JP2005249567A - 歯周病の検査方法、抗ヒスタチンモノクローナル抗体、該抗体を含む歯周病検査試薬および歯周病検査試薬キット - Google Patents

歯周病の検査方法、抗ヒスタチンモノクローナル抗体、該抗体を含む歯周病検査試薬および歯周病検査試薬キット Download PDF

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Abstract

【課題】 本発明の課題は、効果的な歯周病の検査方法およびその検査方法に使用する試薬を提供することである。
【解決手段】 ヒスタチンの存在をマーカーとして歯周病の検査を行うことによる。具体的には、抗ヒスタチン抗体、より具体的にはヒスタチンを構成するポリペプチドに含まれる特定の配列を認識する抗体を用いることにより、ヒスタチンの測定が可能となり、歯周病との関連を裏付ける結果が得られた。抗体を用いる検査としては、ELISA法等の公知の手法により測定することができる。上記ヒスタチンの測定が可能な抗体の例として、受託番号FERM P-19392号のハイブリドーマ(平成15年6月12日付けで独立行政法人産業技術総合研究所特許生物寄託センターに寄託)から産生されるモノクローナル抗体(H5-955A)が挙げられる。

Description

本発明は、試料中のヒスタチンを測定することによる歯周病の検査方法、抗ヒスタチンモノクローナル抗体、該抗体を含む歯周病検査試薬および歯周病検査試薬キットに関する。
ヒスタチン(histatins) とはヒト唾液腺から分泌される分子量1,000〜5,000のヒスチジンに富むペプチド群であり、現在までに12種類が知られている。そのうち、ヒスタチン1、ヒスタチン3、ヒスタチン5の3種類が唾液中の総ヒスタチンの量の85〜90%を占めており、メジャーヒスタチン(major histatins) と呼ばれている。ヒスタチンは、口腔内の非特異的免疫防御システムの一役を担っており、特定の菌に対する強力な抗菌効果のみならず、菌の放出する様々な酵素や毒素に対しても阻害効果をもつ物質である。
現在知られている12種類のヒスタチンは、いずれも類似したアミノ酸組成を有し、一次構造も決定されている(Troxler, R.F.,et.al.: J. Dent. Res., 69:2-6, 1990.)。このうち、ヒスタチン1(アミノ酸残基数38)、ヒスタチン3(同、32)が基本骨格であり、ヒスタチン1の分解産物と思われるヒスタチン2を除いて、他の9種のヒスタチンにはすべてヒスタチン3が酵素的限定分解を受けた構造的類似性が認められる。このうち、アミノ酸数が24で3種のうち最も分子量が小さいヒスタチン5は、化学的合成も容易であることから標品として販売されており、ヒスタチン研究に用いられることが多い。
(ヒスタチンの生物学的機能)
ヒスタチンの完全分離、精製が長らく困難であったため、該ポリペプチドが口腔内で果たす様々な生物学的機能が解明されたのは1990年以降のことである。現在までに報告された代表的な機能として、次の事項が挙げられる。
1.口腔内細菌への抗菌作用
1)Streptococcus mutansに対するもの(非特許文献1)
2)Candida albicansに対するもの(非特許文献2)
3)Cryptococcus neoformansに対するもの(非特許文献3)
2.歯周病との関連
1)Porphyromonas gingivalis の放出する酵素に対する阻害作用
・プロテアーゼに対するもの(非特許文献4)
・コラゲナーゼに対するもの(非特許文献5)
2)P. gingivalisによる歯肉線維芽細胞からの炎症性サイトカイン放出に対する阻害作用(非特許文献6)
3)Actinobacillus actinomycetemcomitans由来のロイコトキシンに対する阻害作用(非特許文献7)
4)リン酸カルシウム結晶形成に対する阻害作用(非特許文献8)
3.その他
1)ラット肥満細胞へのヒスタミン遊離作用(非特許文献9)
2)Clostridium histolyticum由来のプロテアーゼ(clostripain)に対する競合阻害作用(非特許文献10)
3)生体由来のマトリックス・メタロプロテアーゼMMP-2とMMP-9に対する阻害作用(非特許文献11)
