JP2005254756A - ポリエチレンナフタレート系樹脂からなる扁平形状を有する厚肉容器 - Google Patents

ポリエチレンナフタレート系樹脂からなる扁平形状を有する厚肉容器 Download PDF

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Abstract

【課題】十分な曲げ剛性を確保する肉厚を有し、大容量であり、かつ十分な強度および耐衝撃性を備えた、PEN系樹脂をブロー成形してなる扁平形状を有する口部付き厚肉容器の提供。
【解決手段】平均肉厚15〜50mmの少なくともその胴部において実質的に球晶およびボイドを含有しないプリフォームを準備し、該プリフォームを面倍率8〜20倍に膨らませた一次ブロー成形体46を形成し、該一次ブロー成形体46を冷却固化することなく少なくとも口部の中心軸に平行な方向において1.2〜50倍圧縮して偏平形状55とし、さらに圧縮により成形品を所定の形状にするか、もしくは必要によりブロー成形品55にさらに流体を吹き込むことにより所定の形状のブロー成形品58に成形する。
【選択図】図4

Description

本発明は、高剛性、高耐衝撃性、良好な耐薬品性(内容物による変質や強度低下が少ない)、および良好なガスバリヤー性を有し、幅広い分野に適用可能な1mm以上の肉厚を有するブロー成形法により製造された扁平形状を有する口部付き厚肉容器、並びに該厚肉容器を効率的に製造可能な新規な延伸ブロー成形法による製造方法に関する。
ポリエチレンナフタレート樹脂(以下PEN樹脂と称する場合がある)は、耐熱性、ガスバリヤー性、低吸着性、および耐薬品性などに優れるため、包装容器材料として注目されている。結晶性ポリエステル樹脂を2軸延伸ブロー成形することによって得られた容器では、延伸配向によりその機械的強度の著しい向上、並びに耐薬品性およびガスバリヤー性の向上が達成されることから、PEN樹脂もポリエチレンテレフタレート樹脂と同様に2軸延伸ブロー成形することにより飲料用ボトル、並びに芳香剤、化粧品、および医薬品などの容器において利用されている(特許文献1〜3参照)。さらにPEN樹脂がガソリンに対するガスバリヤー性に優れることも広く知られ、既にPEN樹脂を2軸延伸ブロー成形した容器を車両用ガソリンタンクに適用することも公知である(特許文献4参照)。
しかしながら、前記に提案された容器はいずれも小型であり、良質な大型容器を製造する技術を何ら開示するものではなかった。さらに大型の容器になれば剛性の確保のため肉厚をより厚くすることが求められる。かかる厚肉のPEN樹脂からなる成形品を2軸延伸ブロー成形によって製造する方法も知られていないのが現状である。
特開2001−158490号公報 特開2001−40101号公報 特開2003−11946号公報 特開平8−58401号公報
本発明の目的は、十分な曲げ剛性を確保する肉厚を有し、大容量であり、かつ十分な強度および耐衝撃性を備えた、PEN系樹脂をブロー成形してなる扁平形状を有する口部付き厚肉容器を提供することにある。
本発明者らは、前記課題を解決すべく、まず十分な曲げ剛性並びに十分な強度および耐衝撃性を得るためにいかなる条件が必要かをシート状試験片を用いて鋭意検討した。その結果、PEN系樹脂は特定の倍率以上に2軸延伸されていないと良好な耐衝撃性が達成できず、さらにかかる2軸延伸がなされた材料の中でも十分な曲げ剛性を得て幅広い分野に適応可能とするためには容器の肉厚が1mm以上あるとより好ましいことを見出した。さらには該プリフォームを扁平形状に膨張させるについて、驚くべきことにプリフォーム所定量膨張させて一次ブロー成形体(好ましくは自由ブロー体)とした後、該成形体を冷却固化させることなく圧縮して扁平形状とすることにより目的とする厚肉容器を効率的にかつ高い自由度で製造できることを見出した。以上の種々の検討および知見よりさらに鋭意検討を行い、本発明を完成するに至った。
本発明は、(1):
(1)ポリエチレンナフタレート系樹脂(樹脂−I)からなる有底筒状のプリフォームであって、その胴部の平均肉厚が15〜50mmであり、少なくともその胴部において実質
的に球晶およびボイドを含有しないプリフォームを準備する工程(工程A)、
(2)該プリフォームをブロー成形可能に状態調節する空間内に、プリフォームを配置する工程(工程B)、
(3)前記工程Bの空間内に配置されたプリフォームを、ブロー成形可能に状態調節する工程(工程C)、
(4)ブロー成形品を形成するための型(型−ii)内において、ブロー成形可能に状態調節されたプリフォームを面倍率8〜20倍の範囲において膨らませ、一次ブロー成形体を形成する工程(工程D)、
(5)該一次ブロー成形体を冷却固化させることなく、少なくとも口部の中心軸に平行な方向において1.2〜50倍圧縮する工程(工程E)、
(6)前記工程Eにおける圧縮によりブロー成形品を所定の形状にするか、もしくは必要により前記工程Eの後ブロー成形品にさらに流体を吹き込むことによりブロー成形品を所定の形状にする工程(工程F)、並びに
(7)該形成後のブロー成形品を型内より取り出す工程(工程G)
からなる延伸ブロー成形法により製造されたことを特徴とするポリエチレンナフタレート系樹脂からなる扁平形状を有する口部付き厚肉容器にかかるものである。
本発明の厚肉容器は、かかる構成(1)の如くブロー成形法により製造されるものである
が、有底円筒状のプリフォームを使用することにより、生産効率の点(後工程の削減および在庫管理の容易性など)並びに接合部分が全くなくそのガスバリヤー性や燃料漏洩のないことが長期間確実に保証される点で構成(1)の方法により得られた厚肉容器は有利であ
る。さらにはプリフォームの加熱工程において球晶が生じにくく、均質かつ十分に延伸されることが可能であるため、強度(特に耐衝撃性)がより優れた厚肉容器が達成される。
尚、かかる構成(1)におけるボイドは、目視観察によって容易に見出せる程度の大きさ
のボイドであり、その大きさの目安としては0.5mm以上の直径が挙げられる。構成(1)の発明においてボイドの存在はそれ自体の存在に起因しておよびボイドの存在が不均一
な延伸を誘発して容器の強度低下の要因となることから、構成(1)の発明はプリフォーム
中にボイドが存在しないことを規定する。したがってかかる強度低下を阻害しない程度の大きさのボイドは本発明において特に問題とされない。即ち肉眼以外の方法でなければ明確にボイドと確認できない大きさのボイドまでも本発明において排除するものではない。ボイドの存在の有無は、胴部が透明の場合には肉眼による観察の他、軟X線装置などを用いて確認することができる。
また球晶の有無は、プリフォームの胴部より任意に10点のサンプルを切り出し500倍における偏光顕微鏡観察を行う方法で確認される。構成(1)の発明において球晶の存在
はポリマー鎖の十分な延伸配向を阻害する要因となることから、構成(1)の発明はプリフ
ォームが球晶を含有しないことを規定する。すなわち、かかる延伸配向を阻害しない程度の球晶は本発明において特に問題とされない。よってさらに拡大された倍率でなければ観察されない微結晶までも本発明において排除するものではない。
さらに前記構成(1)は、プリフォームを膨張させて得られた一次ブロー成形体を冷却固
化させることなく圧縮することを要件とする。かかる操作を行うことにより一次ブロー成形体におけるポリマー鎖の結晶化を抑制しつつ、所定の加工を行うことが可能となる。構成(1)の発明においては単に上下方向の圧縮のみによって最終の製品形状を付与すること
も可能である。しかしながらより好適には圧縮と共にまたはその直後にさらに高い流体圧力を加えることによりブロー成形体を膨張させて最終の製品形状が付与される。かかる膨張を十分にかつ均一に行うためには、一次ブロー成形体が実質的に球晶を含有しないことが好ましい。ここで一次ブロー成形体を再加熱した場合、ポリマー鎖は既に延伸されているため結晶化はよりしやすい状態となっている。一方でポリマー鎖の構造によって結晶化
挙動を抑制すると、延伸によって期待される強度や耐衝撃性の向上が不十分となりやすい。したがって強度および耐衝撃性により優れ、かつ本発明のような扁平形状のブロー成形体を得るためには、ポリマーの種類とその加工方法のいずれの要因をも適切に組み合わせることが必要となる。前記構成(1)によれば、結晶化が抑制され十分かつ均一な延伸配向
が達成され、その結果良好な強度および耐衝撃性を有するPEN系樹脂からなる扁平形状の厚肉容器が提供される。
本発明の好適な態様の1つは、(2)該一次ブロー成形体は実質的に球晶およびボイドを
含有せず、かつ該一次ブロー成形体の胴部の密度からプリフォームの密度を差し引いた密度差が0.01〜0.03g/cm3である前記(1)の厚肉容器である。本発明においては、一次ブロー成形体を均一かつ十分に延伸することにより強度および耐衝撃性の良好な厚肉容器を得ることを可能とする。尚、ここで胴部の密度およびプリフォームの密度は、胴部およびプリフォームから切り出した試験片を用いてJIS K7112のD法に準拠して密度勾配管により20℃において測定を行ない算出される密度である。またかかる一次ブロー成形体の胴部とは、後述するように基本的に口部以外の部分を指すが、ブロー成形において理論的に膨張(延伸)し得ないプリフォームの底部に相当する部分は除かれる。
プリフォームの密度は、プリフォームの切片を用いて測定してもよいが、現実的には厚肉容器の口部の部分における樹脂を切り出した試験片を用いて前記JIS K7112のD法により測定することもできる。口部は実質上延伸されていないから、PEN系樹脂のプリフォームの密度と見なすことができる。プリフォームの密度は、後述するPEN系樹脂の真密度とほぼ同じ値を呈する。従って、プリフォームの密度は、後述する方法で測定されたPEN系樹脂の真密度と見なして取扱うことができる。
前記胴部の密度差は、PEN系樹脂のポリマー鎖が十分に延伸された状態にあることを的確に示す指標であり、かつこれらの要件は簡便に測定することが可能である。すなわちポリマー鎖が十分に延伸配向された樹脂は、延伸配向されていない樹脂に比較して密度の向上が認められる。
前記の如く均一かつ十分な延伸を行うためには、その延伸のなされる温度領域が、樹脂−Iのガラス転移温度(Tg(℃))以上の温度であって、かつ樹脂−Iの応力−歪み曲線が降伏点を超えた塑性域の歪み領域において、再び歪みに対する応力値の上昇が認められる挙動を有する温度であることが求められる。さらにかかる温度領域において、その応力値が降伏応力を超える領域まで歪みが負荷される、即ち変形されるようにポリマー鎖が延伸されることが必要である。かかる延伸のためにはその温度領域にもよるものの少なくも8倍以上の面倍率であることが必要である。一方でその温度領域は樹脂−Iの内容によっても異なるものの、少なくともTg+5(℃)〜Tg+70(℃)であることが好ましく、Tg+5(℃)〜Tg+45(℃)の範囲がより好ましい。
