JP2005249849A - 透過型スクリーン - Google Patents

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Akira Mitsui
彰 光井
Takashige Yoneda
貴重 米田
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悟 高木
Minoru Sekine
実 関根
Toshihiko Higuchi
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Abstract

【課題】本発明は、高剛性、高平坦性を有し、プロジェクタからの映像をより高コントラストで表示することが可能な、薄型の透過型スクリーンを安価に提供する。
【解決手段】背面投射型プロジェクションテレビに用いる透過型スクリーンにおいて、該透過型スクリーンはガラス基板を有し、該ガラス基板の前面に光反射防止材を有し、該ガラス基板の背面に無機質コーティングからなる光拡散層を有することを特徴とする透過型スクリーン。
【選択図】図1

Description

本発明は、背面投射型(リア型)のプロジェクションテレビに使用できる透過型スクリーンに関する。
従来、液晶パネル等の映像投射装置からの映像を背面からスクリーン上に拡大投射して、前面から映像を観察する背面投射型プロジェクションテレビには、CRTプロジェクタを具備するものが使用されてきた。近年、液晶を用いた光バルブ、DMD(Digital−Micromirror−Device)、LCOS(Liquid−Crystal on Silicon)等のような、より高画質を提供できる高精細タイプのプロジェクタを具備するプロジェクションテレビが実用化されているが、プロジェクタからの映像をより高コントラストで表示することが可能な透過型スクリーンが要求されている。
一般的に、液晶光バルブ等のプロジェクタからの映像を背面からスクリーン上に投射する背面投射型プロジェクションテレビに用いられる透過型スクリーンは、画面全体を均一に明るくするために用いられるフレネルレンズシートと、観察者側の左右方向(水平方向)の視野角を広げるために用いられるレンチキュラーレンズシートとを組み合わせ、さらに、レンチキュラーレンズシートの前面に光拡散板を設けた構成からなる。該光拡散板は、垂直方向に映像光を拡散させ、観察者側の上下方向(垂直方向)にプロジェクタからの映像光をある程度屈折拡散させる作用を有し、スクリーン上に映像を結像させるために用いられる。
なお、本明細書において、「前面」とは、透過型スクリーンをプロジェクションテレビに設置したときに観察者側になる面を言う。また、「背面」とは、透過型スクリーンをプロジェクションテレビに設置したときに投射機側になる面を言う。
プロジェクションテレビの高精細化に対応するために、より細かいレンチキュラーレンズのピッチを有する構造のレンチキュラーレンズシートを備える透過型スクリーンや、レンチキュラーレンズシートの前面に映像光の通過しない非集光部の領域に外光を吸収するストライプ状の遮光層を設けた透過型スクリーン等のプロジェクタからの映像をより高コントラストで表示することが可能な透過型スクリーンが提案されている。
一方、従来の光拡散板は、粉末ガラス、微粉砕ガラス繊維、酸化チタン、炭酸カルシウム、二酸化珪素、酸化アルミニウム、無機微粉末または架橋重合体樹脂微粒子等の拡散剤を少なくとも1種類以上を練り込んだ、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、アクリル−スチレン共重合樹脂等の樹脂を押出成形によって板状に成形したものが用いられている。また、透過型スクリーンに用いるフレネルレンズシートやレンチキュラーレンズシート等の他の部材も樹脂により形成されている。しかしながら、これらの樹脂板を組み合わせてなる透過型スクリーンは、気圧の変化(例えば、部屋のドアの開け閉め時等)やテレビセットの移動(例えば、引越し等)等により、反りが発生するため、レンチキュラーレンズシートとフレネルレンズシートが擦れて、レンズが削られるという問題がある。また、これらの透過型スクリーンは、平坦性を十分に確保することが困難であり、スクリーンにうねりが存在することにより、画質の低下や未投影時の外観の悪さ等が問題となっている。また、一般的に樹脂板の厚板化は困難であるため、樹脂によるスクリーンは大画面化によるコストの上昇が大きいという問題もある。
