以下、図に示した実施の形態に基づき、本発明を説明する。図1は、本発明の一実施の形態におけるサスペンション装置の縦断面図である。図2は、アクティブサスペンションを車両に適用した状態を示す図である。図3は、自己診断装置がサスペンション装置のアクチュエータ機能について自己診断を行う手順を示すフローチャートである。図4は、電流とモータのシャフトの回転角との関係を示す図である。図5は、オフセットされた電流とモータのシャフトの回転角との関係を示す図である。図6は、ストローク位置検出手段の一例を示す概念図である。図7は、自己診断装置が振動抑制特性グラフを得る手順を示すフローチャートである。図8は、回転角と時間との関係を示す振動抑制特性グラフである。図9は、自己診断装置がサスペンション装置の振動抑制特性について自己診断を行う手順を示すフローチャートである。図10は、他の実施の形態におけるサスペンション装置の縦断面図である。
図1に示すように、本実施の形態におけるサスペンション装置は、基本的には、ボール螺子ナット4と、ボール螺子ナット4内に回転自在に螺合される螺子軸3とで構成される運動変換機構と、モータ1とで構成され、螺子軸3の上端がモータ1のシャフト1aに連結され、モータ1への電流供給によりモータ1の発生するトルクを調整し、螺子軸3にトルクを伝達し、このサスペンション装置が伸縮する時のボール螺子ナット4の図1中上下方向の直線運動を制御することが出来るものである。
以下、詳細な構造について説明する。モータ1は、有底筒状の外筒2内に内設され、モータ1のシャフト1aは、外筒2内にボールベアリング9,10,11を介して回転自在に挿入され、また、モータ1のシャフト1aは螺子軸3に連結されている。なお、図示するところでは、螺子軸3とシャフト1aとを別部材として、それぞれを連結しているが、螺子軸3とシャフト1aとが一体的に形成されてもよい。また、外筒2の図1中上端には、車両へこのサスペンション装置を取付ける為のブラケット20が設けられている。
モータ1は、上記螺子軸3に連結されるシャフト1aと、シャフト1aの外周に取付けられた磁石7,7と、外筒2の内周であって上記磁石7,7と対向するように取付けたコア8と、コア8に嵌装したコイル6とで構成されるブラシレスモータであって、この場合、外筒2がモータ1のフレームとしての役割を果たしている。そして、モータ1の各電極(図示せず)は、図2に示すようにECU30に接続され、モータ1にECU30から電流を供給し、モータ1が電磁力に起因するトルクを発生できるようにしてあり、所望の減衰力を得られるよう設定されている。また、このブラシレスモータには、回転子の位置検出手段としてホール素子Hが搭載され、このホール素子Hは、後述する駆動回路の回転ロジックに接続されるとともに、ECU30で回転子の回転運動の状況(回転角や角速度等)を把握することができるようになっている。なお、ホール素子Hに換えて磁気センサや光センサ等を搭載するとしてもよい。また、もともと位置検出手段を有しないモータ、たとえば、直流ブラシ付モータ等を使用する場合には、サスペンション装置の制御にあたり位置検出手段を設ける方が好ましい場合がある。これについては後述する。また、位置検出手段としてのホール素子を例に取れば、外部電源から当該素子に通電しておくことが必要であるが、ブラケット20側を車両の車体側に取付けるようにし、さらに、このブラケット20を中空としておけば、ブラケット20内を介して上記通電する為の電線(図示せず)を当該素子に接続して電流を供給するとすれば、ブラケット20の図1中上端側から伸びる電線を外方の制御装置、制御回路に接続する際の取り回しも、容易となり、上記電線は車体内に収容されることとなるので、電線の損傷機会も減ずることが可能となる。また、外部電源を用いずとも、ボール螺子ナット4の回転により発電されるので、この誘導起電力によって発生される電流をホール素子に供給するか、一端外部のバッテリに蓄電しておいて、このバッテリから電流を供給するとしてもよい。ちなみに、この位置検出手段には常に通電してあり、後述するECU30等に接続しておくとことにより、車両の正確な車高を検出可能にしてある。なお、本実施の形態においては、コイル6を外筒2側に、磁石7,7をシャフト1a側に取付けているが、コイル6をシャフト1a側に、磁石7,7
を外筒2側に取付けるとしても良い。なお、本実施の形態においてはモータ1をブラシレスモータとしているが、電磁力発生源として使用可能であれば、様々なモータ、たとえば直流モータや交流モータ、誘導モータ等が使用可能である。
シャフト1aに連結された螺子軸3は、その外周に螺子溝3aが設けられており、外筒2内に摺動自在に挿入された有底筒状の内筒5内に挿入され、さらに、この内筒5内に嵌着されたボール螺子ナット4内に回転自在に螺合されている。すなわち、この実施の形態においては、螺子軸3とボール螺子ナット4とで運動変換機構が構成され、ボール螺子ナット4と螺子軸3との軸方向の相対的な直線運動は、螺子軸3の回転運動に変換される。ここで、ボール螺子ナット4の構造は特に図示しないが、たとえば、ボール螺子ナット4の内周には、螺子軸3の螺旋状の螺子溝3aに符合するように螺旋状のボール保持部が設けられており、前記保持部に多数のボールが配在されてなり、ボール螺子ナット4の内部にはボールが循環可能なように前記螺旋状保持部の両端を連通する通路が設けられているものであって、螺子軸3を前記ボール螺子ナット4に螺合された場合に、螺子軸3の螺旋状の螺子溝3aにボール螺子ナット4のボールが嵌合し、螺子軸3の回転運動に伴いボール自体も螺子軸3の螺子溝3aとの摩擦力により回転するので、ラックアンドピニオン等の機構に比べ滑らかな動作が可能であるが、運動変換機構をラックアンドピニオンで構成して、ピニオンをモータ1のシャフト1aに連結するとしてもよい。
上述のように、ボール螺子ナット4には螺子軸3が螺子溝3aに沿って回転自在に螺合され、ボール螺子ナット4が螺子軸3に対し図1中上下方向の直線運動をすると、ボール螺子ナット4はたとえば車体もしくは車軸側に固定される内筒5により回転運動が規制されているので、螺子軸3は強制的に回転駆動される。すなわち、上記機構によりボール螺子ナット4の直線運動が螺子軸3の回転運動に変換されることとなる。また、ボール螺子ナット4が図1中下方に移動してサスペンション装置が最伸びきり状態となったときには、螺子軸3の図1中下端に設けたクッション部材15がボール螺子ナット4の図1中下端に当接して、螺子軸3がボール螺子ナット4から抜けてしまうことが防止されるとともに、最伸びきり時の衝撃を緩和し、最圧縮時には、螺子軸3が後述する内筒5の底部と当接することを防止して衝撃を緩和する。
なお、外筒2と内筒5との間にはダストシール(図示せず)が設けられ、これにより外筒2および内筒5で作られる空間に塵、埃や雨水等が侵入することが防止されている。ちなみに、外筒2内に内筒5が摺動自在に挿入されているが、外筒2と内筒5との間に環状の軸受を設けるとしてもよい。この場合には、外筒2の下端部内周が内筒5の外周面をかじってしまい外筒2と内筒5との間のシール性が劣化してしまう危険を防止できる。
また、外筒2内に内筒5が摺動自在に挿入されていることにより、内筒5およびボール螺子ナット4に対する螺子軸3の軸ぶれが防止されており、これにより、ボール螺子ナット4の一部のボール(図示せず)に集中して荷重がかかることを防止でき、ボールもしくは螺子軸3の螺子溝3aが損傷する事態を避けることが可能である。また、ボールもしくは螺子軸3の螺子溝3aの損傷を防止できるので、螺子軸3とボール螺子ナット4の回転若しくはサスペンション装置の伸縮方向への移動の各動作の円滑さを保つことができ、上記各動作の円滑を保てるので、サスペンション装置として機能も損なわれず、ひいては、サスペンション装置の故障を防止できる。
また、内筒5の図1中下端にはアイ型ブラケット21が設けられており、このアイ型ブラケット21と上述の外筒2の図1中上端に設けたブラケット20とを利用して、車両の車体と車軸との間にサスペンション装置を介装することができるようになっている。
そして、上記のように構成されたサスペンション装置は、伸縮する、すなわち、外筒2に対し内筒5が図1中上下方向に移動すると、この内筒5に連結されたボール螺子ナット4も軸方向の直線運動をする、つまり図1中上下方向の直線運動をする。このボール螺子ナット4の直線運動は、ボール螺子ナット4と螺子軸3のボール螺子機構により、螺子軸3の回転運動に変換される。
