JP2005259777A - 半導体装置の信頼性シミュレーション方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】 実効チャンネル長依存性を持ち且つ少数のパラメータからなる基板電流モデルを新たに作成し、該モデルを使用することにより、十分な計算精度を保ちつつホットキャリア劣化シミュレーションにおけるパラメータ抽出を容易に行なえるようにする。
【解決手段】 基板電流Isubを
Isub=(Ai/Bi)・(Vds−Vdsat)・Id・exp(−Bi・lc/(Vds−Vdsat))
(但しId、Vds、VdsatはそれぞれMOSトランジスタのドレイン電流、ドレイン電圧、飽和ドレイン電圧であり、lcは特性長であり、Aiはモデルパラメータであり、Biは所定の定数である)で表される基板電流モデル式を用いて算出する際に、特性長lcが実効チャンネル長Leffのmc1乗に比例する(但しmc1は0.2以上で且つ0.3以下の値をとるモデルパラメータである)。
【選択図】 図7
【解決手段】 基板電流Isubを
Isub=(Ai/Bi)・(Vds−Vdsat)・Id・exp(−Bi・lc/(Vds−Vdsat))
(但しId、Vds、VdsatはそれぞれMOSトランジスタのドレイン電流、ドレイン電圧、飽和ドレイン電圧であり、lcは特性長であり、Aiはモデルパラメータであり、Biは所定の定数である)で表される基板電流モデル式を用いて算出する際に、特性長lcが実効チャンネル長Leffのmc1乗に比例する(但しmc1は0.2以上で且つ0.3以下の値をとるモデルパラメータである)。
【選択図】 図7
Description
本発明は、MOS型トランジスタにより構成される半導体集積回路装置におけるMOS型トランジスタのホットキャリア劣化に起因する回路特性劣化をシミュレーションする方法に関し、特にシミュレーション精度の改善に関する。
半導体集積回路装置の高密度化、高集積化及び微細化の進行に伴い、それを構成するMOS(metal oxide semiconductor )トランジスタの寸法の微細化は著しい。このMOSトランジスタの寸法の微細化、その中でもチャンネル長の微細化によって、MOSトランジスタの信頼性上の大きな問題であるホットキャリア劣化現象が重要な問題となってきている。
このホットキャリア劣化現象は、MOSトランジスタのドレイン端において高電界により高エネルギーの電子及び正孔(以下、合わせて「ホットキャリア」と呼ぶ)が発生し、このホットキャリアがゲート酸化膜の特性を劣化させる現象である。このホットキャリア劣化には複数の劣化モードがあり、その中で基板電流最大条件の劣化モードではN型及びP型MOSトランジスタのいずれにおいてもドレイン電流が時間とともに減少する。その結果、回路の遅延時間が時間とともに増大するという劣化が生じる。この遅延時間の増大がある程度以上になると、半導体集積回路内での信号の入出力動作又は該回路と外部との間での信号の入出力動作の際にタイミングエラーが生じ、その結果、半導体集積回路が組み込まれているシステム全体の誤動作が引き起こされる。
このホットキャリア劣化に対して、従来、MOSトランジスタに対するDC条件でのストレス加速実験を用いたホットキャリア信頼性評価が行なわれてきた。そして、ホットキャリア評価基準を満たすよう製造プロセスを最適化することにより製品の信頼性を向上させてきた。
しかしながら、近年、DC条件でのホットキャリア信頼性評価によっては従来のホットキャリア評価基準を満たすことが困難になっている。このため、半導体集積回路のホットキャリア劣化現象のシミュレーション(以下、「回路信頼性シミュレーション」と呼ぶ)を行ない、それにより製品の信頼性を向上させる技術が登場してきた。回路信頼性シミュレーションにおいては、回路シミュレータSPICEにより計算される各トランジスタの各端子の電圧や電流の計算値に基づいて、ホットキャリア寿命モデルと劣化後のSPICEパラメータとを用いてホットキャリア劣化後の回路動作のシミュレーションを行なう。
代表的な回路信頼性シミュレータとしては、米国カリフォルニア大学バークレー校が開発したBERT(非特許文献1参照)又はその市販版BTABERTがある。これらの回路信頼性シミュレーション技術を用いて半導体集積回路中の劣化・故障個所を予測し、該予測個所について設計時に対策を講じることによって、信頼性の作り込み又は信頼性設計が可能となる。
MOSトランジスタのホットキャリア劣化のシミュレーション方法としては、例えば非特許文献2に記載された方法がある。この方法を実施するための回路信頼性シミュレータで使用されるホットキャリア寿命モデルの特徴は次の通りである。
MOSトランジスタのホットキャリア劣化は、初期のドレイン電流Idに対するドレイン電流の変化量ΔIdの割合ΔId/Id等により評価される。DC(直流)によるスタティックなホットキャリアストレス条件下において、ホットキャリア劣化率ΔId/Idは次式(1)によって表される。
ΔId/Id=A・tn ・・・(1)
式(1)において、tはホットキャリアストレス時間を表し、符号A及びnはトランジスタの製造プロセスやストレス条件に依存する係数と考えられている。
式(1)において、tはホットキャリアストレス時間を表し、符号A及びnはトランジスタの製造プロセスやストレス条件に依存する係数と考えられている。
ドレイン電流の変化割合(ホットキャリア劣化率)が所定値(ΔId/Id)f になるまでのストレス時間がトランジスタの寿命時間τであると考えれば、式(1)から次式(2)が得られる。
(ΔId/Id)f =A・τn ・・・(2)
式(2)を用いて、例えば(ΔId/Id)f =10%になるまでの時間tが寿命τと定義される。
式(2)を用いて、例えば(ΔId/Id)f =10%になるまでの時間tが寿命τと定義される。
また、非特許文献2によれば、MOSトランジスタの寿命τは、ホットキャリア寿命モデルを用いた以下の実験式(3)によって表される。
τ=((ΔId/Id)f )1/n ・H・W・Isub-m・Idm-1 ・・・(3)
式(3)において、Wはゲートの幅を示し、Hはトランジスタの製造条件に依存する係数であり、Isubは基板電流を表し、mはインパクトイオン化及び界面準位生成に関係すると考えられている指数を表す。
式(3)において、Wはゲートの幅を示し、Hはトランジスタの製造条件に依存する係数であり、Isubは基板電流を表し、mはインパクトイオン化及び界面準位生成に関係すると考えられている指数を表す。
劣化後のMOSトランジスタのI−V特性については、ΔIdモデルを用いてシミュレーションすることができる。ΔIdモデルを用いたシミュレーション方法としては例えば非特許文献3に開示された方法がある。
ΔIdモデルにおいては、次式(4)に示すように、ストレス印加前のフレッシュなドレイン電流(初期のドレイン電流)Idにドレイン電流の劣化量ΔIdを加えることにより、劣化後のドレイン電流Id’をシミュレートする。
