本発明は、通常使用時における判定の基準とする位置検出センサの出力値の閾値を、工程調整時における閾値とは異なる値にすることにより、基準位置を検出するので、レンズユニットの機構・電気特性等のばらつきによる原点位置の検出誤差の発生を防止することができる。
前記本発明においては、前記基準位置を求める際の前記駆動手段を駆動する駆動信号の1周期の時間はTであり、前記基準位置を再び求める際の前記駆動手段を駆動する駆動信号は、1周期の時間がT/N(Nは2以上の整数)となる1/N周期駆動信号であることが好ましい。この構成によれば、通常使用時の原点検出動作を工程調整時のN倍の速度にすることができる。
また、前記第2の閾値は、前記基準位置と前記駆動信号の1周期分だけ離れた位置との間における前記位置検出センサの出力値の範囲内の値であることが好ましい。また、前記第2の閾値は、前記基準位置より前記駆動信号の1/2周期分だけ離れた位置における前記位置検出センサの出力値であることが好ましい。これらの構成によれば、位置検出センサの出力値が第2の閾値を含む判定位置間の区間が必ず存在するので、原点の再現が確実になる。
また、前記レンズ位置演算手段は、前記判定位置を停止位置とし、前記レンズ位置制御手段は、前記レンズ駆動装置の電源を切る前に、前記停止位置に前記撮像レンズを移動するであることが好ましい。この構成によれば、判定の回数を減らすことができ、原点の再現時間が速くなる。
また、前記レンズ位置演算手段は、前記再び求めた基準位置に対応する判定位置より1つ先行した判定位置を停止位置とし、前記レンズ位置制御手段は、前記レンズ駆動装置の電源を切る前に、前記停止位置に前記撮像レンズを移動することが好ましい。この構成によれば、最初の1回分の判定だけで、確実な原点検出が可能になる。
また、前記レンズ鏡筒の傾斜角度を検出する角度センサをさらに備えており、前記レンズ位置演算手段は、前記角度センサから出力される前記レンズ鏡筒の傾斜角度情報に基づいて、基準角度からの変位に相当する補正距離を求め、前記レンズ位置演算手段は、前記判定位置に前記補正距離を加算又は減算した位置を新たな判定位置とし、前記位置検出センサの出力値を検出し前記判定をする位置を、前記新たな判定位置とすることが好ましい。この構成によれば、通常使用時と工程調整時とで、レンズ鏡筒の傾斜角度が異なり、フォトセンサ出力レベルの変化位置が変動する場合においても、原点検出のばらつきを防止することができる。
また、前記レンズ鏡筒の傾斜角度を検出する角度センサをさらに備えており、前記レンズ位置制御手段は、前記基準位置の情報と前記角度センサから出力される前記レンズ鏡筒の傾斜角度情報とに基づく補正位置情報に基づいて、前記撮像レンズの位置を制御することが好ましい。
また、前記レンズ位置演算手段は、前記レンズ鏡筒を上向きにした状態において前記位置検出センサの出力値が前記第1の閾値に到達したときの駆動信号の位相を撮像レンズの上端位置として求め、前記レンズ鏡筒を下向きにした状態において前記位置検出センサの出力値が前記第1の閾値に到達したときの駆動信号の位相を撮像レンズの下端位置として求め、前記上端位置と前記下端位置とに基づいて前記基準位置を演算することが好ましい。この構成によれば、通常使用時と工程調整時とで、レンズ鏡筒の向きが異なる場合においても、原点検出のばらつきを防止することができる。
また、前記レンズ位置演算手段は、前記上端位置と前記下端位置との中間位置を前記基準位置として演算することが好ましい。
また、レンズ位置演算手段は、レンズ鏡筒を上向き又は下向きにした状態において前記位置検出センサの出力値が前記第1の閾値に到達したときの駆動信号の位相を撮像レンズの上端又は下端位置として求め、前記上端又は下端位置より所定距離だけ加算又は減算して前記基準位置を演算することが好ましい。この構成によれば、通常使用時と工程調整時とで、レンズ鏡筒の向きが異なる場合においても、原点検出のばらつきを防止することができる。この構成は、姿勢差による原点検出のばらつきがスペックで規定された撮像装置に適している
また、前記レンズ鏡筒の温度を検出する温度センサをさらに備えており、前記レンズ位置演算手段は、前記温度センサから出力される前記レンズ鏡筒の温度情報に基づいて基準温度からの変位に相当する補正距離を求め、前記レンズ位置演算手段は、前記判定位置に前記補正距離を加算又は減算した位置を新たな判定位置とし、前記位置検出センサの出力値を検出し前記判定をする位置を、前記新たな判定位置とすることが好ましい。この構成によれば、通常使用時と工程調整時とで、レンズ鏡筒の温度が異なり、フォトセンサ出力レベルの変化位置が変動する場合においても、原点検出のばらつきを防止することができる。
また、レンズ鏡筒の温度を検出する温度センサをさらに備えており、前記レンズ位置制御手段は、前記基準位置情報と前記温度センサから出力される前記レンズ鏡筒の温度情報とに基づく補正位置情報に基づいて、前記撮像レンズの位置を制御することが好ましい。
また、前記レンズ鏡筒の傾斜角度を検出する角度センサと、前記レンズ鏡筒の温度を検出する温度センサとをさらに備えており、前記レンズ位置演算手段は、
前記角度センサから出力される前記レンズ鏡筒の傾斜角度情報に基いて基準角度からの変位に相当する角度補正距離を求め、前記温度センサから出力される前記レンズ鏡筒の温度情報に基づいて基準温度からの変位に相当する温度補正距離を求め、前記判定位置に前記角度補正距離と前記温度補正距離との合計距離を加算又は減算した位置を新たな判定位置とし、前記位置検出センサの出力値を検出し前記判定をする位置を、前記新たな判定位置とすることが好ましい。この構成によれば、通常使用時と工程調整時とで、レンズ鏡筒の傾斜角度及び温度が異なり、フォトセンサ出力レベルの変化位置が変動する場合においても、原点検出のばらつきを防止することができる。
以下、本発明の一実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1に係るレンズ駆動装置の概略図及びブロック図である。図1において、1はレンズ鏡筒、2はレンズ鏡筒1に固定された固定レンズ、3はズームレンズである、ズームレンズ3は、ズームリング6をレンズ鏡筒1の外周に沿って回転させることにより、光軸方向に移動し、ズーム倍率を調整するレンズである。4は、フォーカスレンズである。フォーカスレンズ4は、駆動手段であるモータ9の回転によって、ねじが切られたリードスクリューに沿って光軸方向に移動し、フォーカスを調整するレンズである。
