JP2005243266A - 電子輸送材料及びそれを用いた有機電界発光素子 - Google Patents
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Abstract
【課題】 電子注入・輸送性、正孔阻止性がともに優れるとともに、電気的酸化還元耐久性にも優れ、更には、発光層近傍に用いても配位子交換を生じるおそれのない電子輸送材料を提供する。
【解決手段】 下記一般式(I)で表わされる化合物を用いる。
(式(I)中、Ar1〜Ar4は、各々独立に、下記一般式(II)で表される、芳香族炭化水素基或いは芳香族複素環基を表わす。)
(式(II)中、環Aは、置換基を有していても良い、芳香族炭化水素或いは芳香族複素環を表わす。
X及びZは、各々独立に、−CR1=、−NR2−、−O−、又は−S−を表わす(R1及びR2は、各々独立に、水素原子又は置換基を表わす。)。
Yは、炭素原子又は窒素原子を表わす。
は、各々独立に、単結合又は二重結合を表わす。)
【選択図】 なし
【解決手段】 下記一般式(I)で表わされる化合物を用いる。
(式(I)中、Ar1〜Ar4は、各々独立に、下記一般式(II)で表される、芳香族炭化水素基或いは芳香族複素環基を表わす。)
(式(II)中、環Aは、置換基を有していても良い、芳香族炭化水素或いは芳香族複素環を表わす。
X及びZは、各々独立に、−CR1=、−NR2−、−O−、又は−S−を表わす(R1及びR2は、各々独立に、水素原子又は置換基を表わす。)。
Yは、炭素原子又は窒素原子を表わす。
は、各々独立に、単結合又は二重結合を表わす。)
【選択図】 なし
Description
本発明は、新規な電子輸送材料及びそれを用いた有機電界発光素子に関するものであり、詳しくは、電気的酸化・還元を繰返し受けても安定な、電子輸送材料として有用な有機化合物と、それを用いた高効率且つ長寿命の有機電界発光素子に関するものである。
近年、薄膜型の電界発光(electroluminescence:EL)素子としては、無機材料を使用したものに代わり、有機薄膜を用いた有機EL素子の開発が行われるようになっている。また、有機EL素子の発光効率を上げる試みとして、蛍光(一重項励起子による発光)ではなく燐光(三重項励起子による発光)を用いることが検討されている。燐光を用いると、蛍光を用いた素子と比べて、3倍程度の効率が向上すると考えられており、ユーロピウム錯体、白金錯体、イリジウム錯体が使用されている。しかしながら、これら燐光分子を用いた有機EL素子は、発光効率は高いが、未だ実用化に十分と言える性能を有してはいない。
これまでに報告されている有機EL素子では、基本的には正孔輸送層と電子輸送層の組み合わせにより発光を得ている。陽極から注入された正孔は、正孔輸送層を移動し、陰極から注入されて電子輸送層を移動してくる電子と、両層の界面近傍で再結合をし、正孔輸送層及び/又は電子輸送層を励起させて発光させる。通常は、正孔輸送層と電子輸送層との間に発光層を設けることにより、発光効率を向上させている素子が一般的である。
更に近年では、発光層の陰極側界面に接する正孔阻止層を設ける場合がある。正孔阻止層を設けることによって、発光層中での励起子の生成が促進され、発光の高効率化・発光色の高純度化が得られるものと推測されている。
正孔阻止層に関して、特許文献1には、発光層のイオン化ポテンシャルよりも大きなイオン化ポテンシャルを有する正孔阻止層を設ける旨が記載されており、その例として、トリス(5,7−ジクロル−8−ヒドロキシキノリノ)アルミニウムの使用が提案されている。また、特許文献2では、シラシクロペンタジエンを正孔阻止層に使用することが提案されている。
また、発光性色素としてイリジウム錯体等を用いる高効率燐光発光素子については、Balq(aluminum(III) bis(2-methyl-8-quinolinato)4-phenylphenolate)やSAlq(aluminum(III) bis(2-methyl-8-quinolinato)triphenylsilanolate)等のアルミニウム錯体系の正孔阻止材料が盛んに用いられ、一定の長寿命化に成功している(非特許文献1参照)。
また、新しい材料系として、非特許文献2では、有機EL素子の電子注入層の材料として、下記化合物に代表される、ピリジル基を置換基として有するピラジン系化合物が提案されている。
しかしながら、特許文献1及び特許文献2に記載の技術では、いずれも、得られる有機EL素子の駆動安定性が十分でないという課題がある。この駆動劣化の要因としては、正孔阻止材料のガラス転移温度(Tg)が低いことに由来する熱劣化や、電子や正孔の注入により正孔阻止材料が還元・酸化されてしまう電気化学的要因などが指摘されている。
また、非特許文献1記載の正孔阻止材料は、正孔阻止能が十分でないために、得られる素子の発光効率が不十分であったり、正孔の一部が正孔阻止材料を通過して電子輸送層へ抜けてしまうことによって電子輸送材料の酸化劣化が起こったりするという課題がある。
また、非特許文献2記載のピラジン系化合物は、電子注入・輸送性に優れているものの、その置換基のピリジン環上の活性部位である2,4,6−位の何れかに水素原子を有しているために、電気的酸化・還元を繰り返し受けた場合の耐久性(以下、適宜「電気的酸化還元耐久性」という)が充分でないという課題を有する。よって、有機EL素子等の電荷輸送材料として使用するには、更なる改善が必要であった。
更に、テトラピリジルピラジンのように強い配位能を持つユニットを有する化合物を、発光層又はこれに接する層などに含有させると、発光色素が金属錯体である場合、長時間の電界印加により配位子交換を生じ、発光効率が低下してしまうおそれがあった。
本発明は、上述の課題に鑑みてなされたもので、その目的は、電子注入・輸送性及び正孔阻止性がともに優れるとともに、電気的酸化還元耐久性にも優れ、更には、発光層近傍に用いても配位子交換を生じるおそれが少ない電子輸送材料を提供すること、及び、高発光効率、高輝度、長駆動寿命である有機電界発光素子を提供することに存する。
本発明者らは、鋭意研究の結果、ピラジン環の2,3,5,6−位に特定の構造の芳香族炭化水素基或いは芳香族複素環基を有する化合物が、電子輸送材料として優れた性質を示し、上記課題を効果的に解決できることを見出して、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明の要旨は、下記一般式(I)で表わされることを特徴とする、電子輸送材料に存する。
(式(I)中、Ar1〜Ar4は、各々独立に、下記一般式(II)で表される、芳香族炭化水素基或いは芳香族複素環基を表わす。)
(式(II)中、環Aは、置換基を有していても良い、芳香族炭化水素或いは芳香族複素環を表わす。
X及びZは、各々独立に、−CR1=、−NR2−、−O−、又は−S−を表わす(R1及びR2は、各々独立に、水素原子又は置換基を表わす。)。
Yは、炭素原子又は窒素原子を表わす。
は、各々独立に、単結合又は二重結合を表わす。)
また、本発明の別の要旨は、基板と、該基板上に設けられた陽極及び陰極と、該陽極及び陰極の間に設けられた、有機発光層を含む1又は2以上の中間層とを備える有機電界発光素子において、該中間層のうち少なくとも何れかの層が、請求項1〜3の何れか一項に記載の電子輸送材料を含有することを特徴とする、有機電界発光素子に存する。
X及びZは、各々独立に、−CR1=、−NR2−、−O−、又は−S−を表わす(R1及びR2は、各々独立に、水素原子又は置換基を表わす。)。
Yは、炭素原子又は窒素原子を表わす。
また、本発明の別の要旨は、基板と、該基板上に設けられた陽極及び陰極と、該陽極及び陰極の間に設けられた、有機発光層を含む1又は2以上の中間層とを備える有機電界発光素子において、該中間層のうち少なくとも何れかの層が、請求項1〜3の何れか一項に記載の電子輸送材料を含有することを特徴とする、有機電界発光素子に存する。
本発明の電子輸送材料は、高い電子注入・輸送性と正孔阻止性とを併せ持ち、且つ、電気的酸化還元耐久性にも優れている。また、発光層近傍に用いても配位子交換を生じるおそれがない。また、この電子輸送材料を中間層に用いた本発明の有機電界発光素子は、発光効率が高く、輝度に優れ、且つ、駆動寿命が長いという利点を有する。
以下、本発明の一実施形態につき詳細に説明するが、本発明は以下の実施形態に限定されるものではなく、その趣旨に反しない限りにおいて種々変形して実施することができる。
式(II)中、環Aは、置換基を有していても良い、芳香族炭化水素或いは芳香族複素環を表わす。
X及びZは各々独立に、−CR1=、−NR2−、−O−、又は−S−を表わす。ここで、R1及びR2は各々独立に、水素原子又は置換基を表わす。置換基の詳細については後述する。
Yは、炭素原子又は窒素原子を表わす。
は、各々独立に、単結合又は二重結合を表わす。
X及びZは各々独立に、−CR1=、−NR2−、−O−、又は−S−を表わす。ここで、R1及びR2は各々独立に、水素原子又は置換基を表わす。置換基の詳細については後述する。
Yは、炭素原子又は窒素原子を表わす。
