JP2005239719A - フィブリノゲンの精製 - Google Patents

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Abstract

【課題】 フィブリノゲンの精製方法の提供。
【解決手段】 本方法は、カチオン交換体、疎水性ゲルおよび/または染料ゲルを用いるネガティブクロマトグラフィー法および/またはネガティブ吸着法により1種またはそれ以上の夾雑タンパク質を枯渇させる1種またはそれ以上の工程段階を含む、フィブリノゲンの精製方法に関する。加えて、本発明は、本発明方法により得られ、かつ改善された安定性が顕著であるフィブリノゲン、およびこのフィブリノゲンを含む医薬調製物の製造および使用に関する。
【選択図】 なし

Description

本発明は、カチオン交換体、疎水性ゲルおよび/または染料(dye)ゲルを用いるネガティブクロマトグラフィー法および/またはネガティブ吸着法により1種またはそれ以上の夾雑タンパク質を枯渇させる1種またはそれ以上の工程段階を含む、フィブリノゲンの精製方法に関する。加えて、本発明は、本発明方法により得られ、かつ改善された安定性が顕著であるフィブリノゲン、およびこのフィブリノゲンを含む医薬調製物の製造および使用に関する。
フィブリノゲンは血液凝固において鍵となる役割を演じる。血管は外傷又は手術の場合に殆ど常に損傷を受け、出血が起きる。血液の凝固は小さい傷の領域で血液の固化を引き起こし、出血が止まる。従って、凝固系は身体を大量失血から保護する。血液の凝固において、血漿に存在する可溶性フィブリノゲンはトロンビンの存在下に繊維質の不溶性フィブリンに変換される。フィブリノゲンが不足すると、血液の凝固は正しく機能しない。この欠乏は、例えばヒト血漿から単離されたフィブリノゲンの投与により補償される。それが止血および傷の治癒にとって重要であるため、フィブリノゲンは臨床的使用において極めて重要である。
フィブリノゲンのこの臨床上の重要性のため、文献はこの重要なタンパク質を精製する種々の方法に関して豊富な引用文を含んでいる。フィブリノゲンは主にヒト血漿から、そして稀ではあるが動物血漿からも精製される。同様に、例えば組換え発現後の細胞培養物またはトランスジェニック動物の乳汁から、組換えフィブリノゲンを精製することも可能である。
ヒト血漿は100を超えるタンパク質の複雑な混合物を含み、フィブリノゲンはタンパク質の全量の約2%を占める。従って、フィブリノゲンの精製および単離は一般的に複数の段階を必要とし、これら個々の工程段階には多くの組み合わせが可能である。
ヒト血漿からフィブリノゲンを精製する一つの重要な構成要素は、普通は沈殿である。公知の沈殿方法では次のものが用いられる:すなわち、グリシンまたはアラニンのようなアミノ酸、例えばEP 0 383 234、WO 01/48016またはJakobsen & Kierulf(Thrombosis Research 3 (1973) 145-159)参照、硫酸アンモニウム、例えばUS 5,773,033、US 6,037,457またはTakeda(Journal of Clinical Investigation 45 (1966) 103-111)参照、例えばポリエチレングリコール(PEG)のような重合体、例えばWO 95/25748またはVilaら(Thrombosis Research 39 (1985) 651-656)参照、エタノール、例えばEP 0 408 029(この場合、フィブリノゲンは5〜10%のエタノールを用いて沈殿し他の血漿タンパク質から分離される)、またはUS 5,099,003またはBlombaeck & Blombaeck (Arkiv Foer Kemi 10 (1956) 415-443)参照、硫酸化多糖(SPS、例えばヘパリン)、例えばWO 99/37680およびUS 4,210,580参照、および低イオン強度の溶液、例えばUS 4,188,318およびDE 26 36 757参照。
しかしながら、沈殿だけに基づいて得られたフィブリノゲンの純度はある種の用途にはまだ十分でないので、従来技術におけるフィブリノゲンの精製に加えて、またはその別法として、種々の吸着およびクロマトグラフィー段階が記載されている。
イオン交換クロマトグラフィーの分野ではアニオン交換クロマトグラフィーがしばしば用いられる。これに関してはEP 0 555 135を参照でき、この場合には、フィブリノゲンは主工程段階でアニオン交換体カラムに結合され、その一方で、例えばアルブミンおよび不活性化剤は結合しない。次いでフィブリノゲンはカラムから溶出される。WO 93/05067では、ウイルスの不活性化のために添加された界面活性剤を再び除去するために、アニオン交換体へのフィブリノゲンの結合が用いられる。WO 01/48016は、負荷および/または洗浄緩衝液中でのフィブリノゲンの分解を遅らせるω−アミノ酸、例えばε−アミノカプロン酸(EACA)などを好ましく用いて、フィブリノゲンをイオン交換体材料に結合させることを記載している。このような工程段階は、特にフィブリノゲン含有溶液からの夾雑プラスミノゲンの効率的枯渇を可能にする。
カチオン交換クロマトグラフィーは、例えばWO 00/17234に記載されているように、トランスジェニック動物の乳汁からのフィブリノゲンの精製に用いられる。この場合に選択された条件はカラム材料へのフィブリノゲンの結合をも生じるので、例えばカゼインの除去を可能にする。
フィブリノゲンがカチオン交換体に結合する特性は、フィブリノゲン、リポタンパク質および尿素を例えば血液のような液体から選択的に除去するために、WO 91/01808で利用されている。
WO 89/12065では、フィブリノゲンはヘパリン−Sepharoseカラムにより1工程段階で精製される。条件は、フィブリノゲンがカラム材料に吸着されるように選択され、特にアルブミン、免疫グロブリンおよびウイルス不活性化物質を除去することができる。
フィブリノゲンを疎水性相互作用により精製する可能性も記載されている。WO 00/17239では、フィブリノゲンはトランスジェニック動物の乳汁から、疎水性カラムに塩の存在下で結合させた後に溶出することにより、1工程段階で精製される。ヒト血漿からのフィブリノゲンのために疎水性カラムを用いる可能性も同様に述べられている。
フィブリノゲンを選択的に結合できる異なるリガンドを有する種々のアフィニティークロマトグラフィーも記載されている。これに関しては、例えばUS 6,037,457またはWO 99/05176を参照することができ、これらはフィブリノゲンまたはフィブリノゲンペプチドを特異的に結合し、かつ特にフィブリノゲンの精製に使用できる抗体を記載している。EP 0 789 030、US 5,723,579およびUS 5,783,663は、フィブリノゲンを結合し、従ってフィブリノゲン精製のためのアフィニティーカラムにおいてリガンドとして使用できるペプチドを記載している。固定化リストセチンもフィブリノゲンの精製のために使用されており、後者は8M尿素で再び溶出された(Suzuki ら, Thrombosis Research 18 (1980) 707-715)。WO 99/20655では、最後に、フィブリノゲンを含むトロンビン基質のためのリガンドとして不活性化トロンビンが用いられる。WO 90/12803は、ある種のタンパク質を精製するための、いわゆるIMAC(固定化金属アフィニティークロマトグラフィー)を記載している。ヒトフィブリノゲンも、金属キレートマトリックスに結合可能なタンパク質として述べられている。フィブリノゲンはプロタミン−アガロースにも結合し、次いで酸性pHで溶出することができる。例えばUS 6,037,457またはDempfle & Heene(Thrombosis Research 46 (1987) 19-27)参照。
これら上記の方法または工程段階の全てに共通することは、フィブリノゲンがクロマトグラフィーまたは吸着材料に結合し、次いでゲル材料から再び脱離されるように条件を選択することである。
フィブリノゲンがカラムを通過する工程は、今日では、出発材料を種々の「有用画分」に分別することが望まれる工程、またはフィブリノゲンが不純物である工程についてのみ記載されている。
血漿またはクリオプレシピテートは、フィブリノゲンのほかに大量の他の臨床上重要な血漿タンパク質を含むので、因子VIII(F VIII)、フィブロネクチンおよびフォン・ウィルブラント因子の分画および単離のための出発材料としても用いられる。この理由のため、主タンパク質の4種全部または少なくとも2種を分離できるクロマトグラフィー工程段階も用いられる。この目的で、フィブリノゲンを結合しないが、例えばF VIII、フォン・ウィルブラント因子およびフィブロネクチン(これらは後で異なるイオン強度により溶出される)を結合する条件下で、アニオン交換体が用いられる。これに関しては、例えばWO 89/12065、EP 0 359 593またはUS 5,252,709を参照することができる。EP 0 383 234においてアニオン交換体のために選択される条件は、F VIIIのみが結合する一方で、フォン・ウィルブラント因子、フィブロネクチンまたはフィブリノゲンはカラムを通過するか、または上清中に残るようなもの(バッチ方法)である。EP 0 408 029およびUS 5,138,034は、特に分画工程を最後に含んでおり、該工程では、初めにF VIIIおよびフィブロネクチンが凍結/解凍処理による沈殿によって分離され、IX因子(F IX)が後続のアニオン交換体カラムに吸着され、そしてフィブリノゲンがカラムの貫流液からエタノールにより沈殿される。これら全ての場合の目標は臨床上重要な主タンパク質を分離することであり、次いで該タンパク質は単独で、それらの医薬使用前にさらなる精製段階に付することができる。アニオン交換体カラムによる同様の工程段階は、F VIIIを除去するフィブリノゲンの精製における可能な中間段階として、EP 0 555 135でも用いられる。WO 96/02571またはUS 5,834,420の一つの実施形態において、WO 89/12065と同様のイオン交換体材料がF VIIIおよびフォン・ウィルブラント因子を除去してフィブリノゲンを精製するために使用される。しかしながら、F VIIIおよびフォン・ウィルブラント因子のようなタンパク質はフィブリノゲンの安定性には効果を持たない。この工程段階は、例えば免疫グロブリン、フィブロネクチンおよびフィブリノゲンのような夾雑物を可能な限り完全に除去するためにF VIII濃縮物の製造にも、しばしば用いられる。これに関してはUS 5,043,428およびEP 0 173 242を参照することができる。US 4,210,580はフィブロネクチンの精製工程を記載しており、該工程では、フィブリノゲンはヘパリン沈殿後に後続のアニオン交換体カラムの洗浄により除去することができる。US 5,099,003でもアニオン交換体を用いるが、この場合はII因子、VII因子、IX因子およびX因子を除去するためであり、これらは除去しないとβ−プロピオラクトンおよびUV照射によるウイルス不活性化処理後にフィブリノゲン含有溶液のゲル化および凝集を引き起こすであろう。フィブリノゲン、プロトロンビン複合体、抗トロンビンIIIおよび貯蔵安定な血清タンパク質の製造方法を記載しているDE 29 02 158は、特に、初めにプロトロンビン複合体(F II、F VII、F IXおよびF X)がアニオン交換体上での吸着により得られ、続いてフィブリノゲンも貫流液からコロイドシリカでの吸着により単離される変法を記載している。しかしながら、この一続きの精製中にフィブリン溶解がしばしば起こり、フィブリノゲンの単離に有害作用を有するので、好ましい変法は、シリカ上の吸着により最初にフィブリノゲンを除去し、次いでアニオン交換体によりプロトロンビン複合体を単離することである。従ってこの場合には、アニオン交換体の使用は、貫流液から同時に単離されるべきフィブリノゲンの質に対して不利な作用を有する傾向がある。
最後に、WO 99/51724は、トランスジェニック動物の乳汁からフィブリノゲンを包含する異種タンパク質を精製するための「ネガティブ」クロマトグラフィー方法を
記載している。しかしながら、この場合には、夾雑乳汁タンパク質を結合するためにヒドロキシアパタイトがゲル材料として用いられる。
例えば、特異的結合によりフィブロネクチンを枯渇できる固定化ゼラチンなどの特異的ネガティブアフィニティークロマトグラフィー法も記載されている(例えば、Vuento & Vaheri Biochem. J. (1979) 183, 331-337 参照)。しかしながら、フィブロネクチンはフィブリノゲンの安定性に効果を持たない構造タンパク質である。