Id’=Id(Vds,Vgs)+ΔId(Age,Vds,Vgs)・・・(4)
ここで、Idはドレイン電圧Vds及びゲート電圧Vgsの関数であり、ΔIdはドレイン電圧Vds及びゲート電圧Vgsの関数であると共にAgeの関数である。このAgeは、ホットキャリア寿命モデルにおけるホットキャリア・ストレス開始後の時間(ホットキャリアストレス時間)tまでのストレス量を表している。また、物理的には、時間tまでに発生したホットキャリアのうちMOSトランジスタのダメージ発生に必要な臨界エネルギー以上のエネルギーを持ったホットキャリアの総量を表す。
ここで、Idはドレイン電圧Vds及びゲート電圧Vgsの関数であり、ΔIdはドレイン電圧Vds及びゲート電圧Vgsの関数であると共にAgeの関数である。このAgeは、ホットキャリア寿命モデルにおけるホットキャリア・ストレス開始後の時間(ホットキャリアストレス時間)tまでのストレス量を表している。また、物理的には、時間tまでに発生したホットキャリアのうちMOSトランジスタのダメージ発生に必要な臨界エネルギー以上のエネルギーを持ったホットキャリアの総量を表す。
AC(交流)によるダイナミックなストレス条件下における回路中のAgeを計算する際には、時間についての積分である次式(5)を用いる。
Age=∫[(W・H)-1・Isubm ・Id1-m ]dt・・・(5)
ここで、式(5)における被積分関数は、式(3)で表される寿命を規格化したものの逆数になっている。
ここで、式(5)における被積分関数は、式(3)で表される寿命を規格化したものの逆数になっている。
シミュレーションの際に式(3)又は式(5)中のドレイン電流Idを計算するため、SPICEモデルが使用される。このSPICEモデルの一例として、例えば非特許文献4に詳述されているBSIM(Berkeley Short-Channel IGFET Model)法が用いられている。
また、シミュレーションの際に式(3)又は式(5)中の基板電流Isubを決定するため、基板電流モデルが使用される。基板電流Isubを計算する方法の一例が非特許文献5に開示されている。
この基板電流モデルは次式(6)によって表される。
Isub=(Ai/Bi)・(Vds−Vdsat)・Id・exp(−Bi・lc/(Vds−Vdsat))・・・(6)
式(6)において、Vdsはドレイン電圧、Vdsatは飽和ドレイン電圧、Ai及びBiは定数、lcは特性長である。この特性長lcは、ドレイン端における電界強度ピークの指数関数的減衰の長さを表す量であって、近似的に定数と考えられている。具体的には、特性長lcは、ゲート酸化膜厚Toxとドレイン接合深さXjとを用いて近似的に次式(7)によって表される。
式(6)において、Vdsはドレイン電圧、Vdsatは飽和ドレイン電圧、Ai及びBiは定数、lcは特性長である。この特性長lcは、ドレイン端における電界強度ピークの指数関数的減衰の長さを表す量であって、近似的に定数と考えられている。具体的には、特性長lcは、ゲート酸化膜厚Toxとドレイン接合深さXjとを用いて近似的に次式(7)によって表される。
lc=(εSi・Tox・Xj/εox)1/2 ・・・(7)
式(7)において、εSiはシリコンの誘電率、εoxはシリコン酸化膜の誘電率である。
式(7)において、εSiはシリコンの誘電率、εoxはシリコン酸化膜の誘電率である。
ドレイン接合深さXjが式(7)に現れるための必要条件は、ドレイン接合深さXjにおいてドレイン端の縦方向電界が無視できることである。式(7)を導出する方法の一例が非特許文献6に開示されている。式(7)によって表されるlcはMOSトランジスタの各端子電圧及び実効チャンネル長には依存していないが、実際にはlcは各端子電圧及び実効チャンネル長に依存するため、前述の回路信頼性シミュレータBTABERTにおいては、次式(8)〜(10)のような、ドレイン電圧Vds依存性及び実効チャンネル長依存性を持つlcのモデル式が用いられている。
lc=(lc0+lc1・Vds)・(Tox)1/2 ・・・(8)
lc0=lc00+lc01/Leff ・・・(9)
lc1=lc10+lc11/Leff ・・・(10)
式(8)〜(10)において、lc0及びlc1はlcのVds依存性を表すパラメータであり、Leffは実効チャンネル長であり、lc00及びlc01はlc0のチャンネル長依存性を表すパラメータであり、lc10及びlc11はlc1のチャンネル長依存性を表すパラメータである。
lc0=lc00+lc01/Leff ・・・(9)
lc1=lc10+lc11/Leff ・・・(10)
式(8)〜(10)において、lc0及びlc1はlcのVds依存性を表すパラメータであり、Leffは実効チャンネル長であり、lc00及びlc01はlc0のチャンネル長依存性を表すパラメータであり、lc10及びlc11はlc1のチャンネル長依存性を表すパラメータである。
また、前述の回路信頼性シミュレータBTABERTにおいては、次式(11)のような、実効チャンネル長依存性を持つAiのモデル式が用いられている。
Ai=Ai0+Ai1/Leff ・・・(11)
式(11)において、Ai0及びAi1はAiのチャンネル長依存性を表すパラメータである。
式(11)において、Ai0及びAi1はAiのチャンネル長依存性を表すパラメータである。
式(8)〜(11)を用いた基板電流モデルの一例が非特許文献7に記述されている。
以下、これらのパラメータlc00、lc01、lc10、lc11、Ai0及びAi1を実験値から抽出する方法について詳しく述べる。
図8は従来の基板電流モデルのパラメータを実験値から抽出する方法の説明図である。具体的には、図8は、従来の基板電流モデル式(6)及び(8)〜(11)に含まれるパラメータlc00、lc01、lc10、lc11、Ai0及びAi1を求めるためのプロットを表している。図8において、縦軸は、ドレイン電流Idに対する基板電流Isubの比Isub/Idを、ドレイン電圧Vdsと飽和ドレイン電圧Vdsatとの差Vds−Vdsatで除した値Isub/(Id・(Vds−Vdsat))の対数スケールを示し、横軸は、ドレイン電圧Vdsと飽和ドレイン電圧Vdsatとの差Vds−Vdsatの逆数1/(Vds−Vdsat)を示している。また、20は、MOSトランジスタの各ドレイン電圧VdsにおけるIsub測定及びId測定に基づく複数の測定点に関するデータであり、21は、各ドレイン電圧Vdsにおける各測定点に関するデータに対してフィッティングされた直線である。MOSトランジスタのドレイン電流Idと基板電流Isubとは、複数のドレイン電圧Vds、例えば4条件のドレイン電圧Vds(=2.3V、2.7V、3.1V、3.5V)の下でゲート電圧Vgsを変化させることによって測定される。このとき、基板電圧Vbs=0Vとする。このドレイン電流Id及び基板電流Isubの測定結果から、飽和ドレイン電圧Vdsatをゲート電圧Vgsの関数として求める。この飽和ドレイン電圧Vdsatを求める方法の一例が非特許文献5に述べられている。そして、この飽和ドレイン電圧Vdsatを用いて各測定点に対して、Isub/(Id・(Vds−Vdsat))及び1/(Vds−Vdsat)を求め、その結果を、縦軸をIsub/(Id・(Vds−Vdsat))の対数スケールとし且つ横軸を1/(Vds−Vdsat)としてプロットする。