また、レンチキュラーレンズシートの前面側に、外光の反射を低減して、コントラストを向上させるため、さらに、低反射板を挿入した透過型スクリーンが製品化されている。しかし、上述のような理由で、低反射板が他の部材と擦れてしまう問題がある。
このような問題を解決する技術として、特許文献1に、樹脂基板ではなく、ガラス基板とレンチキュラーレンズシートが積層されてなる透過型スクリーンが提案されている。しかし、特許文献1では、拡散剤は、粘着剤またはガラス基板に混入して用いているが、粘着剤層が光拡散板として機能するには層の厚さが薄く高い拡散性能は得られない。また、接着剤の層を厚くすると、平坦性、均一性、剛性の確保が困難になる。また、ガラス基板に拡散剤を混入する場合、コストが高くなるという問題がある。
また、特許文献2には、ガラス基板と、ガラス基板の表面に形成された誘電体膜(光反射防止層)と、該誘電体膜上に積層された光拡散層とを有する透過型スクリーンが記載されている。この透過型スクリーンは、誘電体膜がガラス基板上に蒸着されて形成され、光拡散層が誘電体膜(またはカップリング面)上で樹脂を硬化することにより形成されており、ガラス基板が外部から強い衝撃を受けた場合、ガラスが割れるおそれがある。また、樹脂性の光拡散層は、十分な拡散性能を維持するために、ある程度層を厚くする必要があり、スクリーン全体の厚さが大きくなるという問題がある。また、該光拡散層が、長時間、液晶光バルブ等のプロジェクタからの映像光を透過することにより、次第に劣化し十分な拡散性能を維持できなくなる可能性がある。
特開2002−357868号公報 特開2003−84111号公報
本発明は、上記問題点を解決するためになされたもので、高剛性、高平坦性を有し、プロジェクタからの映像をより高コントラストで表示することが可能な、薄型の透過型スクリーンを安価に提供することを目的とする。また、上記の特性を有し、さらに安全性にも優れた透過型スクリーンを提供することを目的とする。
本発明者らは、高剛性かつ高平坦性であるガラス基板を用い、該ガラス基板の前面に外光の反射を低減する光反射防止材を有し、該ガラス基板の背面に薄い膜厚で高い拡散性能が得られる無機質コーティングからなる光拡散層を有することにより、高剛性、高平坦性を有し、プロジェクタからの映像をより高コントラストで表示することが可能であり、透過型スクリーンの厚さを薄くできることを知見した。また、上記光反射防止材が、樹脂フィルム上に少なくとも1層以上の低反射層を有する樹脂フィルムから形成されることにより、ガラス基板が外部からの衝撃を受けて割れた場合に、ガラスの飛散を防止することができることを知見し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明は、以下の(1)〜(5)を提供する。
(1)背面投射型プロジェクションテレビに用いる透過型スクリーンにおいて、該透過型スクリーンはガラス基板を有し、該ガラス基板の前面に光反射防止材を有し、該ガラス基板の背面に無機質コーティングからなる光拡散層を有することを特徴とする透過型スクリーン。
(2)前記光反射防止材が、樹脂フィルム上に少なくとも1層以上の低反射層を有する光反射防止フィルムであることを特徴とする上記(1)に記載の透過型スクリーン。
(3)前記ガラス基板の可視光透過率が、25〜95%であることを特徴とする上記(1)または(2)に記載の透過型スクリーン。
(4)前記ガラス基板の可視光透過率が、25〜65%であることを特徴とする上記(3)に記載の透過型スクリーン。
(5)前記光拡散層の背面に、レンチキュラーレンズシートを有し、該レンチキュラーレンズシートの背面にフレネルレンズシートを有することを特徴とする上記(1)〜(4)のいずれかに記載の透過型スクリーン。
本発明の透過型スクリーンは、高剛性、高平坦性を有し、プロジェクタからの映像をより高コントラストで表示することが可能であり、薄型で、安価である。また、上記光反射防止材が、樹脂フィルム上に少なくとも1層以上の低反射層を有する光反射防止フィルムである場合には、上記の特性を有し、さらに安全性にも優れる。