プラスミノゲンを極めて特異的に結合するリジンまたは類似化合物の能力、およびL−リジン置換セファロースを用いるアフィニティークロマトグラフィーによりプラスミノゲンを精製するためにこの能力を利用する可能性も記載されている(Deutsch & Mertz, Science 170 (1970) 1095-1096; Matsuda ら, Thrombosis Research 1 (1972) 619-630)。リジンリガンドのこの能力は、夾雑プラスミノゲンを枯渇させるために、いくつかのフィブリノゲン精製方法において工程段階として利用される。これに関しては、例えばWO 95/25748またはWO 93/05067を参照することができる。しかしながら、この場合には、リジンがプラスミノゲンの特定のエピトープ(クリングドメイン)に極めて特異的に結合するので、1種のタンパク質プラスミノゲンだけが極めて特異的に枯渇される。
WO 01/27623は、血液または例えばフィブリノゲンのような血液成分からの同種凝集素(血液型抗体)の除去を可能にする方法を記載している。この場合には、抗原(例えばオリゴ糖)が、アフィニティーカラムで同種凝集素を特異的に結合できるリガンドとして用いられる。同種凝集素の除去は、供与血液または供与血液成分の血液型が受血者の血液型と異なる場合に合併症を避けるために有利である。同種凝集素はタンパク質分解に対するフィブリノゲンの安定性に効果を持たない。
EP 0 366 946およびUS 5,094,960も用いられ、これらは例えば血漿、クリオプレシピテート、凝固因子およびフィブリノゲンのような生物学的材料から脂質可溶性の工程の化学物質を除去する方法を記載している。この場合には、選択された条件下で工程の化学物質を吸着するが生物学的材料のタンパク質を吸着しない疎水性クロマトグラフィーカラムが用いられる。この方法の目標は、例えばウイルスの不活性化のために添加された化学物質を除去することだけである。例えば凝固因子のようなタンパク質(特にフィブリノゲン分解因子、例えばXI因子(F XI)を包含する)(Scott ら, Arch Biochem Biophys 249 (1986) 480-488)を、選択された条件下で結合させることは意図されておらず、また枯渇させることはこの特許では意図されていない。同様に、DE 29 03 131で意図していることは、イオン交換体材料の使用によりイオンを交換することだけである。この特許は、4製品(抗血友病性グロブリンA、プロトロンビン複合体、貯蔵安定な血清タンパク質の溶液およびフィブリノゲン)を同時に精製する方法を記載しており、この場合には、カルシウムが除去されており、かつクエン酸塩添加血漿の使用時にはクエン酸塩イオンがさらに除去されている血漿が、出発材料として必要である。この場合には、カチオン交換体はカルシウムイオンをナトリウムまたは水素イオンで置き換え、そしてアニオン交換体はクエン酸塩イオンを塩化物または水酸化物イオンで置き換える。次いで、このようにして得られた血漿、特にフィブリノゲンを、イオン交換体から特にシリカ上への吸着により単離することが可能である。しかしながら、この場合に用いられるカチオン交換体は、凝集反応が始まるのを避けるためにカルシウムイオンを置き換えることだけに役立つ;この段階により精製は行われない。
同様に、血漿タンパク質の精製には吸着も採用される。すなわち、DE 29 03 131は、リン酸三カルシウムへの吸着をプロトロンビン複合体の精製に用いている。WO 95/25748はそれを使用して、フィブリノゲンを精製するための1工程段階と
して、プロトロンビン複合体を除去する。水酸化アルミニウム(Al(OH)3)を用いる吸着も挙げるべきであり、これはプロトロンビン複合体の因子を結合し、そして例えば脂質の除去において役割を演じることができる。Al(OH)3は例えばEP 0 383 234またはWO 01/48016で用いられている。これに関しては、硫酸バリウム(BaSO4)の可能な使用も挙げるべきである。
工程の化学物質だけが除去されるEP 0 366 946およびUS 5,094,960、およびカルシウムおよびクエン酸塩イオンだけが除去されるDE 29 03 131を除き、ネガティブクロマトグラフィー法/吸着法のため記載された方法の全てに共通することは、本発明の工程段階のために記載するもの以外のゲル材料が用いられることである。もう一つの点は、本発明の工程段階の特別な利点が、1種またはそれ以上の夾雑タンパク質、特にフィブリノゲン分解タンパク質またはそれらの前駆体の効果的な枯渇により、溶液中での安定性が著しく増大したフィブリノゲン調製物を得ることが可能であるということである。工業的単離のためには、工業的観点から経済的に実施できるだけでなく、溶液中での長期貯蔵において極めて実質的に安定なままであるフィブリノゲンをもたらす精製方法を開発することが特に重要である。
フィブリノゲンは複合構造を有する極めて大きなタンパク質である。それは、二つの対称的半分からなる約340kDaの糖タンパク質である。アルファ(Aα)ベータ(Bβ)およびガンマ(γ)鎖の対は延長分子構造(約47nm)を形成し、これは三つのドメイン(一つの中央Eドメインおよび二つの同一のDドメイン)を形成する。この複合構造は安定なフィブリンマトリックスの効果的形成に不可欠である。アルファ鎖は特に、フィブリノゲン分解プロテアーゼによる初期のタンパク質分解をうける。アルファ鎖へのこの種の損傷は、トロンビンの作用後に凝固開始の遅れをもたらし、そしてアルファ鎖のタンパク質分解がフィブリン重合に影響を与えることを示唆している。フィブリン凝塊の三次元構造も、損傷されたアルファ鎖により影響を受ける。フィブリンネットワークは、より微細であり、そしてより細い原繊維およびより少ない機械的安定性を有する。アルファ鎖のC末端は、活性化F XIIIにより触媒される隣接フィブリン分子間の結合の基礎となるアミノ酸配列を含む。失われた架橋はフィブリンマトリックスの安定性を低下させる。これは全て、アルファ鎖が酷く損傷されたフィブリノゲンが低下した質を有し、そして例えばフィブリン接着剤における医薬用途には望ましくないことを示す。同様の陳述は他のフィブリノゲン鎖のタンパク質分解にも当てはまるが、これは一般的により遅い速度で行われる。本発明の工程段階の利点は、フィブリノゲン分解タンパク質を枯渇させることであり、水溶液中でのフィブリノゲンの安定性を増大する結果を伴う。
従って、フィブリノゲン分解タンパク質およびそのプロ酵素の除去を最大にする方法は、得られたフィブリノゲン溶液の安定性および効力が、液体形態での長期貯蔵においても決定的に改善されるので、特に有利である。液体状態での貯蔵は、フィブリノゲンにとって特に有利である。なぜならば、活性物質を患者に即座に使用でき、従って凍結乾燥調製物の再構成または凍結調製物の解凍および加温には時間がかかるためである。しかしながら、凍結乾燥物としてまたは凍結状態で貯蔵する場合でさえも、再構成または解凍したフィブリノゲンには、より長時間安定であることが有利である。このことは、例えば、材料が例えば手術のために用心して再構成されたが、その後に医学的考慮に基づいて使用する必要がなかった状況で明らかである。この材料は、安定性が短時間のみであるならば捨てなければならず、後の時点ではもはや使用できないだろう。フィブリン接着剤を使用する場合には、フィブリノゲンが液体形態にあることが特に有利である。市販の接着剤は、大部分が二つの成分を含む。一方の成分は、多くの場合にXIII因子およびアプロチニンのようなフィブリン溶解阻害剤と一緒にしたフィブリノゲンを含み、他方の成分は、多くの場合にカルシウムイオンと一緒にしたトロンビンを含む。接着剤をすぐに使用できるようにするための再構成には、特にフィブリノゲンが高い濃度で存在するので、比較的長い時間を要する。
本発明方法により単離されたフィブリノゲンのもう一つの大きな利点は、室温でも一定時間液体として貯蔵できることであり、従って、おそらく、例えば緊急状況での使用特性を改善する。これは、場合によっては低温が全体として保証されない長期輸送経路においても、この期間中に室温でも安定性を保証できるならば有利である。従って、溶液中でのフィブリノゲンの安定な貯蔵は、製造、使用および患者への投与を多くの点で容易にする。本発明方法により製造されたフィブリノゲンの安定性が有利に増大しているため、多くの医薬調製物において、ある状況下で望ましくない副作用を生じることがあるか、または潜在的危険を減少するために避けねばならないフィブリン溶解またはフィブリノゲン溶解阻害剤の添加を不要にすることが、さらに可能である。
従って要約すると、多数の精製方法が記載されているにもかかわらず、安定なフィブリノゲン溶液の経済的製造を工業的規模で可能にする改善された方法が依然として必要である。
従って、本発明は、安定性の高いフィブリノゲンを良好な収率で与えるフィブリノゲンの精製方法を示すという目的に基づいている。驚くべきことに、工業的規模でも経済的に実施することができ、かつ溶液中での安定性が著しく増大したフィブリノゲンをもたらす精製方法を見出した。
従って、本発明は、1種またはそれ以上の夾雑タンパク質を、有機カチオン交換体、疎水性ゲルおよび/または染料ゲルを用いた1種またはそれ以上のネガティブクロマトグラフィー法および/または1種またはそれ以上のネガティブ吸着法により枯渇させる1種またはそれ以上の工程段階を含む、フィブリノゲンの精製方法に関する。本発明はさらに、上記の工程段階により得ることができ、そして室温で貯蔵した後の改善された安定性、および/またはフィブリノゲン分解プロテアーゼまたはそのプロ酵素の減少した含有量が顕著であるフィブリノゲン調製物に関する。
本発明で提案される豊富な染料リガンドを担持する種々の染料ゲルは、種々のタンパク質を枯渇させることができ、高いフィブリノゲン安定性を有するフィブリノゲン含有溶液の製造を可能にする。
しかしながら、TCP、Ba(SO4)およびAl(OH)3のような僅かに可溶性の無機塩の使用は、本発明のフィブリノゲン調製物をもたらさない。しかしながら、本発明のゲル材料は、TCP、Ba(SO4)およびAl(OH)3のような僅かに可溶性の無機塩と組み合わせて採用することもできる。
30℃で貯蔵したときの低分子量フィブリノゲン分解フラグメントの割合は、フィブリノゲンの安定性の尺度と考えられる。これらの分解フラグメントは、サイズ排除クロマトグラフィーにより、主フィブリノゲンピークよりも小さい分子量(ピーク4または≦ピーク4)を有するピークとして測定される。フィブリノゲン調製物は、液体状態で30℃で貯蔵したときのフィブリノゲン分解フラグメント(ピーク4または≦ピーク4)の絶対比が1ヵ月後に3%未満、より好ましくは2.5%未満であるならば、本発明の意味の範囲内で安定であると考えられる。
本発明の意味の範囲内での精製は、クロマトグラフィー精製工程またはバッチ吸着工程であってよい。
有用であることが判明した方法は、1種またはそれ以上の沈殿段階により、純度が50%(w/w)、より好ましくは70%(w/w)であるフィブリノゲン調製物を初めに製造し、次いでカチオン交換体、疎水性ゲルおよび/または染料ゲルを用いる1種またはそれ以上のネガティブクロマトグラフィー法および/または1種またはそれ以上のネガティブ吸着法により、そして適切ならば追加の上記工程により、さらに精製する方法である。
従来技術の方法と、本発明のネガティブクロマトグラフィーまたはネガティブ吸着工程段階とは根本的に異なり、該工程段階では、比較的小さい割合のフィブリノゲンだけが結合するか、またはフィブリノゲンが全く結合せず、従ってフィブリノゲンがクロマトグラフィー分離においてカラムを通過するように条件が選択される。こうして、フィブリノゲンの主たる部分は貫流液中に、または吸着の場合には上清中に存在する。本発明の工程段階の利点は、特に、フィブリノゲンの構造および機能性を妨害せず、これに加えて高い収率をもたらす条件の選択が可能であることである。本発明の工程段階では、特に沈殿による予備精製後に、副次的成分だけを実質的に結合して除去することが必要なので、カラム直径が小さく、かつ技術装置が簡単なためにコスト効果的の良い工業的実施が可能である。これと比較して、これまで記載されたフィブリノゲン結合によるクロマトグラフィー/吸着は幾つかの欠点を有する。フィブリノゲンが結合されるので、大きいカラム直径が必要であり、そして大量のゲル材料のため、また技術装置がより複雑なために、方法をよりコスト高にする。例えば塩勾配による溶出は、工業的製造に対して障害となることもある。若干の場合には、過酷な化学的条件の採用も必要であり、これは結合したフィブリノゲンを再び溶出するために、フィブリノゲンの機能性を妨害することがある。また若干の場合には、上記の精製はフィブリノゲンの大量損失を伴うか、またはそのほかに、例えばコストが高いか、また市販されていないゲル材料のために、フィブリノゲンの工業的精製には経済的に採用することができない。