モータ9は、図1の例ではフォーカスモータ駆動部11から出力されるモータコイルの駆動信号(励磁信号)の位相に応じて回転するステッピングモータを示す。5は撮像デバイスである撮像素子であり、固定レンズ2、ズームレンズ3及びフォーカスレンズ4を透過して撮像された被写体の画像を電気信号に変換するものである。7は遮蔽部材であり、フォーカスレンズ4の枠に固定されている。図1の点線で示すようにフォーカスレンズ4を撮像素子5の方向に移動させて、位置検出センサであるフォトセンサ8を、遮蔽部材7で遮蔽することによって、フォーカスレンズ4の原点位置(基準位置)の検出を行う。
10はズームリング6の回転位置を検出するズームリング位置検出部である。位置検出にはズームリング6の回転に応じて発生するパルスやズームレンズ3の光軸方向への移動距離に応じて抵抗値が変化するリニアポジションセンサなどを使用する。12は撮像素子5から出力される電気信号に基づいて画像データやフォーカス調整を行うためのコントラスト情報を生成する信号処理部である。
13はレンズ位置演算手段であるシステムコントロール部であり、フォーカスモータ制御部15にフォーカスレンズ4の駆動指令を出力して信号処理部12で処理された画像をもとにフォーカス調整をユーザーが行ったり、信号処理部12のコントラスト情報に基づいてコントラストが最大になるようにフォーカスレンズ4の駆動指令を出力してフォーカス自動調整(オートフォーカス機能)を行ったりする。
図2は、図1に示したフォーカスモータ制御部15の詳細ブロック図である。図2において、フォーカスモータ制御部15は、励磁位置カウンタ151とトラッキング位置演算部152と絶対位置カウンタ153とで構成されている。励磁位置カウンタ151は、トラッキング位置制御部152から出力されるフォーカス移動方向及び移動ステップ情報に基づいて、モータ9の駆動信号の位相を制御するための励磁位置カウンタのカウントアップ又はカウントダウンを行う。
トラッキング位置制御部152は、ズームリング位置検出部10から出力されるズーム位置情報と絶対位置カウンタ153から出力されるフォーカス位置情報とに基づいて、システムコントロール部13からの指令情報によってフォーカスレンズ4の位置制御を行うためのフォーカス移動方向及び移動ステップ情報を出力する。
前記の構成では、フォーカスレンズ4の位置は、モータ9の回転で制御される。また、モータ9の回転は、フォーカスモータ制御部15からの信号を受けたフォーカスモータ駆動部11からの駆動信号で制御される。すなわち、モータ9、フォーカスモータ駆動部11及びフォーカスモータ制御部15でレンズ位置制御手段を形成している。
システムコントロール部13は、フォーカスレンズ4が撮像素子5の方向へ駆動され、遮蔽部材7によってフォトセンサ8が遮蔽されることでフォトセンサの信号レベルが変化し所定の条件で閾値を超えたとき(又は回路の構成によっては閾値を下回ったとき)に、絶対位置カウンタ153をリセットする処理を行う。
また、システムコントロール部13には、フォトセンサ8から出力される信号をアナログ−ディジタル変換するAD変換器を備えており、システムコントロール部13ではフォトセンサ8の信号レベルをディジタル値として処理を行う。例えば3Vの入力Dレンジの8ビットAD変換器を使用する。この場合、フォトセンサの出力レベルが0Vから3Vまで変化する場合には、この出力レベルをディジタル値として0から255までの値で表すことができる。
絶対位置カウンタ153は、励磁位置カウンタ151のカウンタ値と同期して動作する。励磁位置カウンタ151がモータ9の駆動電気角が1周期(360度)で一巡するカウンタであるのに対して、絶対位置カウンタ153は所定の条件でリセットされた値を基準とした絶対位置を表すカウンタである。14は不揮発性メモリであり、励磁位置カウンタ151の書き込み及び読み出し操作ができる。不揮発性メモリ14は、後に説明するように、基準位置記憶手段としての役割を果たす。
以上のように構成されたレンズ駆動装置について、図3を参照しながらその動作を以下に説明する。図3は、実施の形態1に係る工程調整時の原点検出動作説明図である。図3に表示した「励磁位置」は、駆動信号の位相に対応しており、モータ9にフォーカスモータ駆動部11から出力されるモータコイルの駆動信号の1周期360度を8分割して励磁位置カウンタ151の3ビットのカウンタ値として表現している。ここでは、フォーカスレンズ4が撮像素子5側へ移動するにつれて、励磁位置が1ずつ減算していく様子を示している。
「A相電流」及び「B相電流」は、モータ9にフォーカスモータ駆動部11から出力されるモータコイルの電流波形で、モータ9がA相とB相の2相コイルを有している例を示している。A相電流及びB相電流は互いに電気角(電流波形の1周期を360度とした場合)で90度位相が異なるようにしており、A相とB相のモータコイルに電流を印加することでモータ9を回転させる。ここでは、A相電流がB相電流に対して90度位相が進んでいる条件で、フォーカスレンズ4が撮像素子5側へ移動するようにしている。
「絶対位置カウンタ」は、絶対位置カウンタ153のカウンタ値を表しており、励磁位置に同期して動作する。励磁位置が1ずつ減算していく場合には、絶対位置カウンタも同様に1ずつ減算していく。ただし、絶対位置カウンタは、フォーカスレンズ4の移動範囲において同じ値が存在しないようにビット幅を設定する。
「フォトセンサ出力レベル」は、フォーカスレンズ4が撮像素子5の方向へ移動し、遮蔽部材7によってフォトセンサ8が遮蔽されることで出力レベルが変化していく様子を示している。モータ9の励磁位置が1ステップ変化する毎に、フォトセンサ出力レベルが例えば0.2V変化するとする。この場合、システムコントロール部13では内蔵のAD変換器によりディジタル値が17変化したとして認識される。