そして、螺子軸3が回転運動を呈すると、シャフト1aも回転する。すると、モータ1内のコイル6が磁石7,7の磁界を横ぎることとなり、コイル6には誘導起電力が発生し、モータ1は、上記誘導起電力に起因するシャフト1aの回転に抗するトルクを発生する。そして、このシャフト1aの回転に抗するトルクは、シャフト1aが螺子軸3に接続されているので、螺子軸3の回転を抑制し、ボール螺子ナット4の上記直線運動を抑制することとなる。なお、螺子軸3の回転に伴ってシャフト1aが回転することにより発生する誘導起電力に起因するコイル6に流れる電流と、モータ1が接続される後述のECU30から供給される電流との総和により電磁力を発生し、サスペンション装置はこの電磁力に見合った減衰力を発生することとなり、ECU30からの電流供給により、サスペンション装置の発生減衰力を調整することができるとともに、モータ1に供給される電流量の調整によりアクチュエータとしても使用可能となっている。
したがって、上記のモータ1のシャフト1aの回転運動を抑制する作用は、ボール螺子ナット4の直線運動を抑制するように働くので、ボール螺子ナット4の直線運動を抑制する減衰力として作用し、振動エネルギを吸収緩和する。また、ここで、モータ1に供給される電流量を調整すれば、モータ1が発生するトルクは減衰力として作用するだけでなく、サスペンション装置の伸縮に対し、その伸縮を増長する方向の力としても利用でき、逆に、サスペンション装置を積極的に伸縮させることもでき、サスペンション装置の伸縮を自由にコントロールすることが可能である。
以上、一連の動作により、サスペンション装置は減衰力を発生するだけでなくアクチュエータとしての機能を発揮することができる。したがって、従来のアクティブサスペンションのように、緩衝器の他にアクチュエータを搭載する必要がないばかりでなく、また、アクチュエータを駆動する油圧源等を搭載する必要もないので、サスペンション装置の車両への搭載性が向上するとともに、従来のアクティブサスペンションに比較して軽量にすることができる。
また、従来の油圧サスペンション装置では、上述のようにアクチュエータおよび油圧源の搭載が不可欠であり、既存車両に取付けること、いわゆる後付けが搭載スペースの関係上、不可能な場合があったが、本実施の形態のサスペンション装置にあっては、従来のサスペンション装置に比較して、スリムかつ省スペースであるので、既存の車両にも後付することが可能となる。
つづいて、このサスペンション装置を実際の車両に適用した状態について説明する。上記のように構成された各サスペンション装置D1,D2,D3,D4は、たとえば、4輪車であれば、図2に示したように、前後左右の4箇所の車体側部材B1,B2,B3,B4と車軸側部材S1,S2,S3,S4との間に介装され、サスペンション装置D1,D2,D3,D4と並列して金属バネやエアバネ等の懸架バネK1、K2,K3,K4も介装される。なお、この場合には、サスペンション装置D1,D2,D3,D4の外筒2が車体側に内筒5が車軸側に取付けられている。
そして、各サスペンション装置D1,D2,D3,D4の各モータ1および各ホール素子Hは、サスペンション装置用のコントローラたるECU30に接続され、さらに、このECU30は、警報装置70および各モータ1のコイル6に流れる電流i1を検知する電流センサ(図示せず)に接続されている。このECU30は、サスペンション装置D1,D2,D3,D4の自己診断に使用されるもので、電流センサで検出される電流i1と、ホール素子Hで検出されるホール電圧からなるモータ1のシャフト1aの回転位置からシャフト1aの回転角θ1との関係を示すグラフと、正常な状態での各サスペンション装置D1,D2,D3,D4の各モータ1に供給される電流i1と回転角θ1を示すグラフとを比較し、実際に各供給している電流i1と回転角θ1との関係と、上記グラフに示される正常な状態での電流i1と回転角θ1との関係と、の乖離状況から、アクティブサスペンションが正常か否かを判断でき、さらに、サスペンション装置D1,D2,D3,D4が異常と判断された場合に、警報装置に制御信号を出力できるものであれば良く、具体的にはたとえば、電流センサもしくは電圧センサと、前記各ホール素子Hが検出するホール電圧からなるシャフト1a回転位置の信号および電流センサもしくは電圧センサの信号を増幅するためのアンプと、アナログ信号をデジタル信号に変換する変換器と低周波及び高周波成分をカットするバンドパスフィルタと、CPU、ROM等の記憶装置、RAM、水晶発振子及びこれらを連絡するバスラインからなるコンピュータシステムとモータ1を駆動する駆動回路とから構成され、自己診断処理中の演算に使用される上記正常な状態を示すグラフおよび自己診断の演算処理手順と電流供給もしくは電圧供給等の制御信号出力手順は、プログラムとしてROMや他の記憶装置に予め格納させておくとする周知なシステムで良い。なお、ブラシレスモータとしてのモータ1の場合、駆動回路は、たとえば、電圧源に接続されるPWM回路と、PWM回路に接続されるベースドライブ回路と、ベースドライブ回路に接続されるトランジスタインバータと、ホール素子Hが接続される回転ロジックとで構成される周知のものが使用可能であり、その他、そのモータの種類に応じて電流量を調整可能なものが使用できる。なお、警報装置としては、電流供給により警報音を
発生するものでもよいし、車両に搭載されるナビゲーションシステム等のモニタとしてもよい。また、ECU30には、セレクトスイッチ(図示せず)が接続されており、このセレクトスイッチは、自己診断処理ポジションと自己診断処理キャンセルポジションの2つのポジションを有し、車両搭乗者が上記セレクトスイッチを操作することによって、いずれかのポジションに選択的に切替可能となっており、自己診断処理ポジションを採る場合には、ECU30側で当該ポジションが選択されたことを電流や電圧からなる信号として受け取り可能なようになっている。なお、この本実施の形態のECU30は、サスペンション装置D1,D2,D3,D4の各モータ1に電流もしくは電圧を供給してアクティブ制御可能とされ、詳しくは説明しないが、アクティブ制御をするための制御処理手順についても、記憶装置に格納されている。
ここで、あらかじめECU30の記憶装置に格納される上記グラフは、たとえば、以下に示す手順で作成される。なお、ここで各モータ1に電流i1を供給するときに、電流i1が正の値をとるときには、各モータ1を正転させサスペンション装置D1,D2,D3,D4を伸長させるもの方向に力Fを発生するものとし、反対に電流i1が負の値をとる場合には、各モータ1を反転させサスペンション装置D1,D2,D3,D4を収縮させるもの方向に力Fを発生するものとする。
まず、ECU30は、サスペンション装置D1,D2,D3,D4のモータ1にそれぞれ電流i1の電流値をゼロから徐々に増加しながら供給し、サスペンション装置D1,D2,D3,D4を伸長させ、ECU30側で出力している電流i1を電流センサからの信号から認識するとともに、各ホール素子Hで検出されるシャフト1aの回転位置から電流i1がゼロのときのモータ1のシャフト1aの回転位置を基準として現在のシャフト1aの回転位置までの回転角θ1を算出して、電流i1と回転角θ1との関係をグラフ化して、これを正常値としてECU30に記憶させる。さらに、ECU30は、サスペンション装置D1,D2,D3,D4のモータ1にそれぞれ電流i1の電流値をゼロから徐々に減少させながら供給し、サスペンション装置D1,D2,D3,D4を収縮させ、ECU30側で出力している電流i1を電流センサからの信号から認識するとともに、各ホール素子Hで検出されるシャフト1aの回転位置から電流i1がゼロのときのモータ1のシャフト1aの回転位置を基準として現在のシャフト1aの回転位置までの回転角θ1を算出して、電流i1と回転角θ1との関係をグラフ化して、これを正常値としてECU30に記憶させる。すなわち、上記の作業にて、図4に示すように、電流i1と回転角θ1との関係が線Aで示されるグラフにされる。このグラフ化作業は、たとえば、車両の出荷時に、車両に搭乗者や荷物を積載しない状態にて行われる。
なお、上述したところでは、電流i1に対してシャフト1aの回転角θ1との関係をグラフ化しているが、電流i1にかえて電圧vとしてもよい。この場合には公知の電圧センサをECU30に接続するとして、電圧センサで検出される信号から電圧vを把握できるようにしておけば良い。さらに、回転角θ1にかえて回転角θ1と螺子軸3のリードから算出される車体側部材B1,B2,B3,B4と車軸側部材S1,S2,S3,S4との相対変位xとしてもよい。