下記の実施形態が有利であることが判明した:
カチオン交換体の官能基として、スルホメチル基(S型)、スルホプロピル基(SP型)、カルボキシメチル基(CM型)または好適な負荷電官能基を用いる、上記方法。
カチオン交換体が、Fractogel EMD SO3 -650、Macro−Prep 50 S、CM−Sepharose CL−6B、Fractogel EMD CM−650、Fractogel TSK CM−650、Fractogel EMD CM、SP Sepharose、Heparin Fractogelおよび/またはHeparin Sepharose CL 6Bである、上記方法。
疎水性ゲルが官能基としてアルキル基を含む、上記方法。
疎水性ゲルが官能基としてフェニル基または誘導体化フェニル基を含む、上記方法。
疎水性ゲルが官能基としてプロピル、ブチル、フェニル、ヘキシルまたはオクチル基を含む、上記方法。
用いられる疎水性ゲルが、Macro Prep Methyl、Fractogel
EMD Propyl 650、Fractogel EMD Butyl 650、Fractogel TSK Butyl 650、Macro Prep t Butyl、Butyl Cellufine、Butyl Sepharose 4 Fast Flow、Butyl S−Sepharose 6 Fast Flow、HIC−Fractogel Pentyl、Hexyl S−Sepharose 6 Fast Flow、Octyl Sepharose CL 4B、HIC−Fractogel HW 65 Propyltentakel、Fractogel HW 65
Butyltentakel、Fractogel TA 650、Phenyl Sepharose HP、Phenyl Sepharose Fast Flow、P
henylalanin Sepharose、Thiopropyl Sepharose 6Bおよび/またはPyridyl S−Sepharose 6 Fast Flowである、上記方法。
染料ゲルが青色染料ゲルである、上記方法。
染料ゲルとして赤色または緑色染料ゲルを用いる、上記方法。
染料ゲルが、Blue Hyper D、Mimetic Blue Agarose、Mimetic Blue SA P6XL、Mimetic Blue 1 P6XL、Blue Trisacryl Plus LS、Blue Uniflow、Blue Sepharose 6FF、Blue Sepharose CL 6B、Red Sepharose CL 6B、Fractogel TSK AF Greenおよび/またはMatrex Gel Green Aである、上記方法。
ネガティブクロマトグラフィーおよび/またはネガティブ吸着の工程段階中に6〜9のpHを用いる、上記方法。
ネガティブクロマトグラフィーおよび/またはネガティブ吸着の工程段を0〜30℃の温度で行う、上記方法。
ネガティブクロマトグラフィーの貫流液中またはネガティブ吸着の上清中のフィブリノゲンの収率が≧50%、好ましくは70%≧である、上記方法。
ネガティブ吸着またはクロマトグラフィーを含む工程段階を、フィブリノゲンへのプラスミノゲンの結合を弱める物質の存在下に行う、上記方法。
血液、トランスジェニック動物の乳汁、もしくは培養上清から得られた混合物またはそれら得られた画分からを出発材料として使用する、上記方法。
ヒト血漿、血漿画分またはクリオプレシピテートを出発材料として使用する、上記方法。
1種またはそれ以上の工程段階が水酸化アルミニウム処理を含む、上記方法。
フィブリノゲンを沈殿させる1種またはそれ以上の工程段階を含む、上記方法。
グリシンまたは他のアミノ酸による1種またはそれ以上の沈殿を含む、上記方法。
官能基としてリジンまたはリジン類似体を有するゲル材料上でプラスミノゲンを除去する1種またはそれ以上の工程段階を含む、上記方法。
感染性粒子を枯渇させそして/または除去するための1種またはそれ以上の工程段階を含む、上記方法。
1つの工程段階が低温殺菌および/またはUV照射および/またはナノ濾過である、上記方法。
1種またはそれ以上の限外濾過および/または透析を含む、上記方法。
100〜500kDaの分子量限界(カットオフ)を有するフィルター材料を用いる、上記方法。
1種またはそれ以上の滅菌濾過を含む、上記方法。
以下の工程段階:血漿画分の調製、水酸化アルミニウム上への吸着、例えばウイルスのような感染性粒子の不活性化、沈殿、さらなる精製および/または不活性化段階、ネガティブクロマトグラフィー法および/またはネガティブ吸着法、限外濾過、滅菌濾過を組み合わせる、上記方法。
さらなる精製がプラスミノゲンを除去する工程段階である、上記方法。
個々の工程段階の順序および/または数を変更する、上記方法。
本発明方法の一つを用い、そしてネガティブクロマトグラフィー法および/またはネガティブ吸着法を行った後、除去すべき血漿タンパク質をカチオン交換体、疎水性ゲルおよび/または染料ゲルから溶出させる、上記方法。
F XII、プラスミノゲン、t−PAおよび/またはF XIを単離するための上記方法。
上記方法の一つにより得ることのできるフィブリノゲン調製物。
上記方法の一つにより製造されたF XII、プラスミノゲン、t−PAおよび/またはF XI。
上記方法の一つにより製造されたフィブリノゲンを含む、医薬調製物の製造。
上記方法の一つにより製造されたフィブリノゲンを含む、医薬調製物。
F XI含有量がOD280-320当り≦1、好ましくは≦0.2ngである、医薬フィブリノゲン調製物。
F XII含有量がOD280-320当り≦20、好ましくは≦10ngである、医薬フィブリノゲン調製物。
t−PA含有量がOD280-320当り≦0.02、好ましくは≦0.01ngである、医薬フィブリノゲン調製物。
液体状態で30℃で貯蔵したときのフィブリノゲン分解フラグメントの絶対比が1ヶ月後に、3%未満、好ましくは2.5%未満である、上記の医薬調製物。上記方法の一つによる医薬調製物の使用。
フィブリノゲン欠乏状態を処置するための、上記方法の一つによる医薬調製物の使用。
フィブリン接着剤の成分としての、上記方法の一つによる医薬調製物の使用。
フィブリンマトリックスを生成するための、上記方法の一つによる医薬調製物の使用。
診断助剤の成分としての、上記方法の一つによる医薬調製物の使用。
多成分接着剤の成分としての、上記方法の一つによるフィブリノゲン調製物。製剤成分アルギニンを含む、多成分接着剤の成分としての、上記方法の一つによるフィブリノゲン調製物。製剤成分NaCl、クエン酸Na3、Arg×HClおよびCaCl2を含む、多成分接着剤の成分としての、上記方法の一つによるフィブリノゲン調製物。製剤成分NaCl(0〜500mM)、クエン酸Na3(0〜50mM)、ArgもしくはArg×HCl(0.05〜2.0mol/l)およびCaCl2(0.1〜5mM)、またはその混合物を含む、多成分接着剤の成分としての、上記方法の一つによるフィブリノゲン調製物。上記方法の一つによるフィブリノゲン成分、F XIII成分およびトロンビン成分を別個の成分として含む、フィブリン接着剤。
F XIIIが添加された上記方法の一つによるフィブリノゲン成分およびトロンビン成分を別個の成分として含む、フィブリン接着剤。
さらなる実施形態は請求項の主題に関し、また本発明のさらなる特徴および利点は、好ましい実施形態ならびに実施例および図面の記載から明らかである。
図面の簡単な説明は以下のとおりである:
図1は、SEC−HPLCによるフィブリノゲン分解フラグメントに関するフィブリノゲン含有溶液の調査を示す。フィブリノゲン分解フラグメントの比率は30℃で2ヶ月間の貯蔵で著しく減少でき、従って溶液中でのフィブリノゲンの安定性がネガティブ疎水性クロマトグラフィー法の使用により増大することが示されている。
図1a:貯蔵する前に、ネガティブクロマトグラフィー方式での疎水性相互作用クロマトグラフィーによりさらに精製したフィブリノゲン含有溶液。
図1b:30℃で2ヶ月間貯蔵した後に、ネガティブクロマトグラフィー方式での疎水性相互作用クロマトグラフィーによりさらに精製したフィブリノゲン含有溶液。
図1c:30℃で2ヶ月間貯蔵した後に、ネガティブクロマトグラフィー法方式での疎水性相互作用クロマトグラフィーによるさらなる精製はしなかったフィブリノゲン含有溶液。
フィブリノゲンという用語は、好ましくは、例えばヒト血液から得られたフィブリノゲンを含む混合物から精製することができるヒトフィブリノゲンを意味する。「血液から得られた混合物」という用語は、例えば全血液、血漿、血漿画分または血漿沈降物を意味する。ヒト血漿、クリオプレシピテートまたはコーン画分1からのフィブリノゲンが特に好ましい。フィブリノゲンはプールした献血血漿または個々の献血の両方から単離することができる。ヒトフィブリノゲンはトランスジェニック動物から得ることもできる(例えば、US 5,639,940参照)。細胞培養物から組換え発現により得られたフィブリノゲン(例えば、US 6,037,457)も包含される。従って、適切な培養上清またはそれから製造した画分からフィブリノゲンを単離することが可能である。しかしながら、フィブリノゲンを含み、かつ動物血液から、好ましくは哺乳類のような動物(例えば、ブタ、ウマ、ウシ、ヤギ、ヒツジおよびイヌ)から得られた混合物から単離されたフィブリノゲンも包含される。
夾雑タンパク質は、本発明の目的で、フィブリノゲンの他に血漿中に存在するか、またはトランスジェニック動物のミルク中または細胞培養上清中に出現する、原則として全てのタンパク質を意味する。それらは、特に好ましくは、タンパク質分解によりフィブリノゲンを分解できるフィブリノゲン分解タンパク質、またはフィブリノゲンのタンパク質分解のために予め活性化する必要のあるフィブリノゲン分解タンパク質の前駆体(プロ酵素)、またはフィブリノゲン分解プロテアーゼの活性化剤である。タンパク質分解過程は、フィブリノゲンよりも小さく、かつ低い分子量を有するであろうフィブリノゲン分解フラグメントを生じる。これに関して、タンパク質分解によりフィブリノゲンのアルファおよび/またはベータおよび/またはガンマ鎖に作用を及ぼすことが可能である。血漿からのフィブリノゲンの精製において可能な夾雑物として生じることのある、可能なフィブリノゲン分解または分解補助タンパク質またはその前駆体は、例えば血漿、F XIa、カリクレイン、VII因子活性化プロテアーゼ(FSAP)、F XIIa、t−PAおよびu−PAのようなプラスミノゲンアクチベーター、トロンビン、メタロプロテアーゼ(MMP)、ならびにそれらに対応する前駆体、例えばプラスミノゲン、F XI、プレカリクレイン、sc−FSAP、F XII、sct−PAおよびscu−PAのような一本鎖プラスミノゲンアクチベーター、プロトロンビンおよびpro−MMPなどである。以下の本文において、活性化された形態と個々の前駆体とは区別されない;これに対し、活性化されていないプロ酵素との呼称は、両方の形態を識別するために用いられる。
本発明方法は、好ましくは、本発明の工程段階により、フィブリノゲン分解プロテアーゼまたはそのプロ酵素または活性化剤の枯渇を可能にする。後者は、例えばプラスミノゲン、F XI、プレカリクレイン、pro−MMPおよび/またはプラスミノゲンアクチベーターsct−FSAおよびscu−PAであってよい。枯渇率(DF)は、上記1、好ましくは2を超える。この場合、F XIIの割合を最小に、特に好ましくはOD280-320当り≦20ngにすることが可能である。F XIの割合は、OD280-320当り≦1ng、特に好ましくはOD280-320当り≦0.2ngまで最小にすることができる。プラスミノゲンの割合は、特に好ましくはOD280-320当り≦5ngまで低下することができる。本発明の工程段階は、特に好ましくは、溶液中でのフィブリノゲンの安定性および特にフィブリノゲン鎖のタンパク質分解安定性を増大する。フィブリノゲン分解タンパク質に
よるタンパク質分解によって生成した分解フラグメントは、種々の方法により検出することができる。ここで挙げることのできる例は、還元性またはSDSポリアクリルアミドゲル中での分画、例えばSEC(サイズ排除クロマトグラフィー)HPLCのようなHPLC方法、または免疫学的方法である。残留フィブリノゲンの活性は、Clauss(Acta-Haematol. 17 (1957) 237-246)に記載された伝統的方法によりさらに測定することができる。フィブリノゲン分解タンパク質の枯渇は、、例えば特に抗体を用いて例えば公知のELISA(酵素結合免疫吸着アッセイ)またはRIA(放射性免疫アッセイ)方法などにおいて検出することができる。抗体は、例えば、上記または他の公知のフィブリノゲン分解プロテアーゼに対して向けられる抗体である。しかしながら、枯渇は、フィブリノゲン溶液を液体状態で貯蔵し、そして貯蔵後の分解反応の程度を、同様に貯蔵した非枯渇対照と比較して測定することによって非特異的に検出することもできる。