後に説明するように、システムコントロール部13は、フォトセンサ出力レベルが閾値を超えているかの判定を行うことになる。例えば、第1の閾値をAD変換後のディジタル値で195(AD変換入力部では約2.3V)、第2の閾値をディジタル値で127(AD変換入力部では約1.5V)とすることができる。第2の閾値は、第1の閾値に対してモータ9の励磁位置が4ステップ変化したときの値、すなわちモータ9が励磁周期(電気角360度)の半分の周期(電気角180度)分だけ回転したときのフォトセンサ出力レベルの値としている。
次に、図3、4を参照しながら工程調整におけるフォーカスレンズ4の原点検出動作について、具体的に説明する。図4は、本発明の実施の形態1に係る原点検出動作フローチャートであり、システムコントロール部13にプログラミングされている動作フローを示す。電源投入時に「原点検出調整スタート」から処理を行う。
ステップ101において、原点検出方向(撮像素子5方向)へフォーカスモータであるモータ9を1ステップずつ移動させる。この場合、励磁位置カウンタ151は、1ずつ減算されることになる。より具体的には、システムコントロール部13からの指令により、トラッキング位置制御部152を通じて励磁位置カウンタ151をダウンカウントする。フォーカスモータ駆動部11では、このダウンカウントに従って、撮像素子5の方向へモータ9を回転させることによってフォーカスレンズ4を移動させる。
ステップ102において、フォトセンサ出力レベルが第1の閾値を超えているかどうかを判定する。超えていない場合には、ステップ101に戻って、モータ9に次の1ステップ動作をさせる。超えている場合にはステップ103に進み、超えた時点の励磁位置をPに代入する。図3では、励磁位置「0」において、第1の閾値を超えているので、励磁位置「0」をPに代入する。
ステップ104では、Pを不揮発性メモリ14にPoとして記憶させる。ステップ105では、絶対位置カウンタをリセットする。図3において「0」で示した位置がリセットされた位置となる。
次に、図5、6を参照しながら、通常使用時におけるフォーカスレンズ4の原点検出動作について以下に説明する。図5は実施の形態1に係る通常使用時の原点検出動作説明図である。図6は、実施の形態1に係る通常使用時の原点検出動作フローチャートであり、システムコントロール部13にプログラミングされている動作フローを示す。なお、図5に表示した励磁位置、A相電流、B相電流、絶対位置カウンタ及びフォトセンサ出力レベルについては、図3における説明と同様であるので、重複部分の説明は省略する。
図6において、電源投入時に「原点検出スタート」から処理を行う。ステップ201において、不揮発性メモリ14からPoを読み出す。ステップ202において、PdにPoを代入する。前記の工程調整時におけるフォーカスレンズ4の原点検出動作において不揮発性メモリ14に記憶された値は「0」である。したがって、この例ではPd=0となる。
ステップ204において、原点検出方向(撮像素子5方向)へモータ9を1ステップずつ移動させる(励磁位置カウンタを1ずつ減算させる)。より具体的には、システムコントロール部13からの指令により、トラッキング位置制御部152を通じて励磁位置カウンタ151をダウンカウントする。フォーカスモータ駆動部11ではこのダウンカウントに従って、撮像素子5の方向へモータ9を回転させることによってフォーカスレンズ4を移動させる。
ステップ205において、現在の励磁位置がPd(ここの例ではPd=0)と同じかどうかを判定する。同じでなければ、ステップ204に戻って、モータ9に次の1ステップ動作をさせる。同じであれば、次のステップ206に進む。図5の例では、判定(n−2)、判定(n−1)、判定(n)で指示した位置が、励磁位置がPd(Pd=0)と同じになっている。ステップ206では、これらの各位置においてフォトセンサ出力レベルが第2の閾値を超えているかどうかを判定する。
まず、判定(n−2)の位置で、フォトセンサ出力レベルが第2の閾値を超えているかどうかを判定する。図5の例では第2の閾値を超えていないので、ステップ204に戻って、モータ9に次の1ステップ動作をさせる。1ステップ動作を繰り返し、判定(n−1)の位置になると、再びフォトセンサ出力レベルが第2の閾値を超えているかどうかを判定する。図5の例では第2の閾値を超えていないので、ステップ204に戻って、フォーカスモータに次の1ステップ動作をさせる。1ステップ動作を繰り返し、判定(n)の箇所になると、再びフォトセンサ出力レベルが第2の閾値を超えているかどうかを判定する。図5の例では第2の閾値を超えている。この場合、ステップ207に進み、絶対位置カウンタ153を0にプリセットを行う(図5に示すように絶対位置カウンタの○で囲った数値)。
ここで、図5におけるP2で表されるフォトセンサ出力レベルは工程調整時と同じ使用環境温度・湿度による機構・電気特性の条件でのレベル変化を表している。しかしながら、電源投入を繰り返し行うことのある通常使用時においては、P1やP3で表したように、モータ9の各励磁位置において、フォトセンサ出力レベルがP2から変化した位置にばらつきを生じる。これは、そのときのレンズユニット駆動方向のガタ、使用環境温度・湿度変化による機構・電気特性ばらつきなどの誤差によるものである。
本実施の形態では、前記のように、通常使用時の原点検出動作は図5に示す判定(n−2)、判定(n−1)、判定(n)においてフォトセンサ出力レベルが第2の閾値を超えたかどうかの判定を行うようにしている。この場合の閾値は、工程調整時における第1の閾値ではなく、第2の閾値である。
仮に、閾値を第1の閾値としたとすると、フォトセンサ出力レベルが工程調整時と同じレベル変化(図5のP2)であれば、原点位置を正確に再現することができる。しかしながら、前記のように、レベル変化にばらつきが生じると(図5のP1、P3)、検出した原点位置にもばらつきが生じることになる。
本実施の形態では、前記のように第2の閾値は、工程調整時の第1の閾値に対してモータ9の励磁位置が励磁半周期(電気角180度)だけ手前の位置におけるフォトセンサ出力レベルの値である。このため、図5に示したように、フォトセンサ出力レベルがP1やP3にばらついたとしても、判定位置nでは第2の閾値を超えていると判定されることには変わりない。同様に、判定位置n−1、n−2では、第2の閾値を超えていないと判定されることには変わりない。
