JP2005231023A - 電解加工用電極工具及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】電解加工用電極工具の表面における導電パターンを、電極基材の表面を溝加工することにより設けられた丘(ランド)により描かれる導電パターンの表面を絶縁樹脂でモールドし、その表面を機械的研磨加工することにより導電パターンの丘(ランド)を露出させ、次いで、導電パターンの丘(ランド)を化学的に溶解することにより得られる導電パターン面が絶縁樹脂面より低く形成された電解加工用電極工具であって、両者の高低差が1〜5μmであり、所望により、さらに導電パターン面に金属層を設けることを特長とする電解加工用電極工具及びその製造方法。
【選択図】 図4
Description
また、被加工物表面に電極工具の導電部の露出パターンに対応した形状の動圧溝を形成する動圧溝加工装置において、電解加工用電極工具が、電極基材の表面を、樹脂微粒子を付着させて焼き付けてなる絶縁樹脂の層によって上記所定パターン以外の領域を被覆したものが知られている。さらに、電極基材の表面に、加工すべき動圧溝パターンの孔があらかじめ形成され樹脂シートを固定してなる構造のものを用いたものが記載され、樹脂微粒子を基体表面に付着させて焼き付けてなる樹脂層を非導電性材料として用いることにより、従来のレジスト膜の形成や樹脂の埋め込みに比して、基体に対する密着力を大幅に向上させることができ、樹脂微粒子の材質としては、高い絶縁性を有するポリイミド樹脂等を好適に採用することができる旨記載され、一方、あらかじめ所要形状にパターニングした樹脂シート用いれば、従来のレジスト膜の形成や樹脂の埋め込みにより非導電性材料を付着させた従来の電極工具に比して、基体に対する非導電性材料の密着力を大幅に向上させることができるとしている(特許文献1)。
さらに、微細な表面形状の電解加工に用いられる電解加工用電極工具においては、加工パターン以外の領域の絶縁被膜も微細になるため、これに用いられる非導電材料である絶縁樹脂体の基体に対する密着力が弱くなり易く、電解加工中に流される電解液の影響により、この絶縁体が剥離してしまうという問題があり、絶縁体に用いられる非導電性材料樹脂は、紫外線あるいは熱等により硬化を行うものが多く、電極工具に用いられる導電性基体との密着性は一般的に低い。更にまた、このような微細な表面形状の電解加工は、電極工具と被加工物との加工間隙を狭く設定して行われることから、間隙の壁面に形成されている絶縁被膜が電解液の流動から受けるせん断方向の力も大きい。このような絶縁被膜の剥離が発生すると、正確な加工パターンを被加工物に転写することができなくなる上、絶縁被膜の剥離片が電極工具と被加工物との加工間隙を詰まらせてしまうという問題も発生する。この剥離片の詰まりは、電解液の流れを部分的に阻害し、その部分の加工形状の不良を引き起こして、この被加工物を部材として使用している最終製品、つまり動圧軸受等の歩留まりを左右することとなる。また、この剥離片の詰まりは、最悪の場合、何らかの形で電気的短絡を引き起こし、電極工具と被加工物の両者に損傷を生じさせ、これらの交換作業を余儀なくされることもある。そこで、前記の目的を達成するために、表面に凹部を形成すべき被加工物と、導電性基体の表面に所定パターンの導電部が形成されてなる電極とを、電解液中に対向させて浸漬するとともに、これら被加工物と電極とを加工用電源の正極および負極にそれぞれ接続して電流を流すことによって、被加工物表面に電極の導電部パターンに対応した形状の凹部を形成する電解加工用電極において、前記電極の表面における前記導電部パターン以外の領域には、絶縁被膜として電着塗装膜が形成されていることを特徴とする電解加工用電極工具が記載され、電着塗装に用いられる樹脂(電着塗料)としては、電解加工における耐電圧および電解液に対する耐食性を考慮して、エポキシ系樹脂、ウレタン系樹脂あるいはポリイミド系樹脂が好適に採用されること、この発明の電解加工用電極によれば、電極(電極工具)表面の導電部以外の領域を覆う絶縁被膜として、電着塗料による被膜を用いることにより、基体と絶縁被膜との密着力を向上させることができる。また、これらの密着面は、電解液が浸透し難く、剥離等の損傷の発生が抑えられることから、電極工具表面の加工パターンが長期にわたり維持されることが記載されている。