以上のように座標軸の設定を行なうと、式(6)より、lcとAiとが一定の場合においては、各測定点のデータに対してフィッティングされた直線の切片(y切片)はln(Ai/Bi)(但しlnは自然対数を表す)となり、該直線の傾きは−Bi・lcとなる。従って、これらのln(Ai/Bi)の値及び−Bi・lcの値からlcとAiとを求めることができる。また、各ドレイン電圧Vdsにおける測定点のデータに対しては、最小二乗法により式(6)及び式(8)のパラメータlc0、lc1及びAiを求める。図8の直線21は、このように求めた各パラメータを使用して式(6)及び式(8)に基づき各ドレイン電圧Vdsに対して計算された直線である。このようなプロットを実効チャンネル長の異なる複数のMOSトランジスタに対して行なうことにより、各実効チャンネル長におけるパラメータパラメータlc0、lc1及びAiを求める。
次に、前述のように求められた、各実効チャンネル長におけるパラメータlc0、lc1及びAiから、パラメータlc00、lc01、lc10、lc11、Ai0及びAi1を抽出する方法について詳しく述べる。
図9は、パラメータlc0の実効チャンネル長依存性を表すパラメータlc00及びlc01を抽出する方法の説明図である。具体的には、図9は、従来の基板電流モデル式(9)に含まれるパラメータlc00及びlc01を求めるためのプロットを表している。図9において、縦軸はlc0を示し、横軸は実効チャンネル長Leffの逆数1/Leffを示す。また、図9において、22はMOSトランジスタの各実効チャンネル長Leffに対して得られたパラメータlc0のデータ、23はデータ22(各実効チャンネル長に対するパラメータlc0のデータ)に対してフィッティングされた直線である。すなわち、lc0を縦軸とし、実効チャンネル長Leffの逆数1/Leffを横軸としてプロットを行なう。
以上のように座標軸の設定を行なうと、式(9)より、直線23の切片(y切片)はlc00となり、直線23の傾きはlc01となるので、パラメータlc00及びlc01を求めることができる。同様にして、パラメータlc1から、式(10)に含まれるパラメータlc10及びlc11を求めることができる。
図10は、パラメータAiの実効チャンネル長依存性を表すパラメータAi0及びAi1を抽出する方法の説明図である。具体的には、図10は、従来の基板電流モデル式(11)に含まれるパラメータAi0及びAi1を求めるためのプロットを表している。図10において、縦軸はAiを示し、横軸は実効チャンネル長Leffの逆数1/Leffを示す。また、図10において、24はMOSトランジスタの各実効チャンネル長Leffに対して得られたパラメータAiのデータ、25はデータ24(各実効チャンネル長に対するパラメータAiのデータ)に対してフィッティングされた直線である。すなわち、Aiを縦軸とし、実効チャンネル長Leffの逆数1/Leffを横軸としてプロットを行なう。
以上のように座標軸の設定を行なうと、式(11)より、直線25の切片(y切片)はAi0となり、直線25の傾きはAi1となるので、パラメータAi0及びAi1を求めることができる。
図11は、これらのパラメータを用いた基板電流Isubの計算値と基板電流Isubの実測値との一致の程度を示す図である。具体的には、図11は、実効チャンネル長Leffをパラメータとして、従来の基板電流モデルの実験式(6)及び(8)〜(11)を用いた基板電流Isubの計算値と基板電流Isubの実測値とを比較した様子を表している。図11において、縦軸は基板電流Isubを示し、横軸はゲート電圧Vgsを示し、26は基板電流Isubの実測値であり、27は図8〜図10において求めたパラメータと式(6)及び(8)〜(11)とを用いた基板電流Isubの計算結果である。
図12は、従来技術における基板電流モデルを用いて回路のホットキャリア劣化をシミュレートする方法の手順を示すフロー図である。図12のフロー図に示す方法は、式(4)〜(6)及び(8)〜(11)に従って、信頼性シミュレータがトランジスタのホットキャリア劣化をシミュレートするためのステップS1〜S4を含んでいる。
まず、ステップS1において、予め抽出されたストレス印加前のトランジスタパラメータによってフレッシュなドレイン電流がシミュレートされる。
次に、ステップS2において、式(6)及び(8)〜(11)により表される基板電流モデル式と、図9及び図10を用いて説明した方法によって決定されたパラメータlc00、lc01、lc10、lc11、Ai0及びAi1とに基づいて、各実効チャンネル長のMOSトランジスタの基板電流Isubがシミュレートされる。
次に、ステップS3において、式(5)に基づいて各トランジスタの劣化を表すAgeが、回路中におけるドレイン電流Id及び基板電流Isubの関数を時間積分することにより計算される。このとき、ステップS1でシミュレートされたドレイン電流Idと、ステップS2でシミュレートされた基板電流Isubとが使用される。
次に、ステップS4において、ステップS3で算出されたAgeに基づいて式(4)を使用してトランジスタのホットキャリア劣化(具体的には劣化後のドレイン電流Id’)がシミュレートされる。
R.H. Tu 他、Berkeley reliability tools - BERT、IEEE Trans. Compt.-Aided Des. Integrated Circuits & Syst.、アメリカ合衆国、1993年10月 、vol.12、no.10、p.1524-1534 Kuo 他、IEEE Trans. Electron Devices、アメリカ合衆国、1988年 7月、vol.35、p.1004-1011 Quader他、IEEE Trans. Electron Devices、アメリカ合衆国、1993年12月、vol.40、p.2245-2254 Sheu 他、IEEE J. Solid-State Circuits 、アメリカ合衆国、1987年 8月、vol.SC-22、p.558-566 Chan他、IEEE Electron Device Lett.、アメリカ合衆国、1984年12月、vol.EDL-5、p.505-507 Y.Taur他、Fundamentals of Modern VLSI Devices 、アメリカ合衆国、Cambridge University Press、1998年、p.154-158 BTA Technology,Inc、BTABERT User's Manual Version 2.31、アメリカ合衆国、BTA Technology, Inc.、1996年 9月12日、p.2-1〜2-3
