本発明の水分散性樹脂組成物は、一般式(I)及び一般式(II)で示される官能基を有するビニル系重合体(A)が水性媒体中に分散したものである。
(一般式(I)中、nは0〜2の整数で、R
1は水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基を示し、R
2は炭素数1〜4のアルコキシル基を示す。)
(一般式(II)中、R
3は炭素数2〜17のアルキレン、nは2〜10の整数を示す。)
一般式(I)及び一般式(II)で示される官能基を有するビニル系重合体(A)のうち、一般式(I)で示される官能基は本発明の水分散性樹脂組成物に常温硬化性を付与するために必要である。一般式(I)で示される官能基は、珪素に炭素数1〜4のアルコキシル基を1つ以上有するもので、炭素数2以下のアルコキシル基を有するものが好ましい。また一般式(I)は、前記アルコキシル基の他に水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基を有していても良い。
一般式(II)で示される官能基は、良好な耐溶剤性、可塑剤移行性及び様々な汎用プラスチック基材に対して優れた付着性を付与するために必要であり、R3が炭素数5のアルキレンで、且つnが2であるものが好ましい。
前記ビニル系重合体(A)は、例えば一般式(I)で示される官能基を有するビニル系単量体と一般式(II)で示されるビニル系単量体とを重合することで製造できる。
かかる一般式(I)で示される官能基を有するビニル系単量体としては、例えば、ビニルトリエトキシシラン(A−151:日本ユニカー(株)製品)、ビニルトリメトキシシラン(A−171:日本ユニカー(株)製品)等が挙げられる。又、一般式(II)で示される官能基を有するビニル系単量体としては、例えば、アロニックスM−5300(東亜合成化学(株)製品)が挙げられる。
なかでも、一般式(III)で示されるビニル系単量体、一般式(IV)で示されるビニル系単量体及びこれらと共重合可能なビニル系単量体を水性媒体中でのラジカル重合する方法が好ましい。
(R
4は水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基、R
5は水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基、nは0〜2の整数、R
6は炭素数1〜4のアルコキシル基を示す。)
(R
7は水素原子又はメチル基、R
8は炭素数2〜17のアルキレン、nは2〜10の整数を示す。)
一般式(III)で表されるアルコキシシリル基含有ビニル系単量体は、製品にて種々入手できるが、これらの中でR4が水素、R6がメトキシ基のA−171(日本ユニカー(株))製)を使用することが好ましい。
前記一般式(III)で示されるビニル系単量体は、ビニル系重合体(A)を重合する際に使用する全ビニル系単量体に対して0.1〜10.0重量%使用することが好ましく、0.2〜5.0重量%使用することがより好ましい。
一般式(IV)で表されるカルボキシル基含有ビニル系単量体は、例えば、(a)ω−ヒドロキシカルボン酸とカルボキシル基を有するビニル系単量体とを反応させる方法、(b)α,ω−ポリエステルジカルボン酸とヒドロキシル基を有するラジカル重合性不飽和化合物とを反応させる方法、(c)酸無水物とカルボキシル基を有するビニル系単量体とエポキシ化合物とを反応させる方法および(d)特公平3−21536号公報に示されているようなカルボキシル基を有するビニル系単量体とラクトンとを酸性触媒の存在下で反応させる方法等の、当業者に周知の方法で製造されるものである。しかしながら、前記(a)〜(c)の方法では、ラジカル重合性官能基が全くないもの、あるいは2個入ったものなどが副生成物として多量に生じることから、ラジカル重合性官能基を必ず1個含むカプロラクトンポリエステル不飽和単量体が得られる(d)の方法で長鎖カルボキシル基含有単量体を製造することが好ましい。
