JP2005256183A - 活性炭素繊維の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】フェノール樹脂を主体とした活性炭素繊維の製造方法において、従来よりも温和な条件で、工程上の煩雑さもなく生産性に優れ、低コストで生産できるうえ、その収率が高く、更に細孔径の調整が容易なため、幅広い応用分野において使用可能ならしめる方法を提供することにある。
【解決手段】フェノール樹脂と、少なくとも1種類以上の繊維形成性高分子化合物を主体としこれらを水あるいは有機溶剤等の共通の溶剤に溶解した混合物を紡糸原液とし、これを繊維形成性高分子化合物に対して固化能を有する浴中に細孔を通して湿式あるいは乾湿式で紡糸するか、あるいは空気、不活性ガス中に乾式で紡糸した後、延伸を行い、更に熱処理或いは触媒存在下アルデヒド類による硬化処理を施すことで得られるフェノール樹脂系繊維を炭化、あるいはその後賦活する、もしくは炭化賦活を連続的に行う。
【解決手段】フェノール樹脂と、少なくとも1種類以上の繊維形成性高分子化合物を主体としこれらを水あるいは有機溶剤等の共通の溶剤に溶解した混合物を紡糸原液とし、これを繊維形成性高分子化合物に対して固化能を有する浴中に細孔を通して湿式あるいは乾湿式で紡糸するか、あるいは空気、不活性ガス中に乾式で紡糸した後、延伸を行い、更に熱処理或いは触媒存在下アルデヒド類による硬化処理を施すことで得られるフェノール樹脂系繊維を炭化、あるいはその後賦活する、もしくは炭化賦活を連続的に行う。
Description
本発明は従来よりも温和な条件で、工程上の煩雑さもなく生産性に優れ、低コストで生産できるうえ、その収率が高く、更に細孔径の調整が可能なため、幅広い応用分野において使用可能ならしめる活性炭素繊維の製造方法を提供することにある。
現代社会において活性炭は医薬、化学工業、食品、飲料、環境保全等あらゆる分野において広範に使用されている。これは活性炭の極めて大きな表面積とこの部分への吸着を利用するものである。更に近年では電気二重層を利用したキャパシタ等の電気化学的分野に活性炭が使用されるようになり益々その重要度を深めるに至っている。
このような用途への活性炭としてはヤシ殻、鋸屑、木分、石炭ピッチ、石油ピッチなど各種素材を水蒸気、二酸化炭素などのガスによる賦活処理を行ったもの、あるいは薬品賦活法、あるいはアルカリ賦活法といった方法で製造されるのが一般的である。然るに活性炭の細孔を形成させるためのこの賦活処理までで多量の前駆体が消失することになる。特に収率が低いとされる前駆体では90%以上に及ぶ多大な消失量となる。また、その処理には高価な高温処理装置が必要となる上、高温、長時間処理のための多大な熱エネルギーを要する。
先に述べた様に極めて有用な活性炭ではあるがその欠点はコストが高い点である。その理由は以上のような事情にも一因があるのである。
このように活性炭を製造する際の賦活処理は資源の消費やエネルギーコストという経済的問題と、収率が悪いという生産性に関する問題があり、これに対する対応も幾つか行われてきた。
例えば、熱処理後に炭素を残存させる炭素前駆体高分子化合物と熱処理時に飛散、離脱する気孔形成高分子化合物を組み合わせたポリマーブレンドを調合し、これを希望する形態に変成させ、これを必要に応じて不融化させた後炭化する方法が開示されている(例えば、非特許文献1参照。)。これまでに行われたポリマーブレンド法での活性炭製造の検討は主にフィルム状で成されている場合が多く、一定の効果を発揮している。
しかし、活性炭の形状に関しては、その用途や目的に応じて形状を選択できることが有効である。例えば、活性炭で繊維形状を有するいわゆる活性炭素繊維は通常の粉末や粒状、あるいは球状といった活性炭に比べマクロ的な接触面積が大きいため吸着が早い、あるいは電気化学的に使用される場合には接触点を多く取れることから低電気抵抗である点、あるいは紙、不職布、織布、紐、糸といった形状に容易に変更できる点等で有利である。この活性炭素繊維としては、柔軟性に富み加工が容易である点、炭化、賦活後の収率が高い点や特定の有機溶剤に対して極めて高い吸着性を示す等の理由からフェノール樹脂繊維からの活性炭素繊維が知られている。
この観点から、炭素前駆体高分子化合物にフェノール樹脂を用い、前述のポリマーブレンド法を用いて活性炭素繊維にしようとする考えは当然の如く生まれてくるが、残念ながらその試行例は極めて稀である。その理由の一つはブレンドポリマーを繊維化する技術、即ち紡糸においては曳糸性の異なる2つの成分を上手く適合させることが難しいことが挙げられる。一般的には単成分に比べて複雑な挙動を示すため安定的に糸を効率良く、しかも繊維径を高精度に制御することが難しくなるためである。二点目としては紡糸時の可塑変形時に気孔形成性高分子化合物そのものも軸方向に引延ばされるため、希望するような細孔形成ができないことが挙げられる。
