JP2005246391A - 3層複合スリーブロール - Google Patents

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邦憲 守屋
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Abstract

【課題】 本発明は、圧延用ロールに関し、特に耐摩耗性と耐肌荒れ性、さらに耐割損性に優れた3層複合スリーブロールを提供する。
【解決手段】 ハイス系材料からなる外層と、該外層に溶着された中間層と、該中間層に溶着された内層とからなる3層複合スリーブロールにおいて、前記3層材料の化学組成であるNiの質量%を、(外層および内層のNiの質量%)<(中間層のNiの質量%)とし、かつ鋳造・熱処理後の前記中間層に、周方向の圧縮応力を作用させたことを特徴とする3層複合スリーブロール。
【選択図】 図1

Description

本発明は、圧延用ロールに関し、特に耐摩耗性と耐肌荒れ性、さらに耐割損性に優れた3層複合スリーブロールに関するものである。
従来、鉄鋼圧延用ロールにおいて、スリーブとアーバーとを焼き嵌め等により結合して使用する組立式スリーブロールがある。このスリーブロールは、製造時に発生する残留応力、焼き嵌め応力、さらに圧延時にロールに働く繰り返し応力によって割損を起こすことがある。近年、圧延製品の高品質化ニーズに対応して、外層材に極めて高合金で耐摩耗性と耐肌荒れ性に優れたハイス系材料を代表とする高合金鋼を適用した2層式の複合スリーブロールが適用されてきている。前記2層式の複合スリーブロールにおいては、内層部の外層との溶着部付近が外層からの高合金成分の混入によって脆弱化したり、境界部に鋳巣等が生じ易くなり、割損事故が多発するという課題が生じている。
上述したような課題を解決する技術として、例えば、特開平5−179394号公報(特許文献1)に開示されているように、外層と内層とからなる複合スリーブロールの間に、新たに中間層を設けた、いわゆる、3層式の複合スリーブロールであって、前記中間層を設けることにより、外層からの高合金成分が内層に希釈する量を軽減させ、その結果、従来の2層式の複合スリーブロールの課題であった、外層と中間層の境界に発生する鋳巣が軽減され境界強度が改善される。また、内層の境界部での炭化物層の形成が軽減され内層の強度が向上するという効果を奏すると言うものである。
すなわち、特許文献1に開示されている技術は、外層には、特に耐摩耗性と耐肌荒れ性を具備させるためハイス系材料を、内層には、特に強靱性を具備させるため片状黒鉛鋳鉄、球状黒鉛鋳鉄、または黒鉛鋼を、さらに、中間層には、特に前記外層からの高合金成分が混入しても外層と中間層との境界強度を確保して外層の剥離を防止するために、外・内層の両者の中間的な成分から構成されている。
特開平5−179394号公報
しかしながら、前述した特許文献1に開示されている外層、内層、中間層の3層における主要な構成要件であるNiの添加量を比較してみると、外層には焼入れ性の向上による高硬度を得るために、0.1〜4.5%を、内層には、基地の強化のために3%以下を、中間層には、材質の強化のために、4%以下のNiを、各々添加する旨が記載されている。しかし、中間層に含有させるNi量に比し、内層および外層のNiの添加量が多いため、中間層の焼入れ性が外層に比べて極端に悪くなり、2層式と同様に外層と中間層の境界直下で周方向に過大な引張残留応力場が形成される。また、圧延条件の厳しいロールにおいては、この引張残留応力場が圧延時の繰り返し荷重により微小な欠陥からクラックへと成長し、最終的にスリーブロールが割損すると言う事態に至るという問題がある。
上述したような問題を解消するために、発明者らは鋭意開発を進めた結果、中間層部の周方向を圧縮残留応力場にすることで、厳しい圧延条件下にあっても、割損事故を起こさない安全な複合スリーブロールを提供することを見出したものである。その発明の要旨とするところは、