特に(d)の方法では、1分子中のε-カプロラクトン単位数が1〜5なる長鎖カルボキシル基含有単量体であるα−ハイドロ−ω−((1−オキソ−2−プロペニル)オキシ)ポリ(オキシ(1−オキソ−1,6−ヘキサンジイル))が主に得られる。1分子中のε-カプロラクトン単位数については、塗料の塗膜の外観を考慮すれば、1〜10の範囲内が好ましく、更には1以上5以下がより好ましい。具体的には、1分子中のε-カプロラクトン単位の平均数が2なる商品名アロニクスM−5300(東亜合成化学工業(株))を、ビニル系重合体(A)に好適に用いることができる。
前記一般式(IV)で示されるビニル系単量体は、ビニル系重合体(A)の水性媒体中に於ける分散安定性と乾燥被膜の耐水性のバランスから考えて、ビニル系重合体(A)100重量部に対し0.2〜40重量%使用することが好ましく、0.5〜20重量%使用することがより好ましい。
本発明では、前記ビニル系単量体の他に、それらと共重合可能なその他の共重合可能なビニル系単量体を使用することができ、かかるその他のビニル系単量体としては、例えば、以下の(イ)群より(ル)群のものが挙げられる。
(イ)群としては、例えばメチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、イソ(i)−プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、i−ブチル(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレート、sec−ブチル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレートもしくはラウリル(メタ)アクリレート、「アクリエステル SL」[三菱レーヨン(株)製の、C12−/C13メタクリレート混合物の商品名]、ステアリル(メタ)アクリレートのようなアルキル(メタ)アクリレート類;シクロヘキシル(メタ)アクリレート、4−tert−ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレートもしくはイソボルニル(メタ)アクリレート、アダマンチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレートの如き側鎖に官能基を含有しない(メタ)アクリレート類;
(ロ)群としては、例えばスチレン、ビニルトルエン、α−メチルスチレン、エチルスチレン、プロピルスチレン、イソプロピルスチレンまたはp−tert−ブチルスチレンなどのスチレン系単量体;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等、第3級カルボン酸ビニル等のビニルエステル類;ビニルピロリドン等の複素環式ビニル化合物;塩化ビニル、塩化ビニリデン、フッ化ビニリデン等のハロゲン化オレフィン類;エチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル等のビニルエーテル類;メチルビニルケトン等のビニルケトン類;エチレン、プロピレン等のα―オレフィン類;
(ハ)群としては、例えばアクリロニトリル、メタクリロニトリル等のシアノ基含有単量体;ブタジエン、イソプレン等のジエン類;アクリルアミド、メタクリルアミド、マレイン酸アミド、ジアセトンアクリルアミド等のアミド基含有単量体類;メタクリル酸ジアミノエチル、メタクリル酸ジエチルアミノエチル等の3級アミノ基含有単量体;
(ニ)群としては、例えばマレイン酸、フマル酸、イタコン酸、マレイン酸モノn−ブチル、フマル酸モノn−ブチル、イタコン酸モノn−ブチル、クロトン酸等の、一般式(2)に表されるカルボキシル基含有単量体以外のカルボキシル基含有単量体;
(ホ)群としては、例えば2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、3−クロロ−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ジ−2−ヒドロキシエチルフマレートまたはモノ−2−ヒドロキシエチル−モノブチルフマレートをはじめ、ポリエチレングリコール−ないしはポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレートまたは此等とε−カプロラクトンとの付加物、「プラクセル FMないしはFAモノマー」[ダイセル化学(株)製の、カプロラクトン付加モノマーの商品名]の如き、各種のα,β−エチレン性不飽和カルボン酸のヒドロキシアルキルエステル類;アリルアルコール、2−ヒドロキシエチルアリルエーテルの如き水酸基を含有するアリル化合物;2−ヒドロキシエチルビニルエーテル、4−ヒドロキシブチルビニルエーテル、6−ヒドロキシヘキシルビニルエーテル等の水酸基を含有するビニルエーテル化合物;