以下、本発明の透過型スクリーンを詳細に説明する。
図1は、本発明の透過型スクリーンの一態様を示した概略断面図である。
本発明の透過型スクリーン10は、ガラス基板11の前面に光反射防止材12を有し、背面に無機質コーティングからなる光拡散層13を有することを特徴とする。
本発明の透過型スクリーンは、ガラス基板を用いることにより、高剛性、高平坦性を実現する。高剛性であることにより、従来の樹脂板の透過型スクリーンのように、気圧の変化や外部からの衝撃等により、反りが発生することがなく、レンチキュラーレンズシートとフレネルレンズシートが擦れて、レンズが削られるという問題がない。また、高平坦性であることにより、スクリーンにうねりが存在しないため、画質の低下がなく、未投影時の外観が良く、高級感を演出することができる。また、ガラス基板は大型化するのが容易なので、大画面化する場合にコストの面で有利である。
<ガラス基板>
本発明におけるガラス基板は、特に限定されないが、ソーダライムガラスを基本組成としたガラスが、コストの点で好ましい。ガラス中の鉄分を通常より減らした高光透過ガラスや、光吸収剤を添加した着色ガラスも、その光学設計に応じて使用できる。ガラス基板は高い剛性を有しているので、該ガラス基板上に光反射防止材および光拡散層を密着して接着でき、高剛性の透過型スクリーンとすることができる。該透過型スクリーンに、さらに、レンチキュラーレンズシートおよびフレネルレンズシートを密着して積層し、高剛性の一体型透過型スクリーンとすることもできる。また、高剛性とすることにより、テレビの筐体への取り付けも容易になる。また、従来の樹脂板の透過型スクリーンのように、気圧の変化や外部からの衝撃等により、反りが発生することがなく、レンチキュラーレンズシートとフレネルレンズシートが擦れて、レンズが削られるという問題がない。
また、本発明におけるガラス基板に、強化ガラスを用いることにより、スクリーンの強度を向上し、破損しにくいスクリーンを提供できるので好ましい。また、本発明におけるガラス基板は、曲面に曲げたガラスも使用可能である。ガラス自体の剛性が高いので、曲面をそのまま維持したスクリーンを提供できる。
本発明におけるガラス基板は、可視光透過率が、25〜95%であることが好ましい。可視光透過率がこの範囲になるように、用途に応じたガラス基板の厚さを用いることができ、多様な要求特性に応じてガラス基板の厚さを調整する。一方、可視光透過率が25%未満では、映像が暗くなりすぎ、95%超ではコストが高くなる。より好ましくは、可視光透過率が25〜65%である着色ガラスを用いることである。可視光透過率がこの範囲であれば、外光の反射を低減し、コントラストを高くすることができ、また、映像が暗くて見難くなることがない。特に好ましくは、可視光透過率が、40〜60%である。この範囲であれば、プロジェクタからの映像をより高コントラストで表示することが可能であり、明るさのバランスがよい優れた画質が得られる。
なお、本明細書において可視光透過率の測定は、JIS R3106−1998に準拠して行った。
本発明におけるガラス基板の幾何学的板厚は、1.5〜6mmが好ましい。この範囲であれば適度な可視光透過率で、十分な強度を備えた透過型スクリーンが得られる。この特性により優れる点で、ガラス基板の幾何学的板厚は、2〜5mmがより好ましく、2.5〜4mmが特に好ましい。
<光反射防止材>
本発明における光反射防止材は、外部環境の光の反射を低減できるものであれば特に限定されず、後述する低反射層であってもよいが、樹脂フィルム上に少なくとも1層以上の低反射層を有する光反射防止フィルムであることが好ましい。該光反射防止フィルムの樹脂フィルムの低反射層がない側を、接着剤等を用いてガラス基板の前面に貼り合わせることが好ましい。こうすることにより、外部環境の光の反射を低減し、背面からスクリーン上に投射される映像のコントラストを高くすることができ、ガラス基板が割れた場合の飛散防止フィルムとしても働く。