(1)ハイス系材料からなる外層と、該外層に溶着された中間層と、該中間層に溶着された内層とからなる3層複合スリーブロールにおいて、前記3層材料の化学組成であるNiの質量%を、(外層および内層のNiの質量%)<(中間層のNiの質量%)とし、かつ鋳造・熱処理後の前記中間層に、周方向の圧縮応力を作用させたことを特徴とする3層複合スリーブロール。
(2)外層、中間層、内層の化学組成であるNiの質量%を、外層のNi%:0.1〜1.0%、中間層のNi%:1.0%超〜5.0%、としたことを特徴とする前記(1)記載の3層複合スリーブロール。
(3)内層のNiの質量%を、0.1〜1.0%としたことを特徴とする前記(2)記載の3層複合スリーブロール。
(4)内層の材質を片状黒鉛鋳鉄、球状黒鉛鋳鉄、または黒鉛鋼とすることを特徴とする前記(1)〜(3)記載の3層複合スリーブロール。
(5)外層の化学成分が質量%で、C:1.0〜3.0%、Si:0.1〜2.0%、Mn:0.1〜2.0%、Ni:0.1〜1.0%、Cr:3.0〜10.0%、Mo:0.1〜9.0%、W:0.1〜1.0%、V、Nb:1種または2種の総計で3.0〜10.0%、残部Feおよび不可避的不純物からなることを特徴とする請求項1〜4記載の3層複合スリーブロール。
(6)外層にさらに、Co:1.0〜10.0%、および/またはB:0.01〜0.50%を含有することを特徴とする前記(5)記載の3層複合スリーブロール。
(7)外層にさらに、Al、Ti、Zrの1種または2種以上を0.01〜0.50%を含有することを特徴とする前記(5)〜(6)記載の3層複合スリーブロールにある。
以上述べたように、本発明による3層複合スリーブロールは、外層および内層のNiの質量%を中間層のNiの質量%より少なくすることにより、中間層に最適な圧縮残留応力を付与させることができ、圧延に発生する繰り返し応力が、脆弱な中間層に作用しても中間層が破壊することがなくなった。また、これにより圧延用スリーブロールが直径が小さいサイズまで使用可能となり、経済的なものとなる等の優れた効果を奏するものである。
以下、本発明について図面に従って詳細に説明する。
図2は、新製時での従来の3層複合スリーブロールの残留応力を示す図である。この従来のロール製造法においては、ロール鋳造後の熱処理により、外層1に圧縮応力、中間層2および内層3には引張応力が残留しており、かつ、外層/中間層の境界直下部には鋳造時に形成される脆弱な混合層4が残っている。ところで、圧延時にスリーブロールに負荷される繰り返し応力(ヘルツ応力)5は表面より深い位置に応力ピークが発生する。この応力ピークの位置は、圧延→摩耗→改削→再度・圧延使用の繰り返しによりロールの直径が小さくなっても、ほぼ一定の位置に発生する。なお、符号6は残留応力を示す。
図3は、圧延・改削による小径時での従来の3層複合スリーブロールの残留応力を示す図である。この図に示すように、外層が薄くなると強度的にも弱い脆弱部において、前記製造・熱処理により作用している引張残留応力に加えて、さらに、圧延による繰り返し応力が作用し、疲労によるクラックの発生、成長が急激に進むようになる。それが原因となって、スリーブロールの割損や使用径の制限(小直径になると圧延使用が不可)といった問題があった。
本発明では中間層に圧縮応力が残留するように、外層、中間層、内層の成分バランスを調整し、熱処理時の各層の変態挙動を制御することにより、上述したような問題を解決したものである。図1は、本発明に係る圧延・改削による小径時での3層複合スリーブロールの断面残留応力を示す図である。この図に示すように、本発明によれば、ロールの製造・熱処理後の中間層には圧縮応力が付与されているために、中間層域に、実際の圧延による圧延ピーク応力が重なったとしても疲労による損傷は小さく、従って、割損に至ることなく、また、従来の使用径の制限も解消される。
ここで、中間層に圧縮残留応力を付与せしめるための成分設計について説明する。