(へ)群としては、例えばメトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシエチル(メタ)アクリレートもしくはメトキシブチル(メタ)アクリレートの如き、各種のアルコキシアルキル(メタ)アクリレート類;
(ト)群としては、例えばジメチルマレエート、ジエチルマレエート、ジエチルフマレート、ジ(n−ブチル)フマレート、ジ(i−ブチル)フマレートもしくはジブチルイタコネートの如き、マレイン酸、フマル酸もしくはイタコン酸により代表される各種のジカルボン酸類と1価アルコール類とのジエステル類;
(チ)群としては、例えば「ビスコート 3F、3FM、8F、8FMもしくは17FM」[大阪有機化学(株)製の、含フッ素系アクリルモノマー類の商品名]、パーフルオロシクロヘキシル(メタ)アクリレート、ジ−パーフルオロシクロヘキシルフマレートもしくはN−i−プロピルパーフルオロオクタンスルホンアミドエチル(メタ)アクリレートの如き、各種の(パー)フルオロアルキル基含有ビニルエステル類、−ビニルエーテル類、−(メタ)アクリレート類または−不飽和ポリカルボン酸エステル類などの、種々の含フッ素重合性化合物類;
(リ)群としては、例えばγ−(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルトリプロポキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルメトキシジメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルメトキシジエトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルメトキシジプロポキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシブチルフェニルジメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシブチルフェニルジエトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシブチルフェニルジプロポキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルジメチルメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルジメチルエトキシシランの如き、各種のシラン系単量体類;
(ヌ)群としては、例えばジアルキル〔(メタ)アクリロイルオキシアルキル〕ホスフェート類または(メタ)アクリロイルオキシアルキルアシッドホスフェート類、ジアルキル〔(メタ)アクリロイルオキシアルキル〕ホスファイト類もしくは(メタ)アクリロイルオキシアルキルアシッドホスファイト類の如き燐原子含有ビニル系モノマー;
(ル)群としては、例えばフタル酸ジアリル、ジビニルベンゼン,アクリル酸アリル、トリメチロールプロパントリメタクリレート等の1分子中に2個以上の不飽和結合を有する単量体類などが挙げられ、これらを単独で使用しても良いし、2種以上を組み合わせても良い。
前記一般式(III)及び一般式(IV)で示されるビニル系単量体、及びこれらと共重合可能なその他のビニル系単量体を用いて得られるビニル系重合体(A)の製造方法としては、例えば、水中分散重合法や、乳化重合法が挙げられるが、得られる重合体の重合反応操作及び分子量調節が容易であることから、乳化重合法が好ましい。