環Aが芳香族炭化水素の場合、その種類は特に制限されず、単環でも複数の環からなる縮合環であっても良いが、通常は単環又は2,3環が縮合した縮合環が好ましい。各環の員数も任意であるが、通常は6員環が好ましい。芳香族炭化水素の炭素数は、通常6以上、また、通常20以下、好ましくは14以下である。芳香族炭化水素の種類としては、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、フェナントレン環、ペリレン環、テトラセン環、ピレン環、ベンズピレン環、クリセン環、トリフェニレン環、フルオランテン環などが挙げられる。なお、これらの芳香族炭化水素は、更に後述する置換基を有していても良い。
環Aが芳香族複素環の場合、その種類も特に制限されず、単環でも複数の環からなる縮合環であっても良いが、通常は単環又は2,3環が縮合した縮合環が好ましい。各環の員数も任意であるが、通常は5員環又は6員環が好ましい。芳香族複素環基が有するへテロ原子の種類も任意であるが、好ましい例としては窒素原子、酸素原子、硫黄原子などが挙げられる。芳香族複素環の炭素数は、通常1以上、好ましくは炭素数3以上、また、通常19以下、好ましくは13以下である。芳香族複素環の具体例としては、フラン環、ベンゾフラン環、チオフェン環、ベンゾチオフェン環、ピロール環、ピラゾール環、オキサゾール環、イミダゾール環、オキサジアゾール環、インドール環、カルバゾール環、ピロロイミダゾール環、ピロロピラゾール環、ピロロピロール環、チエノピロール環、チエノチオフェン環、フロピロール環、フロフラン環、チエノフラン環、ベンゾイソオキサゾール環、ベンゾイソチアゾール環、ベンゾイミダゾール環、ピリジン環、ピラジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、トリアジン環、キノリン環、イソキノリン環、シノリン環、キノキサリン環、ベンゾイミダゾール環、ペリミジン環、キナゾリン環、キナゾリノン環、アズレン環などが挙げられる。なお、これらの芳香族複素環は、更に後述する置換基を有していても良い。
環Aの芳香族炭化水素及び芳香族複素環(以下、適宜これらを総称して「芳香環」という。)は、上述のように置換基を有していても良い。置換基の数やその結合位置は特に制限されない。置換基の種類も特に制限されないが、例としてはアルキル基、芳香族炭化水素基、アシル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、ハロゲン原子、アリールアミノ基、アルキルアミノ基、芳香族複素環基等が挙げられる。中でもアルキル基、芳香環基(芳香族炭化水素基、芳香族複素環基)が好ましく、更にはアルキル基又は芳香族炭化水素基が好ましい。
環Aの置換基となるアルキル基の種類は特に制限されず、鎖状であっても環状であってもよく、鎖状の場合は直鎖状であっても分岐鎖状であってもよい。その炭素数は、通常1以上、また、通常12以下、好ましくは4以下である。具体例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、n−デシル基、n−オクチル基、シクロヘキシル基等が挙げられる。
また、環Aの置換基となる芳香環基(芳香族炭化水素基、芳香族複素環基)の種類も特に制限されない。例としては、上記環Aについて例示したものと同様の芳香環(芳香族炭化水素又は芳香族複素環)を有する基が挙げられる。
また、環Aの置換基となる芳香環基(芳香族炭化水素基、芳香族複素環基)の種類も特に制限されない。例としては、上記環Aについて例示したものと同様の芳香環(芳香族炭化水素又は芳香族複素環)を有する基が挙げられる。
Ar1〜Ar4は、芳香族炭化水素基(環Aとして芳香族炭化水素を有する基)であっても、芳香族複素環基(環Aとして芳香族複素環を有する基)であっても良いが、電気的酸化還元耐久性を向上させる観点及び電気的酸化還元電位差を大きくする観点からは、何れも芳香族炭化水素基であることが好ましい。
但し、本発明の電子輸送材料に電子輸送性及び正孔輸送性の双方が要求される場合(例えば、ホスト材料やドーパント材料などに適用される場合)には、電界発光素子の駆動寿命を向上させる観点、駆動電圧を低減させる観点などから、Ar1〜Ar4の少なくとも何れか一つに正孔輸送性を有する芳香族複素環基を採用してもよい。正孔輸送性を有する芳香族複素環基としては、カルバゾール環、ピロール環、インドール環等が挙げられる。
Ar1〜Ar4の各々の分子量は、蒸着製膜の際の蒸着温度を抑制する観点や、塗布製膜の際の溶媒への溶解性を損なわない観点から、その置換基も含めた値で、通常500以下、好ましくは300以下とすることが好ましい。
Ar1〜Ar4の好ましい具体例を以下の式(R−1)〜(R−53)に示す。
Ar1〜Ar4の好ましい具体例を以下の式(R−1)〜(R−53)に示す。
上記式(R−1)〜(R−53)中、L1〜L3は各々独立に、水素原子又は置換基を表わす。置換基の種類は特に制限されないが、具体例としては、Ar1〜Ar4の置換基として上に挙げた基が挙げられる。中でも芳香環基が好ましく、更には芳香族炭化水素基が好ましい。特に好ましい具体例としては、置換基を有していても良いフェニル基が挙げられる。
Ar1〜Ar4の組み合わせも特に制限されず、全て同一であっても、任意の2以上の組み合わせが互いに異なっていても良いが、(i)非晶質性を向上させて、製膜性を向上させる観点、(ii)溶解性を高めて、化合物の精製を容易にしたり、湿式製膜法への適用を容易にする観点、(iii)広い電気的酸化還元電位差を維持する観点、などから、Ar1=Ar2≠Ar3=Ar4という組み合わせ、又は、Ar1=Ar4≠Ar2=Ar3という組み合わせが好ましい。
本発明の電子輸送材料の分子量は、通常4000以下、好ましくは3000以下、更に好ましくは2000以下、通常300以上、好ましくは400以上、更に好ましくは500以上である。分子量が大き過ぎると昇華性が低下し、例えば蒸着による薄膜形成が困難になる傾向があったり、あるいは合成の過程において、素子としての駆動寿命を損ない得る、除去が困難な不純物が生成しがちであるため、後述するように有機EL素子を構成する層に使用する場合に課題が生じるおそれがある。一方、分子量が小さ過ぎると、例えば昇華温度が低くなり過ぎるため、やはり蒸着による薄膜形成が困難になったり、融点やガラス転移点が低下して、耐熱性が低下したり、あるいは容易に結晶化が起こって製膜性(アモルファス性)が低下するおそれがある。
なお、本発明の電子輸送材料を、例えば有機EL素子における正孔阻止層兼電子輸送層に使用する場合、その重要な特性の一つである正孔阻止性は、分子内のジアリールアミン骨格により損なわれる傾向があるので、正孔阻止性の観点からは、該骨格を含んでいない構造が好ましい。また、アリールオキシド骨格やアリールスルフィド骨格も、ジアリールアミン骨格ほどではないが、強い正孔輸送性を有し、正孔阻止性を低下させてしまう傾向があるので、これらの骨格を含んでいない構造が好ましい。
本発明においてジアリールアミン骨格とは、窒素原子に置換基として任意の芳香環が少なくとも2つ結合したアミン骨格を指し、例えばジフェニルアミン骨格、フェニルナフチル骨格、トリフェニルアミン骨格などが挙げられる。また、置換基同士が結合して環を成しているものも含み、例えばカルバゾール骨格、N−フェニルカルバゾール骨格、N−フェニルインドール骨格などが挙げられる(但し、二重結合によって窒素原子と置換基が結合している骨格を除く(例:アクリジン、フェナジンなど))。いずれも、強い正孔輸送性を有する骨格の一つである。
本発明においてアリールオキシド骨格とは、酸素原子に置換基として芳香環が少なくとも1つ結合したオキシド骨格を指し、例えばフェニルオキシド骨格、ジフェニルオキシド骨格等が挙げられる。また、置換基同士が結合して環を成しているものも含み、例えばベンゾフラン骨格、ジベンゾフラン骨格、ジベンゾ[1,4]ジオキシン骨格などが挙げられる。いずれも、強い正孔輸送性を有する骨格の一つである。
本発明においてアリールスルフィド骨格とは、硫黄原子上に置換基として芳香環が少なくとも1つ置換されたスルフィド骨格を指し、例えばフェニルスルフィド骨格、ジフェニルスルフィド骨格等が挙げられる。また、置換基同士が結合して環を成しているものも含み、例えばベンゾチオフェン骨格、ジベンゾチオフェン骨格、チアントレン骨格などが挙げられる。いすれも、強い正孔輸送性を有する骨格の一つである。
本発明の電子輸送材料の好ましい具体例を以下に示す。但し、本発明の電子輸送材料はこれらに限定されるものではない。
一般式(I)で表わされる化合物は、高い電子注入・輸送性と正孔阻止性とを併せ持ち、且つ、電気的酸化還元耐久性にも優れている。更には、発光層近傍に用いても配位子交換を生じるおそれが少ない。よって、電子輸送材料として好適に使用することができる。
一般式(I)で表わされる化合物が電子輸送材料として優れた特性を示す理由は明らかではないが、以下のように推測される。
一般式(I)の化合物は、ピラジン環を含むとともに、ピラジン環の2,3,5,6−位に芳香環基Ar1〜Ar4を有している。また、これらの芳香環基Ar1〜Ar4として、上記一般式(II)で表される特定の構造の基を有している。これらの構造的な特徴によって、電子注入・輸送性及び正孔阻止性がともに優れるとともに、電気的酸化還元耐久性にも優れ、更には、発光層近傍に用いても配位子交換を生じるおそれのない、優れた電子輸送材料となるものと推測される。
