JP2005238769A - 耐疵付き性及び耐指紋性に優れた樹脂塗装金属板、及び電子機器部品 - Google Patents

耐疵付き性及び耐指紋性に優れた樹脂塗装金属板、及び電子機器部品 Download PDF

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Abstract

【課題】 黒色金属板における耐疵付き性及び耐指紋性が著しく改善されており、更には導電性も高められた樹脂塗装金属板等を提供することにある。
【解決手段】 片面または両面が黒色である黒色金属板における黒色側表面の一方または両方に、白色顔料及び/又は光輝顔料を含有する樹脂塗膜が被覆された樹脂塗装金属板であり、
該樹脂塗膜の膜厚は0.5〜10μmであり、且つ、該樹脂塗膜に含まれる白色顔料及び/又は光輝顔料の添加量は、合計で1〜25質量%であって、且つ、
該樹脂塗装金属板の色調は、日本電色株式会社製色差計(SZS−Σ90)で測定したL値で44.0〜60.0を満足するものである。

Description

本発明は、黒色金属板における耐疵付き性や耐指紋性が著しく改善されており、更には導電性も高められた樹脂塗装金属板に関するものである。更に本発明は、上記特性に加えて、更に放熱性;放熱性及び自己冷却性にも優れた電子・電気・光学機器(以下、電子機器で代表させる場合がある)部材用の樹脂塗装金属板;並びに、これらの特性に優れた電子機器部品に関するものである。これらの金属板は、特に電子機器等の筺体として有用であり、放熱特性に極めて優れている為、CD、LD、DVD、CD−ROM、CD−RAM、PDP、LCD等の情報記録分野;パソコン、カーナビ、カーAV等の電気・電子・通信関連分野等に好適であり、更にプロジェクター、テレビ、ビデオ、ゲーム機等のAV機器;コピー機、プリンター等の複写機;エアコン室外機等の電源ボックスカバー、制御ボックスカバー、自動販売機、冷蔵庫等、様々な電子機器部材の構成素材として用いることができる。
黒色の外観が要求される用途に適用される黒色表面処理金属板として、例えばZn−Niめっき、Zn−Co−Moめっきといった特殊めっきを施しためっき表面に、酸化処理等によりめっき表面自体を黒色化した金属板(黒色下地処理した金属板);加工性の優れた樹脂に種々の導電性顔料(ニッケル、酸化亜鉛、導電性酸化チタン、りん化鉄等の金属または金属化合物)を添加した塗膜を金属板に被覆する所謂「導電性プレコート金属板」等が汎用されている。
ところが、これらの黒色金属板は、取扱い時や加工時等において、疵が非常に発生し易く(耐疵付き性の低下)、また、指紋が付着すると目立ち易い(耐指紋性の低下)という問題を抱えている。
このうち「耐疵付き性」の改善に関しては、皮膜硬度を高めたり、皮膜中にワックスを添加して皮膜の潤滑性を高める等の方法が施されている。しかしながら、上記方法による改善効果には限界があり、例えば黒色金属板を折曲げ加工する等、苛酷な加工が要求される場合には、皮膜硬度や潤滑性をあまり高くすることができない、といった不具合を有している。
そこで、これらの問題を一挙に解決し得る金属板として、特許文献1には、黒色塗膜にクリアー塗膜を被覆した導電性黒色表面処理金属板が開示されている。これは、「クリアー塗膜は、導電性付与に有効であると共に、特に耐疵付き性及び耐指紋性を著しく高める作用がある」という知見に基づいて出願されたものであり、折曲げ加工が必要な用途にも適用可能である。しかしながら、その後の研究により、クリアー塗膜では、比較的軟らかい材料によって発生する軽度の疵は改善し得ても、鋼板のエッジ等の様に硬くて鋭利なものが擦れて発生した重度の疵は抑えることが困難であることが分った。また、クリアー塗膜が被覆された金属板は、黒色塗膜の色調がそのまま外観として反映される為、色調によっては疵や指紋が目立ち易くなり、クリアー塗膜形成による改善効果が充分に発揮されない場合がある。
そこで本発明者らは、「黒色度は多少低下したとしても、鋼板のエッジ等の様に硬くて鋭利なものが擦れて発生した重度の疵そのものを抑制し、目立ち難くすること」を最優先課題として掲げ、当該課題を解決すべく、上述したクリアー塗膜に代わる新しい塗膜成分として、白色顔料及び/又は光輝顔料に着目して検討した。
上記顔料自体は公知であり、白色顔料として酸化チタン等;光輝顔料(メタリック顔料)として、パール顔料、アルミニウム顔料等が代表的に挙げられる。これらの顔料は、反射した光によってキラキラ感、メタリック感、パール感等を呈し、変化に富んだ意匠性に優れた外観をもたらすことから、自動車、各種印刷物、OA機器等の様々な用途に使用されているが、当該顔料を、耐疵付き性や耐指紋性の改善目的で使用してみようとする発想は全くない。
例えば特許文献2〜4には、種々の光輝顔料/メタリック塗料/改質真珠光沢顔料が開示されているが、いずれも、これら顔料の特性(光輝感、光反射量等)改善という本来の目的の為に提案されたものに過ぎず、耐疵付き性や耐指紋性との関係で、上記顔料が如何なる作用を発揮し得るか、更には上記顔料を含む樹脂塗膜をどの様に制御すれば耐疵付き性等が改善されるのか、といった点について、何も教示するところがない。
一方、電子・電気・光学機器(以下、再び、電子機器で代表させる場合がある)の分野に目を向けると、近年、電子機器の高性能化・小型化に伴い、電子機器等のシャーシ内部における発熱量が増大(高温化)し、高熱化するといった問題が生じている(電子機器内部の高熱化)。電子機器の内部温度は通常雰囲気温度で約40〜70℃、最高で100℃程度の高温になることがあるが、そうすると、IC、CPU(半導体素子)、ディスク、モーター等の耐熱温度を超える為、安定操業に支障をもたらすことが指摘されている。更に温度が上昇すると半導体素子が壊れて故障する等し、電子機器部品の寿命が低下するといった問題も抱えている。
そこで、電子機器の内部温度を低減化(放熱化)させる為の放熱手段として、電子機器の筺体(筺体本体、フレーム、シールドケース、液晶等のバックパネル等)に、ヒートシンクやヒートパイプ等の放熱部品を取り付ける方法;電子機器の筺体に金属板(塗装体)を用い、この金属板に穴をあけてファンを取り付け、対流を利用して放熱させる方法等が提案されている。
しかしながら、前者の放熱部品による方法では、電子機器内部の熱源(発熱体)から放出される熱を、せいぜい、筺体内全体へ拡散させる程度の効果しか得られず、特に筺体の容積が小さい場合、所望の放熱効果が得られない。更に、当該放熱部品の取り付けに手間がかかり、設置場所を別途確保しなければならない、コストが高くつくといった不利不便がある等、小型化・低廉化が進む電子機器用途に適用するには不適切である。
また、後者のファンによる方法は、電子機器の特性(水や埃に弱い)を考慮すると用途によっては適用が困難である他、前述したヒートシンク等の場合と同様、部品のコスト増、取り付けの手間及び取り付け場所の確保等の点で問題がある。
従って、電子機器に要求される本来の特性(防水・防塵等に伴う気密性確保、小型化・軽量化)を満足しつつ、当該電子機器内部温度の低減化(放熱特性)を達成でき、しかもその前提として、耐疵付き性及び耐指紋性にも優れる新規な金属板の提供が切望されている。
尚、電子機器に適用されるものではないが、熱器具(代表的にはストーブ等)の分野に適用される放射板として、特許文献5には、当該熱器具部材に使用される遠赤外線放射板(基材に、遠赤外線特性を有するセラミック層が形成されたもの)の製造方法が開示されており、「所定の黒色アクリル樹脂皮膜に、カーボンブラック等の黒色顔料を添加しても良く、これにより、遠赤外線放射特性が発揮されること;その配合量は樹脂100質量部当たり0.1〜10質量部、樹脂皮膜厚は通常0.1〜5μmである」ことが記載されている。
しかしながら、上記公報に記載の遠赤外線放射板は、基材の片面にのみセラミック層が形成されているに過ぎず、所望の放熱性は得られないことが、本発明者らの検討結果により明らかになった。特に上記公報の遠赤外線放射板は、約200〜300℃といった非常に高温下での放熱特性が要求される熱器具(代表的にはストーブ等)の分野に使用されるものであり、内部温度が通常雰囲気温度で約40〜70℃、最高でも100℃程度となる電子機器部材への適用については、全く意図しておらず、本発明とは適用対象が異なるものである。
更に上述した放熱特性に加え、電子機器の筺体には、当該筺体自体の温度上昇を抑える作用も要求される。これにより、電子機器製品の稼動中に、消費者が当該筺体に触れてやけど等する危険を防止でき、安全な製品を提供できるからである。この「電子機器の筺体自体の温度上昇を抑える特性」を、前述した「放熱性」と区別する目的で、本発明では特に、「自己冷却性」と呼ぶ。これらの両特性に優れた筺体を得るに当たり、前述した放熱対策(ヒートシンクやヒートパイプ等の放熱部品を取り付ける方法や、金属板に穴をあけてファンを取り付ける方法等)を採用したのでは、やはり、同様の問題が見られる。従って、これらの両特性を備えた筺体の提供も切望されている。
また、電子機器の筺体には、上述した特性に加え、更に導電性にも優れることが要求されている。しかしながら、従来使用されている黒色塗装鋼板(黒色塗膜が被覆された鋼板)等は、黒色塗膜の膜厚が厚すぎて電気抵抗値が高くなり、特に電子機器に適用するには所望のアースがとれないといった問題がある。
特開2001−18322号公報(特許請求の範囲等) 特開2002−363771号公報(特許請求の範囲等) 特開平10−330657号公報(特許請求の範囲等) 特開2002−12795号公報(特許請求の範囲等) 特開平3−120378号公報(特許請求の範囲等)
本発明は上記事情に着目してなされたものであり、その目的は、黒色金属板における耐疵付き性及び耐指紋性が著しく改善されており、更には導電性も高められた樹脂塗装金属板;これらの特性を備えつつ、特に電子・電気・光学機器等の筺体として有用な、放熱性;放熱性及び自己冷却性;更には導電性にも優れた電子機器部材用樹脂塗装金属板;並びにこれらの特性に優れた電子機器部品を提供することにある。
まず、上記課題を解決し得た、(I)本発明に係る耐疵付き性及び耐指紋性に優れた樹脂塗装金属体(以下、「第一の塗装体」と呼ぶ場合がある)は、片面または両面が黒色である黒色金属板における黒色側表面の一方または両方に、白色顔料及び/又は光輝顔料を含有する樹脂塗膜が被覆された樹脂塗装金属板であり、
該樹脂塗膜の膜厚は0.5〜10μmであり、且つ、該樹脂塗膜に含まれる白色顔料及び/又は光輝顔料の添加量は、合計で1〜25質量%であって、且つ、
該樹脂塗装金属板の色調は、日本電色株式会社製色差計(SZS−Σ90)で測定したL値で44.0〜60.0を満足するところに要旨を有するものである。
上記白色顔料及び/又は光輝顔料としては、酸化物系顔料(特に酸化チタンを含有する白色顔料/光輝顔料)の使用が推奨される。
また、上記黒色金属板は、片面または両面が黒色を有するものであれば特に限定されないが、本発明では例えば、金属板の少なくとも一方に黒色塗膜(カーボンブラック等の黒色添加剤を含有する黒色塗膜)が被覆されているもの、または金属板の少なくとも片面が黒色処理されているものが例示される。
上記第一の塗装体の導電性を高める目的で、上記黒色塗膜及び/又は樹脂塗膜に、更に導電性フィラー(好ましくはNi)を含有することが好ましい。尚、黒色塗膜及び樹脂塗膜に導電性フィラーを添加して導電性の向上を図る場合は、当該黒色塗膜及び樹脂塗膜の膜厚を合計で13μm以下とすることが推奨される。
更に、上記第一の塗装体を、電子機器部材の構成素材(特に電子機器部材の筺体)として用いる場合は、下記(II)及び(III)の態様が包含される。