熱処理において外層はベイナイトあるいはマルテンサイト変態により変態膨張する。中間層に残留応力を付与せしめるには、中間層も熱処理時にベイナイトあるいはマルテンサイト変態により変態膨張する成分設計とする必要がある。変態膨張量に対して最も支配的に作用する成分はNiである。中間層は焼入れ時の冷却速度が小さいため、ベイナイトあるいはマルテンサイト変態が起き難い。従って、外層より多くのNiを添加する必要がある。一方、内層はパーライト組織であることが望ましく、ベイナイトあるいはマルテンサイト変態が起きないようNi添加を抑制する必要がある。
上述したような考え方により、外層および内層のNiの質量%<中間層のNiの質量%、とすることにより中間層に適度な圧縮残留応力を付与させることができることを見出したものである。外層はNiを添加することにより変態しやすくなり、高硬度が得られるが1%を超えると硬度が過大となり耐クラック性が低下する、あるいは残留オーステナイトが過大となり焼付きやすくなるといった問題が生ずるため、その最適範囲を0.1〜1.0%とした。
中間層については、外層より多くのNiを添加する必要がある。相対的に外層よりNi添加量が大きければ問題ないが、中間層の変態膨張量が外層の変態膨張量に比して、あまりにも小さい場合には変態を生じても残留応力は引張側に転ずるため、充分な変態膨張量を確保するためには1.0%超添加するのが好ましい。一方、Ni添加量が5.0%を超えると変態膨張量が過大となり、内層に生じる引張残留応力が過大となる。そこでその最適範囲を1.0%超〜5.0%とした。
特に、圧延荷重が厳しくスリーブロールが内面から割損する可能性のあるロールについては、内層に延性を付与するためにNiの添加が必要となる。その効果を得るためには、少なくとも、0.1%以上添加する必要がある。しかし、1.0%を超えて含有させると残留オーステナイトが増し、かえって強度低下を招くので、この値をその上限とした。
次に、本発明の3層複合スリーブロールの化学成分について説明する。
先ず、本発明の複合ロールに使用される耐摩耗鋳鉄材である外層の化学組成(単位は全て質量%)の限定理由について説明する。なお、外層の材質としては、一般的に圧延ロール用として従来より知られているハイス材であり、簡単に説明する。
C:1.0〜3.0%
Cは、主としてマトリックス中に固溶され、マルテンサイト相を形成する。さらに、Fe,Cr,Mo,W,V,Nb等と結合して種々の炭化物を形成する。しかし、1.0%未満だと炭化物量が少なく、耐摩耗性が得られない。また、逆に、3.0%を超えると、粗大な炭化物が形成され、靱性の低下や肌荒れの原因となる。従って、その範囲を1.0〜3.0%とする。
Si:0.1〜2.0%
Siは、湯流れ性の確保のために必要な元素であり、同時に、また、使用原材料から0.1%程度は不可避的に含有される。しかし、2.0%を超えると靱性の低下を招くため好ましくない。従って、その範囲を0.1〜2.0%とする。
Mn:0.1〜2.0%
Mnは、脱酸、脱硫作用を目的にして添加する。しかし、0.1%未満ではその効果が不十分であり、逆に、2.0%を超えると靱性を低下させるため、その範囲を0.1〜2.0%とする。
Cr:3.0〜10.0%
Crは、Fe,Mo,V,Nb,Wと共にCと結合して、高硬度複合炭化物を形成して高温における耐摩耗性の向上に寄与する。また、一部は基地中に固溶して焼入れ性および耐摩耗性を改善する。しかし、3.0%未満では、これらの効果が少なく、耐摩耗性改善が期待できない。一方、10.0%を超えて含有されると靱性の劣化を来すため好ましくない。従って、その範囲を3.0〜10.0%とする。
Mo:0.1〜9.0%
Moは、Fe,Cr,V,Nb,Wと共にCと容易に結合して、主としてM6 C型、M2 C型複合炭化物を形成し、常温および高温硬度を高めて耐摩耗性の向上に寄与する。MoはWに比較して少量添加でその効果を発揮する。しかし、0.1%未満では所期の耐摩耗性を得ることができず、一方、9.0%を超えると靱性の低下を来たし好ましくない。従って、その範囲を0.1〜9.0%とする。
W:0.1〜1.0%