上記低反射層としては、2層以上の高屈折率層(光吸収層)と低屈折率層を組み合わせた多層膜が好ましい。上記高屈折率層の材料としては、酸化チタン、酸化ニオブ、酸化タンタル、窒化チタン、窒化ジルコニウム、窒化ハフニウム、酸窒化チタン、スズドープ酸化インジウム(ITO)、酸化亜鉛が、その高い屈折率、耐久性の点で好ましい。また、窒化チタン、窒化ジルコニウム、窒化ハフニウム、酸窒化チタン、ITO、酸化亜鉛を用いることにより、帯電防止特性を付与できる。上記低屈折率層の材料としては、酸化ケイ素、フッ化マグネシウム、フッ化アルミニウムが、その低屈折率、耐久性の点で好ましい。
上記低反射層の幾何学的膜厚(以下、単に「膜厚」と言う。)は、材料の強度や可視光透過率により異なるので、材料に合わせて適宜調整されるが、一般的には、10nm〜100μmが好ましい。
上記高屈折率層と低屈折率層を組み合わせてなる低反射層の構成としては、好ましくは、樹脂フィルム側から順に、
(1)窒化チタンまたは酸窒化チタン(膜厚:5〜20nm)/酸化ケイ素(膜厚:60〜120nm)の2層系の低反射層、
(2)窒化チタンまたは酸窒化チタン(膜厚:15〜30nm)/酸化イットリウム、酸化ジルコニウム、酸化スズ、酸化タンタル、酸化チタン(膜厚:10〜40nm)/酸化ケイ素(膜厚:50〜90nm)の3層系の光反射防止層、および、
(3)酸化チタン、酸化ニオブまたは酸化タンタル(膜厚:1〜2nm)/酸化ケイ素(膜厚:3〜5nm)/酸化チタン、酸化ニオブ、酸化タンタル(膜厚:8〜15nm)/酸化ケイ素(膜厚:70〜120nm)の4層系の低反射層等が好適に挙げられる。
本発明における光反射防止材としては、例えば、後述する特開平9−156964号公報に記載の光反射防止材や、国際公開第01/70493号パンフレットに記載の機能性積層フィルム等が好ましい。
以下、本発明における光反射防止材の好適な例を詳細に説明する。
(光反射防止材の第1の態様)
本発明における光反射防止材の好適な一例は、基体上に基体側から、光吸収膜と、シリカ膜とをこの順に形成してなる、観察者側のシリカ膜側からの入射光の反射を低減させる光反射防止材において、光吸収膜の膜厚が5〜25nmであり、かつ、シリカ膜の膜厚が70〜110nmであることを特徴とする光反射防止材(以下、「第1の光反射防止材」という)である。なお、第1の光反射防止材に用いる基体は、樹脂フィルムが好ましい。樹脂フィルムの材料としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂、ポリスチレン樹脂、アクリル樹脂、アクリル−スチレン共重合樹脂、ポリカーボネート樹脂、塩化ビニル樹脂、フッ素樹脂等が、強度に優れる点で好ましい。中でも、高い透明性と耐光性を有するという点で、フッ素樹脂がより好ましい。
上記光吸収膜としては、その上に形成されるシリカ層との光干渉効果により、表面反射率を実質的に低減させる材料を用いる。
上記光吸収膜としては、チタン、ジルコニウム、およびハフニウムからなる群から選ばれる少なくとも1種の金属や、該金属の窒化物を主成分とするもの等が挙げられ、中でも、チタン、ジルコニウム、およびハフニウムからなる群から選ばれる少なくとも1種の金属の窒化物を主成分とするものが、可視光領域における屈折率および消衰係数の分散関係から好ましく、その光学定数の値により、可視光領域での低反射領域が広がるという特長がある。
光吸収膜に2種以上の材料を用いる場合、1)複合材料として用いてもよく、2)異なる材料からなる膜を合計膜厚が5〜25nmとなるように積層して用いてもよい。
さらに、チタンの窒化物を主成分とする膜は、その光学定数の可視光領域における値がシリカ膜とよくマッチングして反射率を低減させるとともに、吸収係数の値が適当で、ほどよい光吸収率を得るための膜厚が数nm〜数十nmの範囲となるため、生産性の点からも再現性の点からも特に好ましい。
第1の光反射防止材における光吸収膜の膜厚は、低反射を実現させるため5〜25nmであり、かつ、シリカ膜の膜厚は、やはり反射防止の点から70〜110nmであることが重要である。いずれかの層の膜厚がこの範囲を逸脱すると、可視光領域における充分な反射防止性能が得られなくなる。特に、光吸収膜の膜厚範囲としては、7〜20nmであることが可視光領域にわたる低反射性を実現できることから好ましい。
さらに、第1の光反射防止材における光吸収膜の膜厚は、7〜15nmであることが望ましい。膜厚が7nm未満では、長波長側の反射率が上昇する傾向が顕著となり、また、膜厚が15nmを超えると、低反射波長領域が狭くなる。