クロマトグラフィーは、本発明の目的で、フィブリノゲン含有溶液を液体流により固定相を通過させ、混合物の成分が分画されるようになる分離方法を意味する。固定相は、好ましくはクロマトグラフィーカラムの充填材料である。以下でゲル材料とも呼ばれる充填材料は、好ましくは、ほぼ同じ大きさの多孔質または非多孔質の粒子であって、その上に分離方式を確立する官能基が共有結合して存在するものから構成された固体支持体材料からなる。支持体材料は、アガロース、セルロースおよびデキストラン(好ましくはSepharoseおよびSephadex)のような生体高分子、または例えばメタクリレート、ポリビニルベンゼン、ポリスチレンおよびポリアクリルアミドのような合成重合体、または例えばシリカまたは多孔質ガラスビーズのような無機重合体であってよい。精製されるべきフィブリノゲンが夾雑タンパク質と共に溶解している溶液、ならびに可能な洗浄緩衝液および平衡化緩衝液は、移動相と考えられる。ネガティブクロマトグラフィー法は、本発明の目的では、固定相および移動相が、一方ではフィブリノゲンと固定相との反応が可能な限り弱いかまたはゼロであるが、他方では1種またはそれ以上の夾雑タンパク質と固定相との相互作用がフィブリノゲンよりも強いように選択されることを意味する。従ってフィブリノゲンは主にカラムを通過し、そして主に貫流液中に存在する(>50%)が、1種またはそれ以上の夾雑タンパク質は主に固定相に結合される。カラムを前処理し、そしてフィブリノゲン含有溶液を負荷する前にゲル材料の必要条件により平衡化する。平衡化緩衝液は、好ましくはフィブリノゲンおよび夾雑タンパク質を溶解する溶液に相当する。フィブリノゲン損失を最小にするために、カラムの移動層になお残留するフィブリノゲンを洗浄除去することができ、洗浄緩衝液の体積はカラムの体積にほぼ相当する。洗浄緩衝液は、好ましくはフィブリノゲンおよび夾雑タンパク質が溶解された溶液に相当する。洗浄緩衝液は、適切ならば貫流液と組み合わせることができる。固定相に結合した夾雑タンパク質は適切な溶液で溶出することができ、そして場合によっては、固定相をコスト節約の理由でネガティブクロマトグラフィー精製段階のために再生により数回使用することができる。再生が不可能であるかまたは経済的でない場合には、使用したゲル材料を捨てる。しかしながら、固定相から溶出したタンパク質は、必要に応じて、これらのタンパク質成分を単離するための出発材料として用いることもできる。タンパク質濃縮物は、場合によっては、さらなる精製または工程段階により得ることができる。こうして、例えば特にプラスミノゲン、F XIIおよびF XIを製造することが可能である。
原則として、本発明の目的のネガティブクロマトグラフィー法の固定相のためには、選択された条件下で、特に移動相を選択して、1種またはそれ以上の夾雑タンパク質とフィブリノゲンよりも強い相互作用に携わることのできる任意の材料を使用することが可能である。本発明の工程段階に含まれるゲル材料(固定相)は、カチオン交換体、疎水性ゲルまたは染料ゲルに属するものである。例えば、Amersham、Bio−Rad、Biosepra、Merck、Preseptive Biosystems、Pharmacia、Prometic、Toso Haasから市販された広範囲のカラム材料または予備充填カラムがあり、これらは本発明に含まれると考えられる。いくつかについて
は本実施例において試験されている。移動相は個々のゲル材料に適合すべきである。しかしながら、一般的に5〜9のpH値が好ましい。同様に、選択すべき緩衝系は、この範囲でよく緩衝するものである。その例はクエン酸塩、リン酸塩およびトリス緩衝液であろう。
ネガティブクロマトグラフィー工程段階は、好ましくは2〜30℃の温度で行われる。
カチオン交換体は、固定相であるイオン交換マトリックス上の荷電した位置に対して移動相の塩イオンとタンパク質とが競合するイオン交換クロマトグラフィーのゲル材料である。カチオン交換体は負に荷電した基を含み、そしてタンパク質の正に荷電した基と相互作用することができる。相互作用は、カチオン交換体およびタンパク質の表面上の正電荷の強さおよび電荷蜜度に依存する。タンパク質は、特定のアミノ酸の塩基性および酸性側鎖基のために、正または負の電荷を有し、全電荷状態は溶液のpHに依存する。しかしながら、アミノ酸組成のほかに、翻訳後修飾(例えば、リン酸化など)も、タンパク質の正および負の電荷が互いに中和し合う等電点(PI)に寄与する。フィブリノゲンは約5.1〜5.5のpIを有し、むしろ酸性タンパク質に属する。好ましいカチオン交換体は、交換機能基(官能基、リガンド)として、スルホメチル基(S型)、スルホプロピル基(SP型)またはカルボキシメチル基(CM型)を含む。しかしながら、本発明の目的で、カチオン交換体の範囲は、他の好適な負荷電官能基を有するもの、例えばヘパリンなども包含する。カチオン交換体は記載されており、また例えば、Amersham、Bio−Rad、Biosepra、Merck、Preseptive Biosystems、Pharmacia、PrometicまたはToso Haasなどから市販されている。好ましいカチオン交換体は、その場で消毒できるゲル、例えば、Fractogel EMD SO3 -650(Merck)、Macro−Prep 50 S(Bio-Rad)、CM−Sepharose CL−6B(Pharmacia)、Fractogel TSK CM−650(Merck)、Fractogel EMD CM、SP Sepharose、Heparin Fractogel(Merck)またはHeparin Sepharose CL 6B(Pharmacia)などである。
カチオン交換体のための移動相は、好ましくは、選択されたpHで、フィブリノゲンが負の全体電荷を有しそして/または選択されたイオン強度で固定相の負荷電基と僅かな相互作用しか生じない一方で、固定相と1種またはそれ以上の夾雑タンパク質との間では依然として相互作用が生じるように選択すべきである。pHは、5.5を超え、特に好ましくは約6.0を超えて約9までであるべきである。使用できる塩は、カチオン交換体のために当業者に公知の塩、特に好ましくはNaClである。塩濃度は、好ましくは0〜400mM、特に好ましくは0〜100mMである。
疎水性クロマトグラフィーは、通常は比較的に高い塩濃度で固定相の疎水性官能基(リガンド)と相互作用するタンパク質の非極性表面領域を含む。固定相としての疎水性ゲルは、合成重合体、シリカ、例えばSepharoseのような生体高分子であり、その表面は官能基としての疎水性リガンドにより修飾されている。疎水性リガンドは、好ましくは、直鎖状または分枝状であってよい1〜24個を超える炭素原子(C)を有するアルキル基、または芳香族リガンドである。可能な例は、C1(メチル)、C3(プロピル)、C4(ブチル)、C5(ペンチル)、C6(ヘキシル)およびC8(オクチル)基、特に好ましくはプロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシルまたはオクチル基である。アルキル基は、例えばチオプロピルのように誘導体化されていてもよい。フェニル基、または例えばフェニルアニリンのようなフェニル誘導体を含む芳香族化合物も、好ましく用いられる。フェニル基は、例えばアルキル鎖に結合されていてもよい。例えばピリジル基またはその誘導体を用いることも可能である。疎水性材料は当業者に広く知られており、そして例えば会社Amersham、Bio−Rad、Biosepra、Merck、Prese
ptive Biosystems、Pharmacia、PrometicおよびToso Haasから市販されている。固定相として特に好ましいものは、例えば、Macro Prep Methyl HIC Support(Bio-Rad)、Fractogel EMD Propyl 650(Merck)、Fractogel EMD Butyl 650(Merck)、Fractogel TSK Butyl 650(Merck)、Macro Prep t Butyl HIC Support(Bio-Rad)、Butyl Cellufine(Amicon)、Butyl Sepharose 4 Fast
Flow(Pharmacia)、Butyl S−Sepharose 6 Fast Flow(Prototyp, Pharmacia)、HIC−Fractogel Pentyl(Merck)、Hexyl S−Sepharose 6 Fast Flow(Prototyp, Pharmacia)、Octyl Sepharose CL 4B(Pharmacia)、Fractogel HW 65 Propyltentakel(Merck)、Fractogel HW 65 Butyltentakel(Merck)、Fractogel TA 650(Merck)、Phenyl Sepharose High Performance(Pharmacia)、Phenyl Sepharose Fast Flow(Pharmacia)、Phenylalanin Sepharose(Pharmacia)、Thiopropyl Sepharose 6B(Pharmacia)またはPyridyl S−Sepharose 6 Fast Flow(Pharmacia)である。
タンパク質と固定相との疎水性相互作用は、官能基により影響されるだけでなく(例えば、アルキル基の鎖長の増加は疎水性を高める)、移動相を形成する溶液のイオン強度およびpHによっても大きく影響される。移動相は、用いられる固定相に応じて、1種またはそれ以上の夾雑タンパク質が固定相との疎水性相互作用に携わる一方で、好ましくは50%を超えるフィブリノゲンがカラムを通過するように選択すべきである。可能な移動相および個々の固定相への適合は当業者に公知である。pHは、好ましくは約5を超えて約9までの範囲にある。疎水性相互作用クロマトグラフィーのための公知の塩、特に好ましくは、例えばNaCl、Na2SO4および(NH42SO4を用いることができる。塩濃度は、固定相に応じて0.01〜2Mの範囲にある。
アフィニティークロマトグラフィーは、支持体マトリックスに結合された個々のリガンド上へのタンパク質(またはタンパク質基)の特定の可逆的吸着を含む。好適な支持体マトリックスは、例えばSepharose 4BまたはSepharoseCLのようなSepharoseであり、そのOH基はリガンドの共役結合に使用することができる。他の好適な支持体は、例えばFractogel、Sephacryl、Cellufineなどのような公知の重合体である。可能なモノ特異性リガンドは、例えば、フィブリノゲン分解タンパク質、例えばプラスミノゲン、F XI、プレカリクレインその他に対して向けられた抗体である。しかしながら、抗体のためのアフィニティーカラムは工業的規模ではコスト高であり、そして条件付でのみ経済的に効果的に採用することができる。従って、1種またはそれ以上の夾雑タンパク質、特にフィブリノゲン分解タンパク質を結合する染料は、基特異的リガンドとして本発明の枠内に包含される。青色、赤色および緑色染料は特に好ましい。相当する材料の例は、Blue Sepharose 6FF(Pharmacia)、Blue Sepharose CL 6B(Pharmacia)、Blue Trisacryl Plus LA(Biosepra/Ciphergen)、Blue Hyper D(Biosepra/Ciphergen)、Mimetic Blue Agarose(Prometic)、Mimetic Blue SA P6XL(Prometic)、Mimetic Blue 1 P6XL(Prometic)、Red Sepharose CL 6B(Pharmacia)、Fractogel TSK AF Green(Merck)および/またはMatrex gel Green A(Amicon)である。さらなる染料ゲルは当業者に十分周知であり、そして市販されているか、または適切な製造業者が製造できる。
移動層のpHは、好ましくは約5〜約9の範囲にある。