Wは、Moと同様に、マトリックス中に固溶されて基地を強化すると共に、Cと結合してM6 C型やM2 C型等の共晶炭化物を形成し耐摩耗性が向上する。基地強化のためには、0.1%以上の含有が必要であるが、1.0%を超えると粗大共晶炭化物が形成されて靱性が低下する。従って、その範囲を0.1〜1.0%とする。
V,Nb:1種または2種の総計で3.0〜10.0%
VとNbは、共にCと容易に結合して、主としてMC型の複合炭化物を形成し、常温および高温硬度を高めて耐摩耗性の向上に寄与する。1種または2種を複合して3.0%以上添加しないと、その効果は現れ難い。しかし、添加量が10.0%を超えると靱性の低下を招来すると共に、遠心鋳造の際、マクロ偏析を生成し易くなる。このため、上限を10.0%とする。
本発明における外層の基本成分は、上記の通りであるが、適用を対象とするロールのサイズ、当該圧延機において、要求されるロールの諸特性により、その他の成分として、前記化学成分に加えて、さらに、以下に記載する化学成分を適宜選択し含有しても良い。
Co:1.0〜10.0%
Coは、その殆どがマトリックス中に固溶され基地を強化する。そのため、高温での強度および硬度を向上させる作用を有している。しかし、1.0%未満ではその効果は不十分であり、10.0%を超えるとその効果が飽和するため、経済性の観点からも10.0%以下が望ましい。Co添加の選択の有無については、例えば、使用特性上の高温硬度や摩擦係数低減等を考慮し、その添加の要否を適宜判断すると良い。
B:0.01〜0.50%
Bは、0.01%以上で、焼入れ性が高まり、また、靱性の低下を防ぐことができる。しかし、過剰になると靱性が低下するため、その上限を0.50%に抑える必要がある。
Al,Ti,Zr:各々0.01〜0.50%
Al,Ti,Zrは、溶湯中で酸化物を生成して、溶湯中の酸素含有量を低下させ、製品の健全性を向上させると共に、生成した酸化物が結晶核として作用するために凝固組織の微細化に効果がある。しかし、0.01%未満ではその効果は十分でなく、一方、0.50%を超えて含有されると介在物となって残留し、好ましくない。従って、その範囲を各々0.01〜0.50%とする。
次に、本発明の複合スリーブロールの内層材について説明する。内層材としては、黒鉛が晶出した材料、具体的には、黒鉛鋼、球状黒鉛鋳鉄、片状黒鉛鋳鉄が適している。これらの成分について、圧延用ロールの内層材としては公知である。従って、以下に前記を代表して黒鉛鋳鋼を掲げ、好ましい化学組成について説明する。
C:1.0〜2.3%、Si:0.5〜3.0%、Mn:0.2〜1.5%、P:0.2%以下、S:0.2%以下、Ni:0.1〜1.0%、Cr:2.0%以下、Mo:2.0%以下、W,V,Nbの総計で4.0%以下、残部実質的にFeC、Si以外の成分限定理由はFCと同様のため、この2成分について説明する。
C:1.0〜2.3%
Cは、黒鉛を晶出させるために必要である。しかし、1.0%未満では黒鉛の晶出は生じにくい。一方、2.3%を超えると黒鉛形状が崩れて強度が低下する。従って、その上限を2.3%とする。
Si:0.5〜3.0%
Siは、黒鉛化のために必要である。しかし、0.5%未満では、黒鉛晶出は困難となり、一方、3.0%を超えると基地が脆くなる。従って、その範囲を0.5〜3.0%とする。
Mn:0.2〜1.5%
Mnは、基地の強化と共にSの害を防ぐ作用がある。しかし、0.2%未満ではその作用が殆ど期待できない。一方、1.5%を超えると材質が脆くなる。従って、その範囲を0.2〜1.5%とする。
P、S:各々0.2%以下
P、Sは、不純物元素であるため、少ない程よく、0.2%以下に止めるのが良い。低濃度のものは高いコストになるため、経済性を考慮すると、0.01%以上の含有は止むを得ない。
Ni:0.1〜1.0%
Niは、内層に延性を付与するために、必要に応じて添加すると良い。その効果を得るためには、少なくとも、0.1%以上添加する必要がある。しかし、1.0%を超えて含有させると残留オーステナイトが増し、かえって強度低下を招くので、この値をその上限とした。