また、好ましくは、その後、電着塗装膜上面に、別の非導電性材料樹脂からなる被膜が形成される。この場合に使用される非導電性材料樹脂は特に限定されないが、その樹脂は、先に形成されている電着塗装膜との密着性(なじみ)を考慮して選択されることが望ましいこと、そして、表面に非導電性材料膜が形成された基体は、研磨加工等により、表面の導電部上の非導電性材料膜と電着塗装膜を取り去り、基体表面の加工パターンを露出させることで、導電部と絶縁被膜とからなる表面が面一となった電極工具を得ることができる旨記載されている(特許文献2)。
このタイプの電解加工用電極工具に関してさらに代表的な従来技術がある(特許文献3参照)。
ここには、電解加工用電極工具の被加工物に対向する部分のうち、動圧溝に対応しない部分に凹部を形成して、該凹部に非導電性材料(絶縁樹脂2)を設け、この非導電性材で覆われない部分を電極露出部(電極パターン3)に形成すると共に、電極露出部(電極パターン3)の表面が、非導電性材料(絶縁樹脂2)の表面に対して面一となるように形成し、この電解加工用電極工具を用いて動圧溝の電解加工を行うようにした構成にして、軸受流体に軸支用の動圧を発生させる動圧溝を動圧軸受の動圧面に対して電解加工で所定の溝形状に加工するものである。このような構成を有する動圧軸受における動圧溝の電解加工方法においては、電極露出部(電極パターン3)の表面が非導電性材料(絶縁樹脂2)の表面に対して面一にされて電解加工が行われることから、転写精度を向上すべく加工間隙が狭くされても、加工により生じた電解生成物や温度上昇をした電解液の滞留がなされなくなって電解条件が所望に保たれると共に、非導電性材料(絶縁樹脂2)に対する電解生成物の衝突に起因して発生する非導電性材料の剥離片による詰まりがなくされて電解液の流速低下が防止され、特に面一にされた場合にあっては凹凸がなくされることから電解液の流速低下がさらに防止され、しかもこのように流速低下が防止されることによって電流密度の低下が防止されて被加工物の加工表面の面粗さが向上されると共に、このように電流密度の低下が防止されることによって電解加工速度が高められるようになるとしている。
そこで、本発明者は、電極基材表面を溝加工することにより設けられた丘(ランド)により描かれる導電パターンにおいて、丘(ランド)が溝(グルーブ)への落ち込み方向へ向かって張り出さないようにし、正確な導電パターンが作れるように工夫した。すなわち、電極基材の表面を溝加工することにより設けられた丘(ランド)と溝(グルーブ)より成り、丘(ランド)により描かれる導電パターンに対応する電極基材表面が、溝(グルーブ)に一体成型され埋め込まれ絶縁樹脂面より低く形成された電解加工用電極工具であって、両者の高低差が1〜5μmであることを特長とする電解加工用電極工具を見出した。
本発明において、電解加工用電極工具における導電パターン面を絶縁樹脂面より1〜5μm低く形成することにより、バリを除去することができ、その結果、微細な導電パターンであっても、導電パターンに対応した形状の凹部を有する被加工物(ワーク)を、再現性良く20万個以上作れる電極工具が得られることがわかった。
また、導電パターンに対応する電極基材表面と絶縁樹脂面との高低差が1μm以下では、バリが見られることがあり、高低差が5μm以上でもバリの除去効果は変わらず、金属面である導電パターンの丘(ランド)のみを化学的に溶解するのに時間がかかり、工程管理が難しくなる。とくに、高低差が3μm程度が良い。
