JP2005243618A - 膜触媒層接合体、膜電極接合体および高分子電解質形燃料電池 - Google Patents

膜触媒層接合体、膜電極接合体および高分子電解質形燃料電池 Download PDF

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Abstract

【課題】 初期特性の低下を充分に防止できるだけでなく、長期にわたって充分な電池性能を発揮する、優れた耐久性を有する高分子電解質型燃料電池を実現し得る膜触媒層接合体を提供すること。
【解決手段】 少なくともカソード触媒層において、触媒担持カーボンの質量WCat-Cに対する前記高分子電解質の質量WPの比(WP/WCat-C)を、高分子電解質膜に最も近い位置に配置される最内層から、高分子電解質膜から最も遠い位置に配置される最外層にかけて減少させ、最内層における比(WP/WCat-C)を0.8〜3.0とし、かつ最外層における比(WP/WCat-C)を0.2〜0.6とする。
【選択図】図1

Description

本発明は、膜触媒層接合体、膜電極接合体およびこれらを備えた高分子電解質型燃料電池に関する。
燃料電池(FC)は発電効率が高く、環境への負荷も小さいことから、分散型エネルギーシステムとして、今後の普及が見込まれている。なかでも、陽イオン(水素イオン)伝導性を有する高分子電解質を用いた高分子電解質型燃料電池は、出力密度が高く、その作動温度が低く、小型化が可能であることから、自動車などの移動体、分散発電システムおよび家庭用のコージェネレーションシステムなどに利用されることが期待されている。
従来の高分子電解質型燃料電池は、水素を含有する燃料ガスと空気などの酸素を含有する酸化剤ガスとを電気化学的に反応させることで、電力と熱とを同時に発生させる。ここで、図4は、従来の高分子電解質型燃料電池に搭載される単電池の基本構成の一例を示す概略断面図である。また、図5は、図4に示す単電池100に搭載される膜電極接合体(MEA:Membrane-electrode assembly)の基本構成の一例を示す概略断面図であり、図6は、図5に示す膜電極接合体101を構成する膜触媒層接合体(CCM:Catalyst-coated membrane)の一例を示す概略断面図である。
図6に示すように、膜触媒層接合体102においては、水素イオンを選択的に輸送する高分子電解質膜111の両面に、電極触媒(例えば白金系の金属触媒)をカーボン粉末に担持させて得られる触媒担持カーボンと、水素イオン伝導性を有する高分子電解質とを含む触媒層112が形成される。高分子電解質膜111としては、パーフルオロカーボンスルホン酸からなる高分子電解質膜(例えば、米国DuPont社製のNafion(商品名)など)が一般的に使用されている。
図5に示すように、膜電極接合体101は、触媒層112の外面に、例えば撥水処理を施したカーボンペーパーを用いて、通気性および電子伝導性を併せ持つガス拡散層113を形成することによって構成される。この触媒層112とガス拡散層113との組合せにより電極(アノードまたはカソード)114が構成される。さらに、図4に示すように、単電池100は、膜電極接合体101と、ガスケット115と、一対のセパレータ板116とで構成される。ガスケット115は、供給される燃料ガスおよび酸化剤ガスの外部へのリーク防止や混合を防止するため、電極の周囲に高分子電解質膜を挟んで配置される。ガスケット115は、電極および高分子電解質膜とあらかじめ一体化されている。なお、高分子電解質膜111、一対の電極114(触媒層112およびガス拡散層113)およびガスケット115を組み合わせたものを膜電極接合体と呼ぶこともある。
膜電極接合体101の外側には、膜電極接合体101を機械的に固定するための一対のセパレータ板116が配置される。セパレータ板116の膜電極接合体101と接触する部分には、電極に反応ガス(燃料ガスまたは酸化剤ガス)を供給し、電極反応生成物、未反応の反応ガスを含むガスを反応場から電極外部に運び去るためのガス流路117が形成される。ガス流路117はセパレータ板116と別に設けることもできるが、図4に示すようにセパレータ板の表面に溝を設けてガス流路を形成する方式が一般的である。また、セパレータ板116の膜電極接合体101とは反対の側には、切削により溝を設けて、冷却水流路118が形成されている。
このように、一対のセパレータ板116で膜電極接合体101を固定し、一方のセパレータ板のガス流路に燃料ガスを供給し、他方のセパレータ板のガス流路に酸化剤ガスを供給することで、数十から数百mA/cmの実用電流密度通電時において、一つの単電池で0.7〜0.8V程度の起電力を発生させることができる。しかし、通常、高分子電解質型燃料電池を電源として使うときは、数ボルトから数百ボルトの電圧が必要とされるため、実際には、単電池を必要とする個数だけ直列に連結してスタックとして使用する。
ガス流路117に反応ガスを供給するためには、反応ガスを供給する配管を、使用するセパレータ板の枚数に対応する数に分岐し、それらの分岐先を直接セパレータ板上のガス流路につなぎ込む部材であるマニホールドが必要となる。特に反応ガスを供給する外部の配管から直接セパレータ板につなぎ込むタイプのマニホールドを、外部マニホールドと呼ぶ。一方、より簡単な構造を有する内部マニホールドと呼ばれるものもある。内部マニホールドは、ガス流路を形成したセパレータ板に設けられた貫通孔で構成され、ガス流路の出入り口をこの孔に連通させて、この貫通孔から直接反応ガスをガス流路に供給することができる。
ガス拡散層113は、主につぎの3つの機能を持つ。第1の機能は、ガス拡散層113の外側に位置するセパレータ板116のガス流路から、触媒層112中の電極触媒へ均一に反応ガスを供給するために、該反応ガスを拡散させる機能であり、第2の機能は、触媒層112で反応により生成した水を速やかにガス流路に排出する機能である。また、第3の機能は、反応に必要な電子または生成された電子を伝導する機能である。即ち、ガス拡散層113には、高い反応ガス透過性、水分排出性および電子伝導性が必要とされる。
一般的に、ガス拡散層113には、ガス透過性を持たせるために、発達したストラクチャー構造を有するカーボン微粉末、造孔材、カーボンペーパーまたはカーボンクロスなどを用いて作製された、多孔質構造を有する導電性基材が用いられている。また、排水性を持たせるために、フッ素樹脂を代表とする撥水性高分子などをガス拡散層113の中に分散させることが行われ、さらに、電子伝導性を持たせるために、カーボン繊維、金属繊維またはカーボン微粉末などの電子伝導性材料でガス拡散層113を構成することも行われている。ガス拡散層113の触媒層112と接する面には、撥水性高分子とカーボン粉末とで構成される撥水カーボン層が設けられることもある。
つぎに、触媒層112は、主に4つの機能を持つ。第1の機能は、ガス拡散層113から供給された反応ガスを、触媒層112の反応サイトに供給する機能であり、第2の機能は、電極触媒上での反応に必要な水素イオンまたは生成された水素イオンを伝導する機能である。また、第3の機能は、反応に必要な電子または生成された電子を伝導する機能であり、第4の機能は、高い触媒性能とその広い反応面積によって電極反応を速める機能である。即ち、触媒層112には、高い反応ガス透過性、水素イオン伝導性、電子伝導性および触媒性能が必要となる。