本発明の目的のネガティブ吸着法(negative adsorption)は、フィブリノゲン含有溶液を好適な容器中で、選択された条件下でフィブリノゲンを少量しか、または全く吸着しないが、1種またはそれ以上の夾雑タンパク質を吸着する吸着材料と混合することを意味する。従って、フィブリノゲンは主として溶液中に残る。この工程は不連続またはバッチ工程としても知られている。吸着のための条件は、夾雑タンパク質が吸着材料に結合するのに十分な時間および機会を有するように選択すべきである。例えば、混合は、例えば好適な温度で注意して攪拌することにより行うことができる。好適な温度は、例えば2〜30℃である。吸着材料としては、選択された条件下で1種またはそれ以上の夾雑タンパク質を結合でき、かつフィブリノゲンを少量しか、または全く吸着しない任意の材料を採用することが可能である。これらの材料はクロマトグラフィーについて上記したゲル材料を包含し、従ってカチオン交換体、染料ゲルおよび疎水性ゲルのグループに属する。好ましい溶液は、クロマトグラフィーのための好ましい移動層に相当する。結合した夾雑タンパク質を有する吸着材料は、当業者に公知の方法によりフィブリノゲン含有溶液から分離することができる。好ましくは、濾過、遠心および/または沈降の方法を挙げることができる。吸着材料は、好ましくは夾雑物を溶出し、緩衝液を交換することにより再生することができ、従って2回以上使用することができる。吸着材料から溶出したタンパク質は、必要ならば、これらのタンパク質成分を単離するための出発材料として用いることもできる。従って場合によっては、さらなる精製または工程段階によりタンパク質濃縮物を得ることが可能である。このようにして、例えば特にプラスミノゲン、F XII、XIの濃縮物を製造することが可能である。バッチ方式のネガティブ吸着法は、ネガティブクロマトグラフィー法に加えて、またはその代わりに使用できる技術である。
本発明の工程段階は、工程収率を貫流液または上清で≧50%、好ましくは≧70%にすることができる。
もう一つの実施形態において、フィブリノゲンへのプラスミノゲンの結合を弱める物質を本発明方法中に、特に本発明の工程段階中に加える。フィブリノゲンは、例えばプラスミノゲンのような他のタンパク質と結合する傾向を有することが知られている。これは、プラスミノゲンのような夾雑物を繰り返して部分的に共精製することに導く。共精製は結合弱化物質により最小にすることができる。これらの物質は、好ましくは、トラムキサム酸、PAMBA(p−アミノメチル安息香酸)、リシンおよび他のリシン類似体に加えて、ε−アミノカプロン酸のようなε−アミノ酸を包含する。
フィブリノゲンの濃縮および単離は複数の工程段階を通常必要とすることが知られており、これら個々の精製段階の多数の可能な組み合わせがある。従って、本発明方法は、1種またはそれ以上の本発明の工程段階のほかに、フィブリノゲンの精製の従来技術に原則的に見出されうる追加の工程段階を含むことができ、これらは本発明に包含される。フィブリノゲンの精製における技術水準は既に十分に説明されているので、対応して引用した特許および刊行物は本発明に包含される。好ましい工程段階は、フィブリノゲンの大部分が結合し、その欠点である溶出の必要のあるクロマトグラフィーまたは吸着を含まない。
好ましい実施形態において、本発明方法は、精製すべきフィブリノゲン含有溶液に水酸化アルミニウムAl(OH)3を添加する1種またはそれ以上の工程段階を含む。(Al(OH)3)はプロトロンビン複合体の因子を主に吸着し、例えば遠心および/または濾過により除去することができる。
好ましい実施形態において、フィブリノゲンを沈殿させる1種またはそれ以上の工程段階を含む。沈殿のためにグリシンまたのアミノ酸を添加することが好ましい。グリシン濃
度が十分に高いならば、これはフィブリノゲンの直接沈殿(1段階グリシン沈殿)に導く。しかしながら、別のまたは追加の可能性は、実施例にも示すように、フィブリノゲンが上清中に実質的に残り、かつ沈殿したタンパク質が例えば遠心により除去されるように第一段階におけるグリシン濃度を選択し、そして第二段階においてだけグリシン濃度の上昇により主要量のフィブリノゲンを沈殿させることである。上記のように、アミノ酸グリシンの代わりに他のアミノ酸を用いることも可能である。ここではアラニン、グルタミン、グルタミン酸を例としてあげることができる。しかしながら、他の公知の沈殿剤(例えば、塩化ナトリウム、硫酸アンモニウムまたはポリエチレングリコールなど)をこの場合に用いることも可能である。
もう一つの好ましい実施形態において、本方法は、リシンリガンドまたは類似のリガンドを有するゲルによりプラスミノゲンを枯渇させる1種またはそれ以上の工程段階を含む。その例は、Lysine−Sepharose、Lys−Hyper D、Lys−Fracrogel、Aminohexyl−Sepharoseまたはその他であろう。これはプラスミノゲンの有利な枯渇に導き、該枯渇は、液体形態で貯蔵したときのフィブリノゲンの安定性に対して有利な効果をさらに有することがある。加えて、プラスミノゲンの枯渇は、フィブリノゲン濃縮物をフィブリン接着剤として採用する場合にも有利である。
もう一つの好ましい実施形態において、本方法は、潜在的に存在する感染性粒子、例えばウイルスなどを実質的に可能な限り不活性化または枯渇させる1種またはそれ以上の工程段階を含む。フィブリノゲンをヒト血漿から単離する場合には、これは本発明方法の特に好ましい構成要素である。感染性粒子の不活性化または枯渇は、当業者に公知の技術により行うことができ、これらが本発明に包含される。例えば低温殺菌、乾燥状態での加熱、ナノ濾過、化学薬品添加(例えば界面活性剤)、照射またはその組み合わせなどの方法がある。
もう一つの好ましい実施形態において、本方法は、限外濾過および/または透析を包含する1種またはそれ以上の工程段階を含む。これらの方法は、フィブリノゲン含有溶液の緩衝性を変えるため、すなわち該溶液の成分を変えるため、またはタンパク質溶液を濃縮するために有利に採用することができる。これは、貯蔵または医薬調製物としての使用に適する製剤成分を選択するために、精製段階の準備に、または本発明の工程段階の最後に特に好ましい。
限外濾過は、例えばWO 93/17776にも記載されているように、夾雑タンパク質を通過させるがフィブリノゲンを保持するフィルターの選択により夾雑タンパク質を枯渇させる機会をさらに与える。例えば300kDaの分子量限界(カットオフ)を有する好適なフィルターを選択する場合には、本発明の工程中に、フィブリノゲン分解タンパク質も枯渇できることを示すことが可能である。従って、特に好ましい実施形態において、50〜500kDaの分子量限界(カットオフ)を有するフィルターが限外濾過のために使用される。
もう一つの好ましい実施形態において、本方法は滅菌濾過を含む。これは、医薬調製物を製造する工程の最後に価値がある。
好ましい実施形態において、本発明方法を提供するために、複数の上記工程段階を1種またはそれ以上の本発明の工程段階と組み合わせる。さらに、個々の工程段階の順序を変えることができる。例えば沈殿のような個々の工程段階を2回以上適用することが可能である。特に好ましい実施形態において、組み合わせは、1種またはそれ以上の本発明の工程段階のほかに、少なくともAl(OH)3吸着段階、1段階および/または2段階グリ
シン沈殿、および低温殺菌を含む。これらの工程段階は、リシンリガンドを有するアフィニティーカラムと有利に組み合わせられる。精製が終了した後、溶液成分を貯蔵に適する溶液で置き換える。例えば透析、限外濾過などのような可能な方法は当業者に公知であり、これらは本発明に包含される。精製に続いて滅菌濾過することができる。本発明の精製方法は、特に好ましい実施形態において、下記の工程段階からなる:
− 血漿画分の調製
− 水酸化アルミニウム上への吸着
− 例えばウイルスのような感染性粒子の不活性化
− 沈殿
− さらなる精製および/または不活性化段階
− 1種またはそれ以上のネガティブクロマトグラフィー法または1種またはそれ以上のネガティブ吸着法
− 限外濾過および/または透析濾過
− 滅菌濾過
特に好ましい実施形態において、さらなる精製段階は、例えばLys−Sepharoseのようなリシンリガンドを有するアフィニティーカラムを包含する。個々の工程段階の数および順序は変更できる。従って、例えば、1種またはそれ以上のネガティブ吸着またはクロマトグラフィー段階をAl(OH)3吸着の直後に行うことができる。これは、可能なフィブリノゲン分解タンパク質が早期時点で枯渇されるので、精製の後続工程でフィブリノゲンの安定性に対して有害効果をもはや及ぼすことができないという利点を有するであろう。
特に好ましい実施形態を用いる場合には、添加したフィブリン溶解阻害剤を存在させることなく、フィブリノゲンを液体状態で30℃において1ヶ月間貯蔵する際のフィブリノゲンの分解を著しく減少させることができ、すなわちこの貯蔵時間中に著しく少ない低分子量分解フラグメントが生成する。SEC−HPLC分析により、残余のピークと比較した低分子量分解フラグメントの割合の増加は、リジンリガンドを有するアフィニティーカラムを使用する特に好ましい実施形態の使用の場合に、2.5%未満、特に1.5%〜2%未満であることを示すことができる。従って、本発明はまた、液体状態で30℃において1ヶ月間貯蔵した後にSEC−HPLCにより測定して、2.5%〜3%未満のフィブリノゲン分解フラグメントを示すか、または全ピーク面積に対して約1.5%〜2.5%未満しか分解フラグメントが増加しないようなフィブリノゲン濃縮物またはフィブリノゲンを含有する対応する医薬調製物に関する。
本発明はさらに、本発明方法により精製されたフィブリノゲンに関する。こうして得られたフィブリノゲンまたは相当する医薬調製物は、好ましくはD280-320当り≦0.2ngのF XIおよび/またはOD280-320当り≦20ngのF XIIおよび/またはOD280-320当り≦0.02ng、好ましくはD280-320当り≦0.01ngのt−PAだけを含む。
ネガティブクロマトグラフィー法またはネガティブ吸着法によりフィブリノゲンを精製するための本発明の工程段階中に染料カラム、カチオン交換体または疎水性ゲルに結合した夾雑タンパク質は、これらのタンパク質成分を単離するための出発材料として用いることができる。対応するタンパク質濃縮物は、対応するゲル材料からのタンパク質の溶出、および場合によっては、さらなる精製または工程段階により得ることができる。このようにして、例えばプラスミノゲン、t−PA、F XIIまたはF XIの濃縮物を製造することが可能である。従って、本発明は、1種またはそれ以上の血漿タンパク質を結合し、選択された条件下でフィブリノゲンを結合せず、そしてカチオン交換クロマトグラフィー、疎水性相互作用クロマトグラフィーまたは染料カラム上でのアフィニティークロマトグラフィーに適するゲル材料を用いる1種またはそれ以上のタンパク質の単離方法、および対応する医薬調製物の製造方法に関する。
本発明はさらに、本発明方法により精製されたフィブリノゲンを含む医薬調製物の製造に関する。可能な医薬調製物は当業者に公知であり、そして添加物は予定する使用に依存する。当業者に公知の製剤成分およびフィブリノゲンの静脈内投与に適する製剤成分は、フィブリン接着剤として使用するためのものとは異なるだろう。中間貯蔵が凍結乾燥物として、液体状態または凍結状態で予定される場合には、特定の添加物についても考慮しなければならない。タンパク質のために公知の凍結乾燥助剤は、例えば、スクロース、マンノース、ガラクトースおよびグルコースのような糖類、例えばマンニトールもしくはソルビトールのような糖アルコール、またはアミノ酸である。該貯蔵形態のための可能な製剤成分は、1価金属塩(例えば、塩化ナトリウムまたはカリウム)、2価金属塩(例えば、塩化マグネシウムまたはカルシウム)、アミノ酸(例えば、グリシン、アルギニン、アスパラギン酸、グルタミン酸、ヒスチジン、リシン、イソロイシン)、炭水化物(例えば、グルコース、スクロース、トレハロース、ラクトース、セルロース、ソルビトール、マンニトールおよびグリコサミノグリカン)、界面活性剤(例えば、ポリオキサマーまたはポリソルベート)、カオトロピック剤(例えば、尿素およびグアニジンまたはその誘導体)、例えばアプロチニン、アルファ−2−アンチプラスミン、アルファ−2−マクログロブリン、アルファ−1−アンチプラスミン、C1−インヒビター、アンチトロンビン、プラスミノゲンアクチベーターインヒビター(PAI)、トロンビン活性化線溶抑制因子(TAFI)のような阻害剤、およびε−アミノカプロン酸のようなリシン類似体、血漿タンパク質(例えば、F XIII)、抗酸化剤(例えば、アスコルビン酸)、緩衝物質(例えば、アルギニンのようなアミノ酸、クエン酸塩、リン酸塩、酢酸塩、コハク酸塩、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン(トリス)、グリシルグリシン、炭酸塩、重炭酸塩のような緩衝系)、またはその混合物である。pHは好ましくは約5〜約8である。