本発明の好適な態様の1つは、(3)前記工程Dは、型−ii内においてブロー成形可能に
状態調節されたプリフォームをほぼ周囲の面に拘束されることのない状態下で面倍率8〜20倍の範囲において膨らませ、自由ブロー体を形成する工程(工程D’)である前記構成(1)〜(2)の厚肉容器である。前記の如く本発明においては一次ブロー成形体を均一かつ十分に延伸させることが重要である。一方一次ブロー成形体の形成は、通常の射出成形品を得るように型内において一次ブロー成形体の全表面が型内表面に拘束される方法であっても、またプリフォームをほぼ周囲の面に拘束されることがない状態下で膨らませたものであってもよい。しかしながら前者の型表面に拘束される方法の場合、型表面に接した部分と接していない部分とのポリマー鎖の自由度の差によって、延伸が不均一となる可能性を有する。このため、本発明においてはより好適な方法は後者の方法である。したがって前記構成(3)によれば、さらに十分かつ均一な延伸配向が達成され、その結果良好な強度
および耐衝撃性を有するPEN系樹脂からなる扁平形状の厚肉容器が提供される。
本発明の好適な態様の1つは、(4)前記工程Cは、前記工程Bの空間内に配置されたプ
リフォームを、Tg−20(℃)〜Tg(℃)の範囲となるようプリフォームを予備加熱する工程(工程C−1)、およびさらにプリフォームを、Tg+5(℃)〜Tg+70(℃)の範囲となるよう最終加熱してブロー成形可能に状態調節する工程(工程C−2)からなる前記構成(1)〜(3)の厚肉容器である。かかる構成(4)によれば、比較的簡便な方法
によってプリフォーム加熱時の結晶化が抑制され、その結果より均一かつ十分な延伸配向が達成された厚保肉容器で提供される。
本発明の好適な態様の1つは、(5)前記厚肉容器は、その胴部において実質的に球晶お
よびボイドを含有しないことを特徴とする前記構成(1)〜(4)の厚肉容器である。本発明においては所定のプリフォームより、前記構成(1)の各工程を経ることにより得られたブロ
ー成形品もまた球晶およびボイドを含有しないものとなる。したがってかかる構成(5)に
よれば、胴部が実質的に球晶およびボイドを含有せず、延伸配向が均一かつ十分になされた、強度、耐衝撃性、並びにガスバリヤー性に優れた厚肉容器が提供される。
尚、本発明において容器における胴部とは、容器全体において口部以外の部分を指す。すなわち通常PETボトルなどで口部、型部、胴部、および底部などのように区分される場合の胴部とは異なる。これは本発明の容器の形状が通常にない扁平形状でありPETボトルのような区分が適さないためである。したがって胴部は容器上面、側面、および底面のいずれの部分も有する。また、かかる胴部の定義は該容器を製造するに用いられるプリフォームの場合も同様である。
さらに容器胴部において実質的に球晶を含有しないとは、胴部の上面、側面、および底面からそれぞれ周縁部以外から任意に10点のサンプルを切り出し、500倍における偏光顕微鏡観察を行ったとき球晶の存在が認められないことをいう。球晶の存在はポリマー鎖の十分な延伸配向を阻害する要因となることから、構成(1)の発明はプリフォームにお
いて球晶のないことを要件とする。そして該プリフォームを構成(1)における各工程を経
ることにより、得られたブロー成形品もまた実質的に球晶を含有しないものとなる。すなわち、かかる延伸配向を阻害しない程度の球晶は本発明において特に問題とされない。よってさらに拡大された倍率でなければ観察されない微結晶までも本発明において排除するものではない。またかかる構成(5)の発明におけるボイドの意味およびその有無の確認方
法は、前記構成(1)の発明の場合と同様である。
本発明の好適な態様の1つは、(6)前記厚肉容器は、その平均肉厚が1〜3mmである
ことを特徴とする前記構成(1)〜(5)の厚肉容器である。本発明は極めて厚肉のプリフォームを使用することにより、その結果として扁平形状を有する厚肉容器を提供する。特に強度、耐衝撃性、軽量性、および生産性などを勘案すると1〜3mmが好適であり、かかる構成(6)によれば強度、耐衝撃性、軽量性、および生産性などに優れた厚肉容器が提供さ
れる。
本発明の好適な態様の1つは、(7)前記厚肉容器は、その内容積が5L以上であること
を特徴とする前記構成(1)〜(7)の厚肉容器である。かかる構成(7)によれば、大型かつ剛
性にも優れた厚肉容器が提供される。
本発明の好適な態様の1つは、(8)前記厚肉容器は、そのブロー成形された胴部におい
て、口部の中心軸に平行な方向の長さをHとし、該中心軸方向の投影面における最大の長さをLとしたとき、L/Hで表される扁平率が2〜50の範囲にあることを特徴とする前記構成(1)〜(7)の燃料タンク用容器である。かかる構成(8)によれば、扁平率の高い厚肉
容器が提供される。
本発明の好適な態様の1つは、(9)前記厚肉容器は、実質的に球晶およびボイドを含有
せず、かつ該容器の胴部の密度から、プリフォームの密度を差し引いた密度差が0.01〜0.03g/cm3であることを特徴とする前記構成(1)〜(8)の厚肉容器である。実質
的に球晶およびボイドを含有しないプリフォームを、球晶およびボイドが生成しないようにブロー成形可能に状態調整し、その後十分に延伸された樹脂−Iからなるブロー成形品は良好な強度および耐衝撃性を有するものとなる。かかる点を構成(9)の発明は規定する
。すなわちブロー成形された容器の密度がプリフォームに比較して特定の割合で高くなることにより、その延伸配向度を的確に表すことができる。したがってかかる構成(9)によ
れば、そのポリマー鎖が十分に延伸配向され、強度および耐衝撃性に優れた厚肉容器が提供される。尚、ここで胴部の密度およびプリフォームの密度は、胴部およびプリフォームから切り出した試験片を用いてJIS K7112のD法に準拠して密度勾配管により20℃において測定を行ない算出される密度である。
本発明の好適な態様の1つは、(10)前記ポリエチレンナフタレート系樹脂(樹脂−I)は、該ポリエステルを構成する全ジカルボン酸成分量100モル%中2,6−ナフタレンジカルボン酸成分が85〜97モル%であり、かつ全ジオール成分量100モル%中エチレングリコール成分が85〜100モル%であることを特徴とする前記構成(1)〜(9)の厚肉容器である。さらに好適には(11)前記ポリエチレンナフタレート系樹脂(樹脂−I)は、該ポリエステルを構成する全ジカルボン酸成分量100モル%中2,6−ナフタレンジカルボン酸成分85〜97モル%、並びにイソフタル酸成分およびテレフタル酸成分から選択される少なくとも1種のジカルボン酸成分3〜15モル%であることを特徴とする前記構成(10)の厚肉容器である。
かかる構成(10)および(11)によれば、生産効率により優れた厚肉容器を提供することができる。すなわち、PEN系樹脂は元来ポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂に比較して結晶化速度が極めて遅い樹脂であり、本発明において好適なブロー成形法においても極めて厚肉のプリフォームを球晶およびボイドを生成することなく作成することが可能である。しかしながらより厚肉のプリフォームが必要とされる場合には球晶およびボイドを含有しないプリフォームの作成は、極めて条件幅が狭く実用性を欠くようになる。前記構成(10)および(11)のPEN系樹脂は、純粋なPEN樹脂よりもさらに結晶化速度が遅く、その結果その球晶成長はさらに抑制される。これによりさらに厚肉のプリフォームを球晶およびボイドを生成することなく作成することが可能となる。その一方でかかるPEN系樹脂(特に構成(11))は延伸された場合には十分に延伸配向し厚肉容器に良好な強度および耐衝撃性を与えることができる。
本発明の好適な態様の1つは、(12)前記口部はネジまたはフランジ構造を有する構成(1)〜(11)の厚肉容器であり、さらに好適な態様の1つは、(12)前記口部は、容器内部に設
置するための機械ユニットを取り付け可能とするネジまたはフランジ構造を有する厚肉容器である。かかる構成(12)によれば、容器にポンプに代表される各種の装置を取り付ける必要がある場合に、かかる装置を簡便、確実、かつ脱着可能に固定することが可能である。かかる固定は容器内容物の揮発による漏洩を最小限に抑制できる。
さらに本発明の好適な態様の1つは、前記厚肉容器は、乗り物搭載用容器である前記構成(1)〜(12)の厚肉容器である。本発明の厚肉容器は、剛性、強度、および耐衝撃性に優
れることから、より過酷な条件で使用される乗り物搭載用容器に特に適する。
また本発明は、(13)ポリエチレンナフタレート系樹脂(樹脂−I)からなり、次の要件(i)〜(v);(i)胴部の平均肉厚が1〜3mm、(ii)内容積が5L以上、(i
ii)該容器の胴部において口部の中心軸に平行な方向の長さをHとし、該中心軸方向の投影面における最大長さをLとしたとき、L/Hで表される扁平率が2〜50の範囲、(iv)該胴部の測定密度(d2)から該樹脂−Iの真密度(d1)を差し引いた密度差(d2−d1)が0.01〜0.03g/cm3、並びに(v)該胴部は実質的に球晶およびボ
イドを含有しない、を満足する扁平形状を有する口部付き厚肉容器にかかるものである。
かかる構成(13)によれば、前記課題を解決した厚肉容器が提供される。上記要件(i)〜(v)の中で、要件(iv)および(v)は、胴部のPEN系樹脂のポリマー鎖が十分に延伸された状態にあることを的確に示す指標であり、かつこれらの要件は簡便に測定することが可能である。すなわちポリマー鎖が十分に延伸配向された樹脂は、延伸配向されていない樹脂に比較して密度の向上が認められる。一方、容器には密度を増加させる球晶および密度を低下させるボイドのいずれも実質的に存在しないので、要件(iv)の密度の増加は、実質的に延伸配向の程度を示す指標となる。
構成(13)の発明における容器の胴部、球晶、およびボイドは、前述の構成(5)と同様で
ある。また胴部の測定密度(d2(g/cm3))とは、胴部から切り出した試験片を用いてJIS K7112のD法に準拠して密度勾配管により20℃において測定を行ない算出される密度である。一方、樹脂−Iの真密度(d1(g/cm3))とは、樹脂−Iが非晶性であり、延伸配向されておらず、かつボイドを含有していない状態の、樹脂−Iが元来有する密度である。かかる密度は、得られた厚肉容器から例えば次の方法により測定することができる。すなわち、容器胴部から切り出した試験片を窒素置換されたアンプルに入れて300℃程度にボイドを含まないよう均一に加熱して溶融し、該アンプルを液体窒素に浸漬して溶融物を急冷し、得られた試験片の真密度を密度勾配管を用いて測定する方法などが例示される。
本発明は同時に新規な2軸延伸ブロー成形法にかかるものである。
すなわち本発明は、(14)ポリエチレンナフタレート系樹脂(樹脂−I)からなる扁平形状を有する厚肉容器の製造方法であって、