上記からヒスタチンが、ラクトペルオキシダーゼ、リゾチーム、ラクトフェリンなどと並び、口腔内の非特異的免疫系防御システムの一役を担っていることがわかる。
歯周病は、歯槽骨の吸収、歯肉と歯根付着面の消失、特徴的な菌叢からなる歯周ポケットの形成などによって特徴づけられる慢性炎症性疾患である。その原因として、1.歯ぎしりや食いしばり、早期接触、ブリッジの支台や義歯の鉤歯(義歯を固定するためのカギを引っかける歯)などのように過大な咬合力が特定の歯に慢性的にかかっていること(外傷性咬合)、2.歯周ポケット内に棲息するP. gingivalisをはじめとする歯周病原因菌が種々の毒素(プロテアーゼ、コラゲナーゼ、リポ多糖など)を放出することにより、歯周組織が慢性的に破壊されることが挙げられる。
歯周病の罹患状況を把握することは、罹患状況を数値化する方法がまだ確立されていないために困難である。臨床的には、全歯の歯周ポケットの深さ(ミリ)を測定して、その最大値や平均値を求めたり、レントゲン写真上で骨の吸収程度を数値化している程度である。そのため、軽度、中程度、重度と分類するのが精一杯である。それに対してう蝕(むし歯)は、むし歯の本数(DMF歯数)という指標があるので、データの比較が容易である。むし歯の予防管理においては、"サリバテストTM"などの個人のむし歯へのリスク診断法がすでにいくつか確立されており、すでに臨床応用されているという実績がある。
歯周病のリスク要因は複雑多岐にわたり、その数値化も簡単ではないから、上記虫歯予防管理のような簡便なリスク診断もまだ確立されているとはいい難い。歯周病の個人のリスク診断がチェアサイドで行えるものとして、例えば製品名"ペリオチェックTM"(P. gingivalisなどの歯周病原性細菌の産生した、歯周組織破壊性タンパク分解酵素の活性を測定するもの)が実用化されている。しかしながら、このキットは、病原性細菌側の感染リスクを調べる上で有用であるものの、臨床の現場ではそれに対する患者側のリスクを知る検査法はまだ確立されていない。また、ヒスタチンが患者側リスクを表す有力な候補であるか否かを判断するための臨床上のデータがほとんど蓄積されていないため、ヒスタチン濃度の高低と歯周病リスクの高低との関係がまだ明らかではない。
本発明者らのグループではポリクロナール抗体を用いたELISA法にて、唾液中のヒスタチン濃度測定を試みたが、検出精度などの問題もあり、個人差が大きい程度の知見しか得られなかった(非特許文献12)。
MacKay, B.J.,et.al.:Infect. and Immun., 44:695-701(1984) Oppenheim, F.G.,et.al.:J. Biol. Chem., 261:1177-82(1986) Tsai, H.,et.al.:Biochem. Biophys. Acta, 1336:367-9(1997) Murakami, Y.,et.al.:FEBS Microbial. Lett., 72:275-80(1990) Kato, T.,et.al.:J. Bacteriol., 174:3889-95(1992) Imatani, T.,et.al.:Oral Microbiol. Immunol., 15:378-82(2000) Murakami, Y.,et.al.:Oral Microbiol. Immunol., 17:143-9(2002) Oppenheim, F.G.,et.al.:J. Biol. Chem., 261:1177-82(1986) Sugiyama, K.,et.al.:Life Science, 37:475-80, 1985. Gusman, H.,et.al.:FEBS Microbiol. Lett., 489:97-100(2001) Gusman, H.,et.al.:Infect. Immun., 69:1402-8(2001) Wang, P. et. al:Jpn. J. Oral Biol., 41 : 591-95(1999)
本発明の課題は、抗ヒスタチンモノクローナル抗体、歯周病検査試薬、歯周病検査試薬キットおよび歯周病の検査方法を提供することである。
