JP2005243746A - バリスタ - Google Patents

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Abstract

【課題】 バリスタを高温の下に晒される等の過酷な環境で長時間放置した場合でも、外装材の経時変化が少なく、バリスタの破壊時に内容物が飛散しないようにする。
【解決手段】 バリスタの構造としてセラミック素体にリード線を取り付けるとともに、このセラミック素体を無機フィラーを主成分とする外装材で形成した第1の被覆層で覆う。さらに、この第1の被覆層を、難燃性および柔軟性を持つ第2の被覆層によって、第1の被覆層の一部が露出するようにして覆う。この際の、第2の被覆層の初期のデュロメータ硬度を20以上60以下の範囲とする。
【選択図】 図1

Description

本発明は、バリスタ(電圧非直線性抵抗器)に係り、特に、外装構造の不燃化ないし難燃化に関する。
近年、電子機器の筺体等には軽量化のため、プラスチックが多用されているが、筺体等に用いられているプラスチックは可燃性を持っている。また、電子機器の小型化のため、電子部品の高密度実装が進むと、電子部品自体の焼損が、電子機器の延焼を引き起こす危険も出てくる。
このような電子機器や電気機器に実装されるバリスタは、電子部品や機器を外来又は内来サージより保護するための使用されている。しかし、バリスタが吸収エネルギーの限界を超えるサージを吸収し、バリスタが破損して短絡状態となると、ジュール発熱により、バリスタ本体が高熱化してしまう。このような中、バリスタの外装として、無機フィラー成分とエポキシ樹脂成分からなる外装を用いた場合には、外装が可燃性であるため、外装が燃焼してしまうことが想定される。
このような外装の燃焼を抑制する技術としては、特開2002−93602号公報に示されたような、外装材から可燃性成分を減少させ、無機不燃成分を増加して不燃性を高めたものが知られている。
特開2002−93602号公報
ところで、外装材から樹脂成分を減少させると、外装材の強度が低下し、脆くなる傾向にある。バリスタが破壊し、短絡状態となったとき、バリスタ素子に穿孔を生じ、スパークが起こるが、外装材が機械的強度の低下によって脆くなっていると、スパークが発生したとき、その衝撃によって、バリスタ素体から外装材が剥離する。剥離した外装材は破片化し、スパーク発生時に高温化して溶融したセラミックや、溶融した半田とともに、バリスタの周囲にその破片が飛散する。このため、バリスタの外装材自体の燃焼性を抑制しても、高温化した飛散物がバリスタの周囲に実際されている可燃物に引火する危険性が有り、その飛散物に含まれる半田は導電性物質であるため、付着した回路にショートを生じさせる等の危険性もある。
そこで、サージ吸収等のバリスタの動作時に、破壊によるセラミック材や半田等の飛散を抑制したバリスタ及びその製造方法として、出願人は先に特願2002−197960号を提案している。この出願は、セラミック素体にリード線を取り付けてなるバリスタであって、前記セラミック素体を覆う第1の被覆層と、この第1の被覆層をその一部に露出部を設けて覆う難燃性及び柔軟性を持つ第2の被覆層とを備えた構成により、第1の被覆層が難燃性及び柔軟性を持つ第2の被覆層で覆われているので、バリスタが破損、ショートした際にその衝撃を第1及び第2の被覆層による多層化と、第2の被覆層が持つ柔軟性とによって緩和でき、第1の被覆層の破損をも防止できるとともに、高温物質、導電性物質の飛散を抑制することができる。しかも、第2の被覆層が難燃性であることから第1の被覆層が可燃性である場合にも、バリスタを難燃化できるというものである
しかしながら、上記の特願2002−197960号によって提案したバリスタにおいても、高温の下に晒される等の過酷な環境で長時間放置されると、外装材の経時変化により、飛散を防止する効果が低下する場合があった。
この原因について検討を進めたところ、第2の被覆層としてシリコン系樹脂材料を使用した場合には、このシリコン系樹脂材料が熱劣化ですることが判明した。すなわち、高温下では酸化分解により、シリコン系樹脂材料の硬度が徐々に高くなり、シリコン系樹脂材料の柔軟性、あるいは伸縮性が低下していく。そして、このことにより、バリスタ破壊時の衝撃によって、シリコン系樹脂材料が破断し、外部に内容物を飛散させることがあることを突き止めた。
このような問題点を解決するために、発明者らは鋭意検討したところ、この発明に至った。
この出願の請求項1に係る発明は、セラミック素体にリード線を取り付けるとともに、前記セラミック素体を覆う第1の被覆層と、この第1の被覆層をその一部に露出部を設けて覆う難燃性および柔軟性を持つ第2の被覆層とを備えたバリスタであって、前記第2の被覆層の初期のデュロメータ硬度を20以上60の範囲としたことを特徴とするバリスタである。
第1の被覆層が難燃性及び柔軟性を持つ第2の被覆層で覆われているので、バリスタが破損、ショートした際にその衝撃を第1及び第2の被覆層による多層化と、第2の被覆層が持つ柔軟性とによって緩和でき、第1の被覆層の破損をも防止できるとともに、高温物質、導電性物質の飛散を抑制することができる。しかも、第2の被覆層が難燃性であることから第1の被覆層が可燃性である場合にも、バリスタを難燃化できる。