一方、このような中で、未硬化ノボラック型フェノール樹脂とポリビニルブチラールを特定の比率で熱溶融混合、あるいは溶剤に両樹脂を溶解させて混合した後に溶剤を除去する方法でブレンドポリマーを得、これを溶融紡糸し、更にフェノール樹脂を硬化させ、次いで炭化・賦活することでメソポアーの多い活性炭素繊維が得られることが開示されている(例えば、特許文献1参照。)。この方法では先に述べたように気孔形成性高分子化合物が引延ばされることがないが、その理由はポリビニルブチラールと未硬化ノボラック型フェノール樹脂の相溶性が極めて良好で、ポリビニルブチラールが極めて微細で均一な分散ができるためと説明されている。
活性炭素繊維を効率良く、生産性良く製造できるポリマーブレンド法ではあるが、その一方で繊維化する手段が溶融紡糸に限られるため、ブレンドに供される樹脂が熱可塑性を有する物に限られること、その中でも2つの樹脂の相溶性に厳しい制限があることを考えれば事実上極めて限定的な手法にしか成り得ないのが実情であった。
特開平9−13232号公報
立本英機、安部郁夫監修 「活性炭の応用技術」 テクノシステム 2000年7月
活性炭素繊維は現代社会においてますます重要かつ不可欠な素材と位置付けられているが、一方で従来の製造方法においては安価に得ることが難しく、このことがコスト高につながり普及の妨げとなってきた。これ解消すべく考案されたポリマーブレンド法ではあるが高分子化合物種が限定されるといった事実に鑑み、本発明者らは鋭意研究を進め、本発明を完成させたものである。即ち、その課題とするところは従来よりも温和な条件で、工程上の煩雑さもなく生産性に優れ、低コストで生産できるうえ、その収率が高く、更に細孔径の調整が容易なため、幅広い応用分野において使用可能ならしめる方法を提供することにある。
フェノール樹脂と他の高分子化合物をブレンドし、更にその混合状態を均一且つ微細にするためには共通の溶剤に溶解させた溶液状態にすることが適切である。更にこの溶液状態で紡糸することができれば均一混合状態で繊維化することができる。溶液状態から繊維化する手段としては湿式紡糸法、乾湿式紡糸法あるいは乾式紡糸法が考えられる。
そこで本発明者らはフェノール樹脂と、ポリビニルアルコールや二酢酸セルロース等の少なくとも1種類以上の繊維形成性高分子化合物を主体としこれらを水あるいは有機溶剤等の共通の溶剤に溶解した混合物を紡糸原液とし、これを繊維形成性高分子化合物に対して固化能を有する浴中に細孔を通して湿式あるいは乾湿式で紡糸するか、あるいは空気、不活性ガス中に乾式で紡糸した後、延伸を行い、更に熱処理或いは触媒存在下アルデヒド類による硬化処理を施すことで得られるフェノール樹脂系繊維を炭化、あるいはその後賦活する、もしくは炭化賦活を連続的に行うことで活性炭素繊維を容易に作ることができることを見出したものである。
以上に詳述した様に本発明では、従来は長時間を用し且つ収率が低く、従って高価な物にならざるを得なかった活性炭素繊維の製造上の問題点を克服したものであって、その効果は従来よりも温和な条件で、工程上の煩雑さがなく生産性に優れ、低コストで生産でき、且つ収率が高く、更に細孔径の調整が容易なため、幅広い応用分野において使用可能ならしめる活性炭素繊維の製造方法を提供できるものである。
以下に本発明を詳しく述べる。
先ず、次に本発明で用いられるフェノール樹脂について説明を行う。先ず、本発明に用いるフェノール樹脂を得るために使用されるフェノール類としては、アルデヒド類と酸性あるいは塩基性触媒下で反応させてフェノール樹脂が得られるフェノール類であれば以下に例示したフェノール類に限定されるものではないが、例えばフェノール、o−クレゾール、m−クレゾール、p−クレゾール、2,3−キシレノール、3,5−キシレノール、m−エチルフェノール、m−プロピルフェノール、m−ブチルフェノール、p−ブチルフェノール、o−ブチルフェノール、レゾルシノール、ハイドロキノン、カテコール、3−メトキシフェノール、4−メトキシフェノール、3−メチルカテコール、4−メチルカテコール、メチルハイドロキノン、2−メチルレゾルシノール、2,3−ジメチルハイドロキノン、2,5−ジメチルレゾルシノール、2−エトキシフェノール、4−エトキシフェノール、4−エチルレゾルシノール、3−エトキシ−4−メトキシフェノール、2−プロペニルフェノール、2−イソプロピルフェノール、3−イソプロピルフェノール、4−イソプロピルフェノール、3,4,5−トリメチルフェノール、2−イソプロポキシフェノール、4−ピロポキシフェノール、2−アリルフェノール、3,4,5−トリメトキシフェノール、4−イソプロピル−3−メチルフェノール、ピロガロール、フロログリシノール、1,2,4−ベンゼントリオール、5−イソプロピル−3−メチルフェノール、4−ブトキシフェノール、4−t−ブチルカテコール、t−ブチルハイドロキノン、4−t−ペンチルフェノール、2−t−ブチル−5−メチルフェノール、2−フェニルフェノール、3−フェニルフェノール、4−フェニルフェノール、3−フェノキシフェノール、4−フェノキシフェノール、4−へキシルオキシフェノール、4−ヘキサノイルレゾルシノール、3,5−ジイソプロピルカテコール、4−ヘキシルレゾルシノール、4−ヘプチルオキシフェノール、3,5−ジ−t−ブチルフェノール、3,5−ジ−t−ブチルカテコール、2,5−ジ−t−ブチルハイドロキノン、ジ−sec−ブチルフェノール、4−クミルフェノール、ノニルフェノール、2−シクロペンチルフェノール、4−シクロペンチルフェノール、ビスフェノールA、ビスフェノールFなどがある。また使用にあたってはこれらフェノール類単体でも混合物でも良い。このうちフェノール、o−クレゾール、m−クレゾール、p−クレゾール、ビスフェノールA、2,3−キシレノール、3,5−キシレノール、m−ブチルフェノール、p−ブチルフェノール、o−ブチルフェノール、4−フェニルフェノール、レゾルシノールが好ましく、更にフェノールは最も好ましい。