本発明者らは、ヒスタチンと歯周病に関連の可能性があることに着目し、鋭意研究を重ねた結果、ヒスタチンを構成するポリペプチドに含まれる特定の配列を認識する抗体を用いることでヒスタチンの測定が可能となり、歯周病との関連を裏付ける結果が得られ、本発明を完成するに至った。
すなわち本発明は、
1.試料中のヒスタチンを測定することからなる歯周病の検査方法、
2.ヒスタチンがメジャーヒスタチンである前項1に記載の歯周病の検査方法、
3.ヒスタチンがヒスタチン5である前項1又は2に記載の歯周病の検査方法。
4.ヒスタチン5と反応する抗ヒスタチンモノクローナル抗体を用いてヒスタチン5を測定することを特徴とする前項3に記載の歯周病の検査方法、
5.抗ヒスタチンモノクローナル抗体がヒスタチン5を構成するポリペプチドに含まれるアミノ酸配列のうち連続する少なくとも5つのアミノ酸配列を認識することを特徴とする前項4に記載の歯周病の検査方法、
6.抗ヒスタチンモノクローナル抗体が受託番号FERM P-19392のハイブリドーマより産生されるモノクローナル抗体(H5-955A)であることを特徴とする前項4に記載の歯周病の検査方法、
7.ヒスタチン5と反応する抗ヒスタチンモノクローナル抗体、
8.ヒスタチン5を構成するポリペプチドに含まれるアミノ酸配列のうち連続する少なくとも5つのアミノ酸配列を認識する前項7に記載の抗ヒスタチンモノクローナル抗体、
9.受託番号FERM P-19392であるハイブリドーマ、
10.前項9に記載のハイブリドーマより産生されるモノクローナル抗体(H5-955A)。
11.前項7、8又は10のいずれか1に記載のモノクローナル抗体を含む歯周病検査試薬、
12.固相試薬および標識試薬からなる歯周病検査試薬キットであって、固相試薬は少なくともヒスタチンを固定化した担体からなり、標識試薬は前項7、8又は10のいずれか1に記載のモノクローナル抗体を標識化した標識抗ヒスタチンモノクローナル抗体からなる、歯周病検査試薬キット、
からなる。
本発明におけるヒスタチン(histatins)とは、上記説明したとおりのヒト唾液腺から分泌される分子量1,000〜5,000のヒスチジンに富むペプチド群である。ヒスタチンの種類は特に限定されるものではないが、好ましくは総ヒスタチンの量の85〜90%を占めているヒスタチン1、3および5の3種類から1種又は2種以上のヒスタチンが選択され、好適にはヒスタチン5が選択される。該ヒスタチン1、3又は5を構成するアミノ酸配列は、次に示すとおりであるが、本発明のヒスタチンはこれらに限定されるものではなく、以下のアミノ酸のうち1〜数個のアミノ酸が置換、欠失若しくは付加されたものであっても良い。
(ヒスタチン1、3又は5を構成するアミノ酸配列)
ヒスタチン1(アミノ酸残基数38):(配列番号1)
Asp-Pse-His-Glu-Lys-Arg-His-His-Gly-Tyr-Arg-Arg-Lys-Phe-His-Glu-Lys-His-His-Ser-His-Arg-Glu-Phe-Pro-Phe-Tyr-Gly-Asp-Tyr-Gly-Ser-Asn-Tyr-Leu-Tyr-Asp-Asn(Pseはリン酸化セリン残基を表す)
ヒスタチン2(アミノ酸残基数32):(配列番号2)
Asp-Ser-His-Ala-Lys-Arg-His-His-Gly-Tyr-Lys-Arg-Lys-Phe-His-Glu-Lys-His-His-Ser-His-Arg-Gly-Tyr-Arg-Ser-Asn-Tyr-Leu-Tyr-Asp-Asn
ヒスタチン5(アミノ酸残基数24):(配列番号3)
Asp-Ser-His-Ala-Lys-Arg-His-His-Gly-Tyr-Lys-Arg-Lys-Phe-His-Glu-Lys-His-His-Ser-His-Arg-Gly-Tyr
各ヒスタチンのアミノ酸配列を1文字で表記したものを図1に示した。図中、各配列中四角で囲んだ部分は、各々、(a)酵素結合部位、(b)亜鉛(Zn)結合部位部位および(c)MMP−9阻害部位を意味する。
(ヒスタチン測定方法)
