JP2005236798A - 温度補償型圧電発振器 - Google Patents

温度補償型圧電発振器 Download PDF

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Abstract

【課題】MOS容量素子の不安定領域を回避する為に、補償電圧が容量最小値の時の電位差にならないようにし、且つダイオードの順方向電圧の温度特性を補正することにより、高温時の負荷容量変動と回路の温度特性による変動を同時に抑制する。
【解決手段】周波数温度補償回路1は、周囲温度によりパラメータが変化する温度検出部3と、変化したパラメータに基づいて電圧を発生する温度補償用電圧発生回路2と、温度補償用電圧(VH、VL)と基準電圧(Vref)の電位差に基づいて容量が変化するMOS容量素子MH10、ML11と、ダイオードを内蔵した差動増幅器5bとダイオード5a、5cを備え、温度補償用電圧を所定の電圧にクリップするクリップ電圧発生回路5を備え、補償電圧の出力を常温付近でクリップする事により不安定領域を回避する。又、ダイオード5a、5cの温度特性を補償する為に、増幅器5bに逆の温度特性を持たせる。
【選択図】図1

Description

本発明は、水晶振動子等の圧電振動子を使用した圧電発振器に関し、特にMOS容量素子を使用して温度補償を行う圧電発振器において、MOS容量素子のC−V特性における不安定領域を回避する回路構成に関するものである。
近年、水晶振動子等の圧電振動子に対して発振回路、温度補償回路等を付加した圧電発振器では、周波数安定度は勿論のこと、小型化、低価格化等の要求が厳しく要求されている。圧電発振器の出力周波数は種々の要因で変化するが、比較的周波数の安定度が高い水晶発振器においても、周囲温度、電源電圧及び出力負荷等の条件変化による周波数変動があり、これ等に対応する手段として種々のものが提案されている。例えば温度変化に関しては水晶発振器に温度補償回路を付加し、この温度補償水晶発振器(以下、TCXOと記す)の発振ループの負荷容量を変化させて、水晶振動子固有の温度−周波数特性変動を相殺するように前記負荷容量を温度変化に対して制御するものがあり、大きく分けて直接温度補償方式、間接温度補償方式及びデジタル型補償方式の3つの補償方法がある。
特に、間接温度補償方式としてMOS容量素子を用いて温度補償回路を構成しているものがあり、このMOS容量素子には幾つかの構造が存在する。例えば、アキュムレーション型やPチャントランジスタ型等があげられる。その解決策としてPチャントランジスタ型のMOS容量素子を用いる方法について、同一出願人は特願2003−287153記載の技術を提案している。
図8は従来のMOS容量素子を用いた温度補償回路の一例を示す図である。これは、低温補償用MOS容量素子ML43と、高温補償用MOS容量素子MH46を用い、MOS容量素子の両端には一方に基準電圧Vref、他方に制御電圧VL、VHが抵抗44、41、45を介して印加される。このような構成にすることで、水晶振動子の3次の温度特性を補償するために、温度に対する3次の容量変化を得ている。また間接温度補償方式においては、補償電圧VL、VHがリニア変化させることが可能な点が大きな特徴である。
特願2003−287153
しかしながらアキュムレーション型の場合、その構造的な理由から図9に示すようにMOS容量素子に印加する電位差と容量の関係(以下、C−V特性と記す)40におけるCmin付近(A部)が、電圧印加後に安定するまで時間がかかるといった問題があった。この問題を解決する方法として、上記MOS容量素子のC−V特性における容量最小値(Cmin)付近の不安定領域を回避するために、クリップ電圧発生回路を使用する方法がある。この場合、図10のようにVH、VLのクリップ制御した電圧55、58は、クリップ電圧からダイオードの順方向電圧分、下がった電圧で一定となることが理想であるが、厳密にはダイオードの順方向電圧は約−2mV/℃の温度特性を持っているために、クリップ後の電圧56、57は約2mV/℃の温度特性を持つことになる。この結果、Cmin付近は間接温度補償方式において、高温補償回路の常温付近で使用するため、Cminの不安定さは発振器の常温時の周波数安定に影響を及ぼす。即ち、Cmin付近は電圧印加時の安定時間が遅いことから、発振器としての周波数起動時間に影響を与えることになり、高速起動を要求される現在の仕様を満足できない場合がある。