先ず、次に本発明で用いられるフェノール樹脂について説明を行う。先ず、本発明に用いるフェノール樹脂を得るために使用されるフェノール類としては、アルデヒド類と酸性あるいは塩基性触媒下で反応させてフェノール樹脂が得られるフェノール類であれば以下に例示したフェノール類に限定されるものではないが、例えばフェノール、o−クレゾール、m−クレゾール、p−クレゾール、2,3−キシレノール、3,5−キシレノール、m−エチルフェノール、m−プロピルフェノール、m−ブチルフェノール、p−ブチルフェノール、o−ブチルフェノール、レゾルシノール、ハイドロキノン、カテコール、3−メトキシフェノール、4−メトキシフェノール、3−メチルカテコール、4−メチルカテコール、メチルハイドロキノン、2−メチルレゾルシノール、2,3−ジメチルハイドロキノン、2,5−ジメチルレゾルシノール、2−エトキシフェノール、4−エトキシフェノール、4−エチルレゾルシノール、3−エトキシ−4−メトキシフェノール、2−プロペニルフェノール、2−イソプロピルフェノール、3−イソプロピルフェノール、4−イソプロピルフェノール、3,4,5−トリメチルフェノール、2−イソプロポキシフェノール、4−ピロポキシフェノール、2−アリルフェノール、3,4,5−トリメトキシフェノール、4−イソプロピル−3−メチルフェノール、ピロガロール、フロログリシノール、1,2,4−ベンゼントリオール、5−イソプロピル−3−メチルフェノール、4−ブトキシフェノール、4−t−ブチルカテコール、t−ブチルハイドロキノン、4−t−ペンチルフェノール、2−t−ブチル−5−メチルフェノール、2−フェニルフェノール、3−フェニルフェノール、4−フェニルフェノール、3−フェノキシフェノール、4−フェノキシフェノール、4−へキシルオキシフェノール、4−ヘキサノイルレゾルシノール、3,5−ジイソプロピルカテコール、4−ヘキシルレゾルシノール、4−ヘプチルオキシフェノール、3,5−ジ−t−ブチルフェノール、3,5−ジ−t−ブチルカテコール、2,5−ジ−t−ブチルハイドロキノン、ジ−sec−ブチルフェノール、4−クミルフェノール、ノニルフェノール、2−シクロペンチルフェノール、4−シクロペンチルフェノール、ビスフェノールA、ビスフェノールFなどがある。また使用にあたってはこれらフェノール類単体でも混合物でも良い。このうちフェノール、o−クレゾール、m−クレゾール、p−クレゾール、ビスフェノールA、2,3−キシレノール、3,5−キシレノール、m−ブチルフェノール、p−ブチルフェノール、o−ブチルフェノール、4−フェニルフェノール、レゾルシノールが好ましく、更にフェノールは最も好ましい。
次に本発明で用いるフェノール樹脂を得るために使用されるアルデヒド類としては以下に例示したアルデヒド類に限定されるものではないが、例えばホルムアルデヒド、トリオキサン、フルフラール、パラホルムアルデヒド、ベンズアルデヒド、メチルヘミホルマール、エチルへミホルマール、プロピルへミホルマール、サリチルアルデヒド、ブチルヘミホルマール、フェニルへミホルマール、アセトアルデヒド、プロピルアルデヒド、フェニルアセトアルデヒド、α−フェニルプロピルアルデヒド、β−フェニルプロピルアルデヒド、o−ヒドロキシベンズアルデヒド、m−ヒドロキシベンズアルデヒド、p−ヒドロキシベンズアルデヒド、o−クロロベンズアルデヒド、o−ニトロベンズアルデヒド、m−ニトロベンズアルデヒド、p−ニトロベンズアルデヒド、o―メチルベンズアルデヒド、m−メチルベンズアルデヒド、p−メチルベンズアルデヒド、p−エチルベンズアルデヒド、p−n−ブチルベンズアルデヒド等、或いはこれらの混合物等が使用できる。このうち、ホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒド、フルフラール、ベンズアルデヒド、サリチルアルデヒドが好ましく、特にホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒドが最も好ましい。
更に本発明で用いるフェノール樹脂を得るために使用される酸性触媒としては以下の例示に限定されるものではないが、例えば塩酸、硫酸、リン酸、蟻酸、酢酸、蓚酸、酪酸、乳酸、ベンゼンスルフォン酸、p−トルエンスルフォン酸、硼酸または塩化亜鉛や酢酸亜鉛のような金属との塩あるいはこれらの混合物が挙げられる。
また、本発明で用いるフェノール樹脂を得るために使用される塩基性触媒としては以下の例示に限定されるものではないが、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カルシウム、水酸化バリウム、水酸化リチウムのようなアルカリ金属またはアルカリ土類金属の水酸化物や水酸化アンモニウム、ジエチルアミン、トリエチルアミン、トリエタノールアミン、エチレンジアミン、ヘキサメチレンテトラミンのようなアミン類或いはこれらの混合物等が挙げられる。
