JP2005240870A - スタータの製造方法及びスタータ - Google Patents
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Abstract
【解決手段】遊星ギヤは、軸受を介して遊星ギヤピン17に回転自在に支持され、その遊星ギヤピン17がキャリア部18に形成された圧入孔18aに圧入嵌合して固定されている。キャリア部18は、一方向クラッチのアウタ3aと一体に設けられており、圧入孔18aに遊星ギヤピン17を圧入嵌合して組み付けた後、浸炭等の熱処理が実施される。その結果、アウタ3a、キャリア部18、及び遊星ギヤピン17の露出している表面に硬化層19が形成される。
【選択図】図2
Description
ところで、アウタや遊星ギヤピン等のトルクを伝達する部品には、高い強度が要求されるため、浸炭等の熱処理を実施することが一般的である。しかし、アウタに熱処理を行うと、表面硬度がHR50以上となり、そこに熱処理された遊星ギヤピンを圧入によって嵌合させると、圧入部近傍のアウタ表面硬化層から亀裂が入り、遊星ギヤピンの固定力が確保できなくなる。
あるいは、図6に示す様に、圧入孔100が形成されるアウタ110の表面側に予め駄肉120を設けておき、熱処理によって硬化したアウタ表面側の駄肉120を切削、研磨などにより除去して、低硬度の面を露出させることにより、遊星ギヤピン130の圧入時に亀裂が入らないようにしている。
本発明は、上記事情に基づいて成されたもので、その目的は、遊星ギヤピンがピン支持体に圧入嵌合される構造において、加工工程を増やすことなく、遊星ギヤピンの固定力を確保できるスタータの製造方法及びスタータを提供することにある。
本発明は、遊星ギヤの公転運動によってモータの回転速度を減速する遊星ギヤ減速装置を備えたスタータにおいて、遊星ギヤ減速装置は、遊星ギヤを回転自在に支持する遊星ギヤピンと、この遊星ギヤピンが圧入固定されるピン支持体とを有し、遊星ギヤピンとピン支持体は、ピン支持体に形成された圧入孔に遊星ギヤピンが圧入嵌合して組み付けられた後、両者が一体的に熱処理されて、表面硬化されることを特徴とする。
また、遊星ギヤピンとピン支持体とを同時に熱処理するので、両者を別々に熱処理する従来の方法と比較して、コスト低減効果が大きい。
請求項1に記載したスタータの製造方法において、遊星ギヤピンを圧入孔に圧入嵌合して組み付けた後、両者を一体的に熱処理することにより、圧入孔は内径側に収縮し、遊星ギヤピンは外径側に膨れることを特徴とする。
熱処理により圧入孔が内径側に収縮し、遊星ギヤピンが外径側に膨れることで、圧入締代が増加して、遊星ギヤピンの抜け荷重が大きくなるため、遊星ギヤピンの固定力を増大できる。
請求項1または2に記載したスタータの製造方法において、熱処理は、浸炭または浸炭窒化など、炭素を拡散浸透させるものであり、遊星ギヤピンおよびピン支持体に使用される熱処理前の素材は、両者の炭素成分比率の差が、熱処理後に焼割れを生じない範囲内に設定されていることを特徴とする。
請求項1〜3に記載した何れかのスタータの製造方法において、遊星ギヤピンの熱処理前の材料硬度は、遊星ギヤピンを圧入孔に圧入する際に、遊星ギヤピンの変形が予め決められた許容範囲内に収まるように硬度調整されていることを特徴とする。
遊星ギヤピンをピン支持体の圧入孔に圧入する際に、あまりにも遊星ギヤピンの材料硬度が低いと、圧入荷重によって遊星ギヤピンが座屈する恐れがある。
これに対し、遊星ギヤピンの圧入時の変形が許容範囲内に入るように、硬度調整された遊星ギヤピンを使用することにより、圧入時に遊星ギヤピンが座屈することはなく、遊星ギヤピンに対する軸受の組み付け不能および軸受の偏摩耗等を防止できる。
請求項1〜4に記載した何れかの製造方法により製造されたことを特徴とする。
本発明によれば、遊星ギヤピンの固定力が低下することなく、遊星ギヤピンとピン支持体の熱処理に係わる加工工程を短縮できるので、低コストなスタータを提供できる。
また、遊星ギヤピンの抜け荷重を大きくできるので、ピン支持体に対する遊星ギヤピンの圧入長さを短くすることも可能であり、その結果、スタータの軸長短縮も可能である。
請求項5に記載したスタータにおいて、遊星ギヤ減速装置で減速された回転を出力軸に伝達する一方向クラッチを備え、ピン支持体は、一方向クラッチの駆動側回転体であるアウタと一体に設けられていることを特徴とする。