また、実際の車両のサスペンションには、図示しないバンプストッパ等のバネ要素も含まれるので、線Aは電流i1に対して非線形となり、線A上、A1の部分は、サスペンション装置D1,D2,D3,D4がいわゆる伸び切り状態であることを示しており、A2の部分は懸架バネK1,K2、K3,K4のバネ力が支配的な区間を示しており、さらにA3の部分は、図示しないバンプストッパのゴムのバネ力の影響が出る区間を示している。
さらに、上述したところでは、電流i1と回転角θ1との関係をグラフ化しているが、これにかえて、たとえば、電流i1を0.1アンペア毎変化させ、それに対応する回転角θ1を検出することとして、その時の電流i1と回転角θ1との関係を正常な電流i1と回転角θ1の値としてECU30に記憶させる、すなわち、電流i1と回転角θ1との関係を連続する線としてではなく点としてECU30に認識させておくとしてもよい。
また、車体のみが懸架バネK1,K2,K3,K4で懸架されて釣り合っている状態のときのモータ1のシャフト1aの回転位置を別途基準シャフト回転位置としてECU30に記憶させておく。
ここで、車両がエンジン停止時にあってもホール素子HおよびECU30に通電しておくとすれば、車両に搭乗車が搭乗して車体重量が変化しても、上記基準シャフト回転位置からの回転角を把握することができるが、エンジン停止時にホール素子HおよびECU30に通電しない場合には、ホール素子Hは、シャフト1aの回転位置を検出することができるに過ぎないため、たとえば、車体重量の変化によりシャフト1aが基準シャフト回転位置から360度以上回転してしまうと、たとえば、シャフト1aが基準シャフト回転位置から500度回転した場合、ECU30は、基準シャフト回転位置から140度回転したのか500度回転したのか判断できない状態となってしまう。そこで、ホール素子HおよびECU30に常に通電しない場合には、別途、各サスペンション装置D1,D2,D3,D4の相対移動を検出可能なストロークセンサを設けるか、たとえば、図6に示すような、ストローク位置検出手段を設けるとすればよい。この図6に示す、ストローク位置検出手段は、外筒2の内周に設けられた複数対の電極50と、内筒5の外周側に嵌着される環状の導電性部材60とで構成され、電極50の一方はECU30の電源に接続されるとともに、他方は、PIO(パラレルインプットアウトプット)の入力ポート100に接続され、この電極50が上記導電性部材60と接触すると、電極50の一方と他方とが導電性部材60を介して電気的に接続され、PIOの入力ポート100がハイレベルとなるようになっており、さらに、導電性部材60の軸方向長さは、ちょうど2つの電極50を通電状態にできる長さに設定されるとともに、この電極50は、導電性部材60の軸方向長さとの関係で、シャフト1aが180度回転すると電気的に接続されている電極50の隣の電極50が通電されるような間隔をもって、外筒2の軸方向に沿って設けられている。すなわち、このストローク位置検出手段によれば、どの電極50が通電されているかによって、ECU30は、180度の誤差以内でのモータ1のシャフト1aの位置を判断することができ、さらに、ホール素子Hでシャフト1aの位置を360度の範囲内で認識することができるので、上記ストローク位置検出手段とホール素子Hとでモータ1のシャフト1aの位置を正確に認識することができる。
つづいて、上記実施の形態の自己診断処理について、ECU30のCPUの処理手順の一例を示す図3に基づいて説明する。すなわち、図3の処理は、ステップP1で、車両の搭乗者に自己診断処理を行う意思があるかを確認する。この処理は、車両搭乗者のセレクトスイッチの操作により確認するが、具体的には、当該セレクトスイッチが自己診断処理ポジションであるか否かによって判断される。そして、セレクトスイッチが自己診断処理ポジションを採る場合には、ECU30側に信号が送られ、自己診断処理が割込処理として実行され、ステップP2に移行する。
ステップP2では、たとえば、車速センサで検出される車速がゼロであるか、または、サイドブレーキがオン状態であるか、すなわち、車両が停車中か否かを判定し、車両が走行中であると判定された場合には、ステップP3に移行し、自己診断処理を行わずに割込処理を終了する。
逆に、車両が停車中であると判定された場合には、ステップP4に移行し、まず、ホール素子Hが検知するモータ1のシャフト1aの回転位置から、基準シャフト回転位置からどれだけシャフト1aが回転しているかを検出し、すなわち、車体の重量変化に起因するシャフト1aの回転角wを検出し、ECU30は、この回転角wを一旦ECU30の記憶装置に記憶する。
そして、ステップP5に移行し、ECU30は、モータ1に電流i1をゼロから徐々に増加させながら供給し、電流センサからの信号を受け取り電流i1の大きさを把握しつつ、その電流i1に対して変化していく回転角θ1をホール素子Hからの信号から把握し、このときの電流i1と回転角θ1との関係をグラフ化して、一端記憶装置に記憶する。
つづいて、ステップP6に移行し、今度は、ECU30は、モータ1に電流i1をゼロから徐々に減少させながら供給し、電流センサからの信号を受け取り電流i1の大きさを把握しつつ、その電流i1に対して変化していく回転角θ1をホール素子Hからの信号から把握し、このときの電流i1と回転角θ1との関係をグラフ化して、一端記憶装置に記憶する。
そして、ステップP7に移行し、ステップ4で得られた回転角wを基準として、図5に示すように、正常な状態を示すグラフをオフセットして、線Aを回転角θ1に沿って回転角W分、および、電流i1軸に沿って回転角wを打ち消すのに必要な電流iw分だけずらして線Aoffとする。すなわち、車体重量変化の影響をここで排除する。
さらに、ステップP8に移行し、ECU30は、上記ステップP7でオフセットされた正常な状態を示すグラフと、上記ステップP5及びステップP6で得られたグラフとを比較し、アクティブサスペンションが正常な状態であるか否かを判断する。ここで、判断手法であるが、図5に示すように、オフセットされた正常な状態を示すグラフ(線Aoff)を基準として閾値を設ける、たとえば、自己診断時の電流i1と回転角θ1との関係を示すグラフが正常なグラフに対してのずれが±10%以内であれば正常と判断し、閾値を超える場合を異常と判断する。したがって、この場合、上記設定される閾値内か否かが所定の基準となる。
そして、ステップP9に移行し、自己診断結果が正常と判断される場合には、割込み処理を終了し、異常と判断される場合には、ステップ10に移行する。
ステップP10では、ECU30は、車両搭乗者にアクティブサスペンションに異常がある旨を伝達する為に、警報装置に制御信号を出力して、ステップP11に移行する。
最後にステップP11では、サスペンション装置D1,D2,D3,D4のアクチュエータ機能に異常をきたしているため、このままの状態で、アクティブ制御を行うと、車体の振動特性が変化してしまうので、ECU30は、アクティブ制御を行わないようにする。
なお、自己診断処理において、電流i1にかえて電圧vを使用して正常か否か判断してもとしてもよく、さらに、回転角θ1にかえて回転角θ1と螺子軸3のリードから算出される車体側部材B1,B2,B3,B4と車軸側部材S1,S2,S3,S4との相対変位xを使用して判断してもよい。
また、本実施の形態の場合、電流i1に対し回転角θ1が正常な状態の線Aに追随しないことでアクティブサスペンションに異常があると判断されるが、具体的には、電流センサの故障、配線の断線、ECU30内の駆動回路の故障、モータ1の故障、懸架バネK1,K2,K3,K4の劣化損傷等が挙げられ、異常と判断される場合には、上記各部の故障や配線の断線等を検知する故障検知手段を設けておけば、アクティブサスペンションのどの部材、配線に故障があるか否かを判断できる。なお、懸架バネK1,K2、K3,K4以外の各部の故障を検知することができれば、懸架バネK1,K2、K3,K4以外の各部が正常であると判断されれば、懸架バネK1,K2、K3,K4の劣化損傷を判断することができるので、この場合には特に懸架バネK1,K2、K3,K4の劣化損傷を検知する手段を省くとしてもよい。そして、当該各部の故障検知手段を設ける場合には、とくに電気的な故障の場合には、アクティブ制御を続けると走行に支障をきたす場合も考えられるため、アクティブ制御を停止するとして、懸架バネK1,K2、K3,K4についてバネ定数が変化しているのみと判断できる場合には、バネ定数変化に対応してアクティブ制御を続行するとしてもよく、懸架バネK1,K2、K3,K4がエアバネである場合には、他が正常であれば、電流i1に対するモータ1のトルクは変化していない状態となるので、エアバネの正確なバネ定数を電流i1から算出することができ、所定のバネ定数を実現するエアバネ内の空気圧を確保するように、ECU30でエアバネ用のコンプレッサーやエアバネ内の気体の廃棄弁を駆動するようにしてもよい。