即ち、(II)前述した特性(耐疵付き性及び耐指紋性)に加えて放熱性も高められた樹脂塗装金属体(以下、第二の塗装体と呼ぶ場合がある)は、上記第一の塗装体において、
前記黒色金属板は、金属板の表裏面(ここで、裏面とは電子機器部材用樹脂塗装金属板の内側を意味し;表面とは電子機器部材用樹脂塗装金属板から見て外気側を意味する)に、放熱性を有する放熱塗膜が1μm超の厚さで被覆されたものであり、
(II-1)該放熱塗膜のうち少なくとも表面は、黒色添加剤として少なくともカーボンブラックを1質量%以上含有する黒色塗膜が被覆されているか、または
(II-2)上記記白色顔料及び/又は光輝顔料として、放熱性を有する酸化チタンを含有する場合は、該放熱塗膜のうち少なくとも一方は、黒色添加剤として少なくともカーボンブラックを1質量%以上含有する黒色塗膜が被覆されているか、または金属板を黒色処理したものであり
(II-3)該樹脂塗装金属体を100℃に加熱したときの赤外線(波長:4.5〜15.4μm)の積分放射率が下式(1)を満足することにより、放熱性が高められたところに要旨を有するものである。
a×b≧0.42 … 式(1)
a:表面の樹脂塗装金属板の赤外線積分放射率
b:裏面の樹脂塗装金属板の赤外線積分放射率
ここで上記黒色塗膜に添加されるカーボンブラックの好ましい平均粒径は、5〜100nmである。
また、(III)前述した特性(耐疵付き性及び耐指紋性)に加えて、放熱性及び自己冷却性も高められた樹脂塗装金属板(以下、第三の塗装体と呼ぶ場合がある)は、上記第一の塗装体において、
上記黒色金属板は、金属板の表裏面(ここで、裏面とは電子機器部材用樹脂塗装金属板の内側を意味し、表面とは電子機器部材用樹脂塗装金属板から見て外気側を意味する)に塗膜が1μm超の厚さで被覆されたものであり、
(III-1)このうち少なくとも表面の塗膜は、黒色添加剤として、少なくともカーボンブラックを1質量%以上含有しており、このうち金属板の少なくとも表面は、放熱性の黒色塗膜が被覆されているか、または
(III-2)上記白色顔料及び/又は光輝顔料として、放熱性を有する酸化チタンを含有する場合は、金属板の少なくとも表面は、放熱性の黒色塗膜で被覆されているか、または金属板を黒色処理したものであり、
該表面の放熱性黒色塗膜は、カーボンブラックを1質量%以上含有しており、
(III-3)該樹脂塗装金属体を100℃に加熱したときの赤外線(波長:4.5〜15.4μm)の積分放射率が、下式(2)及び下式(3)を満足することにより、放熱性及び自己冷却性が高められたところに要旨を有するものである。
b≦0.9(a−0.05) … 式(2)
(a−0.05)×(b−0.05)≧0.08… 式(3)
a:表面の樹脂塗装金属板の赤外線積分放射率
b:裏面の樹脂塗装金属板の赤外線積分放射率
更に本発明には、閉じられた空間に発熱体を内蔵する電子機器部品であって、その外壁の全部または一部が、前述した本発明の第一〜第三の塗装体で構成されている電子機器部品(例えばCD、LD、DVD、CD−ROM、CD−RAM、PDP、LCD等の情報記録製品;パソコン、カーナビ、カーAV等の電気・電子・通信関連製品;プロジェクター、テレビ、ビデオ、ゲーム機等のAV機器;コピー機、プリンター等の複写機;エアコン室外機等の電源ボックスカバー、制御ボックスカバー、自動販売機、冷蔵庫等)も本発明の範囲内に包含される。
本発明の樹脂塗装金属板は、比較的軟らかい材料によって発生する軽度の疵は勿論のこと、鋼板のエッジ等の様に硬くて鋭利なものが擦れて発生した重度の疵をも抑制し得、目立ち難くすることができるので、耐疵付き性及び耐指紋性に極めて優れている。特に本発明の金属板は、電子機器部材用塗装体(特に筺体)として有用であり、電子機器部材に要求される本来の特性(防水・防塵等に伴う気密性確保、小型化・軽量化)を満足しつつ、当該電子機器部材の内部温度を低減させることができ(放熱特性)、また、電子機器部材用塗装体自体の温度上昇を抑える(自己冷却性)こともできる為、CD、LD、DVD、CD−ROM、CD−RAM、PDP、LCD等の情報記録分野;パソコン、カーナビ、カーAV等の電気・電子・通信関連分野等の他、プロジェクター、テレビ、ビデオ、ゲーム機等のAV機器;コピー機、プリンター等の複写機;エアコン室外機等の電源ボックスカバー、制御ボックスカバー、自動販売機、冷蔵庫等、様々な電子機器部材に用いることができる。
上述した通り、本発明の樹脂塗装金属板は、下記(I)〜(III)の態様を包含するものである。
(I)耐疵付き性及び耐指紋性に優れた樹脂塗装金属板(第一の塗装体)
(II)上記(I)の塗装体において、更に放熱性に優れた電子機器部材用塗装体
(第二の塗装体)
(III)上記(I)の塗装体において、更に放熱性及び自己冷却性に優れた
電子機器部材用塗装体
(第三の塗装体)
まず、上記(I)について説明する。
(I)耐疵付き性及び耐指紋性に優れた樹脂塗装金属板(第一の塗装体)
本発明の第一の塗装体は、片面または両面が黒色である黒色金属板における黒色側表面の一方または両方に、白色顔料及び/又は光輝顔料を含有する樹脂塗膜が被覆された樹脂塗装金属板であり、
該樹脂塗膜の膜厚は0.5〜10μmであり、且つ、該樹脂塗膜に含まれる白色顔料及び/又は光輝顔料の添加量は、合計で1〜25質量%であって、且つ、
該樹脂塗装金属板の色調は、日本電色株式会社製色差計(SZS−Σ90)で測定したL値で44.0〜60.0を満足するところに特徴がある。
即ち、上記塗装体の基本構成は、黒色金属板に、白色顔料及び/又は光輝顔料を含有する樹脂塗膜が被覆されたものである。
(I-1)黒色金属板
本発明における「黒色金属板」は、金属板の片面または両面が黒色に着色されたものであれば全て包含される。後記する通り、本発明は、黒色金属板における耐疵付き性等を改善する為に、当該黒色金属板における黒色側表面の一方または両方に、白色顔料及び/又は光輝顔料を含有する所定の樹脂塗膜を被覆したところに最大の特徴があるのであって、黒色金属板自体については、特に限定する趣旨はないからである。本発明に用いられる黒色金属板としては、例えば(I-1-i)金属板の少なくとも一方に黒色塗膜が被覆されているか、または(I-1-ii)金属板の少なくとも一方が黒色処理されている(黒色下地処理した金属板)ものが例示される。或いは、(I-1-iii)該黒色下地処理した金属板の少なくとも一方に黒色塗膜が被覆されたものを使用しても良い。
(I-1-i)黒色塗膜が被覆された金属板
まず、「黒色塗膜が被覆された金属板」について説明する。
本発明における「黒色塗膜」とは、黒色添加剤を含有する塗膜を意味する。上記黒色添加剤としては、要するに黒色に着色し得るものであれば特に限定されず、代表的にはカーボンブラックが挙げられるが、その他、Fe,Co,Ni,Cu,Mn,Mo,Ag,Sn等の酸化物、硫化物、カーバイドや黒色の金属微粉等を使用することもできる。
また、上記黒色塗膜中に添加される樹脂(黒色塗膜を形成するベース樹脂)の種類は特に限定されず、通常のベース樹脂を使用することができ、例えばアクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、フッ素系樹脂、シリコン系樹脂、およびそれらの混合または変性した樹脂等を適宜使用することができる。
更に上記黒色塗膜には、Ni等に代表される導電性フィラーを含有しても良く、これにより、優れた導電性を確保することができる(この点は、後記する)。
その他、上記黒色塗膜には、本発明の作用を損なわない範囲で、防錆顔料、シリカ等の顔料を添加することができる。また、上記塗膜には、架橋剤を添加しても良い、この様な架橋剤としては例えばメラミン系化合物やイソシアネート系化合物等が挙げられ、これらを1種または2種以上、0.5〜20質量%の範囲で添加することが推奨される。
この様な構成からなる黒色塗膜の膜厚は上限及び下限ともに、耐疵付き性及び耐指紋性との関係では特に限定されないが、耐食性や加工性等を考慮すると、好ましい下限は1μm、より好ましくは3μmである。
特に上記黒色塗膜に導電性フィラーを含有する場合は、膜厚の下限を2μmに制御することが好ましく、これにより、クロムフリー塗装体であっても(後記する通り、本発明にはクロムフリー塗装体も包含される)、耐食性と導電性の両方を確保することができる。より好ましい下限は3μm、更により好ましくは5μmである。
一方、上記黒色塗膜の膜厚の上限に関しては、本発明塗装体は特に電子機器部品への適用を意図しており、当該用途との関係上、加工性の向上も要求されること;また、曲げ加工時における塗膜のクラックや剥離等の発生防止等を考慮すると、膜厚の上限を50μm(より好ましい順に、45μm、40μm、35μm、30μm)に制御することが推奨される。
尚、良好な加工性を備えると共に、優れた導電性も確保する為には、黒色塗膜及び樹脂塗膜に導電性フィラー(後記する)を添加することが推奨されるが、この場合は、当該黒色塗膜と樹脂塗膜の膜厚を合計で、13μm以下(より好ましい順に、12μm以下、11μm以下、10μm以下)とすることが好ましい。
上記黒色塗膜が施される金属板としては特に限定されず、例えば冷延鋼板、熱延鋼板、電気亜鉛めっき鋼板(EG)、溶融亜鉛めっき鋼板(GI)、合金化溶融亜鉛めっき鋼板(GA)、5%Al−Znめっき鋼板、55%Al−Znめっき鋼板、Al等の各種めっき鋼板、ステンレス鋼板等の鋼板類や、公知の金属板等を全て適用することができる。
上記金属板は、耐食性向上、塗膜の密着性向上等を目的として、クロメート処理やリン酸塩処理等の表面処理が施されていてもよいが、一方、環境汚染等を考慮して、ノンクロメート処理した金属板を使用してもよく、いずれの態様も本発明の範囲内に包含される。
以下、ノンクロメート処理した金属板について説明する。
上記「ノンクロメート処理」する方法(下地処理)は特に限定されず、通常、使用される公知の下地処理を行えば良い。具体的には、リン酸塩系、シリカ系、チタン系、ジルコニウム系等の下地処理を、単独で、若しくは併用して行うことが推奨される。
尚、一般にノンクロメート処理すると耐食性が低下することから、耐食性向上の目的で、黒色塗膜中または下地処理の際、防錆剤を使用しても良い。上記防錆剤としては、シリカ系化合物、リン酸塩系化合物、亜リン酸塩系化合物、ポリリン酸塩系化合物、イオウ系有機化合物、ベンゾトリアゾール、タンニン酸、モリブデン酸塩系化合物、タングステン酸塩系化合物、バナジウム系化合物、シランカップリング剤等が挙げられ、これらを単独で若しくは併用することができる。特に好ましいのは、シリカ系化合物(例えばカルシウムイオン交換シリカ等)と、リン酸塩系化合物、亜リン酸塩系化合物、ポリリン酸塩系化合物(例えばトリポリリン酸アルミニウム等)との併用であり、シリカ系化合物:(リン酸塩系化合物、亜リン酸塩系化合物、またはポリリン酸塩系化合物)を、質量比率で0.5〜9.5:9.5〜0.5(より好ましくは1:9〜9:1)の範囲で併用することが推奨される。この範囲に制御することにより、所望の耐食性と加工性の両方を確保することができる。
上記防錆剤の使用によりノンクロメート処理金属板の耐食性は確保できるが、その反面、防錆剤の添加による加工性低下も知られている。その為、黒色塗膜の形成成分として、特にエポキシ変性ポリエステル系樹脂及び/又はフェノール誘導体を骨格に導入したポリエステル系樹脂、及び架橋剤(好ましくはイソシアネート系樹脂及び/又はメラミン系樹脂、より好ましくは両者の併用)を組合わせて使用することが推奨される。