また、特許文献1はPチャントランジスタのソース及びドレイン領域に形成されたP型引出し電極と、N−Well領域に形成されたN型引出し電極との間にバイアスをかけることによりC−V特性における容量最小値(Cmin)付近の不安定領域を回避するものであり、新たに半導体プロセスの開発が必要となり、開発コストと多大な開発時間を要するといった問題がある。
本発明は、かかる課題に鑑み、MOS容量素子のC−V特性における容量最小値(Cmin)付近の不安定領域を回避するために、温度補償電圧が容量最小値のときの電位差にならないようにし、且つ回路的な温度特性を補償するために、ダイオードの順方向電圧の温度特性を補正することにより、高温時の負荷容量変動と回路の温度特性による変動を同時に抑制した温度補償型圧電発振器を提供することを目的する。
また他の目的は、従来のアキュムレーション型MOS容量素子の課題を外部の回路構成により解決することにより、新たな半導体プロセスの開発の必要がなくなり、開発費の大幅な削減を行うことである。
本発明はかかる課題を解決するために、請求項1は、所定の周波数で励振される圧電振動子と、発振回路と、温度変化による発振周波数の変化を補償する周波数温度補償回路と、を備えた圧電発振器であって、前記周波数温度補償回路は、周囲温度によりパラメータが変化する温度検出部と、該温度検出部により変化したパラメータに基づいて電圧を発生する温度補償用電圧発生部と、該温度補償用電圧発生部により発生された温度補償用電圧と基準電圧の電位差に基づいて容量が変化する複数のMOS容量素子と、所望の温度範囲内において前記温度補償用電圧を所定の電圧にクリップするクリップ電圧発生手段とを備えたことを特徴とする。
基本的に温度補償回路は、周囲温度を検出する温度検出部と、例えば温度検出部がサーミスタにより構成されていれば、抵抗分圧により電圧変化として取り出し、その電圧変化に基づいて電圧を発生する温度補償用電圧発生部と、その電圧と基準電圧との電位差により3次の容量特性を有するMOS容量素子により構成される。しかし、MOS容量素子は低電位側での容量値が不安定になる特性があり、この不安定さが周波数変動の要因となっていた。そこで本発明では、さらにクリップ電圧発生手段を備え、MOS容量素子の容量値が不安定になる電位にならないように、温度により直線的に変化する温度補償用電圧発生部の出力を常温近傍でクリップして一定電位以下にならないようにしたものである。
かかる発明によれば、温度補償回路に更にクリップ電圧発生手段を備え、温度により直線的に変化する温度補償用電圧発生部の出力を常温近傍でクリップするので、MOS容量素子の容量値が不安定になる領域を回避して、高温側での周波数の安定度を更に高めることができる。
なお、本明細書において、圧電素子とは、圧電基板の主面に励振電極、リード端子を形成した素子を指称し、圧電振動子とは、この圧電素子自体、或いは圧電素子を気密封止した電子部品を指称する。
請求項2は、前記クリップ電圧発生手段は、差動増幅器と、クリップ電圧を発生するクリップ電圧発生源と、前記差動増幅器の出力端と周波数温度補償回路の出力端間に備えた第1のダイオードとを備え、前記差動増幅器が該差動増幅器を構成する複数のトランジスタのうち、非反転入力端側のトランジスタのエミッタに順方向接続するよう第2のダイオードを備えたものであり、前記差動増幅器の出力端と反転入力端子とを接続し、前記差動増幅器の非反転入力端子に前記クリップ電圧発生源を接続するよう構成したことを特徴とする。
電圧をクリップするには、ダイオードと基準電圧により構成することができる。しかし、ダイオードは一般的に温度により順方向電圧が変化する特性を持っている。従って、厳密に言うとダイオードと基準電圧だけでは温度によりクリップ電圧が変化してしまい、その結果、周波数特性が変動することになる。そこで本発明では、このダイオードによる温度特性をキャンセルするために、温度特性とは逆の特性を増幅器に持たせてキャンセルするものである。その一つの方法は、入力にダイオードを内蔵した増幅器をボルテージホロア構成にして、基準電圧と内蔵ダイオードの温度特性を合成した電圧を発生して、その電圧をクリップ電圧とするものである。