このことにより、P1からP3の範囲でばらつきを生じた場合でも、プリセットした絶対位置カウンタが「0」のときにはモータ9の励磁位置が必ず「0」となり、工程調整時における原点位置を正確に再現することが可能となる。すなわち、ある判定位置におけるフォトセンサ出力レベルが第2の閾値を越えておらず、次の判定位置のフォトセンサ出力レベルが第2の閾値を越えていることを検出できれば、原点位置を正確に検出することができる。
ただし、レンズユニット駆動方向のガタ、使用環境温度・湿度変化による機構・電気特性ばらつきなどの誤差の幅は励磁位置1周期の範囲に抑える必要がある。
図7は、ズーム位置とフォーカス位置との関係を示すグラフである。L1は固定レンズ前面から被写体までの距離を例えば2mとしたときに、合焦状態を維持した状態でズーミング動作を行うことができるズーム位置とフォーカス位置との関係を示している。L2は固定レンズ前面から被写体までの距離を例えば1mとしたときに、合焦状態を維持した状態でズーミング動作を行うことができるズーム位置とフォーカス位置との関係を示している。
横軸のズーム位置のTは望遠側を示し、Wは広角側を示す。フォーカスの原点検出ずれがない理想の状態で、固定レンズ前面から被写体までの距離を1mとすると、T側でフォーカス位置が定まった場合に(図のA点)、W側にズーム位置を移動したときにはL2のグラフに沿って合焦状態を維持しながらズーミング動作を行うことができる。
しかしながら、固定レンズ前面から被写体までの距離を2mとしてT側でフォーカス位置が定まった場合に、原点検出位置ずれΔXの影響で理想の状態における固定レンズ前面から被写体までの距離1mのT側の点(図のA点)に仮に一致したとき、W側にズーム位置を移動したときにはL1に対してΔXだけフォーカス位置がずれたL10のグラフに従ってズーミング動作を行ってしまう。このため、W側ではフォーカス位置ずれを生じてしまう。本発明においては、このようなことはなくフォーカスレンズユニットの駆動方向のガタ、使用環境温度・湿度変化による機構・電気特性ばらつきなどの誤差の影響を受けない原点検出動作を実現することができるので、フォーカスレンズユニットの絶対位置の精度は格段に向上させることができ、特に合焦状態を維持しながらズーミング動作をおこなうシステムにおいて本発明は有効である。
なお、本実施の形態では第1の閾値と第2の閾値との差は、モータ励磁周期の半周期に相当する差として説明したが、この差はこれに限らず、フォトセンサ出力レベルのばらつきの影響を受けない範囲内で設定すればよい。
例えば、第2の閾値は、原点位置に対応する励磁位置と、この励磁位置からモータ励磁周期の1周期分だけ離れた励磁位置との間におけるフォトセンサ出力レベルの範囲内の値で設定することができる。
また、第2の閾値は工程調整前にあらかじめ設定した値としてもよいが、工程調整の際に設定するようにしてもよい。例えば、工程調整時の原点検出動作においてシステムコントロール部13でモータ9の1ステップ動作毎のフォトセンサ出力レベルを記憶させておき、第1の閾値にフォトセンサ出力レベルが到達したときに4ステップ前のフォトセンサ出力レベルを第2の閾値とするように不揮発性メモリ14に記憶させておいてもよい。これにより、フォトセンサの特性ばらつきを補正し、正確な閾値を求めることができる。
(実施の形態2)
本発明の実施の形態2について以下に説明する。実施の形態1において説明した図1、図2に示した構成、図3、図4を用いて説明した工程調整時の原点検出動作は、実施の形態2においても同様である。
図8、9を参照しながら、実施の形態2における通常使用時のフォーカスレンズ4の原点検出動作について説明する。図8は、実施の形態2に係る通常使用時の原点検出動作説明図である。なお、図8に表示した励磁位置、A相電流、B相電流、絶対位置カウンタ及びフォトセンサ出力レベルについては、図3における説明と同様であるので、重複部分の説明は省略する。
実施の形態2では、実施の形態1とは異なり、フォーカスレンズ4が撮像素子5側へ移動するにつれて、励磁位置が2ずつ減算していく。このため、励磁位置に同期して動作する絶対位置カウンタ153のカウンタ値も2ずつ減算していく。ただし、絶対位置カウンタは、フォーカスレンズ4の移動範囲において同じ値が存在しないようにビット幅を設定する。
実施の形態1においては、駆動信号1周期の時間が、図3、5に示したように、工程調整時、通常使用時のいずれにおいても時間Tであるが、実施の形態2では、通常使用時における駆動信号1周期の時間は、図8に示したようにT/2である。このことにより、実施の形態2では、通常使用時の原点検出動作を実施の形態1に比べて2倍の速度で行うことができる。
図9は、実施の形態2に係る通常使用時の原点検出動作フローチャートであり、システムコントロール部13にプログラミングされている動作フローを示す。電源投入時に「原点検出スタート」から処理を行う。ステップ301において、不揮発性メモリ14からPoを読み出す。ステップ302において、PdにPoを代入する。実施の形態2においても、不揮発性メモリ14に記憶された値は、実施の形態1と同じ「0」の例で説明する。したがって、本実施の形態においてもPd=0となる。
ステップ304において、原点検出方向(撮像素子5方向)へモータ9を2ステップずつ移動させる(励磁位置カウンタを2ずつ減算させる)。ただし、先に求めたPd(ここではPd=0)を含むように励磁位置を設定する。
より具体的には、システムコントロール部13からの指令により、トラッキング位置制御部152を通じて励磁位置カウンタ151をダウンカウントする。フォーカスモータ駆動部11では、このダウンカウントに従ってフォーカスレンズ4を撮像素子5の方向へモータ9を回転させることによって移動させる。
ステップ305において、現在の励磁位置がPd(ここの例ではPd=0)と同じかどうかを判定する。同じでなければ、ステップ304に戻って、モータ9に次の2ステップ動作をさせる。同じであれば、次のステップ306の判定に進む。
判定位置は、図8に示す判定(n−3)、判定(n−2)、判定(n−1)、判定(n)で表される位置であり、ステップ306においてフォトセンサ出力レベルが第2の閾値を超えているかどうかを判定する。超えていない場合にはステップ304に戻って、モータ9に次の2ステップ動作をさせる。超えている場合にはステップ307に進み、超えた時点で絶対位置カウンタ153を0にプリセットを行う(図8に示すように絶対位置カウンタの○で囲った数値)。