前記乳化重合法は、乳化剤を含有する水中に前記ビニル系単量体の混合物を添加、攪拌しながら乳化分散させ、重合反応させる方法である。具体的には、水又は必要に応じてアルコールのような有機溶剤を含む水性媒体中に乳化剤を添加し、加熱攪拌の下、前記ビニル系単量体の混合物及びラジカル重合開始剤を一括仕込み、連続滴下又は分割添加し、重合する方法である。このとき、乳化剤と水とで単量体混合物を予め乳化させて得られる水分散液又は水溶液を、同様に滴下しても良い。
前記乳化重合法で使用できる乳化剤としては、一般的な乳化重合法に使用できるものであれば、アニオン性、カチオン性及びノニオン性いずれの乳化剤でも特に制限なく使用することができる。
アニオン性乳化剤としては、例えば、高級アルコールの硫酸エステル、アルキルベンゼンスルホン酸塩、ポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテル硫酸エステル、ポリオキシアルキレン多環フェニルエーテル硫酸エステル、ジアルキルサクシネートスルホン酸塩、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸塩等が挙げられる。
カチオン性乳化剤としては、例えば、アルキルトリメチルアンモニウムクロライド、ジアルキルジメチルアンモニウムクロライド、アルキルベンジルジメチルアンモニウムクロライド等が挙げられる。
ノニオン性乳化剤としては、例えばポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシアルキレン多環フェニルエーテル等を挙げることができ、これらの1種または2種以上を混合して使用することができる。
また、一般的に、反応性乳化剤と称されるラジカル重合性不飽和基を分子内に有する乳化剤も使用することができる。それらのうち特に代表的なものとしては、例えばスルホン酸基またはその塩を有する「ラテムルS−180A」[花王(株)製]または「エレミノールJS−2」[三洋化成(株)製]、硫酸基またはその塩を有する「アクアロンKH−1025」[第一工業製薬(株)製]または「アデカリアソープSR−10」[旭電化工業(株)製]、リン酸基を有する「ニューフロンティアA−229E」[第一工業製薬(株)製]等を挙げることができ、これらの1種または2種以上を混合して使用することができる。しかし、一般式(A)で示すカルボキシル基含有ラジカル重合性単量体のカルボキシル基を中和させたものを、反応性乳化剤として使用する方が、乳化剤の使用量を減らすことができるためより好ましい。
前記乳化剤の使用量は、一般的に乳化重合法において使用されているような量、すなわち、前記単量体混合物100重量部に対し、0.1〜20重量部なる範囲内が好ましく、0.2〜5重量部なる範囲内がより好ましい。
前記乳化重合法の重合条件のうち、反応温度は、使用するラジカル重合開始剤のラジカル発生方法によって決定されるものであり、例えば熱分解反応でラジカルを発生させる場合は60〜90℃であり、過硫酸系・過酸化物系開始剤と還元剤との組み合わせたレドックス反応の場合では30〜70℃であること好ましい。また、反応時間は、1〜10時間であることが好ましい。
ラジカル重合開始剤としては、特に限定されるものではないが、例えば、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸アンモニウム、アゾビスイソブチロニトリルまたはその塩酸塩、過酸化水素、ターシャリーブチルハイドロパーオキサイド、クメンヒドロパーオキサイドあるいは過酸化ベンゾイルなどが挙げられる。また、これらのラジカル重合開始剤と共に、還元剤を併用することも可能であり、例えば、ナトリウムスルホオキシレートホルムアルデヒド、ピロ亜硫酸ソーダ、L−アスコルビン酸等を使用することができる。
ラジカル重合開始剤の使用量は、前記単量体混合物の合計100重量部に対して、0.1〜5重量%が好ましく、0.3〜2重量%がより好ましい。
ラジカル重合開始剤と併用可能な還元剤としては、例えば、ナトリウムスルホオキシレートホルムアルデヒド、ピロ亜硫酸ソーダ、L−アスコルビン酸などが挙げられる。
また、レドックス重合の際に鉄イオンや銅イオンなどによって代表される、いわゆる多価金属塩イオンを生成する化合物を、促進剤として併用することも可能である。