本発明に用いるレゾール型フェノール樹脂を得るためには従来の公知の反応方法が可能である。例えば、モル比に関しては以下に限定されるものではないが、一般的には前述のアルデヒド類(F)と前述のフェノール類(P)とのモル比(以下F:Pと略記する)は1.1:1から2.8:1の範囲、好ましくは1.5:1から2.2:1の範囲が良い。F:Pが1.1:1未満だと後の熱処理の際、架橋硬化反応が緩慢となり過ぎ、2.8:1を超えると反応の制御が困難となる。
一方、本発明に用いるノボラック型フェノール樹脂を得るためにも従来の公知の反応方法が可能である。同様に、モル比に関しては以下に限定されるものではないが、一般的には前述のアルデヒド類(F)と前述のフェノール類(P)とのモル比は0.5:1から0.9:1の範囲、好ましくは0.7:1から0.9:1の範囲が良い。F:Pが0.5:1未満だと得られる樹脂の収率が低くなり過ぎ、0.9:1を超えると反応の制御が困難となる。
次に本発明で言う繊維形性能を有する高分子化合物と溶解能を持つ溶媒について説明する。繊維形性高分子化合物として水溶性のものとしてはポリビニルアルコール、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸カリウム、カルボキシメチルセルロースナトリウム、カルボキシメチルグルカンナトリウム、ヒドロキシエチルセルロース、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリアクリル酸アンモニウム、ポリメタクリル酸エステル、ポリアクリルアミド、キトサン、カゼイン及びこれらの共重合が挙げられる。有機溶剤可溶性のものとしては二酢酸セルロース、三酢酸セルロース、ポリアクリロニトリル、ポリビニルブチラール、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリ酢酸ビニル、ポリアミド、ポリエステル等或いはこれらの混合物が上げられる。その溶媒としては例えば二酢酸セルロースを使用する場合はアセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、ギ酸メチル、酢酸メチル、酢酸エチル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等を用いることが可能である。また、三酢酸セルロースの場合にはメチレンクロライド、メチレンクロライドとメタノール混合液等に溶解することが可能である。ポリアクリロニトリルを用いる場合はジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジオキサン、ジメチルスルホキシド、N−メチルピロリドン等に溶解することが可能である。ポリビニルブチラールを用いる場合はメタノール、あるいはメタノールとトルエン、あるいはエタノールとトルエン、更にこれらにエチルセロソルブやブチルセロソルブを混合した液等に溶解することが可能である。ポリ塩化ビニルを用いる場合はジメチルスルホキシドやジメチルアセトアミドやジメチルホルムアミド、テトラヒドロフランに溶解することが可能である。
続いて、これら本発明に供せられるフェノール樹脂と繊維形成性高分子化合物から紡糸原液を調整する方法について説明する。この場合、フェノール樹脂と繊維形成性高分子化合物の両者に溶解能を持つ溶媒に溶解した混合物を紡糸原液とする。
紡糸に供するこの混合液の固形分は2〜50重量%、望ましくは5〜40重量%、最も望ましくは10〜20重量%程度に調整するのが良いが、これとは別に紡糸時の固化浴温度において1〜50Pa・S程度、望ましくは5〜10Pa・S程度の粘度になるよう決定しても良い。
また、この混合液を紡糸して生成する糸中のフェノール樹脂と繊維形成性高分子化合物の割合は使用目的や最終的に得られる活性炭素繊維の比表面積等に応じて高分子化合物/フェノール樹脂=9:1〜1:9から選択可能である。
ここで用いる繊維形成性高分子化合物は単独あるいは2種類以上を混合使用することは何ら差支えない。フェノール樹脂についても同様である。
紡糸に供せられるこの混合液の混合方法についても特に制限はない。所定量の繊維形成性高分子化合物とフェノール樹脂溶液を混合容器に入れ攪拌翼で30分以上攪拌し続けるのが望ましい。この時粘度が高く攪拌し難いようであれば、40〜60℃程度に昇温しても差支えないが、80℃を超える温度で30分間以上攪拌を続けるとフェノール樹脂が硬化し始める問題がある上、開放状態では有機溶剤が揮発することに伴い濃縮されるため注意が必要である。
均一に攪拌が済んだ混合液を紡糸原液とするが、紡糸中の糸切れを防止する意味から、混合液中の微細気泡を減圧脱泡させる操作が望ましい。また、紡糸装置の原液貯槽内では均一混合状態を維持するため、5〜20R.P.Mで緩やかに攪拌しつづけることが望ましい。
本発明で用いる紡糸装置は一般の湿式紡糸装置であれば特に制限はなく使用可能である。また紡糸装置によっては紡糸ノズルから一旦、空気や不活性ガス中に紡糸原液を吐出させる乾湿式もあり、こちらも使用可能である一方、これ以外には乾式紡糸も可能である。この場合、乾燥に用いる気体としては溶媒の沸点以上に加温した空気が一般的であるが、特に引火点や着火点が低い、あるいは脱溶媒のために高温化した空気では酸化が問題となる場合には窒素やアルゴンなどの不活性気体を用いることもできる。