さらに、本発明は、電極基材の表面を溝加工することにより設けられた丘(ランド)と溝(グルーブ)より成り、丘(ランド)により描かれる導電パターンに対応する電極基材の表面が、溝(グルーブ)に一体成型されて埋め込まれた絶縁樹脂の表面より低く形成された電解加工用電極工具であって、両者の高低差が1〜5μmであり、高低差の一部又は全部に相当する厚さで導電パターンに対応する電極基材の表面に金属を被覆させて導電パターン面を形成することができる。
また、被覆金属が、Pt、Au、Ag、Pd、Ni、Crから選ばれる金属の1種であることを特徴とすることができる。
さらにまた、本発明は、被覆金属の厚さを高低差の1/5〜5/5とすることができる。
また、本発明によれば、導電パターンの丘におけるバリを取る事が出来るので、微細な丘(ランド)幅のパターンを正確に形成することが出来る。さらに、本発明の電解加工用電極工具の製造方法によれば、バリの発生しやすい電極基材や絶縁樹脂であっても、バリを取ることが出来るため、その組み合わせを適宜選択し、所望の特性の電解加工用電極工具を作成することが出来る。これによって、より小型の流体軸受の製造が可能となる。
また、導電パターンに対応する電極基材の表面に、銅系合金や鉄系合金よりも電気特性に優れ、化学的に安定な導電性材料であるPt、Au、Ag、Pd、Ni、Crから選ばれる1種の金属を被覆させることによって、電解加工中に発生する電解生成物の付着が抑えられ、導電パターン面の初期状態が長期に亘り維持される。そのため、加工品質が安定すると共に、電極工具の寿命(導電パターンの再現性を確保しながら製造できるワークの限界個数)を更に延ばすことが出来、加工コストを低減させることが出来る。
さらに、本発明において用いる電解加工用電極工具の電極基材は、銅、銅系合金あるいは鉄系合金が挙げられるが、銅系合金としては真鍮や燐青銅、鉄系合金としてはオーステナイト系ステンレス(SUS303,304等)などが挙げられる。
さらに、本発明においては、電極基材の表面を溝加工することにより設けられた丘(ランド)により描かれる導電パターンを作成するに際し、丘(ランド)が溝(グルーブ)に落ち込む端部にアールを付けることにより、研磨加工中に丘(ランド)が溝(グルーブ)に落ち込む端部が拡張するのを防止させ、バリの発生を防ぐことができる。
また、本発明は、電極基材の表面を溝加工することにより設けられた丘(ランド)により描かれる導電パターンを作成し、次いで、電極基材の表面を絶縁樹脂でモールドし、さらに、絶縁樹脂の表面を機械的研磨加工することにより導電パターンの丘(ランド)を露出させ、次いで、導電パターンの丘(ランド)のみを化学的に溶解することを特徴とする、導電パターンに対応する電極基材の表面が絶縁樹脂面より1〜5μm低く形成された電解加工用電極を作成し、次いでPt、Au、Ag、Pd、Ni、Crから選ばれる金属の1種を蒸着若しくはメッキにより、1〜5μmの高低差の一部又は全部に相当する厚さで金属を被覆させたことを特徴とする導電パターン面が形成された電解加工用電極工具の製造方法でもある。
さらに、本発明は、被覆金属の厚さを調節して、高低差の1/5〜5/5とすることが出来る。
また、本発明において絶縁樹脂の表面を機械的研磨加工する方法は、周知の研磨方法を採用することが出来る。
さらに、導電パターンの丘(ランド)のみを化学的に溶解する方法は、電極基材を酸やアルカリで溶解させるエッチングが挙げられる。電気化学的な電解加工によって行っても良い。
また、本発明においては、図7に示すように、導電パターンに対応する電極基材の表面を絶縁樹脂の表面よりも1〜5μm低く形成し、次いで、蒸着やメッキ等により、その高低差の一部又は全部に相当する厚さの金属で被覆させることができる。電気特性に優れ、化学的に安定な金属で導電パターンに対応する電極基材の表面を被覆させることにより、電解加工中に発生する電解生成物の付着が抑えられ、導電パターン面の初期状態が長期に亘って維持される。そのため、加工品質が安定し、より長時間の使用に耐えることが可能な電極工具が得られる。