かかる発明によれば、増幅器の出力端子とマイナス側入力端子を接続してボルテージホロア構成とし、且つ増幅器のプラス側にクリップ電圧発生源を接続するので、ダイオードの温度特性を打ち消す電圧がクリップ電圧に重畳されるので、ダイオードの温度特性を補償したクリップ電圧を発生することができる。
請求項3は、前記温度補償用電圧発生部は、所定の基準電圧を発生する基準制御電圧発生部と、常温を中心とした低温側の前記圧電素子の温度特性を補償する電圧を発生する低温制御電圧発生部と、高温側の温度特性を補償する電圧を発生する高温制御電圧発生部と、を備え、前記クリップ電圧発生手段は、前記低温制御電圧発生部及び高温制御電圧発生部の各出力を、前記MOS容量素子のC−V特性における低容量値領域の電位差以下にならないようにクリップすることを特徴とする。
基本的に温度補償回路は、周囲温度を検出する温度検出部と、例えば温度検出部がサーミスタにより構成されていれば、抵抗分圧により電圧変化として取り出し、その電圧変化に基づいて常温より低い温度範囲で電圧が上昇するように制御する低温制御電圧発生部と、逆に常温より高い温度範囲で電圧が上昇するように制御する高温制御電圧発生部とがある。そして、本発明ではクリップ電圧発生手段により、これらの出力が温度変化により直線的に変化する特性を、常温近傍で所定の電圧以下にならないようにクリップすることにより、特に、高温制御電圧発生部の電圧が低温側で一定電圧として、MOS容量素子のC−V特性における低容量値領域の不安定領域を回避することができる。
かかる発明によれば、クリップ電圧発生手段は、低温制御電圧発生部及び高温制御電圧発生部の各出力を、MOS容量素子のC−V特性における低容量値領域の電位差以下にならないようにクリップするので、MOS容量素子の低容量値領域での電位変化に対する容量値の不安定さを回避することができる。
請求項4は、前記クリップ電圧発生手段は、前記低温制御電圧発生部及び高温制御電圧発生部の各出力を、常温近傍を中心として高温側及び低温側に亘って前記基準電圧との電位差が所定の一定電圧になるように制御することを特徴とする。
例えば、クリップ電圧発生手段がない場合、低温制御電圧発生部の電圧は低温側から直線的に降下する電圧であり、高温制御電圧発生部の電圧は逆に高温側から直線的に上昇する電圧であり、ほぼ常温で交差する。このままの電圧をMOS容量素子に印加すると、特に高温制御電圧発生部の電圧が低くなる低温側で、MOS容量素子の容量値が不安定となり、結果的に高温側での周波数が不安定となる。
かかる発明によれば、クリップ電圧発生手段は、低温制御電圧発生部及び高温制御電圧発生部の各出力を、常温近傍を中心として高温側及び低温側に亘って基準電圧との電位差が所定の一定電圧になるように制御するので、MOS容量素子の容量値が不安定となる電位を避けて、結果的に高温側での周波数を更に安定にすることができる。
請求項5は、前記クリップ電圧発生手段は、前記クリップ電圧発生源の電圧値を任意に設定可能としたことを特徴とする。
クリップ電圧発生手段の一例として、クリップ電圧発生源をボルテージホロア型の増幅器に接続し、その出力端子とダイオードのアノードを接続し、そのカソード側を低温制御電圧発生部及び高温制御電圧発生部の各出力に接続する。この回路構成により制御電圧がクリップ電圧より高い場合は、逆バイアスとして働いて制御電圧がそのまま出力されるが、制御電圧がクリップ電圧より低くなると、順バイアスとなりクリップ電圧がそのまま出力される。従って、クリップ電圧を任意に設定できるようにしておけば、各種の電圧でクリップ電圧を設定することができる。
かかる発明によれば、クリップ電圧発生手段は、クリップ電圧発生源の電圧値を任意に設定可能としたので、各種の電圧でクリップ電圧を設定することができる。
請求項6は、前記クリップ電圧発生手段は、前記増幅器及びクリップ電圧発生源を複数備え、前記低温制御電圧発生部及び高温制御電圧発生部の各出力に個別にクリップ電圧を供給することを特徴とする。