一般的に、触媒層112としては、ガス透過能を持たせるために、発達したストラクチャー構造を有するカーボン微粉末または造孔材を用いて、多孔質構造およびガスチャンネルを有する触媒層が形成されている。また、水素イオン透過能を持たせるために、高分子電解質を触媒層112中の電極触媒近傍に分散させて水素イオンネットワークを形成することが行われている。さらに、電子伝導性を持たせるために、電極触媒の担体としてカーボン微粉末やカーボン繊維などの電子伝導性材料を用い、電子チャンネルを形成することが行われている。また、触媒性能を向上させるために、粒径が数nmの非常に微細な粒子状の電極触媒をカーボン微粉末上に担持させた触媒体を、触媒層112中に高分散させることが行われている。
ここで、高分子電解質型燃料電池の実用化に向けて、膜電極接合体101および膜触媒層接合体102について、様々な性能の向上のための検討が行われている。
例えば特許文献1および2においては、高分子電解質膜の分解劣化を抑制するため、高分子電解質膜そのものの機械的強度および耐熱性を強化することを意図した技術が提案されている。具体的には、芯材を用いて高分子電解質膜を物理的に補強する方法、および高分子電解質膜の耐久性を化学的に向上させる方法などが提案されている。
また、触媒層については、例えば特許文献3〜5において、高分子電解質膜からガス拡散層にかけて均一な単層構造を有する触媒層に対し、種々の観点から新規な構造を有する触媒層が提案されている。具体的には、生成水によるフラッディングを抑制することを意図して触媒層内で気孔率を変化させる方法、高分子電解質膜近傍でのプロトン伝導性を確保することを意図して触媒層内で高分子電解質の割合を変化させる方法などが提案されている。
また、特許文献6においては、プロトン伝導性およびガス拡散性のバランスに優れた触媒層を形成することを意図して、電解質の量の異なる複数の層で触媒層を構成する技術が提案されている。さらに、特許文献7においては、加湿条件にかかわらず反応ガスの供給を良好にして燃料電池の初期特性を向上させることを意図して、触媒層の空隙率を高分子電解質膜側からガス拡散層側にむけて増大させる技術が提案されている。より具体的には、触媒層における触媒に対する高分子電解質の量について検討されている。
特開平10-92444号公報 特開2003-59512号公報 特開平8-88008号公報 特開2003-303596号公報 特開2004-47454号公報 特開2002-298860号公報 特開2004-192950号公報
しかしながら、上記のような従来技術は、最終的には燃料電池の初期の電池特性、高分子電解質膜の機械的強度および耐熱性を向上させることを意図して提案されているものであり、FCを長期にわたり運転することを想定した場合の膜電極接合体および膜触媒層接合体、さらには燃料電池の耐久性や寿命特性を向上させることについては十分には検討されていなかった。
具体的には、上記特許文献1〜2に記載の技術に基づき、高分子電解質膜の耐久性を補強するだけでは、FCを長期にわたり運転することを想定した場合の膜電極接合体および膜触媒層接合体の劣化を十分に防止することはできず、高寿命で高効率な膜電極接合体および膜触媒層接合体の実現を目指す観点からは未だ改善の余地があった。
また、上記特許文献3〜7にも、膜電極接合体および膜触媒層接合体の耐久性を向上させるという観点から触媒層を設計する技術についての報告はなく、高寿命で高効率な膜電極接合体および膜触媒層接合体の実現を目指す観点からは未だ改善の余地があった。
すなわち、上記特許文献1〜7に記載の燃料電池においては、耐久性および寿命特性の観点から、未だ改善の余地があった。
本発明は以上の観点に鑑みてなされたものであり、高分子電解質型燃料電池の作動および停止を繰り返しても長期にわたって高分子電解質膜の分解劣化を抑制することができ、かつ初期特性の低下を充分に防止できる、優れた耐久性を有する高分子電解質型燃料電池を容易かつ確実に実現し得る膜触媒層接合体および膜電極接合体を提供することを目的とする。また、本発明は、上記の本発明の膜触媒層接合体および膜電極接合体を用い、初期特性の低下を充分に防止でき、長期にわたって充分な電池性能を発揮する、優れた耐久性を有する高分子電解質型燃料電池を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、高分子電解質膜に密着して設けられているアノード触媒層およびカソード触媒層が、高分子電解質膜の耐久性に大きく影響を与えている可能性について検討し、触媒層の構成を下記の構成に工夫することにより、膜触媒層接合体の耐久性および膜電極接合体の耐久性を向上させ得ることを見出し、本発明に到達した。
すなわち、本発明は、
水素イオン伝導性を有する高分子電解質膜と、高分子電解質膜を挟むカソード触媒層およびアノード触媒層と、を有し、
カソード触媒層およびアノード触媒層が、カーボン粉末および前記カーボン粉末に担持された電極触媒を含む触媒担持カーボンと、触媒担持カーボンに付着した水素イオン伝導性を有する高分子電解質と、を含む膜触媒層接合体であって、
少なくともカソード触媒層が少なくとも2層で構成されており、
カソード触媒層において、触媒担持カーボンの質量WCat-Cに対する高分子電解質の質量WPの比(WP/WCat-C)が、高分子電解質膜に最も近い位置に配置される最内層から、高分子電解質膜から最も遠い位置に配置される最外層にかけて減少しており、
最内層における比(WP/WCat-C)が0.8〜3.0であり、かつ前記最外層における比(WP/WCat-C)が0.2〜0.6であること、を特徴とする膜触媒層接合体を提供する。
本発明の膜触媒層接合体においては、触媒層を構成している、触媒担持カーボンの質量WCat-Cに対する高分子電解質の質量WPの比(WP/WCat-C)を変化させる。具体的には、上記比(WP/WCat-C)が、高分子電解質膜に最も近い位置に配置される最内層から、高分子電解質膜から最も遠い位置に配置される最外層にかけて減少するように、上記比(WP/WCat-C)を変化させる。すなわち、高分子電解質膜の最も近くに配置される最内部の触媒層において、上記比(WP/WCat-C)を最も大きくし、高分子電解質膜の最も遠くに配置される最外部の触媒層にかけて上記比(WP/WCat-C)が減少するように触媒層を構成する。
本発明の膜触媒層接合体においては、少なくともカソード触媒層を上述の構成とすることにより、高分子電解質型燃料電池の作動および停止を繰り返しても長期にわたって高分子電解質膜の分解劣化を抑制することができ、かつ初期特性の低下を充分に防止できる、優れた耐久性を有する高分子電解質型燃料電池を容易かつ確実に実現し得る膜触媒層接合体を構成することができる。
ここで、本発明において、少なくともカソード触媒層を上述の構成とすることにより、上述の本発明の効果が得られることについての明確なメカニズムは解明されていないが、本発明者らは以下のように推察している。
すなわち、膜電極接合体および膜触媒層接合体の劣化については、主として、高分子電解質膜で進行することが報告されてきている。具体的には、燃料電池における電極反応は下記式(1)によって進行し、高分子電解質膜の劣化は、下記式(2)で表されるように、酸素還元の副反応により生成する過酸化水素に起因するヒドロキシルラジカルによるものと推測されている。なお、高分子電解質膜の分解劣化の際には、高分子電解質膜の成分元素であるフッ素が、イオンとして、燃料電池外に排出されるため、排出されるフッ化物イオン量を測定することにより、膜電極接合体および膜触媒層接合体の分解劣化の進行を定量化し、耐久性能を評価することが可能である(例えば、Wen Liu et. al., J. New Mater. Electrochem. Syst., 4 (2001) 227)。