一方向クラッチは、モータで発生したトルクを出力軸に伝達する部品であり、熱処理を実施することが一般的である。従って、ピン支持体をアウタと一体に設けることにより、請求項5に記載した効果が期待できる。
請求項5に記載したスタータにおいて、遊星ギヤ減速装置で減速された回転が伝達されて回転する出力軸を備え、ピン支持体は、出力軸と一体に設けられていることを特徴とする。
出力軸は、モータで発生したトルクが遊星ギヤ減速装置を介して伝達される部品であり、熱処理を実施することが一般的である。従って、ピン支持体を出力軸と一体に設けることにより、請求項5に記載した効果が期待できる。
請求項5〜7に記載した何れかのスタータにおいて、ピン支持体に形成された圧入孔は、遊星ギヤピンの圧入方向にピン支持体を貫通する貫通孔であることを特徴とする。
圧入孔が貫通孔であると、圧入孔に圧入嵌合された遊星ギヤピンの先端にも熱処理が入るため、ピン先端が膨張して外径が大きくなることで、より抜けにくくなる。
更に、圧入孔が有底穴の場合は、遊星ギヤピンの圧入時に、圧入孔の中の空気が圧縮されて、圧入荷重がばらつくことにより、圧入不良を生じる恐れがあるが、貫通穴であれば、圧入荷重がばらつくこともなく、圧入不良を防止できる。
本実施例のスタータ1は、回転力を発生するモータ2(図5参照)と、このモータ2の回転速度を減速する減速装置(後述する)と、この減速装置で減速された回転が一方向クラッチ3(図4参照)を介して伝達される出力軸4と、この出力軸4上に配置されるピニオン5と、モータ2の通電回路に設けられるメイン接点(後述する)を開閉制御すると共に、シフトレバー6を介して出力軸4を軸方向に移動させる電磁スイッチ7等より構成される。
界磁8は、図3に示す様に、磁気回路を形成するヨーク8aの内周に界磁極8bが固定され、その界磁極8bに界磁コイル8cを巻線して構成される。なお、巻線式界磁に替えて磁石式界磁を用いても良い。
減速装置は、電機子軸9bの端部に形成されたサンギヤ12と、センタケース13に回転規制されたリング状のインターナルギヤ14と、両ギヤ12、14に噛み合う複数の遊星ギヤ15とで構成される周知の遊星歯車減速機であり、電機子9の回転速度を遊星ギヤ15の公転速度まで減速する。
キャリア部18は、図1に示す様に、一方向クラッチ3のアウタ3aと一体に設けられており、圧入孔18aに遊星ギヤピン17を圧入嵌合して組み付けた後、浸炭等の熱処理が実施される。その結果、図2に示す様に、アウタ3a、キャリア部18、及び遊星ギヤピン17の露出している表面に硬化層19が形成されている。
なお、熱処理が実施されるキャリア部18(アウタ3aを含む)と、遊星ギヤピン17は、両者の炭素成分比率の差が、熱処理後に焼割れを生じない範囲内に設定されている。
一方向クラッチ3は、図4に示す様に、キャリア部18と一体に設けられたアウタ3aと、このアウタ3aの内径側にインナ3bを形成するチューブ21と、アウタ3aの内周面に形成されたくさび状のカム室(図示せず)に配設されるローラ3c等より構成され、このローラ3cを介して、駆動側回転体であるアウタ3aから従動側回転体であるインナ3bへトルク伝達する。
チューブ21の内周には、雌ヘリカルスプライン21bが形成されている。この雌ヘリカルスプライン21bは、インナ3bの内径側から軸受部21aの内径側まで形成され、その雌ヘリカルスプライン21bの終端(端部)が、チューブ21に対する出力軸4の軸方向移動を止めるストッパ21cとして機能している。
なお、図3において、出力軸4の中心線より上側は、スタータ1の静止状態を示し、中心線より下側は、スタータ1の作動状態(出力軸4が前進してピニオン5がエンジンのリングギヤ24に噛み合った状態)を示している。
なお、出力軸4に対するピニオン5の後退位置は、ピニオンスプリング25が全圧縮された時に、そのピニオンスプリング25の全圧縮量によって規制される。
なお、図3において、プランジャ29の中心線より上側は、電磁スイッチ7の静止状態(励磁コイル28の通電停止時)を示し、中心線より下側は、電磁スイッチ7の作動状態(励磁コイル28の通電時)を示している。
始動スイッチ27の閉操作により電磁スイッチ7の励磁コイル28が通電されると、プランジャ29が吸引されることにより、シフトレバー6を介して出力軸4が反モータ方向へ押し出される。ここで、出力軸4上のピニオン5がスムーズにリングギヤ24に噛み合った場合は、可動接点37が一組の固定接点36に当接してメイン接点が閉じることにより、電機子9に回転力が発生する。