一般式(I)の化合物は、ピラジン環を含むとともに、ピラジン環の2,3,5,6−位に芳香環基Ar1〜Ar4を有している。また、これらの芳香環基Ar1〜Ar4として、上記一般式(II)で表される特定の構造の基を有している。これらの構造的な特徴によって、電子注入・輸送性及び正孔阻止性がともに優れるとともに、電気的酸化還元耐久性にも優れ、更には、発光層近傍に用いても配位子交換を生じるおそれのない、優れた電子輸送材料となるものと推測される。
また、本発明の電子輸送材料をホスト材料として適用する場合、ある程度の正孔輸送性を持たせる目的で、芳香環基Ar1〜Ar4として、カルバゾール基などのドナー性置換基を導入することができるが、この場合には、還元に対するドナー性置換基の脆弱性を、中心骨格となるピラジン環のアクセプタ性によって補うことができ(例えば、還元によってドナー性置換基が結合解裂を起こす等の不具合を避けることができる)、その結果として、優れた電気的酸化還元耐久性が発揮されることになる。
なお、本発明の電子輸送材料は、目的とする化合物の構造に応じて原料を選択し、公知の手法を用いて合成することができる。具体例としては、以下の手法が挙げられる。
なお、以下に示す各反応式中、Ar1〜Ar4は、それぞれ一般式(I)における同符号の基と同様の定義を表わす。
なお、以下に示す各反応式中、Ar1〜Ar4は、それぞれ一般式(I)における同符号の基と同様の定義を表わす。
i)同一もしくは異なる芳香族アルデヒドから(Khim.-Farm. Zh. 25 (1991) 4, 28-31; Helvetica Chimica Acta (1985) 68(3), 592-599; J. Chem. Res. Synop. (2002) 6, 262-263; Ser C. (19966) 263, 1156-; J. Am. Chem. Soc. (2002) 124, 12084-12085; Advanced Synthesis & Catalysis (2002) 344, 96-103; PCT Int. Appl., 2002002753, 10 Jan. 2002; J. Org. Chem. (2001) 66, 8010-8014; J. Chem. Soc., Perkin Trans. 1, (2001) 7, 633-635; Tetrahedron Lett. (2000) 41, 10159-10162; J. Org. Chem. (1983) 48, 459-464; Journal fuer Praklische Chemie (Leipzig) (1962) 16, 1-7)、あるいはα−ジヒドロ体から(Tetrahedron: Asymmetry (1998) 9, 4117-4122)、あるいはアリールリチウムから(J. Org. Chem. (1982) 47, 4347-4348; Tetrahedron Lett. (1989) 30, 989-992)、あるいはα−ジケトン体から(Journal fuer Praklische Chemie (Leipzig) (1962) 16, 1-7)、あるいはアリールエステルから(Tetrahedron Lett. (1980) 21, 2227-2228)、ベンゾイン型中間体を合成し、これをアンモニアや酢酸アンモニウムなどを酸素存在下で作用させることで得る方法(J. Org. Chem. (1937) 2, 328-; Bull. Soc. Chim. Fr. (1968) 4970-; Helvetica Chimica Acta (1985) 68(3), 592-599; C. R. Seances Acad. Sci., Ser C. (1966) 263, 1156-)。
ii)α−ジケトンとα−ジアミンで環化させ(J. Org. Chem. 57 (1992) 24, 6653-6657; Helvetica Chimica Acta (1976) 59, 1169-; Helvetica Chimica Acta (1973) 56, 610-)、酸化処理で合成する方法(Helvetica Chimica Acta (1976) 59, 1169-)。
iv)同一もしくは異なる芳香族アミドにアンモニアや酢酸アンモニウムなどを作用させることで得る方法(Helvetica Chimica Acta (1985) 68, 592-599; 特開平6−65212号公報)。
v)アミノ酸からアミノ酸無水物(Bull. Soc. Chem. Fr. (1942) 9, 487-; J. Am. Pharm. Assoc., Sci. Ed. (1957) 46, p391-)を経て、あるいはその他の経路からピラジンのジハライド(J. Heterocyclic Chem. (1986) 23, 871-875; Chemical & Pharmaceutical Bull. (1979) 27, 2980-2987; J. Am. Chem. Soc. (1956) 78, 4071-4077)を得、これとアリールボロン酸(Suzuki Coupling法)やカルバゾール、インドール、ピロール、ピラゾールなどのアゾール類(Suzuki Coupling法(Tetrahdron 48 (1992) 37, 8117-8126)もしくはUllman 法)やテトラアリール錫(Heterocycles (1986) 24, 785-792)とのカップリング反応によって目的物を得る方法。
[2.有機電界発光素子]
次に、本発明の有機電界発光素子について説明する。
本発明の有機電界発光素子は、基板と、基板上に設けられた陽極及び陰極と、陽極及び陰極の間に設けられた中間層とを備える。中間層は1層でも2層以上でもよいが、その少なくとも1つは有機発光層(以下適宜「発光層」と略称する)である。そして、これら中間層のうち少なくとも何れかの層に、一般式(I)で表わされる化合物(本発明の電子輸送材料。以下適宜「本発明の化合物」と略す。)が含有されることを特徴とする。
次に、本発明の有機電界発光素子について説明する。
本発明の有機電界発光素子は、基板と、基板上に設けられた陽極及び陰極と、陽極及び陰極の間に設けられた中間層とを備える。中間層は1層でも2層以上でもよいが、その少なくとも1つは有機発光層(以下適宜「発光層」と略称する)である。そして、これら中間層のうち少なくとも何れかの層に、一般式(I)で表わされる化合物(本発明の電子輸送材料。以下適宜「本発明の化合物」と略す。)が含有されることを特徴とする。
本発明の化合物は、電子注入・輸送性及び正孔阻止性がともに優れ、また、電気的酸化還元耐久性にも優れているため、発光層や、発光層と陰極との間に存在する層に使用すると有効である。本発明の化合物をこれらの層に含有させることにより、高発光効率、高輝度、長駆動寿命である有機電界発光素子が得られるので好ましい。
本発明の化合物を発光層と陰極との間の層に使用する場合、その層は特に制限されるものではない。但し、本発明の化合物は上述のように、発光層近傍に用いても配位子交換を生じるおそれがないという特性を有するので、発光層の陰極側に接して設けられる層(以下、適宜「正孔阻止層」と称す)に使用すると、この特性を最も有効に生かすことができ好ましい。
本発明の有機電界発光素子において、本発明の化合物が同一の層内に2種以上含有されていても良い。また、本発明の化合物が2以上の層に含有されている場合には、これらの層に含有される本発明の化合物は、同一のものであっても異なるものであってもよい。
なお、本発明の有機電界発光素子において、陰極と発光層との間に存在する層を「電子輸送層」と称し、2つ以上の層が存在する場合は、陰極に接している層を「電子注入層」、それ以外の層を総称して「電子輸送層」と称す。また、陰極−発光層間に設けられた層のうち、発光層に接している層を特に「正孔阻止層」と称する場合がある。
以下、図面を参照して、本発明の化合物を正孔阻止層に含有する場合を例に、本発明の有機電界発光素子の実施の形態を詳細に説明する。
図1は、本発明の有機電界発光素子の構造の一例を模式的に示す断面図であり、1は基板、2は陽極、4は正孔輸送層、5は発光層、6は正孔阻止層、8は陰極を各々表わす。
図1は、本発明の有機電界発光素子の構造の一例を模式的に示す断面図であり、1は基板、2は陽極、4は正孔輸送層、5は発光層、6は正孔阻止層、8は陰極を各々表わす。
基板1は有機電界発光素子の支持体となるものであり、石英やガラスの板、金属板や金属箔、プラスチックフィルムやシートなどが用いられる。特にガラス板や、ポリエステル、ポリメタクリレート、ポリカーボネート、ポリスルホンなどの透明な合成樹脂の板又はフィルムが好ましい。合成樹脂基板を使用する場合にはガスバリア性に留意する必要がある。基板のガスバリア性が小さすぎると、基板を通過した外気により有機電界発光素子が劣化することがあるので好ましくない。このため、合成樹脂基板の少なくとも片面に緻密なシリコン酸化膜等を設けてガスバリア性を確保する方法も好ましい方法の一つである。