R.H. Tu 他、Berkeley reliability tools - BERT、IEEE Trans. Compt.-Aided Des. Integrated Circuits & Syst.、アメリカ合衆国、1993年10月 、vol.12、no.10、p.1524-1534 Kuo 他、IEEE Trans. Electron Devices、アメリカ合衆国、1988年 7月、vol.35、p.1004-1011 Quader他、IEEE Trans. Electron Devices、アメリカ合衆国、1993年12月、vol.40、p.2245-2254 Sheu 他、IEEE J. Solid-State Circuits 、アメリカ合衆国、1987年 8月、vol.SC-22、p.558-566 Chan他、IEEE Electron Device Lett.、アメリカ合衆国、1984年12月、vol.EDL-5、p.505-507 Y.Taur他、Fundamentals of Modern VLSI Devices 、アメリカ合衆国、Cambridge University Press、1998年、p.154-158 BTA Technology,Inc、BTABERT User's Manual Version 2.31、アメリカ合衆国、BTA Technology, Inc.、1996年 9月12日、p.2-1〜2-3
しかしながら、従来のホットキャリア劣化のシミュレーション方法によると、基板電流モデル式(6)及び(8)におけるパラメータlc0、lc1及びAiの実効チャンネル長依存性を表す式(9)〜(11)が、単なる実効チャンネル長の逆数1/Leffのみに関する一次式の近似式であって物理的基礎を持たない。このため、従来の基板電流モデルにおいて十分な計算精度を実現するためには、実効チャンネル長依存性を表すパラメータとしてlc00、lc01、lc10、lc11、Ai0及びAi1の6個のパラメータが必要となる。その結果、これら6個のパラメータを実験データから抽出し、該抽出結果から、シミュレータに与えられるモデルパラメータ・ファイルを作成するためには多大な時間が必要となってしまうという問題が生じる。
前記に鑑み、本発明は、実効チャンネル長依存性を持ち且つ少数のパラメータからなる基板電流モデルを新たに作成し、該モデルを使用することにより、計算精度を保ちつつホットキャリア劣化シミュレーションにおけるパラメータ抽出を容易に行なえるようにすることを目的とする。
前記の目的を達成するため、本発明に係る第1の半導体装置の信頼性シミュレーション方法は、半導体装置を構成するMOSトランジスタの基板電流Isubの予測値に基づいて半導体装置の信頼性シミュレーションを行なう方法であって、基板電流Isubを
Isub=(Ai/Bi)・(Vds−Vdsat)・Id・exp(−Bi・lc/(Vds−Vdsat))
(但しId、Vds、VdsatはそれぞれMOSトランジスタのドレイン電流、ドレイン電圧、飽和ドレイン電圧であり、lcは特性長であり、Aiはモデルパラメータであり、Biは所定の定数である)で表される基板電流モデル式を用いて算出する際に、特性長lcが実効チャンネル長Leffのmc1乗に比例する(但しmc1は0.2以上で且つ0.3以下の値をとるモデルパラメータである)。
Isub=(Ai/Bi)・(Vds−Vdsat)・Id・exp(−Bi・lc/(Vds−Vdsat))
(但しId、Vds、VdsatはそれぞれMOSトランジスタのドレイン電流、ドレイン電圧、飽和ドレイン電圧であり、lcは特性長であり、Aiはモデルパラメータであり、Biは所定の定数である)で表される基板電流モデル式を用いて算出する際に、特性長lcが実効チャンネル長Leffのmc1乗に比例する(但しmc1は0.2以上で且つ0.3以下の値をとるモデルパラメータである)。
また、第1の半導体装置の信頼性シミュレーション方法において、モデルパラメータmc1は0.25であることが好ましい。
本発明に係る第2の半導体装置の信頼性シミュレーション方法は、半導体装置を構成するMOSトランジスタの基板電流Isubの予測値に基づいて半導体装置の信頼性シミュレーションを行なう方法であって、基板電流Isubを
Isub=(Ai/Bi)・(Vds−Vdsat)・Id・exp(−Bi・lc/(Vds−Vdsat))
(但しId、Vds、VdsatはそれぞれMOSトランジスタのドレイン電流、ドレイン電圧、飽和ドレイン電圧であり、lcは特性長であり、Aiはモデルパラメータであり、Biは所定の定数である)で表される基板電流モデル式を用いて算出する際に、モデルパラメータAiが実効チャンネル長LeffのAi1乗に比例する(但しAi1はモデルパラメータである)。
Isub=(Ai/Bi)・(Vds−Vdsat)・Id・exp(−Bi・lc/(Vds−Vdsat))
(但しId、Vds、VdsatはそれぞれMOSトランジスタのドレイン電流、ドレイン電圧、飽和ドレイン電圧であり、lcは特性長であり、Aiはモデルパラメータであり、Biは所定の定数である)で表される基板電流モデル式を用いて算出する際に、モデルパラメータAiが実効チャンネル長LeffのAi1乗に比例する(但しAi1はモデルパラメータである)。
本発明によれば、基板電流モデルの式(6)におけるlc及びAiに対して、物理的基礎を持つ実効チャンネル長依存性のモデル式が与えられるため、パラメータ数が少なく且つ高精度の基板電流モデルを実現できる。従って、この本発明に係る新たな基板電流モデルを使用することにより、十分な計算精度を維持しつつ、ホットキャリア劣化シミュレーションにおけるパラメータ抽出を容易に行なうことができる。
具体的には、従来の基板電流モデルにおいては式(9)〜(11)に含まれる6個のパラメータlc00、lc01、lc10、lc11、Ai0及びAi1が必要であるのに対して、本発明の基板電流モデルにおいては、後述する式(20)及び(23)を使用する場合には2個のパラメータAi0及びAi1のみで十分であり、後述する式(21)及び(23)を使用する場合には3個のパラメータmc1、Ai0及びAi1のみで十分である。その結果、MOSトランジタのホットキャリア劣化シミュレーションのためのパラメータ抽出を容易に行なうことができ、それにより、該パラメータ抽出及びそれに伴うモデルパラメータ・ファイル作成に要する時間を大幅に削減することができる。このため、ホットキャリア劣化のシミュレーション技術を広範囲に亘って応用できる。
本発明の一実施形態に係る半導体装置の信頼性シミュレーション方法、具体的にはMOSトランジスタのホットキャリア劣化のシミュレーションを行なう方法においては、物理的基礎を持ち且つ実効チャンネル長依存性を持つ新たな基板電流モデルを作成し、該モデルを使用することにより、パラメータ抽出に伴う従来の問題点を解決するものである。