前記ビニル系重合体(A)を製造する際には、その分子量を調整するために連鎖移動剤を使用することができ、例えばn−オクチルメルカプタン、n−ラウリルメルカプタン、tert−ヘキサデシルメルカプタンなどのような各種のアルキルメルカプタン類;ベンジルメルカプタン、ドデシルベンジルメルカプタンなどのような各種のアルキルベンジルメルカプタン類;チオグリコール酸、チオリンゴ酸などのような各種のチオカルボン酸類あるいはその塩類;n−ブチルチオグリコネート、ドデシル−3−メルカプトプロピオネートなどのような各種のチオカルボン酸アルキルエステル類;モノエタノールアミンチオグリコレートのような、各種の含窒素チオール類;トリメトキシシリルプロピルメルカプタンなどに代表されるような各種の反応性官能基含有メルカプタン類;α−メチルスチレンダイマーなどのような各種のダイマー型連鎖移動剤などが挙げられ、これらは1種又は2種以上を併用することができる。
また、前記ビニル系重合体(A)の製造方法としては、前記した乳化重合法に加えて、例えば無乳化剤乳化重合法、シード乳化重合法、マイクロエマルション重合法、パワーフィード法、ショットグロース法などのような種々の方法を適用することも可能である。
かくして得られるビニル系重合体(A)は、その酸基の一部又は全部を塩基性化合物で中和させて使用することができ、水性媒体中に分散させ水分散性樹脂組成物として使用することができる。
本発明に使用することのできる塩基化合物としては、例えば、水酸化ナトリウムまたは水酸化カリウムなどのような各種の無機塩基;モノメチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、モノエチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、モノプロピルアミン、イソブチルアミン、またはジプロピルアミンのような各種のアルキルアミンなどをはじめ、さらには、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、N,N−ジメチルエタノールアミン、N,N−ジエチルエタノールアミン、2−ジメチルアミノ−2−メチル−1−プロパノール、2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール、N−メチルジエタノールアミン、N−エチルジエタノールアミン、モノイソプロパノールアミン、ジイソプロパノールアミン、トリイソプロパノールアミンのような各種のアミノアルコール類、またはモルホリンなどのような各種の有機アミン類;あるいはアンモニアなどが挙げられ、これらの1種または2種以上の混合物で使用することができる。
特に、塩基性化合物としてアンモニアを使用すると、本発明の水分散性樹脂組成物中に有機溶剤を全く含まないものとすることができることから好ましい。
前記塩基性化合物の添加量は、ビニル系重合体(A)の酸価に対して0.5〜1.5当量となる範囲内で用いることが好ましく、0.8〜1.2当量の範囲で用いることがより好ましい。
本発明の水分散性樹脂組成物の用途は、主に塗料、プライマー、インキ、接着剤、シーリング剤として用いることができ、これらに用いられる基材としては、例えばポリカーボネート、ポリプロピレン、ポリエチレン等のオレフィン樹脂、ポリメチルメタクリレート、ABS樹脂もしくはポリスチレンなどの種々のプラスチック類をはじめ、ガラス、スレート板もしくはコンクリート、珪酸カルシウム等の珪酸塩系、石膏系、石綿系もしくはセラミック系など種々の無機物等;鉄、ステンレス・スチール、もしくはアルミニウムなどのような種々の金属類;木材類、紙類、繊維類、FRP類等が挙げられる。
なかでも前記水分散性樹脂組成物はプラスチック基材用塗料として使用することができ、該塗料はクリヤー塗料であっても、顔料を含む着色塗料であっても良い。尚、本発明にて効果の期待できる基材としては汎用プラスチック基材、特にポリスチレン、ABS樹脂、アクリル樹脂、ポリカーボネートを用いた基材が挙げられる。
また、前記顔料としては種々の有機系顔料の他に、酸化チタン、酸化鉄、アルミニウム・フレーク、またはチタン・コート・マイカなどの無機系顔料も挙げられる。又塗料化の際その用途に応じて増膜助剤、分散剤、消泡剤、凍結防止剤、防腐剤、増粘剤などの添加剤を添加することができる。