基板1上には陽極2が設けられるが、陽極2は正孔輸送層4への正孔注入の役割を果たすものである。陽極2は、通常、アルミニウム、金、銀、ニッケル、パラジウム、白金等の金属、インジウム及び/又はスズの酸化物などの金属酸化物、ヨウ化銅などのハロゲン化金属、カーボンブラック、あるいは、ポリ(3−メチルチオフェン)、ポリピロール、ポリアニリン等の導電性高分子などにより構成される。陽極2は通常、スパッタリング法、真空蒸着法などにより形成されることが多い。また、銀などの金属微粒子、ヨウ化銅などの微粒子、カーボンブラック、導電性の金属酸化物微粒子、導電性高分子微粉末などで陽極2を形成する場合には、適当なバインダー樹脂溶液中に分散させて、基板1上に塗布することにより形成することもできる。更に、導電性高分子で陽極2を形成する場合には、電解重合により基板1上に直接重合薄膜を形成したり、基板1上に導電性高分子を塗布して形成することもできる(Appl. Phys. Lett.,60巻,2711頁,1992年)。
陽極2は、通常は単層構造であるが、所望により複数の材料からなる積層構造とすることも可能である。
陽極2の厚みは、必要とする透明性により異なる。透明性が必要とされる場合は、可視光の透過率を、通常60%以上、好ましくは80%以上とすることが望ましい。この場合、陽極の厚みは通常5nm以上、好ましくは10nm以上であり、また通常1000nm以下、好ましくは500nm以下程度である。不透明でよい場合は陽極2の厚みは任意であり、所望により金属で形成して基板1を兼ねてもよい。
陽極2の厚みは、必要とする透明性により異なる。透明性が必要とされる場合は、可視光の透過率を、通常60%以上、好ましくは80%以上とすることが望ましい。この場合、陽極の厚みは通常5nm以上、好ましくは10nm以上であり、また通常1000nm以下、好ましくは500nm以下程度である。不透明でよい場合は陽極2の厚みは任意であり、所望により金属で形成して基板1を兼ねてもよい。
図1に示す構成の素子において、陽極2の上には正孔輸送層4が設けられる。正孔輸送層の材料に要求される条件としては、陽極からの正孔注入効率が高く、かつ、注入された正孔を効率よく輸送することができる材料であることが必要である。そのためには、イオン化ポテンシャルが小さく、可視光の光に対して透明性が高く、しかも正孔移動度が大きく、更に安定性に優れ、トラップとなる不純物が製造時や使用時に発生しにくいことが要求される。また、発光層5に接するために発光層からの発光を消光したり、発光層との間でエキサイプレックスを形成して効率を低下させないことが求められる。上記の一般的要求以外に、車載表示用の応用を考えた場合、素子には更に耐熱性が要求される。従って、Tgとして85℃以上の値を有する材料が望ましい。
このような正孔輸送材料としては、例えば、4,4’−ビス[N−(1−ナフチル)−N−フェニルアミノ]ビフェニルで代表される2個以上の3級アミンを含み2個以上の縮合芳香族環が窒素原子に置換した芳香族ジアミン(特開平5−234681号公報)、4,4’,4”−トリス(1−ナフチルフェニルアミノ)トリフェニルアミン等のスターバースト構造を有する芳香族アミン化合物(J. Lumin.,72−74巻、985頁、1997年)、トリフェニルアミンの四量体から成る芳香族アミン化合物(Chem. Commun.,2175頁、1996年)、2,2’,7,7’−テトラキス−(ジフェニルアミノ)−9,9’−スピロビフルオレン等のスピロ化合物(Synth. Metals,91巻、209頁、1997年)等が挙げられる。これらの化合物は、単独で用いてもよいし、必要に応じて、複数種混合して用いてもよい。
上記の化合物以外に、正孔輸送層4の材料として、ポリビニルカルバゾール、ポリビニルトリフェニルアミン(特開平7−53953号公報)、テトラフェニルベンジジンを含有するポリアリーレンエーテルサルホン(Polym. Adv. Tech.,7巻、33頁、1996年)等の高分子材料が挙げられる。
正孔輸送層4は、スプレー法、印刷法、スピンコート法、ディップコート法、ダイコート法などの通常の塗布法や、インクジェット法、スクリーン印刷法など各種印刷法等の湿式成膜法や、真空蒸着法などの乾式成膜法で形成することができる。
塗布法の場合は、正孔輸送材料を1種又は2種以上を、必要により正孔のトラップにならないバインダー樹脂や塗布性改良剤などの添加剤を添加し、適当な溶剤に溶解して塗布溶液を調製し、スピンコート法などの方法により陽極2上に塗布し、乾燥して正孔輸送層4を形成する。バインダー樹脂としては、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリエステル等が挙げられる。バインダー樹脂は添加量が多いと正孔移動度を低下させるので、少ない方が望ましく、通常、50重量%以下が好ましい。
真空蒸着法の場合には、正孔輸送材料を真空容器内に設置されたルツボに入れ、真空容器内を適当な真空ポンプで10-4Pa程度にまで排気した後、ルツボを加熱して、正孔輸送材料を蒸発させ、ルツボと向かい合って置かれた、陽極2が形成された基板1上に正孔輸送層4を形成させる。
正孔輸送層4の膜厚は、通常5nm以上、好ましくは10nm以上であり、また通常300nm以下、好ましくは100nm以下である。この様に薄い膜を一様に形成するためには、一般に真空蒸着法がよく用いられる。
図1に示す素子において、正孔輸送層4の上には発光層5が設けられる。発光層5は、電界を与えられた電極間において、陽極から注入されて正孔輸送層を移動する正孔と、陰極から注入されて正孔阻止層6を移動する電子との再結合により励起されて強い発光を示す発光性化合物より形成される。
発光層5に用いられる発光性化合物としては、安定な薄膜形状を有し、固体状態で高い発光(蛍光又は燐光)量子収率を示し、正孔及び/又は電子を効率よく輸送することができる化合物であることが必要である。更に電気化学的かつ化学的に安定であり、トラップとなる不純物が製造時や使用時に発生し難い化合物であることが要求される。
このような条件を満たし、蛍光を発する発光層を形成する材料としては、8−ヒドロキシキノリンのアルミニウム錯体などの金属錯体(特開昭59−194393号公報)、10−ヒドロキシベンゾ[h]キノリンの金属錯体(特開平6−322362号公報)、ビススチリルベンゼン誘導体(特開平1−245087号公報、同2−222484号公報)、ビススチリルアリーレン誘導体(特開平2−247278号公報)、(2−ヒドロキシフェニル)ベンゾチアゾールの金属錯体(特開平8−315983号公報)、シロール誘導体、等が挙げられる。これらの発光層材料は、通常は真空蒸着法により正孔輸送層上に積層される。また、前述の正孔輸送層材料のうち、発光性を有する芳香族アミン系化合物も発光層材料として用いることが出来る。
なお、本発明の化合物は、この発光層材料として使用することも可能である。その場合には、正孔阻止層6又は後述の電子輸送層7に使用できる材料として前述した公知材料に代表される、その他の電子輸送性材料や正孔阻止材料の中から、本発明の化合物よりも0.1eV以上大きなイオン化ポテンシャルを有する材料を選択して使用することが好ましい。
更に、本発明の有機電界発光素子では、発光層とこれに接して設けられる正孔阻止層の両方に、本発明の化合物を使用しても良い。この場合、一般式(I)で表される化合物よりなる群から、イオン化ポテンシャルの差が0.1eV以上となるように2以上の化合物を選択し、これらを発光層と正孔阻止層に各々使用すればよい。
素子の発光効率を向上させるとともに発光色を変える目的で、例えば、8−ヒドロキシキノリンのアルミニウム錯体をホスト材料として、クマリン等のレーザー用蛍光色素をドープすること(J. Appl. Phys.,65巻,3610頁,1989年)等が行われている。このドーピング手法は、発光層5にも適用でき、ドープ用材料としては、クマリン以外にも各種の蛍光色素が使用できる。青色発光を与える蛍光色素としては、ペリレン、ピレン、アントラセン、クマリン及びそれらの誘導体等が挙げられる。緑色蛍光色素としては、キナクリドン誘導体、クマリン誘導体等が挙げられる。黄色蛍光色素としては、ルブレン、ペリミドン誘導体等が挙げられる。赤色蛍光色素としては、DCM系化合物、ベンゾピラン誘導体、ローダミン誘導体、ベンゾチオキサンテン誘導体、アザベンゾチオキサンテン等が挙げられる。
上記のドープ用蛍光色素以外にも、ホスト材料に応じて、レーザー研究,8巻,694頁,803頁,958頁(1980年);同9巻,85頁(1981年)、に列挙されている蛍光色素などが発光層用のドープ材料として使用することができる。
ホスト材料に対して上記蛍光色素がドープされる量は、10-3重量%以上が好ましく、0.1重量%がより好ましい。また10重量%以下が好ましく、3重量%以下がより好ましい。下限値を下回ると、素子の発光効率向上に寄与できない場合があり、上限値を越えると濃度消光が起き、発光効率の低下に至る可能性がある。
一方、燐光発光を示す発光層は、通常、燐光性ドーパントとホスト材料を含んで形成される。燐光性ドーパントとしては、例えば長周期型周期表第7族〜第11族から選ばれる金属を含む有機金属錯体が挙げられ、該金属錯体のT1(最低励起三重項準位)より高いT1を有する電荷輸送性有機化合物をホスト材料として使用することが好ましい。