上述したように、このアクティブサスペンションの自己診断装置では、モータに供給している電流値もしくは電圧値と、モータのシャフトの回転角もしくは車体側部材と車軸側部材の相対変位とに基づいて判断するので、アクティブサスペンションのアクチュエータ機能が正常に機能するか否かの判断を正確に行うことができる。
また、車両の停車時に自己診断が行われるようにしておけば、車両が発進する前に、アクティブサスペンションの異常を検知して搭乗者にその旨を知らせることができ、搭乗者の安全を確保することができる。
さらに、アクティブサスペンションの異常を検知した場合には、アクティブ制御を停止することで通常のサスペンションとして機能させ、この点でも搭乗者の安全を確保することができるとともに、車両走行に支障をきたす危惧を回避することができる。
また、アクティブサスペンションの異常が車体を懸架する懸架バネのバネ定数変化のみであった場合には、バネ定数変化に即してアクティブ制御を行うことも可能となる。
さらに、モータに供給している電流値もしくは電圧値に対するモータのシャフトの回転角もしくは車体側部材と車軸側部材の相対変位の正常な関係を示すマップと自己診断時に作成されるモータに供給している電流値もしくは電圧値の変化に対するモータのシャフトの回転角もしくは車体側部材と車軸側部材の相対変位の変化を示すマップとを比較することにより、正常か否かが判断されるので、車両個々に対応した自己診断が可能となるとともに、正確に異常を検知することができる。
また、車体重量変化によりモータに供給している電流値もしくは電圧値に対するモータのシャフトの回転角もしくは車体側部材と車軸側部材の相対変位の正常な関係を示すマップを補正して、自己診断時に作成されるモータに供給している電流値もしくは電圧値の変化対するモータのシャフトの回転角もしくは車体側部材と車軸側部材の相対変位の変化を示すマップと比較するから、車体重量変化によらず正確に異常を検知することができる。
なお、上述したところでは、アクティブサスペンションのアクチュエータ機能の自己診断処理について説明したが、本実施の形態にあっては、アクティブサスペンションの動特性、すなわち、振動抑制特性が正常か否かを診断することもできる。
以下、振動抑制特性の自己診断処理について詳細に説明する。まず、ECU30にアクティブサスペンションの正常な振動抑制特性を計測する。この計測は、たとえば、車両の出荷時に、車両に搭乗者や荷物を積載しない状態にて行われる。
そして、この振動抑制特性は、モータ1のシャフト1aの回転角θ2と時間との関係を示す振動抑制特性グラフとして表され、あらかじめECU30の記憶装置に格納される。そして、上記振動抑制特性グラフは、たとえば、図7に示す手順で作成される。なお、ここで各モータ1に電流i2を供給するときに、電流i2が正の値をとるときには、各モータ1を正転させサスペンション装置D1,D2,D3,D4を伸長させるもの方向に力Fを発生するものとし、反対に電流i2が負の値をとる場合には、各モータ1を反転させサスペンション装置D1,D2,D3,D4を収縮させるもの方向に力Fを発生するものとする。
まず、図7に示すように、ステップQ1で正常なサスペンション装置D1,D2,D3,D4の懸架バネK1,K2,K3,K4の各バネ定数kを計測する。具体的には、サスペンション装置D1,D2,D3,D4のモータ1にそれぞれ電流を供給し、サスペンション装置D1,D2,D3,D4を伸縮させ、ECU30側で出力している電流i2から各モータ1のトルクを算出し、さらにこのトルクからサスペンション装置D1,D2,D3,D4の伸縮する方向の力Fを算出し、さらに、上記力Fに対して懸架バネK1,K2,K3,K4がどれだけ縮んだかを各ホール素子Hで検出されるシャフト1aの回転位置、すなわち、各ホール素子Hで検出されるシャフト1aの回転位置から電流i2がゼロのときのモータ1のシャフト1aの回転位置を基準として現在のシャフト1aの回転位置までの回転角θ2を算出して、この回転角θ2から、車体側部材B1,B2,B3,B4が懸架バネK1,K2,K3,K4で懸架されている状態を基準として、どれだけ車体側部材B1,B2,B3,B4と車軸側部材S1,S2,S3,S4とが相対変位xしたかを算出する。そして、この各相対変位xと上記力Fとから夫々の懸架バネK1,K2,K3,K4の正確なバネ定数kを算出し、ECU30内の記憶装置に記憶する。なお、実際の車両のサスペンションには、バンプストッパ等のバネ要素も含まれるので、懸架バネK1,K2,K3,K4のみならずバンプストッパ等のバネ要素も含め、正確かつトータルな車体側部材B1,B2,B3,B4と車軸側部材S1,S2,S3,S4の相対変位xに対して非線系バネ定数kを得ることが可能となる。
つづいて、ステップQ2に移行し、ステップQ2では、車両各輪での正確なバネ定数kを得た後に、ECU30は、各車体側部材B1,B2,B3,B4と車軸側部材S1,S2,S3,S4の相対変位xと得られたバネ定数kから車両各輪のバネ上質量mを算出し、このバネ上質量mを基準となるバネ上質量として記憶装置に記憶する。そして、このバネ定数kと得られたバネ上質量mから、基準となる振動周波数fgを、算式fg=(1/2π)(k/m)1/2から算出し、この基準となる振動周波数fgを記憶装置に記憶し、ステップQ3に移行する。なお、車両各輪のバネ上質量mを算出する際には、車両の出荷時における車両各輪におけるバネ上質量を計測してその値をECU30に記憶させておき、その値に上記バネ定数kと相対変位xとから算出したバネ上質量変化量を加算して算出する。また、バネ上質量mの算出に当り、本ステップQ2にて、各モータ1に電流を供給して、車両に振動を与えて車体側部材B1,B2,B3,B4を自由振動させ、そのときの振動周波数とバネ定数kとからバネ上質量mを算出するとしてもよい。
さらに、ステップQ3では、ECU30は、サスペンション装置D1,D2,D3,D4の各モータ1それぞれに、所定の回転角φとなるまで電流i2を印加し、サスペンション装置D1,D2,D3,D4をそれぞれ伸長させるか伸縮させる。そして、その状態から電流i2の供給を停止して、車体に振動を与える。すなわち、車体を加振する。電流供給の停止は、徐々に電流をゼロにしてもよいし、瞬時にゼロとしてもよい。また、さらに、上述したところでは、車体を振動させる際に、各モータ1に所定の回転角φを実現する電流i2を供給して、電流供給を停止するとしているが、これにかえて、車両のバネ上部材すなわち車体側部材B1,B2,B3,B4の固有振動数にあわせて徐々に振動させてもよく、この場合には、サスペンション装置D1,D2,D3,D4を連続的に伸縮させるべく、各モータ1への電流供給を行い最終的に所定の回転角φを実現したところで電流供給を停止するとすればよく、こうすることで、車両のバネ下振動や車両各部の高周波振動モードを励起することを防止でき、車体側部材B1,B2,B3,B4の固有振動だけを励起することができるので、評価誤差を低減でき、正確な自己診断が行えるようになる。
そして、ステップQ4に移行し、ステップQ4では、電流供給を停止したのち、一定時間経過後を基準としてサスペンション装置D1,D2,D3,D4のモータ1の回転角θ2と時間tとの関係をグラフ化して、これを正常値としてECU30に記憶させる。すなわち、上記の作業にて、図8に示すように、回転角θ2と時間tとの関係が、振動抑制特性グラフの線Eで示されるグラフにされる。このグラフ化作業は、上述のように車両に搭乗者や荷物を積載しない状態にて行われる。なお、ここで上記振動抑制特性グラフを得る際に、ECU30から電流i2を供給せず、各モータ1のコイル6には、各モータ1のシャフト1aが強制的に駆動させられることにより発生する誘導起電力に起因する電流のみが流れるようにして回転角θ2を計測するようにする。そして、この得られた振動抑制特性グラフは、各サスペンション装置D1,D2,D3,D4が緩衝器として機能する場合の振動抑制特性を示している。ここで得られる振動抑制特性グラフを便宜上、減衰特性グラフと言う事とする。
さらに、ステップQ5に移行して、ステップQ5では、ECU30は、サスペンション装置D1,D2,D3,D4の各モータ1それぞれに、所定の回転角φを実現する電流i2を印加し、サスペンション装置D1,D2,D3,D4をそれぞれ伸長させるか伸縮させる。そして、この場合にも、その状態から電流i2の供給を停止して、車体に振動を与える。電流供給の停止は、徐々に電流i2をゼロにしてもよいし、瞬時にゼロとしてもよい。