4H+ + O2 → 2H2O ・・・(1)
2H+ + O2 → H22 ・・・(2)
本発明者らは、高分子電解質膜に直接接する、触媒層のうちの最内層において、上述の比(WP/WCat-C)を大きくすることにより、高分子電解質膜と触媒層との界面での水素イオンの伝導性を向上させることができ、劣化原因である活性酸素種(例えば上述の式(2)で示されるH22等の過酸化物、およびOを構成元素として含むラジカル)の発生を抑制することが可能となると考えている。
より具体的には、本発明者らは、上述の比(WP/WCat-C)を最内層から最外層にかけて減少させると、高分子電解質膜に近い最内層により多くの高分子電解質が含まれることとなり、上記式(2)で示される反応に対して上記式(1)で示される反応を優先的に進行させることができるため、高分子電解質膜に近い部分でH22等の過酸化物(すなわち活性酸素種)の発生量を低減させることができると考えている。
最外層の上記比(WP/WCat-C)が、最内層と同様に大きい値をとる場合は、最内層および最外層の多孔度が減少し、生成水を効果的に排出することが困難になり、出力電圧の振動および低下を誘引する、いわゆるフラッディング現象を引き起こす。以上より、最内層から最外層にかけて上記比(WP/WCat-C)を減少させた触媒層の層構造の構築により、優れた寿命特性および耐フラッディング性、すなわち高耐久性、高寿命および高効率を同時に実現し得る膜触媒層接合体を得ることができる。
ここで、本発明において、「触媒層において、触媒担持カーボンの質量WCat-Cに対する高分子電解質の質量WPの比((WP/WCat-C)が、高分子電解質膜に最も近い位置に配置される最内層から、最も遠い位置に配置される最外層にかけて減少している」状態とは、触媒層が2層以上の層(複数の層)で構成されていることを前提として、当該触媒層の一端に位置する最外層の比(WP/WCat-C)が、当該触媒層の他端に位置する最外層の比(WP/WCat-C)よりも最終的に小さくなっており、複数の層を全体としてみた場合に各層の比(WP/WCat-C)が最内層から最外層にかけて概略的に減少している状態を示す。
例えば、最内層から最外層にかけて上記比(WP/WCat-C)が単調に減少している状態であってもよい。また、触媒層が3層以上で構成される場合には、例えば最内層と最外層との間に配置される層のうち、一部の隣り合う層同士の比(WP/WCat-C)が同じ値をとる状態であってもよい。さらに、最内層と最外層との間に配置される層のうち、一部の隣り合う層同士の比(WP/WCat-C)を比較した場合、最外層の側に位置する層の比(WP/WCat-C)が最内層の側に位置する層の比(WP/WCat-C)よりも大きい場合があってもよい。ただし、ガス拡散性の観点から、最内層から最外層にかけて上記比(WP/WCat-C)が単調に減少している状態、または、最内層と最外層との間に配置される層のうち、一部の隣り合う層同士の比(WP/WCat-C)が同じ値をとる状態が好ましい。
また、本発明の膜触媒層接合体における触媒層の最内層においては、0.8≦(WP/WCat-C)≦3.0を満たし、かつ、触媒層の最外層においては、0.2≦(WP/WCat-C)≦0.6を満たすことが望ましい。最内層の比(WP/WCat-C)が0.8未満であると、高分子電解質膜と触媒層との界面の水素イオン伝導性が低くなり、高分子電解質膜の劣化抑制効果が不充分となる。また、最内層の比(WP/WCat-C)が3.0超であると、ガス拡散性が不充分となり、フラッディングが生じる。さらに、最外層の比(WP/WCat-C)が0.2未満であると、水素イオン伝導性が不充分となり、上記式(1)で表されるカソード触媒層での主反応の円滑な進行が困難になり、出力電圧の低下が生じる。最外層の比(WP/WCat-C)が0.6超であると、ガス拡散性の阻害によるフラッディングが生じ、安定的な電池出力を得ることができない。
高分子電解質の劣化を促進する原因物質である活性酸素種(例えば上述の式(2)で示されるH22等の過酸化物、およびOを構成元素として含むラジカル)は、酸素の存在下で生成されるため、燃料ガスが供給されているカソード触媒層に近接する高分子電解質膜において、分解劣化の進行が早いと考えられる。つまり、上記比(WP/WCat-C)が変化する触媒層構造は、カソード触媒層においての適用が効果的であると考えられる。
本発明の膜触媒層接合体は、当該膜触媒層接合体を一対のガス拡散層の間に配置させた構成とした膜電極接合体(例えば、上記膜触媒層接合体と一対のガス拡散層とをホットプレスにより接合して得られる膜電極接合体)として使用することができる。
すなわち、本発明は、上記の本発明の膜触媒層接合体と、上記カソード触媒層の外側に設けられたカソードガス拡散層と、上記アノード触媒層の外側に設けられたアノードガス拡散層と、を含むことを特徴とする膜電極接合体を提供する。
本発明の膜電極接合体は、先に述べた膜触媒層接合体を具備しているため、膜電極接合体における高分子電解質膜の分解劣化が抑制され、高分子電解質型燃料電池の作動および停止を繰り返しても長期にわたって初期特性の低下を充分に防止でき、優れた寿命特性および耐フラッディング性、すなわち高耐久性、高寿命および高効率を同時に実現することができる。
さらに、本発明は、先に述べた本発明の膜電極接合体を含むこと、を特徴とする高分子電解質型燃料電池も提供する。
本発明の燃料電池システムは、先に述べた膜電極接合体を具備しているため、膜電極接合体における高分子電解質膜の分解劣化が抑制され、高分子電解質型燃料電池の作動および停止を繰り返しても長期にわたって初期特性の低下を充分に防止でき、優れた寿命特性および耐フラッディング性、すなわち高耐久性、高寿命および高効率を同時に実現することができる。
本発明によれば、高分子電解質型燃料電池の作動および停止を繰り返しても長期にわたって高分子電解質膜の分解劣化を抑制することができ、かつ初期特性の低下を充分に防止できる、優れた耐久性を有する高分子電解質型燃料電池を確実に実現し得る膜触媒層接合体およびこれを含む膜電極接合体を提供することができる。また、上記の本発明の膜電極接合体を用い、初期特性の低下を充分に防止でき、長期にわたって充分に安定な電池性能を発揮する、優れた耐久性を有する高分子電解質型燃料電池を提供することができる。
以下、図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明する。なお、同一または相当部分には同一符号を付し、重複する説明は省略することもある。
図1は、本発明の高分子電解質型燃料電池の好適な一実施形態に搭載される単電池の基本構成の一例を示す概略断面図である。また、図2は、図1に示す単電池1に搭載される膜電極接合体(MEA:Membrane-electrode assembly)の基本構成の一例を示す概略断面図であり、図3は、図2に示す膜電極接合体10を構成する膜触媒層接合体(CCM:Catalyst-coated membrane)の一例を示す概略断面図である。
図3に示すように、本実施形態の膜触媒層接合体20は、水素イオンを選択的に輸送する高分子電解質膜11の両面に、電極触媒(例えば白金系の金属触媒)をカーボン粉末に担持させて得られる触媒担持カーボンと、水素イオン伝導性を有する高分子電解質とを含むカソード触媒層12aとアノード触媒層12bが形成されて構成されている。