長周期型周期表第7族〜第11族から選ばれる金属を含む燐光性有機金属錯体における、該金属として、好ましくは、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、銀、レニウム、オスミウム、イリジウム、白金、及び金が挙げられる。これらの有機金属錯体として、好ましくは下記一般式(III)又は一般式(VII)で表わされる化合物が挙げられる。
MLn−jL’j (III)
式(III)中、Mは金属を表わし、nは該金属Mの価数を表わす。L及びL’は二座配位子を表わす。jは0又は1又は2を表わす。
式(III)中、Mは金属を表わし、nは該金属Mの価数を表わす。L及びL’は二座配位子を表わす。jは0又は1又は2を表わす。
式(IV)中、M7は金属、Tは炭素又は窒素を表わす。Tが窒素の場合はR14、R15は無く、Tが炭素の場合はR14、R15は水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アラルキル基、アルケニル基、シアノ基、アミノ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、カルボキシル基、アルコキシ基、アルキルアミノ基、アラルキルアミノ基、ハロアルキル基、水酸基、アリールオキシ基、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基又は芳香族複素環基を表わす。
R12、R13は水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アラルキル基、アルケニル基、シアノ基、アミノ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、カルボキシル基、アルコキシ基、アルキルアミノ基、アラルキルアミノ基、ハロアルキル基、水酸基、アリールオキシ基、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基又は芳香族複素環基を表わし、互いに連結して環を形成しても良い。)
環A1及び環A1’は各々独立に、芳香族炭化水素基又は芳香族複素環基を表わし、置換基を有していてもよい。環A2及び環A2’は含窒素芳香族複素環基を表わし、置換基を有していてもよい。R’、R”及びR''' はそれぞれハロゲン原子;アルキル基;アルケニル基;アルコキシカルボニル基;メトキシ基;アルコキシ基;アリールオキシ基;ジアルキルアミノ基;ジアリールアミノ基;カルバゾリル基;アシル基;ハロアルキル基又はシアノ基を表わす。
一般式(III)で表される化合物として、更に好ましくは下記一般式(Va)、(Vb)(Vc)で表される化合物が挙げられる。
式(Va)中、M4は金属、nは該金属の価数を表わす。環A1は置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基を表わし、環A2は置換基を有していてもよい含窒素芳香族複素環基を表わす。
式(Vb)中、M5は金属、nは該金属の価数を表わす。環A1は置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基又は芳香族複素環基を表わし、環A2は置換基を有していてもよい含窒素芳香族複素環基を表わす。
式(Vc)中、M6は金属、nは該金属の価数を表わし、jは0又は1又は2を表わす。環A1及び環A1’は各々独立に、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基又は芳香族複素環基を表わし、環A2及び環A2’は各々独立に、置換基を有していてもよい含窒素芳香族複素環基を表わす。
一般式(Va)、(Vb)、(Vc)で表される化合物の環A1及び環A1’として、好ましくは、フェニル基、ビフェニル基、ナフチル基、アントリル基、チエニル基、フリル基、ベンゾチエニル基、ベンゾフリル基、ピリジル基、キノリル基、イソキノリル基、又はカルバゾリル基が挙げられる。
環A2及び環A2’として、好ましくは、ピリジル基、ピリミジル基、ピラジル基、トリアジル基、ベンゾチアゾール基、ベンゾオキサゾール基、ベンゾイミダゾール基、キノリル基、イソキノリル基、キノキサリル基、又はフェナントリジル基が挙げられる。
一般式(Va)、(Vb)及び(Vc)で表される化合物が有していてもよい置換基としては、フッ素原子等のハロゲン原子;メチル基、エチル基等の炭素数1〜6のアルキル基;ビニル基等の炭素数2〜6のアルケニル基;メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基等の炭素数2〜6のアルコキシカルボニル基;メトキシ基、エトキシ基等の炭素数1〜6のアルコキシ基;フェノキシ基、ベンジルオキシ基などのアリールオキシ基;ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基等のジアルキルアミノ基;ジフェニルアミノ基等のジアリールアミノ基;カルバゾリル基;アセチル基等のアシル基;トリフルオロメチル基等のハロアルキル基;シアノ基等が挙げられ、これらは互いに連結して環を形成しても良い。
なお、環A1が有する置換基と環A2が有する置換基が結合、又は環A1’が有する置換基と環A2’が有する置換基が結合して、一つの縮合環を形成してもよく、このような縮合環としては7,8−ベンゾキノリン基等が挙げられる。
環A1、環A1’、環A2及び環A2’の置換基として、より好ましくはアルキル基、アルコキシ基、芳香族炭化水素基、シアノ基、ハロゲン原子、ハロアルキル基、ジアリールアミノ基、又はカルバゾリル基が挙げられる。
式(Va)、(Vb)におけるM4及びM5として好ましくは、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、銀、レニウム、オスミウム、イリジウム、白金又は金が挙げられる。式(VI)におけるM7として好ましくは、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、銀、レニウム、オスミウム、イリジウム、白金又は金が挙げられ、特に好ましくは、白金、パラジウム等の2価の金属が挙げられる。
前記一般式(III)、(Va)、(Vb)及び(Vc)で示される有機金属錯体の具体例を以下に示すが、以下の化合物に限定されるわけではない。
前記一般式(III)、(Va)、(Vb)及び(Vc)で表される有機金属錯体の中でも、特に配位子L及び/又はL’として、2−アリールピリジン骨格を含む配位子である2−アリールピリジン系配位子(2−アリールピリジン、これに任意の置換基が結合したもの、又はこれに任意の気が縮合してなるもの)を有する化合物が好ましい。
前記一般式(IV)で表わされる有機金属錯体の具体例を以下に示すが、下記の化合物に限定されるわけではない。
燐光発光を示す発光層に使用されるホスト材料としては、蛍光発光を示す発光層に使用されるホスト材料として前述した材料の他に、4,4’−N,N’−ジカルバゾールビフェニルなどのカルバゾール誘導体(WO00/70655)、トリス(8−ヒドロキシキノリン)アルミニウム(USP6,303,238)、2,2’,2”−(1,3,5−ベンゼントリル)トリス[1−フェニル−1H−ベンズイミダゾール](Appl. Phys. Lett.,78巻,1622項,2001)、ポリビニルカルバゾール(特開2001−257076号公報)等が挙げられる。
更に、本発明の有機電界発光素子における発光層は、ホスト材料及び燐光性ドーパントと共に、前述の蛍光色素を含有していてもよい。
発光層中にドーパントとして含有される有機金属錯体の量は、0.1重量%以上が好ましく、また30重量%以下が好ましい。下限値を下回ると素子の発光効率向上に寄与できない場合があり、上限値を上回ると有機金属錯体同士が2量体を形成する等の理由で濃度消光が起き、発光効率の低下に至る可能性がある。
発光層中にドーパントとして含有される有機金属錯体の量は、0.1重量%以上が好ましく、また30重量%以下が好ましい。下限値を下回ると素子の発光効率向上に寄与できない場合があり、上限値を上回ると有機金属錯体同士が2量体を形成する等の理由で濃度消光が起き、発光効率の低下に至る可能性がある。
燐光発光を示す発光層における燐光性ドーパントの量は、従来の蛍光(1重項)を用いた素子において、発光層に含有される蛍光性色素(ドーパント)の量より、若干多い方が好ましい傾向がある。また燐光性ドーパントと共に蛍光色素が発光層中に含有される場合、該蛍光色素の量は、0.05重量%以上が好ましく、0.1重量%以上がより好ましい。また10重量%以下が好ましく、3重量%以下がより好ましい。
発光層5の膜厚は、通常3nm以上、好ましくは5nm以上であり、また通常200nm以下、好ましくは100nm以下である。
発光層も、正孔輸送層と同様の方法で形成することができる。上述の蛍光色素及び/又は燐光色素(燐光性ドーパント)を発光層のホスト材料にドープする方法を以下に説明する。
発光層も、正孔輸送層と同様の方法で形成することができる。上述の蛍光色素及び/又は燐光色素(燐光性ドーパント)を発光層のホスト材料にドープする方法を以下に説明する。