例えば下記の添加物は、フィブリノゲン溶液を液体フィブリン接着剤の成分として製造するために適する:NaCl(0〜400mM)、クエン酸Na3(0〜50mM)、L−Arg×HCl(0.1〜1M)、CaCl2(0〜10mM)、および場合によっては、アミノ酸、炭水化物および界面活性剤のような他の安定剤。
本発明はさらに、本発明の1種またはそれ以上の工程段階を含む本発明方法により精製されたフィブリノゲンを含む医薬調製物の使用に関する。可能な用途は当業者に公知であり、そして本発明方法により製造されたフィブリノゲンは、フィブリノゲンの全ての公知用途に採用することができる。医療的使用は、好ましくはヒトに関するが、獣医学における使用も包含される。本発明のフィブリノゲン調製物は、フィブリノゲン欠乏状態の治療に一般的に適する。これらの欠乏状態は、広範囲の傷、重症出血、広範囲の火傷、薬剤投与または重症肝臓障害(例えば、肝臓実質損傷のために損なわれた合成を伴う)による凝固の病理学的活性化(消費性凝固障害、DIC(播種性血管内凝固)とも呼ばれる)に関連して起きることがある。上記の後天性低フィブリノゲン血症(血中フィブリノゲンの減少)および無フィブリノゲン血症(血中フィブリノゲンの不存在または大きな減小)のほかに、肝臓でのフィブリノゲン合成の不存在または大きな減小により生じることのある先天性無フィブリノゲン血症または低フィブリノゲン血症の稀なケースもある。
低フィブリノゲン血症および無フィブリノゲン血症に対しては、相当するフィブリノゲン欠乏状態を補うために、本発明のフィブリノゲン調製物は患者に好ましくは静脈内注射される。用量は、生じている欠乏のレベルにより決定される。
フィブリノゲンは、いわゆるフィブリン接着剤の重要成分としてフィブリン療法において大きな重要性を有する。安定化されたフィブリンは、フィブリノゲンとトロンビンおよ
び助剤、例えばカルシウムおよびF XIIIとを組み合わせて形成されるので、フィブリン接着剤は血液凝固の最終段階を促進する。
医学において十分周知であるフィブリン接着剤の広範な可能な使用がある(例えば、Sierra, Journal of Biochemicals Application 7 (1993) 309-352; Martinowitz & Spotnitz, Thrombosis and Haematasis 78 (1997) 661-666; Radosevich ら, Vox Sanguinis 72 (1997) 133-143 参照)。重要なものとしては、止血、傷の閉鎖、縫合の密封および創傷の治癒が挙げられる。局所手術内止血は、実質性器官、および心臓血管の専門分野において重要である。肝臓または脾臓の傷害後の重度の出血でさえも、このようにして止めることができる。フィブリン接着剤は皮膚の創傷(皮膚移植を包含する)の閉鎖および固定、ならびに縫合(例えば、十二指腸断端上)の密封のためにも採用される。例としては、プラスチック硬膜代用品の密封および空洞の密封における使用、ならびに硬膜浸出液の一時的軽減処置のために胸膜を接着するための使用を挙げることができる。フィブリン接着剤は、骨、軟骨および腱のような結合組織の接着にも有利に使用することができる。トラネキサム酸のような物質が神経毒性であることが証明されているので、合成フィブリン溶解阻害剤を含まないフィブリノゲン成分は、例えば硬膜密封のための用途において特に、その利点を有する(文献: M.G. Schlag, R. Hopf, U. Zifko および H. Redl; Acta Neurochir 144: 63-69 (2002))。しかしながら、フィブリン接着剤は、術後癒着の防止にも用いられる。
フィブリノゲンは、フィブリンマトリックスを製造するための成分としても使用することができる。このような担体材料は、例えば成長因子(例えば、骨誘導タンパク質と一緒に骨および/または軟骨再生のためのマトリックスとして)、抗生物質、細胞増殖抑制剤、抗炎症性添加物および/または創傷の治癒を促進する添加物のような活性物質を緩徐に放出するためにも使用することができる。この担体は、フィブリンと他の材料との混合物からなっていてもよい。
フィブリンマトリックスは、バイオテクノロジーにおいて、例えば組織工学(tissue engineering)における細胞および組織のための支持体材料および培養基として、または例えばバイオセンサーのようなインプラントを包むためのような広範囲の可能な用途を有する。
本発明のフィブリノゲンは、診断助剤の成分としても使用することができる。
本発明を以下の実施例によりさらに説明するが、該実施例は限定的な効果を有することを意図するものではない。
〔実施例1〕
この実施例は、カチオン交換体材料および疎水性ゲルおよび染料ゲルが、フィブリノゲン含有溶液をネガティブクロマトグラフィー法により、フィブリノゲン安定性が出発材料と比較して増大するように精製できることを示す。
フィブリノゲン出発材料は、EP 0 103 196に記載されたように低温殺菌フィブリノゲン濃縮物を生成し、そしてグリシンの添加により分画沈殿させることによって調製した。
富フィブリノゲン沈殿を最初に好適な水性溶剤(50mM NaCl;20mMクエン酸三ナトリウム水和物、0.05%NaN3 pH7.3)に溶解し、ネガティブクロマトグラフィー法を用いるさらなる沈殿段階のための出発材料として用いた。
この精製段階に用いるクロマトグラフィーカラム(φ0.7cm)に、1.0mlの個々のゲル材料をそれぞれ充填した。個々のゲル材料に応じて、カラムを緩衝液1〜3の一つで平衡化した。
緩衝液1: 50mM NaCl、50mMリン酸ナトリウムpH7.4、カチオン交換体および比較カラムのため
緩衝液2: 100mM NaCl、50mMリン酸ナトリウムpH6.5、疎水性ゲルのため
緩衝液3: 50mMリン酸ナトリウムpH、pH7.4、染料ゲルのため
30〜40mlのフィブリノゲン含有溶液を適切な緩衝液(1〜3)(表1参照)に対して透析し、適切な緩衝液でOD280-320が10になるまで希釈した。15mlのこのフィブリノゲン溶液を各カラムに負荷し、カラムを1.0mlの個々の緩衝液(1〜3)でそれぞれ洗浄した。カラム貫流液および洗浄溶液を一緒にした。最初に、出発材料と比較した収率(%単位)を測定するために光学濃度を光度計により280および320nmで測定した(OD280-320)。この材料のアリコートを保留し、後続の貯蔵試験の分析のために0値を決定した。個々の洗浄溶液と一緒にしたカラム貫流液、および出発材料を、100mM NaCl、20mMクエン酸Na3、5% L−Arg pH7.2を含む緩衝液に対して透析し、その1ml部分をナトリウムアジド(最終濃度0.05%)と混合した。別に精製したこれらのフィブリノゲン調製物および対照としての出発材料を、+30℃で貯蔵時間3ヶ月まで貯蔵した。フィブリノゲンの安定性を各場合に適切な貯蔵期間後にSEC−HPLCにより測定した。これは、存在するタンパク質および分解産物をそれらの分子量により分画するサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)を伴う。フィブリノゲンのタンパク質分解から生じた低分子量フラグメントは、新しいピーク(フラグメントピーク4)、および場合によっては増大した保持時間を有するさらなる新しいピークとして出現する。フラグメントピーク(≦ピーク4)の面積を測定し、全ピークのパーセンテージとして計算した。この値を貯蔵開始前(0値)の小部分に関して補正し、こうして求めた値を結果として表1に示す。それらは、加速条件下での貯蔵中の分解フラグメントの増加を反映する。
分析は、SECカラム(TOSO HAAS からのTSK gel G 4000SWXL、7.5×300mm)を備えた適切なHPLC装置を用いて行った。タンパク質およびタンパク質フラグメントを、適切な貯蔵時間後に20〜25℃の好適な流通緩衝液(running buffer)中で0.5ml/分の流速で分画した。タンパク質およびタンパク質フラグメントピークを280nmで検出した。
図1は、例として、SEC HPLCを用いた典型的なフィブリノゲンの分離をもたらす。それは、Lysine−SepharoseクロマトグラフィーおよびネガティブHICにより精製したフィブリノゲン含有溶液の貯蔵開始前(t=0、ゼロ値、図1a)、および30℃で2ヶ月間貯蔵後(t=2ヶ月、図1b)の分画を示す。
これに対し、図1cは、ネガティブHICにより追加精製しなかったフィブリノゲン含有溶液の30℃で2ヶ月間貯蔵後(t=2ヶ月)の分画を示す。このフィブリン含有溶液のゼロ値(t=0)は図1aと同様の分離結果を示すので示されていない。
約15〜16分の保持時間の主ピークはフィブリノゲンに相当する。約24分の保持時間を有するピーク、およびより長い保持時間を有するピークは、フィブリノゲン分解フラグメントである。図1bから、30℃で2ヶ月間貯蔵後の分解フラグメントに相当するピーク下の面積は、疎水性ゲルの使用によって、同様に30℃で2ヶ月間貯蔵したがHIC精製を行わなかった対照材料(図1c)と比較して、明確に減少することを示す。分解フラグメントピークの出現がより少ないことは、ネガティブHICによる精製後のフィブリノゲン安定性がより大きいことの証拠と考えるべきである。
Figure 2005239719
Figure 2005239719
表1は、保持時間の増加を伴う分解フラグメントの割合の増加が、上記ゲル材料の一つを用いたフィブリノゲンの精製後に、対照(出発材料)よりも明確に少ないことを示す。これにより実証された、対照(ネガティブクロマトグラフィー前の出発材料)と比較して増大したフィブリノゲン安定性は、1ヵ月後すでに認められることが明らかであるが、その後はより長い貯蔵時間につれてさらに増大した。ある場合は、カラム材料の種々の質を、より長い3ヶ月間の貯蔵時間後に区別することも可能であるが、その傾向は2ヵ月後すでにみられていた。技術水準で公知のプラスミノゲンを枯渇させるLysine−Sepharose 4Bを用いたアフィニティークロマトグラフィーと比較してさえ改善を達成することができた。通常約70%を超える極めて良好な収率結果も、全体を通して達成された。この実施例が、多数の異なるカチオン交換体、疎水性ゲルおよび染料ゲルを用いて、フィブリノゲンの実質的な安定化、従って分解フラグメントの減少の達成が可能であることを明らかにしたので、上記クロマトグラフィー分離原理の群からの支持体材料を用いて、改善された安定性結果を達成できると予想することができる。
〔実施例2〕
この実施例では、他の青色染料ゲルを試験し、加えて、実施例1で用いたカチオン交換体Fragtogel EMD SO3 -650(M)および疎水性ゲルのphenyl Sepharose HPのための移動相の条件を変更した。改善されたフィブリノゲン安定性は、貯蔵試験中の分解フラグメントの形成の減少によって再び確認された。フィブリノゲン分解タンパク質またはその不活性前駆体(プロ酵素)が枯渇されるかどうかについて、追加の検査を行った。
用いた出発材料は、実施例1の類似の精製に加えて、好適な水性溶剤(50mM NaCl;20mMクエン酸三ナトリウム、0.05%NaN3 pH7.4、表4の緩衝液SM)中に回収した後、好ましくは該溶剤に対して透析した後に、Lysine−Sepharose上でも精製したフィブリノゲンであった。
用いたクロマトグラフィーカラム(Quiagen からのカラム本体φ=0.7cm、h=2.5cm)に、1.0mlの個々のゲル材料をそれぞれ充填した。ゲル材料を適切な緩衝液で平衡化した。
平衡化緩衝液:
1a: 50 mM NaCl, 20 mM クエン酸Na3, 0.05% NaN3 pH 7.5
1b: 50 mM NaCl, 20 mM クエンNa3酸, 0.05% NaN3 pH 6.5
2a: 50 mM NaCl, 20 mM クエン酸Na3, 0.05% NaN3 pH 6.5
2b: 50 mM NaCl, 20 mM クエン酸Na3, 0.05% NaN3 pH 7.0
2c: 50 mM NaCl, 20 mM クエン酸Na3, 0.05% NaN3 pH 7.5
2f: 150 mM NaCl, 20 mM クエン酸Na3, 0.05% NaN3 pH 7.5
3a: 50 mM NaCl, 20 mM クエン酸Na3, 0.05% NaN3 pH 6.5
3b: 50 mM NaCl, 20 mM クエン酸Na3, 0.05% NaN3 pH 7.5
3c: 500 mM NaCl, 20 mM クエン酸Na3, 0.05% NaN3 pH 7.5