このうちエポキシ変性ポリエステル系樹脂及びフェノール誘導体を骨格に導入したポリエステル系樹脂(例えばビスフェノールAを骨格に導入したポリエステル系樹脂等)は、ポリエステル系樹脂に比べ、耐食性及び塗膜密着性に優れている。
一方、イソシアネート系架橋剤は加工性向上作用(加工後の外観向上作用を意味し、後記する実施例では、密着性曲げ試験におけるクラック数で評価している)を有しており、これにより、防錆剤を添加したとしても優れた加工性を確保することが可能となる。
また、メラミン系架橋剤は、優れた耐食性を有することが本発明者らの検討結果により明らかになった。従って、本発明では、前述した防錆剤と併用することにより、非常に良好な耐食性が得られることになる。
これらのイソシアネート系架橋剤及びメラミン系架橋剤は単独で使用しても良いが、両者を併用すると、ノンクロメート処理金属板における加工性及び耐食性を一層向上させることができる。具体的には、イソシアネート系樹脂100質量部に対し、メラミン系樹脂を5〜80質量部の比率で含有することが推奨される。メラミン系樹脂が5質量部未満の場合、所望の耐食性が得られず、一方、メラミン系樹脂が80質量部を超えると、イソシアネート系樹脂の添加による効果が良好に発揮されず、所望の加工性向上作用が得られない。より好ましくは、イソシアネート系樹脂100質量部に対し、10質量部以上、40質量部以下、更により好ましくは15質量部以上、30質量部以下である。
以上、黒色塗膜が被覆された金属板について詳述した。この黒色塗膜は、金属板の少なくとも一方に被覆されていれば良く、両面に黒色塗膜が被覆された金属板も本発明の範囲に包含される。尚、本発明を特徴付ける白色顔料及び/又は光輝顔料を含有する樹脂塗膜は、当該黒色塗膜(黒色側表面)に被覆されるのであって、黒色塗膜が何も被覆されていない金属に直接、当該樹脂塗膜が被覆されることはない。
(I-1-ii)金属板を黒色処理したもの(黒色下地処理した金属板)
次に、「黒色下地処理した金属板」について説明する。
上記黒色下地処理とは、例えばZn−Niめっき鋼板、Zn−Co−Moめっき鋼板等といった特殊めっき鋼板を酸化処理する等し、めっき表面自体を黒色化することを意味する。
ここで、上記特殊めっき鋼板におけるめっき付着量は、使用するめっき鋼板の種類によっても相違するが、概ね10〜60g/m2とすることが好ましい。めっき付着量が10g/m2未満では耐食性が劣化し;一方、めっき付着量が60g/m2を超えると、曲げ加工の際、めっきにクラックが発生し易くなる他、めっきが剥離する恐れもある。より好ましくは40g/m2以下、更により好ましくは30g/m2以下である。
上記めっき鋼板のうち、耐食性等の観点から特に好ましいのはZn−Niめっき鋼板であり、例えば後記する実施例に記載の方法によって製造することができる。また、上述した黒色下地処理は通常、金属板の両面に黒色下地処理が施されるが、金属板の片面のみ黒色下地処理することも可能であり、この様な態様も本発明の範囲内に包含される。尚、片面のみ黒色下地処理された場合は、その上(黒色側表面)に本発明を特徴付ける樹脂塗膜(後記する)が被覆されるのであって、黒色下地処理されていない側に直接、当該樹脂塗膜が被覆されることはない。
(I-1-iii)黒色下地処理した金属板の少なくとも一方に黒色塗膜が被覆されているもの
その他、本発明における「黒色金属板」には、前述した(I-1-ii)の「黒色下地処理した金属板」の少なくとも一方に、前述した(I-1-i)の黒色塗膜が被覆されたものも包含される。具体的には、金属板の一方が黒色下地処理されており、他方が黒色塗膜を有するもの;金属板の両方が黒色下地処理されており、そのうちの片面のみが更に黒色塗膜を有するもの;金属板の両方が黒色下地処理され、且つ、黒色塗膜を有するものの全てが本発明の範囲内に含まれるのであり、各詳細は、(I-1-i)及び(I-1-ii)に詳述した通りである。
以上、本発明における「黒色金属板」について説明した。
(I-2)白色顔料及び/又は光輝顔料を含有する樹脂塗膜
次に本発明を最も特徴付ける樹脂塗膜について説明する。この樹脂塗膜は、前述した「片面または両面が黒色である黒色金属板」における黒色側表面の一方または両方に被覆されるものであり、当該樹脂塗膜は、白色顔料及び/又は光輝顔料を含有するものである。本発明では、これらの顔料を、本来の添加目的(意匠性付与)の為に被覆するのではなく、黒色金属板における耐疵付き性及び耐指紋性の改善という、従来とは全く異なる添加目的で被覆するものであり、その為に、上記樹脂塗膜の膜厚を0.5〜10μmに制御し、且つ、該樹脂塗膜に含まれる白色顔料及び/又は光輝顔料の添加量を合計で1〜25質量%に調節する樹脂塗装金属板全体の色調(L値)を44.0〜60.0に制御したところに最大の特徴がある。
前述した通り、白色顔料や光輝顔料は、光輝感(メタリック色調)やパール感を付与する顔料として公知である。しかしながら、本発明では、これらの顔料を含有する樹脂塗膜が所定範囲を満足する場合は、極めて優れた耐疵付き性及び耐指紋性の作用を発揮し得、皮膜に発生した疵は勿論のこと、従来のクリアー塗膜では対処できなかった疵(鋼板のエッジ等に発生した疵そのもの)をも抑制できることを見出した点に技術的意義を有しており、耐疵付き性及び耐指紋性との関係で、上記樹脂塗膜の膜厚及び顔料添加量を所定範囲に制御するという技術的思想は、本発明独自のものであり、従来全く知られていなかったものである。
ちなみに前述した特許文献2〜4は、意匠性向上といった観点から、これら顔料の改質技術を開示しているに過ぎず、耐疵付き性や耐指紋性の改善については全く意図していない。その為、上記特許文献では、光輝顔料等を含有する樹脂塗膜の膜厚を約15μm若しくはそれ以上(20〜70μm)と厚く被覆しており、これでは所望の耐指紋性等の改善効果が得られないことを、実験により確認している(後記する実施例を参照)。
以下、上記樹脂塗膜の構成について詳述する。
(I-2-i)上記樹脂塗膜を構成する白色顔料及び/又は光輝顔料の種類
まず、本発明に用いられる顔料のうち光輝顔料は、受けた光を反射して塗膜にメタリック感やパール感(光干渉性模様)等の意匠性を与えるものであり、例えばアルミニウム粉等の金属粉、ステンレス鋼フレーク等の金属フレーク、雲母(マイカ)、マイカシャスアイアンオキサイド(MIO、鱗片状酸化鉄)、ガラスフレーク、ブロンズ顔料等が挙げられる。各光輝顔料には、これらをコーティングしたものも包含されており、例えば樹脂コーティングアルミニウム粉、シリカコーティングアルミニウム粉、フッ素化合物コーティングアルミニウム粉、ハステロイドコーティングガラスフレークの他;雲母を主成分とし、その表面を各種金属酸化物(二酸化チタン、酸化鉄、酸化スズ等)または各種着色顔料で被服したものも包含され、例えばパール雲母(酸化チタン被覆マイカ)等のパール顔料(例えばメルクジャパン製のIriodin103W II、Iriodin121WII、Iriodin111WII等)等の使用が推奨される。これらは単独で使用しても良いし、2種以上を併用しても構わない。
また、本発明に用いられる白色顔料は、塗膜に白色度を付与する目的で添加される顔料であり、例えば酸化チタン[具体的にはテイカ(株)製のJR301、JR603、JR806、JRNC等]、鉛白、亜鉛華、白亜等が挙げられる。
これらの白色顔料/光輝顔料は夫々、単独で使用しても良いし、2種以上を併用しても構わない。従って、白色顔料を2種以上使用するもの、光輝顔料を2種以上使用するもの、白色顔料の少なくとも1種及び光輝顔料の少なくも1種を使用するものが挙げられ、いずれの態様も全て、本発明の範囲内に包含される。
これらの顔料のうち、特に耐疵付き性及び耐指紋性の向上という観点からすれば、酸化物系の添加剤を含有する白色顔料/光輝顔料が好ましく、なかでも酸化チタンを含有するものが、より好ましい。具体的には、白色顔料として酸化チタン;光輝顔料として、酸化チタンを含有するもの、例えば雲母を主成分とし、その表面を上述した金属酸化物で被覆したもの、特に酸化チタン被覆マイカ(メルクジャパン製のIriodin111WII等)等]の使用が推奨される。
また、上記光輝顔料/白色顔料の平均粒径は、使用する顔料の形状によっても相違するが、例えば粒状の場合は概ね、0.1〜10μm(好ましくは0.2μm以上、5μm以下;更に好ましくは3μm以下);鱗片状(フレーク状)の場合は概ね、5〜60μm(好ましくは10μm以上、40μm以下;更に好ましくは30μm以下)とすることが推奨される。平均粒径が各下限値を下回ると、顔料添加による作用(黒色塗膜または黒色下地処理の黒色色調を、疵や指紋が目立ち難い色調に調整する隠蔽作用)が低下して膜厚を高める必要があるが、膜厚をあまり高くすると、加工性等の低下を招いてしまう(後記する)。一方、平均粒径が各上限値を超えると、塗膜の外観に色調ムラが発生し易くなる。
より詳細には例えば酸化チタンの場合は、平均粒径を0.1μm以上、0.4μm以下とし;酸化チタン被覆マイカの場合は、平均粒径を5μm以上、50μm以下、厚さを0.2μm以上、3μm以下にすることが好ましい。
ここで、上記顔料の平均粒径は、一般的な粒度分布計によって分級後の顔料粒子の粒度分布を測定し、その測定結果に基づいて算出される小粒径側からの積算値50%の粒度(D50)を意味する。斯かる粒度分布は、粒子に光を当てることにより生じる回折や散乱の強度パターンによって測定することができ、この様な粒度分布計としては、例えば、日機装社製のマイクロトラック9220FRAやマイクロトラックHRA等が例示される。
尚、上述した好ましい平均粒径を満足する顔料は、市販品を使用しても良い。例えば酸化チタン被覆マイカとして、メルクジャパン製のIriodin103W II(平均粒径10〜60μm)、Iriodin121WII(平均粒径5〜25μm)、Iriodin111WII(平均粒径15μm以下)等;酸化チタンとして、テイカ(株)製のJR301(平均粒径0.30μm)、JR603(平均粒径0.28μm)、JR806(平均粒径0.25μm)、JRNC(平均粒径0.37μm)等が挙げられる。
(I-2-ii)白色顔料及び/又は光輝顔料を含有する樹脂塗膜の膜厚及び含有量
本発明では、上記樹脂塗膜の膜厚を0.5〜10μm、当該樹脂塗膜に含まれる白色顔料及び/又は光輝顔料の添加量を、合計で1〜25質量%とする。これらの範囲を外れたものは、所望の耐疵付き性及び耐指紋性が得られないことを、後記する実施例により確認している。
まず、上記樹脂塗膜の膜厚は0.5〜10μmとする。この膜厚が0.5μm未満では、耐疵付き性及び耐指紋性向上作用が不充分である。好ましくは1.5μm以上、より好ましくは2μm以上である。一方、膜厚が10μmを超えると加工性が低下する。好ましくは6μm以下、より好ましくは5μm以下である。
尚、上記樹脂塗膜中に、導電性向上の目的で導電性フィラーを添加する場合は、当該樹脂塗膜の上限を6μmとすることが推奨される。6μmを超えると、所望の導電性が発揮され難いからである。好ましくは5μm以下、より好ましくは4μm以下である。
更に上記白色顔料/光輝顔料の樹脂塗膜全体に占める比率は、合計で1〜25質量%とする。1質量%未満では、ベース塗料に対する顔料の添加量が少なくて耐疵付き性及び耐指紋性の向上作用が不十分となるからである。一方、25質量%を超えると、塗膜の伸びが低下し、苛酷な曲げ加工を行なうと塗膜にクラック、更には塗膜剥離が発生する恐れがある。より好ましくは2質量%以上、20質量%以下;更により好ましくは3質量%以上、15質量%以下である。