(1)ポリエチレンナフタレート系樹脂(樹脂−I)からなる有底筒状のプリフォームであって、その胴部の平均肉厚が15〜50mmであり、少なくともその胴部において実質的に球晶およびボイドを含有しないプリフォームを準備する工程(工程A)、
(2)該プリフォームをブロー成形可能に状態調節する空間内に、プリフォームを配置する工程(工程B)、
(3)前記工程Bの空間内に配置されたプリフォームを、ブロー成形可能に状態調節する工程(工程C)、
(4)ブロー成形品を形成するための型(型−ii)内において、ブロー成形可能に状態調節されたプリフォームを面倍率8〜20倍の範囲において膨らませ、一次ブロー成形体を形成する工程(工程D)、
(5)該一次ブロー成形体を冷却固化させることなく、少なくとも口部の中心軸に平行な方向において1.2〜50倍圧縮する工程(工程E)、
(6)前記工程Eにおける圧縮によりブロー成形品を所定の形状にするか、もしくは必要により前記工程Eの後ブロー成形品にさらに流体を吹き込むことによりブロー成形品を所定の形状にする工程(工程F)、並びに
(7)該形成後のブロー成形品を型内より取り出す工程(工程G)
からなることを特徴とするポリエチレンナフタレート系樹脂からなる扁平形状を有する厚肉容器の製造方法にかかるものである。
かかる構成(14)によれば、扁平形状の厚肉容器を効率的に生産可能な新規な2軸延伸ブロー成形方法が提供される。
本発明の好適な態様の1つは、(15)該一次ブロー成形体は実質的に球晶およびボイドを含有せず、かつ該一次ブロー成形体の胴部の密度からプリフォームの密度を差し引いた密度差が0.01〜0.03g/cm3である前記構成(14)の製造方法であり、さらに(16)
前記工程Dは、型−ii内においてブロー成形可能に状態調節されたプリフォームをほぼ周囲の面に拘束されることのない状態下で面倍率8〜20倍の範囲において膨らませ、自由ブロー体を形成する工程(工程D’)である前記構成(14)の製造方法であり、さらに(17)前記工程Cは、前記工程Bの空間内に配置されたプリフォームを、Tg−20(℃)〜Tg(℃)の範囲となるようプリフォームを予備加熱する工程(工程C−1)、およびさらにプリフォームを、Tg+5(℃)〜Tg+70(℃)の範囲となるよう最終加熱してブロー成形可能に状態調節する工程(工程C−2)からなる前記構成(14)の製造方法である。かかる構成(15)〜(17)によれば、ポリマー鎖が十分に延伸配向され、強度および耐衝撃性に優れた厚肉容器を効率的に生産可能な新規な2軸延伸ブロー成形方法が提供される。
本発明の好適な態様の1つは、(18)前記工程Aのプリフォームは、胴部の平均肉厚が15〜50mmである有底円筒状のプリフォームを形成するための型(型−i)内に、ポリエチレンナフタレート系樹脂(樹脂−I)を射出充填して製造されてなるプリフォームである前記構成(14)の製造方法である。
工程Aにおけるプリフォームの製造方法は特に限定されない。しかしながらプリフォームを形成するための型(型−i)内に、ポリエチレンナフタレート系樹脂を射出充填する方法は、ブロー成形時の均一な膨張および延伸配向、並びに良好な強度および耐衝撃性の点から最も好適な方法である。さらにかかる方法は生産効率においても優れる。したがって前記構成(18)によれば、より強度および耐衝撃性などに優れた厚肉容器の2軸延伸ブロー成形法による製造方法が提供される。
以下、本発明の各要件、各工程、並びにPEN系樹脂の詳細等についてさらに説明する。
<厚肉容器の利用について>
本発明の厚肉容器の内容物は、特に限定されず気体、液体、固体のいずれかの形態であってもよい。さらに無機化合物または有機化合物のいずれであっても、また親水性化合物または疎水性化合物のいずれであってもよい。またPEN系樹脂は良好な耐熱性を有することから、本発明の厚肉容器は100℃程度までの温度ならば常時加温して使用することも可能である。かかる加温により常温では固体または高粘度の液体を取扱容易な低粘度の液体とすることができる。また本発明の厚肉容器は常時冷却されて使用されてもよい。本発明の厚肉容器の用途は特に限定されないものの、例えば燃料用、ヒートポンプ用熱媒体用、圧力伝達媒体用、潤滑油用、飲料用(濃縮還元用の原料を含む)、培養用、農薬用、水耕栽培用および工業用試薬用の容器などが好適に例示される。特に本発明の好適な態様においては、多様な形状に適応可能であり、特に装置内の空間的制約に適応した厚肉容器が提供される。したがって装置内において使用される容器がより好適である。さらに本発明の厚肉容器は、良好な強度および耐衝撃性を有することから、乗り物に取り付けられる各種の容器としても十分な機能を発揮する。したがって乗り物に搭載される厚肉容器がより好適である。また燃料としては、例えばガソリン、軽油、重油、LPG、灯油、ジェット燃料、GTL軽油、DME(ジメチルエーテル)、並びにアルコール、エーテル、エステル、ケトン、およびフェノールなどの含酸素化合物および含酸素化合物混合燃料などが例示される。
<厚肉容器の形状について>
前記構成(1)の発明における口部付き厚肉容器は、少なくとも1つの口部を有する厚肉
容器である。該厚肉容器をブロー成形により得た後、各種の後加工により該容器の口部以外に導通孔などを設けることができる。厚肉容器の口部は、加圧流体を吹き込みブロー成形するのに利用される。かかる口部は後加工するものに比較してより精度の高く形成することが可能であることから、漏洩を極力抑制できる嵌合構造などを設けることができる。これによりガスバリヤー性に極めて優れるPEN系樹脂の特性をより有効に生かした容器が提供されることとなる。
本発明の厚肉容器では、(i)胴部の平均肉厚が1〜3mmであることが好ましい。かかる肉厚が1mm未満の場合には、容器の剛性が不足するようになり、3mmを超える場合には容器の重量が増加するため軽量化の利点が減少する。かかる平均肉厚は、好ましくは1.5〜2.7mm、より好ましくは1.8〜2.5mmである。かかる好適な範囲においては、剛性と軽量化とをより高いレベルで両立できる。尚、平均肉厚は、基本的には胴部の重量(g)を胴部の全表面積(cm2)および胴部の密度(g/cm3)で除することにより算出することができる。実質的には、本発明の容器は延伸され得ない一部を除きその箇所ごとに大きく異なる肉厚を有することは稀であることから、主要面からサンプリングした10点の部分の厚みを数平均することにより算出することができる。本発明の厚肉容器は前記平均肉厚の範囲を超える肉厚部分を有していてもよいが、最大肉厚と最小肉厚との差は好ましくは5mm以下、より好ましくは3mm以下、さらに好ましくは2mm以下であることが好ましい。
本発明の厚肉容器では、(ii)内容積が5L(リットル)以上であることが好ましい。かかる内容積は理論的には上限を決定することはできないものの、現実的には装置の大きさや、肉厚との兼ね合いなどから200L以下が適切であり、好ましくは150L以下であり、さらにが好ましくは100L以下である。また内容積の下限は、好ましくは8L以上である。
本発明の厚肉容器では、(iii)該容器の胴部において口部の中心軸に平行な方向の長さをHとし、該中心軸方向の投影面における最大長さをLとしたとき、L/Hで表される扁平率が2〜50の範囲であることが好ましい。本発明の厚肉容器は、口部を上面としたとき、かかる面に対する高さの比率が低い扁平形状であることを特徴とする。かかる形状は従来のPEN系樹脂からなるブロー成形品にはないものであった。Hは容器の高さに相当し(通常口部を上側とみなすため)、Lはかかる高さに対する最大の長さとなる。口部は通常筒状であることからその筒長さ方向の中心軸を有する。かかる中心軸方向の投影面積における最大長さとは、例えば投影面が長方形の場合には、その対角線長さとなる。通常のボトルなどでは前記L/Hが1を超えることはない。扁平率が2未満の場合には扁平形状が不足する場合があり、50を超える場合には製造効率の点で劣るようになる。かかる扁平率は、好ましくは3〜40の範囲、より好ましくは5〜30の範囲、さらに好ましくは8〜25の範囲である。
本発明の厚肉容器では、該容器の胴部の密度からプリフォームの密度を差し引いた密度差は、0.01〜0.03g/cm3であることが好ましく、0.015〜0.027g
/cm3であることがより好ましく、0.02〜0.025g/cm3であることがさらに好ましい。かかる範囲を満足し、球晶およびボイドを含有しない容器は、良好な延伸配向が達成された結果として、良好な耐衝撃性を有する。また本発明の厚肉容器の密度は、好ましくは1.33〜.1.38g/cm3であり、より好ましくは1.34〜.1.37
g/cm3であり、さらに好ましくは1.35〜.1.36g/cm3の範囲である。
本発明では、前述の各工程を規定する。これらの工程は大まかには下記の工程A〜工程Gがあり、さらに各工程により好ましい態様の工程が存在する。
(工程A):プリフォームの準備工程
(工程B):プリフォームの配置工程
(工程C):プリフォームの状態調節工程
(工程D):一次ブロー成形体の成形工程
(工程E):一次ブロー成形体の圧縮工程
(工程F):ブロー成形品の仕上げ工程
(工程G):ブロー成形品の取り出し工程
次に前記各工程の詳細について説明する。尚、下記説明は何れもPEN系樹脂からなる単層のプリフォームおよびそれからなる燃料タンク用容器を代表例として説明するが、本発明のプリフォームおよびそれからなる燃料タンク用容器は、下記に示すPEN系樹脂とほぼ同様の成形条件で成形可能である範囲において、他の樹脂からなる層を積層した多層のプリフォームおよびそれからなる燃料タンク用容器であってもよい。他の樹脂からなる層は、かかるPEN系樹脂からなるプリフォームの内側または外側のいずれにも積層可能であり、さらに該積層においてはPEN系樹脂の層に直接に積層しても、もしくは接着層を介して積層してもよい。多層化したプリフォームを製造する方法は公知の方法が選択でき、中でもインサート成形もしくは多色成形が好ましい。
<工程A:プリフォームの準備工程について>
工程Aは、胴部の平均肉厚が15〜50mmであり、少なくとも胴部において実質的に球晶およびボイドを含有しない有底筒状のプリフォーム準備する工程である。かかる工程Aが従来技術と大きく異なる点は、そのプリフォームが極めて厚肉である点である。
プリフォームは通常、均一延伸のため中心軸対称の有底筒状体である。よってかかる中心軸を含む断面(当然該断面内に厚み方向を含む)においてかかる胴部の断面積を内壁面に相当する辺の長さで割ることによりプリフォームの平均肉厚を算出することができる。かかる簡便な算出ができない形状の場合、面内に厚み方向を含む各断面を一定間隔で切り出し、かかる各断面における厚み(数平均値)を算出し、一定間隔で切り出された全ての断面においてかかる厚みを数平均(切り出された断面の個数による数平均)することにより算出することができる。断面の数を増やすことにより特定値に収束することから、かかる特定値を平均肉厚とすることができる。工程Aにおけるプリフォームの平均肉厚は、好ましくは20〜40mm、より好ましくは22〜32mmである。