本発明のプラスチック基材用塗料は、前記した各種基材にエアー・スプレー法、エアレス・スプレー法、刷毛塗り法、ロールコート法等のような公知慣用の種々の塗装方法で塗装することができる。
乾燥方法としては、組成物の乾燥性或いは基材の耐熱性などに応じて、さらにはそれぞれの用途などに応じて、常温で1日(1昼夜)から2週間程度、乾燥し硬化を行ったり、あるいは約60〜250℃の温度範囲で約30秒〜約3時間程度の乾燥を行ったりするなどの、幅広い乾燥条件の設定が可能である。
以上の方法により、本発明のプラスチック基材用塗料は、例えば家電部品基材であるポリスチレン,ABS、アクリル樹脂基材用のワンコート仕上げ塗料に主に用いることができる。
次に、本発明を実施例および比較例により、一層、具体的に説明することにする。以下において、部および%は、特に断りの無い限り、すべて重量基準であるものとする。
実施例1〔常温硬化型水分散性樹脂組成物(A1)の調製例〕
メチルメタアクリレート(以下MMAと略)の56部、2エチルヘキシルメタクリレート(以下2EHMAと略)の22部、シクロヘキシルメタクリレート(以下CHMAと略)の19部、アロニックスM−5300(ω−カルボキシ−ポリカプロラクトンモノメタクリレート、前記一般式(IV)においてn=2、R1が−C5H10−、東亞合成(株))の3部、A−171(前記一般式(III)においてR4が水素、R6がメトキシ基、日本ユニカー(株))の2部の混合物を、アクアロンKH−1025(第一工業製薬(株))の10部を25部のイオン交換水に溶解した乳化剤水溶液を用いて粗乳化を行い、これをモノマープレミックス(以下MP1と略)とした。又、過硫酸ソーダ0.5部をイオン交換水20部にて溶解し、これをキャタライズプレミックス(以下CatP1と略)とした。
次に撹拌装置、温度計、リフラックス・コンデンサーおよび窒素ガス導入管を備えた4ツ口フラスコに、イオン交換水の82部を仕込み、80℃に昇温した。80℃になったところで、CatP1の1/3をフラスコ内に投入し、5分後にMP1の5重量%を投入した。そして10分後にCatP1の2/3とMP1の95重量%を3時間かけて滴下しさらに同温度で1時間ホ−ルドしたのち冷却を行った。
得られた水分散性樹脂組成物に12.5重量%アンモニア水溶液を1.4g添加した後200メッシュのナイロン紗にて濾過することによって固形分44.8重量%、粘度60mPa・s、pH8.9の常温硬化型水分散性樹脂組成物(A1)を得た。
比較例1〔ラッカー型水分散性樹脂組成物(A2)の調製例〕
MMAの56部、2EHMAの22部、CHMAの19部、アロニックスM−5300(東亞合成(株))の3部の混合物を、アクアロンKH−1025(第一工業製薬(株))の10部を25部のイオン交換水に溶解した乳化剤水溶液を用いて粗乳化を行い、これをモノマープレミックス(以下MP2と略)とした。又、過硫酸ソーダ0.5部をイオン交換水20部にて溶解し、これをキャタライズプレミックス(以下CatP2と略)とした。
次に撹拌装置、温度計、リフラックス・コンデンサーおよび窒素ガス導入管を備えた4ツ口フラスコに、イオン交換水の82部を仕込み、80℃に昇温した。80℃になったところで、CatP2の1/3をフラスコ内に投入し、5分後にMP2の5重量%を投入した。そして10分後にCatP2の2/3とMP2の95重量%を3時間かけて滴下しさらに同温度で1時間ホ−ルドしたのち冷却を行った。
得られた水分散性樹脂組成物に12.5重量%アンモニア水溶液を1.4g添加した後200メッシュのナイロン紗にて濾過することによって固形分45.1重量%、粘度75mPa・s、pH9.0のラッカー型水分散性樹脂組成物(A2)を得た。
比較例2〔常温硬化型水分散性樹脂組成物(A3)の調製例〕
MMAの56部、2EHMAの24部、CHMAの19部、メタクリル酸の1部、A−171(日本ユニカー(株))の2部の混合物を、アクアロンKH−1025(第一工業製薬(株))の10部を25部のイオン交換水に溶解した乳化剤水溶液を用いて粗乳化を行い、これをモノマープレミックス(以下MP3と略)とした。又、過硫酸ソーダ0.5部をイオン交換水20部にて溶解し、これをキャタライズプレミックス(以下CatP3と略)とした。