第2の被覆層の初期のデュロメータ硬度を20以上60以下の範囲としておくことにより、その後に、高温の下に晒される等の過酷な環境で長時間放置しても、第2の被覆層の柔軟性や伸縮性が維持され、バリスタの破壊時に内容物の飛散を防止することができるようになる。
この出願の請求項2に係る発明は、請求項1記載のバリスタにおいて、前記第1の被覆層が、無機フィラーを主成分とする外装材で形成されていることを特徴とする。
第1の被覆層に無機フィラーを主成分とする外装材を用いれば、無機フィラーは不燃成分であるから、可燃成分である樹脂の含有量を低減でき、第1の被覆層の不燃化を高めることができ、第2の被覆層の難燃化と相俟って不燃化バリスタを構成できる。
この出願の請求項3に係る発明は、請求項1記載のバリスタにおいて、前記第2の被覆層が、前記セラミック素体の少なくとも前記リード線の導出部を除いて形成されていることを特徴とする。
即ち、リード線の導出部側に第1の被覆層の露出部を形成しているので、基盤側に向かう部分からガスや内容物が放出され、内容物の周囲への飛散を防止できる。
本発明によれば、次の効果が得られる。
a 難燃性且つ柔軟性を有する第2の被覆層によって、一部に露出部を設けてオーバーコートしたので、バリスタが破損、ショートしたとき、この衝撃による高温物質及び導電性物質の飛散を抑制でき、バリスタ周辺部への類焼を防止でき、安全性の高いバリスタを提供できる。
b 第1の被覆層上に形成する第2の被覆層には一部に第1の被覆層を露出させる露出部を設けたので、破壊ショート時の高温ガスをその露出部より放出させることができ、第2の被覆層の破壊を防止でき、また、高温ガスとともに高温物質及び導電性物質が噴出したとしても、周辺部への飛散を確実に防止でき、安全性の高いバリスタを得ることができる。
c 第2の被覆層の初期のデュロメータ硬度を20以上60以下としたので、高温の下に晒される等の過酷な環境で長時間放置しても、第2の被覆層の柔軟性や伸縮性が維持され、バリスタの破壊時に内容物の飛散を防止することができる。
図1及び図2は本発明の実施の形態に係るバリスタ及びその製造方法を示し、図1はバリスタの外観形状、図2は図1に示すバリスタのリード線に沿う断面を示している。
セラミック素体2は、酸化亜鉛を主成分とし、酸化マグネシウム、酸化ビスマス、酸化コバルト等を加えた焼結体であって、この実施の形態では円盤状に形成されている。このセラミック素体2の両面には、導電性材料の印刷及び焼成によって電極4、6が形成され、各電極4、6にはリード線8、10がハンダ12により固着されて電気的に接続されている。
そして、セラミック素体2の外面部には、無機フィラーを主成分とする外装材からなる第1の被覆層14が設置され、この被覆層14はセラミック素体2上の電極4、6及びリード線8、10、電極4、6の近傍におけるリード線8、10の一部を覆って形成されている。
被覆層14の外面部には、難燃性ないし不燃性を有するとともに柔軟性を有するシリコン樹脂等の合成樹脂からなる第2の被覆層16が形成されている。この実施の形態では、リード線8、10の導出部側の被覆層14の一部を露出させる露出部18を設けて形成されている。露出部18は、被覆層14の未コート部である。この場合、被覆層16を全面的に形成した場合のバリスタ本体部分の仮想直径をL、被覆層16によるオーバーコート部の幅をAとすると、オーバーコート被覆率ηを、
η=(A/L)×100%・・・(1)
とする。この実施の形態では、被覆層16が電極4、6を全面的に覆う位置まで形成されており、この場合のオーバーコート被覆率ηAは95%である。露出部18を幅方向にB、C、D、E、Fに変更した場合において、オーバーコート被覆率は、例えば、η{=(B/L)×100%=90%}、η{=(C/L)×100%=80%}、η{=(D/L)×100%=70%}、η{=(E/L)×100%=60%}、η{=(F/L)×100%=50%}等、任意の値を設定することができる。
このように、セラミック素体2を覆う被覆層14上に電極4、6をほぼカバーする位置まで被覆層16を形成したので、被覆層14、16の多層化された外装構造が構成され、被覆層16が持つ柔軟性と相俟ってサージ吸収によるスパーク時の被覆層14やハンダ12の破片の飛散を防止できる。また、被覆層16は、難燃性ないし不燃性を有することから、バリスタの不燃化に寄与している。しかも、露出部18を設けているので、被覆層16の密閉空間の形成がなく、その内圧上昇による内容物の飛散をも防止でき、動作時の安全性を高めることができる。
また、被覆層16の初期のデュロメータ硬度を20以上60の範囲としたことにより、バリスタを高温の下に晒される等の過酷な環境で長時間放置しても、被覆層16の柔軟性や伸縮性が維持され、バリスタの破壊時に内容物の飛散を防止することができる。
次に、このバリスタの製造方法について説明すると、このバリスタは、セラミッタ素体2の形成処理、リード線8、10の技続処理、被覆層14の形成処理及び被覆層16の形成処理から製造される。
(1)セラミック素体2の形成処理