さらに、本発明は、被覆金属を、Pt、Au、Ag、Pd、Ni、Crから選ばれる金属の1種とすることができるが、特にPtが好ましく用いられる。
図3に示す手順により、電解加工用電極工具を作成した。
電極基材1として、銅系合金である真鍮を用いた。加工電極となる面を洗浄したのち、図5に示すパターンがランドになるように、ミーリング加工により溝加工を施した。導電パターン(丘ランド)3が得られた後、加工面を脱脂洗浄した。次いで、加工面の上からエポキシ樹脂でモールド成型加工した。硬い絶縁樹脂が得られた。絶縁樹脂は、研磨により除去される絶縁樹脂層4と、研磨後に溝(グルーブ)に残るべき絶縁樹脂2より構成される。絶縁樹脂層4を研磨機で研磨することで、徐々に薄くして導電パターン(丘(ランド))3が見えるまで研磨した。丘(ランド)が溝(グルーブ)へ落ち込む端部5付近に、ところどころバリが発生していた。
次いで、硝酸60%溶液に3秒間浸漬して、純水で洗浄した。導電パターン(丘(ランド))3がエッチングされて、バリが完全に取れていた。導電パターン面が絶縁樹脂面より低く形成された電解加工用電極工具が得られ、導電パターン面と絶縁樹脂面の高低差は2μmであった。
図4に示す手順により、電解加工用電極工具を作成した。
電極基材1として、銅系合金である真鍮を用いた。加工電極となる面を洗浄したのち、図5に示すパターンがランドになるように、ミーリング加工により溝加工を施した。導電パターン(丘(ランド))3が得られた後、丘(ランド)が溝(グルーブ)に落ち込む端部にアールを付け、加工面を洗浄した。次いで、加工面の上からエポキシ樹脂でモールド成型加工した。硬い絶縁樹脂が得られた。絶縁樹脂は、研磨により除去される絶縁樹脂層4と、研磨後に溝(グルーブ)に残るべき絶縁樹脂2より構成される。絶縁樹脂層4を研磨機で研磨することで、徐々に薄くして導電パターン(丘(ランド))3が見えるまで研磨した。丘(ランド)が溝(グルーブ)へ落ち込む端部5付近のバリ発生が殆んど見られなかった。
次いで、硝酸60%溶液に2秒間浸漬して、純水で洗浄した。導電パターン(丘(ランド))3がエッチングされて、バリが完全に取れていた。導電パターン面が絶縁樹脂面より低く形成された電解加工用電極工具が得られ、導電パターン面と絶縁樹脂面の高低差は3μmであった。
図4に示す手順により、電解加工用電極工具を作成した。
電極基材1として、オーステナイト系ステンレスであるSUS304を用いた。加工電極となる面を洗浄したのち、図5に示すパターンがランドになるように、レーザー加工により溝加工を施した。
導電パターン3が得られた後、丘(ランド)が溝(グルーブ)に落ち込む端部にアールを付け、加工面を脱脂洗浄した。次いで、加工面の上からエポキシ樹脂でモールド成形加工した。硬い絶縁樹脂2が得られた。絶縁樹脂層4を研磨することで、徐々に薄くして導電パターン(丘(ランド))3が見えるまで研磨した。丘(ランド)が溝(グルーブ)へ落ち込む端部5付近のバリの発生が殆んど見られなかった。
次いで、硝酸60%溶液に3秒間浸漬して、純水で洗浄した。導電パターン(丘(ランド))3がエッチングされて、バリが完全に取れていた。導電パターン面が絶縁樹脂面より低く形成された電解加工用電極工具が得られ、導電パターン面と絶縁樹脂面の高低差は1μmであった。
図3に示す手順により、電解加工用電極工具を作成した。
電極基材1として、オーステナイト系ステンレスであるSUS304を用いた。加工電極となる面を洗浄したのち、図5に示すパターンがランドになるように、ミーリング加工により溝加工を施した。導電パターン(丘ランド)3が得られた後、加工面を脱脂洗浄した。次いで、加工面の上からエポキシ樹脂でモールド成型加工した。硬い絶縁樹脂が得られた。絶縁樹脂は、研磨により除去される絶縁樹脂層4と、研磨後に溝(グルーブ)に残るべき絶縁樹脂2より構成される。絶縁樹脂層4を研磨機で研磨することで、徐々に薄くして導電パターン(丘(ランド))3が見えるまで研磨した。丘(ランド)が溝(グルーブ)へ落ち込む端部5付近に、ところどころバリが発生していた。