塗布の場合は、前記発光層ホスト材料と、ドープ用色素、更に必要により、電子のトラップや発光の消光剤とならないバインダー樹脂や、レベリング剤等の塗布性改良剤などの添加剤を添加し溶解した塗布溶液を調整し、スピンコート法などの方法により正孔輸送層4上に塗布し、乾燥して発光層5を形成する。バインダー樹脂としては、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリエステル等が挙げられる。バインダー樹脂は添加量が多いと正孔/電子移動度を低下させるので、少ない方が望ましく、50重量%以下が好ましい。
真空蒸着法の場合には、前記ホスト材料を真空容器内に設置されたるつぼに入れ、ドープする色素を別のるつぼに入れ、真空容器内を適当な真空ポンプで1.0×10-4Torr程度にまで排気した後、各々のるつぼを同時に加熱して蒸発させ、るつぼと向かい合って置かれた基板上に層を形成する。また、他の方法として、上記の材料を予め所定比で混合したものを同一のるつぼを用いて蒸発させてもよい。
上記各ドーパントが発光層中にドープされる場合、発光層の膜厚方向において均一にドープされるが、膜厚方向において濃度分布があっても構わない。例えば、正孔輸送層との界面近傍にのみドープしたり、逆に、正孔阻止層界面近傍にドープしてもよい。
発光層も正孔輸送層と同様の方法で形成することができるが、通常は真空蒸着法が用いられる。
なお、発光層5は、本発明の性能を損なわない範囲で上記以外の成分を含んでいてもよい。
なお、発光層5は、本発明の性能を損なわない範囲で上記以外の成分を含んでいてもよい。
図1に示す素子において、正孔阻止層6は発光層5の上に、発光層5の陰極側の界面に接するように積層される。
正孔阻止層6は、正孔輸送層から移動してくる正孔を陰極に到達するのを阻止する役割と、陰極から注入された電子を効率よく発光層の方向に輸送することができる化合物より形成されることが好ましい。正孔阻止層6を構成する材料は、電子移動度が高く正孔移動度が低いことが必要とされる。正孔阻止層6は、正孔と電子を発光層内に閉じこめて、発光効率を向上させる機能を有する。
正孔阻止層6は、正孔輸送層から移動してくる正孔を陰極に到達するのを阻止する役割と、陰極から注入された電子を効率よく発光層の方向に輸送することができる化合物より形成されることが好ましい。正孔阻止層6を構成する材料は、電子移動度が高く正孔移動度が低いことが必要とされる。正孔阻止層6は、正孔と電子を発光層内に閉じこめて、発光効率を向上させる機能を有する。
本発明の有機電界発光素子において、この正孔阻止層には、一般式(I)で表される化合物を用いる。一般式(I)で表される化合物は、正孔阻止層中に単独で用いてもよいし、複数種を併用してもよい。更に、本発明の化合物の性能を損なわない範囲で、公知の正孔阻止機能を有する化合物を併用してもよい。
本発明で用いられる正孔阻止層のイオン化ポテンシャルは、発光層のイオン化ポテンシャル(発光層がホスト材料とドーパントを含んでいる場合にはホスト材料のイオン化ポテンシャル)より0.1eV以上大きいことが好ましい。イオン化ポテンシャルは物質のHOMO(最高被占分子軌道)レベルにある電子を真空準位に放出するのに必要なエネルギーで定義される。イオン化ポテンシャルは光電子分光法で直接定義されるか、電気化学的に測定した酸化電位を基準電極に対して補正しても求められる。後者の方法の場合、例えば飽和甘コウ電極(SCE)を基準電極として用いたとき、以下の式で定義される(“Molecular Semiconductors”,Springer-Verlag,1985年、98頁)。
イオン化ポテンシャル = 酸化電位(vs.SCE)+4.3eV
イオン化ポテンシャル = 酸化電位(vs.SCE)+4.3eV
更に、本発明で用いられる正孔阻止層の電子親和力(EA)は、発光層の電子親和力(発光層がホスト材料とドーパントを含んでいる場合にはホスト材料の電子親和力)と比較して同等以上であることが好ましい。電子親和力もイオン化ポテンシャルと同様に真空準位を基準として、真空準位にある電子が物質のLUMO(最低空分子軌道)レベルに落ちて安定化するエネルギーで定義される。電子親和力は、上述のイオン化ポテンシャルから光学的バンドギャップを差し引いて求められるか、電気化学的な還元電位から下記の式で同様に求められる。
電子親和力 = 還元電位(vs.SCE)+4.3eV
電子親和力 = 還元電位(vs.SCE)+4.3eV
従って、本発明で用いられる正孔阻止層は、酸化電位と還元電位を用いて、以下のように表現することも出来る。
{(正孔阻止材料の酸化電位)−(発光材料の酸化電位)}
≧ 0.1V(正孔阻止材料の還元電位) ≧ (発光材料の還元電位)
{(正孔阻止材料の酸化電位)−(発光材料の酸化電位)}
≧ 0.1V(正孔阻止材料の還元電位) ≧ (発光材料の還元電位)
更に、後述の電子輸送層を有する素子の場合には、正孔阻止層の電子親和力は電子輸送層の電子親和力と比較して同等以下であることが好ましい。
(電子輸送材料の還元電位) ≧ (正孔阻止材料の還元電位)
≧ (発光材料の還元電位)
(電子輸送材料の還元電位) ≧ (正孔阻止材料の還元電位)
≧ (発光材料の還元電位)
正孔阻止層6の膜厚は、通常0.3以上、好ましくは0.5nm以上であり、また通常100nm以下、好ましくは50nm以下である。正孔阻止層も正孔輸送層と同様の方法で形成することができるが、通常は真空蒸着法が用いられる。
陰極8は、正孔阻止層6を介して発光層5に電子を注入する役割を果たす。陰極8として用いられる材料は、前記陽極2に使用される材料を用いることが可能であるが、効率よく電子注入を行なうには、仕事関数の低い金属が好ましく、スズ、マグネシウム、インジウム、カルシウム、アルミニウム、銀等の適当な金属又はそれらの合金が用いられる。具体例としては、マグネシウム−銀合金、マグネシウム−インジウム合金、アルミニウム−リチウム合金等の低仕事関数合金電極が挙げられる。更に、陰極と発光層又は電子輸送層の界面にLiF、MgF2、Li2O等の極薄絶縁膜(0.1〜5nm)を挿入することも、素子の効率を向上させる上で有効な方法である(Appl. Phys. Lett.,70巻,152頁,1997年;特開平10−74586号公報;IEEE Trans. Electron. Devices,44巻,1245頁,1997年)。
陰極8の膜厚は、通常、陽極2と同様である。低仕事関数金属から成る陰極を保護する目的で、この上に更に、仕事関数が高く大気に対して安定な金属層を積層することは素子の安定性を増す。この目的のために、アルミニウム、銀、銅、ニッケル、クロム、金、白金等の金属が使われる。
素子の発光効率を更に向上させることを目的として、図2及び図3に示すように、正孔阻止層6と陰極8の間に電子輸送層7が設けられていてもよい。なお、図2及び図3はそれぞれ、本発明の有機電界発光素子の構造の他の例を模式的に示す断面図である。電子輸送層7は、電界を与えられた電極間において陰極から注入された電子を効率よく正孔阻止層6の方向に輸送することができる化合物より形成される。
このような条件を満たす材料としては、8−ヒドロキシキノリンのアルミニウム錯体などの金属錯体(特開昭59−194393号公報)、10−ヒドロキシベンゾ[h]キノリンの金属錯体、オキサジアゾール誘導体、ジスチリルビフェニル誘導体、シロール誘導体、3−又は5−ヒドロキシフラボン金属錯体、ベンズオキサゾール金属錯体、ベンゾチアゾール金属錯体、トリスベンズイミダゾリルベンゼン(米国特許第5,645,948号)、キノキサリン化合物(特開平6−207169号公報)、フェナントロリン誘導体(特開平5−331459号公報)、2−t−ブチル−9,10−N,N'−ジシアノアントラキノンジイミン、n型水素化非晶質炭化シリコン、n型硫化亜鉛、n型セレン化亜鉛などが挙げられる。
また、上述のような電子輸送材料に、アルカリ金属をドープする(特開平10−270171号公報、特願2000−285656号、特願2000−285657号などに記載)ことにより、電子輸送性が向上するため好ましい。
電子輸送層7は、正孔輸送層4と同様にして塗布法あるいは真空蒸着法により正孔阻止層6上に積層することにより形成される。通常は、真空蒸着法が用いられる。
なお、本発明の化合物を、この電子輸送層7に使用しても良い。その場合、本発明の化合物のみを使用して電子輸送層7を形成しても良いし、前述した各種公知の材料と併用しても良い。
電子輸送層7に本発明の化合物を使用した場合、前述の正孔阻止層6にも本発明の化合物を使用しても良いし、また、電子輸送層7のみに本発明の化合物を使用し、正孔阻止層6には、それ以外の、公知の正孔阻止材料を使用しても良い。
電子輸送層7の膜厚は、通常5nm以上、好ましくは10nm以上であり、また通常200nm以下、好ましくは100nm以下である。
電子輸送層7は、正孔輸送層4と同様にして塗布法あるいは真空蒸着法により正孔阻止層6上に積層することにより形成される。通常は、真空蒸着法が用いられる。