これらのステップ304から307までの間の動作は、前記実施の形態1において、図6を用いて説明したステップ204から207までの間の動作と同様である。また、フォトセンサ出力レベルが、P1からP3の範囲でばらつきを生じた場合でも、工程調整時における原点位置を確実に再現できることについても、実施の形態1と同様である。このことに加えて、実施の形態2においては、通常使用時の原点検出動作を実施の形態1に比べて2倍の速度で行うことができる。
なお。レンズユニット駆動方向のガタ、使用環境温度・湿度変化による機構・電気特性ばらつきなどの誤差の幅は励磁位置1周期の範囲に抑える必要があることは、実施の形態1と同様である。
(実施の形態3)
本発明の実施の形態3について以下に説明する。実施の形態1において説明した図1、図2に示した構成、図3、図4を用いて説明した工程調整時の原点検出動作は、実施の形態3においても同様である。
図10、11を参照しながら、実施の形態3における通常使用時のフォーカスレンズ4の原点検出動作について以下に説明する。図10は、実施の形態3に係る通常使用時の原点検出動作説明図である。なお、図10に表示した励磁位置、A相電流、B相電流、絶対位置カウンタ及びフォトセンサ出力レベルについては、図3における説明と同様であるので、重複部分の説明は省略する。
図11は、実施の形態3に係る電源OFF処理のフローチャートであり、システムコントロール部13にプログラミングされている動作フローを示している。本図は、スチルカメラやビデオムービーなどの撮像装置本体の電源が、本体スイッチ(図示せず)によりOFFにされたときに、電源OFFへの移行処理を行う例を示している。
システムコントロール部13は、電源OFFされた場合に「電源OFF処理スタート」から処理を行う。ステップ401において、原点検出方向(撮像素子5方向)へモータ9を2ステップずつ移動させる(励磁位置カウンタを2ずつ減算させる)。ただし、実施の形態2において説明したPd(ここではPd=0)を含むように励磁位置を設定する。より具体的には、システムコントロール部13からの指令により、トラッキング位置制御部152を通じて励磁位置カウンタ151をダウンカウントする。フォーカスモータ駆動部11ではこのダウンカウントに従ってフォーカスレンズ4を撮像素子5の方向へモータ9を回転させることによって移動させる。
ステップ402において、絶対位置カウンタ153のカウンタ値が励磁位置1周期と一致しないときはステップ401に戻って、フォーカスモータに次の2ステップ動作をさせる。一致したときはステップ403に処理を進め、本体の電源をOFFにする。ここでは、(励磁位置1周期)=8であるので、(絶対位置カウンタ値)=8のときに、本体の電源がOFFされる(図10参照)。
次に、本体スイッチにより電源がONされたときの動作については、実施の形態2において図9を用いて説明したように、電源投入時に「原点検出スタート」からフローチャートに従って処理が行われる。途中の説明は重複するので省略するが、図9のステップ306において、フォトセンサ出力レベルが第2の閾値を超えているかどうかが判定され、絶対位置カウンタ153のカウンタ値が「0」にプリセットされる(図10に示すように絶対位置カウンタの○で囲った数値)。
図10に示すように、電源OFF移行処理において原点位置の直前(フォトセンサ出力レベルが閾値を超える直前)でフォーカスモータを停止させている。このため、実施の形態3では電源投入時の原点検出におけるフォトセンサ出力レベルの判定が最初の1回で済む。より具体的には、絶対位置カウンタのカウンタ値が「0」となる位置は原点位置であるので、カウンタ値が励磁位置1周期と一致している停止位置は、最終判定位置(原点位置)より一つ先行した側の判定位置である。すなわち、本実施の形態では、電源OFF移行処理でモータ9を停止させる位置は、次に電源をONしたときにフォトセンサ出力レベルの最終判定を行う位置の1つ前の判定位置であることに特徴がある。
このように電源OFF移行処理を行うことで、レンズユニット駆動方向のガタ、使用環境温度・湿度変化による機構・電気特性ばらつきなどの誤差が次に電源をONするまでの間に生じている場合においても、最初の1回分のフォトセンサ出力レベルの判定だけで、確実な原点検出ができることになる。
なお、レンズユニット駆動方向のガタ、使用環境温度・湿度変化による機構・電気特性ばらつきなどの誤差の幅は励磁位置1周期の範囲に抑える必要があることは、実施の形態1、2と同様である。
(実施の形態4)
本発明の実施の形態4について以下に説明する。実施の形態1において説明した図1、図2に示した構成は、実施の形態3においても同様である。図12、13を参照しながら実施の形態4における工程調整時のフォーカスレンズ4の原点検出動作について以下に説明する。
図12は、実施の形態4に係る工程調整時の原点検出動作説明図である。図12に表示した励磁位置、A相電流、B相電流、絶対位置カウンタ及びフォトセンサ出力レベルについては、実施の形態1の図3における説明と同様であるので、重複部分の説明は省略する。また、フォーカスレンズ4が撮像素子5側へ移動するにつれて、励磁位置が1ずつ減算していくことについても、実施の形態1と同様である。
図13は、実施の形態4に係る工程調整時の原点検出動作フローチャートであり、システムコントロール部13にプログラミングされている動作フローを示す。電源投入時に「原点調整スタート」から処理を行う。ステップ501において、例えば工程調整メニューの液晶画面表示(図示せず)で「本体上向き」を表示させる。撮像装置のレンズ2を上向きにして次のステップ502に進む。
ステップ502においては、原点検出方向(撮像素子5方向)へモータ9を1ステップずつ移動させる(励磁位置カウンタを1ずつ減算させる)。より具体的には、システムコントロール部13からの指令により、トラッキング位置制御部152を通じて励磁位置カウンタ151をダウンカウントする。フォーカスモータ駆動部11ではこのダウンカウントに従って、フォーカスレンズ4を撮像素子5の方向へモータ9を回転させることによって移動させる。