また、光吸収膜の膜厚は8nm超13nm未満であること、特に、8nm超10nm以下であることが好ましい。光吸収膜の膜厚が8nm以下では、長波長側の反射率が大きくなる傾向が現れ、13nm以上では短波長側の反射率の立ち上がりが長波長側にずれるとともに、長波長側の反射率の立ち上がりが短波長側にずれて、低反射領域が狭くなる傾向にある。
また、シリカ膜(好ましくは屈折率1.46〜1.47のシリカ膜)の膜厚範囲としては、80〜100nmであることが低反射波長域を可視光領域の中心部に合わせることができることから好ましい。
シリカの膜厚は80nm超85nm以下であることが特に好ましい。シリカの膜厚が80nm以下では長波長側の反射率が大きくなる傾向が現れ、85nmを超えると短波長側の反射率の立ち上がりが長波長側にずれてくる。
第1の光反射防止材(基体を含む)における光吸収率は、シリカ膜側から入射する可視光に対して10〜35%であることが望ましい。光吸収率がこの範囲を逸脱する場合は、光吸収膜の膜厚範囲が不適当であり、または光吸収膜の光学定数が不適当であり、したがって、可視光領域における充分な反射防止性能が得られなくなる。
(光反射防止材の第2の態様)
本発明における光反射防止材の好適な一例は、また、基体上に基体側から、光吸収膜と、高屈折率透明膜と、シリカ膜とをこの順に形成してなる、観察者側のシリカ膜側からの入射光の反射を低減させる光反射防止材において、光吸収膜の膜厚が15〜30nmであり、高屈折率透明膜の膜厚が10〜40nmであり、かつ、シリカ膜の膜厚が50〜90nmであることを特徴とする光反射防止材(以下、「第2の光反射防止材」という)を提供する。なお、第2の光反射防止材に用いる基体は、樹脂フィルムが好ましい。樹脂フィルムの材料は上記と同様である。
第2の光反射防止材における高屈折率透明膜としては、屈折率が1.7以上の材料を用いることが好ましい。屈折率が1.7より小さいと、高屈折率透明膜を挿入したことによる反射防止性能の向上がほとんど見られなくなる。具体的な材料としては、例えば、Y23、ZrO2、ZnO、SnO2、Ta25、TiO2等を使用できる。
また、ITO等の透明導電膜も使用できる。この場合、表面抵抗は、光吸収膜層とこの透明導電膜層との並列抵抗で決まるため、光吸収膜、例えば窒化チタン膜のみで導電性を発現させる場合に比べて低抵抗化が容易となる。
第2の光反射防止材における光吸収膜としては、上述した第1の光反射防止材において好ましく用いられる材料が、同様に好ましく用いられる。
第2の光反射防止材における光吸収膜の膜厚は、低反射を実現させるため15〜30nmであり、高屈折率透明膜の膜厚は10〜40nm、かつ、シリカ膜の膜厚は、やはり反射防止の点から50〜90nmであることが重要である。いずれかの層の膜厚がこの範囲を逸脱すると、可視光領域における充分な反射防止性能が得られなくなる。
第2の光反射防止材(基体を含む)における光吸収率は、シリカ膜側から入射する可視光に対して30〜60%であることが望ましい。光吸収率がこの範囲を逸脱する場合、光吸収膜の膜厚範囲が不適当であり、または光吸収膜の光学定数が不適当であり、したがって、可視光領域における充分な反射防止性能が得られなくなる。
<光反射防止材の製造方法>
光反射防止材における光吸収膜、高屈折率透明膜およびシリカ膜の形成手法としては、一般的な薄膜形成手段を採用できる。例えば、スパッタリング法、真空蒸着法、CVD法、ゾルゲル法、スピンコート法等である。
特に、スパッタリング法は、膜厚の制御が比較的容易であること、低温基体上に形成しても実用的な膜強度が得られること、大面積化が容易なこと、いわゆるインライン型の設備を用いれば積層膜の形成が容易なこと、等の点から好ましい。また、光吸収膜として好ましいチタン、ジルコニウム、ハフニウムの窒化物が、好ましい光学定数を持つように成膜条件を調整することが比較的容易であることも有利な点である。
また、インライン型のスパッタリング装置を用いる場合には、搬送の幅方向の膜厚分布は、マスク板の設置やカソード磁石の磁場強度分布等によりある程度調整できる。このため、基体の周辺部の膜厚を中央部に比べてわずかに厚く設定することが可能となる。このような膜厚分布を基体上で持たせることにより、中央から画面の周辺部を見る場合に、光の斜め入射効果により反射色が黄色または赤色にずれる現象を緩和することができ、実用上好ましい。