クリップ電圧が低温側と高温側で同じであれば、1つの増幅器でクリップ電圧を発生して供給すればよいが、クリップ電圧が低温側と高温側で異なる場合は、2つの基準電圧と、2つの増幅器を用意して各出力に個別にクリップ電圧を供給する必要がある。
かかる発明によれば、クリップ電圧発生手段は、増幅器及びクリップ電圧発生源を複数備えるので、異なるクリップ電圧を低温側と高温側に個別に供給することができる。
請求項7は、前記複数のMOS容量素子は、前記圧電素子の温度特性の常温を中心として低温側の温度特性を補償する低温部補償用MOS容量素子と、高温側の温度特性を補償する高温部補償用MOS容量素子であり、前記低温部補償用MOS容量素子は前記常温近傍及びそれ以下の温度において、前記圧電発振器の負荷容量が減少するように前記温度補償用電圧発生手段により制御されると共に、前記高温部補償用MOS容量素子は前記常温近傍及びそれ以上の温度において、前記圧電発振器の負荷容量が増加するように前記温度補償用電圧発生手段により制御されることを特徴とする。
MOS容量素子の特性は、印加電圧の上昇と共に非線形に容量値が増加する特性を持っている。従って、常温を基準として低温側に対しては温度が低下すると出力電圧が上昇し、高温側に対しては温度が上昇すると出力電圧が上昇するようにして、その電圧をMOS容量素子に印加すれば、常温を基準として温度が低下すれば容量が減少して周波数を高めるように働き、逆に常温を基準として温度が上昇すれば容量が増加して周波数を低めるように働く。
かかる発明によれば、MOS容量素子を周波数温度補償回路に組み込むことにより、温度変化を電圧変化として可変容量素子に印加するので、水晶振動子の温度特性をより細かく補償することができる。
請求項8は、前記低温部補償用MOS容量素子と前記高温部補償用MOS容量素子とを極性を異なるように並列接続した並列回路を、前記発振器の発振ループに挿入し、前記低温部補償用MOS容量素子と高温部補償用MOS容量素子との接続点に前記基準制御電圧発生部の出力端を抵抗を介して接続し、前記低温部補償用MOS容量素子の他端に前記低温制御電圧発生部の出力端と前記クリップ電圧発生手段とを抵抗を介して接続すると共に、前記高温部補償用MOS容量素子の他端に前記高温制御電圧発生部の出力端と前記クリップ電圧発生手段とを抵抗を介して接続することを特徴とする。
温度補償の基本は、発振ループ内にMOS容量素子を挿入し、そのMOS容量素子の素子容量が温度によって変化するようにし、その容量変化が発振ループの負荷容量の一部として働くようにすることである。本発明のMOS容量素子は、低温側を補償するものと、高温側を補償するものを2つ用意して、夫々の極性を逆にして並列に接続すると共に、夫々の端子に抵抗を介してクリップ電圧発生手段を接続するものである。
かかる発明によれば、MOS容量素子に低温側を補償するものと、高温側を補償するものを2つ用意して、夫々の極性を逆にして並列に接続すると共に、夫々の端子に抵抗を介してクリップ電圧発生手段を接続するので、低温側と高温側の制御電圧を常温を基準として対照的に構成することができるばかりでなく、常温を中心として低温側及び高温側の電圧を一定とすることができる。
請求項9は、前記低温部補償用MOS容量素子と前記高温部補償用MOS容量素子とを極性を異なるように並列接続した並列回路の何れか一方のMOS容量素子に直列に容量素子を接続し、前記低温制御電圧発生部の出力電圧と前記高温制御電圧発生部の出力電圧を直流的に分離することを特徴とする。
低温側と高温側何れかのMOS容量素子に直列に固定容量素子を接続することにより、高温側の電圧と低温側の電圧を直流的にカットする役目を持たせることができる。
かかる発明によれば、基準電圧に対して低温側と高温側の電圧を直流的にカットして個別に印加できるので、温度変化に対して正確な制御電圧を印加することができる。
請求項1の発明によれば、温度補償回路に更にクリップ電圧発生手段を備え、温度により直線的に変化する温度補償用電圧発生部の出力を常温近傍でクリップするので、MOS容量素子の容量値が不安定になる領域を回避して、高温側での周波数の安定度を更に高めることができる。