ステップ503において、フォトセンサ出力レベルが第1の閾値を超えているかどうかを判定する。超えていない場合にはステップ502に戻って、モータ9に次の1ステップ動作をさせる。超えている場合にはステップ504に進み、超えた時点の励磁位置をPuに代入する。ここでは、励磁位置「2」をPuに代入する。
次にステップ505において、例えば工程調整メニューの液晶画面表示(図示せず)で「本体下向き」を表示させる。撮像装置のレンズ2を下向きにして次のステップ506に進む。ステップ506においては、原点検出方向(撮像素子5方向)へモータ9を1ステップずつ移動させる(励磁位置カウンタを1ずつ減算させる)。
図12において「上向き状態」から「下向き状態」へ姿勢を変えたときにフォトセンサ出力レベルに段差を生じるのは、フォーカスレンズ4が自重とガタ(例えばモータ9のリードスクリューとフォーカスレンズ4を移動させるためのラックとのガタ)によって撮像素子5から遠ざかる方向に移動するためである。
ステップ507において、フォトセンサ出力レベルが第1の閾値を超えているかどうかを判定する。超えていない場合にはステップ506に戻って、モータ9に次の1ステップ動作をさせる。超えている場合にはステップ508に進み、超えた時点の励磁位置をPdに代入する。
ここでは、励磁位置「6」をPdに代入する。ステップ509では、PdとPuの大小を判定する。ここではPu=2、Pd=6であるので、次のステップ509aに進む。ステップ509aにおいて、Pd=Pd−(励磁位置1周期)が演算され、(励磁位置1周期)=8によりPd=−2が求められる。このPdの値を用いて、ステップ510の計算式によりPを求めると、P=INT((2−2)/2)=0となる。なお、INTは、小数点以下を切り捨てるという意味である。この場合、ステップ511において、P<0ではないので、次のステップ512に進み、P=0が不揮発性メモリにPoとして記憶される。
ステップ513では、絶対位置カウンタ153のカウンタ値が−INT((Pu−Pd)/2)にプリセットされる。−INT((Pu−Pd)/2)の値は、−INT((2+2)/2)=−2である。この演算により、下向き時の原点位置と、上向き時と下向き時との中間の原点位置との間で、励磁位置がどれだけ離れているかを算出できる。図12に示すように、下向き時の原点位置の絶対位置カウンタの数値を算出値の−2(○で囲った数値)にすれば、上向き時と下向き時との中間の原点位置(励磁位置「0」)の絶対位置カウンタ153のカウンタ値は「0」になる。
なお、ステップ511においてP<0の場合は、該当する励磁位置の数値はないが、ステップ511aの演算により、ステップ510のPに相当する励磁位置を求めることができる。
また、前記の例では、ステップ509においてPd>Puの例で説明したが、Pd≦Puであればステップ510に直接進めばよい。Pd≦Puの場合は、ステップ509aによりPdの値を補正しなくても、ステップ510の演算により、PuとPdの中間位置を求めることができる。
このように、実施の形態4では不揮発性メモリ14に記憶される原点位置は上向き状態と下向き状態で各々検出された原点位置の中間位置となり、実施の形態1で説明したように姿勢差を考慮しない原点調整では、調整時に例えば上向きの姿勢差を生じ、かつ通常使用時に下向きの姿勢差を生じていた場合に比べて、実施の形態4においては姿勢差によるレンズ位置誤差を1/2に改善することが可能になる。
また、実施の形態4においては、まず上向き状態で原点検出を行い、次に下向き状態で原点検出を行う例を説明したが、ガタを考慮した場合に上向き状態の方が下向き状態に比べて原点位置から遠ざかるのであれば、まず下向き状態で原点検出を行い、次に上向き状態で原点検出を行うようにすればよい。
また、姿勢差による原点検出位置のばらつきがスペックで規定された撮像装置においては、上向き状態か下向き状態のどちらか一方で原点検出を行い、検出した位置からスペックの半分ずらした位置を原点とすることで同様の効果が得られる。
また、本実施の形態は、レンズ鏡筒の姿勢差により、原点検出位置にばらつきのあることを前提とした例であるが、レンズ鏡筒の姿勢差による原点検出位置のばらつきがない程度にレンズ鏡筒の精度が確保されていれば、前記実施の形態1−3の構成でもよい。
(実施の形態5)
本発明の実施の形態5について以下に説明する。図14は、実施の形態5に係るレンズ駆動装置の概略図及びブロック図である。図14において、図1と同一構成のものは、同一番号を付して、その詳細な説明は省略する。図14に示したレンズ駆動装置は、図1のレンズ駆動装置にさらに温度センサ16、及び角度センサ17を備えたものである。
温度センサ16は、レンズ鏡筒1内又は撮像装置本体(図示せず)内に設置され、温度を検出するセンサであり、サーミスタなどが使用される。角度センサ17は、レンズ鏡筒1内又は撮像装置本体(図示せず)内に設置され、レンズ鏡筒又は撮像装置本体の傾きを検出するセンサである。
図15は、角度センサ17の角度検出の一例を示している。図15の例は、レンズ鏡筒1又は撮像装置本体が水平の場合に角度センサ17からの出力電圧を0とし、姿勢角度に応じて出力電圧が変化するというものである。
なお、角度センサ17は、レンズ鏡筒1又は撮像装置本体の傾きが上向き、下向き、水平の3ポジションを検出する傾斜センサであってもよい。また、本実施の形態におけるフォーカスモータ制御部15は、前記実施の形態1の図2に示した構成と同様である。
図16、17を参照しながら、実施の形態5における通常使用時のフォーカスレンズ4の原点検出動作について以下に説明する。図16は、実施の形態5に係る通常使用時の原点検出動作説明図である。図16(a)は常温に対して温度が高い場合でかつレンズ鏡筒1のレンズ2を上向きにした状態を想定し、図16(b)は常温に対して温度が低い場合でかつレンズ鏡筒1のレンズ2を下向きにした状態を想定している。
図16に表示した励磁位置、A相電流、B相電流、絶対位置カウンタ及びフォトセンサ出力レベルについては、実施の形態1の図3における説明と同様であるので、重複部分の説明は省略する。また、フォーカスレンズ4が撮像素子5側へ移動するにつれて、励磁位置が2ずつ減算していくことは、実施の形態2の図8の例と同様である。