真空蒸着法は基体加熱が必須となること、大面積化が困難なこと、よい窒化物を得るのが比較的難しいこと等が欠点であるが、比較的小さい、高温に耐える基体材料であれば、プロセスとしては従来より最も完成されている点で有利である。
CVD法はさらに高温を必要とし、膜厚分布の点から大面積化が困難であるが、よい窒化物を得るには優れた方法である。
ゾルゲル法は、よい窒化物を得るのは比較的困難であり、1枚ずつのバッチ処理となるが、設備投資が小さいため少量生産時にはコスト面で有利となる可能性がある。
湿式法のスピンコート法は、成膜コストに優れる。この場合、スピンコート液によっては、第1層として既に形成されている光吸収膜を侵食する場合があり、その結果所望の特性が得られない場合がある。例えば、0.1N塩酸、テトラエトキシシランおよびエチルアルコールからなるスピンコート液を用いる場合等は、第1層の保護膜として、耐久性の良い酸化膜や窒化膜をスピンコートの前に形成しておくことが好ましい。
これらの手法を組み合わせても本発明における光反射防止材を形成できる。例えば、第1層の光吸収膜を、比較的好ましい光学定数の得られやすいスパッタリング法により形成した後、高屈折透明膜および/またはシリカ膜を、湿式法のスピンコートにより形成できる。また、同様に、第1層の光吸収膜をCVD法により形成した後、高屈折透明膜および/またはシリカ膜を、成膜コストの優れる湿式法のスピンコートにより形成できる。
以上のように、本発明における光反射防止材の形成手法としては、上述の手法を含む各種の手法およびその組み合わせが考えられるが、これらに限定されない。
<光拡散層>
本発明における光拡散層は、ガラス基板の背面に形成された無機質コーティングからなることを特徴とする。すなわち、該光拡散層は無機質コーティングである。ここで、無機質コーティングとは、無機粒子としての拡散剤が分散された無機化合物溶液を塗布し加熱して形成される膜、および無機粒子としての拡散剤が分散された無機反応液に浸漬または無機反応液を塗布して、加熱しながら反応膜を成膜する方法(ゾルゲル法)により形成される膜を含む。
上記光拡散層を設けることにより、スクリーン上の映像の視野角を確保できる。さらに、該光拡散層は無機質コーティングで形成されることより、樹脂フィルム等で形成した場合よりも高い耐光性が得られ、また、高屈折率の材料を使用できるので、薄い膜厚で高い拡散性能が得られる。さらに、ガラス基板の中に光拡散剤を分散させるよりも安価で製造できる。
上記拡散剤としては、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム、酸化ニオブ、酸化タンタル、酸化スズ、酸化インジウム、炭酸カルシウム、二酸化ケイ素(シリカ)、酸化アルミニウム等が挙げられる。中でも、低コストで耐久性に優れる点から、酸化チタン、シリカ、酸化アルミニウムが好ましい。
上記拡散剤の粒径は0.1〜50μmが好ましい。この範囲であれば、適度な拡散性能を得るのに都合がよく、また均一に分散しやすいという点で有利である。この特性により優れる点で、0.2〜30μmがより好ましく、0.5〜15μmが特に好ましい。
本発明における光拡散層は、上記拡散剤を分散させたマトリックス剤をコーティングして得られる。
上記マトリックス剤としては、低融点ガラス、シリカ、アルミノシリケート、チタニア等が挙げられる。中でも、取扱い易く、価格が安価という点で、低融点ガラス、シリカが好ましい。
本発明における光拡散層は、拡散剤および無機化合物を含有する溶液からゾルゲル法を用いて形成してもよい。該無機化合物としては、ケイ素化合物、チタン化合物、スズ化合物、ジルコニウム化合物等が挙げられるが、形成されるコーティングの硬度等の点からケイ素化合物が好ましい。また、該無機化合物としてシリカを含むケイ素化合物を用いる場合は、上記拡散剤としてのシリカを新たに加える必要がない。また、屈折率の点から、MgF2ゾルをさらに含むことがより好ましい。