本発明の目的のために行うヒスタチンの測定は、公知の方法を採用することもできるし、本発明の目的のための新規な方法により行うこともできる。具体的には、ヒスタチンを構成するポリペプチドに含まれるアミノ酸配列のうち連続する少なくとも5つ、好ましくは6以上、より好ましくは8個のアミノ酸配列を認識する抗体を使用して行うことができる。このような性質を有する抗体であればよく、特に限定されるものではないが、好ましくはモノクローナル抗体により行うことができる。
測定は、上記性質を有する抗体を使用して、ヒスタチンを測定しうる系であれば良く、特に限定されないが、免疫学的な測定方法を適用することができる。具体的には競合法を用いてヒスタチンを測定することができる。
以下、競合法を例にとり、ヒスタチンの測定方法を説明する。
競合法を用いたヒスタチンの測定方法の一態様として、一定濃度の標識化抗ヒスタチンモノクローナル抗体に対し、試料中のヒスタチンと担体に結合したヒスタチンとを競合反応させ、固相と液相を分離(BF分離)後、いずれか一方の相、好ましくは固相の標識量を測定することで、試料中のヒスタチンを測定することができる。
ヒスタチンを固定化する担体としては、ヒスタチンとの結合性の高いものであれば特に制限されず、例えば、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、スチレン−ジビニルベンゼン共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体、ナイロン、ポリビニルアルコール、ポリアクリルアミド、ポリアクリロニトリル、ポリプロピレンなどの合成有機高分子化合物、デキストラン誘導体(セファデックスなど)、アガロースゲル(セファロース、バイオゲルなど)、セルロース(ペーパーディスク、ろ紙など)などの多糖類、ガラス、シリカゲル、シリコーンなどの無機高分子化合物が挙げられ、これらはアミノ基、アミノアルキル基、カルボキシル基、アシル基、水酸基などの官能基を導入したものであってもかまわない。
担体の形状としては、マイクロタイタープレート(ELISAプレート)、ディスクなどの平板状、ビーズなどの粒子状、試験管、チューブなどの管状、その他繊維状、膜状などが例示され、測定法に応じて適宜選択することができる。固相担体への固定化は、物理的吸着法、イオン結合法、共有結合法、包括法などの公知の方法を用いることができる。このようにして得られた固相試薬は、非特異的結合を抑制するために、ウシ胎児血清(BSA)、糖、スキムミルクなどの通常のブロッキング剤を用いてブロッキング処理を施しても良い。
使用するモノクローナル抗体は、抗体そのものでも良いが、活性フラグメントを使用することもできる。活性フラグメントとしては、F(ab')2、Fab'、Fabなどの各種フラグメントで、測定上の機能が失われていないものであればよい。これら活性フラグメントの調製は、パパイン、ペプシン、トリプシン処理などの公知の方法を適用することで行うことができる。
また、標識化抗ヒスタチンモノクローナル抗体を調製する場合、使用する標識体としては、放射性同位体(32P, 3H, 14C, 125Iなど)、酵素(β−ガラクトシダーゼ、ペルオシキダーゼ、アルカリホスファターゼなど)、補酵素・補欠分子族(FAD、FMN、ATP、ビオチン、ヘムなど)、蛍光色素(フルオレセイン誘導体、ローダミン誘導体など)、金属粒子(金、銀、白金など)などを使用することができる。
測定方法は固相化ヒスタチンに試料を添加後、標識化抗ヒスタチンモノクローナル抗体をさらに添加し、一定時間反応後、BF分離し、固相の標識量を測定することにより、試料中のヒスタチン量を測定する。
さらに、別の競合法の態様として、固相化抗ヒスタチンモノクローナル抗体に対し、試料中のヒスタチンと一定濃度の標識化ヒスタチンとを競合反応させ、BF分離後、いずれか一方の相、好ましくは固相の標識量を測定することで、試料中のヒスタチンを測定することができる。
上記競合法を例に挙げ、実施するためのキットの構成試薬を具体的に説明すれば、例えば次のものが例示される。
A.担体にヒスタチンを固定化した固相試薬
B.標識化抗ヒスタチンモノクローナル抗体からなる標識試薬
さらに、上記試薬の他に、必要により、発色試薬、反応停止用試薬、標準物質、希釈用試薬などの各試薬から状況に応じ適宜選択し、測定のための構成試薬とすることもできる。