次いで、硝酸60%溶液に浸漬して、純水で洗浄した。導電パターン(丘(ランド))3がエッチングされて、バリが完全に取れていた。導電パターンに対応する電極基材表面が絶縁樹脂面より低く形成された電解加工用電極工具が得られ、導電パターンに対応する電極基材表面と絶縁樹脂面の高低差は4.0μmであった。
次いで、得られた電解加工用電極工具を、白金のメッキ液に浸漬し、2.0μmの白金層を導電パターンに対応する電極基材表面に設けた。
得られた電解加工用電極工具は、図7に示すように、導電パターンの表面に白金メッキ層3’を有していた。白金メッキ後の導電パターン面と絶縁樹脂面の高低差は2.0μmであった。
図4に示す手順により、電解加工用電極工具を作成した。
電極基材1として、銅系合金である真鍮を用いた。加工電極となる面を洗浄したのち、図5に示すパターンがランドになるように、ミーリング加工により溝加工を施した。導電パターン(丘ランド)3が得られた後、丘(ランド)が溝(グルーブ)に落ち込む端部にアールを付け、加工面を脱脂洗浄した。次いで、加工面の上からエポキシ樹脂でモールド成型加工した。硬い絶縁樹脂が得られた。絶縁樹脂は、研磨により除去される絶縁樹脂層4と、研磨後に溝(グルーブ)に残るべき絶縁樹脂2より構成される。絶縁樹脂層4を研磨機で研磨することで、徐々に薄くして導電パターン(丘(ランド))3が見えるまで研磨した。丘(ランド)が溝(グルーブ)へ落ち込む端部5付近に、バリ発生が殆んど見られなかった。
次いで、硝酸60%溶液に浸漬して、純水で洗浄した。導電パターン(丘(ランド))3がエッチングされて、バリが完全に取れていた。導電パターン面が絶縁樹脂面より低く形成された電解加工用電極工具が得られ、導電パターンに対応する電極基材表面と絶縁樹脂面の高低差は5.0μmであった。
次いで、得られた電解加工用電極工具を洗浄した後、白金のメッキ液に浸漬し、2.0μmの白金層を導電パターンに対応する電極基材表面に設けた。
得られた電解加工用電極工具は、図7に示すように、導電パターンの表面に白金メッキ層3’を有していた。白金メッキ後の導電パターン面と絶縁樹脂面の高低差は3.0μmであった。
図3に示す手順により、電解加工用電極工具を作成した。
電極基材1として、オーステナイト系ステンレスであるSUS304を用いた。加工電極となる面を洗浄したのち、図5に示すパターンがランドになるように、ミーリング加工により溝加工を施した。導電パターン(丘ランド)3が得られた後、加工面を脱脂洗浄した。次いで、加工面の上からエポキシ樹脂でモールド成型加工した。硬い絶縁樹脂が得られた。絶縁樹脂は、研磨により除去される絶縁樹脂層4と、研磨後に溝(グルーブ)に残るべき絶縁樹脂2より構成される。絶縁樹脂層4を研磨機で研磨することで、徐々に薄くして導電パターン(丘(ランド))3が見えるまで研磨した。丘(ランド)が溝(グルーブ)へ落ち込む端部5付近に、ところどころバリが発生していた。
次いで、硝酸60%溶液に浸漬して、純水で洗浄した。導電パターン(丘(ランド))3がエッチングされて、バリが完全に取れていた。導電パターンに対応する電極基材表面が絶縁樹脂面より低く形成された電解加工用電極工具が得られ、導電パターンに対応する電極基材表面と絶縁樹脂面の高低差は3μmであった。
次いで、得られた電解加工用電極工具を、白金のメッキ液に浸漬し、2.0μmの白金層を導電パターンに対応する電極基材表面に設けた。
得られた電解加工用電極工具は、図7に示すように、導電パターンの表面に白金メッキ層3’を有していた。白金メッキ後の導電パターン面と絶縁樹脂面の高低差は、1.0μmであった。