Cr、Mo:各々2.0%以下
Cr、Moは、基地の強化作用があるが、多過ぎると黒鉛化を阻害させる。基地強化のためには、0.1%以上含有させることが望ましいが、一方、黒鉛化の阻害を防止するには、外層からの混入量を含めて、2.0%以下に止める必要がある。
W,V,Nbの総計で4.0%以下
W,V,Nbは、外層から必然的に混入する。W,V,Nbは内層材質改善作用はない。従って、これらの元素は不純物として解釈され、内層材の機械的性質を劣化させない範囲として、4%まで許容される。なお、外層にAl,Ti,Zr,Bを含んでいるので、これらの元素も中間層を介して内層に必然的に混入するが微量であるため、材質上殆ど問題にはならない。なお、中間層に溶着する前、すなわち、鋳込前の溶湯組成範囲を下記に例示する。溶湯組成は溶着後に上記内層組成となるように、中間層からの成分混入量が考慮されて決定される。
次に、中間層について説明する。
中間層は、外層の合金成分が内層に混入するのを軽減することを目的の一つとして形成されるが、それ自体も30kg/mm2 以上の強度が必要である。強度が不足すると、外層と中間層との境界部が破断し、外層が剥離する。従って、中間層には外層から多量の合金成分が混入しても高強度な材質とする必要がある。かかる理由から、中間層材としては、下記組成の高炭素鋳鉄が好適である。
以下、本発明に係る中間層材の組成と限定理由を説明する。
C:1.0〜2.5%
Cは、強度向上に寄与するが、1.0%未満では凝固点が高くなり、溶着が不十分になり易い。一方、2.5%を超えると炭化物が過多となり、材質が脆くなる。従って、その範囲を1.0〜2.5%とする。
Si:0.2〜3.0%
Siは、脱ガスの促進作用、湯流れ性の向上作用がある。しかし、0.2%未満ではかかる作用が期待できず、一方、3.0%を超えると材質が脆化する。なお、高Si領域ではNi含有量との関係で黒鉛の晶出が見られる場合があるが、材質上問題はない。
Mn:0.2〜1.5%
Mnは、前記内層材の黒鉛鋳鋼と同様の理由で、基地の強化と共にSの害を防ぐ作用がある。しかし、0.2%未満ではその作用が殆ど期待できない。一方、1.5%を超えると材質が脆くなる。従って、その範囲を0.2〜1.5%とする。
Ni:1.0超〜5.0%
Niは、前述の通り、変態膨張量を調整し、残留応力分布を制御する重要な元素であり、外層より多くのNiを添加する必要がある。相対的に外層よりNi添加量が大きければ問題ないが、中間層の変態膨張量が外層の変態膨張量に比して、あまりにも小さい場合には変態を生じても残留応力は引張側に転ずるため、充分な変態膨張量を確保するためには1.0%超添加するのが好ましい。一方、Ni添加量が5.0%を超えると変態膨張量が過大となり、内層に生じる引張残留応力が過大となる。そこでその最適範囲を1.0%超〜5.0%とした。
Cr,Mo:各々4.0%以下
Cr,Moは、材質を強化する作用がある。しかし、4.0%を超えると機械的性質がかって劣化するようになる。従って、その上限を各々4.0%とした。
W,V,Nb,B,Al,Ti,Zr:総計で12%以下
W,V,Nb,B,Al,Ti,Zrの元素は、中間層の材質を向上する作用は殆どないが、外層からの混入は避けられない。中間層材質の機械的性質を劣化させない範囲として、12%まで許容される。なお、外層に前記W,V,Nb,BまたはW,V,Nb,B,Al,Ti,Zrを含んでいるので、これらの元素は中間層に必然的に入ってくる。中間層材の成分は、以上の他、残部実質的にFeで形成される。なお、P、Sは不純物であり、材質を脆くするため少ない程良く、本発明においては、内層材と同様、両者とも0.2%以下に止めるのが良い。
以下、本発明について実施例によって具体的に説明する。