高分子電解質膜11としては、特に限定されるものではなく、通常の固体高分子形燃料電池に搭載される高分子電解質膜を使用することができる。例えば、パーフルオロカーボンスルホン酸からなる高分子電解質膜(例えば、米国DuPont社製のNafion(商品名)、旭化成(株)製のAciplex(商品名)、ジャパンゴアテックス(株)製のGSIIなど)を使用することができる。
また、高分子電解質膜11を構成する高分子電解質としては、陽イオン交換基として、スルホン酸基、カルボン酸基、ホスホン酸基、およびスルホンイミド基を有するものなどが好ましく挙げられる。水素イオン伝導性の観点から、スルホン酸基を有するものが特に好ましい。スルホン酸基を有する高分子電解質としては、イオン交換容量が0.5〜1.5meq/g乾燥樹脂であるものことが好ましい。高分子電解質のイオン交換容量が0.5meq/g乾燥樹脂未満であると、得られた触媒層の抵抗値が発電時に上昇するおそれがあるので好ましくなく、イオン交換容量が1.5meq/g乾燥樹脂超であると、得られた触媒層の含水率が増大し、膨潤し易くなり、細孔が閉塞するおそれがあるので好ましくない。イオン交換容量は0.8〜1.2meq/g乾燥樹脂が特に好ましい。
また、高分子電解質としては、CF2=CF−(OCF2CFX)m−Op−(CF2)n−SO3Hで表されるパーフルオロビニル化合物(mは0〜3の整数を示し、nは1〜12の整数を示し、pは0または1を示し、Xはフッ素原子またはトリフルオロメチル基を示す。)に基づく重合単位と、CF2=CF2で表されるテトラフルオロエチレンに基づく重合単位と、を含むパーフルオロカーボン共重合体であることが好ましい。なお、上記フルオロカーボン重合体は、例えばエーテル結合性の酸素原子などを含んでいてもよい。
上記パーフルオロビニル化合物の好ましい例としては、下記式(3)〜(5)で表される化合物が挙げられる。ただし、下記式中、qは1〜8の整数、rは1〜8の整数、tは1〜3の整数を示す。
CF2=CFO(CF2q−SO3H ・・・(3)
CF2=CFOCF2CF(CF3)O(CF2r−SO3H ・・・(4)
CF2=CF(OCF2CF(CF3))tO(CF22−SO3 ・・・(5)
また、高分子電解質膜11は、一種または複数種の高分子電解質で構成されていてもよいが、内部に補強体(充填材)を含んでいてもよい。ただし、高分子電解質膜11における上記補強体の配置状態(例えば疎密の程度や規則性)は特に限定されない。
このような補強体を構成する材料としては、特に制限されないが、例えばポリテトラフルオルエチレン、ポリフルオロアルコキシエチレンまたはポリフェニルスルフィドなどが挙げられる。上記補強体の形状も特に制限されないが、例えば、多孔体状の補強体、ならびにフィブリル状、繊維状および球状の補強体粒子などが挙げられる。
つぎに、本実施形態の膜触媒層接合体20においては、上述のように、カソード触媒層12aおよびアノード触媒層12bが、カーボン粉末およびカーボン粉末に担持された電極触媒を含む触媒担持カーボンと、触媒担持カーボンに付着した水素イオン伝導性を有する高分子電解質と、で構成され、少なくともカソード触媒層12aにおいて、触媒担持カーボンの質量WCat-Cに対する高分子電解質の質量WPの比(WP/WCat-C)が、高分子電解質膜11に最も近い位置に配置される最内層(第1層)22aから、高分子電解質膜11から最も遠い位置に配置される最外層(第2層)32aにかけて減少しており、最内層22aにおける上記比(WP/WCat-C)が0.8〜3.0以下であり、かつ最外層32aにおける上記比(WP/WCat-C)が0.2〜0.6以下である。
また、本実施形態において、カソード触媒層12a全体に含まれる電極触媒の質量WCat-totalに対する最内層22aに含まれる電極触媒の質量WCat-最内部の比(WCat-最内部/WCat-total)が、1/10〜1/3であるのが好ましい。上記比(WCat-最内部/WCat-total)が1/10以上であると、上記比(WCat-最内部/WCat-total)の大きい最内層22aが薄くなりすぎず、耐久性がより充分に得られる。また、上記比(WCat-最内部/WCat-total)が1/3以下であると、最内層22aが厚くなりすぎず、ガス拡散性がより充分となり、安定的な電池出力を得ることができる。
なお、本実施形態のカソード触媒層12aおよびアノード触媒層12bにおいては、上記高分子電解質が、触媒担持カーボン粒子表面に部分的に付着していればよく、すなわち触媒担持カーボン粒子の少なくとも一部を被覆していればよく、必ずしも触媒担持カーボン粒子全体を被覆していなくともよい。もちろん、上記高分子電解質が、触媒担持カーボン粒子表面の全体を被覆していてもよい。
カソード触媒層12aおよびアノード触媒層12bにおける担体であるカーボン粉末(導電性カーボン粒子)としては、導電性を有する細孔の発達したカーボン材料であるのが好ましく、例えばカーボンブラック、活性炭、カーボンファイバーおよびカーボンチューブなどを使用することができる。カーボンブラックとしては、例えばチャネルブラック、ファーネスブラック、サーマルブラックおよびアセチレンブラックなどが挙げられる。また、活性炭は、種々の炭素原子を含む材料を炭化処理および賦活処理することによって得ることができる。
カーボン粉末の比表面積が50〜1500m2/gであることが好ましい。比表面積50m2/g以上であると、電極触媒の担持率を向上させ易く、カソード触媒層12aおよびアノード触媒層12bの出力特性が低下するおそれがないことから好ましく、比表面積が1500m2/g以下であると、細孔が微細すぎずに高分子電解質による被覆がより容易となり、カソード触媒層12aおよびアノード触媒層12bの出力特性が低下するおそれがないことから好ましい。比表面積は200〜900m2/gが特に好ましい。
カソード触媒層12aおよびアノード触媒層12bに用いる電極触媒としては、白金または白金合金を用いるのが好ましい。白金合金としては、白金以外の白金族の金属(ルテニウム、ロジウム、パラジウム、オスミウム、イリジウム)、鉄、チタン、金、銀、クロム、マンガン、モリブデン、タングステン、アルミニウム、ケイ素、レニウム、亜鉛およびスズからなる群より選択される1種以上の金属と、白金と、の合金であるのが好ましい。また、上記白金合金には、白金と上記金属との金属間化合物が含有されていてもよい。
さらに、白金からなる電極触媒と白金合金からなる電極触媒を混合して得られる電極触媒混合物を用いてもよく、カソード触媒層12aおよびアノード触媒層12bに同じ電極触媒を用いても異なる電極触媒を用いてもよい。
また、電極触媒の一次粒子径は、カソード触媒層12aおよびアノード触媒層12bを高活性とするために、1〜20nmであることが好ましく、特に、反応活性を増大させるために表面積を大きく確保することが可能であるという観点から、2〜10nmであることが好ましい。
触媒担持カーボンの触媒担持率(触媒担持カーボンの全質量に対する、担持されている電極触媒の質量の割合)は、20〜80質量%であればよく、特に40〜60質量%であるのが望ましい。この範囲であれば、高い電池出力を得ることができる。上述のように触媒担持率が20質量%以上であると、十分な電池出力をより確実に得ることができ、80質量%以下であると、電極触媒の粒子を分散性よくカーボン粉末に担持させることができ、触媒有効面積をより増大させることができる。