3d: 1000 mM NaCl, 20 mM クエン酸Na3, 0.05% NaN3 pH 7.5
フィブリノゲン含有負荷溶液は、場合によってはNaClの添加およびpHの調節により上記の緩衝条件に近似させ、そして自由滴下速度で1mlのゲル当り150または300OD280-320のタンパク質量に相当する溶液体積に近似させた(表2参照)。カラムを各場合に適切な緩衝液で洗浄した。洗浄溶液を個々の貫流液と一緒にし、50mM NaCl、20mMクエン酸Na3、0.05%NaN3 pH7.4に対して4℃で一夜透析した。貯蔵は30℃において種々の長さの貯蔵時間で行った。
SEC−HPLCによる分析は、実施例1に記載したように行った。
加えて、プラスミノゲン、XI因子およびXII因子の量をELISA測定により測定した。サンドイッチELISAにおいて、初めにプラスミノゲンをマイクロタイタープレート上の捕獲抗体として固定化したウサギポリクローナル抗体(Dade Behring からのIgG)に結合させた。検出は、同じポリクローナル抗体であるがペルオキシダーゼで標識したものにより行った。Kordia Life Sciences(オランダ)からのF XII ELISAキットを用い製造業者の情報に従って、F XIIを測定した。同様に、Kordia Life Sciences(オランダ)からのF XI ELISAキットを用い製造業者の情報に従って、F XIを測定した。枯渇率(DF)は、出発材料中でOD280-320当り測定されたタンパク質(例えば、プラスミノゲン、F XIまたはF XII)の量と、個々のネガティブクロマトグラフィー後のフィブリノゲン含有溶液中でOD280-320当り測定されたタンパク質の量との比である。
結果を表2に示す。
Figure 2005239719
表2から明らかなように、他の試験した青色染料ゲルの使用も、分解フラグメントの出現の減少の達成、すなわちフィブリノゲン安定性の増大の達成のために好適であった。同時に、例として、ネガティブクロマトグラフィー法による分離パラメーターを適切に選択して、プラスミノゲン、F XIおよびF XIIを −異なる程度で− 枯渇できることが実証された。
予想されたように、カチオン交換体(Fractogel EMD SO3 -650)は移動相(緩衝液成分)への依存性を示す。移動相のpHが約6.5〜7.5である場合には、プラスミノゲンおよびF XIIの良好な枯渇を実証することができた。分離のpHが上昇すると、液体状態で貯蔵したときのフィブリノゲン安定性は低下するが、出発材料よりも依然として明らかに良好であった。他方において、低いpH値では、フィブリノゲ
ンと官能基との相互作用が増加し、そしてカラム材料上に部分的に吸着されるためにフィブリノゲンの収率が低下するので、カチオン交換体Fractogel EMD SO3 -650(M)の場合の移動相のための最良条件は、約7.0のpH範囲にあった。塩濃度の同時上昇はフィブリノゲンの収率を改善するが、安定性は同時に幾分低下した。従って、Fractogel EMD SO3 -650(M)の場合には、塩濃度は好ましくは約50mM NaClの範囲に留まり、そして例えば1mlのゲル当り負荷される量を増加すると収率が改善するであろう。同様に、他のカチオン交換体のための移動相の最適組成を試験することも可能である。
疎水性ゲルはまた、移動相への、特に緩衝液の塩濃度への依存性を示した。例えばphenyl Sepharose HPを用いて、プラスミノゲンの枯渇およびフィブリノゲン安定性の上昇を広範囲のNaClにわたって良好なフィブリノゲン収率で達成することが可能であった。選択された条件の全ては出発材料と比較して上昇した安定性に導くので、原則として複数の条件を有利に用いることができる。他の疎水性ゲルおよび/または他の緩衝液条件を同様の方法で最適化することができる。
さらに、この実施例における異なるゲルは、異なる程度でプラスミノゲン、F XIIおよびF XIの枯渇に寄与する。特に効果的なF XIIの枯渇は、例えば青色染料ゲルBlue Hyper DおよびBlue Trisacryl Plus LS、Blue Sepharose 6FF、またはFractogel EMD SO3 -650(M)のようなカチオン交換体によって達成可能であった。
〔実施例3〕
この実施例では、他の染料、カチオン交換体および疎水性ゲル、ならびにネガティブクロマトグラフィー法のための条件を試験した。
出発材料は実施例2に記載したのと同じ精製スキームにより得た。カラムを、既に実施例2に記載したように下記の詳細な個々の緩衝液で平衡化した。
1: 50 mM NaCl, 20 mM クエン酸Na3, 0.05% NaN3 pH 7.5
2: 50 mM NaCl, 20 mM クエン酸Na3, 0.05% NaN3 pH 7.0
3a: 1000 mM NaCl, 20 mM クエン酸Na3, 0.05% NaN3 pH 7.5
3b: 2000 mM NaCl, 20 mM クエン酸Na3, 0.05% NaN3 pH 7.5
出発材料を適切な緩衝液に対して透析した。クロマトグラフィーカラムに、各場合に自由滴下速度で1mlのゲル当り150または300OD280-320(15mlまたは30mlと同等)を負荷した。カラム貫流液の最初の0.5mlを捨てた。このカラムを1mlのそれぞれの緩衝液で洗浄した。この洗浄溶液をそれぞれの貫流液と一緒にし、50mM
NaCl、20mMクエン酸Na3、0.05%NaN3 pH7.4に対して4℃で一夜透析した。貯蔵は、30℃において2ヶ月間の貯蔵時間で行った。
SEC−HPLCによる分析を実施例1に記載したように行い、そしてプラスミノゲン、F XIIおよびF XIの枯渇率(DF)測定を実施例2に記載したように行った。
Figure 2005239719
表3は、他の試験した青色染料ゲルの使用も、分解フラグメントの出現の減少のために適することを示す。
〔実施例4〕
実施例1〜3で好適であることが判明したいくつかのゲル材料を、大規模でのそれらの有用性について試験した。このために、約500mlのゲル体積を有するクロマトグラフィーカラムを用い、フィブリノゲン含有溶液をポンプでカラムに通した。
フィブリノゲン含有溶液は、低温殺菌フィブリノゲン溶液である限り、EP 0 103 196によるクリオプレシピテートを仕上げ処理することによって得た。
低温殺菌したフィブリノゲン溶液を3倍体積の希釈溶液(水中の3.5g/l NaCl;5.88g/lクエン酸三ナトリウム二水和物、pH7.5)と混合した。1リットルの希釈溶液当り90gのグリシンを攪拌しながら加えた。得られた沈殿を遠心または濾過により除去し、捨てた。
上清を、場合により固体L−Lys×HClまたはEACAの添加により200mM L−Lys×HClまたはEACAにした。1リットル当りさらに75gのグリシンを加えた。富フィブリノゲン沈殿を遠心により得て、さらに処理するまで−25℃で貯蔵した。
さらに精製および痕跡量のプラスミノゲンを枯渇させるために、富フィブリノゲン沈殿を溶解し、そして好ましくは緩衝液(20mMクエン酸三ナトリウム、50mM NaC
l pH7.4、場合により0.05% NaN3を保存剤として含む)に対して透析し、リガンドとしてL−リジル基を有するマトリックスを充填したクロマトグラフィーカラムにポンプで通した。貫流液を後続段階にさらに用いた。
フィブリノゲンの安定性に影響を与える他の夾雑物を除去するために、フィブリノゲン含有溶液を種々の第二クロマトグラフィーカラムにポンプで通し、場合によっては緩衝液組成を予め変更した:
A: フィブリノゲン含有溶液を、誘導体化したアントラキノン染料(例えば、Prometic からの青色アガロースなど)をリガンドとして担持するマトリックスを有する青色染料ゲルを充填したカラム(φ6cm、体積約735ml)に直接ポンプで通し、貫流液を集めた。このカラムを1カラム体積(CV)の緩衝液(20mMクエン酸三ナトリウム、50mM NaCl pH7.4、場合により0.05% NaN3を保存剤として含む)で洗浄した。
B: フィブリノゲン含有溶液を0.1M HClの添加によりpH6.7に調節し、リガンドとしてSO3 -基を有するマトリックス(Fractogel EMD SO3 -650(M))を充填したカラム(φ6cm、体積約500mlまたはφ6cm、体積約147ml)にポンプで通した。貫流液を集めた。このカラムを1CVの緩衝液(20mMクエン酸三ナトリウム、50mM NaCl pH6.5、場合により0.05% NaN3を保存剤として含む)で洗浄した。
C: フィブリノゲン含有溶液を結晶質NaClの添加により1M NaClの最終濃度に調節し、リガンドとしてフェニル基を有する疎水性マトリックス(phenyl−Sepharose HP)を充填したカラム(φ6cm、体積約500ml)にポンプで通し、貫流液を集めた。このカラムを1CVの緩衝液(20mMクエン酸三ナトリウム、1M NaCl pH7.4、場合により0.05% NaN3を保存剤として含む)で洗浄した。
D: フィブリノゲン含有溶液を結晶性NaClの添加により1M NaClの最終濃度に調節し、リガンドとしてブチル基を有する疎水性マトリックス(Macro Prep t Butyl HIC樹脂)を充填したカラム(φ7cm、体積約577ml)にポンプで通し、貫流液を集めた。このカラムを1CVの緩衝液(20mMクエン酸三ナトリウム二水和物、1M NaCl pH7.4、場合により0.05% NaN3を保存剤として含む)で洗浄した。
フィブリノゲン含有貫流液をそれぞれの洗浄溶液と一緒にし、そして初めに、使用に応じて好適な限外濾過工程により、OD280-320=約2〜200、好ましくは約20〜160のタンパク質濃度にし、続いて次の成分:NaCl、クエン酸Na3×2H2O、L−Arg×HCl、場合によりCaCl2を含む溶液に対して透析することにより、フィブリノゲン調製物を製造した。
最後の濃縮および滅菌濾過によりフィブリノゲン調製物を得て、これらをSEC−HPLC(実施例1参照)により30℃で1ヶ月間貯蔵した後のフィブリノゲン分解フラグメントの含有量について試験した(表4参照)。
Figure 2005239719
これらの結果は、ネガティブクロマトグラフィー法の使用により大規模でも1ヶ月間の加速貯蔵後に生成した分解フラグメント(δ(≦ピーク4))の差を2%未満に減少することが可能であること、従って30℃で貯蔵したときのフィブリノゲンの安定性が明確に上昇することを示す。
〔実施例5〕
この実施例では、バッチ方式で染料ゲルおよび疎水性ゲルを用いる二つのネガティブ吸着法を組み合わせた。
フィブリノゲン含有溶液は、EP 0 103 196に記載されたように出発材料としてのクリオプレシピテートをAl(OH)3で2回吸着することにより得た。
特にフィブリノゲン分解タンパク質のような夾雑タンパク質を、バッチ方式でさらなる吸着を行うことにより減少/除去した。このために用いたゲル材料は、誘導体化したアントラキノン染料をリガンドとして有するBlue Sepharose 6FFであった。10gのフィブリノゲン含有溶液当り0.5gのフィルター−湿潤ゲルを加えた。(後続の攪拌時間:90分)。次いで染料ゲルを遠心により除去した(25℃および1500gで20分)。
フィブリノゲン含有上清をさらなるネガティブ吸着法に付した。このためにphenyl−Sepharose HPを用いた。このゲルは同様に10gのフィブリノゲン含有溶液当り0.5gの比で採用した。吸着に続いて、結合した夾雑タンパク質を有するゲル材料を遠心により除去した。
後続の低温殺菌およびグリシン沈殿をEP 0 103 196により行ったが、例外は沈殿を200mM リシルの存在下に行ったことであった。
さらなる精製およびプラスミノゲンの除去のために、富フィブリノゲン沈殿を初めに好
適な水性溶剤に溶解し、濾過し、そして好ましくは緩衝液(20mMクエン酸三ナトリウム二水和物、50mM NaCl pH7.4、場合により0.05% NaN3を保存剤として含む)に対して透析し、かつ約10の光学濃度に調節した後に、リガンドとしてL−リシル基を有するゲル材料を充填したクロマトグラフィーカラムにポンプで通した。
フィブリノゲン含有溶液を、初めに、使用に応じて好適な限外濾過工程により、OD280-320=約2〜200、好ましくは約20〜160のタンパク質濃度にし、続いて実施例4で述べた製剤成分を含む溶液に対して透析することにより、フィブリノゲン調製物を製造した。
滅菌濾過によりフィブリノゲン調製物を得て、これらをSEC−HPLCで実施例1により安定性について試験した。これは、ピーク4およびより小さいピークに基づいて測定して、30℃で1ヶ月間貯蔵した後およびゼロ値を減じた後に、<1.0%の分解フラグメントの割合を明らかにした。この割合は、相当する対照仕上げ処理よりも明らかに小さい。