セラミック素体2は、酸化亜鉛等を主成分とし、酸化マグネシウム、酸化ビスマス、酸化コバルト等を加えた素子材料を成形、焼結することにより焼結体として形成される。この焼結体は任意の形状に形成でき、この実施形態では、円盤状である。このセラミック素体2の表裏面には導電性材料の印刷及び焼成により、電極4、6が形成され、この結果、バリスタ素子が得られる。
(2)リード線8、10の接続処理
リード線8、10には導線が使用され、セラミック素体2の表面に形成された各電極4、6に各リード線8、10をハンダ12によって固着し、電気的に接続する。
(3)被覆層14の形成処理
被覆層14には、無機フィラーを主成分とする液状外装材が用いられ、この液状外装材中にセラミック素体2を浸漬し、このディップ処理により液状外装材層を形成し、常温乾燥の後、セラミック素体2の外面部に被覆層14が形成される。この場合、セラミック素体2、電極4、6及び電極4、6上のリード線8、10を液状外装材中に漬け、バリスタ本体部分の近傍のリード線8、10にも液状外装材で被覆する。
また、この被覆層14の形成処理は、セラミック素体2の液状外装材中への浸漬と、乾燥とを一回又は数回交互に行い、また、その浸漬時間、乾燥温度及び乾燥時間は任意に設定される。
(4)樹脂層16の形成処理
この被覆層14上に被覆層16を形成する。被覆層16には、難燃性ないし不燃性を有するとともに柔軟性を有するシリコン樹脂等の液状合成樹脂が使用される。この場合、被覆層14が形成されたバリスタ本体部分を、その一部に露出部18を残して液状合成樹脂中に漬け込み、ディップ処理によって合成樹脂を付着させ、常温乾燥の後、難燃性ないし不燃性を有するとともに柔軟性を有する被覆層16が形成される。
このような製造方法によれば、被覆層14の上に露出部18を設けて所望の範囲で難燃性ないし不燃性を有するとともに柔軟性を有するシリコン樹脂等の被覆層16を容易に形成でき、信頼性の高いバリスタを製造することができる。この実施の形態では、露出部18がリード線8、10の導出部分側に形成されている。
本発明のバリスタ及びその製造方法の一実施例を説明する。
セラミック素体2には、酸化亜鉛を主成分とし、酸化マグネシウム、酸化ビスマス、酸化コバルト等を加えたφ10mmの円盤状焼結体を使用し、このセラミック素体2の両面にφ8mmの電極4、6を印刷し、焼成した。この電極4、6にφ8mmのリード線8、10をハンダ付けした。
そして、無機フィラーを主成分とする液状外装材中に電極4、6及びリード線8、10を備えたセラミック素体2を漬け込み、外装コーティング処理によって被覆層14を形成する。その手順としては、例えば、第1のディップ処理(例えば、2秒間)→常温乾操(例えば、5秒間)→第2のディップ処理(例えば、2秒間)→常温乾燥(例えば、20秒間)→第3のディップ(例えば、2秒間)→常温乾燥(例えば、12時間)→所定温度(例えば、150℃)下で硬化処理(例えば、1時間)を行う。この結果、被覆層14が形成される。
このような処理によって被覆層14が形成されたバリスタ本体部分をその一部に露出部18を残してシリコン樹脂中に所定時間(例えば、10秒間)だけ漬け、このディップ処理の後、所定温度(例えば、150℃)下で硬化処理(例えば、1時間の硬化処理)を行うことにより、露出部18とともに被覆層16が形成される。
この実施例に係るバリスタの飛散防止効果を確認するため、従来の不燃性バリスタとともに過電圧を印加し、破壊時の飛散状態の試験結果を図3に示している。この場合、試験条件は、過電率=印加電圧(ACVrms)÷バリスタ電圧(V/1mA)=0.85であり、試料にはφ10、定格電圧が270Vのバリスタを使用し、試験回数n(回)は本発明品及び従来品に対して共にn=20とした。図3において、例えば、A点:η{=(A/L)×100%=95%}、B点:η{=(B/L)×100%=90%}、C点:η{=(C/L)×100%=80%}、D点:η{=(D/L)×100%=70%}、E点:η{=(E/L)×100%=60%}、F点:η{=(F/L)×100%=50%}である。
このバリスタでは、図3に示すグラフから明らかなように、被覆層16が被覆層14の上部から2/3以上で、内容物の飛散防止効果が得られており、被覆層16で完全被覆を施した場合には再び内容物の飛散が発生している。これは、少なくとも焼結体(セラミック素体2)に形成された電極4、6を被覆層16で覆うことが必要であり、しかも、電極4、6を覆う位置まで柔軟性を持つ被覆層16が存在しないと、内容物が飛散し、また、被覆層16で完全被覆を施すと、内部の発生ガスの逃げ場が閉ざされ、その結果、被覆層16が形成する空間の内圧が上昇し、内容物を飛散させることが確認されている。
次に、被覆層16を先し示した被覆率ηをB点:η{=(B/L)×100%=90%}とし、被覆層16の初期のデュロメータ硬度をパラメータとして変化させて、高温放置試験(125℃1000時間)、ヒートサイクル試験(−40℃から125℃までの昇温および降温を100サイクル繰り返す)、高温耐湿試験(85℃85%RH、1000時間)を経た後に、バリスタに過電圧を印加して、バリスタを破壊し、内容物の飛散状況の調査を行った。この結果を次の表1に示す。