ピニオン5とリングギヤ24との噛み合いが完了すると、ピニオン5からリングギヤ24に回転力が伝達されてエンジンをクランキングさせる。
また、プランジャ29が押し戻されると、シフトレバー6を介して出力軸4がモータ方向へ戻され、出力軸4の後端面(モータ側端面)がキャリア部18の端面に当接して停止する。
キャリア部18に設けられた圧入孔18aは、貫通孔とすることができる。貫通孔は、遊星ギヤピン17を受け入れることが可能な比較的大きい径をもった大径部分を、その遊星ギヤ減速装置側に有し、遊星ギヤピン17の径より比較的小さい径をもった小径部分を、その一方向クラッチ3側に有することができる。遊星ギヤピン17は、キャリア部18の一方向クラッチ3側の部材から離れて支持される。
上記のスタータ1に使用される減速装置は、遊星ギヤピン17をキャリア部18の圧入孔18aに圧入嵌合して組み付けた後、一体的に熱処理が実施される。つまり、熱処理前に遊星ギヤピン17を圧入孔18aに圧入嵌合して固定するので、遊星ギヤピン17の圧入時に、キャリア部18に亀裂が入ることを防止でき、遊星ギヤピン17の固定力を確保できる。その結果、従来行われていた、キャリア部18の表面に熱処理が入らないための加工(防炭、焼鈍など)、あるいは、亀裂防止のために駄肉をつけた後で硬化層19を除去する加工が不要であり、加工工程を短縮できる。
また、遊星ギヤピン17を圧入孔18aに圧入嵌合して組み付けた状態で熱処理するので、遊星ギヤピン17とキャリア部18とを別々に熱処理する従来の方法と比較して、コスト低減効果が得られる。
更に、圧入孔18aが有底穴の場合は、遊星ギヤピン17の圧入時に、圧入孔18aの中の空気が圧縮されて、圧入荷重がばらつくことにより、圧入不良を生じる恐れがあるが、貫通穴であれば、圧入荷重がばらつくこともなく、圧入不良を防止できる。
2 モータ
3 一方向クラッチ
3a アウタ
4 出力軸
15 遊星ギヤ
17 遊星ギヤピン
18 キャリア部(ピン支持体)
18a 圧入孔
Claims (8)
- 遊星ギヤの公転運動によってモータの回転速度を減速する遊星ギヤ減速装置を備えたスタータにおいて、
前記遊星ギヤ減速装置は、前記遊星ギヤを回転自在に支持する遊星ギヤピンと、この遊星ギヤピンが圧入固定されるピン支持体とを有し、
前記遊星ギヤピンと前記ピン支持体は、前記ピン支持体に形成された圧入孔に前記遊星ギヤピンが圧入嵌合して組み付けられた後、両者が一体的に熱処理されて、表面硬化されることを特徴とするスタータの製造方法。 - 請求項1に記載したスタータの製造方法において、
前記遊星ギヤピンを前記圧入孔に圧入嵌合して組み付けた後、両者を一体的に熱処理することにより、前記圧入孔は内径側に収縮し、前記遊星ギヤピンは外径側に膨れることを特徴とするスタータの製造方法。 - 請求項1または2に記載したスタータの製造方法において、
前記熱処理は、浸炭または浸炭窒化など、炭素を拡散浸透させるものであり、
前記遊星ギヤピンおよび前記ピン支持体に使用される熱処理前の素材は、両者の炭素成分比率の差が、熱処理後に焼割れを生じない範囲内に設定されていることを特徴とするスタータの製造方法。 - 請求項1〜3に記載した何れかのスタータの製造方法において、
前記遊星ギヤピンの熱処理前の材料硬度は、前記遊星ギヤピンを前記圧入孔に圧入する際に、前記遊星ギヤピンの変形が予め決められた許容範囲内に収まるように硬度調整されていることを特徴とするスタータの製造方法。 - 請求項1〜4に記載した何れかの製造方法により製造されたことを特徴とするスタータ。
- 請求項5に記載したスタータにおいて、
前記遊星ギヤ減速装置で減速された回転を出力軸に伝達する一方向クラッチを備え、
前記ピン支持体は、前記一方向クラッチの駆動側回転体であるアウタと一体に設けられていることを特徴とするスタータ。 - 請求項5に記載したスタータにおいて、
前記遊星ギヤ減速装置で減速された回転が伝達されて回転する出力軸を備え、
前記ピン支持体は、前記出力軸と一体に設けられていることを特徴とするスタータ。 - 請求項5〜7に記載した何れかのスタータにおいて、
前記ピン支持体に形成された圧入孔は、前記遊星ギヤピンの圧入方向に前記ピン支持体を貫通する貫通孔であることを特徴とするスタータ。
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