いずれの方法を用いて紡糸をするかは用いる繊維形成性高分子化合物の種類・濃度・特性に応じて選択すれば良いがノズル吐出直後の繊維同士の膠着を防止する意味から湿式紡糸装置が望ましい。湿式紡糸の場合、固化浴としては紡糸原液中の繊維形成性高分子化合物に対して固化能を有するものを用いる。
固化浴の組成については繊維形成性高分子化合物の種類により異なるが、例えばフェノール樹脂と組み合わせる繊維形成性高分子化合物がポリビニルアルコールに代表される水溶性高分子の場合には、塩析・脱水効果を利用するために無機塩類を添加するか、あるいは繊維形成性水溶性高分子間を架橋させる架橋剤を用いる方法が一般的である。
また、有機溶剤可溶型の繊維形成性高分子化合物の場合、例えば二酢酸セルロースではアセトンに溶解し、固化させる浴としては水、水とアルコール混合液等が使用可能である。また、三酢酸セルロースの場合にはメチレンクロライド、メチレンクロライドとメタノール混合液に溶解し、これを固化させる浴としては水、水とアルコール混合液等が使用可能である。ポリアクリロニトリルを用いる場合はジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジオキサンあるいは水とアルコール類との混合液等に溶解し、これを固化させる浴としては水、水とアルコール混合液が有効である。ポリビニルブチラールを用いる場合はメタノール等に溶解し、これを固化させる浴としては水、水とアルコール混合液が有効である。凝固浴に水あるいは水とアルコールの混合液を用いる場合には塩析・脱水効果により凝固速度を早めるために硫酸アンモニウム、硫酸ナトリウム等の無機塩類を添加する等の操作も有効である。逆に凝固速度が速過ぎて断糸したり、延伸ができない等、紡糸が困難な場合には紡糸原液の溶解に用いた溶剤を凝固浴に混ぜることなど、一般の湿式紡糸で取られる手法は本発明においても有効である。
固化浴の温度は−5℃から60℃の範囲で希望する固化能になる温度を選択すれば良い。一般に固化浴の温度が高めの方が固化能は高いが、余り高くなると紡糸原液中のフェノール樹脂の粘度が下がりすぎ固化液中に溶出する恐れがあること、及び浴中での延伸が困難になるため5℃〜40℃の範囲にすることが望ましい。
この際、繊維径を均一化するために、紡糸原液をギアポンプ等の吐出量を一定に制御する装置を通して紡糸ノズルから固化浴に吐出することが望ましい。固化浴中で生成した糸條を引き出す速度は、紡糸ノズルの吐出線速度の1.1倍以上〜500倍未満、好ましくは4倍〜100倍、更には5倍〜10倍の範囲にすることが最も好ましい。用いる繊維形成性高分子化合物の混合比率によってはあまり延伸すると固化の際、繊維形態を保持するのが困難になるため、一般的には高くとも15倍程度までが望ましい。1.1倍未満では繊維同士が膠着し易くなる。
以上の操作で得られた糸條は所定の細さになるよう乾熱あるいは湿熱で延伸を行う。湿熱で延伸する場合は、例えば固化浴と同組成の液に浸漬しながら10℃〜80℃の範囲、望ましくは30〜50℃の温度範囲において2.0倍から4.0倍程度に延伸することが望ましい。
乾熱延伸の場合には60℃〜120℃、好ましくは80℃〜100℃の雰囲気下で2.0倍から4.0倍程度に延伸する方法が挙げられる。
乾熱あるいは湿熱で延伸を終了させた後、次いでフェノール樹脂を硬化させる。用いた樹脂が、例えばレゾール型フェノール樹脂の様に加熱することで硬化する場合、延伸に引き続き湿熱あるいは乾熱法で加熱処理を行うことで硬化処理することができる。熱処理条件は100℃〜220℃、好ましくは120℃〜180℃で5分から120分、好ましくは20分から60分行うことが良い。更に硬化速度を上げる方法として熱処理時に酸性となる添加物を加える方法もある。このために添加するものとして、酸としては典型的な無機酸あるいは有機酸が使用可能である。あるいは硫酸ナトリウムのごとき酸性塩でも良い。一方、加熱時に酸性を与える化合物でも良い。即ち、常温では塩基性と酸性が平衡を保って中性に近いが、加熱時に塩基性部分が熱分解して酸性を呈する物質を遊離するエステルや塩などがある。例えばシュウ酸ジメチルエステルのようなカルボン酸エステル類、マレイン酸無水物やフタル酸無水物のような酸無水物、モノクロロ酢酸のナトリウム塩のような有機ハロゲン化物、エチルアミン塩酸塩やトリエタノールアミン塩酸塩のようなアミン類が挙げられる。
また、常温時は中性または弱アルカリ性で存在し、加熱により生じたホルムアルデヒドあるいはフェノール樹脂中のメチロール基との反応によって酸性物質を遊離し硬化を促進するものとして塩化アンモニウム、硫酸アンモニウムのようなアンモニウム塩や尿素誘導体のようなものがある。
更に、常温では非常に安定な結晶構造の中に酸を抱接し、熱処理温度に近い融点で初めて酸として作用するものに尿素アダクトがある。この例としてはサリチル酸尿素アダクト、ステアリン酸尿素アダクトまたはヘプタン酸尿素アダクトがある。