この実施例により、溶液中でのフィブリノゲンの最大安定性を達成するために、バッチ方式でのネガティブ吸着法も使用できることを示すことが可能であった。さらに、複数のネガティブ吸着法の組み合わが可能であることが示された。さらに、ネガティブ吸着法および/またはネガティブクロマトグラフィー法による工程段階をフィブリノゲンの精製工程において、種々の点で合理的に統合可能であることが明らかである。従ってこの実施例では、前の実施例とは対照的に、ネガティブ吸着法を精製工程において極めて早期に、水酸化アルミニウム処理の直後に用いている。その後にのみ、低温殺菌、グリシンによる沈殿、およびLysine−Sepharoseによるさらなるプラスミノゲンの除去を行う。
〔実施例6〕
この実施例では、好適な孔径の選択による限外濾過によって、フィブリノゲン分解タンパク質をどの程度まで枯渇できるかを調べた。
フィブリノゲン含有溶液は、低温殺菌沈殿の調製を含めてそこまで実施例1に従って進めることによって得た。
さらなる精製およびフィブリノゲン分解タンパク質の枯渇のために、富フィブリノゲン沈殿を初めに好適な水性溶剤に溶解し、そして300kDaのカットオフを有する透析膜を用いて緩衝液(20mMクエン酸三ナトリウム二水和物、50mM NaCl pH7.4、場合により0.05% NaN3を保存剤として含む)に対して徹底的な透析濾過を行った。
リガンドとしてL−リシル基を有するゲル材料を充填したクロマトグラフィーカラムに溶液をポンプで通すことにより、プラスミノゲンを除去した。
フィブリノゲン含有溶液を、初めに、使用に応じて好適な限外濾過工程および膜(カットオフ=300kDa)により、OD280-320=約2〜200、好ましくは約20〜160のタンパク質濃度にし、続いて好適な製剤成分を含む溶液に対して透析することにより、フィブリノゲン調製物を製造した。
最後の濃縮および滅菌濾過によりフィブリノゲン調製物を得て、これらをSEC−HPLC(実施例1参照)により貯蔵する前および30℃で1ヶ月間貯蔵した後のフィブリノゲン分解フラグメントの含有量について試験した。これは、ゼロ値を減じた後に、従来の限外濾過による対照と比較して減少した分解フラグメントの割合を明らかにした。
従って、300kDaのカットオフでの限外濾過により、さらなるフィブリノゲン分解タンパク質を枯渇でき、かつより安定なフィブリノゲン濃縮物を製造できることを示すことが可能であった。
〔実施例7〕
実施例1に記載したようにフィブリノゲン沈殿を調製し、Lys−Sepharose上でのネガティブクロマトグラフィー法によりさらに精製した。1リットルのフィブリノゲン溶液当り1モルの塩化ナトリウムにした後、butyl−Sepharoseを充填したクロマトグラフィーカラム上に該溶液を負荷した。カラムの貫流液を濃縮し、透析し、t−PA、プラスミノゲンおよびF XIの含有量について試験した。比較の仕上げ処理を対照として行ったが、butyl−Sepharose上でのネガティブクロマトグラフィー法は行わなかった。結果として、追加のHClがt−PA、プラスミノゲンおよびF XIの濃度を明確に減少すること、および30℃で貯蔵した後に安定性が上昇することを示すことが可能であった(HICを行った場合に、30℃で1ヵ月後のフィブリノゲンフラグメントの割合は約20%未満であった)。
Figure 2005239719
〔実施例8〕
実施例1に記載したようにフィブリノゲン沈殿を調製し、Lys−Sepharose上でのネガティブクロマトグラフィー法により精製した。さらにHICおよび/またはカチオン交換体により精製を行った。フィブリノゲン溶液を透析濾過および限外濾過により下記の製剤緩衝液中に移し、滅菌濾過後に30℃での加速貯蔵に付した:
1. 20 mM クエン酸Na3, 100 mM NaCl, 50 g/l L-Arg × HCl pH 7.2
2. 20 mM クエン酸Na3, 100 mM NaCl, 70 g/l L-Arg × HCl pH 7.2
3. 20 mM クエン酸Na3, 100 mM NaCl, 100g/l L-Arg × HCl pH 7.2
4. 20 mM クエン酸Na3, 100 mM NaCl, 50 g/l L-Arg × HCl, 2.5 mM CaCl2 pH 7.2
5. 20 mM クエン酸Na3, 100 mM NaCl, 70 g/l L-Arg × HCl, 2.5 mM CaCl2 pH 7.2
6. 20 mM クエン酸Na3, 100 mM NaCl, 100g/l L-Arg × HCl, 2.5 mM CaCl2 pH 7.2
7. 4 mM クエン酸Na3, 100 mM NaCl, 50 g/l L-Arg × HCl, 0.5 mM CaCl2 pH 7.2
8. 12 mM クエン酸Na3, 100 mM NaCl, 50 g/l L-Arg × HCl, 1.5 mM CaCl2 pH 7.2
9. 20 mM クエン酸Na3, 100 mM NaCl, 50 g/l L-Arg × HCl, 2.5 mM CaCl2 pH 7.2
10. 20 mM クエン酸Na3, 200 mM NaCl, 50 g/l L-Arg × HCl, 2.5 mM CaCl2 pH 7.2
11. 20 mM クエン酸Na3, 100 mM NaCl, 70 g/l L-Arg × HCl, 2.5 mM CaCl2 pH 6.8
12. 20 mM クエン酸Na3, 100 mM NaCl, 60 g/l L-Arg × HCl, 1% L-His, 2.5 mM CaCl2 pH 7.2
13. 20 mM クエン酸Na3, 100 mM NaCl, 60 g/l L-Arg × HCl, 2% L-His, 2.5 mM CaCl2 pH 7.2
14. 4 mM クエン酸Na3, 100 mM NaCl, 60 g/l L-Arg × HCl, 0.5 mM CaCl2 pH 7.2
15. 20 mM クエン酸Na3, 100 mM NaCl, 60 g/l L-Arg × HCl, 30 mM アミノ安息香酸,
2.5 mM CaCl2 pH 7.2
16. 4 mM クエン酸Na3, 100 mM NaCl, 60 g/l L-Arg × HCl pH 7.2
17. 4 mM クエン酸Na3, 100 mM NaCl, 60 g/l L-Arg × HCl, 2% L-His pH 7.2
18. 4 mM クエン酸Na3, 100 mM NaCl, 60 g/l L-Arg × HCl, 2% L-His pH 6.4
19. 4 mM クエン酸Na3, 100 mM NaCl, 60 g/l L-Arg × HCl, 2% L-His, 0.5 mM CaCl2 pH 7.2
20. 4 mM クエン酸Na3, 100 mM NaCl, 60 g/l L-Arg × HCl, 2.5 mM CaCl2 pH 7.2
上記の製剤は極めて安定であり、フラグメント形成は極めて小さい程度でしか観察されなかった(30℃で1ヶ月間の貯蔵中に2%未満のフラグメント(δ(≦ピーク4)が生成する)。これらの溶液は、液体状態で貯蔵でき、かつ2種またはそれ以上の成分からなるフィブリン接着剤の成分として役立てるのに適する。
貯蔵する前に、ネガティブクロマトグラフィー方式での疎水性相互作用クロマトグラフィーによりさらに精製したフィブリノゲン含有溶液。 30℃で2ヶ月間貯蔵した後に、ネガティブクロマトグラフィー方式での疎水性相互作用クロマトグラフィーによりさらに精製したフィブリノゲン含有溶液。 30℃で2ヶ月間貯蔵した後に、ネガティブクロマトグラフィー方式での疎水性相互作用クロマトグラフィーによるさらなる精製はしなかったフィブリノゲン含有溶液。

Claims (26)

  1. カチオン交換体、疎水性ゲルおよび/または染料ゲルを用いる1種またはそれ以上のネガティブクロマトグラフィー法および/または1種またはそれ以上のネガティブ吸着法により1種またはそれ以上の夾雑タンパク質を枯渇させる1種またはそれ以上の工程段階を含む、フィブリノゲン含有溶液の精製方法。
  2. スルホメチル基(S型)、スルホプロピル基(SP型)、カルボキシメチル基(CM型)または他の好適な負荷電官能基をカチオン交換体の官能基として使用する、請求項1に記載の方法。
  3. 疎水性ゲルが官能基としてアルキル基を含む、請求項1に記載の方法。
  4. 疎水性ゲルが官能基としてフェニル基または誘導体化フェニル基を含む、請求項1に記載の方法。
  5. 疎水性ゲルが官能基としてプロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシルまたはオクチル基を含む、請求項3に記載の方法。
  6. 青色染料ゲルを染料ゲルとして使用する、請求項1に記載の方法。
  7. 赤色または緑色染料ゲルを染料ゲルとして使用する、請求項1に記載の方法。
  8. 染料ゲルが、Blue Hyper D、Mimetic Blue Agarose、Mimetic Blue SA P6XL、Mimetic Blue 1 P6XL、Blue Trisacryl Plus LS、Blue Uniflow、Blue Sepharose 6FF、Blue Sepharose CL 6B、Red Sepharose CL 6B、Fractogel TSK AF Greenおよび/またはMatrex gel Green Aである、請求項1、6または7の何れかに記載の方法。
  9. ネガティブクロマトグラフィー法および/またはネガティブ吸着法を5.5〜9のpHで行う、請求項1〜8の何れかに記載の方法。
  10. ネガティブクロマトグラフィー法の貫流液中またはネガティブ吸着法の上清中のフィブリノゲンの収率が≧50%、好ましくは≧70%である、請求項1〜9の何れかに記載の方法。
  11. ネガティブ吸着法またはクロマトグラフィー法を含む工程段階を、フィブリノゲンへのプラスミノゲンの結合を弱める物質の存在下に行う、請求項1〜10のいずれかに記載の方法。
  12. 血液、トランスジェニック動物の乳汁、もしくは培養上清から得られた混合物またはそれらから得られた画分を出発材料として使用する、請求項1〜11の何れかに記載の方法。
  13. ヒト血漿、血漿画分またはクリオプレシピテートを出発材料として使用する、請求項12に記載の方法。
  14. フィブリノゲンを沈殿させる1種またはそれ以上の工程段階を含む、請求項1〜13の
    何れかに記載の方法。
  15. グリシンまたは他のアミノ酸による1種またはそれ以上の沈殿を含む、請求項14に記載の方法。
  16. 官能基としてリジンまたはリジン類似体を有するゲル材料上でプラスミノゲンを除去する1種またはそれ以上の工程段階を含む、請求項1〜15の何れかに記載の方法。
  17. 感染性粒子を枯渇させそして/または除去するための1種またはそれ以上の工程段階を含む、請求項1〜16の何れかに記載の方法。
  18. 以下の工程段階:血漿分画の調製、水酸化アルミニウム上への吸着、例えばウイルスのような感染性粒子の不活性化、沈殿、さらなる精製および/または不活性化段階、ネガティブクロマトグラフィー法および/またはネガティブ吸着法、限外濾過、滅菌濾過を組み合わせる、請求項1〜17の何れかに記載の方法。
  19. 請求項1〜18の少なくとも1項に記載のように製造されたフィブリノゲン調製物。
  20. F XI含有量がOD280-320当り≦1、好ましくは≦0.2ngである、請求項19に記載のフィブリノゲン調製物。
  21. F XII含有量がOD280-320当り≦20、好ましくは≦10ngである、請求項19に記載のフィブリノゲン調製物。
  22. t−PA含有量がOD280-320当り≦0.02、好ましくは≦0.01ngである、請求項19に記載のフィブリノゲン調製物。
  23. 液体状態で30℃で1ヶ月間貯蔵した後の低分子量フィブリノゲン分解フラグメントの割合が3%未満である、請求項19に記載のフィブリノゲン調製物。
  24. フィブリン接着剤を生成するための、請求項19に記載のフィブリノゲン調製物の使用。
  25. フィブリンマトリックスを生成するための、請求項19に記載のフィブリノゲン調製物の使用。
  26. 製剤成分NaCl、クエン酸Na3、ArgもしくはArg×HClおよびCaCl2、またはそれらとアミノ酸およびアミノ基含有芳香族化合物のような他の製剤成分との混合物を含む、請求項19〜25の何れかに記載のフィブリノゲン調製物。
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