カソード触媒層12aおよびアノード触媒層12bに含有されて、上記触媒担持カーボンに付着させる水素イオン伝導性を有する高分子電解質としては、高分子電解質膜11を構成する高分子電解質を用いればよい。なお、カソード触媒層12a、アノード触媒層12bおよび高分子電解質膜11を構成する高分子電解質は、同じ種類であっても、異なる種類であってもかまわない。例えば、米国DuPont社製のNafion(商品名)、旭硝子(株)製のFlemion(商品名)、旭化成(株)製のAciplex(商品名)等の市販品であってもかまわない。
つぎに、図2に示すように、本実施形態における膜電極接合体10は、カソード触媒層12aおよびアノード触媒層12bそれぞれの外側に、例えば撥水処理を施したカーボンペーパーを用いて、通気性および電子伝導性を併せ持つガス拡散層13を形成されて構成される。カソード触媒層12aとガス拡散層13との組合せによりカソード14aが構成され、アノード触媒層12bとガス拡散層13との組合せによりアノード14bが構成される。
ガス拡散層13としては、ガス透過性を持たせるために、発達したストラクチャー構造を有するカーボン微粉末、造孔材、カーボンペーパーまたはカーボンクロスなどを用いて作製された、多孔質構造を有する導電性基材を用いることができる。また、排水性を持たせるために、フッ素樹脂を代表とする撥水性高分子などをガス拡散層13の中に分散させてもよい。電子伝導性を持たせるために、カーボン繊維、金属繊維またはカーボン微粉末などの電子伝導性材料でガス拡散層13を構成してもよい。さらに、ガス拡散層13のカソード触媒層12aまたはアノード触媒層12bと接する面には、撥水性高分子とカーボン粉末とで構成される撥水カーボン層を設けてもよい。なお、カソード側およびアノード側において同じガス拡散層を用いても異なるガス拡散層を用いてもよい。
さらに、図1に示すように、本実施形態における高分子電解質型燃料電池の基本単位である単電池1は、膜電極接合体10と、ガスケット15と、一対のセパレータ板16とで構成される。ガスケット15は、供給される燃料ガスおよび酸化剤ガスの外部へのリーク防止や混合を防止するため、カソード14aおよびアノード14bの周囲に高分子電解質膜11を挟んで配置される。ガスケット15は、カソード14aまたはアノード14bおよび高分子電解質膜11とあらかじめ一体化され、これらすべてを組み合わせたものを膜電極接合体10と呼ぶこともある。
膜電極接合体10の外側には、膜電極接合体10を機械的に固定するための一対のセパレータ板16が配置される。セパレータ板16の膜電極接合体10と接触する部分には、カソード14aに酸化剤ガスを供給し、アノード14bに燃料ガスを供給し、電極反応生成物、未反応の反応ガスを含むガスを反応場からカソード14aおよびアノード14b外部に運び去るためのガス流路17が形成されている。ガス流路17はセパレータ板16と別に設けることもできるが、図1においてはセパレータ板16の表面に溝を設けてガス流路17が形成されている。また、セパレータ板16の膜電極接合体10と反対の側には、切削により溝を設けて冷却水流路18が形成された構成を有する。
このように、一対のセパレータ板16で膜電極接合体10を固定し、一方のセパレータ板16のガス流路17に燃料ガスを供給し、他方のセパレータ板16のガス流路17に酸化剤ガスを供給することで、数十から数百mA/cmの実用電流密度通電時において、一つの単電池1で0.7〜0.8V程度の起電力を発生させることができる。ただし、通常、高分子電解質型燃料電池を電源として使うときは、数ボルトから数百ボルトの電圧が必要とされるため、実際には、単電池1を必要とする個数だけ直列に連結してスタック(図示せず)として使用する。
ガス流路17に反応ガスを供給するためには、反応ガスを供給する配管を、使用するセパレータ板16の枚数に対応する数に分岐し、それらの分岐先を直接セパレータ板16上のガス流路17につなぎ込む部材であるマニホールドが必要となるが、本発明においては、外部マニホールドと内部マニホールドのいずれを採用することも可能である。
ここで、本実施形態におけるカソード触媒層12a(最内層22aおよび最外層32a)ならびにアノード触媒層12bは、本発明における触媒層の構成を実現可能な成分組成に調製された複数の触媒層形成用インクを用いて形成することができる。触媒層形成用インクを調製するために用いる分散媒としては、高分子電解質を溶解可能または分散可能(高分子電解質の一部が溶解し、他の一部が溶解せずに分散している状態を含む)であるアルコールを含む液体を用いることが好ましい。分散媒は、水、メタノール、エタノール、プロパノール、n−ブチルアルコール、イソブチルアルコール、sec−ブチルアルコールおよびtert―ブチルアルコールのうちの少なくとも1種を含んでいることが好ましい。これらの水およびアルコールは単独でも使用してもよく、2種以上混合してもよい。アルコールは、分子内にOH基を1つ有する直鎖のものが特に好ましく、エタノールが特に好ましい。このアルコールには、エチレングリコールモノメチルエーテルなどのエーテル結合を有するものも含まれる。
また、触媒層形成用インクの組成は、カソード触媒層12a(最内層22aもしくは最外層32a)またはアノード触媒層12bの構成に応じて、適宜調整すればよいが、固形分濃度0.1〜20質量%であることが好ましい。固形分濃度が0.1質量%未満であると、触媒層形成用インクの噴霧または塗布により触媒層を作製するにあたり、何回も繰り返し噴霧または塗布しなければ所定の厚さの触媒層が得られず生産効率が悪くなる。また、固形分濃度が20質量%超であると、混合液の粘度が高くなり、得られる触媒層が不均一となるおそれがある。固形分濃度で1〜10質量%であることが特に好ましい。
本発明において、触媒層形成用インク(カソード触媒層12a形成用インクおよびアノード触媒層12b形成用インク、さらには、最内層22a形成用インクおよび最外層32a形成用インク)は、従来公知の方法に基づいて調製することができる。具体的には、ホモジナイザ、ホモミキサ等の撹拌機を使用する方法、高速回転ジェット流方式を使用するなどの高速回転を使用する方法、高圧乳化装置などの高圧をかけて狭い部分から分散液を押出すことで分散液にせん断力を付与する方法などが挙げられる。
本発明の触媒層形成用インクを用いてカソード触媒層12a(最内層22aおよび最外層32a)ならびにアノード触媒層12bを形成する際には、高分子電解質膜11に対して、直接形成する直接塗布法であっても間接的に形成する間接塗布方法のいずれを採用することも可能である。塗布法としては、スクリーン印刷法、ダイコート法、スプレー法およびインクジェット法などが挙げられる。間接塗布法としては、例えばポリプロピレンまたはポリエチレンテレフタラート製の支持体上に、上記の方法で触媒層12を形成した後、熱転写により、高分子電解質膜11または先に形成した触媒層12上に形成する方法が挙げられる。また、図2に示す本実施形態の膜電極接合体10を得る場合には、ガス拡散層13上へカソード触媒層12aおよびアノード触媒層12bを形成した後、高分子電解質膜11と接合してもかまわない。
特に本実施形態のように最内層22aおよび最外層32aの複数の層からなるカソード触媒層12aを形成する場合には、最内層22a形成用インクおよび最外層32a形成用インクを調製し、それぞれを異なるノズルからスプレー法により塗布してもよい(例えば連続して塗布してもよい)。また、カソード触媒層12aを構成する層の数が2層を超える場合にも、それぞれの層用のインクを調製し、それぞれのインクをそれぞれを異なるノズルからスプレー法により連続して塗布してもよい。このように連続してスプレー法に塗布することにより、各層の比(WP/WCat-C)をより容易かつ確実に段階的に変化させることができ、本発明の構成をより容易かつ確実に実現することが可能である。