これらの酸あるいは酸性物質、もしくは高温時に酸を遊離する化合物は例えば固化浴中あるいは湿熱延伸用の浴等に予め添加したり熱処理前に水溶液をスプレーするなどの方法で糸條に付与する方法が用いられる。
更に、用いたフェノール樹脂が、ノボラック型フェノール樹脂の場合、触媒の存在下アルデヒド類で硬化処理を施す必要がある。これには例えば、塩酸等酸性触媒とホルムアルデヒドの存在下、液相にて加熱して硬化させることが一般的であるが、気相下で加熱して行っても良い。更には、一旦酸性触媒の存在下アルデヒド類で処理した後、引き続きアンモニア等の塩基性触媒の存在下アルデヒド類で硬化処理を行う方法や、更には前述した通常硬化反応の後、水洗乾燥後、窒素・ヘリウム・炭酸ガス等の不活性ガス中100℃〜300℃の温度で加熱することにより硬化させる等、公知の硬化処理を行うことができる。
フェノール樹脂としてはノボラック型、レゾール型いずれもが使用可能であるが、前述の様にノボラック型はレゾール型に比べて時間を要する硬化処理工程が必要になること、更にこの硬化反応中に酸あるいは塩基により変質を受け難く、且つ反応液を内部のフェノール樹脂まで供給できる繊維形成性高分子化合物を選択しなければならない等の制限がある。工業的に製造する場合の工程の容易さ、汎用性を勘案するとレゾール型を用いることが望ましい。
乾燥においては糸條同士が膠着しないよう乾燥前に鉱物油、シリコン系・フッ素系などの疎水性油剤を付着させることは効果的である。
以上の操作により、本発明の目的とする活性炭素繊維の前駆体となる所謂ポリマーブレンド型の複合繊維を得ることができる。本発明で得られる複合繊維は、共通の溶媒により各成分が均一・微細状態で混合されていることが特徴である。
複合繊維の形態については使用目的に応じて自由に選択できる。例えば織物・編物・フェルト・紙等への加工を施すのに都合良いステープル、トウなどの形態を選ぶことも、あるいは加工し易いように捲縮処理を施すなどの処理を行うことは何ら問題ない。
続いて得られた複合繊維を活性炭素繊維とするためには非酸化性雰囲気下で炭化すれば良い。非酸化性雰囲気としては窒素ガスが代表的であるが、他にも例えばアルゴンガス、ヘリウムガス、ハロゲンガス等あるいはこれらの混合ガスを用いる一般的な方法が適用可能である。炭素のための温度は400℃以上であり、望ましくは500℃〜1200℃、更に好ましくは600℃〜900℃である。
上記炭化温度条件下での複合繊維中のフェノール部分は炭化収率が高く、例えば800℃でほぼ50%程度であるが一方、ポリビニルアルコールや二酢酸セルロースあるいはポリビニルブチラール等の繊維形成性高分子化合物の炭化収率は低く、ほぼ完全に消失するか残存しても数%程度である。
本発明によると複合繊維を炭化することで繊維形成性高分子化合物が消失し、これに伴い微細な小孔が無数に形成された活性炭素繊維となるのである。即ち従来は炭化の後に賦活という工程を経て活性炭素繊維を製造していたものが炭化工程のみで容易に活性炭素繊維が得られることが利点となる。
更に高比表面積を得るためには敢えて賦活を行うことにも意義がある。賦活方法としては例えば水蒸気や二酸化炭素あるいは酸素等の酸化性ガスやこれらの混合ガスを用いたガス賦活法が便利であるが、場合に応じて薬品賦活法やアルカリ賦活法も適用可能である。
一般的なガス賦活反応は前駆体繊維と水蒸気等の賦活ガスとの固気反応であり、繊維外部表面への物質移動、繊維内部物質移動、繊維内部での化学反応を経て進行し表面積が増加してゆく。この場合、前駆体繊維内部への物質移動、すなわち賦活ガスの拡散は極めて遅く、従って従来の賦活反応速度は拡散律速になり易く、その結果、繊維内部での賦活が進行するよりも先に繊維外部表面での賦活が進行し、あまり表面積が上がらない内に繊維がやせ細ることになる。このことが賦活反応の収率が悪い主な原因である。一方、本発明に目を転じてみると本発明では炭化することで既に繊維が多孔体となっており、従って本発明の炭化繊維を賦活すると細孔を通して賦活ガスが容易に繊維内部に進行し繊維内部から容易に表面積を広げてゆく。従って僅かの賦活時間でことのほか大きな賦活効果が得られるのである。また、繊維表面での賦活反応が最小限に抑えられることから繊維がやせ細ることもなく、収率も高いのである。以上の様に本発明では従来よりも温和な条件で活性炭素繊維の製造が可能となり、したがって多量の前駆体が消失するという問題や、また、その処理には高価な高温処理装置が必要となる上、高温、長時間処理のための多大な熱エネルギーを要するといった欠点の改善が可能である。
更に本発明では成分の混合状態を変えることと、炭化の後の賦活条件で細孔径の調整も可能であり、極めて微細なミクロ孔からメソ孔リッチな活性炭素繊維まで調整することができるのである。
本発明では繊維形態の利点を活かして各種形態への加工が容易であり、織物・編物・フェルト・紙等にすることが可能である。この場合、炭化前の複合繊維を用いて各種形態とした後、炭化あるいはさらにその後賦活することで活性炭素繊維クロス、ニット、紙等が容易に得られる上、紛体や粒体では困難な連続炭化処理も容易にならしめる効果も持つ。本発明の活性炭素繊維はこれらの利便性や優秀性を元に、各種吸着材や脱色材、あるいは電気二重層キャパシタ用電極材やメタン等のガス吸蔵材など幅広い用途に適用できるのである。