次に撹拌装置、温度計、リフラックス・コンデンサーおよび窒素ガス導入管を備えた4ツ口フラスコに、イオン交換水の82部を仕込み、80℃に昇温した。80℃になったところで、CatP3の1/3をフラスコ内に投入し、5分後にMP3の5重量%を投入した。そして10分後にCatP3の2/3とMP3の95重量%を3時間かけて滴下しさらに同温度で1時間ホ−ルドしたのち冷却を行った。
得られた水分散性樹脂組成物に12.5重量%アンモニア水溶液を1.6g添加した後200メッシュのナイロン紗にて濾過することによって固形分45.4重量%、粘度95mPa・s、pH9.1の常温硬化型水分散性樹脂組成物(A3)を得た。
比較例3〔ラッカー型水分散性樹脂組成物(A4)の調製例〕
MMAの56部、2EHMAの24部、CHMAと略)の19部、メタアクリル酸の1部の混合物を、アクアロンKH−1025(第一工業製薬(株))の10部を25部のイオン交換水に溶解した乳化剤水溶液を用いて粗乳化を行い、これをモノマープレミックス(以下MP4と略)とした。又、過硫酸ソーダ0.5部をイオン交換水20部にて溶解し、これをキャタライズプレミックス(以下CatP4と略)とした。
次に撹拌装置、温度計、リフラックス・コンデンサーおよび窒素ガス導入管を備えた4ツ口フラスコに、イオン交換水の82部を仕込み、80℃に昇温した。80℃になったところで、CatP4の1/3をフラスコ内に投入し、5分後にMP4の5重量%を投入した。そして10分後にCatP4の2/3とMP4の95重量%を3時間かけて滴下しさらに同温度で1時間ホ−ルドしたのち冷却を行った。
得られた水分散性樹脂組成物に12.5重量%アンモニア水溶液を1.6g添加した後200メッシュのナイロン紗にて濾過することによって固形分45.0重量%、粘度70mPa・s、pH8.9のラッカー型水分散性樹脂組成物(A4)を得た。
実施例1,比較例1〜3にて得られた水分散性樹脂組成物を用いて、表2に記載の割合となるようにサンドミルで60分間練肉し、シルバー塗料を作成した。
1)日本シリカ工業(株) 増粘剤
2)ローム&ハース(株) 増粘剤
3)東洋アルミ(株) アルミペースト
これらシルバー塗料と強溶剤型アクリルラッカー塗料(シルバー)をスプレー塗装法で乾燥膜厚約10〜20μmとなるよう各基材(PS板、ABS板、ポリカーボネート板)上に塗布した。
得られた塗膜を下記に示す試験方法に従って、(1)1次付着性、(2)2次(耐水)付着性、(3)耐アルコール(エタノール)性、(4)可塑剤移行性(塩ビコード性)の評価を行った。評価結果を表3〜表6にまとめる。
(1) 1次付着性試験:前記シルバー塗料を各プラスチック基材に塗布、60℃で30分乾燥させて常温にて7日乾燥させた後2mm角の10×10マス目で碁盤目剥離(セロテープ剥離)試験を行い、100マス中の残りのマス数にて評価。
(2) 2次(耐水)付着性試験:前記シルバー塗料を各プラスチック基材に塗布、60℃で30分乾燥させて常温にて7日乾燥させた後、50℃の温水に24時間浸せきする。取り出して4時間乾燥させた後、2mm角の10×10マス目で碁盤目剥離(セロテープ剥離)試験を行い、100マス中の残りのマス数にて評価。
(3) 耐溶剤性(耐アルコール性):前記シルバー塗料をポリカーボネート板に塗布、60℃で30分乾燥させて常温にて7日乾燥させた後、学振試験器にてエタノールラビングテストを行った。(荷重500g×100回)ラビング後の塗膜の常態を目視評価。
○ :塗面に変化なし。
△ :塗料の剥離があり、一部下地が見える。
× :全面下地が見える。
(4) 可塑剤移行性:前記シルバー塗料をポリカーボネート板に塗布、60℃で30分乾燥させて常温にて7日乾燥させた後、塩ビコードを置き500gの荷重をかけて65℃×95RHの恒温恒湿機に24時間いれて取り出し、塩ビコードを剥離した塗面の常態を目視評価。
○ :塗面に変化なし。
△ :下地は見えないが一部塗料の溶解が見られる。
× :全体的に塗料の溶解が見られ全体に下地が見られる。