また請求項2では、増幅器の出力端子とマイナス側入力端子を接続してボルテージホロア構成とし、且つ増幅器のプラス側にクリップ電圧発生源を接続するので、ダイオードの温度特性を打ち消す電圧がクリップ電圧に重畳されるので、ダイオードの温度特性を補償したクリップ電圧を発生することができる。
また請求項3では、クリップ電圧発生手段は、低温制御電圧発生部及び高温制御電圧発生部の各出力を、MOS容量素子のC−V特性における低容量値領域の電位差以下にならないようにクリップするので、MOS容量素子の低容量値領域での電位変化に対する容量値の不安定さを回避することができる。
また請求項4では、クリップ電圧発生手段は、低温制御電圧発生部及び高温制御電圧発生部の各出力を、常温近傍を中心として高温側及び低温側に亘って基準電圧との電位差が所定の一定電圧になるように制御するので、MOS容量素子の容量値が不安定となる電位を避けて、結果的に高温側での周波数を更に安定にすることができる。
また請求項5では、クリップ電圧発生手段は、クリップ電圧発生源の電圧値を任意に設定可能としたので、各種の電圧でクリップ電圧を設定することができる。
また請求項6では、クリップ電圧発生手段は、増幅器及びクリップ電圧発生源を複数備えるので、異なるクリップ電圧を低温側と高温側に個別に供給することができる。
また請求項7では、MOS容量素子を周波数温度補償回路に組み込むことにより、温度変化を電圧変化として可変容量素子に印加するので、水晶振動子の温度特性をより細かく補償することができる。
また請求項8では、MOS容量素子に低温側を補償するものと、高温側を補償するものを2つ用意して、夫々の極性を逆にして並列に接続すると共に、夫々の端子に抵抗を介してクリップ電圧発生手段を接続するので、低温側と高温側の制御電圧を常温を基準として対照的に構成することができるばかりでなく、常温を中心として低温側及び高温側の電圧を一定とすることができる。
また請求項9では、基準電圧に対して低温側と高温側の電圧を直流的にカットして個別に印加できるので、温度変化に対して正確な制御電圧を印加することができる。
以下、本発明を図に示した実施形態を用いて詳細に説明する。但し、この実施形態に記載される構成要素、種類、組み合わせ、形状、その相対配置などは特定的な記載がない限り、この発明の範囲をそれのみに限定する主旨ではなく単なる説明例に過ぎない。
まず、本発明の実施形態を説明する前に、図6及び図7を参照して本発明の最も主となる技術原理について説明をしておく。図6(a)はMOS容量素子のC−V特性を表す図である。この図から温度補償の原理を概略的に説明すると、電圧差が零のときを基準としてMOS容量素子のC−V特性50の立ち上がる領域(B領域)と立ち下がる領域(A領域)を利用して、それぞれ低温と高温の補償を行う構成である。図6(b)は図6(a)の特性を有するMOS容量素子を使用したときの負荷容量と温度の関係を表す図である。例えば、領域Cは後述するMOS容量素子MLにより生成され、領域Dは後述するMOS容量素子MHにより生成され、その結果、カーブ51の特性を得ることができる。即ち、低温用と高温用にそれぞれMOS容量素子が必要となる。
図7(a)は高温補償電圧と温度との関係を示す図である。即ち、高温補償には図7(b)のC−V特性カーブ31におけるマイナス電位から電位差0までの間を利用するので、Vref32とVH33が等しい(電位差=0)ところP点が高温部になるようにする。従来の補償電圧34は破線に示すような直線であった。この場合温度範囲においてもMOS容量素子は容量を可変制御されてしまうのでC−V特性のCmin部を含む図7(b)の29の領域を使用することとなり、先に延べた問題が発生していた。そこで図7(b)の領域30だけを使用するために、図7(a)のQ点まで一定電圧になるように、電圧リミット機能を設けることが有用であることがわかる。
図1は本発明の第1の実施形態に係る温度補償型圧電発振器の部分構成を示すブロック図である。この温度補償型圧電発振器100は、大きく分けて所定の周波数で励振される圧電素子を備えた圧電振動子(水晶振動子)Xと、この圧電素子に電流を流して励振させる発振用増幅器からなる発振回路12と、温度変化による発振周波数の変化を補償する周波数温度補償回路1とを備えて構成される。尚、発振回路12は図ではコルピッツ発振回路であるが、他の発振回路でも構わない。