プリフォームの形成は特に限定されるものではなく、射出成形による製造方法、射出成形品や押出成形品から切削する方法、並びに複数の成形品を接合する方法などが挙げられる。中でも好適には、胴部の平均肉厚が15〜50mmである有底円筒状のプリフォームを形成するための型(型−i)内に、ポリエチレンナフタレート系樹脂(樹脂−I)を射出充填して製造する方法である。射出成形によりプリフォームを製造する場合、射出成形温度は通常260〜300℃、並びに金型温度は0〜40℃の範囲に設定され、好ましくは0〜20℃の範囲に設定される。かかる金型温度はチラーユニットで冷媒を循環することにより達成できる。射出速度は10〜150mm/secの範囲が適切である。また成形はホットランナーであってもコールドランナーであってもよい。さらに射出圧縮成形や射出プレス成形などの特殊な射出成形法を利用することもできる。
<工程B:プリフォームの配置工程について>
本発明の工程Bは、プリフォームをブロー成形可能に状態調節する空間内に、プリフォームを配置する工程である。すなわち、次の工程Cを行なうための空間内にプリフォームを配置する工程である。ここでブロー成形可能に状態調節するとは、所定の流体圧力の下でブロー成形が可能となるようにプリフォームの温度や周囲の圧力を調節することをいう。プリフォームのブロー成形可能な温度とは、理論上はガラス転移温度を超えれば大変形が可能となることから、ガラス転移温度を超える温度といえる。しかしながらブロー成形
時のプリフォームの温度が、あまりに低い場合には過剰な圧力が必要となり変形が不均一となりやすく、あまりに高いと形状保持性に劣り変形が不均一なりやすい。したがってブロー成形可能な温度とは、好ましくは樹脂−Iのガラス転移温度(Tg(℃))に対してTg+5(℃)〜Tg+70(℃)の範囲であり、より好ましくはTg+5(℃)〜Tg+45(℃)の範囲である。尚、本発明においてガラス転移温度は、JIS K7121に準拠した示差走査熱量計(DSC)測定により求められる値である。
ここでプリフォームを状態調節する方法としては、各種の加熱方法が例示される。かかる加熱方法としては、例えば熱媒体中への浸漬または熱媒体との接触、赤外線加熱、マイクロ波加熱、および誘電加熱などが例示され、これらを組み合わせて使用することも可能である。また本発明は、プリフォームを一次ブロー成形品にブロー成形する際、製造時の余熱を十分に有したプリフォームを利用しても、また十分に冷却されたプリフォームを利用してもよい。但し前者の場合であってもプリフォームの温度分布をより均一化することが好ましいため、前記各種の加熱方法によって温度調節することが好ましい。
<工程C:プリフォームの状態調節工程について>
本発明の工程Cは、前記工程Bの空間内に配置されたプリフォームをブロー成形可能に状態調節する工程である。かかる工程ではプリフォーム内に球晶が生成しないように状態調節をすることが均一なブロー成形の点からより好ましい。球晶が部分的に生成している場合かかる部分の延伸は困難となり、その結果プリフォーム胴部全体を均一に延伸することが困難となる。さらに球晶がプリフォーム全体において生成している場合には、ブロー成形自体が困難となりやすい。
かかる観点から、プリフォームの厚み方向に対して極力温度勾配が生じない方法によって昇温することが必要となる。より具体的には、厚み方向においてその温度差が50℃以下となる昇温が必要であり、すなわち、工程Cはより具体的には、前記工程Bの空間内に配置されたプリフォームを厚み方向における温度差が50℃以内となるようブロー成形可能な温度に状態調節する工程である。該温度差は好ましくは40℃以下、より好ましくは30℃以下、さらに好ましくは20℃以下である。
以上のことからプリフォームの加熱は、その内壁面および外壁面のいずれかの側からも行なわれる方法が好ましい。かかる方法としては、内壁面側および外壁面側のいずれの側にも加熱装置を配置する方法、および外壁面側から入射された加熱のためのエネルギーが内壁面側に配置された媒体によって反射される方法などが挙げられる。さらに加熱エネルギーができる限りプリフォーム内部に浸透するマイクロ波照射などの方法を適用することもできる。しかしながらいずれの方法も一段階で所定の温度まで加熱する方法では、ある程度の温度勾配が生ずることを避けられない。そのため前記工程Cのいずれの方法においてもプリフォームを一旦樹脂−IのTg以下程度に高温化してほぼ均一な温度状態とした後、ブロー成形可能な温度域まで加熱する方法が好ましい。すなわち、工程Cはより好適には前述の工程C−1および工程C−2からなることが好ましい。
工程C−1は、プリフォームがTg−20(℃)〜Tg(℃)の温度範囲となるようプリフォームを予備加熱する工程である。かかる予備加熱はプリフォームにおいてその延伸が必要とされる胴部で少なくとも行なわれればよい。またここでのTg(℃)とは前記のとおりプリフォームを形成する樹脂−Iのガラス転移温度をいう。工程C−1は、Tg以下の状態に調節することにより球晶の生成を抑制し、ブロー成形温度に付近までプリフォームを予備加熱する工程である。プリフォームがほぼ条件範囲内の温度にあるか否かは、プリフォームの各所に熱電対を挿入することにより確認することができる。該確認後は同一の条件で加熱を行えばよい。樹脂−Iのより好適な態様に対して前記温度範囲は、より具体的には好ましくは90〜115℃、より好ましくは95〜110℃であり、さらに好
ましくは100〜110℃である。工程C−1のより具体的な加熱方法としては、100〜120℃の雰囲気下においてプリフォームを加熱する方法が例示される。なお、特に気体雰囲気下ではプリフォームの温度が雰囲気温度まで到らない場合があるためTgよりも数℃高い雰囲気下で加熱することも可能である。かかる雰囲気下としては気体雰囲気下または液体雰囲気下のいずれであってもよいが、気体雰囲気下が装置および後処理の点で簡便でありより好ましい。気体雰囲気下の加熱方法としては熱風循環炉内に所定の時間(例えば0.5〜5時間程度)保管する方法が挙げられる。またかかる方法はマイクロ波による加熱方法などに比較して汎用性が高く装置コストが低い点でも好適である。
工程C−2は、さらにプリフォームをTg+5(℃)〜Tg+70(℃)の範囲となるよう最終加熱してブロー成形可能に状態調節する工程である。前記工程C−1同様状態調節の必要な部分はプリフォームの胴部である。Tg以上であると結晶化温度以下であってもわずかずつ球晶が生成し得ることから、かかる加熱はできる限り短時間で行うことが好ましい。加熱方法は前記の各種方法が用いられるが石英ヒーターやセラミックヒーターによる方法が簡便かつ効率的であり好ましい。加熱時間は30〜300secの範囲が好ましく、より好ましくは50〜250sec、さらに好ましくは100〜200secである。しかしながら単純にこれらの加熱方法のみでは、極表面層の過熱を抑制することが困難な場合がある。かかる過熱を防止するためにはヒーターで加熱する一方で送風を行うことが好ましい。
工程C−2における温度範囲は、好ましくはTg+5(℃)〜Tg+45(℃)の温度範囲であり、より好ましくはTg+10(℃)〜Tg+35(℃)の温度範囲であり、さらに好ましくはTg+10(℃)〜Tg+30(℃)の温度範囲である。樹脂−Iのより好適な態様に対して前記温度範囲は、より具体的には好ましくは120〜160℃、より好ましくは125〜150℃、さらに好ましくは125〜145℃である。
尚、工程C(C−1、C−2を含む)においては、プリフォームは固定された状態で状態調節されても、また移動または自転などの動かされた状態で状態調節されてもよいが、プリフォームをより均一に加熱するため移動または自転などの動かされた状態であることが好ましい。
<工程D:一次ブロー成形体の成形工程について>
本発明の工程Dは、ブロー成形品を形成するための型(型−ii)内において、ブロー成形可能に状態調節されたプリフォームを面倍率8〜20倍の範囲において膨らませ、一次ブロー成形体を形成する工程である。
かかる工程Dは、前記工程BおよびCと異なる空間であっても、また同一の空間であってもよい。しかしながら各工程の装置を簡素化する方が工程全体のコストを低減し、またより精度の高い調節等が可能になることから、工程Cを行なった後のプリフォームを型−ii内に配置して工程Dを行なうことがより好ましい。
前記面倍率は好ましくは10〜16倍、より好ましくは10〜15倍である。面倍率が8倍未満の場合には延伸配向が不足して厚肉容器の強度および耐衝撃性が不十分となりやすい。一方、本発明のプリフォームは極めて厚肉であることから、面倍率が20倍を超えるようになると、内壁面側が延伸に追従できない状態を生じその結果ボイドやクラックなどを生じる場合がある。
プリフォームを一次ブロー成形体に膨張させる方法としては、(i)加圧流体を口部から吹き込む方法、(ii)エクステンションロッドなど機械的外力を用いて縦方向の延伸をした後、加圧流体を吹き込み主として横方向の延伸を行なう方法、および(iii)加
圧流体の吹き込みを行いつつ補助的に機械的外力を用いる方法などが例示され、いずれの方法も取ることができる。中でも簡便かつ均一な延伸を可能とする方法として(i)の加圧流体を吹き込む方法が好ましい。加圧流体としては圧縮された空気、窒素、炭酸ガス、および各種不活性ガスなどが例示され、特に圧縮空気が好適である。またこれらの加圧流体は、常温から冷却されたものでも、または高温にされたものであってもよく、かかる高温の温度は樹脂−Iのガラス転移温度を超える温度であってもよい。
2軸延伸ブロー成形法により扁平形状の容器を得るためには、当初から該容器形状を有する型内でブロー成形することを通常であれば想定するところ、かかる方法によっては均一かつ十分に2軸延伸できないことを本発明者らは見出した。これは一旦型壁面に接触すると、該接触部ではブロー成形体と型壁面とが内部の圧力により固着し、ブロー成形に必要な変形が妨げられるためである。さらに本発明者らは鋭意検討を行い、一旦均一かつ十分に変形させた後に所定の形状に変形する方法を見出したものである。
本発明のプリフォームから均一かつ十分な延伸が行われた一次ブロー成形体では、実質的に球晶およびボイドを含有せず、かつ該一次ブロー成形体の胴部の密度からプリフォームの密度を差し引いた密度差が0.01〜0.03g/cm3の範囲を満足するものとな
る。即ち、かかる密度差を満足するように温度や圧力の条件が設定され、一次ブロー成形体の成形がなされることが好ましい。