以下、まず、本発明の基板電流モデルにおける実効チャンネル長依存性の物理的基礎について図面を参照しながら説明し、続いて本発明の基板電流モデル式について説明する。
図1は本発明の基板電流モデルにおける物理的基礎の説明図である。具体的には、図1は、飽和領域で動作するNチャンネル型MOSトランジスタのドレイン端におけるキャリアの分布を示している。尚、このキャリアはNチャンネル型MOSトランジスタにおいては電子であるが、Pチャンネル型MOSトランジスタでは正孔となる。すなわち、以下の説明は、キャリア等の型や極性を入れ替えればPチャンネル型MOSトランジスタにおいても同様に成立する。
図1に示すように、シリコン基板1上にゲート酸化膜3を介してゲート電極2が形成されている。シリコン基板1におけるゲート電極2の一側方にはドレイン領域4が設けられている。ゲート電極2にはゲート電圧Vgsが印加されている。ドレイン領域4にはドレイン電圧Vds(>飽和ドレイン電圧Vdsat)が印加されている。
飽和領域で動作するMOSトランジスタのチャンネル5中のキャリアに対しては、該キャリアが速度飽和となる点6に達するまでは縦(垂直)方向電界の影響が支配的である一方、チャンネル5内の横(水平)方向電界強度が弱いため、チャンネル5中のキャリアはゲート酸化膜3の縦方向電界によりシリコン基板1の表面を流れる。しかし、該キャリアがドレイン領域4に近づくに従って横方向電界強度が増加し、それによりキャリアの移動速度の飽和が起こる。キャリアが速度飽和となる点6からドレイン領域4までの速度飽和領域では、キャリアは一定の飽和速度Vsat でドレイン領域4に向かって流れる。この速度飽和領域ではドレイン領域4に近づくに従って下向きの縦方向電界が減少する一方、横方向電界が増加する。このため、速度飽和領域内での電界強度は2次元的な分布を持ち、その結果、キャリアが速度飽和となる点6からドレイン領域4までの間のキャリア流経路7はシリコン基板1の表面から離れてドレイン接合深さXjと同程度の深さまで広がることとなる。また、速度飽和領域内でドレイン領域4にさらに近づくと、縦方向電界の向きが反転して上向きとなり、それによってキャリアの空乏化した領域8が形成される。
ところで、基板電流モデル式(6)に現れる特性長lcに関する従来のモデル式(7)にドレイン接合深さXjが現れる理由は、ドレイン端の縦方向電界を無視しうる深さがドレイン接合深さXjに等しいと仮定しているからである。しかし、前述の速度飽和領域におけるキャリアの分布に基づいて考察すると、ドレイン端の縦方向電界を無視しうる深さはドレイン接合深さXjではなく、キャリアの空乏化した領域8の深さXdである。なぜなら、キャリア流経路7では横方向電界が支配的であるため、縦方向電界を無視できるからである。そこで、本発明の基板電流モデルにおいては、特性長lcを次式(12)のようにモデル化する。
lc=(εSi・Tox・Xd/εox)1/2 ・・・(12)
また、本発明に係る新たな基板電流モデルにおいては、以下に述べるように、式(6)中のlc及びAiにおけるゲート電圧Vgs及びドレイン電圧Vdsに対する依存性をモデル化する。ここで、ドレイン端においてはキャリア流経路7中のキャリア密度は一定であると仮定し、このキャリア密度をnc (/cm3 )とする。また、キャリアの空乏化した領域8においてはキャリア密度は近似的に0となり、さらにキャリア密度の減少分−nc に等しい電荷密度に相当する上向きの縦方向電界が発生すると仮定する。この上向きの縦方向電界は、ドレイン領域4の正電荷により生じたものである。これらの仮定に基づき、ドレイン端の縦方向電界は次式(13)によって表される。
また、本発明に係る新たな基板電流モデルにおいては、以下に述べるように、式(6)中のlc及びAiにおけるゲート電圧Vgs及びドレイン電圧Vdsに対する依存性をモデル化する。ここで、ドレイン端においてはキャリア流経路7中のキャリア密度は一定であると仮定し、このキャリア密度をnc (/cm3 )とする。また、キャリアの空乏化した領域8においてはキャリア密度は近似的に0となり、さらにキャリア密度の減少分−nc に等しい電荷密度に相当する上向きの縦方向電界が発生すると仮定する。この上向きの縦方向電界は、ドレイン領域4の正電荷により生じたものである。これらの仮定に基づき、ドレイン端の縦方向電界は次式(13)によって表される。
Ex(0)=−q・nc ・Xd/εSi・・・(13)
式(13)において、qは電気素量であり、nc はキャリア流経路7中のキャリア密度であり、Xdはキャリアの空乏化した領域8の深さであり、εSiはシリコンの誘電率である。先に述べたように、キャリア流経路7中では横方向電界が支配的であって縦方向電界が無視できるため、キャリア流経路7中の電位φは深さ方向(X方向)には同電位になっている。この電位は、キャリアの空乏化した領域8における深さXdでの電位と等しい。この電位をφ(Xd)とすると、式(13)から、ドレイン端の表面電位φ(0)は次式(14)により表される。
式(13)において、qは電気素量であり、nc はキャリア流経路7中のキャリア密度であり、Xdはキャリアの空乏化した領域8の深さであり、εSiはシリコンの誘電率である。先に述べたように、キャリア流経路7中では横方向電界が支配的であって縦方向電界が無視できるため、キャリア流経路7中の電位φは深さ方向(X方向)には同電位になっている。この電位は、キャリアの空乏化した領域8における深さXdでの電位と等しい。この電位をφ(Xd)とすると、式(13)から、ドレイン端の表面電位φ(0)は次式(14)により表される。
φ(0)=φ(Xd)−q・nc ・Xd2 /2εSi・・・(14)
図2はドレイン端の縦方向電位分布を示している。図2に示すように、キャリア流経路7(X>Xd)中の電位φは縦方向(深さ方向)には一定となっており、その値は、キャリアの空乏化した領域8における深さXdでの電位φ(Xd)に等しい。他方、キャリアの空乏化した領域8(X≦Xd)では表面に近づくにつれて電位φが減少し、ドレイン端表面における表面電位φ(0)は式(14)で表される値となる。
図2はドレイン端の縦方向電位分布を示している。図2に示すように、キャリア流経路7(X>Xd)中の電位φは縦方向(深さ方向)には一定となっており、その値は、キャリアの空乏化した領域8における深さXdでの電位φ(Xd)に等しい。他方、キャリアの空乏化した領域8(X≦Xd)では表面に近づくにつれて電位φが減少し、ドレイン端表面における表面電位φ(0)は式(14)で表される値となる。