正孔注入の効率を更に向上させ、かつ、有機層全体の陽極への付着力を改善させる目的で、正孔輸送層4と陽極2との間に陽極バッファ層3を挿入することも行なわれている(図3参照)。陽極バッファ層3を挿入することで、初期の素子の駆動電圧が下がると同時に、素子を定電流で連続駆動した時の電圧上昇も抑制される効果がある。陽極バッファ層に用いられる材料に要求される条件としては、陽極とのコンタクトがよく均一な薄膜が形成でき、熱的に安定、即ち、融点及びガラス転移温度が高く、融点としては300℃以上、ガラス転移温度としては100℃以上であることが好ましい。更に、イオン化ポテンシャルが低く陽極からの正孔注入が容易なこと、正孔移動度が大きいことが挙げられる。
この目的のために、陽極バッファ層3の材料として、これまでにポルフィリン誘導体やフタロシアニン化合物(特開昭63−295695号公報)、ヒドラゾン化合物、アルコキシ置換の芳香族ジアミン誘導体、p−(9−アントリル)−N,N’−ジ−p−トリルアニリン、ポリチエニレンビニレンやポリ−p−フェニレンビニレン、ポリアニリン(Appl. Phys. Lett.,64巻、1245頁,1994年)、ポリチオフェン(Optical Materials,9巻、125頁、1998年)、スターバ スト型芳香族トリアミン(特開平4−308688号公報)等の有機化合物や、スパッタ・カーボン膜(Synth. Met.,91巻、73頁、1997年)や、バナジウム酸化物、ルテニウム酸化物、モリブデン酸化物等の金属酸化物(J. Phys. D,29巻、2750頁、1996年)が報告されている。
また、正孔注入・輸送性の低分子有機化合物と電子受容性化合物を含有する層(特開平11−251067号公報、特開2000−159221号公報等に記載)や、芳香族アミノ基等を含有する非共役系高分子化合物に、必要に応じて電子受容性化合物をドープしてなる層(特開平11−135262号公報、特開平11−283750号公報、特開2000−36390号公報、特開2000−150168号公報、特開平2001−223084号公報、及びWO97/33193号公報など)、又はポリチオフェン等の導電性ポリマーを含む層(特開平10−92584号公報)なども挙げられるが、これらに限定されるものではない。
上記陽極バッファ層材料としては、低分子・高分子いずれの化合物を用いることも可能である。
低分子化合物のうち、よく使用されるものとしては、ポルフィン化合物又はフタロシアニン化合物が挙げられる。これらの化合物は中心金属を有していても良いし、無金属のものでも良い。これらの化合物の好ましい例としては、以下の化合物が挙げられる。
低分子化合物のうち、よく使用されるものとしては、ポルフィン化合物又はフタロシアニン化合物が挙げられる。これらの化合物は中心金属を有していても良いし、無金属のものでも良い。これらの化合物の好ましい例としては、以下の化合物が挙げられる。
・ポルフィン
・5,10,15,20−テトラフェニル−21H,23H−ポルフィン
・5,10,15,20−テトラフェニル−21H,23H−ポルフィンコバルト(II)
・5,10,15,20−テトラフェニル−21H,23H−ポルフィン銅(II)
・5,10,15,20−テトラフェニル−21H,23H−ポルフィン亜鉛(II)
・5,10,15,20−テトラフェニル−21H,23H−ポルフィンバナジウム(IV)オキシド
・5,10,15,20−テトラ(4−ピリジル)−21H,23H−ポルフィン
・29H,31H−フタロシアニン銅(II)
・フタロシアニン亜鉛(II)
・フタロシアニンチタン
・フタロシアニンオキシドマグネシウム
・フタロシアニン鉛
・フタロシアニン銅(II)
・4,4’4”,4''' −テトラアザ−29H,31H−フタロシアニン
・5,10,15,20−テトラフェニル−21H,23H−ポルフィン
・5,10,15,20−テトラフェニル−21H,23H−ポルフィンコバルト(II)
・5,10,15,20−テトラフェニル−21H,23H−ポルフィン銅(II)
・5,10,15,20−テトラフェニル−21H,23H−ポルフィン亜鉛(II)
・5,10,15,20−テトラフェニル−21H,23H−ポルフィンバナジウム(IV)オキシド
・5,10,15,20−テトラ(4−ピリジル)−21H,23H−ポルフィン
・29H,31H−フタロシアニン銅(II)
・フタロシアニン亜鉛(II)
・フタロシアニンチタン
・フタロシアニンオキシドマグネシウム
・フタロシアニン鉛
・フタロシアニン銅(II)
・4,4’4”,4''' −テトラアザ−29H,31H−フタロシアニン
陽極バッファ層の場合も、正孔輸送層と同様にして薄膜形成可能であるが、無機物の場合には、更に、スパッタ法や電子ビーム蒸着法、プラズマCVD法が用いられる。
以上の様にして形成される陽極バッファ層3の膜厚は、低分子化合物を用いて形成される場合、下限は通常3nm、好ましくは10nm程度であり、上限は通常100nm、好ましくは50nm程度である。
以上の様にして形成される陽極バッファ層3の膜厚は、低分子化合物を用いて形成される場合、下限は通常3nm、好ましくは10nm程度であり、上限は通常100nm、好ましくは50nm程度である。
高分子化合物を用いる場合は、例えば、前記高分子化合物や電子受容性化合物、更に必要により正孔のトラップとならない、バインダー樹脂やレベリング剤等の塗布性改良剤などの添加剤を添加し溶解した塗布溶液を調製し、スプレー法、印刷法、スピンコート法、ディップコート法、ダイコート法などの通常のコーティング法や、インクジェット法等により陽極2上に塗布し、乾燥することにより陽極バッファ層3を薄膜形成することができる。バインダー樹脂としては、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリエステル等が挙げられる。バインダー樹脂は該層中の含有量が多いと正孔移動度を低下させる虞があるので、少ない方が望ましく、陽極バッファ層3中の含有量で50重量%以下が好ましい。
また、フィルム、支持基板、ロール等の媒体に、前述の薄膜形成方法によって予め薄膜を形成しておき、媒体上の薄膜を、陽極2上に熱転写又は圧力転写することにより、薄膜形成することもできる。
以上のようにして、高分子化合物を用いて形成される陽極バッファ層3の、膜厚の下限は通常5nm、好ましくは10nm程度であり、上限は通常1000nm、好ましくは500nm程度である。
以上のようにして、高分子化合物を用いて形成される陽極バッファ層3の、膜厚の下限は通常5nm、好ましくは10nm程度であり、上限は通常1000nm、好ましくは500nm程度である。
本発明の有機電界発光素子は、図1とは逆の構造、すなわち、基板上に陰極8、正孔阻止層6、発光層5、正孔輸送層4、陽極2の順に積層することも可能であり、既述したように少なくとも一方が透明性の高い2枚の基板の間に本発明の有機電界発光素子を設けることも可能である。同様に、図2又は図3に示した前記各層構成とは逆の順に積層することも可能である。また、図1〜3のいずれの層構成においても、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、上述以外の任意の層を有していてもよく、また上記複数の層の機能を併有する層を設けることにより、層構成を簡略化する等、適宜変形を加えることが可能である。更には、トップエミッション構造や、陰極・陽極共に透明電極を用いて透過型とすることも可能である。
本発明は、単一の陽極と陰極からなる有機電界発光素子、陽極と陰極がアレイ状に配置された構造の有機電界発光素子、陽極と陰極がX−Yマトリックス状に配置された構造の有機電界発光素子の、いずれにおいても適用することができる。
以上説明した本発明の有機電界発光素子は、発光効率に優れ、輝度が高く、また、駆動寿命が長いという、優れた特性を有する。なお、有機電界発光素子のこれらの特性は、例えば、実施例の欄において後述する方法を用いて測定することが可能である。
また、電子輸送層と発光層との間に設けた正孔阻止層に本発明の化合物を適用した場合に、この様に高発光効率の有機電界発光素子が得られるということは、本発明の化合物(即ち、本発明の電子輸送材料)の正孔阻止性が高いことを間接的に裏付ける結果であるといえる。また、長駆動寿命の有機電界発光素子が得られることから、本発明の化合物が電気的酸化還元耐久性に優れるという点も間接的に裏付けられる。
以下、実施例を挙げて、本発明を更に詳細に説明する。なお、以下の実施例は本発明を詳細に説明するために示すものであり、本発明はその趣旨に反しない限り、以下の実施例に限定されるものではない。
なお、以下の記載において、Acはアセチル基を表わし、Etはエチル基を表わす。
なお、以下の記載において、Acはアセチル基を表わし、Etはエチル基を表わす。
空気存在下、ベンゾイン(1.06g)、酢酸アンモニウム(15.4g)、エタノール(100ml)、N,N−ジメチルホルムアミド(50ml)の混合物を、加熱還流条件で10時間攪拌した後、水(100ml)を加え、よく混合した。析出した沈殿を濾過し、エタノール/n−ヘキサン及びn−ヘキサンの順で洗浄した後、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製することにより、白色の固体(0.39g)を得た。電子衝撃イオン化質量分析(EI−MS:m/z=384(M+))により、得られた固体が上記化合物(HB−3)であることを確認した。得られた化合物(HB−3)の気化温度は320℃であった。