上記ケイ素化合物としては、Siアルコキシドを含む種々のものが使用でき、好適な材料として、例えば、Si(OR)y・R’4-y(yは3または4であり、R、R’はアルキル基を示す)で示されるSiアルコキシドまたはその部分加水分解物を含む液が挙げられる。例えば、シリコンエトキシド、シリコンメトキシド、シリコンイソプロポキシド、シリコンブトキシドのモノマーまたは重合体が好ましく使用できる。
Siアルコキシドは、アルコール、エステル、エーテル等に溶解して使用でき、Siアルコキシド溶液に塩酸、硝酸、硫酸、酢酸、ギ酸、マレイン酸、フッ散、またはアンモニア水溶液を添加してSiアルコキシドを加水分解しても使用できる。
また、Siアルコキシドは、上記Siアルコキシド溶媒に対して、30質量%以下含まれていることが好ましい。固形分量があまり大きいと液の保存安定性が悪くなる。
また、このSiアルコキシド溶液には、形成される膜の強度向上のためにバインダとして、Zr、Ti、Sn、Al等のアルコキシドや、これらの部分加水分解物を添加して、ZrO2、TiO2、SnO2およびAl23等の1種以上の複合物をMgF2やSiO2と同時に析出させてもよい。
さらに、Siアルコキシド溶液のガラス基板に対する濡れ性を向上させるために該溶液に界面活性剤を添加してもよい。添加される界面活性剤としては、直鎖アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウムやアルキルエーテル硫酸エステル等が挙げられる。
本発明における光拡散層の膜厚は、材料の強度や可視光透過率により異なるので、材料に合わせて適宜調整されるが、一般的には、1μm〜5mmである。十分な拡散性能が得られ、容易に膜厚を均一にすることができるので映像にムラが生じることがないという点から、光拡散層の膜厚は、5〜500μmが好ましい。この特性により優れ、さらに透過型スクリーン全体を薄型にすることができる点で、光拡散層の膜厚は、10〜300μmがより好ましく、20〜200μmが特に好ましい。
本発明における光拡散層の拡散剤を除いた無機質コーティングに対する拡散剤の質量比(拡散剤の質量/無機質コーティングの質量)は、0.01〜3.0が好ましい。該質量比がこの範囲であれば、十分な拡散性能が得られ、容易に膜厚を均一にすることができるので映像にムラが生じることがない。この特性により優れる点で、該質量比は、0.05〜2.5がより好ましく、0.1〜2が特に好ましい。
本発明の透過型スクリーンは、上述の透過型スクリーンとは別の一態様として、上記光拡散層の背面に、レンチキュラーレンズシートを有し、該レンチキュラーレンズシートの背面にフレネルレンズシートを有することが好ましい。
図2は、本発明の透過型スクリーンの他の一態様を示す概略断面図である。
本発明の透過型スクリーン20は、ガラス基板21の前面に光反射防止材22を有し、該ガラス基板21の背面に無機質コーティングからなる光拡散層23を有し、光拡散層23の背面に、接着剤層24を介して、レンチキュラーレンズシート25を有し、該レンチキュラーレンズシート25の外周付近に塗布された接着剤26を介して、フレネルレンズシート27を有する。
本発明におけるレンチキュラーレンズシートおよびフレネルレンズシートは、特に限定されず、公知の方法で製造されたものでよい。また、市販されているものを使うことができる。
<本発明の透過型スクリーンの製造例>
本発明の透過型スクリーンの製造方法の一例を示す。ガラス基板をアルコール系溶媒で洗浄後、スクリーン印刷法で、ガラスの片面に拡散剤を分散させたマトリックス剤(例えば、低融点ガラスフリットペースト)を塗布する。乾燥して溶剤を除去した後、空気中500〜600℃、5〜60分の条件で焼成して、光拡散層を形成する。
次に、樹脂フィルム上に、下記のいずれもスパッタリング法で、上記の高屈折率層と低屈折率層の順に(例えば、酸窒化チタン/酸化ケイ素の順に2層、あるいは、酸化チタン/酸化ケイ素/酸化チタン/酸化ケイ素の順に4層)コーティングする。その後、該コーティングを施した樹脂フィルムを、ガラス基板の前面(光拡散層とは反対側の面)に該コーティングが観察者側になるように接着剤を用いて貼り合わせて光反射防止材を形成する。
次に、光拡散層の背面に、レンチキュラーレンズシートを全面に接着剤を塗布し隙間ができないように貼り合わせる。その後、フレネルレンズシートをレンチキュラーレンズシートの背面に密着するように置き、四辺の周辺のみを粘着テープあるいは接着剤で固定する。