ここで、ドレイン端の表面電位φ(0)と、キャリアの空乏化した領域8における深さXdでの電位φ(Xd)との差φ(0)−φ(Xd)は、各端子電圧が一定である場合には、実効チャンネル長Leffの大きさに関わらず、近似的に一定であると考えられる。このような条件においては、キャリアの空乏化した領域8の深さXdは、キャリア流経路7中のキャリア密度nc の関数として、次式(15)のように表すことができる。
Xd=(2εSi・(φ(Xd)−φ(0))/(q・nc ))1/2 ・・・(15)
また、キャリア流経路7中のキャリア密度nc の実効チャンネル長Leffに対する依存性については以下のように考えることができる。
また、キャリア流経路7中のキャリア密度nc の実効チャンネル長Leffに対する依存性については以下のように考えることができる。
実効チャンネル長が変化した場合にも、飽和領域で動作するMOSトランジスタのドレイン端におけるキャリアの空乏化した領域8の深さXdが場所に依らず一定であると考えると、キャリアは、該深さXdからドレイン接合深さXjまでの間の一定の範囲を経路とすると考えられる。また、キャリアが速度飽和となる点6からドレイン領域4までの速度飽和領域では、キャリアは一定の飽和速度Vsat でドレイン領域4に向かって流れる。このため、キャリア流経路7中のキャリア密度nc とドレイン電流Idとは近似的に次式(16)に示す関係で結ばれる。
Id=q・W・(Xj−Xd)・nc ・Vsat ・・・(16)
すなわち、キャリア密度nc はドレイン電流Idに比例する。一方、ドレイン電流Idは次式(17)に表されるように実効チャンネル長Leffに反比例する。
すなわち、キャリア密度nc はドレイン電流Idに比例する。一方、ドレイン電流Idは次式(17)に表されるように実効チャンネル長Leffに反比例する。
Id∝1/Leff ・・・(17)
また、式(16)及び(17)より、次式(18)に表されるように、キャリア密度nc は実効チャンネル長Leffに反比例する。
また、式(16)及び(17)より、次式(18)に表されるように、キャリア密度nc は実効チャンネル長Leffに反比例する。
nc ∝1/Leff ・・・(18)
また、式(15)及び(18)より、キャリアの空乏化した領域8の深さXdは、次式(19)に表されるように、実効チャンネル長Leffの1/2乗に比例する。
また、式(15)及び(18)より、キャリアの空乏化した領域8の深さXdは、次式(19)に表されるように、実効チャンネル長Leffの1/2乗に比例する。
Xd∝(Leff)1/2 ・・・(19)
従って、式(12)及び(19)より、次式(20)に表されるように、特性長lcは実効チャンネル長Leffの1/4乗に比例する。
従って、式(12)及び(19)より、次式(20)に表されるように、特性長lcは実効チャンネル長Leffの1/4乗に比例する。
lc∝(Leff)1/4 ・・・(20)
但し、実際のlcについては、実効チャンネル長Leffの1/4乗に厳密に比例するわけではないので、この1/4(つまり0.25)を、次式(21)に示すパラメータmc1(但しmc1は0.2以上で且つ0.3以下の値をとる)に置き換える。尚、パラメータmc1の値は、後述するように、lcの値に対してフィッティングを行なうことにより求められる。
但し、実際のlcについては、実効チャンネル長Leffの1/4乗に厳密に比例するわけではないので、この1/4(つまり0.25)を、次式(21)に示すパラメータmc1(但しmc1は0.2以上で且つ0.3以下の値をとる)に置き換える。尚、パラメータmc1の値は、後述するように、lcの値に対してフィッティングを行なうことにより求められる。
lc∝(Leff)mc1 ・・・(21)
本発明に係る新たな基板電流モデルにおいては、lcとLeffとの関係式(20)又は(21)を用いて、式(6)中のlcをモデル化する。
本発明に係る新たな基板電流モデルにおいては、lcとLeffとの関係式(20)又は(21)を用いて、式(6)中のlcをモデル化する。
他方、式(6)中のAiについては以下に述べるようにモデル化を行なう。本願発明者の研究によれば、Aiは従来技術のような定数ではなく、キャリアの空乏化した領域8の深さXdの関数である。ここで、前述のように、キャリアの空乏化した領域8の深さXdは、キャリア流経路7中のキャリア密度nc の関数である。また、キャリア密度nc は式(18)のように実効チャンネル長Leffの関数である。従って、本発明に係る新たな基板電流モデルにおいては、Aiを、実効チャンネル長Leffの関数として、次式(22)のように表す。
Ai∝(Leff)Ai1 ・・・(22)
また、Aiが各端子電圧に依存しない場合には、Ai0を比例係数として、Aiを次式(23)のように表す。
また、Aiが各端子電圧に依存しない場合には、Ai0を比例係数として、Aiを次式(23)のように表す。
Ai∝Ai0・(Leff)Ai1 ・・・(23)
すなわち、本発明に係る新たな基板電流モデルを用いてMOSトランジスタのホットキャリア劣化をシミュレートする方法においては、基板電流モデル式(6)において、lcに関する新たな式(20)又は(21)と、Aiに関する新たな式(22)又は(23)を使用して、ホットキャリア劣化のシミュレーションを実行する。
すなわち、本発明に係る新たな基板電流モデルを用いてMOSトランジスタのホットキャリア劣化をシミュレートする方法においては、基板電流モデル式(6)において、lcに関する新たな式(20)又は(21)と、Aiに関する新たな式(22)又は(23)を使用して、ホットキャリア劣化のシミュレーションを実行する。
以下、本発明に係る新たな基板電流モデルを用いてMOSトランジスタのホットキャリア劣化をシミュレートする方法、つまり本発明の一実施形態に係る半導体装置の信頼性シミュレーション方法について図面を参照しながら説明する。
まず、本発明に係る新たな基板電流モデルにおけるパラメータ(モデルパラメータ)mc1、Ai0及びAi1を実験値から抽出する方法について詳しく述べる。
図3は、本発明に係る新たな基板電流モデルのモデルパラメータを実験値から抽出する方法の説明図である。具体的には、図3は、本発明のモデル式(21)に含まれるモデルパラメータmc1を求めるためのプロットを表している。図3において、縦軸はパラメータlcの対数スケールを示し、横軸は実効チャンネル長Leffの対数スケールを示す。また、図3において、11は各実効チャンネル長Leffにおけるパラメータlcの値であり、12はデータ11(各Leffにおけるパラメータlcの値)に対してフィッティングされた直線であり、13はデータ11に対してフィッティングされた傾き1/4の直線である。
尚、各実効チャンネル長Leffにおけるパラメータlcの値としては、例えば、従来技術における図8を用いて説明した方法においてドレイン電圧Vdsを一電圧、例えば実使用時の動作電圧の上限に固定して抽出したlcの値を使用する。この場合、図3の直線12の傾きは0.27であり、図3の直線13の傾き、つまり本発明のモデル式(20)の理論値1/4=0.25に近い。以上のように座標軸の設定を行なうと、図3の直線12の傾きが式(21)中のmc1となる。