そして、ステップQ6に移行して、ステップQ6では、電流供給を停止したのち、今度は、電流供給停止状態から上記ECU30の記憶してあるアクティブ制御の処理手順に従って、電流供給を行うが、このとき、一定期間経過後にECU30で算出した振動抑制に必要な電流値となるように徐々に電流i2を供給していく。さらに、この一定時間経過後を基準としてサスペンション装置D1,D2,D3,D4のモータ1の回転角θ2と時間tとの関係をグラフ化して、これをアクティブ制御時の正常値としてECU30に記憶させる。すなわち、上記の作業にて、上述の減衰特性グラフと同様に、図示はしないが、回転角θ2と時間tとの関係が、振動抑制特性グラフで示されるグラフにされる。このグラフ化作業は、上述のように車両に搭乗者や荷物を積載しない状態にて行われる。そして、ここで得られる振動抑制特性グラフを便宜上、制御時減衰特性グラフと言う事とする。また、この計測された回転角θ2が時間t軸と交わる各ゼロクロス点の間隔から、振動周波数faを算出し、この自己診断処理中の各車体側部材B1,B2,B3,B4の振動周波数faを記憶装置に記憶する。
さらに、ステップQ7に移行して、ステップQ7では、ECU30は、サスペンション装置D1,D2,D3,D4の各モータ1それぞれに、所定の回転角φを実現する電流i2を印加し、サスペンション装置D1,D2,D3,D4をそれぞれ伸長させるか伸縮させる。そして、この場合にも、その状態から電流i2の供給を停止して、車体に振動を与える。電流供給の停止は、徐々に電流i2をゼロにしてもよいし、瞬時にゼロとしてもよい。
そして、ステップQ8に移行して、ステップQ8では、電流供給を停止したのち、今度は、各モータ1のコイル6がECU30を介して閉回路とされている状態から、たとえば、リレースイッチ(図示せず)でコイル6を断線状態として、コイル6には一切電流が流れない状態とし、一定期間経過後を基準としてサスペンション装置D1,D2,D3,D4のモータ1の回転角θ2と時間tとの関係をグラフ化して、これをサスペンション装置D1,D2,D3,D4のフリクションのみの振動抑制特性を示す正常値としてECU30に記憶させる。すなわち、上記の作業にて、上述の減衰特性グラフと同様に、図示はしないが、回転角θ2と時間tとの関係が、振動抑制特性グラフで示されるグラフにされる。そして、ここで得られる振動抑制特性グラフを便宜上、フリクション減衰特性グラフと言う事とする。
上述の作業を経て、全部3種類のグラフを得て、これらグラフはEUC30の記憶装置に記憶される。
また、ECU30の記憶装置に格納される上記各減衰特性グラフは、ECU30を使用して作成する必要はなく、サスペンション装置D1,D2,D3,D4にグラフ作成用のコンピュータシステムを用いて作成するとしてもよいことはもちろんである。
なお、本実施の形態におけるサスペンション装置D1,D2,D3,D4にあっては、懸架バネK1,K2、K3,K4等のサスペンションのバネ要素のバネ定数kを正確に把握することができるので、ECU30に振動解析プログラムと、その振動解析の結果から最適な制御力を算出するプログラムを記憶させて、これらプログラムを実行させるか、経年劣化等によるバネ定数kの変化に鑑み予め複数のバネ定数kに対応した制御ゲインマップを用意しておくことにより、このマップをECU30に参照させてアクティブ制御させるとしておくことにより、懸架バネK1,K2、K3,K4等の経年劣化によるバネ定数変化をも加味した振動抑制が可能となる。
なお、上述したところでは、時間tに対してシャフト1aの回転角θ2との関係をグラフ化しているが、回転角θ2にかえて回転角θ2と螺子軸3のリードから算出される車体側部材B1,B2,B3,B4と車軸側部材S1,S2,S3,S4との相対変位xとしてもよい。
つづいて、上記振動抑制特性の自己診断処理について、ECU30のCPUの処理手順の一例を示す図9に基づいて説明する。すなわち、図9の処理は、ステップR1で、車両の搭乗者に自己診断処理を行う意思があるかを確認する。この処理は、車両搭乗者のセレクトスイッチの操作により確認するが、具体的には、当該セレクトスイッチが自己診断処理ポジションであるか否かによって判断される。そして、セレクトスイッチが自己診断処理ポジションを採る場合には、ECU30側に信号が送られ、自己診断処理が割込処理として実行され、ステップR2に移行する。
ステップR2では、たとえば、車速センサで検出される車速がゼロであるか、または、サイドブレーキがオン状態であるか、すなわち、車両が停車中か否かを判定し、車両が走行中であると判定された場合には、ステップR3に移行し、自己診断処理を行わずに割込処理を終了する。
逆に、車両が停車中であると判定された場合には、ステップR4に移行し、まず、ホール素子Hが検知するモータ1のシャフト1aの回転位置から、基準シャフト回転位置からどれだけシャフト1aが回転しているか、すなわち、車体の重量変化に起因するシャフト1aの回転角wを検出し、ECU30は、この回転角wを記憶するとともに、回転角wと螺子軸3のリードから車体側部材B1,B2,B3,B4と車軸側部材S1,S2,S3,S4の相対変位xを算出し、この算出された相対変位xと上記各懸架バネK1,K2,K3,K4の各バネ定数kとからバネ上質量m1を算出し、この各バネ上質量m1を一旦ECU30の記憶装置に記憶して、ステップR5に移行する。
さらに、ステップR5では、ECU30は、回転角wを打ち消すように、すなわち、各モータ1のシャフト1aを基準となる回転位置になるように、各モータ1に電流を印加する。さらに、その状態から回転角φを実現する電流i2を印加する。
そして、ECU30は、電流i2のみの供給を停止し、続いて、サスペンション装置D1,D2,D3,D4に制御力Fs1を発生させるべく、各モータ1に電流を供給する。この制御力Fs1は、具体的には、Fs1=a・C1・v+a・k・xの算式で導き出されるように設定される。ここで、aはa=m1/mで計算される質量変化補正係数であり、C1は各サスペンション装置D1,D2,D3,D4の減衰係数、vは相対変位xを微分して得られる車体側部材B1,B2,B3,B4と車軸側部材S1,S2,S3,S4の相対速度vである。なお、ここで減衰係数C1は、サスペンション装置D1,D2,D3,D4の各モータ1のシャフト1aがサスペンション装置D1,D2,D3,D4の伸縮により強制的に駆動される際に発生する電磁力に起因するトルクに基づいて決定されるものである。
そして、この制御力Fs1は、サスペンション装置D1,D2,D3,D4毎に演算され、ECU30は、各サスペンション装置D1,D2,D3,D4の各モータ1にそれぞれサスペンション装置D1,D2,D3,D4毎に演算された制御力Fs1を発生させるべく、電流を供給する。このとき、実際には、各モータ1に供給される電流の大きさは、バネ上質量変化を打ち消すために供給している電流値をも維持する必要があるので、上記制御力Fs1に対応する電流値に上記バネ上質量変化を打ち消す電流値を加算した値となる。そして、このように、サスペンション装置D1,D2,D3,D4に制御力Fs1を発生させるので、振動の伝達関数は、バネ上質量が基準のバネ上質量mのときの振動の伝達関数とバネ上質量がm1のときの振動の伝達関数は全く同じとなるので、バネ上共振周波数および減衰率は変化せず、その振動も変化しないこととなるので、つまり、バネ上質量に変化があっても常に基準となるバネ上質量mのときの振動と同じとなるので、すなわち、バネ上質量変化および減衰率変化の影響を排除することができる。また、一旦、回転角wを打ち消すので、懸架バネK1,K2,K3,K4のバネ定数kが相対変位xに対し非線系であっても、同一の条件で振動させることができる。
そうしておいて、電流i2のみの供給を停止してから一定期間経過後を基準としてサスペンション装置D1,D2,D3,D4のモータ1の回転角θ2と時間tとの関係を図8の線Erに示すようにグラフ化して、これを自己診断処理時の減衰特性グラフとしてECU30に記憶させる。このとき、ECU30から上記制御力Fs1および回転角wを打ち消すための電流以外は各モータ1のコイル6に電流を供給せず、上記制御力Fsおよび回転角wを打ち消すための電流以外には、各モータ1のシャフト1aが強制的に駆動させられることにより発生する誘導起電力に起因する電流のみが流れるようにして回転角θ2を計測するようにする。