図17は、実施の形態5に係る通常使用時の原点検出動作フローチャートであり、システムコントロール部13にプログラミングされている動作フローを示す。電源投入時に「原点検出スタート」から処理が行われる。ステップ601において、不揮発性メモリ14からPoを読み出す。ステップ602aにおいて、Pd=Poとする。工程調整時におけるフォーカスレンズ4の原点検出動作において、不揮発性メモリ14に記憶されたPoの値は、実施の形態1と同様に「0」とする。したがって、Pd=0となる。
ステップ602bにおいて、温度センサ16及び角度センサ17からの出力情報に基づいて、Pdに補正値ΔPdを加算する。レンズ鏡筒1のレンズ2を上向きにした場合では、フォーカスレンズ4が自重とガタ(例えばモータ9のリードスクリューとフォーカスレンズ4を移動させるためのラックとのガタ)によって、水平置きに比べて撮像素子5に近づく方向に移動する。さらに、常温に比べて高温の場合でかつ遮蔽部材7がレンズ鏡筒1及びモータ9に対して熱膨張係数が大きい場合には、遮蔽部材7がフォトセンサ8に近づく方向になる。
このため、図16(a)のフォトセンサ出力レベルのP4に示すように、常温時でかつ水平置きした場合のフォトセンサ出力レベルP2に比べて、原点検出時にフォトセンサ出力レベルが変化するタイミングが早くなる。ここでは、常温からの温度上昇によって生じる誤差をモータ9の励磁位置で1ステップ、また撮像装置の水平置きから上向きにした場合に生じる誤差をモータ9の励磁位置で1ステップとして計2ステップ分の誤差を生じた例を示している。
したがって、ΔPd=2となるので、ステップ602bではPd2=2が演算される。ステップ603において、Pd2が負かどうかを判定し、Pd2が0又は正の場合は、そのまま次のステップ604に進む。Pd2が負の場合は、ステップ603aにおいて、Pd2=Pd2+(励磁位置1周期)を演算した後、次のステップ604に進む。Pd2が負の場合は、ステップ603aを経る理由は、実施の形態4で、図13のステップ511aを経る理由と同様である。
ステップ604において、原点検出方向(撮像素子5方向)へモータ9を2ステップずつ移動させる(励磁位置カウンタを2ずつ減算させる)。ただし、先に求めたPd2(ここではPd2=2)を含むように励磁位置を設定する。より具体的には、システムコントロール部13からの指令により、トラッキング位置制御部152を通じて励磁位置カウンタ151をダウンカウントする。フォーカスモータ駆動部11ではこのダウンカウントに従って、フォーカスレンズ4を撮像素子5の方向へモータ9を回転させることによって移動させる。
ステップ605において、現在の励磁位置がPd2(ここの例ではPd2=2)と同じかどうかを判定する。同じでなければ、ステップ602bに戻って、モータ9に次の2ステップ動作をさせる。同じであれば、次のステップ606に進む。
Pd2=2となる位置は、図16(a)に示す判定(n−2)、判定(n−1)、判定(n)で表される位置である。これらの各判定位置は、励磁位置が2となる位置であるので、補正値加算前の励磁位置0の位置より2ステップ分先行した位置(撮像素子5から遠ざかった位置)である。このため、これらの各判定位置における判定は、励磁位置が0の位置において、常温時でかつ水平置きした場合のフォトセンサ出力レベルP2を検出しているのと実質的に同じになる。
ステップ606では、前記判定位置において、フォトセンサ出力レベルが第2の閾値を超えているかどうかを判定する。超えていない場合には、ステップ602bに戻って、フォーカスモータに次の2ステップ動作をさせる。超えている場合にはステップ607に進み、超えた時点で絶対位置カウンタ153をΔPdにプリセットを行う。ここでは、ΔPd=2により「2」にプリセットされる(図16(a)に示すように絶対位置カウンタの○で囲った数値)。
なお、実施の形態2の図9における説明では、ステップ305又はステップ306において、条件を満たさない場合に、ステップ304に戻る例を示したが、実施の形態5においてはステップ602bに戻る例を示している。実施の形態5では、原点検出動作中に温度変化や姿勢差が変化した場合に、フォトセンサ出力レベルが閾値を超えているかどうかの判定位置を逐次変えるためである。
次に、図16(b)、図17を参照しながら、レンズ鏡筒1のレンズ2を下向きにし、かつ常温に比べて低温の場合について説明する。レンズ鏡筒1のレンズ2を下向きにした場合では、フォーカスレンズ4が自重とガタ(例えばモータ9のリードスクリューとフォーカスレンズ4を移動させるためのラックとのガタ)によって、水平置きに比べて撮像素子5から遠ざかる方向に移動する。さらに、常温に比べて低温の場合でかつ遮蔽部材7がレンズ鏡筒1及びモータ9に対して熱膨張係数が大きい場合には、遮蔽部材7がフォトセンサ8から遠ざかる方向になる。
このため、図16(b)のフォトセンサ出力レベルのP5に示すように、常温時でかつ水平置きした場合のフォトセンサ出力レベルP2に比べて、原点検出時にフォトセンサ出力レベルが変化するタイミングが遅くなる。ここでは、常温からの温度低下によって生じる誤差をモータ9の励磁位置で1ステップ、また撮像装置の水平置きから下向きにした場合に生じる誤差をモータ9の励磁位置で1ステップとして計2ステップ分誤差を生じた例を示している。
したがって、ΔPd=−2となるので、ステップ602bではPd2=−2が演算される。ステップ603において、Pd2が負かどうかを判定し、負の場合には、ステップ603aにおいて、Pd2=Pd2+(励磁位置1周期)を演算して次に進み、正又は0の場合にはそのまま次に進む。ここではPd2は、−2+8=6となる。
ステップ604において、原点検出方向(撮像素子5方向)へモータ9を2ステップずつ移動させる(励磁位置カウンタを2ずつ減算させる)。ただし、先に求めたPd2(ここではPd2=6)を含むように励磁位置を設定する。より具体的には、システムコントロール部13からの指令により、トラッキング位置制御部152を通じて励磁位置カウンタ151をダウンカウントする。フォーカスモータ駆動部11ではこのダウンカウントに従って、フォーカスレンズ4を撮像素子5の方向へモータ9を回転させることによって移動させる。