尚、上記樹脂塗膜中に添加される樹脂(ベース樹脂)の種類は、耐疵付き性及び耐指紋性の観点からは特に限定されず、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、フッ素系樹脂、シリコン系樹脂、およびそれらの混合または変性した樹脂等を適宜使用することができる。尚、本発明塗装体を特に、電子機器の筺体として使用する場合は、放熱性(後記する)の他に耐食性、加工性の向上も要求されることを考慮すると、上記ベース樹脂は、非親水性樹脂[具体的には、水との接触角が30°以上(より好ましくは50°以上、更により好ましくは70°以上)を満足するもの]であることが好ましい。この様な非親水性特性を満足する樹脂は、混合度合や変性の程度等によっても変化し得るが、例えばポリエステル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、フッ素系樹脂、シリコン系樹脂、およびそれらの混合または変性した樹脂等の使用が好ましく、なかでもポリエステル系樹脂若しくは変性したポリエステル系樹脂(エポキシ変性ポリエステル系樹脂、フェノール誘導体を骨格に導入したポリエステル系樹脂等の熱硬化性ポリエステル系樹脂または不飽和ポリエステル系樹脂)の使用が推奨される。
上記樹脂塗膜には、本発明の作用を損なわない範囲で、必要に応じて更に、シリカ粒子や酸化アルミニウム等の塗料流動性向上添加剤等を含有しても良い。
更に上記塗膜には、本発明の作用を損なわない範囲で、防錆顔料、塗料流動性向上剤(シリカ粒子や酸化アルミニウム等)を添加しても良い。
また、上記塗膜には、架橋剤を添加することができる。本発明に用いられる架橋剤としては、例えばメラミン系化合物やイソシアネート系化合物等が挙げられ、これらを1種または2種以上、0.5〜20質量%の範囲で添加することが推奨される。
以上、本発明における樹脂塗膜について説明した。
(I-3)樹脂塗装金属板の色調は、日本電色株式会社製色差計(SZS−Σ90)で測定したL値で44.0〜60.0
本発明の樹脂塗装金属板は、上述した構成からなるものであり、当該樹脂塗装金属板の色調は、日本電色株式会社製色差計(SZS−Σ90)で測定したL値が44.0〜60.0を満足するものである。ここでL値は、小さい程億色度が大きい(黒い)ことを意味している。
ここで、L値を特に上記範囲に定めたのは以下の理由による。前述した通り、本発明は黒色金属板における耐疵付き性及び耐指紋性が著しく改善された樹脂塗装金属板を提供するものであるが、本発明者らが塗膜の色調と、疵・指紋との関係について検討したところ、塗膜の色調が黒色の場合は、疵や指紋が白く目立っており;一方、塗膜の色調が白色の場合は、疵や指紋が暗く目立つことが判明した。そうすると、「塗膜の疵や指紋を目立ち難くする為には、塗膜の色調を所定範囲に調整すれば良い」ことになる。本発明は、この様な知見に基づき、樹脂塗装金属板の色調(L値)を上記範囲に定めた次第である。
上記L値が44.0未満では、疵や指紋が白く目立ってしまい、所望の耐疵付き性及び耐指紋性が得られない。好ましくは46以上、より好ましくは48以上である。尚、L値が60.0を超えると、疵や指紋が暗く目立ってしまう。好ましくは56以下、より好ましくは52以下である。
尚、上記塗装体において、耐疵付き性及び耐指紋性に加えて、導電性も高めたい場合には、黒色金属板及び/又は樹脂塗膜に、例えば導電性フィラーを添加することが推奨される。この導電性フィラーは、黒色金属板のみ、樹脂塗膜のみに添加しても良いし、或いは、黒色金属板及び樹脂塗膜の両方に添加しても良い。両方に導電性フィラーを添加すれば、非常に優れた導電性が得られるが、用途によっては、片面のみに導電性フィラーを添加しても良く、これによっても、所定の導電性を確保することができる。また、両面が黒色金属板の場合は、少なくとも一方のみに添加すればよい。
ここで、本発明に用いられる導電性フィラーとしては、Ag、Zn、Fe、Ni、Cu等の金属単体;FeP等の金属化合物が挙げられる。なかでも特に好ましいのはNiである。尚、その形状は特に限定されないが、より優れた導電性を得る為には、鱗片状のものを使用することが推奨される。
また、上記導電性フィラーの含有量は塗膜形成成分(ポリエステル樹脂等のベース樹脂の他、必要に応じて添加される架橋剤、更には黒色添加剤及び導電性フィラー、及び必要に応じて添加される添加剤も含めた、塗膜を形成する成分すべてを意味する)100%(固形分換算)に対し、合計で10〜50%とする。10%未満では所望の効果が得られない。好ましくは15%以上、より好ましくは20%以上、更により好ましくは35%以下である。一方、導電性フィラーの含有量が50%を超えると加工性が低下する。特に、塗装金属板の如く高度の曲げ加工性が要求される部位に適用する場合には、45%以下とすることが推奨される。より好ましくは40%以下、更により好ましくは35%以下である。
尚、黒色金属板として、黒色下地処理された金属板を使用する場合にも、上述した要件を満足する導電性フィラー含有樹脂塗膜を形成することにより、良好な導電性を確保することができる。
以上、本発明の第一の塗装体について説明した。
次に、本発明の第二の塗装体及び第三の塗装体について説明する。各塗装体について説明する前に、まず、これらに共通する基本思想について説明する。
本発明者らは、上記第一の塗装体を特に電子機器の用途に使用するに当たり、電子機器に要求される本来の特性(防水・防塵等に伴う気密性確保、小型化・軽量化、低コスト等)を満足しつつ、当該電子機器内部温度の低減化(放熱特性)をも達成し得る電子機器部材用塗装体を提供すべく、特に、当該塗装体自体の放熱性改善を中心に鋭意検討してきた。その結果、金属板の表裏面に、所定の塗膜を被覆すれば所期の目的が達成されることを見出した。
そのメカニズムは、「電子機器内部の熱源(発熱体)から放出される熱(輻射熱)を、裏面の塗膜で吸収(放射)し、この熱を、表面の放熱塗膜から放射させる」というものであり、所謂『熱スルー方式』の考えを、電子機器部材にうまく適用したところに最大の特徴がある。この様な『熱スルー方式』の考えを、電子機器部材に適用し、電子機器から放出される熱量を、「金属板の裏面」→「金属板の表面」へと吸収→放射させた塗装体は従来知られておらず、新規である。
次に、各塗装体について説明する前に、第二の塗装体(放熱性に優れた塗装体)と、第三の塗装体(放熱性及び自己冷却性に優れた塗装体)の関係について説明する。
第二の塗装体も第三の塗装体も、共に前述した「熱スルー」の考えを電子機器部材に適用して放熱性の向上を図る点で、基本思想は一致する。しかしながら、両者は、究極的に目指す解決課題(主な解決課題)、当該解決課題を解決する為の技術的思想、及び構成は相違する。即ち、第二の塗装体では、放熱性の向上(電子機器内部温度の低減化)を最大の解決課題として掲げており、「表面・裏面の赤外線放射率の積はできるだけ高い程好ましい」という思想のもと、表面・裏面を、放熱塗膜を構成する一体として捉えて当該放熱塗膜の構成を特定しているのに対し;第三の塗装体では、上述した「熱スルーの考え」を利用して放熱特性を或る程度維持しながら、且つ、「塗装体自体の温度上昇抑制」を最大の解決課題として掲げており、「表裏面の赤外線放射率について積極的に差を設け、裏面の赤外線放射率は表面よりも低く、表面の赤外線放射率はできるだけ高くすることにより、塗装体に吸収された熱を放出させる」という思想のもと、表面・裏面の塗膜構成を夫々、別々に捉えて制御している点で、両者は、目指す方向性が異なる発明ともいえる。
即ち、第二の塗装体では、放熱性に極めて優れるものの、自己冷却性に劣る態様も包含している。一方、第三の塗装体は、自己冷却性に極めて優れたものであるが、放熱性に関しては、第二の塗装体に比べると若干低い態様も包含している。この様な両者の相違を一層明らかにすべく、第二の塗装体で定める領域[上式(1)を満足する放熱特性に優れた範囲]を図1に;第三の塗装体で定める領域[上式(3)を満足する放熱特性に優れた範囲と、上式(2)を満足する自己冷却性に優れた範囲との重複部分]を図2に、夫々、示す。これらの塗装体は、互いに重なり合う部分[表裏面の赤外線放射率の積が高い為に放熱特性に優れており、且つ、裏面に比べて表面の赤外線放射率が高い為に自己冷却性にも優れている]も包含しているが、当該部分は、放熱特性及び自己冷却性の双方に極めて優れた領域である。
以下、本発明に係る各塗装体について、説明する。
(II)耐疵付き性、耐指紋性、及び放熱性に優れた樹脂塗装金属板(第二の塗装体)
上記第二の塗装体は、前述した基本思想をベースとしてなされたものであり、前述した第一の塗装体において、上記黒色金属板は、金属板の表裏面に、放熱性を有する放熱塗膜が被覆されており、
(II-1)該放熱塗膜のうち少なくとも一方は、黒色添加剤として少なくともカーボンブラックを含有する黒色塗膜が被覆されているか、または
(II-2)白色顔料及び/又は光輝顔料として、放熱性を有する酸化チタンを含有する場合は、該放熱塗膜のうち少なくとも一方は、黒色添加剤として少なくともカーボンブラックを含有する黒色塗膜が被覆されているか、または金属板を黒色処理したものであり、
該塗装体を100℃に加熱したときの赤外線(波長:4.5〜15.4μm)の積分放射率が、下式(1)を満足することにより、放熱性が高められたものである。
a×b≧0.42 … (1)
a:表面の樹脂塗装金属板の赤外線積分放射率
b:裏面の樹脂塗装金属板の赤外線積分放射率
即ち、上記第二の塗装体では、当該塗装体を構成する樹脂塗膜及びL値については上記第一の塗装体と同じである(従って、その説明は省略する)が、黒色金属板に関し、金属板の表面及び裏面[第二の塗装体では、当該塗装体から見て外気側を「表面」、当該塗装体の内側を「裏面」と呼ぶ]に、任意の赤外線波長域(波長:4.5〜15.4μm)における積分放射率(以下、単に「赤外線積分放射率」若しくは「赤外線放射率」と略記する場合がある)に、放熱性を有する放熱塗膜が被覆された構成[具体的には前述の(II-1)または(II-2)]を採用することにより、優れた放熱性を確保したところに技術的意義がある。
ちなみに従来の塗装体として、例えばプレス加工等の加工後に塗装するアフターコート材、加工前に予め塗装するプレコート材等が挙げられるが、これらは本発明の如く「電子機器部材用筺体として適用するに当たり、熱スルー方式の考えを適用して放熱性を高めよう」という思想は全くない為、金属板の表裏面に、所定の放熱性を有する放熱塗膜は被覆されていない。実際のところ、これら従来の塗装体は、その外観面(表面)は、意匠性や機能性(耐食性等)等の観点から塗装処理しているが、その放熱特性は低い。一方、その裏面(塗装体内部面)は無塗装か、塗装されたとしても、せいぜい、最低限の耐食性を確保する程度の塗装しか施していない(従って、所望の放熱特性は得られない)というのが実状である。従って、この様な片面塗装体では、所望の放熱特性が得られないことを、後記する実施例により確認している。
まず、上式(1)について説明する。
式(1):a×b≧0.42
式中、a及びbは、本発明の第二の塗装体を100℃に加熱したときの赤外線(波長:4.5〜15.4μm)の積分放射率において、表面の赤外線積分放射率(a)及び裏面の赤外線積分放射率(b)を夫々、意味する。赤外線積分放射率は後述する方法で測定され、表面若しくは裏面の赤外線積分放射率を夫々、別々に測定することができる。
上記「赤外線積分放射率」とは、換言すれば、赤外線(熱エネルギー)の放出し易さ(吸収し易さ)を意味する。従って、上記赤外線放射率が高い程、放出(吸収)される熱エネルギー量は大きくなることを示す。例えば物体(本発明では塗装体)に与えられた熱エネルギーを100%放射する場合には、当該赤外線積分放射率は1となる。