本発明の透過型スクリーンは、ガラス基板を用いることにより、高剛性、高平坦性を実現する。高剛性であることにより、従来の樹脂板の透過型スクリーンのように、気圧の変化や外部からの衝撃等により、反りが発生することがなく、レンチキュラーレンズシートとフレネルレンズシートが擦れて、レンズが削られるという問題がない。また、高平坦性であることにより、スクリーンにうねりが存在しないため、画質の低下がなく、未投影時の外観が良く、高級感を演出することができる。
また、上記ガラス基板の前面に光反射防止材を設けることにより、外部環境からの光の反射を低減し、プロジェクタからの映像をより高コントラストで表示することが可能である。該光反射防止材を光反射防止フィルムとした場合には、ガラス飛散防止フィルムとしても働く。
また、上記ガラス基板の背面に無機質コーティングされてなる光拡散層を設けることにより、スクリーン上の映像の視野角を確保できる。無機質コーティングとすることで、高い耐光性が得られ、また、高屈折率の材料を使用できるので、薄い膜厚で高い拡散性能が得られる。
また、色ガラス等を用いて、透過率を制限することにより、外光の反射や迷光が少なく、プロジェクタからの映像をより高コントラストで表示することが可能である。
(製造例)
可視光透過率が39%の板厚3.5mmのグレー色着色ガラス(商品名:GL35、旭硝子(株)製)をイソプロパノールで洗浄後、スクリーン印刷法で、ガラスの片面に酸化チタン粒子(粒径1μm)2gを分散した低融点ガラスフリットペースト(商品名:ASF1495、旭硝子(株)製)10g(酸化チタン粒子の質量を除く)を塗布した。乾燥して溶剤を除去した後、空気中550℃で、20分焼成して、フリットペーストをガラス基板に焼き付け、膜厚100μmの光拡散層を形成した。
次に、市販のPETフィルム(フィルム厚:150μm)上に、下記のいずれもスパッタリング法で、酸窒化チタン(膜厚12nm)/酸化ケイ素(膜厚82nm)の順に2層をコーティングした。
次に、該コーティングを施したPETフィルムを、上記ガラス基体の前面に接着剤(両面セパレータ粘着剤フィルムSI−A、リンテック社製)を用いて貼り合わせ、光反射防止材を形成した。
次に、光拡散層の背面に、レンチキュラーレンズシートを、全面に接着剤(両面セパレータ粘着剤フィルムSI−A、リンテック社製)を用いて隙間ができないように貼り合わせた。
次に、フレネルレンズシートをレンチキュラーレンズシートの背面に密着するように置き、四辺の周辺のみを接着剤(両面セパレータ粘着剤フィルムSI−A、リンテック社製)で固定し、透過型スクリーンを作成した。
図1は、本発明の透過型スクリーンの一態様を示した概略断面図である。 図2は、本発明の透過型スクリーンの他の一態様を示す概略断面図である。
符号の説明
10 透過型スクリーン
11 ガラス基板
12 光反射防止材
13 光拡散層
20 透過型スクリーン
21 ガラス基板
22 光反射防止材
23 光拡散層
24 接着剤層
25 レンチキュラーレンズシート
26 接着剤
27 フレネルレンズシート

Claims (5)

  1. 背面投射型プロジェクションテレビに用いる透過型スクリーンにおいて、該透過型スクリーンはガラス基板を有し、該ガラス基板の前面に光反射防止材を有し、該ガラス基板の背面に無機質コーティングからなる光拡散層を有することを特徴とする透過型スクリーン。
  2. 前記光反射防止材が、樹脂フィルム上に少なくとも1層以上の低反射層を有する光反射防止フィルムであることを特徴とする請求項1に記載の透過型スクリーン。
  3. 前記ガラス基板の可視光透過率が、25〜95%であることを特徴とする請求項1または2に記載の透過型スクリーン。
  4. 前記ガラス基板の可視光透過率が、25〜65%であることを特徴とする請求項3に記載の透過型スクリーン。
  5. 前記光拡散層の背面に、レンチキュラーレンズシートを有し、該レンチキュラーレンズシートの背面にフレネルレンズシートを有することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の透過型スクリーン。
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