本発明のヒスタチンの測定に供する試料は、生体から取得されるものであって、ヒスタチンを含む可能性があるものであれば良く、特に限定されないが、具体的には唾液を試料として使用することができる。本発明の歯周病との関連を調べるための測定には、唾液を試料として使用するのが簡便であり好ましい。
唾液の採取にはいろいろな方法があり、公知の採取方法を適用することができる。具体的には、専用の採唾管を用いて、唾液腺の開口部から直接純唾液を採取する方法が確立されているが、時間がかかることや被験者の苦痛が大きいなど、チェアサイドで実施するにはあまり一般的ではない。検体採取の容易さという点では唾を直接吐き出してもらう方法(吐き出し法)が簡便であるが、口腔内に貯留した全唾液を採取することになるため、食物残査や口腔内微生物による汚染の問題がある。本発明の検査方法では、チェアサイドでの簡便さという点を重視し、後者の方法を採用することができる。
(モノクローナル抗体)
本発明に使用しうる抗ヒスタチンモノクローナル抗体は、特に限定されるものではなく、公知の一般的な抗体の取得方法により得ることができる。特に好ましくは、受託番号FERM P-19392号のハイブリドーマ(平成15年6月12日付けで独立行政法人産業技術総合研究所特許生物寄託センターに寄託)から産生されるモノクローナル抗体を使用することができ、特にH5-996Aと命名された抗体を使用することができる。
モノクローナル抗体は、ヒスタチンのヒスタチンを構成するポリペプチドに含まれるアミノ酸配列のうち連続する少なくとも5つのアミノ酸配列を含む抗原をもとにして、ケーラーとミルシュタインの方法(Kohler and Milstein, Nature 256, 495-497(1975))等の公知の方法にしたがって作製することができる。
具体的には、骨髄腫細胞として、マウス、ラット、ヒトなど由来のものが使用され、例えばマウスミエローマP3X63-Ag8、P3X63-Ag8-U1、P3NS1-Ag4、SP2/o-Ag14、P3X63-Ag8・653などの株化骨髄腫細胞が例示される。抗体産生細胞と骨髄腫細胞とを融合させてハイブリドーマを作製する方法も、公知の方法を採用することができ、例えばポリエチレングリコール(PEG)を用いる方法、センダイウイルスを用いる方法、電気融合装置を用いる方法などが例示される。融合操作後の細胞は、公知の方法により選択培地で培養し、ハイブリドーマを選択することができる。生育しているハイブリドーマが所望の抗体を産生しているかどうかを知るために、培養上清を採取して抗体価アッセイを自体公知の方法により行うことができる。得られた抗体産生ハイブリドーマは、公知の凍結保護剤の共存下に凍結させて-70〜-196℃で保存することができる。ハイブリドーマの培養上清等からのモノクローナル抗体の精製は、自体公知の方法により行うことができる。
本発明の抗体は、上記具体例に限定されるものではなく、ヒスタチン、好ましくはヒスタチン1、3および/又は5、より好ましくはヒスタチン5を特異的に認識しうるモノクローナル抗体であればよい。また、本発明の抗ヒスタチンモノクローナル抗体は、試料中のヒスタチン測定の際、単独で用いてもよいし、複数の抗ヒスタチンモノクローナル抗体、例えば認識部位が異なる抗体を適宜組み合わせて用いることもできる。
(ヒスタチンと歯周病の関係)
本発明のヒスタチンの測定方法により、歯周病のリスクを検査することができる。いくつかの検体について、年齢、ヒスタチン濃度、歯周病の罹患の有無について検討したところ、対象が30歳以下の場合にはわずかに歯周病と唾液ヒスタチンの関係が認められたのみであったが、40歳以上を対象とした場合は有意差が認められ、歯周病のリスク判断の材料として特に有効となることが示唆された。したがって、本発明の方法によるヒスタチンの検査は、40歳以上のヒトに対して行うと特に効果が期待できる。
ヒスタチンの測定は定性または定量分析により行うことができる。また、歯周病の検査においては試料中のヒスタチンの濃度(例えば試料1mLあたりのヒスタチン量)のほか、試料中に含まれるタンパク質で補正したヒスタチン量(例えば試料に含まれるタンパク質1mgあたりのヒスタチン量)により検査することができる。
タンパク質は公知の方法で測定することが可能である。
本発明の理解のために、以下に実施例を示して説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