そして周波数温度補償回路1は、周囲温度によりパラメータが変化する温度検出部3と、この温度検出部3の変化したパラメータに基づいて電圧を発生する温度補償用電圧発生回路(温度補償用電圧発生部)2と、この温度補償用電圧発生回路2が出力した温度補償用電圧(VH、VL)と基準電圧(Vref)の電位差に基づいて容量が変化するMOS容量素子MH10、ML11と、温度補償用電圧を所定の電圧にクリップするクリップ電圧発生回路(クリップ電圧発生手段)5と、コンデンサ7、9と、抵抗6、8、13とを備えて構成されている。
そしてML(低温部補償用MOS容量素子)11の対向電極とコンデンサ7との接続点Pには抵抗6を介して低温制御電圧端子(以下、VLと記す)に接続され、さらにクリップ電圧発生回路5が接続されている。またコンデンサ7の他端はコンデンサ9を介して接地され、その接続中点QがMH(高温部補償用MOS容量素子)10の対向電極と接続され、且つ抵抗8を介して高温制御電圧端子(以下、VHと記す)に接続され、さらにクリップ電圧発生回路5が接続されている。また、ML11とMH10の対向電極同士を接続した接続中点Rを圧電振動子(水晶振動子)Xに接続すると共に、抵抗13を介してVrefに接続されている。尚、本実施形態のクリップ電圧発生回路5は、差動増幅器5bの非反転入力端子にクリップ電源Vcl2が接続され、反転入力端子と出力端子が接続され、その出力端子にダイオード5a、5cのアノードが接続されている。そして各ダイオード5a、5cのカソードがそれぞれVH、VLに接続されている。またクリップ電源Vcl2は電圧が調整できるようになっている。
図2は本発明の補償電圧の温度特性を表す図である。縦軸は補償電圧を表し、横軸は周囲温度を表す。図1を参照しながら説明する。温度補償用電圧発生回路2から発生されるVrefは例えばプラスの一定の電圧21であり、抵抗13を介して接続点Rに供給する。接続点RはMLとMHの異なる極性同士が接続されているので、MLに対しては逆バイアスとなり、MHに対しては順バイアスとなる。次に動作について説明する。まずVL20に基づく回路制御の動作を温度が−40℃から+90℃まで連続して変化したとして説明する。VL20は−40℃のときVrefとの交点Rにあり、そのときのML11の端子間電圧は0VであるのでML11はC−V特性の立ち上り範囲内における所定の容量となる(図6(a)電位差0の容量)。そして温度が上昇するとVL20は直線的に低下し、それに伴ってML11の端子間の電位差が大きくなりML11の容量が増加する。そして+25℃付近になると、クリップ電圧発生回路5のクリップ電圧Vcl2よりVLが低くなるよう回路設定することで、+25℃付近でのクリップ電圧発生回路5のダイオード5cが順バイアスとなり、接続点Pはクリップ電圧Vcl2の電圧となる。その後、温度が上昇すると補償電圧発生回路からの出力電圧VLは更に低下するが、クリップ電圧Vcl2によりクリップされているので接続点PにおけるVL20は図2に示すごとく一定となる。図ではクリップ電圧Vcl1とクリップ電圧Vcl2が異なる電圧に記されているが、この例の場合はVcl1=Vcl2となる。
次にVH22の動作を温度が+90℃から−40℃まで連続して変化したとして説明する。VH22は+90℃のときVrefとの交点Sにあり、そのときのMH10の端子間電圧は0VであるのでMH10はC−V特性の立ち上り範囲内における所定の容量となる(図6(a)電位差0の容量)。そして温度が低下するとVH22は直線的に低下し、それに伴ってMH10の順バイアスの電位差が大きくなり容量が減少する。そして+25℃付近になると、クリップ電圧発生回路5のクリップ電圧Vcl2よりVH22が低くなるよう回路設定することで、クリップ電圧発生回路5のダイオード5aが順バイアスとなり接続点Qはクリップ電圧Vcl2の電圧となる。その後、温度が低下すると、補償電圧発生回路からの出力電圧VHは更に低下するが、クリップ電圧Vcl2によりクリップされているので接続点QにおけるVH22は図2のごとく一定となる。