さらに、この計測された回転角θ2が時間t軸と交わる各ゼロクロス点の間隔から、自己診断処理中の振動周波数f1を算出し、この自己診断処理中の各車体側部材B1,B2,B3,B4の振動周波数f1を記憶装置に記憶し、ステップR6に移行する。
そして、ステップR6では、上記ECU30は、回転角wを打ち消すように、すなわち、各モータ1のシャフト1aを基準となる回転位置になるように、各モータ1に電流を印加する。さらに、その状態から回転角φを実現する電流i2を印加する。
そして、ECU30は、電流i2のみの供給を停止し、続いて、サスペンション装置D1,D2,D3,D4に制御力Fs2を発生させるべく、各モータ1に電流を供給する。この制御力Fs2は、具体的には、Fs2=a・C2・v+a・k・xの算式で導き出されるように設定される。ここで、aはa=m1/mで計算される質量変化補正係数であり、C2は各サスペンション装置D1,D2,D3,D4の減衰係数、vは相対変位xを微分して得られる車体側部材B1,B2,B3,B4と車軸側部材S1,S2,S3,S4の相対速度vである。なお、ここで減衰係数C2は、サスペンション装置D1,D2,D3,D4をアクティブ制御する際のサスペンション装置D1,D2,D3,D4が緩衝器として機能する際の減衰係数であり、このECU30の記憶装置に格納されているアクティブ制御プログラムにより決定され、たとえば、サスペンション装置D1,D2,D3,D4の振動周波数や振動速度に依存して変化するものである。
そして、この制御力Fs2は、サスペンション装置D1,D2,D3,D4毎に演算され、ECU30は、各サスペンション装置D1,D2,D3,D4の各モータ1にそれぞれサスペンション装置D1,D2,D3,D4毎に演算された制御力Fs2を発生させるべく、電流を供給する。このとき、実際には、各モータ1に供給される電流の大きさは、バネ上質量変化を打ち消すために供給している電流値をも維持する必要があるので、上記制御力Fs2に対応する電流値に上記バネ上質量変化を打ち消す電流値を加算した値となる。そして、このように、サスペンション装置D1,D2,D3,D4に制御力Fs2を発生させるので、振動の伝達関数は、バネ上質量が基準のバネ上質量mのときの振動の伝達関数とバネ上質量がm1のときの振動の伝達関数は全く同じとなるので、バネ上共振周波数および減衰率は変化せず、その振動も変化しないこととなるので、つまり、バネ上質量に変化があっても常に基準となるバネ上質量mのときの振動と同じとなるので、すなわち、バネ上質量変化および減衰率変化の影響を排除することができる。また、一旦、回転角wを打ち消すので、懸架バネK1,K2,K3,K4のバネ定数kが相対変位xに対し非線系であっても、同一の条件で振動させることができる。
そうしておいてから、電流i2のみの供給を停止してから一定期間経過後を基準としてサスペンション装置D1,D2,D3,D4のモータ1の回転角θ2と時間tとの関係をグラフ化して、これを自己診断処理時の制御時減衰特性グラフとしてECU30に記憶させる。なお、ECU30は、電流i2供給停止状態から上記ECU30の記憶してあるアクティブ制御の処理手順に従って、電流供給を行うが、このとき、アクティブ制御に伴う電流量以外に、上記回転角wを打ち消す電流量と制御力Fs2に伴う電流量は維持され、したがって、ECU30は、アクティブ制御用の電流量と回転角wを打ち消す電流量と制御力Fs2に伴う電流量の総和の電流量を各モータ1にそれぞれ供給する。
さらに、この計測された回転角θ2が時間t軸と交わる各ゼロクロス点の間隔から、自己診断処理中の振動周波数f2を算出し、この自己診断処理中の各車体側部材B1,B2,B3,B4の振動周波数f2を記憶装置に記憶し、ステップR7に移行する。
つづいて、ステップR7に移行して、ECU30は、回転角wを打ち消すように、すなわち、各モータ1のシャフト1aを基準となる回転位置になるように、各モータ1に電流を印加する。さらに、その状態から回転角φを実現する電流i2を印加する。
そして、ECU30は、電流i2のみの供給を停止し、続いて、サスペンション装置D1,D2,D3,D4に制御力Fs3を発生させるべく、各モータ1に電流を供給する。この制御力Fs3は、具体的には、Fs3=a・k・xの算式で導き出されるように設定される。ここで、aはa=m1/mで計算される質量変化補正係数であり、vは相対変位xを微分して得られる車体側部材B1,B2,B3,B4と車軸側部材S1,S2,S3,S4の相対速度vである。
そして、この制御力Fs3は、サスペンション装置D1,D2,D3,D4毎に演算され、ECU30は、各サスペンション装置D1,D2,D3,D4の各モータ1にそれぞれサスペンション装置D1,D2,D3,D4毎に演算された制御力Fs3を発生させるべく、電流を供給する。このとき、実際には、各モータ1に供給される電流の大きさは、バネ上質量変化を打ち消すために供給している電流値をも維持する必要があるので、上記制御力Fs3に対応する電流値に上記バネ上質量変化を打ち消す電流値を加算した値となる。そして、このように、サスペンション装置D1,D2,D3,D4に制御力Fs3を発生させるので、振動の伝達関数は、バネ上質量が基準のバネ上質量mのときの振動の伝達関数とバネ上質量がm1のときの振動の伝達関数は全く同じとなるので、バネ上共振周波数および減衰率は変化せず、その振動も変化しないこととなるので、つまり、バネ上質量に変化があっても常に基準となるバネ上質量mのときの振動と同じとなるので、すなわち、バネ上質量変化および減衰率変化の影響を排除することができる。また、一旦、回転角wを打ち消すので、懸架バネK1,K2,K3,K4のバネ定数kが相対変位xに対し非線系であっても、同一の条件で振動させることができる。
そうしておいてから、電流i2のみの供給を停止してから一定期間経過後を基準としてサスペンション装置D1,D2,D3,D4のモータ1の回転角θ2と時間tとの関係をグラフ化して、これを自己診断処理時のフリクション減衰特性グラフとしてECU30に記憶させる。このとき、ECU30から上記制御力Fs3および回転角wを打ち消すための電流に加えて、各モータ1のシャフト1aが強制的に駆動させられることにより発生する誘導起電力に起因する電流を打ち消す電流を供給する、すなわち、各モータ1のコイル6が断線された状態と同様の状態を作り出すようにして回転角θ2を計測するようにする。
さらに、この計測された回転角θ2が時間t軸と交わる各ゼロクロス点の間隔から、自己診断処理中の振動周波数f3を算出し、この自己診断処理中の各車体側部材B1,B2,B3,B4の振動周波数f3を記憶装置に記憶し、ステップR8に移行する。
つづいて、ステップR8に移行し、ECU30は、上記正常な状態を示す各グラフと、上記ステップR5、ステップR6およびステップR7で得られた自訴診断処理中に得られた各グラフとを比較し、すなわち、正常な状態を示す減衰特性グラフと自己診断処理時の減衰特性グラフと、正常な状態を示す制御時減衰特性グラフと自己診断処理時の制御時減衰特性グラフと、正常な状態を示すフリクション減衰特性グラフと自己診断処理時のフリクション減衰特性グラフとを夫々比較し、アクティブサスペンションが正常な状態であるか否かを判断する。
ここで、判断手法であるが、たとえば、図8に示すように、正常な状態を示すグラフ中の回転角θ2のN回目のピーク値Ynを基準として閾値を設けておき、これに対応する自己診断処理時のグラフ中の回転角θ2のN回目のピーク値Yrnが、ピーク値Ynに対してのずれが±10%以内であれば正常と判断し、この閾値を超える場合を以上と判断する。また、ピーク値を複数個抽出して、正常な状態を示す各ピーク値毎に閾値を設け、自己診断処理中のグラフの対応する各ピーク値とを比較してもよいし、特にアクティブ制御時には、振動が抑制されてピーク値を複数個抽出できない場合もあるので、このような場合には、一回目のピーク値のみで判断するとしてもよい。なお、ピーク値はサスペンション装置D1,D2,D3,D4の収縮するときのマイナスピーク値を抽出して比較してもよい。また、ピーク値比較以外にも、時間tと回転角θ2との関係を示すグラフの全体にわたり閾値を設けて、比較するとしてもよい。
さらに、上記のようにピーク値そのものから判断する以外には、例えば、正常値の1回目のピーク値Y1とN回目のピーク値Ynとを抽出して、Y1/Ynを算出し、この値と、自己診断処理時のY1/Ynの値と比較することにより正常か否かを判断するとしてもよいし、さらには、Y1/Ynの値から、