本発明の工程Dは前述の通り、所定の型内でその内表面に拘束されるように行ってもよいが、より好適には本発明の工程Dは、ブロー成形品を形成するための型(型−ii)内において、ブロー成形可能に状態調節されたプリフォームをほぼ周囲の面に拘束されることのない状態下で面倍率8〜20倍(好ましくは10〜16倍、より好ましくは10〜15倍)の範囲において膨らませ、自由ブロー体を形成する工程(工程D’)である。かかる工程D’においては、ほぼ周囲の型壁面に拘束されることのない状態下でプリフォームを膨らませることから、その際に均一かつ十分な延伸がなされ、これによりPEN系樹脂の有する強度や耐衝撃性が十分に発現されるようになる。尚、工程D’においては自由ブロー体の拘束が全くなされない状態を要件とするものではなく、自由ブロー体の一部が型壁面と接触して拘束されていてもよい。しかしながらかかる接触がある場合でも少なくとも面倍率5倍程度までは拘束されることなく自由ブロー体は膨らませられ、その後その一部が型壁面と接触する方法が好ましい。但し、かかる自由ブロー体は、その延伸されるべき部分がほぽ拘束されない状態で延伸されることに特徴があり、理論的に延伸され得ない部分、例えばプリフォーム底部などが常時可動可能に拘束されていても何ら支障はない。逆にかかる底部を支えることは、プリフォームの固定をより確実としプリフォームのふらつきによる延伸の不均一さを低減することからより好ましい態様である。またかかる固定の際には底部のダイレクトゲート(スプルー)を利用することがより好ましい。
前記の型壁面との接触は自由ブロー体の全表面積あたり50%以下であることが好ましく、30%以下がより好ましく、20%以下がさらに好ましい。また面倍率は、各種の方法で測定可能であり、例えばプリフォームの外壁面に一定間隔でマーキングをし、一次ブロー成形体(好ましくは自由ブロー体)におけるマーキングの間隔の拡大具合を観察する方法や、簡便には一次ブロー成形体の厚みの変化を測定する方法などが例示される。
工程D’においては、周囲の面に拘束されない状態でブロー成形体が作成されるため、一定の延伸倍率のブロー成形体を得るためには、加圧流体の量を一定量に制御する必要がある。かかる制御方法は特に限定されないものの、例えば一定容量の圧力タンク内に一定圧力の圧縮空気をためておき、自由ブロー体を膨らませるときにバルブを解放して圧縮空気を送り込む方法が例示される。かかる方法において流体の初期圧力は、好ましくは1〜10MPaの範囲であり、より好ましくは1.5〜5MPaの範囲であり、さらに好まし
くは2〜4MPaの範囲である。かかる方法では自由ブロー体の膨らみに従い自由ブロー体内の圧力は低下するが、この圧力低下は次の工程Eにおいて必要である。かかる圧力低下が必然的に得られる点においても前記例示の制御方法は好ましい態様である。工程Eに必要な圧力低下が得られるように圧力タンク内の容量および圧力を決定することが好ましい。
また工程Dと後述の工程Eとの間には、一次ブロー成形体を変形させる工程を任意に含むことができる。かかる変形の工程として好適であるのは口部をその中心部分から偏芯させる工程である。均一な延伸のためにはプリフォームは中心軸対称の有底筒状体であることが好ましく、その口部も中心軸上にあることが好ましい。しかしながら製品における口部は該して偏芯した位置に要求される。かかる点から口部の位置を大きく移動させる工程が必要となる場合がある。かかる移動工程は、後の工程に組み入れることも可能であるがその修正の自由度が高い点におい工程Dと工程Eとの間が好適である。
<工程E:一次ブロー成形体の圧縮工程について>
本発明の工程Eは、一次ブロー成形体を冷却固化させることなく少なくとも口部の中心軸に平行な方向において1.2〜50倍圧縮する工程である。かかる工程Eによって口部の面における長さが口部中心軸方向の高さに対して大となる扁平形状が賦形される。かかる扁平形状は従来のブロー成形法においては知られていない。ここで“中心軸に平行な方向において1.2〜50倍圧縮”とは、一次ブロー成形体の高さ(口部付け根から一次ブロー成形体底面までの距離)を、1/1.2〜1/50にすることをいう。かように一次ブロー成形体を冷却固化させる前に所定の形状に変形させることにより、該一次ブロー成形体はその後の最終製品の形状に至るまでの変形に対して、その強度や耐衝撃性を低下させること無く、高い自由度を有することが可能となる。ここで一旦冷却固化され再度の変形のために再加熱した場合、結晶が成長しやすい。該結晶は変形を阻害する因子となり、また耐衝撃性の点でも悪影響を与えやすい。一次ブロー成形体を得た後、工程Eを行う時間は、本発明の効果を損なわない限り特に限定されるものではないが、連続した工程として速やかに行うことが好ましい。
工程Eの圧縮倍率の上限は理論的には特に制限されるものではないが、実用上は製造効率の点から50倍程度が好ましい。これはあまりに圧縮率が大きい場合には、内容積の収縮量も大きくなることから製造効率としては劣るようになるためである。前記圧縮の割合は好ましくは1.3〜20倍であり、より好ましくは1.5〜10倍であり、さらに好ましくは1.7〜5倍である。圧縮は型自体の移動または型内のブロックの移動により行うことができる。圧縮の速度は特に限定されないものの10〜300mm/secの範囲が好ましい。またかかる圧縮工程においては、一次ブロー成形体内部の圧力は工程Dよりも低い圧力とする必要がある。かかる圧力があまりに高いと圧縮操作によって一次ブロー成形体の一部が極度に延伸して、延伸の不均一や形状の崩れが生じやすくなる。一方で圧力があまりに低い場合にも圧縮による変形が不均一となりやすく部分的に一旦延伸されたポリマー鎖が完全に元に戻る場合もある。したがって一定圧力範囲となるよう一次ブロー成形体内部の圧力を保つことが好ましく、かかる圧力は、前記の一次ブロー成形体を形成するための初期圧力に対して好ましくは5〜50%の範囲、より好ましくは10〜45%の範囲、さらに好ましくは20〜40%の範囲である。例えば初期圧力3MPaの場合には、工程Eにおける内部圧力は0.15〜1.5MPaの範囲に保つことが好ましい。
圧縮による変形をできる限り均一化し、また後述する工程Fにおいてできる限り形状の自由度を確保するためには、型壁面とブロー成形体との間に滑りが生ずるようにすることが好ましい。かかる滑りを生じさせる方法としては、型壁面に滑材(例えば各種オイル類など)を塗布する方法、型壁面をフッ素コート(NI−P−PTFE複合メッキ、PTFE溶射など)する方法、型壁面に酸化クロム系セラミックなどを溶射する方法およびこれ
らを組み合わせる方法などが例示される。また樹脂−I側に滑剤成分を含有させる方法を組み合せることも好適である。
<工程F:ブロー成形品の仕上げ工程について>
本発明の工程Fは、前記工程Eにおける圧縮によりブロー成形品を所定の形状にするか、もしくは必要により前記工程Eの後ブロー成形品にさらに流体を吹き込むことによりブロー成形品を所定の形状にする工程である。かかる工程Fはブロー成形において最終形状を付与する仕上げ工程である。
かかる工程Fにおいては、前記工程Eの圧縮操作のみによって所定の形状に仕上げる態様が含まれる。さらに好適にはほぼ所定の形状となったブロー成形品に対して、型−ii内の形状を調整しまた流体を吹き込むことによりさらにブロー成形品を変形させ所定の形状に仕上げる態様である。
さらに型−ii内の形状を調節して最終形状に仕上げる場合、前記工程Eとは異なる方向からさらに圧縮を行い形状を調整すること、容器に曲げ剛性を付与するための凹凸(リブ)を設けて形状を調整すること、容器全体を曲げて形状を調整すること、および必要な箇所に孔あけして形状を調整することなどが含まれる。かかる工程Fは必ずしも工程Eが完了した後に行う必要はなく、工程Eと工程Fとが重複する態様であってもよい。またかかる工程Fにおいては、内部の流体圧力は少なくとも2MPa以上であることが好ましく、3MPa以上がより好ましく、4MPa以上がさらに好ましい。上限は装置上の問題がない限り特に限定されないが、10MPa以下が適切であり、6MPa以下でも十分である。また前記工程Dの初期圧力以上の圧力とすることが好ましい。より高い圧力が必要となるのは成形体が金型と接触した状態からの変形が求められるからであり、より細かく局所的に変形度の高い賦形が求められるからであり、さらに少なからずブロー成形品の温度が低下し延伸されにくくなっているからである。かように上記工程Eおよびかかる工程Fのいずれにおいても工程中のブロー成形体の温度が低下するため、その防止方法の1つとして加圧流体を高温化する方法が適用されることが好ましい。
さらに工程Fの最終形状の付与を補助するため、金型温度は樹脂−IのTg(℃)以上とすることが好ましく、より好ましくはTg+20(℃)〜Tg+70(℃)、さらに好ましくはTg+40(℃)〜Tg+60(℃)である。
<工程G:ブロー成形品の取り出し工程について>
本発明の工程Gは、所定の形状に形成後のブロー成形品を型内より取り出す工程である。工程Gはブロー成形品を冷却後金型から取り出す工程である。前記の如く工程Fにおいて金型温度は樹脂−IのTg(℃)よりもかなり高い温度に設定されていることから、ブロー成形品の冷却は、成形品内部から行うことが好ましい。かかる成形品内部からの冷却方法は特に限定されないものの、例えば加圧流体内に冷媒を混合し、内部圧力を維持しながらかかる混合加圧流体を循環させる方法が好適に例示される。冷媒としては、水からなるミストや、液体窒素をバブリングして得た冷却窒素などが例示され、水からなるミストが簡便に得られかつ効率的に成形品を冷却できる点において好ましい。
尚、前記本発明の各工程はブロー成形品を1個取りとしても複数個取りとしてもよい。
<PEN系樹脂について>
本発明に用いる樹脂−Iであるポリエチレンナフタレート系樹脂(PEN系樹脂)とは、2,6−ナフタレンジカルボン酸を主たる酸成分とし、エチレングリコールを主たるグリコール成分とするポリエステル樹脂である。ここで主たるとは、80モル%以上、好ましくは85モル%以上の割合であることをいい、したがって20モル%以下の他の酸成分
、グリコール成分、およびオキシ酸成分が共重合されるかまたはかかる成分からなるポリエステルが混合物として含有されていてもよい。本発明においてより好適なPEN系樹脂は、該ポリエステルを構成する全ジカルボン酸成分量100モル%中2,6−ナフタレンジカルボン酸成分が85〜97モル%であり、かつ全ジオール成分量100モル%中エチレングリコール成分が85〜100モル%である。2,6−ナフタレンジカルボン酸成分と他の酸成分との組み合わせは、その結晶性をある程度抑制させる一方で延伸配向による強度および耐衝撃性の向上を可能とする。本発明において2,6−ナフタレンジカルボン酸成分とは樹脂−I中に2,6−ナフタレンジカルボン酸に由来する繰返し単位をいい、2,6−ナフタレンジカルボン酸およびそのエステル形成性誘導体により樹脂−I中に導入することが可能である。また他の酸成分もかかる酸自体またはそのエステル形成性誘導体によって樹脂−I中に導入することが可能である。ここでエステル形成性誘導体としては、低級アルキルエステル、フェニルエステル、および酸無水物などが挙げられる。