尚、本発明では、100℃に加熱したときの赤外線積分放射率を定めているが、これは、本発明塗装体が電気機器用途(部材等によっても相違するが、通常の雰囲気温度は概ね、50〜70℃で、最高で約100℃)に適用されることを考慮し、当該実用レベルの温度と一致させるべく、加熱温度を100℃に定めたものである。
本発明における赤外線積分放射率の測定方法は以下の通りである。
装置:日本電子(株)製「JIR−5500型フーリエ変換赤外分光
光度計」及び放射測定ユニット「IRR−200」
測定波長範囲:4.5〜15.4μm
測定温度:試料の加熱温度を100℃に設定する
積算回数:200回
分解能 :16cm-1
上記装置を用い、赤外線波長域(4.5〜15.4μm)における試料の分光放射強度(実測値)を測定した。尚、上記試料の実測値は、バックグラウンドの放射強度及び装置関数が加算/付加された数値として測定される為、これらを補正する目的で、放射率測定プログラム[日本電子(株)製放射率測定プログラム]を用い、積分放射率を算出した。算出方法の詳細は以下の通りである。
Figure 2005238769
式中、
ε(λ) :波長λにおける試料の分光放射率(%)
E(T) :温度T(℃)における試料の積分放射率(%)
M(λ,T) :波長λ、温度T(℃)における試料の分光放射強度
(実測値)
A(λ) :装置関数
FB(λ) :波長λにおける固定バックグラウンド(試料によって
変化しないバックグラウンド)の分光放射強度
TB(λ,TTB):波長λ、温度TTB(℃)におけるトラップ黒体の
分光放射強度
B(λ,T) :波長λ、温度T(℃)における黒体の分光放射強度
(ブランクの理論式からの計算値)
λ1,λ2 :積分する波長の範囲
を夫々、意味する。
ここで、上記A(λ:装置関数)、及び上記KFB(λ:固定バックグラウンドの分光放射強度)は、2つの黒体炉(80℃、160℃)の分光放射強度の実測値、及び当該温度域における黒体の分光放射強度(ブランクの理論式からの計算値)に基づき、下記式によって算出したものである。
Figure 2005238769
式中、
160℃(λ,160℃):
波長λにおける160℃の黒体炉の分光放射強度(実測値)
80℃(λ,80℃):
波長λにおける80℃の黒体炉の分光放射強度(実測値)
160℃(λ,160℃):
波長λにおける160℃の黒体炉の分光放射強度
(ブランクの理論式からの計算値)
80℃(λ,80℃):
波長λにおける80℃の黒体炉の分光放射強度
(ブランクの理論式からの計算値)
を夫々、意味する。
尚、積分放射率E(T=100℃)の算出に当たり、KTB(λ,TTB)を考慮しているのは、測定に当たり、試料の周囲に、水冷したトラップ黒体を配置している為である。上記トラップ黒体の設置により、変動バックグランド放射(試料によって変化するバックグラウンド放射を意味する。試料の周囲からの放射が試料表面で反射される為、試料の分光放射強度の実測値は、このバックグランド放射が加算された数値として表れる)の分光放射強度を低くコントロールすることができる。上記のトラップ黒体は、放射率0.96の疑似黒体を使用しており、前記KTB[(λ,TTB):波長λ、温度TTB(℃)におけるトラップ黒体の分光放射強度]は、以下の様にして算出する。
TB(λ,TTB)=0.96×KB(λ,TTB
式中、KB(λ,TTB)は、波長λ、温度TTB(℃)における黒体の
分光放射強度を意味する。
本発明に係る第二の塗装体は、この様にして測定した赤外線(波長4.5〜15.4μm)の積分放射率[上記E(T=100℃)]であって、表面の塗装体の赤外線積分放射率a及び裏面の塗装体の赤外線積分放射率bの積(a×b)が0.42以上[式(1)]を満足するものである。上述した通り、「a×b」で算出される数値(塗装体から放出される赤外線積分放射率の積)は、塗装体自体の放熱効果を示す指標として有用であり、上式を満足する塗装体は、上記波長域において、平均して高い放射特性を発揮することから、上記第一の塗装体における放熱特性の目標レベルを「a×b≧0.42」に定めた。「a×b」(最大で1)の値は大きい程(1に近ければ近い程)、優れた放熱特性を発揮し、好ましい順に、0.49以上、0.56以上、0.61以上、0.64以上、0.72以上である。
尚、上記第二の塗装体では、上述した放熱特性の目標レベルを満足する限り、表面の赤外線放射率と、裏面の赤外線放射率の関係は特に限定されず、表面と裏面の赤外線放射率が異なる態様、及び両面が同程度の放射率を有する態様の両方を包含する。これに対し、本発明に係る第三の塗装体では、放熱性に加え、自己冷却性の向上を主目的としており、裏面に比べ、表面の赤外線放射率が高い塗装体のみに限定している点で、両者は相違する[詳細は、第三の塗装体の項で詳述する]。
具体的には、上式(1)「a×b≧0.42」の放熱特性を満足する限りにおいて、表面/裏面は、任意の赤外線放射率を定めることができる。但し、赤外線放射率の最大値は1であるから、上式(1)を満たす為には、少なくとも片面の赤外線放射率を0.42以上;a×b≧0.56を満たす為には、少なくとも片面の赤外線放射率を0.56以上;a×b≧0.64を満たす為には、少なくとも片面の赤外線放射率を0.64以上とすることが必要である。
ここで、片面の赤外線放射率は大きければ大きい程好ましく、少なくとも片面の赤外線放射率が0.65以上を満足するものは好ましい態様である。より好ましい順に、0.7以上、0.75以上、0.8以上である。両面が0.65以上の塗装体は、更に好ましい。
更に上記第二の塗装体では、上記赤外線(波長4.5〜15.4μm)の任意の波長域における分光放射率の最大値Aと最小値Bとの差(A−B)は0.35以下であることが好ましい。この「A−B」は、上記赤外線波長域における「放射率の変化幅」を表すもので、「A−B≦0.35」とは、上記赤外線波長域のいずれにおいても、安定して高い放射特性を発揮することを示している。従って、上記要件を満足するものは、例えば、放出される赤外線の波長が異なる部品を種々搭載した電子機器等の用途への適用も可能となる等、電子機器部材用への用途の拡大が期待されるものである。具体的には、上記の如く測定した任意の放射率を測定し、当該波長域における分光放射率の最大値(A)と最小値(B)との差(A−B)を「放射率の変化幅」として算出する。上記「A−B」の値は、小さければ小さい程、安定した放熱特性を得ることができ、より好ましくは0.3以下、更により好ましくは0.25以下である。
次に、上記第二の塗装体を得る為の具体的構成について説明する。上記塗装体は、金属板の表裏面に、放熱性を有する放熱塗膜が1μm超の厚さで被覆されたものであって、当該放熱塗膜は、下記(II-1)〜(II-2)の態様を包含するものである。
(II-1)放熱塗膜のうち少なくとも表面は、黒色添加剤として少なくともカーボンブラックを含有する黒色塗膜が被覆されているもの
カーボンブラックは、優れた放熱性を有する黒色添加剤であり、本発明では所望の放熱特性を得る為に、放熱塗膜のうち少なくとも一方が、少なくともカーボンブラックを含有する黒色塗膜で構成されていることが推奨される。
従って、上記黒色塗膜には、カーボンブラックのみ含有されていても良いが、その他の黒色添加剤を併用しても良く、例えばFe,Co,Ni,Cu,Mn,Mo,Ag,Sn等の酸化物、硫化物、カーバイドや黒色の金属微粉等を使用することができる。但し、所望の放熱性を確保する為には、黒色添加剤中、カーボンブラックの占める比率を10質量%以上(好ましくは30質量%以上、より好ましくは50質量%以上)に制御することが推奨される。カーボンブラックは、他の代表的な黒色添加剤(酸化物系の添加剤等)に比べて比重が小さい為、質量比率で換算した場合は、少ない比率でも充分所望の放熱効果が発揮されることになる。最も好ましいのは、黒色添加剤がカーボンブラックのみで構成される黒色塗膜である。
本発明において所望の放熱特性を発揮させる為には、特に、黒色塗膜に含まれる黒色添加剤の含有量と、黒色塗膜の膜厚を適切に制御することが必要である。尚、本発明では、上記黒色塗膜に、光輝顔料等を有する樹脂塗膜が被覆されており、当該光輝顔料等として、例えば放熱性の高い酸化チタン含有顔料を使用する場合は、当該樹脂塗膜によっても或る程度の放熱特性が得られることから、最終的には、黒色塗膜の構成と、樹脂塗膜の構成によって、所望の放熱特性を得る為の条件を決定すれば良いことになる。尚、本項(II-1)では、黒色塗膜のみによって所望の放熱特性を得る為の態様について説明することにし、次項(II-2)において、黒色塗膜等と、樹脂塗膜の組合わせによって所望の放熱特性を得る為の構成を説明することにする。
このうち黒色添加剤の含有量は、3〜20質量%とすることが好ましい。その下限は、優れた放熱特性を得ると同時に、塗装体自体の特性(塗装性、外観等)を確保する為に定められたもので、3質量%未満では所望の特性が得られない。好ましい下限は順に4質量%、5質量%、7質量%、8質量%、10質量%である。
一方、黒色添加剤の上限は放熱特性との関係では特に制限されないが、20質量%以上になると塗装性が悪くなり、塗布むら(塗装ムラ)が生じて外観不良が発生する。従って、塗装性等を考慮した好ましい上限は順に、20質量%、15質量%、13質量%、11質量%である。尚、本発明では、放熱塗膜のみ被覆された金属板とは異なり、黒色添加剤の添加量の上限を20%まで広げることができる(放熱塗膜のみ被覆された金属板の場合は概ね15質量%)。前述した通り、本発明の塗装体は、放熱塗膜の上に所定の樹脂塗膜が被覆されており、当該樹脂塗膜の形成により外観不良(塗装ムラ)が軽減される為である。
ここで、黒色塗膜中のカーボンブラックの添加量は、以下の方法により、測定することができる。
まず、被験体(分析サンプル)に溶媒を加えて加温し、被験体中の有機物を分解する。使用する溶媒の種類は、ベース系樹脂の種類によっても異なり、各樹脂の溶解度に応じて、適宜、適切な溶媒を使用すれば良いが、例えば、ベース樹脂としてポリエステル系樹脂やウレタン系樹脂を用いる場合は、水酸化ナトリウム−メタノール溶液を添加した容器(ナス型フラスコ等)に被験体を加え、この容器を70℃のウオーターバスで加温し、被験体中の有機物を分解すれば良い。
次いで、この有機物をガラスフィルター(孔径0.2μm)で濾別し、得られた残渣中の炭素を、燃焼赤外線吸収法により定量し、塗膜中のカーボンブラック濃度を算出する。
更に、上記黒色添加剤の平均粒径は5〜100nmに制御することが好ましい。上記添加剤の平均粒径が5nm未満では、所望の放熱特性が得られない他、塗料の安定性が悪く、塗装外観に劣る。一方、平均粒径が100nmを超えると放熱特性が低下するのみならず、塗装後外観が不均一となってしまう。好ましくは10nm以上、90nm以下;より好ましくは15nm以上、80nm以下である。尚、放熱特性に加え、塗膜安定性、塗装後外観均一性等を総合的に勘案すれば、黒色添加剤の最適平均粒径は概ね20〜60nm(好ましくは40nm以下)とすることが推奨される。尚、上記黒色添加剤の平均粒径の定義、及びその測定方法は、前述した通りである。
次に黒色塗膜の膜厚(下限)は、0.5μmとする。この下限は、優れた放熱特性を得る為に耐定められたもので、上記膜厚が0.5μm未満では、黒色添加剤を多く添加しても所望の放熱特性が得られない。好ましい下限は順に、1μm、3μm、5μm、7μm、10μmである。
尚、その上限は、放熱特性との関係では特に制限されないが、本発明塗装体は特に電子機器部品への適用を意図しており、当該用途との関係上、加工性の向上も要求されること;特に曲げ加工時における塗膜のクラックや剥離等の発生防止等を考慮すると、50μm以下(より好ましい順に、45μm以下、40μm以下、35μm以下、30μm以下)に制御することが推奨される。