この表1の結果から判るように、被覆層16の初期のデュロメータ硬度が60以下の場合には、内容物の飛散は発生しなかったが、デュロメータ硬度が60を超えると、バリスタの過電圧試験時に、内容物の飛散が発生していた。従って、内容物に飛散を抑制するためには、デュロメータ硬度が60以下であれば良いことが判る。なお、初期のデュロメータ硬度が20未満となると、被覆層が柔らかすぎて、流動してしまう場合があり、実用的でないことを確認した。
なお、実施例では、被覆層16にシリコン系樹脂を使用しているが、難燃性を持ち、柔軟性を有する材料であれば、何れのものでもよく、シリコン系樹脂に限定されるものではない。シリコン系樹脂以外の樹脂であっても、初期のデュロメータ硬度は20以上60以下の範囲では、高温での長時間放置された場合でも、被覆層の柔軟性が維持されるようになる。
本発明のバリスタ及びその製造方法を示す実施の形態であって、バリスタを示す平面図である。 図1に示すバリスタをリード線に沿って切り欠いて示した断面図である。 本発明の実施例に係るバリスタの試験結果を示すグラフである。
符号の説明
2 セラミック素体
4、6 電極
8、10 リード線
12 ハンダ
14 第1の被覆層
16 第2の被覆層
18 露出部

Claims (3)

  1. セラミック素体にリード線を取り付けるとともに、前記セラミック素体を覆う第1の被覆層と、この第1の被覆層をその一部に露出部を設けて覆う難燃性および柔軟性を持つ第2の被覆層とを備えたバリスタであって、前記第2の被覆層の初期のデュロメータ硬度を20以上60以下の範囲としたことを特徴とするバリスタ。
  2. 前記第1の被覆層が、無機フィラーを主成分とする外装材で形成されていることを特徴とする請求項1記載のバリスタ。
  3. 前記第2の被覆層が、前記セラミック素体の少なくとも前記リード線の導出部を除いて形成されていることを特徴とする請求項1記載のバリスタ。
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