さらに本発明においてより好適なPEN系樹脂は、該ポリエステルを構成する全ジカルボン酸成分量100モル%中2,6−ナフタレンジカルボン酸成分85〜97モル%、並びにイソフタル酸成分およびテレフタル酸成分から選択される少なくとも1種のジカルボン酸成分3〜15モル%からなる。イソフタル酸および/またはテレフタル酸をかかる特定量含むことにより、結晶性の低下と延伸配向との両立が可能となり、十分かつ均一に延伸された強度および耐衝撃性の良好な本発明の厚肉容器を得ることが可能となる。イソフタル酸および/またはテレフタル酸の割合は、より好ましくは5〜12モル%の範囲である。これらの酸はPEN系樹脂中に共重合成分として含まれることが好ましく、また中でもテレフタル酸が特に好ましい。
一方、イソフタル酸およびテレフタル酸以外のPEN系樹脂中に含有可能な酸成分としては、例えば、2,7−ナフタレンジカルボン酸、tert−ブチルフタル酸、ジフェノキシエタンジカルボン酸、ジフェニルジカルボン酸、ジフェノキシエタンジカルボン酸、ジフェニルスルホンジカルボン酸、ジフェニルエーテルジカルボン酸、フェニルメタンジカルボン酸、ジフェニルケトンジカルボン酸、およびジフェニルスルフィドジカルボン酸などの芳香族ジカルボン酸、シュウ酸、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、およびドデカンジカルボン酸などの脂肪族ジカルボン酸、ヘキサヒドロテレフタル酸、デカリンジカルボン酸、およびテレラリンジカルボン酸などの脂環族ジカルボン酸などが例示される(前記のとおりこれらの酸からなるエステル形成性誘導体を含む)。
PEN系樹脂中に含有されてもよい、エチレングリコール以外のグリコール成分としては、プロピレングリコール、テトラメチレングリコール、1,3−ブタンジオール、ペンタメチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、ネオペンチルグリコール、およびジエチレングリコールなどの脂肪族グリコール、シクロヘキサンジメタノールおよびトリシクロデカンジメチロールなどの脂環族ジオール、ビスフェノールA、レゾルシン、ハイドロキノン、およびジヒドロキシジフェニルなどの二価フェノール、ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物などの芳香族グリコール、ポリエチレングリコールおよびポリテトラメチレングリコールなどポリオール、並びにビスヒドロキシエトキシフェニルフルオレンなどフルオレンなどが例示される。特にジエチレングリコール成分は、全ジオール成分100モル%中2〜5モル%の範囲で含有されることが、結晶性を適度に低下させ、かつ延伸された場合に十分な延伸配向が達成される点で好適である。
また、PEN系樹脂中に含有されてもよいオキシ酸成分としては、オキシ安息香酸およびヒドロキシジフェニルカルボン酸等が例示される。
さらに本発明のPEN系樹脂は、本発明の目的を損なわない範囲において3官能以上の酸成分またはグリコール成分を含有することができる。3官能以上の酸成分としてはトリ
メリット酸などが例示され、3官能以上のグリコール成分としてはグリセリン、トリメチルプロパン、およびペンタエリスリトールなどが例示される。3官能以上の成分は各構成成分100モル%中好ましくは2モル%以下、より好ましくは1モル%以下の割合で使用される。
本発明のPEN系樹脂は、その25℃のオルトクロロフェノール溶媒中において測定された極限粘度が0.55dl/g以上であることが好ましく、より好ましくは0.6dl/g以上、さらに好ましくは0.65dl/g以上である。極限粘度が0.55dl/g以上であると結晶化時間が大きくなり、球晶生成の抑制が必要な本発明の厚肉容器およびその製造方法において好適である。一方かかる極限粘度は好ましくは1.3dl/g以下、より好ましくは1.2dl/g以下である。極限粘度があまりに高い場合にはプリフォームの形成において歪みやボイドが生じやすくなり好ましくない。
本発明のPEN系樹脂を重合するには、従来公知の各種重合方法を適用することが可能である。その一例として、エチレングリコール、並びに2,6−ナフタレンジカルボン酸のジメチルエステルおよび共重合成分(テレフタル酸ジメチルエステルなど)をメチルアルコールを留去しながらエステル交換させ、その後減圧下で重縮合を行う方法が例示される。本発明においては、特にさらに極限粘度を上げる為に固相重合を行うことが好ましい。エステル交換触媒としては、酢酸カルシウムや酢酸マグネシウムなどが好適に例示される。またエステル交換触媒としてはその他にも、マグネシウム、マンガン、カルシウム、および亜鉛などの酢酸塩、モノカルボン酸塩、アルコラート、および酸化物などが挙げられる。またかかるエステル交換触媒を失活するためにトリメチルホスフェートなどのリン化合物をエステル交換反応後に添加することが好ましい。また重合反応触媒としては、ゲルマニウム化合物、チタン化合物、およびアンチモン化合物などが使用可能であり、例えば二酸化ゲルマニウム、水酸化ゲルマニウム、ゲルマニウムアルコラート、チタンテトラブトキサイド、チタンテトライソプロポキサイド、および蓚酸チタンなどが例示される。
また、本発明のPEN系樹脂は、本発明の効果を損なわない範囲で、さらに耐衝撃性を改良するため各種の衝撃改良材を含有することができる。かかる衝撃改良材としては、酸変性ポリエチレン、酸変性エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−プロピレン−非共役ジエン共重合体、エチレン−グリシジルメタクリレート共重合体、およびエチレン−エチルアクリレート共重合体などのα−オレフィン系ポリマー、スチレン系熱可塑性エラストマーおよびポリウレタン系熱可塑性エラストマーなどの熱可塑性エラストマー、並びに各種ゴム成分と該ゴム成分と共重合可能な単量体成分とを共重合したグラフト共重合体などが例示される。かかるグラフト共重合体のゴム成分としては、ジエンゴム、ブチルゴム、アクリルゴム、オレフインゴム、シリコーンゴムおよびこれらの成分が共重合またはIPN化した各種のゴムが例示される。一方、該ゴム成分と共重合可能な単量体成分としては、芳香族ビニル化合物、シアン化ビニル化合物、(メタ)アクリル酸エステル化合物、(メタ)アクリル酸化合物などが好適に挙げられる。その他エポキシ基含有メタクリル酸エステル、マレイミド系単量体、α,β−不飽和カルボン酸およびその無水物などが例示される。前記の中でも衝撃改質材としては、α−オレフィン系ポリマーが好ましく、特にエチレン−グリシジルメタクリレート共重合体が好ましい。かかる衝撃改良材は、PEN系樹脂100重量%中、10重量%以下が好ましく、1〜8重量%の範囲が好ましい。
さらに本発明のPEN系樹脂は本発明の効果を損なわない範囲において、各種の安定剤(リン系熱安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、および光安定剤など)、着色剤(カーボンブラック、二酸化チタン、酸化亜鉛、および各種染料(蛍光染料含む)など)、離型剤(オレフィン系ワックス、高級脂肪酸エステル、シリコーンオイル、およびフッ素オイルなど)、帯電防止剤(各種有機スルホン酸アルカリ(土類)金属塩、有機スルホン酸ホスホニウム塩、これらの塩を含むポリマー、およびポリアルキレングリコール成分を含むポ
リマーなど)、蛍光増白剤、近赤外線吸収剤、導電材(カーボンブラック、カーボンナノチューブ、グラファイト、金属フレーク、および金属コートフレークなど)、難燃剤(ハロゲン系難燃剤、リン酸エステル系難燃剤、およびホスファゼン系難燃剤など)、各種強化フィラー、流動改質材、抗菌剤、および光触媒系防汚材などを含有することができる。
本発明の厚肉容器は、十分な曲げ剛性、大容量、および扁平形状などの要件を備え、かつ十分な強度および耐衝撃性を備え、かつその製造効率にも優れている。かかる厚肉容器は、燃料、ヒートポンプ用熱媒体、圧力伝達媒体、潤滑油、飲料水(濃縮還元用の原料を含む)、培養物、農薬、水耕栽培用水および工業用試薬などに良好な耐性やガスバリヤー性を有し、これらを収納するのに特に適する。
本発明者らが現在最良と考える本発明の形態は、前記の各要件の好ましい範囲を集約したものとなるが、例えば、その代表例を下記実施例中に記載する。もちろん本発明はこれらの形態に限定されるものではない。
以下、実施例により本発明をより具体的に説明する。尚、本発明はかかる実施例の内容に限定されるものではない。
I)PEN系樹脂の重合
2,6−ジメチルナフタレート、下記の他のジカルボン酸成分およびエチレングリコールを常法に従って酢酸マンガン触媒でエステル交換反応させた後、リン酸を添加し反応を停止させ、その後二酸化ゲルマニウムを添加し溶融重合反応を行った。実施例および比較例において使用したPEN系樹脂および他のポリエステル樹脂は以下のとおりである。
[樹脂1]:帝人化成(株)製「テオネックス TN8770」(ジカルボン酸成分が2,6−ジメチルナフタレート92モル%およびジメチルテレフタレート8モル%からなるPEN系樹脂;IV:0.70)
[樹脂2]:ジカルボン酸成分が2,6−ジメチルナフタレート95モル%およびジメチルテレフタレート5モル%からなるPEN形樹脂;IV:0.68
[樹脂3]:ジカルボン酸成分が2,6−ジメチルナフタレート85モル%およびジメチルテレフタレート15モル%からなるPEN系樹脂;IV:0.56
[樹脂4](比較用):帝人化成(株)製「TR8580HP」(PET樹脂)
II)評価方法
(1)密度測定
容器胴部の密度測定は胴部上面、側面および底面においてそれぞれ3箇所ずつから超音波カッターにより15mm角程度を大枠で切り出した後、かかる切片の溶融した周囲部分をメスで丁寧に削りとり、縁部が滑らかであり層間剥離のない約10mm角の試験片を得た。得られた試験片を用いてJIS K7112のD法に準拠して密度勾配管により胴部の測定密度(d2(g/cm3))を20℃において測定した。一方プリフォームの密度は、その断面方向にバンドソーでスライスした約6mm厚みの薄肉片を、その切断面が残らないようにメスで丁寧に削りとり、2〜3mm厚みの前記胴部からの切片と同程度の大きさの試験片を得た。得られた試験片を用いて前記と同じ方法によりプリフォームの密度(d1(g/cm3))を求めた。以上の結果から計9箇所における容器胴部のd2−d1(g/cm3)の値を求め、その平均値および最大値と最小値との差を求めた。尚、プリフォ
ームにおける薄肉片の採取個所は、おおよそ容器の切片採取個所に対応する場所とし、これら対応する密度の差を算出した。
(2)球晶の確認