更に、良好な加工性を備えると共に、優れた導電性も確保する為には、12μm以下(より好ましい順に11μm以下、更により好ましくは10μm以下)に制御することが推奨される。
上述した黒色添加剤の含有量は、黒色塗膜の膜厚との関係で適切に制御することが必要であり、基本的には、「黒色塗膜の膜厚が薄い場合には、黒色添加剤の含有量を多くしなければならない(即ち、単位厚さ当たりの黒色添加剤の含有量は大きくなる)が、黒色塗膜の膜厚が厚い場合には、黒色添加剤の含有量は少なくても良い(即ち、単位厚さ当たりの黒色添加剤の含有量は小さくなる)」という関係にある。
具体的には例えば黒色塗膜の膜厚が薄い(例えば3〜10μm)場合には、黒色添加剤の含有量を5〜15質量%(好ましくは8質量%以上、14質量%以下)に制御することが好ましく、一方、黒色塗膜の膜厚が厚い(例えば10〜30μm)場合には、黒色添加剤の含有量を1〜10質量%(好ましくは2質量%以上、8質量%以下)に制御することが好ましい。
以上、所望の放熱特性を得る為に必要な黒色塗膜の構成要件(黒色添加剤の含有量、及び黒色塗膜の膜厚)について説明した。
尚、上記黒色塗膜中に添加される樹脂(放熱塗膜を形成するベース樹脂)の種類は、放熱特性の観点からは特に限定されず、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、フッ素系樹脂、シリコン系樹脂、およびそれらの混合または変性した樹脂等を適宜使用することができる。但し、本発明塗装体は電子機器の筺体として使用される為、放熱性に加え、耐食性、加工性の向上も要求されることを考慮すると、上記ベース樹脂は、非親水性樹脂[具体的には、水との接触角が30°以上(より好ましくは50°以上、更により好ましくは70°以上)を満足するもの]であることが好ましい。この様な非親水性特性を満足する樹脂は、混合度合や変性の程度等によっても変化し得るが、例えばポリエステル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、フッ素系樹脂、シリコン系樹脂、およびそれらの混合または変性した樹脂等の使用が好ましく、なかでもポリエステル系樹脂若しくは変性したポリエステル系樹脂(エポキシ変性ポリエステル系樹脂、フェノール誘導体を骨格に導入したポリエステル系樹脂等の熱硬化性ポリエステル系樹脂または不飽和ポリエステル系樹脂)の使用が推奨される。
更に上記黒色塗膜には、本発明の作用を損なわない範囲で、シリカ等の顔料も添加しても良い。或いは、黒色添加剤以外の他の放熱性を有する添加剤(例えばTiO2、セラミックス、酸化鉄、酸化アルミニウム、硫酸バリウム、酸化ケイ素等を1種または2種以上の少なくとも一種)も、本発明の作用を損なわない範囲で、添加することができる。
また、上記塗膜には、架橋剤を添加することができる。本発明に用いられる架橋剤としては、例えばメラミン系化合物やイソシアネート系化合物等が挙げられ、これらを1種または2種以上、0.5〜20質量%の範囲で添加することが推奨される。
(II-2)白色顔料及び/又は光輝顔料として、放熱性を有する酸化チタンを含有する場合は、該放熱塗膜のうち少なくとも一方は、黒色添加剤として少なくともカーボンブラックを含有する黒色塗膜が被覆されているか、または金属板を黒色処理したもの
この項では、特に樹脂塗膜中に、放熱性を有する光輝顔料(少なくとも酸化チタン、若しくは酸化チタンで被覆された顔料を含有する)を含有する場合における、黒色金属板の態様について説明する。前述した通り、樹脂塗膜中に、放熱性の高い酸化チタン系顔料を含有する場合は、当該樹脂塗膜自体によっても若干の放熱特性が確保されることから、黒色金属板の態様は、前述した(II-1)とは異なり、必ずしも放熱性に極めて優れたカーボンブラックを含む黒色塗膜とする必要はなく、他の黒色添加剤を含む黒色添加剤であっても良いし、或いは、黒色下地処理された金属板も使用することができる。代表的な黒色下地処理金属板であるZn−Niめっき鋼板の放射率は概ね0.5〜0.6であり、当該黒色下地処理金属板のみによって所望の放熱特性を得ることはできないが、樹脂塗膜中に、放熱性の高い酸化チタンやパール顔料が合計で約1〜25質量%含まれている場合には、最終的に得られる樹脂塗装金属板の放射率は、本発明で規定する放射率を満足し得、所望の放熱特性が得られることになる。
ここで、「黒色下地処理された金属板」の放射率は、当該下地処理皮膜の皮膜付着量等によって決定されることから、当該皮膜付着量を制御して高い放射率を確保する為に、電解処理の電流密度や通電量等を適切に制御することが推奨される。
或いは、上記黒色下地処理された金属板には、更に、黒色添加剤(好ましくはカーボンブラック)を含有する黒色塗膜が被覆されていても良く、これにより、放熱特性を一層高めることができる。また、上記態様には、金属板の両面が、黒色下地処理されていても良く、その片面または両面に、上記黒色塗膜が被覆されているものも本発明の範囲内に包含される。
(III)耐疵付き性、耐指紋性、放熱性及び自己冷却性に優れた樹脂塗装金属板(第三の塗装体)について
上記第三の塗装体は、前述した第一の塗装体において、金属板の表裏面に塗膜が1μm超の厚さで被覆されたものであり、
(III-1)このうち表面の塗膜は、黒色添加剤として、少なくともカーボンブラックを含有しており、このうち少なくとも表面は、放熱性の黒色塗膜が被覆されているか、または
(III-2)白色顔料及び/又は光輝顔料として、放熱性を有する酸化チタンを含有する場合は、金属板の少なくとも表面は、放熱性の黒色塗膜が被覆されているか、または金属板を黒色処理したものであり、
該樹脂塗装金属体を100℃に加熱したときの赤外線(波長:4.5〜15.4μm)の積分放射率が、下式(2)及び下式(3)を満足することにより、放熱性及び自己冷却性が高められたところに特徴がある。
b≦0.9(a−0.05) … 式(2)
(a−0.05)×(b−0.05)≧0.08… 式(3)
a:表面の樹脂塗装金属板の赤外線積分放射率
b:裏面の樹脂塗装金属板の赤外線積分放射率
即ち、上記第三の塗装体では、当該塗装体を構成する樹脂塗膜及L値については上記第一の塗装体と同じである(従って、その説明は省略する)が、黒色金属板に関し、金属板の表面及び裏面[第三の塗装体でも、当該塗装体から見て外気側を「表面」、当該塗装体の内側を「裏面」と呼ぶ]に、任意の赤外線波長域(波長:4.5〜15.4μm)における積分放射率(以下、単に「赤外線積分放射率」若しくは「赤外線放射率」と略記する場合がある)に、放熱性を有する放熱塗膜が被覆された構成[具体的には前述の(III-1)または(III-2)]を採用することにより、優れた放熱性及び自己冷却性を確保したところに技術的意義がある。この様な第三の塗装体は、塗装体自体の温度上昇が抑えられるので、当該塗装体を電子機器の筺体として使用したとき、電子機器稼動時に、取扱者が触れたとしても「熱くない」と感じる等、取扱者側から見て安全な電子機器を提供することができる。しかも上記塗装体は、良好な放熱性も兼ね備えているので、これらの両特性を兼ね備えた電子機器部材は、更なる用途の拡大をもたらす点で非常に有用である。
まず、自己冷却性の指標について説明する。
式(2):b≦0.9(a−0.05)
式中、a及びbの意味、並びに赤外線積分放射率の測定方法は、
前述した(II)に記載した通りである。
上式(2)は、裏面の赤外線放射率に比べ、表面の赤外線放射率を高くし、塗装体に吸収された熱を外気側へ移動させる放熱効果を示す指標として定めたものであり、塗装体自体の温度上昇を抑制する「自己冷却性」の指標として有用である。上式は、「金属板の裏面(電子機器内部側)に比べ、金属板の表面(外気側)の赤外線放射率を高くした塗膜を施すことにより、塗装体自体の温度上昇を抑制しよう」という思想のもと、所望の自己冷却性(後記するΔT2で0.5℃以上)を確保できる表面・裏面の赤外線放射率の関係式を特定したものである。
塗装体を電子機器の筺体に使用する場合、筺体内部面(裏面)の赤外線放射率を高めると、電子機器内熱源から放出される赤外線吸収量が増加し、塗装体自体の温度は上昇してしまう。一方、筺体外部面(表面)の放射率を高めれば、塗装体から外気に向けて放出する赤外線放出量が増加し、塗装体の温度も低下する。本発明は、この様な知見に基づき、種々の実験を重ねて上式を定めたものであり、本発明によれば、金属板の裏面側で吸収(放射)される熱量よりも、金属板の表面側から放射される熱量が大きくなるので、塗装体自体の温度上昇を効率よく抑えることが可能になる。
この様に金属板の表面と裏面に放熱特性の異なる塗膜を設け、放熱特性の水準を或る程度維持しつつ、しかも塗装体の温度上昇をも抑制させた塗装体は従来知られておらず、新規であると考える。
従って、上記第三の塗装体では、aとbの赤外線放射率の差が大きい程、優れた自己冷却性が得られる。具体的には、上式(2)を変形した式(0.9a−b≧0.045)中、左辺(0.9a−b)の計算値をQ値としたとき、このQ値が大きい程好ましく、好ましい順に、0.13以上、0,24以上、0.35以上、0.47以上である。
式(3):(a−0.05)×(b−0.05)≧0.08
上式(3)は、第三の塗装体における放熱特性の指標を、表裏面の赤外線積分放射率の積によって特定したもので、左辺[(a−0.05)×(b−0.05)]の計算値R値が大きい程、放熱特性に優れていることを示す。
上記第三の塗装体における放熱特性のレベル(後記するΔT1に換算するとΔT1≧1.5℃)は、第二の塗装体のレベル(後記するΔT1≧2.6℃)に比べ、許容範囲が広い。これは、第三の塗装体では自己冷却性の向上を主な解決課題として掲げており、当該課題を達成する限りにおいては、放熱特性のレベルは、第二の塗装体に比べて若干低い態様をも包含し得るという知見に基づき、定めたものである。
次に、上記第三の塗装体を得る為の具体的構成について説明する。所望の自己冷却性を確保する為には、裏面に比べ、表面の赤外線放射率を高くして上式(2)を満足することが必要であり、且つ、放熱特性は、少なくとも上式(3)を満足することが必要である。この様に第三の塗装体では、表面・裏面に要求される放熱特性のレベルが異なる為、以下、場合を分けて説明する。
まず、上記第三の塗装体において、黒色金属板の少なくとも表面は、下記(III-1)〜(III-2)の態様を包含するものである。
(III-1)金属板の少なくとも表面は、放熱性の黒色塗膜が被覆されているもの
上記放熱塗膜は、黒色添加剤を含有する黒色塗膜であり、所定の放熱特性が得られる様、種々の放射率を有する黒色添加剤を添加することができる。従って、放射率の向上という観点からすれば、前述した(II-1)に記載の「黒色添加剤として少なくともカーボンブラックを含有する黒色塗膜が被覆されているもの」をそのまま採用することができるが、これに限定されず、カーボンブラック以外の放熱性を有する黒色添加剤を添加しても良い。尚、黒色添加剤の種類、その含有量及び黒色塗膜の膜厚は、前述した(II-1)に記載した通りである。
(III-2)白色顔料及び/又は光輝顔料として、放熱性を有する酸化チタンを含有する場合は、金属板の少なくとも表面は、放熱性の黒色塗膜が被覆されているか、または金属板を黒色処理したもの
この態様については、前述した(II-2)に記載した通りである。