(実施例1)抗ヒスタチン5モノクローナル抗体のスクリーニング
1)免疫
5匹のBALB/cマウスに、抗原を投与して免疫誘導した。抗原は、N末にシステイン残基を導入したヒスタチン5(24アミノ酸残基)にKLH(CH5-KLH)およびSupper carrier(CH5-SC)をキャリア蛋白質として結合したものを用いた。その結果、有意に抗体価の上昇を確認することができた。
2)細胞融合
抗体価上昇(免疫誘導)が認められたマウスの脾細胞とX63骨髄腫細胞をポリエチレングリコールを用いて細胞融合した。該融合細胞を96ウェルマイクロタイタープレートに撒き、37℃、8%CO2下で培養を行い、培養1日目でHAT培地によるセレクションを行った。
3)抗ヒスタチン5モノクローナル抗体の樹立
上記マイクロタイタープレートでバイブリドーマを培養し、増殖が認められた1920ウェルについて、ヒスタチン5-OVA(CH5-OVA)を用いてスクリーニングした結果、合計40クローン以上のハイブリドーマの培養上清に抗ヒスタチン抗体が確認された。さらにHC-5OVA抗原固相および天然型ヒスタチン5との中和反応より合計15クローンのハイブリドーマを選択した。
スクリーニングの試験結果を図2に示した。得られた15クローンのハイブリドーマ培養上清中の抗体と天然型ヒスタチン5の中和反応させたときの結果を図3に示した。
(実施例2)ヒスタチン5測定方法
OVA-結合ヒスタチン5(N末にシステインを導入)を固相とし、モノクローナル抗体はH5-996Aを選択し、ヒスタチン5測定系を構築した。
1)試薬
a.ヒスタチン5抗原固相
OVA-G-Cys-Histatin-5 2μg/mL
b.検体希釈緩衝液組成
NaPB(pH7.5) 0.1 M
BSA 1.0 %
NaCl 0.3 M
硫酸ゲンタマイシン 0.02%
EDTA・2Na 2.5mM
Tween20 0.075%
c.標識抗体緩衝液組成
H5-996A(抗体)-POD(Fr.1) 20 mU/mL
NaPB(pH6.5) 0.02M
BSA 0.5 %
NaCl 0.15 M
スキムミルク 0.2%
サンアイバックAE 0.1%
2)測定方法
a.96 ウェル ELISAプレートに検体を各々50μLを96 ウェル ELISAプレートの所定のウェルに添加した。
b.HRP標識抗ヒスタチン5モノクローナル抗体液50μLを各ウェルに添加した。
c.室温にて30分間、振盪反応させ、その後洗浄液にて4〜5回洗浄し、基質液を100μL加え、30分間反応させた。基質液としてDAKO社製オルトフェニレンジアミン錠を3錠とり純粋10mLに溶解したものを使用した。
3%過酸化水素を100μL添加し、基質溶液とする。
d.反応停止液(2N硫酸)を各ウェルに100μL加え、反応を停止し、主波長492nm、副波長690nmの吸光度を測定した。
(実施例3)歯周病の検査
1)検査方法
a.唾液検体の調製
唾液を検体希釈液で10倍希釈し、唾液検体とした。
被験者から得た唾液試料を、各々10,000 rpm×10分間遠心し、得られた上清を-80℃にて凍結保存し、唾液試料とした。また、ヒスタチン濃度と併行して、各唾液サンプル中のタンパク質濃度をBio-Rad社のタンパク質定量キットにて測定した。
b.標準物質の調製
ヒスタチンの検量線を作成するために、7段階の各濃度の標準液を調製した。標準液ヒスタチン5を、検体希釈液を用いて2倍希釈系列により希釈し、0, 0.3125, 0.625, 1.25, 2.5, 5.0, 10.0μ/mLとなるよう調製した。
c.96 ウェル ELISAプレートに各濃度の標準物質又は10倍希釈した唾液被検試料を各々50μLを96 ウェル ELISAプレートの所定のウェルに添加し、上記測定方法に従ってヒスタチンを測定した。
2)測定結果
(年齢層別ヒスタチンの濃度)
各年齢層別の補正したヒスタチン5の濃度の平均値を表1および図4に示した。その結果、年齢の増加とともに唾液中のヒスタチン5濃度が低下する傾向が認められた。
Figure 2005249567
3)歯周病罹患の有無とヒスタチン濃度