本実施形態においては、上述のようにカソード触媒層12aおよびアノード触媒層12bのうちのカソード触媒層を、2層構造とし、各層の比(WP/WCat-C)を変化させる。この場合は、(I)直接塗布法、(II)直接塗布法と間接塗布法との組合せ、または(III)間接塗布法で、カソード触媒層12aを形成することができる。
直接塗布法(I)の場合は、第1層(最内層)22aを高分子電解質膜11に直接塗布により形成した後、第2層(最外層)32aを第1層22a上へ直接塗布により形成すれば、本発明の膜触媒層接合体20を得ることができる。
また、直接塗布法と間接塗布法との組合せ(II)の場合は、第1層(最内層)22aを高分子電解質膜11に直接塗布により形成した後、第2層(最外層)32aを支持体(図示せず)またはガス拡散層13上に塗布により形成した後、接合すればよい。
支持体上に形成した第2層32aを、高分子電解質膜11に形成された第1層22a上に転写すれば、本発明の膜触媒層接合体20を得ることができる。ガス拡散層13上に形成された第2層32aを、そのまま高分子電解質膜11に形成された第1層22a上に接合すれば、本発明の膜電極接合体10を得ることができる。
間接塗布法(III)の場合は、第1の支持体に第1層22aを形成し、第2の支持体に第2層32aを形成し、ついで第1層22aを高分子電解質膜11に転写し、さらに第2層32aを、高分子電解質膜11に形成された第1層22a上に転写すれば、本発明の膜触媒層接合体20を得ることができる。
第1の支持体に第1層22aを形成し、ガス拡散層13上に第2層32aを形成する場合は、第1層22aを高分子電解質膜11上に転写し、ガス拡散層13上に形成した第2層32aを、そのまま高分子電解質膜11に形成された第1層22a上に接合すれば、本発明の膜電極接合体10を得ることができる。
また、第1層22aを、ガス拡散層13上に形成された第2層32a上に熱転写し、ガス拡散層層13上に形成された第2層32aおよび第1層22aを、そのまま高分子電解質膜11に接合すれば、本発明の膜電極接合体10を得ることができる。
なお、熱転写および接合の方法としては従来公知の方法を用いればよく、上記のように、少なくともカソード触媒層12aにおいて、触媒担持カーボンの質量WCat-Cに対する高分子電解質の質量WPの比(WP/WCat-C)が、高分子電解質膜11に最も近い位置に配置される最内層22aから、高分子電解質膜11から最も遠い位置に配置される最外層32aにかけて減少しており、最内層22aにおける上記比(WP/WCat-C)が0.8〜3.0であり、かつ最外層32aにおける前記比(WP/WCat-C)が0.2〜0.6であること、を実現できる限りは、製造方法を適宜設計変更することも可能である。
以上のような本発明の最大の特徴である触媒層が、膜触媒層接合体20、膜電極接合体10および高分子電解質型燃料電池(単電池1)に使用されているか否か、以下の方法によって確認することが可能である。例えば、走査電子顕微鏡(SEM)による断面観察によれば、上記比(WP/WCat-C)が大きい触媒層はより明るく観察されるため、上記比(WP/WCat-C)の異なる触媒層の層構造の確認は容易である。
また、電子線マイクロアナライザー(EPMA)による断面観察によれば、触媒層中の白金などの原子の定量も可能である。さらには、二次イオン質量分析装置(SIMS)、X線回折装置(XRD)、発光分析装置(OES)、エネルギー分散型蛍光X線分析装置(EDX)、波長分散型蛍光X線分析装置(XRF)などによっても、触媒層を構成する原子(元素)の定量分析が可能であり、各触媒層の比(WP/WCat-C)を測定することが可能である。
以上、本発明の実施形態について詳細に説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。
例えば、本発明の膜触媒層接合体20、膜電極接合体10および高分子電解質型燃料電池(単電池1)においては、触媒層のうち、少なくともカソード触媒層が2層以上で構成されていればよく、アノード触媒層の態様は特に制限されない。アノード触媒層をカソード触媒層と同様の構成としてもよい。なかでも、アノード触媒層は単一層で構成し、カソード触媒層を2層で構成することが望ましい。特に膜触媒層接合体20および膜電極接合体10の作製における工程数およびコストの観点からは、上記実施形態のようにカソード触媒層12aは、最内層22aと最外層32aの2層で構成することが望ましい。
先に述べた、本発明の高分子電解質型燃料電池の好適な一実施形態においては、1個の単電池1のみからなる高分子電解質型燃料電池について説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。単電池1を複数積層したスタックの構成を有する高分子電解質型燃料電池も本発明の範囲に含まれる。
また、上記実施形態においては、アノード側のセパレータ板16とカソード側のセパレータ板16の両方に冷却水流路18を設ける態様を説明したが、少なくとも一方のセパレータ板16に冷却水流路18を設ける構成であってもよい。特に、複数の単電池1を積層して得られるスタックを本発明の高分子電解質型燃料電池として用いる場合は、2〜3個の単電池1毎に、1つの冷却水流路18を設けてもよい。
以下、実施例および比較例を挙げて本発明についてさらに詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。
《実施例1》
本実施例では、まず、図3に示す構造を有する本発明の膜触媒層接合体を作製した。
電極触媒である白金粒子をカーボン粉末上に担持させてなる触媒担持カーボン(田中貴金属工業(株)製のTEC10E50E、50質量%がPt)と、水素イオン伝導性を有する高分子電解質溶液(旭硝子(株)製のFlemion)とを、エタノールと水との混合分散媒(質量比1:1)に分散させてカソード触媒層形成用インクを調製した。
得られたカソード触媒層形成用インクを用い、2層構造を有しかつ総白金担持量が0.6mg/cm2で寸法が60mm×60mmのカソード触媒層を形成した。まず、上記触媒層形成用インクを、高分子電解質膜(ジャパンゴアテックス(株)製のGSII、150mm×150mm)の一方の面に、スプレー法によって塗布し、白金担持量が0.12mg/cm2で寸法が60mm×60mmの第1層(最内層)を形成した。このとき、第1層中の触媒担持カーボンの質量WCat-Cに対する高分子電解質の質量WPの比(WP/WCat-C)が1.0となるように、上記カソード触媒層形成用インクを調製するために用いる高分子電解質溶液の質量を調整した。
ついで、上記カソード触媒層形成用インクを、上記第1層の上に、スプレー法によって塗布し、白金担持量が0.48mg/cm2で寸法が60mm×60mmの第2層(最外層)を形成した。このとき、第2層中の触媒担持カーボンの質量WCat-Cに対する高分子電解質の質量WPの比(WP/WCat-C)が0.4となるように、上記カソード触媒層形成用インクを調製するために用いる高分子電解質溶液の質量を調整した。このようにして2相構造を有するカソード触媒層を形成した。