表1に示す化学成分にて、低周波誘導炉を用いて溶解した溶湯の本発明例のロール11本、比較例のロール3本の溶湯を、水平式の遠心鋳造機に組み込んだ、内径1250mm、長さ2000mmの回転鋳型内に鋳造して、スリーブ用の素材を製造した。次に、粗加工を行い、1000℃の焼入れと500〜550℃で数回の焼き戻しを実施した。その後、機械加工により、寸法が外径1200mm、内径が560mm、幅1800mmの3層スリーブロールを作製した。このスリーブロール本体の品質確保のために、外層の硬度、引張強度、X線によりスリーブロールにおける中間層部の残留応力の測定、さらに、その後、該スリーブロールを強靱性の芯材に焼き嵌めし、実際の圧延に供し、耐摩耗性、耐肌荒れ性、耐き裂性(耐事故性)を評価した。その結果を表1に示す。
Figure 2005246391
表1に示すように、本発明例No.1〜11の外層材については、いずれも、ロールの中間層と外層のNi量について、中間層の含有量を外層の含有量より多くしたものである。この表1から明らかなように、中間層の含有量を外層の含有量より多くしたNo.1から11のロールにおいては、いずれも、熱処理後の残留応力が、圧縮の数値を示している。一方、これに対応する、比較例No.12〜14においては、中間層の含有量を外層ないしは内層のいずれかよりも少ないために、同一に熱処理をしても熱処理後の残留応力が、引張りの数値を示している。その結果、実際の圧延機による使用評価において、本発明材のNo.1〜11においては、いずれも耐き裂は、健全であるに対し、比較例No.12〜14では、中間層において圧延使用中に破壊が発生した。
上述した実施例においては、本発明の3層スリーブロールの製造方法を、遠心鋳造法として、説明したが、本発明は、この製法に限らず、他には、連続鋳掛肉盛り法、ESR法、HIP法のいずれか一つにより製造しても同様な作用、効果を奏するものである。
本発明に係る圧延・改削による小径時での3層複合スリーブロールの断面残留応力を示す図である。 新製時での従来の3層複合スリーブロールの残留応力を示す図である。 圧延・改削による小径時での従来の3層複合スリーブロールの残留応力を示す図である。
符号の説明
1 外層
2 中間層
3 内層
4 脆弱な混合層
5 繰り返し応力
6 残留応力


特許出願人 新日本製鐵株式会社 他1名
代理人 弁理士 椎 名 彊 他1

Claims (7)

  1. ハイス系材料からなる外層と、該外層に溶着された中間層と、該中間層に溶着された内層とからなる3層複合スリーブロールにおいて、前記3層材料の化学組成であるNiの質量%を、(外層および内層のNiの質量%)<(中間層のNiの質量%)とし、かつ鋳造・熱処理後の前記中間層に、周方向の圧縮応力を作用させたことを特徴とする3層複合スリーブロール。
  2. 外層、中間層、内層の化学組成であるNiの質量%を、外層のNi%:0.1〜1.0%、中間層のNi%:1.0%超〜5.0%、としたことを特徴とする請求項1記載の3層複合スリーブロール。
  3. 内層のNiの質量%を、0.1〜1.0%としたことを特徴とする請求項2記載の3層複合スリーブロール。
  4. 内層の材質を片状黒鉛鋳鉄、球状黒鉛鋳鉄、または黒鉛鋼とすることを特徴とする請求項1〜3記載の3層複合スリーブロール。
  5. 外層の化学成分が質量%で、
    C:1.0〜3.0%、
    Si:0.1〜2.0%、 Mn:0.1〜2.0%、
    Ni:0.1〜1.0%、 Cr:3.0〜10.0%、 Mo:0.1〜9.0%、 W:0.1〜1.0%、 V、Nb:1種または2種の総計で3.0〜10.0%、
    残部Feおよび不可避的不純物からなることを特徴とする請求項1〜4記載の3層複合スリーブロール。
  6. 外層にさらに、Co:1.0〜10.0%、および/またはB:0.01〜0.50%を含有することを特徴とする請求項5記載の3層複合スリーブロール。
  7. 外層にさらに、Al、Ti、Zrの1種または2種以上を0.01〜0.50%を含有することを特徴とする請求項5〜6記載の3層複合スリーブロール。
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