次に、上記第三の塗装体における「裏面の塗膜」について説明する。前述した「表面の塗膜」は、優れた自己冷却性を確保する為に放熱塗膜とする必要があるが、「裏面の塗膜」は、第三の塗装体で掲げる所望の特性が得られる限り、必ずしも放熱塗膜とする必要はない。即ち、上記第三の塗装体には、金属板の裏面に塗膜が施されていない「片面塗装鋼板」は包含されない(塗膜なし原板の赤外線放射率は概ね0.04で、所望の自己冷却性は得られない)が、上式(2)を満足する限りにおいて、任意の塗膜を採用することができる。
具体的には、前述した黒色金属板において、表面塗膜の放射率に応じて、適宜、添加量及び塗膜厚を適切に調整して裏面の塗膜を形成することができる。尚、黒色添加剤を用いて裏面の塗膜を形成する場合、裏面が放熱性を殆ど有しない場合であっても、表面塗膜の赤外線放射率さえ、適切に制御すれば、所望の自己冷却性を確保することができる。
或いは、上記の添加剤を全く添加せず、塗膜厚を所定範囲(約2.5μm以上)に制御した塗膜も採用することができる。塗膜中に含まれる樹脂のみによっても、或る程度の放熱特性が得られるからである。
具体的には、例えば塗膜形成樹脂として非親水性のポリエステル系樹脂を使用する場合は、塗膜厚を概ね、2.5μm以上に調整すれば良い。
以上、本発明に係る第三の塗装体において、表面・裏面の塗膜を形成する黒色添加剤等について、その基本構成を説明した。その他、上記塗膜において、使用する黒色添加剤の種類や平均粒径;塗膜中に添加される樹脂や添加剤の種類等は、前述した第二の塗装体で説明した通りである。
次に、本発明の塗装体を製造する方法について説明する。本発明の塗装体は、上記成分を含む塗料を、公知の塗装方法で金属板の表面に塗布し、乾燥させて製造することができる。塗装方法は特に限定されないが、例えば表面を清浄化して、必要に応じて塗装前処理(例えばリン酸塩処理、クロメート処理など)を施した長尺金属帯表面に、ロールコーター法、スプレー法、カーテンフローコーター法などを用いて塗料を塗工し、熱風乾燥炉を通過させて乾燥させる方法などが挙げられる。被膜厚さの均一性や処理コスト、塗装効率などを総合的に勘案して実用上好ましいのは、ロールコーター法である。
尚、金属板として樹脂塗装金属板を使用する場合には、樹脂被膜との密着性または耐食性の向上目的で、塗装前処理としてリン酸塩処理またはクロメート処理を施しても構わない。但し、クロメート処理材については、樹脂塗装体使用中のクロム溶出性の観点から、クロメート処理時のCr付着量を35mg/m2以下に抑制することが好ましい。この範囲であれば、下地クロメート処理層からのクロム溶出を抑えることが可能だからである。また、従来のクロメート処理材は必要に応じて設けられる上塗り塗装の耐水密着性が、6価クロムの溶出に伴って、湿潤環境下において低下する傾向にあるが、上記金属板では溶出が抑制されるため、上塗り被膜の耐水密着性が悪化することはない。
或いは、前述したクロムフリーの下地処理を、ロールコーター法、スプレー法、浸漬処理法等により施せば、ノンクロメートタイプの塗装体を得ることができる。
更に本発明には、閉じられた空間に発熱体を内蔵する電子機器部品であって、該電子機器部品は、その外壁の全部または一部が上記電子機器部材用塗装体で構成されている電子機器部品も包含される。上記電子機器部品としては、CD、LD、DVD、CD−ROM、CD−RAM、PDP、LCD等の情報記録製品;パソコン、カーナビ、カーAV等の電気・電子・通信関連製品;プロジェクター、テレビ、ビデオ、ゲーム機等のAV機器;コピー機、プリンター等の複写機;エアコン室外機等の電源ボックスカバー、制御ボックスカバー、自動販売機、冷蔵庫等が挙げられる。
以下実施例によって本発明をさらに詳述するが、下記実施例は本発明を制限するものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で変更実施することはすべて本願発明に含まれる。
実施例1:第一の塗装体における耐疵付き性、耐指紋性、及び導電性の評価
本実施例では、本発明に係る第一の塗装体における耐疵付き性及び耐指紋性について評価した。具体的には以下に説明する通り、2種類の黒色金属板(表面のみ黒色塗膜を施したNo.1〜32/金属板の表裏面を黒色下地処理したNo.33)を作製し、その表面に、表1に示す種々の顔料を添加した塗料(ベース樹脂としてポリエステル樹脂を用い、架橋剤としてメラミン樹脂を使用)を塗布し、焼付け・乾燥してNo.1〜33の各供試材(120×150mm)を作製した。
尚、上記供試材のうち、No.7を除く供試材には、表1に示す通り、黒色塗膜若しくは樹脂塗膜に、導電性フィラーとして鱗片状Ni(厚さ1μm、大きさ15〜20μm)を所定量添加した。
[No.1〜32の黒色金属板]
電気亜鉛めっき鋼板(板厚0.6mm)を原板として、その表面に、表1に示す所定量のカーボンブラック(平均粒径25nm)を添加した塗料(ベース樹脂としてポリエステル樹脂を用い、架橋剤としてメラミン樹脂を使用)を塗布し、No.1〜32の黒色金属板(120×150mm)を作製した。
[No.33の黒色金属板]
以下に示す処理条件にて、Zn−Ni合金めっき鋼板(めっき付着量20g/m2、Ni含有率約12%)を陽極電解処理し、表裏面を黒色処理してNo.33の黒色金属板(120×150mm)を作製した。
処理液:NaClO350g/L、Na2SO4100g/L、
pH1.5、50℃
陽極電解処理条件:75A/dm2、150C/dm2
上記各供試材について、下記評価基準にて耐疵付き性、耐指紋性、及び導電性を評価した。
[耐疵付き性]
図3に、本実施例で行なった耐疵付き性試験の概略図を示す。まず、上記供試材を50×100mmにカットし、その表面(樹脂塗膜が施されている側)における耐疵付き性試験を調べる目的で、サンドペーパー(#2400、20×20mm)に500gのおもり(直径50mmの円柱)をかけた状態にて、供試材の長さ方向(100mm)にわたって合計50往復摺動した後、摺動部の外観変化(疵)を下記基準で目視評価した。本発明の第一の塗装体では、◎、●及び○の供試材を「本発明例」と評価している。
◎:疵が殆ど目立たない
●:疵が目立ち難い
○:疵がやや目立つ
×:疵が目立つ
尚、上記の試験方法は、前述した特許文献1(クリヤー塗膜の形成により、耐疵付き性等を高めたもの)や先願(特願2002−217145)で実施した耐疵付き性試験に比べ、鋼板のエッジ等に発生した疵そのものも評価している点で、より過酷な条件下における耐疵付き性を評価したものである。
[耐指紋性評価]
ワセリンを手に十分なじませてから各供試材に指紋を付け、指紋の目立ち易さを下記基準にて目視評価した。本発明の第一の塗装体では、◎、●及び○の供試材を「本発明例」と評価している。
◎:指紋が殆ど目立たない
●:指紋が僅かに目立つ
○:指紋が若干目立つ
×:指紋が目立つ
[導電性]
各供試材に三菱化学製2探針プローブ(MCP−TP01)を押し当て、15秒後の電気抵抗(Ω)を、三菱化学製「ロレスタEP」の導電性測定装置により測定する。この測定を合計10回行い、下記基準にて評価した。本実施例では、◎及び○の供試材を「導電性に優れる」と評価している。
◎:10回中9回以上が0.1mΩ以下と測定
○:10回中7〜8回が0.1mΩ以下と測定
△:10回中5〜6回が0.1mΩ以下と測定
×:10回中4回以下が0.1mΩ以下と測定
得られた結果を表1に併記する。
Figure 2005238769
表1に示す通り、樹脂塗膜に含まれる白色顔料/光輝顔料の添加量及び膜厚が本発明の要件を満足する塗装体(No.1〜3、6〜7、9〜15、17〜20、22〜27、29〜30、及び33)はいずれも、顔料の種類にかかわらず、耐疵付き性及び耐指紋性の双方に優れている。
尚、これらの塗装体(No.7を除く)はいずれも、黒色塗膜及び樹脂塗膜に、導電性フィラーとしてNiを含有しており、No.15及び22を除き、導電性に優れている。但し、No.15は、黒色塗膜と樹脂塗膜の膜厚合計が厚い為、No.22は、黒色塗膜の膜厚が15μmと厚い為、いずれも導電性が低下している。
尚、No.7は、Niを添加しない例であり、耐疵付き性及び耐指紋性は良好であるが、導電性に劣っている。
一方、樹脂塗膜に含まれる白色顔料/光輝顔料の添加量及び膜厚が本発明の要件を満足しない下記塗装体は夫々、以下の不具合を有している。
まず、No.4は、顔料を添加していないので耐疵付き性及び耐指紋性に劣っている。
No.5は、顔料の添加量が0.5%と少なく、耐疵付き性及び耐指紋性が低下している。
No.8/16は、樹脂塗膜の膜厚が薄い/厚い例であり、耐疵付き性及び耐指紋性に劣っている。尚、No.16は、黒色塗膜と樹脂塗膜の合計膜厚が大きい為、導電性も低下した。また、No.16についてのみ、JIS K 5400に準拠した密着曲げ試験を行なったところ、塗膜のクラックが非常に多く発生し、曲げ加工性も著しく低下した(表には示さず)。
また、No.21及び28は、樹脂塗膜の膜厚は本発明の範囲を満足するが顔料の添加量が多い為、耐疵付き性及び耐指紋性の双方に劣っている。
No.31は樹脂塗膜を被覆しなかった例、No.32は樹脂塗膜に顔料を添加しなかった例であり、いずれも耐疵付き性及び耐指紋性の双方に劣っている。
実施例2:第二の塗装体おける放熱性、自己冷却性及び導電性の評価
実施例1のNo.1〜29の塗装体において、その裏面に、実施例1と同様にして表2に示す黒色塗膜(全てNiを添加)を被覆して各種塗装体を作製した。このうちNo.29は、実施例1に記載の方法によって両面が黒色下地処理されているが、本実施例では更にその裏面に、表2に示す黒色塗膜を被覆している。
更に実施例1のNo.9において、裏面に被覆する黒色塗膜の構成(Niの添加なし)を種々変化させた表3の塗装体を同様に作製した(表3のNo.7は、裏面が無塗装の例である)。
この様にして得られた各供試材について、実施例1と同様にして裏面の導電性を評価すると共に、表面・裏面の放熱特性を調べる目的で、下記方法により、ΔT1で示される放熱性[No.1〜29の各供試材を用いたときの温度と、無塗装原板を用いたときの温度の差]を測定すると共に、前述した方法に基づいて表面・裏面の赤外線(波長:4.5〜15.4μm)の積分放射率を測定した。
尚、上記塗装体における耐疵付き性及び耐指紋性は、実施例1の表1に示す通りであり、説明を省略する。
[ΔT1の測定(放熱特性の評価)]
ΔT1は、金属板(黒色塗膜が被覆されていない/黒色下地処理されていない裸ままの原板)を用いた場合に比べ、本発明塗装体を用いた場合には、如何に電子機器の内部温度を低減できるかという指標を定めたものであり、本発明では、ΔT1を測定する装置として、特に、図4に示す独自の放熱性評価装置を用いた。図4の装置は、電子機器等の用途で想定される雰囲気温度(電子機器部材の種類等によって雰囲気温度は異なるが、概ね50〜70℃、最高で100℃程度)の放熱特性を評価し得る装置として極めて有用であり、これにより、電子機器用途を模擬した実用レベルでの放熱効果を正しく評価することが可能となる。
具体的には図4は、内部空間が100mm(縦)×130mm(横)×100mm(高さ)である直方体の装置である。図4中、1は供試材(被験体、測定面積は100×130mm)、2は断熱材、3は発熱体[底面積は1300mm2、当該発熱体面積内で引ける最も長い直線の長さ(図4では、対角線の長さ)は164mm]、5は測温装置である。