容器における球晶はその胴部の上面、側面、および底面からそれぞれ周縁部以外から任意に10点のサンプルを切り出し、500倍における偏光顕微鏡観察を行いその有無を確認した。またプリフォームにおける球晶はその胴部より任意に10点のサンプルを切り出し同様の方法によりその有無を確認した。(尚、今回の実験では球晶が生成したものは明らかに白化し、その球晶の有無は目視で明確であった)。尚、ブロー成形後の厚肉容器中に球晶の存在がなければ、一次ブロー成形体には当然球晶は存在しない。
(3)ボイドの確認
プリフォームおよび燃料タンク用容器中のボイドの有無は、目視観察により確認した。尚、ブロー成形後の厚肉容器中にボイドの存在がなければ、一次ブロー成形体には当然ボイドは存在しない。
(4)耐衝撃性評価
厚肉容器壁部から試験片(長さ80mm×幅80mm)を切り出し、島津製作所(株)製高速面衝撃試験機「ハイドロショットHYM−1」を用いて、温度23℃、相対湿度50%、2m/secの衝撃速度、先端が半径6.35mmの半球状である撃芯、および受台穴直径25.4mmの条件下で衝撃を与えたときの破壊エネルギー(J)を測定し、1mm当たりのエネルギー(J/mm)に換算した。
(5)胴部肉厚および延伸倍率の確認
プリフォームにマーキングを行い、該マーキング部におけるプリフォームとブロー成形された容器の胴部肉厚を測定し、また肉厚変化率から延伸倍率を見積もった。かかるマーキングはプリフォームの胴部の上部、中央部、および下部のそれぞれにおいて所定の3箇所(容器胴部における上面、側面、および底面に対応する)において行った。胴部肉厚および延伸倍率においては、その平均値(数平均値)および最大値と最小値との差(肉厚ムラ)を求めた。
[I]プリフォームの作成について
[参考例1〜4]
表1に記載の樹脂を用い、また図1に示す胴部肉厚25mmのプリフォームを射出成形した。表1記載の樹脂ペレットを160℃で4時間熱風循環式乾燥機により乾燥した。乾燥後、型締め力12700kN、シリンダー径110mmφの射出成形機(日本製鋼所製J1300E−C5)によりシリンダー温度270℃、金型温度約10℃で成形を行なった。かかる金型温度をチラーユニットにより10℃に冷却された水を循環することにより得た。また射出速度は110cm3/sec、保圧は12MPaで20secであった。
金型内の冷却時間は20秒とし、冷却後得られた成形品を金型から取り出し、熱電対を内部に直接突き刺す方法により、取り出し直後のプリフォーム胴部中央部の内部温度を測定した。温度はいずれの場合も約240℃であった。金型から取り出しされたプリフォームの内壁面にチラーユニットで10℃に冷却された水を連続的に150秒間噴射した。その結果プリフォーム内部に蓄積された余熱がプリフォーム外壁面の温度を再び上昇させ、サーモグラフィーにより測定されたプリフォーム胴部中央部の温度はいずれの場合も約170℃であった。
前記の150秒間の水噴射の後、10℃の水が連続的に供給された浴槽中にプリフォーム成形品を浸漬し、成形品を完全に冷却させた。冷却時間はいずれも5分程度行なった。得られたプリフォームにおけるボイドの生成および球晶の生成について確認を行い、その結果を表1に記載した。尚、プリフォーム底部のスプルー(ダイレクトゲート)は、最終の工程まで各種処理に装置に設置するに使用する治具取り付け部として利用し、最終的に
容器が得られた後超音波カッターにて切断した。
Figure 2005254756
[II]プリフォームの加熱について
前記[I]のプリフォームの作成においてボイドおよび球晶の生成がなかったプリフォームのうちPF−1〜3を使用して、プリフォームの加熱条件について検討した。予備加熱においては記載された温度に調節された熱風循環式乾燥機中に保管することによりプリフォームの加熱を行った。その後1kWのセラミック赤外線ヒーターを出力約20%で使用することにより内壁面側の加熱を、一方で、平行に配置された1kWの石英ヒーター計20本を出力20%で使用し、かかるヒーター間にプリフォームを自転させながら配置することにより外壁面側の加熱を行った。さらにかかる最終加熱工程においては外壁面側の過熱を防止するために送風ブロアーにより空気を送風した。加熱条件の内容を表2に示した。最終加熱後におけるプリフォームの外壁面、内部、および内壁面の各部の温度は、プリフォームのほぼ中央部において熱電対により測定した。内部の温度は予めドリルによりあけられた孔部(直径2mm)に熱電対を挿入して測定した。かかる温度測定を行った後、同様の条件で加熱されたプリフォームに口部より、約13.5倍の面倍率となるよう3MPaで圧力タンク内に蓄えられた所定量の圧縮空気を該圧力タンクのバルブを開放することにより吹き込み、自由ブロー体の形成状態を観察した。表2には、一例としてPF−1の結果を示す(いずれの場合も温度はほぼ同程度であり、また自由ブロー体の形成の挙動も同様であった)。
Figure 2005254756
[III]厚肉容器の製造
[実施例1〜3、および比較例1]
前記プリフォームPF−1〜PF−4を用いて、図2に記載された形状の厚肉容器をブロー成形法により製造を試みた。かかる容器はプリフォームとして図1に示された形状(胴部肉厚:25mm、最底部における厚み:5mm、外壁部における直径(外径):200mm、内径:150mm、胴部の高さ:310mm、口部の高さ:48mm、目付け量
約5660g、)のものを用い、表2に記載の加熱条件1によりプリフォームの加熱を行い、該加熱後ブロー成形用の金型内に該プリフォームを配置した(図3[3−A])。
かかる配置直後に約12.5倍の面倍率となるよう3MPaで圧力タンク内に蓄えられた所定量の圧縮空気を該圧力タンクのバルブを開放することにより吹き込み、自由ブロー体の成形行った(図3[3−B])。かかる吹き込み後の内部圧力は約1MPaであった。かかる成形後直ちに型底部の油圧スライドコアをスライドさせて、口部中心軸方向に自由ブロー体を圧縮し、扁平形状かつその投影面が円形のブロー成形体とした。このとき圧縮率は3.5倍であった。かかる圧縮においてはブロー成形体中の圧力が約1MPaとなるよう圧力制御弁により調整した(図3[3−C]、図4[4−A])。
かかるブロー成形体の形成後直ちに成形体の側面(上面の凸部または下面の凹部が同じとなる側:“縦側”とする)に位置する油圧スライドコアを両側共にスライドさせてブロー成形体の形状を変形させた。かかる変形においては圧縮空気の圧力を3MPaとして常時加圧し、金型表面で滑りを生じさせつつ横方向にさらに膨らませるようにブロー成形体の変形を行った(図4[4−B])。スライドコアを所定量移動させた後直ちに、ブロー成形体内の圧力を制御バルブにより減圧し1MPaとした。かかる1MPaの圧力に制御
した状態で、成形体の前記側面と直角方向(“横側”とする)に位置する油圧スライドコアを両側共にスライドさせてブロー成形体の形状をさらに変形させた。縦側および横側の油圧スライドコアの動作が終了した後、最終形状を付与させる目的で3MPaの圧縮空気
でブロー成形体内を加圧した(図4[4−C])。横側のスライドコアを所定量移動させた後、圧縮空気経路のバルブを一部開放し、圧縮空気が内部循環するようにした。さらにかかる圧縮空気に水のミストを混合し、ブロー成形品の内部を冷却した。冷却は20sec間行い、その後金型から取り出した。金型の温度は160℃であり、またいずれのスライドコア表面部においてもシリコーンオイルを予め塗布し、金型表面に滑り性を付与して前記ブロー成形を行った。尚、プリフォームPF−1〜PF−3については厚肉容器を得ることができたものの、PF−4についてはブロー成形をすることができなかった。
得られた厚肉容器(プリフォームPF−1〜PF−3)について、前記の評価を行った。かかる評価結果を表3に示した。
Figure 2005254756
前記表3から明らかなように本発明のプリフォームの冷却方法および加熱方法からのプリフォームを所定の形状にブロー成形し、本発明の要件を満足する厚肉容器を製造することにより、厚肉でありかつ耐衝撃性の良好な厚肉容器が得られることが分かる。さらに市販されている4種6層の3mm厚のポリエチレン系タンク(ポリエチレン樹脂層/リサイクル混合樹脂層/接着層/ガスバリアー層/接着層/ポリエチレン樹脂層)を同様に評価したところ耐衝撃性は10J/mmであり、本発明の厚肉容器が極めて良好な耐衝撃性を有していることが分かった。また肉厚ムラの点から殊に前記樹脂1および樹脂2が好適であることが分かる。
[IV]d2−d1(g/cm3)の値と耐衝撃性との関係
前記PF−1のプリフォームを加熱条件1で加熱した後、直ちにブロー成形用の型内に配置し、その直後に約4〜20倍の面倍率となるよう所定量の圧縮空気を初期圧力3MPaで前記と同様の手法で吹き込み自由ブロー体の成形行った。各自由ブロー体から任意に前記(4)同様に試験片を切り出し耐衝撃性評価を行った。耐衝撃性の評価は23℃および−38℃のいずれかで行った。−38℃における評価はポリエチレンビーズを充填したステンレス容器の該ビーズ中に試験片を埋め、容器ごと−38℃の冷凍庫中に保管して平衡状態とした。試験時には冷凍庫から試験片をすばやく取出し、衝撃試験機に装着し試験を実施した。一方、それぞれの試験片におけるd2−d1(g/cm3)は、耐衝撃性評価
後のサンプルを前記(1)の評価方法と同様にd2およびd1をそれぞれ測定し算出した。得られた結果を図5に示した(尚、図5中、密度差0の点のみ、射出成形により製造した2mm厚板状成形品の値である)。
以上から明らかなように本発明の厚肉容器は、PEN系樹脂からなり高剛性、高耐衝撃性、良好な耐薬品性(内容物による変質や強度低下が少ない)、および良好なガスバリヤー性を有し、かつ扁平形状であって、幅広い分野に適用可能である。本発明の厚肉容器は、例えば燃料用、ヒートポンプ用熱媒体用、圧力伝達媒体用、潤滑油用、飲料用(濃縮還元用の原料を含む)、培養用、農薬用、水耕栽培用および工業用試薬用の容器などの幅広
い用途への適用が可能である。さらに本発明の厚肉容器の製造方法は、新規な延伸ブロー成形法によって前記厚肉容器を製造することにより、製造工数やコストが削減され、かつ幅広い分野において有用な製造方法を提供するものである。以上から明らかなように本発明の厚肉容器は幅広い産業分野において利用可能であり、その奏する工業的効果は格別である。
実施例にて製造した胴部肉厚25mmの有底円筒状プリフォームの中心軸を含む面における断面形状を示す(該中心軸に対して対称形である)。スプルー(ダイレクトゲート)は、ブロー成形品を得た後切断したが、図面上はかかるスプルーは省略してある。 実施例にて製造した厚肉容器(内容積約70L)の図である。
[2−A]該容器の正面図である(図面横方向が容器横側、図面縦方向が容器縦側である)。
[2−B]該容器の側面図である(図2−A下側から観察した図である)。