つぎに、電極触媒である白金ルテニウム合金(白金:ルテニウム=1:1.5モル比(物質量比))粒子をカーボン粉末上に担持させてなる触媒担持カーボン(田中貴金属工業(株)製のTEC61E54、50質量%がPt−Ru合金)と、水素イオン伝導性を有する高分子電解質溶液(旭硝子(株)製のFlemion)とを、エタノールと水との混合分散媒(質量比1:1)に分散させてアノード触媒層形成用インクを調製した。
得られたアノード触媒層形成用インクを、高分子電解質膜のカソード触媒層が形成された面とは反対側の他方の面に、スプレー法によって塗布し、単層(1層)構造を有しかつ白金担持量が0.35mg/cm2で寸法が60mm×60mmのアノード触媒層を形成した。このとき、アノード触媒層中の触媒担持カーボンの質量WCat-Cに対する高分子電解質の質量WPの比(WP/WCat-C)が0.4となるように、上記アノード触媒層形成用インクを調製するために用いる高分子電解質溶液の質量を調整した。このようにしてアノード触媒層を形成することにより、本発明の膜触媒層接合体を形成した。
つぎに、上記のようにして得た本発明の膜触媒層接合体を用い、図2に示す構造を有する本発明の膜電極接合体を作製した。
ガス拡散層を形成するために、寸法が16cm×20cmで厚みが270μmのカーボンクロス(三菱化学(株)製のSK−1)を、フッ素樹脂含有の水性ディスパージョン(ダイキン工業(株)製のND−1)に含浸した後、乾燥することで上記カーボンクロスに撥水性を付与した(撥水処理)。
続いて、撥水処理後のカーボンクロスの一方の面(全面)に撥水カーボン層を形成した。導電性カーボン粉末(電気化学工業(株)製のデンカブラック(商品名))と、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)微粉末を分散させた水溶液(ダイキン工業(株)製のD−1)とを混合し、撥水カーボン層形成用インクを調製した。この撥水カーボン層形成用インクを、ドクターブレード法によって、上記撥水処理後のカーボンクロスの一方の面に塗布し、撥水カーボン層を形成した。このとき、撥水カーボン層の一部は、上記カーボンクロスの中に埋めこまれていた。
その後、撥水処理および撥水カーボン層形成後のカーボンクロスを、PTFEの融点以上の温度である350℃で30分間焼成した。最後に上記カーボンクロスの中央部分を抜き型にて切断し、寸法が60.5mm×60.5mmのガス拡散層を得た。
つぎに、上記のようにして得たガス拡散層の撥水カーボン層の中央部分がカソード触媒層およびアノード触媒層に接するように、2枚のガス拡散層で上記膜触媒層接合体を挟み、全体をホットプレス機で熱圧着(120℃、30分、10kgf/cm2)することにより、本発明の膜電極接合体を得た。
最後に、上記のようにして得た本発明の膜電極接合体を用い、図1に示す構造を有する本発明の高分子電解質型燃料電池(単電池1)を作製した。上記膜電極接合体を、燃料ガス供給用のガス流路および冷却水流路を有するセパレータ板と、酸化剤ガス供給用のガス流路および冷却水流路を有するセパレータ板とで挟持し、両セパレータ板間でカソードおよびアノードの周囲にフッ素ゴム製のガスケットを配置し、有効電極(アノードまたはカソード)面積が36cm2である単電池(本発明の高分子電解質型燃料電池)を得た。
《比較例1》
比(WP/WCat-C)が0.4で単層構造を有するカソード触媒層を形成した以外は、実施例1と同様にして膜触媒層接合体、膜電極接合体および単電池を作製した。
《実施例2》
比(WP/WCat-C)が1.0で白金担持量が0.12mg/cm2(総白金担持量の1/5)の第1層(最内層)、比(WP/WCat-C)が0.6で白金担持量が0.24mg/cm2(総白金担持量の2/5)の第2層(中間層)、および比(WP/WCat-C)が0.4で白金担持量が0.24mg/cm2(総白金担持量の2/5)の第3層(最外層)の3層構造を有するカソード触媒層を形成した以外は、実施例1と同様にして膜触媒層接合体、膜電極接合体および単電池を作製した。
《比較例2》
比(WP/WCat-C)が0.4で単層構造を有するカソード触媒層を形成し、比(WP/WCat-C)が1.0で白金担持量が0.12mg/cm2の第1層(最内層)、および比(WP/WCat-C)が0.4で白金担持量が0.48mg/cm2の第2層(最外層)の2層構造を有するアノード触媒層を形成した以外は、実施例1と同様にして膜触媒層接合体、膜電極接合体および単電池を作製した。
《実施例3》
カソード触媒層の第1層(最内層)の比(WP/WCat-C)を0.8に調整した以外は、実施例1と同様にして膜触媒層接合体、膜電極接合体および単電池を作製した。
《実施例4》
カソード触媒層の第1層(最内層)の比(WP/WCat-C)を1.5に調整した以外は、実施例1と同様にして膜触媒層接合体、膜電極接合体および単電池を作製した。
《実施例5》
カソード触媒層の第1層(最内層)の比(WP/WCat-C)を3.0に調整した以外は、実施例1と同様にして膜触媒層接合体、膜電極接合体および単電池を作製した。
《比較例3》
カソード触媒層の第1層(最内層)の比(WP/WCat-C)を0.6に調整した以外は、実施例1と同様にして膜触媒層接合体、膜電極接合体および単電池を作製した。
《比較例4》
カソード触媒層の第1層(最内層)の比(WP/WCat-C)を3.5に調整した以外は、実施例1と同様にして膜触媒層接合体、膜電極接合体および単電池を作製した。
《実施例6》
カソード触媒層の第2層(最外層)の比(WP/WCat-C)を0.2に調整した以外は、実施例1と同様にして膜触媒層接合体、膜電極接合体および単電池を作製した。
《実施例7》
カソード触媒層の第2層(最外層)の比(WP/WCat-C)を0.3に調整した以外は、実施例1と同様にして膜触媒層接合体、膜電極接合体および単電池を作製した。
《実施例8》
カソード触媒層の第2層(最外層)の比(WP/WCat-C)を0.5に調整した以外は、実施例1と同様にして膜触媒層接合体、膜電極接合体および単電池を作製した。
《実施例9》
カソード触媒層の第2層(最外層)の比(WP/WCat-C)を0.6に調整した以外は、実施例1と同様にして膜触媒層接合体、膜電極接合体および単電池を作製した。
《比較例5》
カソード触媒層の第2層(最外層)の比(WP/WCat-C)を0.15に調整した以外は、実施例1と同様にして膜触媒層接合体、膜電極接合体および単電池を作製した。
《比較例6》
カソード触媒層の第2層(最外層)の比(WP/WCat-C)を0.7に調整した以外は、実施例1と同様にして膜触媒層接合体、膜電極接合体および単電池を作製した。
《実施例10》
カソード触媒層の第1層(最内層)の白金担持量を0.06mg/cm2(総白金担持量の1/10)に、第2層(最外層)の白金担持量を0.54mg/cm2(総白金担持量の9/10)に調整した以外は、実施例1と同様にして膜触媒層接合体、膜電極接合体および単電池を作製した。
《実施例11》
カソード触媒層の第1層(最内層)の白金担持量を0.2mg/cm2(総白金担持量の1/3)に、第2層(最外層)の白金担持量を0.4mg/cm2(総白金担持量の2/3)に調整した以外は、実施例1と同様にして膜触媒層接合体、膜電極接合体および単電池を作製した。
[評価試験]
上記実施例1〜11および比較例1〜6で得られた単電池を、70℃に制御し、アノード側のガス流路に燃料ガスとして水素ガスを供給し、カソード側のガス流路に空気をそれぞれ供給した。この際、水素ガス利用率を70%に設定し、空気利用率を40%に設定し、水素ガスおよび空気の露点がそれぞれ約70℃となるように加湿してから単電池に供給した。そして、電流密度0.3mA・cm-2 で12時間、単電池を運転してエージングを行った。