このうち発熱体3には、シリコンラバーヒーターを用い、その上にアルミ板(赤外線放射率は0.1以下)を密着したものを使用する。また、図4のT1位置[内部空間の中央部(発熱体3から50mm上方)]に、測温装置5として熱電対を固定する。尚、発熱体からの熱輻射の影響を排除する目的で、熱電対の下部をカバーしておく。また、断熱材2は、その種類や使用態様等によって箱内雰囲気温度が変化する(放熱性にも影響する)為、赤外線放射率が0.03〜0.06の金属板[例えば電気亜鉛めっき鋼板(JIS SECC等)]を用い、後記する方法によってT1位置の雰囲気温度(絶対値温度)が約73〜74℃の範囲になる様、断熱材の張り方等を調整する。その他、放熱性に影響を及ぼす因子(例えば供試材の固定法等)についても、同様にT1位置の雰囲気温度(絶対値温度)が約73〜74℃の範囲になる様に調整する。
次に上記装置を用いて放熱特性(ΔT1)を評価する方法について説明する。
測定に当たっては、外気条件(風等)によるデータのバラツキをなくす目的で、測定条件を、温度:23℃、相対湿度:60%に制御しておく。
まず、各供試材1を設置し、電源を入れてホットプレート3を140℃にまで加温する。ホットプレートの温度が安定して140℃となり、T1位置の温度が60℃以上になっていることを確認した後、一旦、供試材を取外す。箱内温度が50℃まで下がった時点で、再び供試材を設置し、設置してから90分後の箱内温度を夫々測定する。次に、上記供試材を用いたときの温度と、塗膜を施さない無塗装原板を用いたときの温度の差(ΔT1)を算出する。
尚、ΔT1は、各供試材につき5回ずつ測定し、そのうち上限、下限を除いた3点のデータの平均値を、本発明におけるΔT1と定めた。
この様にして算出されたΔT1は大きい程、放熱特性に優れていることを示しており、本実施例では、下記基準で相対評価した。尚、本発明に係る第二の塗装体では、◎及び●の塗装体を、「当該塗装体における優れた放熱性を発揮するもの」として評価している。
◎:3.5≦ΔT1
●:2.7≦ΔT1<3.5
○:1.5≦ΔT1<2.7
△:1.0≦ΔT1<1.5
×:ΔT<1.0
これらの結果を表2及び表3に示す。
Figure 2005238769
Figure 2005238769
表2のNo.1〜29、及び表3のNo.2〜6はいずれも、黒色塗膜の構成が本発明の要件を満たしている為、表面・裏面の赤外線放射率、ΔT1共に良好であり、放熱特性に優れている。また、表2のNo.1〜29の裏面には、導電性フィラーとしてNiを添加している為、裏面導電性も高められている。
これに対し、表3のNo.1は、カーボンブラックの添加量が1質量%と少ない為、裏面の放射率が低く、放熱特性に劣っている。
また、表3のNo.7は、裏面に塗装を施さない片面塗装体であり、所望の放熱特性が得られない。
実施例3:第三における放熱性、自己冷却性、及び導電性の評価
実施例2中、表3のNo.1〜7の塗装体における自己冷却性(ΔT2)を以下の要領で測定した。
[ΔT2の測定(自己冷却性の評価)]
ΔT2(=T2B−T2A)は、金属板(塗膜が被覆されていない裸ままの原板)を用いた場合に比べ、本発明塗装体を用いた場合には、電子機器稼動時における塗装体自体の温度上昇を如何に抑えられるかという指標(自己冷却性)を定めたものであり、前述した図4に示す独自の放熱性評価装置を用いて算出した。
式中、T2Aは、供試材として上記表3のNo.1〜7を測定したときの塗装体温度を;T2Bは、供試材として塗膜が被覆されていない金属板を使用したときの温度を、夫々、意味する。ΔT2の測定は、各供試材につき5回ずつ行い、そのうち上限、下限を除いた3点のデータの平均値を、本発明におけるΔT2と定め、下記基準で相対評価した。
尚、上記ΔT2は大きければ大きい程、自己冷却性に優れていることを意味しており、本発明に係る第三の塗装体では、◎及び○の塗装体を、「優れた自己冷却性を発揮するもの」として評価している。
◎:1.5≦ΔT2
○:0.5≦ΔT2<1.5
×:ΔT2<0.5
尚、上記塗装体における表面及び裏面の放射率、並びにΔT1のデータは、前述した表3に示す通りであるが、本発明に係る第三の塗装体では、ΔT1が◎、●及び○の塗装体を、「当該塗装体における優れた放熱性を発揮するもの」として評価している。ちなみに前述した第二の塗装体では、ΔT1が◎及び●及の塗装体を、「当該塗装体における優れた放熱性を発揮するもの」と評価している。この様に放熱性(ΔT1)に関する評価基準が異なるのは、放熱性に関して言えば、第三の塗装体は第二の塗装体に比べると若干低い態様も包含しているからである。
これらの結果を表4に示す。尚、表4中、表面及び裏面の放射率、並びに放熱性のデータは全て、表3の結果を転記したものである。
Figure 2005238769
まず、表4のNo.1、3、及び5はいずれも、Q値及びR値が本発明の要件を満足しているので良好な放熱特性を維持しつつ、しかも、優れた自己冷却性を有している。
これに対し、No.2、4、及び6は、Q値が本発明の要件を満足せず、所望の自己冷却性が得られない。
また、No.7は、裏面に塗装を施さない片面塗装体であり、R値が低い為、自己冷却性に劣っている。
本発明に係る第二の塗装体における、放熱特性に優れた範囲を示すグラフである。 本発明に係る第三の塗装体における、自己冷却性と放熱特性の双方に優れた範囲を示すグラフである。 実施例1における耐疵付き性試験の概略図である。 ΔT1(放熱性)及びΔT2(自己冷却性)の測定に使用した装置の概略図である。
符号の説明
1 供試材(被験体)
2 断熱材
3 発熱体
4 防護部材(カバー)
5 測温装置

Claims (15)

  1. 片面または両面が黒色である黒色金属板における黒色側表面の一方または両方に、白色顔料及び/又は光輝顔料を含有する樹脂塗膜が被覆された樹脂塗装金属板であり、
    該樹脂塗膜の膜厚は0.5〜10μmであり、且つ、該樹脂塗膜に含まれる白色顔料及び/又は光輝顔料の添加量は、合計で1〜25質量%であって、且つ、
    該樹脂塗装金属板の色調は、日本電色株式会社製色差計(SZS−Σ90)で測定したL値で44.0〜60.0を満足することを特徴とする耐疵付き性及び耐指紋性に優れた樹脂塗装金属板。
  2. 前記白色顔料及び/又は光輝顔料は酸化物系顔料である請求項1に記載の樹脂塗装金属板。
  3. 前記白色顔料及び/又は光輝顔料としては、酸化チタンを含有するものである請求項1または2に記載の樹脂塗装金属板。
  4. 前記黒色金属板は、金属板の少なくとも一方に黒色塗膜が被覆されているか、または金属板の少なくとも一方が黒色処理されているものである請求項1〜3のいずれかに記載の樹脂塗装金属板。
  5. 前記黒色塗膜及び/又は樹脂塗膜は、更に導電性フィラーを含有するものである請求項4に記載の樹脂塗装金属板。
  6. 前記導電性フィラーはNiである求項5に記載の樹脂塗装金属板。
  7. 前記黒色塗膜及び樹脂塗膜の両方に導電性フィラーを含有する場合は、該黒色塗膜及び樹脂塗膜の膜厚は合計で13μm以下である請求項5または6に記載の樹脂塗装金属板。
  8. 電子機器部材の構成素材として用いられるものである請求項1〜7のいずれかに記載の樹脂塗装金属板。
  9. 電子機器部材の筺体として用いられるものである請求項8に記載の樹脂塗装金属板。
  10. 更に放熱性に優れた請求項8または9に記載の樹脂塗装金属板であって、
    前記黒色金属板は、金属板の表裏面(ここで、裏面とは電子機器部材用樹脂塗装金属板の内側を意味し;表面とは電子機器部材用樹脂塗装金属板から見て外気側を意味する)に、放熱性を有する放熱塗膜が1μm超の厚さで被覆されたものであり、
    該放熱塗膜のうち少なくとも表面は、黒色添加剤として少なくともカーボンブラックを1質量%以上含有する黒色塗膜が被覆されており、
    該樹脂塗装金属体を100℃に加熱したときの赤外線(波長:4.5〜15.4μm)の積分放射率が下式(1)を満足することにより、放熱性が高められたものである請求項8または9に記載の樹脂塗装金属板。
    a×b≧0.42 … 式(1)
    a:表面の樹脂塗装金属板の赤外線積分放射率
    b:裏面の樹脂塗装金属板の赤外線積分放射率
  11. 更に放熱性に優れた請求項8または9に記載の樹脂塗装金属板であって、
    前記黒色金属板は、金属板の表裏面(ここで、裏面とは電子機器部材用樹脂塗装金属板の内側を意味し、表面とは電子機器部材用樹脂塗装金属板から見て外気側を意味する)に、放熱性を有する放熱塗膜が1μm超の厚さで被覆されたものであり、
    前記白色顔料及び/又は光輝顔料として、放熱性を有する酸化チタンを含有する場合は、該放熱塗膜のうち少なくとも一方は、黒色添加剤として少なくともカーボンブラックを1質量%以上含有する黒色塗膜が被覆されているか、または金属板を黒色処理したものであり、
    該樹脂塗装金属体を100℃に加熱したときの赤外線(波長:4.5〜15.4μm)の積分放射率が下式(1)を満足することにより、放熱性が高められたものである請求項8または9に記載の樹脂塗装金属板。
    a×b≧0.42 … 式(1)
    a:表面の樹脂塗装金属板の赤外線積分放射率
    b:裏面の樹脂塗装金属板の赤外線積分放射率
  12. 前記カーボンブラックの平均粒径は5〜100nmである請求項10または11に記載の樹脂塗装金属板。
  13. 更に、放熱性及び自己冷却性に優れた請求項8または9に記載の樹脂塗装金属板であって、
    前記黒色金属板は、金属板の表裏面(ここで、裏面とは電子機器部材用樹脂塗装金属板の内側を意味し、表面とは電子機器部材用樹脂塗装金属板から見て外気側を意味する)に塗膜が1μm超の厚さで被覆されたものであり、
    このうち少なくとも表面の塗膜は、黒色添加剤として、少なくともカーボンブラックを1質量%以上含有しており、
    該樹脂塗装金属体を100℃に加熱したときの赤外線(波長:4.5〜15.4μm)の積分放射率が、下式(2)及び下式(3)を満足することにより、放熱性及び自己冷却性が高められたものである請求項8または9に記載の樹脂塗装金属板。
    b≦0.9(a−0.05) … 式(2)
    (a−0.05)×(b−0.05)≧0.08… 式(3)
    a:表面の樹脂塗装金属板の赤外線積分放射率
    b:裏面の樹脂塗装金属板の赤外線積分放射率
  14. 更に、放熱性及び自己冷却性に優れた請求項8または9に記載の樹脂塗装金属板であって、
    前記黒色金属板は、金属板の表裏面(ここで、裏面とは電子機器部材用樹脂塗装金属板の内側を意味し、表面とは電子機器部材用樹脂塗装金属板から見て外気側を意味する)に塗膜が1μm超の厚さで被覆されたものであり、
    前記白色顔料及び/又は光輝顔料として、放熱性を有する酸化チタンを含有する場合は、金属板の少なくとも表面は、放熱性の黒色塗膜で被覆されているか、または金属板を黒色処理したものであり、
    該表面の放熱性黒色塗膜は、カーボンブラックを1質量%以上含有しており、
    該樹脂塗装金属体を100℃に加熱したときの赤外線(波長:4.5〜15.4μm)の積分放射率が、下式(2)及び下式(3)を満足することにより、放熱性及び自己冷却性が高められたものである請求項8または9に記載の樹脂塗装金属板。
    b≦0.9(a−0.05) … 式(2)
    (a−0.05)×(b−0.05)≧0.08… 式(3)
    a:表面の樹脂塗装金属板の赤外線積分放射率
    b:裏面の樹脂塗装金属板の赤外線積分放射率
  15. 閉じられた空間に発熱体を内蔵する電子機器部品であって、
    該電子機器部品は、その外壁の全部または一部が請求項1〜14のいずれかに記載の樹脂塗装金属板で構成されていることを特徴とする電子機器部品。
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