実施例におけるブロー成形工程の中心軸を含む断面から見た概略図を示す。スプルー(ダイレクトゲート)は、ブロー成形品を得た後切断したが、図面上はかかるスプルーは省略してある。スプルーは圧縮方向に可動自在かつ最終的に底面側の油圧スライドコアに一体化するジグに取り付けられ、プリフォームは口部および底面部の2箇所により型内に固定されているが、かかるジグも図面上省略されている。
[3−A]加熱後のプリフォームを型内に配置した工程を示す図である。
[3−B]配置後のプリフォームに圧縮空気を吹き込み、一次ブロー成形体(自由ブロー体)を形成する工程を示す図である。
[3−C]一次ブロー成形体(自由ブロー体)を形成後、底面側の油圧スライドコアを用いて一次ブロー成形体(自由ブロー体)を所定量圧縮する工程を示す図である。
実施例におけるブロー成形工程の容器正面側(口部側)から見た概略図を示す。
[4−A]前記工程[3−C]終了後の状態を示す図である。
[4−B]前記工程[3−C]終了後、油圧スライドコアを用いて容器縦方向にブロー成形体を圧縮すると共に、圧縮空気の圧力を増して金型表面で滑らせながら横方向にさらに延伸する工程を示す図である。
[4−C]前記工程[4−B]終了後、さらに油圧スライドコアを用いて容器縦方向にブロー成形体を圧縮し、最終形状を付与する工程を示す図である。
実施例で測定された密度差(d2−d1(g/cm3))と耐衝撃性との相関を示す図である。
符号の説明
1 胴部25mm厚プリフォーム本体(外径(直径)191mm、内径(直径)144mm、高さ345mm)
2 プリフォームの胴部(平行部分の肉厚25mm、高さ310mm)
3 プリフォームの外壁面
4 プリフォームの内壁面
5 ゲート(ダイレクトゲート:直径10mm)
6 プリフォームの口部(肉厚8mm、高さ48mm)
7 プリフォームの口部フランジ構造
8 中心軸
21 厚肉容器本体
22 厚肉容器口部
23 厚肉容器胴部
24 厚肉容器口部周りへこみ部分
25 厚肉容器胴部上面
26 厚肉容器底面側角部へこみ部分(高さ約45mm)
27 厚肉容器側面(下側)
28 厚肉容器底面側角部へこみ部分(高さ約45mm)
29 厚肉容器底面側角部突き出し部分(高さ約45mm)
30 厚肉容器底面側角部突き出し部分(高さ約45mm)
41 プリフォーム
42 ブロー成形用金型
43 底面側圧縮用スライドコア
44 一次ブロー成形体(自由ブロー体)
45 圧縮空気の吹き込み
46 自由ブロー体を圧縮して得られたブロー成形体
47 底面側圧縮用スライドコアの移動および圧縮作用
48 容器胴部縦側面圧縮用スライドコア
49 容器胴部横側面圧縮用スライドコア
50 容器胴部縦側面圧縮用スライドコア
51 容器胴部横側面圧縮用スライドコア
52 容器胴部縦側面圧縮用スライドコアの移動および圧縮作用
53 容器胴部縦側面圧縮用スライドコアの移動および圧縮作用
54 圧縮および圧縮空気による金型表面での滑りを伴う延伸作用
55 圧縮作用後のブロー成形体
56 容器胴部横側面圧縮用スライドコアの移動および圧縮作用
57 容器胴部横側面圧縮用スライドコアの移動および圧縮作用
58 最終形状が付与されたブロー成形体

Claims (18)

  1. (1)ポリエチレンナフタレート系樹脂(樹脂−I)からなる有底筒状のプリフォームであって、その胴部の平均肉厚が15〜50mmであり、少なくともその胴部において実質的に球晶およびボイドを含有しないプリフォームを準備する工程(工程A)、
    (2)該プリフォームをブロー成形可能に状態調節する空間内に、プリフォームを配置する工程(工程B)、
    (3)前記工程Bの空間内に配置されたプリフォームを、ブロー成形可能に状態調節する工程(工程C)、
    (4)ブロー成形品を形成するための型(型−ii)内において、ブロー成形可能に状態調節されたプリフォームを面倍率8〜20倍の範囲において膨らませ、一次ブロー成形体を形成する工程(工程D)、
    (5)該一次ブロー成形体を冷却固化させることなく、少なくとも口部の中心軸に平行な方向において1.2〜50倍圧縮する工程(工程E)、
    (6)前記工程Eにおける圧縮によりブロー成形品を所定の形状にするか、もしくは必要により前記工程Eの後ブロー成形品にさらに流体を吹き込むことによりブロー成形品を所定の形状にする工程(工程F)、並びに
    (7)該形成後のブロー成形品を型内より取り出す工程(工程G)
    からなる延伸ブロー成形法により製造されたことを特徴とするポリエチレンナフタレート系樹脂からなる扁平形状を有する口部付き厚肉容器。
  2. 該一次ブロー成形体は実質的に球晶およびボイドを含有せず、かつ該一次ブロー成形体の胴部の密度からプリフォームの密度を差し引いた密度差が0.01〜0.03g/cm3
    である請求項1に記載の厚肉容器。
  3. 前記工程Dは、型−ii内においてブロー成形可能に状態調節されたプリフォームをほぼ周囲の面に拘束されることのない状態下で面倍率8〜20倍の範囲において膨らませ、自由ブロー体を形成する工程(工程D’)である請求項1または請求項2のいずれか1項に記載の厚肉容器。
  4. 前記工程Cは、前記工程Bの空間内に配置されたプリフォームを、Tg−20(℃)〜Tg(℃)の範囲となるようプリフォームを予備加熱する工程(工程C−1)、およびさらにプリフォームを、Tg+5(℃)〜Tg+70(℃)の範囲となるよう最終加熱してブロー成形可能に状態調節する工程(工程C−2)からなる請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の厚肉容器。
  5. 前記厚肉容器は、その胴部において実質的に球晶およびボイドを含有しないことを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の厚肉容器。
  6. 前記厚肉容器は、その平均肉厚が1〜3mmであることを特徴とする請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載の厚肉容器。
  7. 前記厚肉容器は、その内容積が5L以上であることを特徴とする請求項1〜請求項6のいずれか1項に記載の厚肉容器。
  8. 前記厚肉容器は、そのブロー成形された胴部において、口部の中心軸に平行な方向の長さをHとし、該中心軸方向の投影面における最大の長さをLとしたとき、L/Hで表される扁平率が2〜50の範囲にあることを特徴とする請求項1〜請求項7のいずれか1項に記載の厚肉容器。
  9. 前記厚肉容器は、実質的に球晶およびボイドを含有せず、かつ該容器の胴部の密度から、プリフォームの密度を差し引いた密度差が0.01〜0.03g/cm3であることを特
    徴とする請求項6〜請求項8のいずれか1項に記載の厚肉容器。
  10. 前記ポリエチレンナフタレート系樹脂(樹脂−I)は、該ポリエステルを構成する全ジカルボン酸成分量100モル%中2,6−ナフタレンジカルボン酸成分が85〜97モル%であり、かつ全ジオール成分量100モル%中エチレングリコール成分が85〜100モル%であることを特徴とする請求項1〜請求項9のいずれか1項に記載の厚肉容器。
  11. 前記ポリエチレンナフタレート系樹脂(樹脂−I)は、該ポリエステルを構成する全ジカルボン酸成分量100モル%中2,6−ナフタレンジカルボン酸成分85〜97モル%、並びにイソフタル酸成分およびテレフタル酸成分から選択される少なくとも1種のジカルボン酸成分3〜15モル%であることを特徴とする請求項10に記載の厚肉容器。
  12. 前記口部はネジまたはフランジ構造を有する請求項1〜請求項11のいずれか1項に記載の厚肉容器。
  13. ポリエチレンナフタレート系樹脂(樹脂−I)からなり、次の要件(i)〜(v);(i)胴部の平均肉厚が1〜3mm、(ii)内容積が5L以上、(iii)該容器の胴部において口部の中心軸に平行な方向の長さをHとし、該中心軸方向の投影面における最大長さをLとしたとき、L/Hで表される扁平率が2〜50の範囲、(iv)該胴部の測定密度(d2)から該樹脂−Iの真密度(d1)を差し引いた密度差(d2−d1)が0.01〜0.03g/cm3、並びに(v)該胴部は実質的に球晶およびボイドを含有しない、を
    満足する扁平形状を有する口部付き厚肉容器。
  14. ポリエチレンナフタレート系樹脂(樹脂−I)からなる扁平形状を有する厚肉容器の製造方法であって、
    (1)ポリエチレンナフタレート系樹脂(樹脂−I)からなる有底筒状のプリフォームであって、その胴部の平均肉厚が15〜50mmであり、少なくともその胴部において実質的に球晶およびボイドを含有しないプリフォームを準備する工程(工程A)、
    (2)該プリフォームをブロー成形可能に状態調節する空間内に、プリフォームを配置する工程(工程B)、
    (3)前記工程Bの空間内に配置されたプリフォームを、ブロー成形可能に状態調節する工程(工程C)、
    (4)ブロー成形品を形成するための型(型−ii)内において、ブロー成形可能に状態調節されたプリフォームを面倍率8〜20倍の範囲において膨らませ、一次ブロー成形体を形成する工程(工程D)、
    (5)該一次ブロー成形体を冷却固化させることなく、少なくとも口部の中心軸に平行な方向において1.2〜50倍圧縮する工程(工程E)、
    (6)前記工程Eにおける圧縮によりブロー成形品を所定の形状にするか、もしくは必要により前記工程Eの後ブロー成形品にさらに流体を吹き込むことによりブロー成形品を所定の形状にする工程(工程F)、並びに
    (7)該形成後のブロー成形品を型内より取り出す工程(工程G)
    からなることを特徴とするポリエチレンナフタレート系樹脂からなる扁平形状を有する厚肉容器の製造方法。
  15. 該一次ブロー成形体は実質的に球晶およびボイドを含有せず、かつ該一次ブロー成形体の胴部の密度からプリフォームの密度を差し引いた密度差が0.01〜0.03g/cm3
    である請求項14記載の製造方法。
  16. 前記工程Dは、型−ii内においてブロー成形可能に状態調節されたプリフォームをほぼ周囲の面に拘束されることのない状態下で面倍率8〜20倍の範囲において膨らませ、自由ブロー体を形成する工程(工程D’)である請求項14記載の製造方法。
  17. 前記工程Cは、前記工程Bの空間内に配置されたプリフォームを、Tg−20(℃)〜Tg(℃)の範囲となるようプリフォームを予備加熱する工程(工程C−1)、およびさらにプリフォームを、Tg+5(℃)〜Tg+70(℃)の範囲となるよう最終加熱してブロー成形可能に状態調節する工程(工程C−2)からなる請求項14記載の製造方法。
  18. 前記工程Aのプリフォームは、胴部の平均肉厚が15〜50mmである有底円筒状のプリフォームを形成するための型(型−i)内に、ポリエチレンナフタレート系樹脂(樹脂−I)を射出充填して製造されてなるプリフォームである請求項14記載の製造方法。
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