以下に実施例を示し、本発明を詳細に説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されるものではない。
フェノール400g、50%ホルマリン440gを反応容器に仕込み、25%アンモニア水74gを加えて60℃にて3時間反応させた後、80mmHgの減圧下にて反応混合物内温が80℃に上昇するまで脱水濃縮反応を行い更にそのまま80℃、80mmHg下に保持して常温で液状のレゾール型フェノール樹脂(固形分55%)を得た。
次に平均重合度1700、鹸化度86%のポリビニルアルコール100gを900gの水に入れ常温で約1時間攪拌した後1時間かけて90℃まで昇温し、更に90℃に保ったまま30分の攪拌混合を行い完全に溶解したことを確認後冷却しポリビニルアルコール水溶液(固形分10%)を得た。このポリビニルアルコール水溶液の中に前述のレゾール型フェノール樹脂を、固形分の重量比がPVA:フェノール樹脂=10:90になるように加え、小型ホモジナイザーで攪拌し均一な乳化液を得た。
次にこれを孔径0.1mm、ホール数100の紡糸口金から一定吐出量を保ちながら40℃の20重量%硫酸ナトリウム水溶液中に押出した。凝固浴中で延伸倍率が3〜4になるよう巻取りローラーの回転数を調整した。尚、凝固浴中の浸漬時間は約120秒であった。巻き取った糸條は硫酸ナトリウム25%、60℃の浴中で更に3倍の延伸を行い、その後緊張状態を保ったまま130℃で30分の乾熱処理を行った。
得られた複合繊維を炭化炉に入れ、窒素気流中、常温から900℃まで5℃/分の速度で昇温し、更に900℃で30分間保持した後、窒素気流中で100℃まで冷却して取り出した。
取り出した試料の収率は35%であった。試料はN2−BET法により比表面積測定を行い、更にBJH法により細孔分布を解析した結果、比表面積900m2/g、全細孔容積0.41cc/g、全細孔容積に占める30〜300Åの細孔径(直径)の容積の割合は2%とミクロ孔の発達した活性炭素繊維であることが分かった。
フェノール400g、50%ホルマリン440gを反応容器に仕込み25%アンモニア水74gを加えて60℃にて3時間反応させた後、80mmHgの減圧下にて反応混合物内温が80℃に上昇するまで脱水濃縮反応を行い更にそのまま80℃、80mmHg下に保持して常温で透明液状のレゾール型フェノール樹脂(固形分80%)を得た。
次に酢化度55%、重合度120の二酢酸セルロース100gを900gのアセトンに入れ常温で約1時間攪拌した後、還流器付きフラスコで60℃に保ったまま30分の攪拌混合を行い完全に溶解したことを確認し、冷却して二酢酸セルロース溶液(固形分10%)を得た。この二酢酸セルロース溶液の中に前述のレゾール型フェノール樹脂を、固形分の重量比が二酢酸セルロース:フェノール樹脂=20:80になるように加え、小型ホモジナイザーで攪拌し均一な微黄色乳化混合液を得た。
次にこれを孔径0.1mm、ホール数80の紡糸口金から一定吐出量を保ちながら、アセトン濃度10wt%、25℃のアセトン水溶液中に押出した。凝固浴中で延伸倍率が2〜3になるよう巻取りローラーの回転数を調整した。尚、凝固浴中の浸漬時間は約60秒であった。巻き取った糸條は50℃のアセトン濃度5wt%水溶液中で更に2倍の延伸を行い、その後緊張状態を保ったまま室温で5分間の風乾を行い、更に130℃で30分の乾熱処理を行った。
得られた複合繊維を炭化炉に入れ、窒素気流中、常温から700℃まで5℃/分の速度で昇温し、更に700℃で30分間保持した後、窒素気流中で100℃まで冷却して取り出した。
取り出した試料の収率は30%であった。試料をN2−BET法により比表面積測定を行い、更にBJH法により細孔分布を解析した結果、比表面積1100m2/g、全細孔容積0.46cc/g、全細孔容積に占める30〜300Åの細孔径(直径)の容積の割合は8%の活性炭素繊維であることが分かった。
実施例2と同じレゾール型フェノール樹脂と分子量20万のポリアクリロニトリルを固形分の比がポリアクリロニトリル樹脂:レゾール型フェノール樹脂=40:60になるようジメチルホルムアミドに入れ常温で1時間攪拌した後窒素気流下80℃で1時間攪拌して完全に溶解したことを確認後冷却した。
この溶液を孔径1.2mm、ホール数18の紡糸口金を用い温度180℃の不活性雰囲気中に紡糸した。紡糸速度は200メートル/分であった。引き続いて緊張状態を保ったまま190℃で20分の熱処理を行い、延伸繊維を得た。
得られた複合繊維を炭化炉に入れ、窒素気流中、常温から700℃まで5℃/分の速度で昇温し、更に700℃で30分間保持した後、窒素気流中で100℃まで冷却して取り出した。
取り出した試料の収率は30%であった。試料をN2−BET法により比表面積測定を行い、更にBJH法により細孔分布を解析した結果、比表面積1050m2/g、全細孔容積0.43cc/g、全細孔容積に占める30〜300Åの細孔径(直径)の容積の割合は5%の活性炭素繊維であることが分かった。
実施例2で調整したレゾール型フェノール樹脂(固形分80%)と二酢酸セルロース溶液(固形分10%)をそのまま用いた。更に塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体(日信化学工業株式会社製ソルバインC5、塩化ビニル:酢酸ビニル=75wt%:25wt%、重合度400)を用意した。