図4は、本発明に係る新たな基板電流モデルの実験式(23)に含まれるパラメータAi0及びAi1を求めるためのプロットを表している。図4において、縦軸はパラメータAiの対数スケールを示し、横軸は実効チャンネル長Leffの対数スケールを示す。また、図4において、14は各実効チャンネル長LeffにおけるパラメータAiの値であり、15はデータ14(各LeffにおけるパラメータAiの値)に対してフィッティングされた直線である。尚、各実効チャンネル長LeffにおけるパラメータAiの値としては、例えば、従来技術における図8を用いて説明した方法においてドレイン電圧Vdsを一電圧、例えば実使用時の動作電圧の上限に固定して抽出したAiの値を使用する。
以上のように座標軸の設定を行なうと、式(23)より、図4の直線15の切片(y切片)はln(Ai0)(但しlnは自然対数を表す)となり、該直線の傾きはAi1となるので、これらの値から式(23)のAi0及びAi1を求めることができる。具体的には、本実施形態において、パラメータAi0及びAi1の値としてAi0=6.62×106 /cm及びAi1=0.471が求められた。
次に、モデル式(6)を用いて基板電流のシミュレーションを行なうために、式(6)中のlc及びAiの計算に適合する形式にモデル式及びパラメータを改める方法について説明する。
まず、式(6)中のlcについては以下のように改める。すなわち、例えば従来技術における図8を用いて説明した方法により、対象となる製造プロセスの代表的な実効チャンネル長Leff0に対してパラメータlc0及びlc1を求める。そして、本発明のモデル式(20)を使用する場合には、従来のモデル式(8)〜(10)に代えて、モデル式(8)と本発明のモデル式(20)とを組み合わせた次式(24)〜(26)を用いてシミュレーションを実施する。
lc=(lc0’+lc1’・Vds)・(Tox)1/2 ・(Leff)1/4
・・・(24)
lc0’=lc0/Leff01/4 ・・・(25)
lc1’=lc1/Leff01/4 ・・・(26)
尚、パラメータlc0及びlc1を求めた実効チャンネル長Leff0においては、本発明のモデル式(24)の計算結果と、従来技術のモデル式(8)の計算結果とは一致する。
・・・(24)
lc0’=lc0/Leff01/4 ・・・(25)
lc1’=lc1/Leff01/4 ・・・(26)
尚、パラメータlc0及びlc1を求めた実効チャンネル長Leff0においては、本発明のモデル式(24)の計算結果と、従来技術のモデル式(8)の計算結果とは一致する。
また、パラメータlcについて本発明のモデル式(21)及びパラメータmc1を使用する場合には、本発明のモデル式(24)〜(26)に代えて、モデル式(8)と本発明のモデル式(21)とを組み合わせた次式(27)〜(29)を用いてシミュレーションを実施する。
lc=(lc0’+lc1’・Vds)・(Tox)1/2 ・(Leff)mc1
・・・(27)
lc0’=lc0/Leff0mc1 ・・・(28)
lc1’=lc1/Leff0mc1 ・・・(29)
また、式(6)中のAiを表すモデル式としては、従来のモデル式(11)に代えて、本発明のモデル式(23)を用いてシミュレーションを実施する。
・・・(27)
lc0’=lc0/Leff0mc1 ・・・(28)
lc1’=lc1/Leff0mc1 ・・・(29)
また、式(6)中のAiを表すモデル式としては、従来のモデル式(11)に代えて、本発明のモデル式(23)を用いてシミュレーションを実施する。
図5は、以上のようにして求められたパラメータを用いた、本発明に係る新たな基板電流モデルによる基板電流Isubの計算値と基板電流Isubの実測値との一致の程度を示す図である。具体的には、図5は、実効チャンネル長Leffをパラメータとして、従来の基板電流モデルの実験式(6)並びに本発明に係る新たな基板電流モデル式(23)及び(24)を用いた基板電流Isubの計算値と基板電流Isubの実測値とを比較した様子を表している。図5において、縦軸は基板電流Isubを示し、横軸はゲート電圧Vgsを示し、16は基板電流Isubの実測値であり、17は図3及び図4において求めたパラメータと式(6)、(23)及び(24)とを用いた基板電流Isubの計算結果である。
図5に示すように、本発明に係る新たな基板電流モデルによる基板電流Isubの計算結果における実測値に対する誤差は、図11に示す従来の基板電流モデルによる場合と同程度に小さい。
尚、本発明のモデル式(24)に代えて本発明のモデル式(27)を用いた場合、或いは本発明のモデル式(23)に代えて本発明のモデル式(22)を用いた場合にも同様の基板電流Isubの計算結果が得られる。また、式(22)又は(23)及び式(24)又は(27)におけるパラメータmc1、Ai0及びAi1を求める方法として、前述のようなプロットを用いる方法に代えて、該プロットと等価な数値計算を行なう方法、非線形最小二乗法を用いた数値反復計算によりパラメータを最適化する方法、又はこれらの方法を組み合わせた方法等を利用できる。また、パラメータmc1、Ai0及びAi1を求めるための各方法の一部又は全部をプラグラムとしてパラメータ抽出ソフトウエアに組み込むことにより、パラメータmc1、Ai0及びAi1の算出の一部又は全部を自動化することができる。
また、本発明に係る基板電流モデルおけるlc及びAiの実効チャンネル長依存性を表すモデル式(20)〜(22)は、lc及びAiの各端子電圧依存性を表すモデル式とは独立している。従って、本発明に係る基板電流モデルおけるlc及びAiの実効チャンネル長依存性を表すモデル式(20)〜(22)を、本実施形態で用いたモデル式(8)とは異なる他の各端子電圧依存性のモデル式と組み合わせることも可能である。この場合、式(23)、(24)又は(27)は、モデル式(20)〜(22)と組み合わされる各端子電圧依存性のモデル式に従って変更される。但し、どのような各端子電圧依存性のモデル式を用いたとしても、特性長lcは実効チャンネル長Leffの1/4乗又はmc1乗(但しmc1は0.2以上で且つ0.3以下の値をとる)に比例し、パラメータAiは実効チャンネル長LeffのAi1乗に比例する。
また、本発明に係る新たな基板電流モデルにおいて、lc及びAiの実効チャンネル長依存性をそれぞれ表す本発明のモデル式のうちのいずれか一方のみを使用し、他方については、それに代えて、本発明のモデル式とは異なる他のモデル式を用いてもよい。
図6は、本発明に係る新たな基板電流モデルを用いて回路のホットキャリア劣化をシミュレートする第1の方法、つまり本発明の一実施形態に係る半導体装置の信頼性シミュレーション方法の手順の一例を示すフロー図である。図6のフロー図に示す方法は、式(4)〜(6)、(23)及び(24)に従って、例えばプログラムされたコンピュータを用いた信頼性シミュレータが、トランジスタのホットキャリア劣化をシミュレートするためのステップS11〜S14を含んでいる。