(1)初期電池出力特性評価試験
初期電池出力特性を評価するために、電流密度を0.2mA・cm-2 および0.7mA・cm-2 とした以外は、上記エージングと同じ条件下で各単電池を運転し、30分経過後の出力電圧を記録した。
燃料電池スタックのエネルギー変換効率の観点からは、0.2mA・cm-2においては750mV以上、0.7mA・cm-2においては650mV以上の出力電圧が要求される。このような出力電圧が要求されるのは以下の理由による。すなわち、日本における全火力発電所のトータルのエネルギー変換効率の平均値は約30〜35%である事から、燃料電池発電システム(定置用燃料電池コージェネレーションシステムや車載用の燃料電池発電システム)においても、同様に約30〜35%のエネルギー変換効率が要求される。そして、燃料電池スタックにおいて上記のようなエネルギー変換効率を満たすためには、0.2mA・cm-2においては750mV以上、0.7mA・cm-2においては650mV以上の出力電圧が要求されるのである。
そこで、出力電圧が、これらの両方の要求を満たしている場合の評価を「1」(合格)とし、両方の要求のうちの少なくとも一方を満たしていない場合の評価を「2」(不合格)として、結果を表1に示した。上記要求を満たさない場合、水素イオン伝導性の低下および生成水によるフラッディングなどの進行が考えられ、効率および耐久性の低下につながる。なお、表1には、カソード触媒層の最内層および最外層の比(WP/WCat-C)も併せて示した。
(2)耐久性評価試験
各単電池について、燃料電池の実運転に近い条件で行う定格耐久試験、および膜電極接合体の劣化を加速して、より短時間で寿命の判断が可能な加速耐久試験を行った。
定格耐久試験においては、電流密度を0.16mA・cm-2とし、アノード側のガス流路に水素および二酸化炭素の混合ガス(体積比8:2)を供給し、カソード側のガス流路に空気を供給した以外は、上記エージングと同じ条件下で各単電池を運転した。
加速耐久試験は、電流を取らない開回路状態で行い、ここでもアノード側のガス流路に水素および二酸化炭素の混合ガス(体積比8:2)を供給し、カソード側のガス流路に空気を供給した以外は、上記エージングと同じ条件下で各単電池を運転した。
開回路状態においては、電池反応による水が生成しないため、高分子電解質膜の分解劣化を引き起こす過酸化水素が電池系内に長く滞留する。また、過酸化水素より生成するラジカルの生成水によるクエンチも期待できず、高分子電解質膜の分解劣化がより促進されると考えられる。
そこで、上記加速耐久試験において分解劣化により排出されたフッ化物イオンをクロマトグラフィーにより定量し、運転開始後500時間までの総排出量を積算した。燃料電池の耐久性の観点から、8.0mg以下であることが望ましい。フッ化物イオン総排出量が、8.0mg以下の場合の評価を「1」(合格)、8.0mg超の場合の評価を「2」(不合格)として、結果を表1に示した。8.0mg未満の場合は、長期にわたる高効率な電池出力が不可能となる。
ここで、8.0mg以下を合格基準とした理由は、本発明者らの検討の結果、燃料電池を0.16mA・cm-2の電流密度で運転し、運転開始から5000時間を経過した後に電池出力ΔEがほとんど低下しない場合(0〜10mV)には、5000時間経過後のフッ化物イオン総排出量がいずれも8.0mg以下であることを確認したことに基づく(Wen Liu et. al., J. New Mater. Electrochem. Syst., 4 (2001) 227 参照)。
なお、比較例4〜5については、初期電池出力特性が不合格であったため、耐久試験は行わなかった。
Figure 2005243618
表1に示した結果から明らかなように、実施例1〜11の膜電極接合体は、それぞれ比較例1〜7の膜電極接合体に対して、高効率かつ高寿命な電池特性を実現できることが確認できた。
本発明の高分子電解質型燃料電池は、自動車などの移動体、分散発電システムおよび家庭用のコージェネレーションシステムなどに好適に利用されることが期待される。
本発明の高分子電解質型燃料電池の好適な一実施形態に搭載される単電池の基本構成の一例を示す概略断面図である。 図1に示す単電池1に搭載される膜電極接合体の基本構成の一例を示す概略断面図である。 図2に示す膜電極接合体10を構成する膜触媒層接合体の一例を示す概略断面図である。 従来の高分子電解質型燃料電池に搭載される単電池の基本構成の一例を示す概略断面図である。 図4に示す単電池100に搭載される膜電極接合体の基本構成の一例を示す概略断面図である。 図5に示す膜電極接合体101を構成する膜触媒層接合体の一例を示す概略断面図である。
符号の説明
1、100・・・単電池、10、101・・・膜電極接合体、11、111・・・高分子電解質膜、12a・・・カソード触媒層、12b・・・アノード触媒層、13、113ガス拡散層、14a・・・カソード、14b・・・アノード、114・・・電極、15、115・・・ガスケット、16、116・・・セパレータ板、17、117・・・ガス流路、18、118・・・冷却水流路、22a・・・最内層、32a・・・最外層

Claims (5)

  1. 水素イオン伝導性を有する高分子電解質膜と、前記高分子電解質膜を挟むカソード触媒層およびアノード触媒層と、を有し、
    前記カソード触媒層および前記アノード触媒層が、カーボン粉末および前記カーボン粉末に担持された電極触媒を含む触媒担持カーボンと、前記触媒担持カーボンに付着した水素イオン伝導性を有する高分子電解質と、を含む膜触媒層接合体であって、
    少なくとも前記カソード触媒層が少なくとも2層で構成されており、
    前記カソード触媒層において、前記触媒担持カーボンの質量WCat-Cに対する前記高分子電解質の質量WPの比(WP/WCat-C)が、前記高分子電解質膜に最も近い位置に配置される最内層から、前記高分子電解質膜から最も遠い位置に配置される最外層にかけて減少しており、
    前記最内層における前記比(WP/WCat-C)が0.8〜3.0であり、かつ前記最外層における前記比(WP/WCat-C)が0.2〜0.6であること、を特徴とする膜触媒層接合体。
  2. 前記カソード触媒層のみにおいて、前記触媒担持カーボンの質量WCat-Cに対する前記高分子電解質の質量WPの比(WP/WCat-C)が、前記高分子電解質膜に最も近い位置に配置される最内層から、前記高分子電解質膜から最も遠い位置に配置される最外層にかけて減少しており、
    前記最内層における前記比(WP/WCat-C)が0.8〜3.0であり、かつ前記最外層における前記比(WP/WCat-C)が0.2〜0.6であること、を特徴とする請求項1に記載の膜触媒層接合体。
  3. 前記カソード触媒層全体に含まれる前記電極触媒の質量WCat-totalに対する前記最内層に含まれる前記電極触媒の質量WCat-最内部の比(WCat-最内部/WCat-total)が、1/10〜1/3であること、を特徴とする請求項1または2に記載の膜触媒層接合体。
  4. 請求項1〜3のうちのいずれかに記載の膜触媒層接合体と、前記カソード触媒層の外側に設けられたカソードガス拡散層と、前記アノード触媒層の外側に設けられたアノードガス拡散層と、を含むことを特徴とする膜電極接合体。
  5. 請求項4に記載の膜電極接合体を含むこと、を特徴とする高分子電解質型燃料電池。
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