ステップ605において、現在の励磁位置がPd2(ここではPd2=6)と同じかどうかを判定する。同じでなければ、ステップ602bに戻って、フォーカスモータに次の2ステップ動作をさせる。同じであれば、次のステップ606に進む。Pd2=6となる位置は、図16(b)に示す判定(n−3)、判定(n−2)、判定(n−1)で表される位置である。これらの各判定位置は、励磁位置が6となる位置であるので、補正値加算前の励磁位置0の位置より2ステップ分遅れた位置(撮像素子5に近づいた位置)である。このため、これらの各判定位置における判定は、励磁位置が0の位置において、常温時でかつ水平置きした場合のフォトセンサ出力レベルP2を検出しているのと実質的に同じになる。
ステップ606では、前記判定位置において、フォトセンサ出力レベルが閾値を超えているかどうかを判定する。超えていない場合には、ステップ602bに戻って、フォーカスモータに次の2ステップ動作をさせる。超えている場合にはステップ607に進み、超えた時点で絶対位置カウンタ153をΔPdにプリセットを行う。
ここでは、ΔPd=−2により「−2」にプリセットされる(図16(b)に示すように絶対位置カウンタの○で囲った数値)。なお、実施の形態2の図9における説明では、ステップ305又はステップ306において条件を満たさない場合に、ステップ304に戻る例を示したが、実施の形態5においてはステップ602bに戻る例を示している。これは、原点検出動作中に温度変化や姿勢差が変化した場合に、フォトセンサ出力レベルが閾値を超えているかどうかの判定位置を逐次変えるためである。
図16における「P2」で表されるフォトセンサ出力レベルは工程調整時と同じ使用環境温度・湿度による機構・電気特性の条件でのレベル変化を表しているが、電源投入を繰り返し行うことがある通常使用時においては「P4」や「P5」で表すようにそのときのレンズユニット駆動方向のガタ、使用環境温度変化による機構・電気特性ばらつきなどの誤差でモータ9の励磁位置に対してレベル変化する位置にばらつきを生じる。
しかしながら、実施の形態5では、通常使用時の原点検出動作は図16に示す各判定位置においてフォトセンサ出力レベルが閾値を超えたかどうかの判定を行うようにしているので、「P4」から「P5」の範囲でばらつきを生じた場合でも絶対値カウンタ153のカウンタ値は「0」のときには必ずモータ9の励磁位置が「0」となり、実施の形態1で説明した工程調整時における原点位置を再現することが可能となる。
なお、ここでは温度センサと角度センサを用いる例を示したが、湿度センサを用いてレンズ鏡筒やレンズなどの吸湿係数の違いで生じる誤差を改善することで、さらに精度を向上させることができる。さらに、実施の形態1で説明した通常動作時の原点検出動作を実施例5においては2倍の速度で行うことができる。
また、レンズユニット駆動方向のガタ、使用環境温度・湿度変化による機構・電気特性ばらつきなどの誤差が温度センサ及び角度センサなどを用いて検出できる場合には励磁位置1周期の範囲をこの誤差が超えた場合にでも補正が可能である。
図18は、実施の形態5に係るズーム位置とフォーカス位置との関係を示すグラフである。L1は固定レンズ前面から被写体までの距離を例えば2mとしたときに合焦状態を維持した状態でズーミング動作を行うことができるズーム位置とフォーカス位置との関係を示すグラフである。
横軸のズーム位置の「T」は望遠側を示し、「W」は広角側を示す。フォーカスの原点検出ずれがない理想の状態で固定レンズ前面から被写体までの距離を2mとすると、「T」側でフォーカス位置が定まった場合に、「W」側にズーム位置を移動したときにはL1のグラフに沿って合焦状態を維持しながらズーミング動作を行うことができる。
図14における温度センサ16及び角度センサ17を用いてレンズユニット駆動方向のガタ、使用環境温度変化による機構・電気特性ばらつきなどの誤差が検出できるので、原点位置検出後については、図18に示す原点補正量ΔXを考慮してフォーカス位置を補正する。
ここでは、「T」側でのフォーカス位置が常温及び水平置き状態では原点からX0の位置にあるのに対して、高温及び下向き状態で補正する例を示している。高温ではレンズ鏡筒1の熱膨張により各レンズ間隔が設計値より広がり、その分フォーカスレンズ4を撮像素子5側へ移動させる必要がある。また、下向き状態ではフォーカスレンズ4が自重とガタによって水平置きに比べて撮像素子5から遠ざかる方向に移動する。
したがって、高温及び下向き状態でのトータルのフォーカスレンズ4の位置補正量をΔXとして、X0−ΔXを求めてフォーカスレンズ4の原点からの位置を補正することによって、「T」側から「W」側に掛けて合焦状態を維持しながらズーミング動作を行うことができる。
なお、実施の形態5では、工程調整時と通常使用時とで、レンズ鏡筒の角度や温度が異なる場合を配慮した例を説明したが、必ずしもこれらの構成が最適なものとは限らない。例えば、レンズ鏡筒等の構造自体で、角度や温度変化によるフォトセンサ出力レベルの変動を抑えている場合は、実施の形態1−3の構成が適している。
また、実施の形態5では、角度センサと温度センサの双方を備えた例で説明したが、いずれか一方のセンサを備えた構成でもよい。例えば、温度変化によるフォトセンサ出力レベルの変化位置の変動が特別問題とならない場合は、角度センサによる補正のみとしてもよい。
また、実施の形態5では、図17のステップ602bにおいて、ΔPdを加算する例を示したが、ΔPdを減算してもよい。
また、前記実施の形態2、3、5では、通常使用時の原点検出動作において工程調整時の2倍の速度でレンズユニットを駆動する例を示したが、これに限るものではなく、4倍の速度又はそれ以上での動作も可能である。すなわち、工程調整時の駆動信号1周期の時間がTの場合において、通常使用時の駆動信号1周期の時間を時間T/N(Nは2以上の整数)にし、1/N周期駆動信号を出力するようにしてもよい。
また、実施の形態3、5においては、工程調整時及び通常使用時の駆動信号1周期の時間を同じにしてもよい。
また、モータの駆動信号の周期を8分割にした励磁位置を用いて説明したが、求められる精度に応じて4分割や16分割などに設定するなど、分割する数には依存しない。
また、前記各実施の形態では、駆動手段としてステッピングモータの例で説明したが、モータの励磁信号に周期性を有するモータであればよく、例えばリニアモータなどでもよい。