二酢酸セルロース溶液(固形分10%)のアセトン溶液中に前述のレゾール型フェノール樹脂と塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体を固形分の重量比が二酢酸セルロース:フェノール樹脂:塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体=40:40:20になるように加え、小型ホモジナイザーで攪拌し均一な微黄色乳化混合液を得た。
次にこれを孔径0.07mm、ホール数50の紡糸口金から一定吐出量を保ちながら、アセトン濃度5wt%、10℃のアセトン水溶液中に押出した。凝固浴中で延伸倍率が2〜3になるよう巻取りローラーの回転数を調整した。尚、凝固浴中の浸漬時間は約60秒であった。
巻き取った糸條は50℃のアセトン濃度5wt%水溶液中で更に3倍の延伸を行い、その後緊張状態を保ったまま室温で15分間の風乾を行い、更に120℃で60分の乾熱処理を行った。
得られた複合繊維を炭化炉に入れ、窒素気流中、常温から700℃まで5℃/分の速度で昇温し、更に700℃で30分間保持した後、窒素気流中で100℃まで冷却して取り出した。
取り出した試料の収率は28%であった。取り出した試料をN2−BET法により比表面積測定を行い、更にBJH法により細孔分布を解析した結果、比表面積1300m2/g、全細孔容積0.51cc/g、全細孔容積に占める30〜300Åの細孔径(直径)の容積の割合は11%の活性炭素繊維であることが分かった。
実施例4の複合繊維を炭化炉に入れ、窒素気流中、常温から800℃まで5℃/分の速度で昇温し、更に800℃で30分間保持した。次いで窒素をキャリアーとした水蒸気により5分間の賦活を行った後、気流中で100℃まで冷却して取り出した。
取り出した試料の収率は22%であった。取り出した試料をN2−BET法により比表面積測定を行い、更にBJH法により細孔分布を解析した結果、比表面積1800m2/g、全細孔容積0.71cc/g、全細孔容積に占める30〜300Åの細孔径(直径)の容積の割合は24%のメソ孔の発達した活性炭素繊維であることが分かった。
[比較例1] フェノール樹脂繊維(群栄化学工業株式会社製カイノールKF−0270M)を使用すること以外は実施例1と同条件で炭化処理を行った。
取り出した試料の収率は51%であった。試料はN2−BET法により比表面積測定を行い、更にBJH法により細孔分布を解析した結果、比表面積95m2/g、全細孔容積0.08cc/g、全細孔容積に占める30〜300Åの細孔径(直径)の容積の割合は0%であることが分かった。収率は高いものの活性炭素繊維にはなっていなかった。
[比較例2] 比較例1では活性炭素繊維が得られなかったのでフェノール樹脂繊維(群栄化学工業株式会社製カイノールKF−0270M)を実施例5と同じ条件で炭化・賦活処理を行った。
取り出した試料の収率は40%であった。取り出した試料をN2−BET法により比表面積測定を行い、更にBJH法により細孔分布を解析した結果、比表面積350m2/g、全細孔容積0.17cc/g、全細孔容積に占める30〜300Åの細孔径(直径)の容積の割合は1%以下であって充分なる特性を有する活性炭素繊維にはなっていなかった。
Claims (3)
- フェノール樹脂と、少なくとも1種類以上の繊維形成性高分子化合物を主体としこれらを水あるいは有機溶剤等の共通の溶剤に溶解した混合物を紡糸原液とし、これを湿式あるいは乾湿式あるいは乾式のいずれかの方法で紡糸した後、熱処理あるいは触媒存在下アルデヒド類によるいずれかの方法で硬化処理を施すことで得られるフェノール樹脂系繊維を炭化、あるいはその後賦活する、あるいは炭化賦活を連続的に行ういずれかの方法を用いることを特徴とする活性炭素繊維の製造方法。
- 該繊維形成性高分子化合物がポリビニルアルコール、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸カリウム、カルボキシメチルセルロースナトリウム、カルボキシメチルグルカンナトリウム、ヒドロキシエチルセルロース、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリアクリル酸アンモニウム、ポリメタクリル酸エステル、ポリアクリルアミド、キトサン、カゼイン及びこれらの共重合物から選択された少なくとも1種類以上の水溶性高分子であることを特徴とする請求項1に記載の活性炭素繊維の製造方法。
- 該繊維形成性高分子化合物が二酢酸セルロース、三酢酸セルロース、ポリアクリロニトリル、ポリビニルブチラール、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリ酢酸ビニル、ポリアミド、ポリエステル及びこれらの共重合物から選択された少なくとも1種類以上の有機溶剤可溶性高分子であることを特徴とする請求項1に記載の活性炭素繊維の製造方法。
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