ここで、厳密にはダイオード5a、5cの順方向電圧は約−2mV/℃の温度特性を持っているために、VH・VLのクリップ後の電圧は図10で説明した通り約2mV/℃の温度特性を持つことになる。そこで本実施形態では、図3のようなダイオードDOをマイナス端子に接続した増幅器を用い、反転入力端子と出力端子を接続してボルテージホロア構成とし、非反転入力端子にクリップ電圧Vcl2を接続することにより、出力にはダイオードDOの順方向電圧VBE(温度特性)を加算した電圧(Vcl2+VBE)が発生するようにする。そしてこの電圧をダイオード5a、5cに印加すると、ダイオード5a、5cは(−VBE)の温度特性を持つので、結果的にダイオード5a、5cのアノードには(Vcl2+VBE)+(−VBE)=Vcl2のみが印加されたことになり、ダイオードD0の端子間電圧の温度特性がダイオード5a、5cの温度特性をキャンセルすることができる。
尚、低温補償に関してはMOS容量素子のCmax側を使用するので(図9参照)、C−V特性の不安定領域(Cmin)を使用する高温補償と比較して大きな問題は発生しないが、本実施形態のようにVLもクリップさせることで、常温付近の電圧を不変のものにすることができる。即ち、従来では常温付近ではMOS容量素子のC−V特性自身が飽和領域に達するように使用(設計)しているため、VH、VLが変化しても容量が変わらない(=周波数が安定)ということで、図2の破線のような電圧を使用していた。しかし実際は完全な飽和領域でなかったり、特性バラツキにより常温付近でも容量変化(感度をもっている)がおこる場合があった。それにより、TCXOとして温度補償する時、VH、VL電圧に関しては図4(a)のように電圧オフセット調整や図4(b)のようにGain調整を行うため、常温付近(A領域、B領域)の電圧が変化してしまう。この時、容量値が変化しなければ問題ないが、VL25、29、VH26、30が変化してしまう。従って、基準となる常温の周波数が温度補償することでずれてしまう結果となり、非常に温度補償しにくい状態が発生していた。そこで本実施形態では、クリップ電圧発生回路5を設けることにより、常温付近の電圧をクリップして一定な値とするため、容量(周波数)的に安定することとなる。
図5は本発明の第2の実施形態に係る温度補償型圧電発振器110の部分構成を示すブロック図である。同じ構成要素には同じ参照番号が付されているので、重複する説明は省略する。図5が図1と異なる点は、クリップ電圧発生回路4を追加して、VHとVLを個別にクリップした点である。VHはクリップ電圧発生回路5によりクリップされるのは図1と同様である。図5のクリップ電圧発生回路4は、差動増幅器4bのプラス端子にクリップ電源Vcl1が直列に接続され、マイナス端子と出力端子が接続され、その出力端子からダイオード5cのアノードが接続されている。そしてダイオード5cのカソードがVLに接続されている。またクリップ電源Vcl1は電圧が調整できるようになっている。
本発明の第1の実施例形態に係る温度補償型圧電発振器の部分構成を示すブロック図。 本発明の補償電圧の温度特性を表す図。 ダイオードを内蔵した増幅器の一例を示す図。 TCXOとして温度補償する時、VH、VL電圧に関して電圧オフセット調整やGain調整を行うため、常温付近の電圧が変化してしまう様子を表す図。 本発明の第2の実施例形態に係る温度補償型圧電発振器の部分構成を示すブロック図。 本発明の最も主となる技術原理について説明する図。 本発明の最も主となる技術原理について説明する図。 従来のMOS容量素子を用いた温度補償回路の一例を示す図。 MOS容量素子に印加する電位差と容量の関係を表す図。 クリップ電圧発生回路を使用する場合にダイオードの温度特性により特性が変動する様子を説明する図。
符号の説明
1 周波数温度補償回路、2 温度補償用電圧発生回路、3 温度検出部、5 クリップ電圧発生回路、5a、5c ダイオード、5b 差動増幅器、Vcl2 クリップ電源、6、8、13 抵抗、7、9 直流阻止用コンデンサ、10、11 MOS容量素子、X 水晶振動子

Claims (9)

  1. 所定の周波数で励振される圧電振動子と、発振回路と、温度変化による発振周波数の変化を補償する周波数温度補償回路と、を備えた圧電発振器であって、