歯周病の指標として、全歯の歯周ポケットの深さ(ミリ)の最大値を用いた。歯周ポケットの深さの最大値が3ミリ以内である者を歯周病(−)とし、4ミリ以上である者を歯周病(+)とした。なお、第2大臼歯、第3大臼歯(親知らず)は、歯周病とは別の要因で深い歯周ポケットを作りやすいこと、また、ブリッジの支台歯や義歯の鉤歯には外傷性咬合による歯周ポケットが形成されやすいので、対象歯から除外した。また、歯肉炎を有する歯も対象から除外した。統計処理は、Student t-testにて実施した。
(1)比較の対象を30歳以上とした場合
ヒスタチン5濃度(唾液タンパク質1mgあたりに換算)の平均値(単位:μg)
歯周病(−)(N=74) 4.23 SD5.41
歯周病(+)(N=70) 3.23 SD4.54 統計学的有意差なし
(2)比較の対象を40歳以上とした場合
ヒスタチン5濃度(唾液タンパク質1mgあたりに換算)の平均値(単位:μg)
歯周病(−)(N=50) 4.85 SD5.99
歯周病(+)(N=51) 1.16 SD1.71 統計学的有意差あり(p<0.05)
また、上記結果を、図5および図6に示した。これらより、比較の対象が30歳以上で統計学的な有意差は認められなかったものの、歯周病(+)の患者のほうがヒスタチン5の値が低い傾向が認められた。満40歳以上の場合では、歯周病(+)の患者は(−)と判定された者に比べて、明らかにヒスタチン5の値がで低いことが確認された。
以上の結果より、歯周ポケットの最大値を基に歯周病(−)(+)とし、ヒスタチン5の濃度の関係を調べた結果、ヒスタチン5の多寡が歯周病発症のリスク要因の1つであることを示唆された。
上記説明したように、本発明の抗体を用いるとヒスタチンの測定を行うことができ、さらに、ヒスタチンの測定により歯周病の検査を行うことができることが確認された。
各ヒスタチンのアミノ酸配列を1文字で表記した場合を示す図である。 ヒスタチン5モノクローナル抗体のスクリーニング試験結果を示す図である。(実施例1) ヒスタチン5モノクローナル抗体と天然型ヒスタチン5との中和反応を示す図である。(実施例1) 年各年齢層別の補正したヒスタチン5の濃度の平均値を示す図である。(実施例3) 比較の対象を30歳以上としたときの歯周病とヒスタチン5の濃度の関係を示す図である。(実施例3) 比較の対象を40歳以上としたときの歯周病とヒスタチン5の濃度の関係を示す図である。(実施例3)

Claims (12)

  1. 試料中のヒスタチンを測定することからなる歯周病の検査方法。
  2. ヒスタチンがメジャーヒスタチンである請求項1に記載の歯周病の検査方法。
  3. ヒスタチンがヒスタチン5である請求項1又は2に記載の歯周病の検査方法。
  4. ヒスタチン5と反応する抗ヒスタチンモノクローナル抗体を用いてヒスタチン5を測定することを特徴とする請求項3に記載の歯周病の検査方法。
  5. 抗ヒスタチンモノクローナル抗体がヒスタチン5を構成するポリペプチドに含まれるアミノ酸配列のうち連続する少なくとも5つのアミノ酸配列を認識することを特徴とする請求項4に記載の歯周病の検査方法。
  6. 抗ヒスタチンモノクローナル抗体が受託番号FERM P-19392のハイブリドーマより産生されるモノクローナル抗体(H5-955A)であることを特徴とする請求項4に記載の歯周病の検査方法。
  7. ヒスタチン5と反応する抗ヒスタチンモノクローナル抗体。
  8. ヒスタチン5を構成するポリペプチドに含まれるアミノ酸配列のうち連続する少なくとも5つのアミノ酸配列を認識する請求項7に記載の抗ヒスタチンモノクローナル抗体。
  9. 受託番号FERM P-19392であるハイブリドーマ。
  10. 請求項9に記載のハイブリドーマより産生されるモノクローナル抗体(H5-955A)。
  11. 請求項7、8又は10のいずれか1に記載のモノクローナル抗体を含む歯周病検査試薬。
  12. 固相試薬及び標識試薬からなる歯周病検査試薬キットであって、固相試薬は少なくともヒスタチンを固定化した担体からなり、標識試薬は請求項7、8又は10のいずれか1に記載のモノクローナル抗体を標識化した標識抗ヒスタチンモノクローナル抗体からなる、歯周病検査試薬キット。
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