図3に示す手順により、電解加工用電極工具を作成した。
電極基材1として、オーステナイト系ステンレスであるSUS304を用いた。加工電極となる面を洗浄したのち、図5に示すパターンがランドになるように、ミーリング加工により溝加工を施した。導電パターン(丘ランド)3が得られた後、加工面を脱脂洗浄した。次いで、加工面の上からエポキシ樹脂でモールド成型加工した。硬いから絶縁樹脂が得られた。絶縁樹脂は、研磨により除去される絶縁樹脂層4と、研磨後に溝(グルーブ)に残るべき絶縁樹脂2より構成される。絶縁樹脂層4を研磨機で研磨することで、徐々に薄くして導電パターン(丘(ランド))3が見えるまで研磨した。丘(ランド)が溝(グルーブ)へ落ち込む端部5付近に、ところどころバリが発生していた。
次いで、硝酸60%溶液に浸漬して、純水で洗浄した。導電パターン(丘(ランド))3がエッチングされて、バリが完全に取れていた。導電パターンに対応する電極基材表面が絶縁樹脂面より低く形成された電解加工用電極工具が得られ、導電パターンに対応する電極基材表面と絶縁樹脂面の高低差は4.0μmであった。
次いで、得られた電解加工用電極工具を、白金のメッキ液に浸漬し、4.0μmの白金層を導電パターンに設ける。
得られた電解加工用電極工具は、導電パターンの表面に白金メッキ層を有していた。白金メッキ後の導電パターン面と絶縁樹脂面が面一な電解加工用電極工具が得られた。
実施例1及び2と同様にして表1に示す条件で電解加工用電極工具を作成し、実用に供した。その結果も併せて示す。
なお、従来例は実施例1においてエッチング工程のみを省いたものである。
表1の結果より、本発明の電極工具は従来よりも微細な幅のパターンを、正確に被加工物(ワーク)に転写できることが明らかである。また、白金メッキを施された電極工具では、より長い工具寿命を得ることができた。
寿命:電解加工用電極工具1個が、パターンの再現性を確保しながら製造できる
ワークの限界個数
電極基材1と絶縁樹脂(溝)2により形成した導電パターン丘(ランド)3からなる電解加工用電極工具と被加工物(ワーク)6を図に示すように、電解液8が流れるスキ間(約20〜100μm)を介して対峙させ、直流パルス電源13のマイナス極を電解加工用電極工具に、プラス極を被加工物(ワーク)に接続する。
電解液貯蔵タンク内には、NaNO3 (硝酸ナトリウム)を15重量%含有する電解液8が所定量蓄えられ、ポンプ9及びフィルター10を介して、電解加工用電極工具のハウジング内へ電解液を供給する電解液供給管11及び電解加工用電極工具のハウジング内から電解液を排出して電解液貯蔵タンクに戻す電解液排出管12が接続され、電解液8は、フィルター9で濾過されつつ循環されるように構成されている。
好ましい実施形態においては、電解加工部における電解液8の流速は、8〜12m/secとなるように設定されている。
電圧6〜18Vで、直流パルス電源13からプラス側の被加工物(ワーク)とマイナス側の電解加工用電極工具との間に、電流を1〜5秒間通電する。
被加工物(ワーク)6のうち、電解加工用電極工具の導電パターン丘(ランド)3に対応した被加工物(ワーク)6の面のみが電解作用により削られて、凹部となり、電解加工用電極工具の導電パターン丘(ランド)の形状を凹部とした動圧発生溝パターンが得られる。
図8Aは、表1の従来例と導電パターン形状のみが異なる、従来の電極工具を用いて電解加工を行った加工面の拡大写真である。電極工具の導電パターン丘(ランド)に対応して電解作用により形成された凹部20と、その間の丘部21によって描かれる動圧発生溝パターンが見られる。パターンの最小幅は20μmである。図8Bは、図8Aと同じ加工面の中心部における1672μm×1234μmの面積に対して、光干渉波測定を行って得られた3次元チャートである。この測定方法では、図8Aのような2次元的な拡大写真では明らかにされない、微細な表面形状を詳細に観察することができる。図8Bで示されているように、従来の電極工具によって得られた加工面には、2次元的な拡大写真では見ることのできない、最小幅となる凹部先端付近における形状不良箇所22や凹部20同士の分離不良箇所23が発生している。