    前記周波数温度補償回路は、周囲温度によりパラメータが変化する温度検出部と、該温度検出部により変化したパラメータに基づいて電圧を発生する温度補償用電圧発生部と、該温度補償用電圧発生部により発生された温度補償用電圧と基準電圧の電位差に基づいて容量が変化する複数のMOS容量素子と、所望の温度範囲内において前記温度補償用電圧を所定の電圧にクリップするクリップ電圧発生手段とを備えたことを特徴とする温度補償型圧電発振器。
  2. 前記クリップ電圧発生手段は、差動増幅器と、クリップ電圧を発生するクリップ電圧発生源と、前記差動増幅器の出力端と周波数温度補償回路の出力端間に備えた第1のダイオードとを備え、前記差動増幅器が該差動増幅器を構成する複数のトランジスタのうち、非反転入力端側のトランジスタのエミッタに順方向接続するよう第2のダイオードを備えたものであり、前記差動増幅器の出力端と反転入力端子とを接続し、前記差動増幅器の非反転入力端子に前記クリップ電圧発生源を接続するよう構成したことを特徴とする請求項1記載の温度補償型圧電発振器。
  3. 前記温度補償用電圧発生部は、所定の基準電圧を発生する基準制御電圧発生部と、常温を中心とした低温側の前記圧電素子の温度特性を補償する電圧を発生する低温制御電圧発生部と、高温側の温度特性を補償する電圧を発生する高温制御電圧発生部と、を備え、
    前記クリップ電圧発生手段は、前記低温制御電圧発生部及び高温制御電圧発生部の各出力を、前記MOS容量素子のC−V特性における低容量値領域の電位差以下にならないようにクリップすることを特徴とする請求項1又は2に記載の温度補償型圧電発振器。
  4. 前記クリップ電圧発生手段は、前記低温制御電圧発生部及び高温制御電圧発生部の各出力を、常温近傍を中心として高温側及び低温側に亘って前記基準電圧との電位差が所定の一定電圧になるように制御することを特徴とする請求項1乃至3に記載の温度補償型圧電発振器。
  5. 前記クリップ電圧発生手段は、前記クリップ電圧発生源の電圧値を任意に設定可能としたことを特徴とする請求項2に記載の温度補償型圧電発振器。
  6. 前記クリップ電圧発生手段は、前記増幅器及びクリップ電圧発生源を複数備え、前記低温制御電圧発生部及び高温制御電圧発生部の各出力に個別にクリップ電圧を供給することを特徴とする請求項2に記載の温度補償型圧電発振器。
  7. 前記複数のMOS容量素子は、前記圧電素子の温度特性の常温を中心として低温側の温度特性を補償する低温部補償用MOS容量素子と、高温側の温度特性を補償する高温部補償用MOS容量素子であり、前記低温部補償用MOS容量素子は前記常温近傍及びそれ以下の温度において、前記圧電発振器の負荷容量が減少するように前記温度補償用電圧発生手段により制御されると共に、前記高温部補償用MOS容量素子は前記常温近傍及びそれ以上の温度において、前記圧電発振器の負荷容量が増加するように前記温度補償用電圧発生手段により制御されることを特徴とする請求項1に記載の温度補償型圧電発振器。
  8. 前記低温部補償用MOS容量素子と前記高温部補償用MOS容量素子とを極性を異なるように並列接続した並列回路を、前記発振器の発振ループに挿入し、前記低温部補償用MOS容量素子と高温部補償用MOS容量素子との接続点に前記基準制御電圧発生部の出力端を抵抗を介して接続し、前記低温部補償用MOS容量素子の他端に前記低温制御電圧発生部の出力端と前記クリップ電圧発生手段とを抵抗を介して接続すると共に、前記高温部補償用MOS容量素子の他端に前記高温制御電圧発生部の出力端と前記クリップ電圧発生手段とを抵抗を介して接続することを特徴とする請求項1又は2に記載の温度補償型圧電発振器。
  9. 前記低温部補償用MOS容量素子と前記高温部補償用MOS容量素子とを極性を異なるように並列接続した並列回路の何れか一方のMOS容量素子に直列に容量素子を接続し、前記低温制御電圧発生部の出力電圧と前記高温制御電圧発生部の出力電圧を直流的に分離することを特徴とする請求項7に記載の温度補償型圧電発振器。
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