減衰率ζ=(1/2π)・{1/(n−1)}loge(Y1/Yn)を算出して、正常値の減衰率と自己診断処理時の減衰率とを比較して判断するとしてもよい。
また、さらに、本実施の形態においては、正常値を示す振動周波数fgと自己診断処理時の振動周波数f1との比較、正常値を示す振動周波数faと自己診断処理時の振動周波数f2との比較、さらに正常値を示す振動周波数fgと自己診断処理時の振動周波数f3との比較をし、正常値を示す振動周波数を基準として閾値を設け、自己診断処理時の振動周波数がこの閾値内に入らないときに異常と判断するとしてもよい。
そして、上記したいずれの場合にあっても、正常値を基準として閾値を設け、自己診断処理時の各値が閾値内か否かが所定の基準となる。
なお、上述したところでは、回転角θ2を使用しているが、回転角θ2の変わりに、車体側部材B1,B2,B3,B4と車軸側部材S1,S2,S3,S4の相対変位xや相対速度v、相対加速度、車体側部材B1,B2,B3,B4の絶対変位、絶対速度、絶対加速度を使用して自己診断することも可能である。
また、本実施の形態では、サスペンション装置D1,D2,D3,D4の振動抑制特性の自己診断を行う際に、最初に正常な状態で車体を加振して、正常値を示す各グラフを得るとしているが、ECU30に振動解析を行えるプログラムを格納しておくとして、バネ上質量と車両各輪における懸架バネK1,K2、K3,K4のバネ定数とサスペンション装置D1,D2,D3,D4の減衰係数C1から理論値としての各グラフを算出させ、この理論値としての各グラフと自己診断処理時の各グラフとを比較させて、異常か否かを判断させても良い。
さらに、本実施の形態では、減衰特性グラフおよび制御時減衰特性グラフおよびフリクション減衰特性グラフの3つのグラフを得るとしており、減衰特性グラフで異常が生じていれば、サスペンション装置D1,D2,D3,D4の緩衝器としての機能に異常があるかバネ定数kが変下していることを検知でき、制御時減衰特性グラフで異常が生じていれば、サスペンション装置D1,D2,D3,D4のアクチュエータおよび緩衝器としての機能に異常があるかバネ定数kが変下していることを検知でき、フリクション減衰特性グラフに異常が生じていれば、サスペンション装置D1,D2,D3,D4のハード、すなわち、螺子軸3、ボール螺子ナット4およびモータ1のいずれかもしくは複数箇所に異常が生じているかバネ定数kが変下していることを検知できる。したがって、単に異常を検知することを目的とする限りにおいては、いずれか1つのグラフから正常か否かを判断するとしてもよい。ただし、3つのグラフ比較を行うことにより異常個所を特定できるので、その点に3つのグラフを使用する利点がある。また、振動周波数比較か上記ピーク値比較のいずれか一方のみにより正常か否か判断するとしてもよい。
また、正常値を示すグラフを回転角φを変えて、複数用意して、対応する回転各φで車体を加振して、各回転角φ毎に3つのグラフを得て、夫々の回転角φ毎に、アクティブサスペンションが正常か異常か判断するとしてもよく、この場合には、正常な値を示すグラフを得るステップQ3からステップQ8までの処理を回転角φ毎に繰り返し行い、上記ステップR5からステップR8までの手順を回転角φ毎に繰り返し行うとすればよい。そして、特にバネ定数kがシャフト1aの回転角θ2に対して非線系である場合や、減衰係数が相対速度vに対して非線系な場合に有効であり、異常が生じている箇所の特定をしやすくなる利点がある。
なお、上述したところでは、車体の加振にあたって、各サスペンション装置D1,D2,D3,D4を同時に加振する場合について説明したが、ステップR5からステップR8までの処理を各サスペンション装置D1,D2,D3,D4毎に順番に行うとしてもよいし、車両前輪側の2ヵ所と後輪側の2箇所に分けて順番に加振を行うとしてもよい。但し、この場合には、自己診断処理時の車体の加振状態と正常値を得るときの車体の加振状態とを同じにする必要がある。
以上のように、ECU30は、アクティブサスペンションが正常か否かを判断し、ステップR8の処理を終えて、ステップR9に移行する。
そして、ステップR9では、自己診断結果が正常と判断される場合には、割込み処理を終了し、異常と判断される場合には、ステップR10に移行する。
ステップR10では、ECU30は、車両搭乗者にアクティブサスペンションに異常がある旨を伝達する為に、警報装置に制御信号を出力して、ステップP11に移行する。
最後にステップR11では、サスペンション装置D1,D2,D3,D4のアクチュエータ機能に異常をきたしているため、このままの状態で、アクティブ制御を行うと、車体の振動特性が変化してしまうので、ECU30は、アクティブ制御を行わないようにする。
また、アクティブサスペンションに異常があると判断された場合は、上記各サスペンション装置D1,D2,D3,D4のアクチュエータ機能の自己診断と同様に、電流センサの故障、配線の断線、ECU30内の駆動回路の故障、モータ1の故障、懸架バネK1,K2,K3,K4の劣化損傷等が挙げられ、異常と判断される場合には、上記各部の故障や配線の断線等を検知する故障検知手段を設けておけば、アクティブサスペンションのどの部材、配線に故障があるか否かを判断できる。なお、懸架バネK1,K2、K3,K4以外の各部の故障を検知することができれば、懸架バネK1,K2、K3,K4以外の各部が正常であると判断されれば、懸架バネK1,K2、K3,K4の劣化損傷を判断することができるので、この場合には特に懸架バネK1,K2、K3,K4の劣化損傷を検知する手段を省くとしてもよい。そして、当該各部の故障検知手段を設ける場合には、とくに電気的な故障の場合には、アクティブ制御を続けると走行に支障をきたす場合も考えられるため、アクティブ制御を停止するとして、懸架バネK1,K2、K3,K4についてバネ定数が変化するのみと判断できる場合には、バネ定数変化に対応してアクティブ制御を続行するとしてもよく、懸架バネK1,K2、K3,K4がエアバネである場合には、他が正常であれば、電流i2に対するモータ1のトルクは変化していない状態となるので、エアバネの正確なバネ定数を電流i2から算出することができ、所定のバネ定数を実現するエアバネ内の空気圧を確保するように、ECU30でエアバネ用のコンプレッサーやエアバネ内の気体の廃棄弁を駆動するようにしてもよい。
上述したように、このアクティブサスペンションの振動抑制特性が正常か異常かを判断することによっても、アクティブサスペンションが正常に機能するか否かの判断を正確に行うことができる。
さらに、振動抑制特性の自己診断が、車両の停車時に行われるようにしておけば、車両が発進する前に、アクティブサスペンションの異常を検知して搭乗者にその旨を知らせることができ、搭乗者の安全を確保することができる。
さらに、振動抑制特性の自己診断にてアクティブサスペンションの異常を検知した場合には、アクティブ制御を停止することで通常のサスペンションをして機能させ、この点でも搭乗者の安全を確保することができるとともに、車両走行に支障をきたす危惧を回避することができる。
また、振動抑制特性の自己診断にてアクティブサスペンションの異常が車体を懸架する懸架バネK1,K2、K3,K4のバネ定数変化のみであった場合には、バネ定数変化に即してアクティブ制御を行うことも可能となる。
さらに、各サスペンション装置D1,D2,D3,D4のアクチュエータ機能の自己診断とアクティブサスペンションの振動抑制特性の自己診断を行うとすれば、いわば、二重のチェックにより、アクティブサスペンションが正常か否かを正確に判断することができ、より一層搭乗者の安全を確保することができるとともに、車両走行に支障をきたす危惧を回避することができる。
そして、さらに、自己診断時に車体加振後の時間経過によるモータのシャフトの回転角の変化を示すグラフを作成し、このマップと、車体加振後の時間経過によるモータのシャフトの回転角の正常な変化を示すグラフとを比較してサスペンション装置が正常である判断を行うので、車両個々に対応した自己診断が可能となるとともに、正確に異常を検知することができる。
また、自己診断時に、モータに電流もしくは電圧を供給して車体重量変化量に伴うモータのシャフトの回転角を打ち消すとともに、サスペンション装置に車体重量変化に伴うバネ上振動周波数変化および減衰率変化を打ち消す制御力を発生させるので、正常な車体加振後の時間経過によるモータのシャフトの回転角の変化を示すグラフ作成時の車体振動状況と自己診断時の車体振動状況とを同一にすることができる、すなわち、車体重量変化によらず、同一条件で車体を加振できる。そして、上記正常なグラフと、同一条件で得られた車体加振後の時間経過によるモータのシャフトの回転角の変化を示すグラフとを比較できるので、車体重量変化によらず正確に異常を検知することができる。