2 絶縁樹脂
3 導電パターン(丘(ランド))
3’メッキ層
4 絶縁樹脂層
5 丘(ランド)が溝(グルーブ)への落ち込む端部
6 被加工物(ワーク)
7 被加工物上のパターン
8 電解液
9 ポンプ
10フィルター
11電解液供給管
12電解液排出管
13パルス電源
Claims (10)
- 電極基材の表面を溝加工することにより設けられた丘(ランド)と溝(グルーブ)より成り、丘(ランド)により描かれる導電パターンに対応する電極基材表面が、溝(グルーブ)に一体成型されて埋め込まれた絶縁樹脂の表面より低く形成された電解加工用電極工具であって、両者の高低差が1〜5μmであることを特長とする電解加工用電極工具。
- 絶縁樹脂が、エポキシ系樹脂、ウレタン系樹脂、ポリイミド系樹脂から選ばれる1種であることを特徴とする請求項1に記載の電解加工用電極工具。
- 電解加工用電極工具の電極基材が、真鍮若しくはオーステナイト系ステンレスであり、絶縁層がエポキシ系樹脂であることを特徴とする請求項1に記載した電解加工用電極工具。
- 電極基材の表面を溝加工することにより設けられた丘(ランド)により描かれる導電パターンを作成し、次いで、電極基材の表面を絶縁樹脂でモールドし、さらに、絶縁樹脂の表面を機械的研磨加工することにより導電パターンの丘(ランド)を露出させ、次いで、導電パターンの丘(ランド)のみを化学的に溶解することを特徴とする導電パターン面が絶縁樹脂面より低く形成された電解加工用電極工具の製造方法。
- 電極基材の表面を溝加工することにより設けられた丘(ランド)により描かれる導電パターンを作成するに際し、丘(ランド)が溝(グルーブ)に落ち込む端部にアールを付けることを特徴とする請求項4に記載した導電パターン面が絶縁樹脂面より低く形成された電解加工用電極工具の製造方法。
- 電極基材の表面を溝加工することにより設けられた丘(ランド)と溝(グルーブ)より成り、丘(ランド)により描かれる導電パターンに対応する電極基材表面が、溝(グルーブ)に一体成型されて埋め込まれた絶縁樹脂の表面より低く形成された電解加工用電極工具であって、両者の高低差が1〜5μmであり、高低差の一部又は全部に相当する厚さで、導電パターンに対応する電極基材表面に金属を被覆させたことを特徴とする電解加工用電極工具。
- 被覆金属が、Pt、Au、Ag、Pd、Ni、Crから選ばれる金属の1種であることを特徴とする請求項6に記載した電解加工用電極工具。
- 被覆金属の厚さが高低差の1/5〜5/5であることを特徴とする請求項6又は請求項7に記載した電解加工用電極工具。
- 電極基材の表面を溝加工することにより設けられた丘(ランド)により描かれる導電パターンを作成し、次いで、電極基材の表面を絶縁樹脂でモールドし、さらに、絶縁樹脂の表面を機械的研磨加工することにより導電パターンの丘(ランド)を露出させ、次いで、導電パターンの丘(ランド)のみを化学的に溶解することを特徴とする導電パターンに対応する電極基材表面が絶縁樹脂面より1〜5μm低く形成された電解加工用電極を作成し、次いでPt、Au、Ag、Pd、Ni、Crから選ばれる金属の1種を蒸着若しくはメッキにより、1〜5μmの高低差の一部又は全部に相当する厚さで導電パターンに対応する電極基材表面に金属を被覆させたことを特徴とする導電パターン面が形成された電解加工用電極工具の製造方法。
- 被覆金属の厚さが、高低差の1/5〜5/5であることを特徴とする請求項9に記載した電解加工用電極工具の製造方法。
Priority Applications (1)
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