〔実施例2〕
図3に示す構造を有する有機電界発光素子を以下の方法で作製した。
ガラス基板1の上に、インジウム・スズ酸化物(ITO)透明導電膜2を150nmの厚さとなるように形成したもの(スパッタ成膜品;シート抵抗15Ω)を、通常のフォトリソグラフィ技術と塩酸エッチングを用いて2mm幅のストライプにパターニングして、陽極を形成した。パターン形成したITO基板を、アセトンによる超音波洗浄、純水による水洗、イソプロピルアルコールによる超音波洗浄の順で洗浄後、窒素ブローで乾燥させ、最後に紫外線オゾン洗浄を行なった。
図3に示す構造を有する有機電界発光素子を以下の方法で作製した。
ガラス基板1の上に、インジウム・スズ酸化物(ITO)透明導電膜2を150nmの厚さとなるように形成したもの(スパッタ成膜品;シート抵抗15Ω)を、通常のフォトリソグラフィ技術と塩酸エッチングを用いて2mm幅のストライプにパターニングして、陽極を形成した。パターン形成したITO基板を、アセトンによる超音波洗浄、純水による水洗、イソプロピルアルコールによる超音波洗浄の順で洗浄後、窒素ブローで乾燥させ、最後に紫外線オゾン洗浄を行なった。
陽極バッファ層3の材料として、下記に示す構造式の芳香族アミノ基を有する非共役系高分子化合物(PB−1)(重量平均分子量:29400、数平均分子量:12600)を、下記に示す構造式の電子受容性化合物(A−1)と共に、下の表1に示す条件でスピンコートした。
上記のスピンコートにより、膜厚30nmの均一な薄膜が形成された。
次に、陽極バッファ層を成膜した基板を真空蒸着装置内に設置した。上記装置の粗排気を油回転ポンプにより行なった後、装置内の真空度が約1.3×10-4Pa以下になるまで油拡散ポンプを用いて排気した。上記装置内に配置されたセラミックるつぼに入れた、下記に示すアリールアミン化合物(PPD)をるつぼの周囲のタンタル線ヒーターで加熱して蒸着を行なった。この時のるつぼの温度は、251〜267℃の範囲で制御した。蒸着時の真空度1.5×10-4Pa、蒸着速度は0.12nm/秒で、膜厚60nmの正孔輸送層4を得た。
次に、陽極バッファ層を成膜した基板を真空蒸着装置内に設置した。上記装置の粗排気を油回転ポンプにより行なった後、装置内の真空度が約1.3×10-4Pa以下になるまで油拡散ポンプを用いて排気した。上記装置内に配置されたセラミックるつぼに入れた、下記に示すアリールアミン化合物(PPD)をるつぼの周囲のタンタル線ヒーターで加熱して蒸着を行なった。この時のるつぼの温度は、251〜267℃の範囲で制御した。蒸着時の真空度1.5×10-4Pa、蒸着速度は0.12nm/秒で、膜厚60nmの正孔輸送層4を得た。
引続き、発光層5の主成分(ホスト材料)として下記に示すカルバゾール誘導体(E−1)を、副成分(ドーパント)として有機イリジウム錯体(D−1)を別々のセラミックるつぼに設置し、2元同時蒸着法により成膜を行なった。
化合物(E−1)のるつぼ温度は219〜221℃に、蒸着速度は0.1nm/秒に、化合物(D−1)のるつぼ温度は258〜259℃にそれぞれ制御し、膜厚30nmで化合物(D−1)が5重量%含有された発光層5を正孔輸送層4の上に積層した。蒸着時の真空度は1.3×10-4Paであった。
更に、正孔阻止層6として、実施例1で合成された下記の化合物(HB−3)を電子輸送材料として、るつぼ温度を159〜162℃として、蒸着速度0.1nm/秒で、10nmの膜厚となるように積層した。蒸着時の真空度は8.9×10-5Paであった。
正孔阻止層6の上に、電子輸送層7として、下記に示すアルミニウムの8−ヒドロキシキノリン錯体(ET−1)を同様にして蒸着した。この時のアルミニウムの8−ヒドロキシキノリン錯体のるつぼ温度は193〜196℃の範囲で制御し、蒸着時の真空度は7.6×10-5Pa、蒸着速度は0.1nm/秒で膜厚は35nmとした。
ここで、電子輸送層6までの蒸着を行なった素子を一度、前記真空蒸着装置内より大気中に取り出して、陰極蒸着用のマスクとして2mm幅のストライプ状シャドーマスクを、陽極2のITOストライプとは直交するように素子に密着させて、別の真空蒸着装置内に設置して有機層と同様にして装置内の真空度が3.3×10-4Pa以下になるまで排気した。陰極8として、先ず、フッ化リチウム(LiF)をモリブデンボートを用いて、蒸着速度0.01nm/秒、真空度5.7×10-4Paで、0.5nmの膜厚で電子輸送層7の上に成膜した。次に、アルミニウムを同様にモリブデンボートにより加熱して、蒸着速度0.47nm/秒、真空度1.2×10-3Paで膜厚80nmのアルミニウム層を形成して陰極8を完成させた。以上の2層型陰極8の蒸着時の基板温度は室温に保持した。以上の様にして、2mm×2mmのサイズの発光面積部分を有する有機電界発光素子が得られた。
この有機電界発光素子について、各種の発光特性を測定した。その結果を表3に示す。表3において、最大発光輝度は電流密度0.25A/cm2での値、発光効率及び単位電流当たりの輝度は輝度100cd/m2での値を各々示す。また、輝度半減寿命は、直流駆動、初期輝度5000cd/cm2で駆動した際の値を示す。素子の発光スペクトルの極大波長は510nmであり、有機イリジウム錯体(D−1)からのものと同定された。色度はCIE(x,y)=(0.29,0.62)であった。
・比較例1:
正孔阻止層として、実施例1の電子輸送材料(HB−3)の代わりに、下記に示す混合配位子錯体(HB−4)を用いた他は、実施例2と同様の手順により有機電界発光素子を作製し、同様の条件で各種の発光特性(最大発光輝度、発光効率、輝度/電流、輝度半減寿命)を測定した。その結果を表3に示す。素子の発光スペクトルの極大波長は510nmであり、有機イリジウム錯体(D−1)からのものと同定された。色度はCIE(x,y)=(0.29,0.62)であった。
正孔阻止層として、実施例1の電子輸送材料(HB−3)の代わりに、下記に示す混合配位子錯体(HB−4)を用いた他は、実施例2と同様の手順により有機電界発光素子を作製し、同様の条件で各種の発光特性(最大発光輝度、発光効率、輝度/電流、輝度半減寿命)を測定した。その結果を表3に示す。素子の発光スペクトルの極大波長は510nmであり、有機イリジウム錯体(D−1)からのものと同定された。色度はCIE(x,y)=(0.29,0.62)であった。
表3の結果から、本発明規定の化合物(HB−3)を電子輸送材料として含有する実施例2の有機EL素子は、これを含有しない比較例1の有機EL素子と比べて、最大発光輝度、発光効率、単位電流当たりの輝度、輝度半減寿命の何れの特性においても優れていることが分かる。
本発明の電子輸送材料は、上述のように、高い電子注入・輸送性と正孔阻止性とを併せ持ち、且つ、電気的酸化還元耐久性にも優れている。また、発光層近傍に用いても配位子交換を生じるおそれがない。よって、有機電界発光素子の電子輸送材料等の用途に好適に利用することができ、産業上有用である。
また、この電子輸送材料を中間層に用いた本発明の有機電界発光素子は、発光効率が高く、輝度に優れ、且つ、駆動寿命が長いという利点を有する。よって、従来の有機電界発光素子が用いられる各種の分野、即ち、フラットパネル・ディスプレイ(例えば、OAコンピュータ用や壁掛けテレビ)、車載表示素子、携帯電話表示や面発光体としての特徴を活かした光源(例えば、複写機の光源、液晶ディスプレイや計器類のバックライト光源)、表示板、標識灯などの分野で好適に利用することができ、産業上有用である。
1 基板
2 陽極
3 陽極バッファ層
4 正孔輸送層
5 発光層
6 正孔阻止層
7 電子輸送層
8 陰極
2 陽極
3 陽極バッファ層
4 正孔輸送層
5 発光層
6 正孔阻止層
7 電子輸送層
8 陰極
Claims (8)
- 一般式(I)において、Ar1〜Ar4が、各々独立に、置換基を有していても良い芳香族炭化水素基であることを特徴とする、請求項1記載の電子輸送材料。
- 一般式(I)において、Ar1=Ar2≠Ar3=Ar4、又は、Ar1=Ar4≠Ar2=Ar3であることを特徴とする、請求項1又は請求項2に記載の電子輸送材料。
- 基板と、該基板上に設けられた陽極及び陰極と、該陽極及び陰極の間に設けられた、有機発光層を含む1又は2以上の中間層とを備える有機電界発光素子において、
該中間層のうち少なくとも何れかの層が、請求項1〜3の何れか一項に記載の電子輸送材料を含有することを特徴とする、有機電界発光素子。 - 該電子輸送材料を含有する層が、有機発光層であることを特徴とする、請求項4記載の有機電界発光素子。
- 該電子輸送材料を含有する層が、有機発光層と陰極との間に存在することを特徴とする、請求項4又は5記載の有機電界発光素子。
- 該有機発光層が、Ir、Pt、Au又はPdを中心金属とする有機金属錯体を含有することを特徴とする、請求項4〜6の何れか一項に記載の有機電界発光素子。
- 該有機金属錯体が、置換基を有していてもよい2−アリールピリジン骨格を含む配位子を有することを特徴とする、請求項7記載の有機電界発光素子。
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