なお、上述したところでは、ホール素子Hでシャフト1aの回転位置を検出することにより、回転角θ1,θ2と電流i1,i2から相対変位x、相対速度v、バネ定数k、バネ上質量mを算出可能としていたが、ホール素子Hを使用する変わりに、磁気センサや光センサを使用してもよく、また、モータ1のシャフト1aの回転位置を検出することに換えて、車体側部材B1,B2,B3,B4と車軸側部材S1,S2,S3,S4との相対変位xを検出する変位センサ、ストロークセンサを用いるとしてもよいし、車両各輪のバネ上質量mを検出するには荷重センサ用いるとしてもよい。
つづいて、上記実施の形態の変形例について説明する。上述したところにおいては、螺子軸3が回転運動をするとしているが、この変形例では、逆に、図10に示すように、サスペンション装置を螺子軸3の軸方向の直線運動をボール螺子ナット4の回転運動に変換して、このボール螺子ナット4の回転運動をモータ51のシャフト51aに伝達する構成とされている。この場合には、ボール螺子ナット4の外周に駆動側歯車62bを設け、この駆動側歯車62bに噛合する従動側歯車62aを設け、さらに、この従動側歯車62aをモータ51のシャフト51aに連結するとして、駆動側歯車62bと従動側歯車62aで構成される歯車機構を介してボール螺子ナット4の回転運動をモータ51のシャフト51aに伝達できるようにしておき、螺子軸3の直線運動をボール螺子ナット4の回転運動に変換し、上記回転運動をモータ51のシャフト51aに伝達可能とされ、上記モータ51に電磁力を発生させ、この電磁力に起因して発生するトルクを上記螺子軸3の直線運動を抑制する減衰力として利用してボール螺子ナット4と螺子軸3との軸方向の相対移動を抑制するとしている。なお、この変形例にあっても、ボール螺子ナット4にトルクを与えることによりアクチュエータとしても機能することができる。なお、上記実施の形態と同様に、モータ51は図示しないホール素子Hを備えており、シャフト51aの回転位置を検出できるようになっており、また、モータ51は上記ECU30に接続されている。
この変形例のサスペンション装置について、詳しく説明すると、螺子軸3には、その図10中下端にサスペンション装置が適用される箇所へ取付可能なように、アイ型ブラケット50が設けられている。そして、この螺子軸3は、ボール螺子ナット4内に回転自在に螺合されるとともに、外筒55内に挿入されている。
また、外筒55は有底筒状であって、その図10中上端には、サスペンション装置が適用される箇所へ取付可能なように図示しないブラケットが設けられている。したがって、このサスペンション装置を特に車両に適用する場合には、上記アイ型ブラケット50および図示しないブラケットを介して、車体と車軸との間にサスペンション装置を介装することが可能なようになっている。
そしてまた、外筒55の図10中下端は、中空なハウジング59に連結され、このハウジング59には、孔59a,59b,59cおよび穴59dが設けられ、外筒55は、ハウジング59の孔59a,59bと同心となるようにハウジング59に連結されている。さらに、ハウジング59の孔59a,59bの内周には、それぞれボールベアリング40,41が嵌合され、このボールベアリング40,41内には上記ボール螺子ナット4が嵌合している。したがって、ボール螺子ナット4はハウジング59に対して回転することができる。
また、ハウジング59の孔59cおよび穴59dにも、ボールベアリング42,43が設けられるとともに、このボールベアリング42,43内には、回転軸60が嵌合されている。さらに、このハウジング59には、孔59cと同心となるように、筒65が結合されており、この筒65内には、モータ1と同様の構成のモータ51が固着ている。
上述のように、ボール螺子ナット4には螺子軸3が螺子溝3aに沿って回転自在に螺合され、螺子軸3がボール螺子ナット4に対し図10中上下方向の直線運動をすると、ボール螺子ナット4はハウジング59により図10中上下方向の移動が規制され、回転のみ許容されているので、ボール螺子ナット4は強制的に回転駆動される。すなわち、上記機構により螺子軸3の直線運動がボール螺子ナット4の回転運動に変換されることとなる。
他方、歯車機構は、図10に示すように、上記回転軸60に外周に形成した従動歯車62aと、ボール螺子ナット4の外周に形成した駆動歯車62bとからなり、各歯車62a、62bの歯が、互いに噛み合うように水平に配置されてハウジング59内に回転自在に挿入されており、さらに、回転軸60は、モータ51のシャフト51aに連結されている。
なお、各歯車62a、62bは、たとえばインボリュート歯車等の周知の歯車を使用すればよく、本実施の形態では2つの歯車を使用しているが、3つ以上の歯車列を使用してもよい。
上記のように各歯車62a、62bの軸心が横方向にオフセットされていることにより、各歯車62a、62bに結合したモータ51の軸心とボール螺子ナット4の軸心が横方向にずれており、その結果、モータ51は外筒65の外側においてボール螺子ナット4の側方に並行に配置される。
そして、上記の構成をとることにより、モータ51は、ボール螺子ナット4の側方に配置されるので、従来のサスペンション装置のようにモータ1を螺子軸3の上部に垂直に設ける必要が無いので、言い換えればモータ51を外筒5と並行に配置したことにより、緩衝器に必要なストローク確保ができ、基本長も短くすることができる。すなわち、省スペース化を図ることができる。
なお、モータ51をボール螺子ナット4の側方近傍に配置しているが、上述のように歯車列を使用して、モータ51をボール螺子ナット4から離れた位置に配置することも可能である。したがって、たとえば、モータ51のみを車体内に配置するようにして雨水や泥、飛び石などによるモータ51の損傷を防止することができる。
また、図示はしないが、ボール螺子ナット4の外周に磁石もしくはコイルの一方を取付け、ハウジング59に磁石もしくはコイルの他方を取付けることによりモータを構成するとしてもよい。この場合には、上記歯車機構を廃することができる。
上記構成により、螺子軸3の図10中上下方向の直線運動によるボール螺子ナット4の回転運動は、駆動歯車62bと従動歯車62aとが互いに噛み合っているので、モータ51のシャフト51aに伝達されることとなり、その結果、モータ51が回転し、その電磁力に起因して発生するシャフト51aの回転に抗するトルクが歯車機構を介してボール螺子ナット4の回転を抑制する減衰力として作用する。
なお、上記したところでは、駆動歯車と従動歯車を水平配置してボール螺子ナット4の回転運動をモータ51に伝達しているが、各歯車を傘歯車として、ボール螺子ナット4に対するモータ51の取付角度を変化させることも可能である。この場合には、上記取付角度の調節が可能であるから、適用する車両の構造にあわせて、本発明にかかるサスペンション装置を取付けることが出来ることとなる。したがって、新造又は既存車両のレイアウトに左右されずにサスペンション装置を取付ることが可能である。また、傘歯車の種類は何でも良いが、はすば傘歯車等の円滑な伝動が可能であるものが好ましい。
さらには、ボール螺子ナット4の回転運動をモータ51のシャフト51aに伝達するには、歯車機構以外に、摩擦車機構やベルト機構を使用してもよい。
このように構成されたサスペンション装置は、伸縮すると、螺子軸3が図10中上下に直線運動を呈することとなるが、この直線運動がボール螺子ナット4の回転運動に変換され、さらに、このボール螺子ナット4の回転運動は、歯車機構を介してシャフト51aに伝達される。したがって、モータ51の発生する電磁力に起因するシャフト51aの回転に抗するトルクは、ボール螺子ナット4の回転を抑制することとなり、このボール螺子ナット4の回転を抑制する作用が、螺子軸3の直線運動を抑制することとなるので、結果的に、ボール螺子ナット4と螺子軸3の軸方向の相対移動を抑制する減衰力として作用し、また、モータ51に電流を供給することによりサスペンション装置をアクチュエータとしても使用可能である。
そして、上述のように構成される変形例にあっても、上述したECU30でサスペンション装置のアクチュエータ機能の自己診断および振動抑制特性の自己診断を行うことができ、上記実施の形態と同様の作用効果を奏することが可能である。
以上で、本発明の実施の形態についての説明を終えるが、本発明の範囲は図示されまたは説明された詳細そのものには限定されないことは勿論である。