋なゲルマニウム膜も利用できる。
また、半導体膜を溶融固化し結晶化あるいは再結晶化させる工程は、レーザー光以外の強光やエネルギービームでも代用できるし、パルスレーザー以外に固体YAGレーザーやArガスレーザー等の連続発振レーザーを利用することもできる。また、照射条件に関しても、前述の実施形態を参考に、実施者が便宜設定すればよい。
また、ゲート電極の構成に関しても、3層以上の積層構造を用いてもよく、そのエッチング工程も、前述のRIE法やICPエッチング方法以外に通常のプラズマエッチング法でも条件により適用可能である。エッチング条件についても、前記実施形態の条件に捕らわれず、実施者が便宜設定すればよい。