まず、ステップS11において、予め抽出されたストレス印加前のトランジスタパラメータによってフレッシュなドレイン電流Idがシミュレートされる。
次に、ステップS12において、式(6)、(23)及び(24)により表される基板電流モデル式と、図4を用いて説明した方法によって決定されたパラメータAi0及びAi1とに基づいて基板電流Isubがシミュレートされる。
次に、ステップS13において、式(5)に基づいて各トランジスタの劣化を表すAgeが、回路中におけるドレイン電流Id及び基板電流Isubの関数を時間積分することにより計算される。このとき、ステップS11でシミュレートされたドレイン電流Idと、ステップS12でシミュレートされた基板電流Isubとが使用される。
次に、ステップS14において、ステップS13で算出されたAgeに基づいて式(4)を使用してトランジスタのホットキャリア劣化(具体的には劣化後のドレイン電流Id’)がシミュレートされる。
図7は、本発明に係る新たな基板電流モデルを用いて回路のホットキャリア劣化をシミュレートする第2の方法、つまり本発明の一実施形態に係る半導体装置の信頼性シミュレーション方法の手順の他例を示すフロー図である。図7のフロー図に示す方法は、式(4)〜(6)、(23)及び(27)に従って、例えばプログラムされたコンピュータを用いた信頼性シミュレータが、トランジスタのホットキャリア劣化をシミュレートするためのステップS21〜S24を含んでいる。
まず、ステップS11と同様にステップS21において、予め抽出されたストレス印加前のトランジスタパラメータによってフレッシュなドレイン電流Idがシミュレートされる。
次に、ステップS22において、式(6)、(23)及び(27)により表される基板電流モデル式と、図3及び図4を用いて説明した方法によって決定されたパラメータmc1、Ai0及びAi1とに基づいて基板電流Isubがシミュレートされる。
次に、ステップS23において、式(5)に基づいて各トランジスタの劣化を表すAgeが、回路中におけるドレイン電流Id及び基板電流Isubの関数を時間積分することにより計算される。このとき、ステップS21でシミュレートされたドレイン電流Idと、ステップS22でシミュレートされた基板電流Isubとが使用される。
次に、ステップS24において、ステップS23で算出されたAgeに基づいて式(4)を使用してトランジスタのホットキャリア劣化(具体的には劣化後のドレイン電流Id’)がシミュレートされる。
以上に説明したように、本実施形態によると、基板電流モデルの式(6)におけるlc及びAiの実効チャンネル長依存性を表す本発明のモデル式(20)〜(22)は、lc及びAiの実効チャンネル長依存性を表す従来のモデル式(9)〜(11)と異なり、物理的基礎を持つ。このため、本発明に係る新たな基板電流モデルのパラメータ数が少ないにも関わらず、本発明に係る新たな基板電流モデルによる基板電流の計算結果は高精度で実測値と一致する。また、本発明に係る新たな基板電流モデルのパラメータ数が少ないことにより、MOSトランジタのホットキャリア劣化シミュレーションのためのパラメータ抽出を容易に行なうことができ、それにより、該パラメータ抽出及びそれに伴うモデルパラメータ・ファイル作成に要する時間を大幅に削減することができる。このため、ホットキャリア劣化のシミュレーション技術を広範囲に亘って応用できる。
以上に説明したように、本発明の半導体装置の信頼性シミュレーション方法は、半導体集積回路のホットキャリア劣化現象のシミュレーション方法等に適用した場合に、実効チャンネル長依存性を持つモデル式のパラメータ抽出を容易に行なえ且つ十分な計算精度を保てるという効果が得られ有用である。
1 シリコン基板
2 ゲート電極
3 ゲート酸化膜
4 ドレイン領域
5 チャンネル
6 キャリアが速度飽和となる点
7 キャリア流経路
8 キャリアの空乏化した領域
11 パラメータの値
12 パラメータの値11に対してフィッティングされた直線
13 パラメータの値11に対してフィッティングされた直線
14 パラメータの値
15 パラメータの値14に対してフィッティングされた直線
16 基板電流の実測値
17 基板電流の計算結果
Xd キャリアの空乏化した領域8の深さ
Xj ドレイン接合深さ
nc キャリア流経路7中のキャリア密度
2 ゲート電極
3 ゲート酸化膜
4 ドレイン領域
5 チャンネル
6 キャリアが速度飽和となる点
7 キャリア流経路
8 キャリアの空乏化した領域
11 パラメータの値
12 パラメータの値11に対してフィッティングされた直線
13 パラメータの値11に対してフィッティングされた直線
14 パラメータの値
15 パラメータの値14に対してフィッティングされた直線
16 基板電流の実測値
17 基板電流の計算結果
Xd キャリアの空乏化した領域8の深さ
Xj ドレイン接合深さ
nc キャリア流経路7中のキャリア密度
Claims (3)
- 半導体装置を構成するMOSトランジスタの基板電流Isubの予測値に基づいて前記半導体装置の信頼性シミュレーションを行なう方法であって、
前記基板電流Isubを
Isub=(Ai/Bi)・(Vds−Vdsat)・Id・exp(−Bi・lc/(Vds−Vdsat))
(但しId、Vds、Vdsatはそれぞれ前記MOSトランジスタのドレイン電流、ドレイン電圧、飽和ドレイン電圧であり、lcは特性長であり、Aiはモデルパラメータであり、Biは所定の定数である)で表される基板電流モデル式を用いて算出する際に、
前記特性長lcが実効チャンネル長Leffのmc1乗に比例する(但しmc1は0.2以上で且つ0.3以下の値をとるモデルパラメータである)ことを特徴とする半導体装置の信頼性シミュレーション方法。 - 前記モデルパラメータmc1は0.25であることを特徴とする請求項1に記載の半導体装置の信頼性シミュレーション方法。
- 半導体装置を構成するMOSトランジスタの基板電流Isubの予測値に基づいて前記半導体装置の信頼性シミュレーションを行なう方法であって、
前記基板電流Isubを
Isub=(Ai/Bi)・(Vds−Vdsat)・Id・exp(−Bi・lc/(Vds−Vdsat))
(但しId、Vds、Vdsatはそれぞれ前記MOSトランジスタのドレイン電流、ドレイン電圧、飽和ドレイン電圧であり、lcは特性長であり、Aiはモデルパラメータであり、Biは所定の定数である)で表される基板電流モデル式を用いて算出する際に、
前記モデルパラメータAiが実効チャンネル長LeffのAi1乗に比例する(但しAi1はモデルパラメータである)ことを特徴とする半導体装置の信頼性シミュレーション方法。
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