JP2005226118A - 電磁鋼板の窒化処理方法及び高硬度高磁気特性を有する電磁鋼板 - Google Patents

電磁鋼板の窒化処理方法及び高硬度高磁気特性を有する電磁鋼板 Download PDF

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Abstract

【課題】飽和磁束密度等の磁気的特性を低下させることなく、電磁鋼板の硬度を向上させる。
【解決手段】電磁鋼板1の表面にショットピーニング処理を施すショットピーニング工程と、ショットピーニング処理後の電磁鋼板1を150〜300℃の温度範囲で窒素含有ガスと反応させて低温窒化処理してα''−Fe162 を含む窒化硬化層を形成する低温窒化処理工程とを実施し、高硬度高磁気特性を有する電磁鋼板を得る。ショットピーニング処理により電磁鋼板に圧縮残留応力を発生させることにより、低温窒化処理における窒化深さを深くすることができ、電磁鋼板内における窒化量を増大させることができる。このため、電磁鋼板の硬度を効果的に向上させることができる。また、窒化処理を低温窒化処理とすることにより、飽和磁束密度等の磁気的特性が低下することを効果的に抑えることができる。
【選択図】 図1

Description

本発明は電磁鋼板の窒化処理方法及び高硬度高磁気特性を有する電磁鋼板に関する。本発明に係る電磁鋼板は、例えば、ハイブリッド電気自動車や燃料電池自動車等の電気自動車用の駆動モータや他種モータの構成部品である鉄心等に供して好適である。
ハイブリッド電気自動車や燃料電池自動車等の電気自動車用の駆動モータは、ガソリンエンジン等の従来車におけるエンジンに替わる駆動機構の心臓部であり、この駆動モータの主構成部品たる鉄心には一般に電磁鋼板が用いられている。このため、鉄心用素材としての電磁鋼板は、駆動モータの小型軽量化や高効率化を図って駆動性能や燃費を改善する上で、重要な機能材料である。
また、他種モータにおいても、主構成部品たる鉄心用素材としての電磁鋼板に対しては、高機能が強く要求される。
このような電磁鋼板としては、一般に、鉄にケイ素を加え結晶方位の揃い方や磁区の幅をコントロールして磁気的性質を改良した、Fe−Si系の電磁鋼板が知られている。
ところで、モータの小型化や高効率化を図るためには、鉄心用素材としての電磁鋼板における鉄損を抑えることが重要となる。鉄損とは、磁化した電磁鋼板で渦電流が発生することに伴い熱となって消費されるエネルギ(電力)のことである。
上記鉄損を低減させる方法の一つとして、電磁鋼板の板厚を薄くして渦電流を抑制する方法がある。しかし、電磁鋼板の板厚を薄くすると、電磁鋼板の変形やへたりが問題となる。
すなわち、電磁鋼板は、その磁気的特性を確保するために、例えば、金属結晶粒を大きくして保磁力を低下させたり、厳選された成分系を採用して飽和磁束密度等を向上させたりしている。このため、電磁鋼板の高硬度化を図るべく、結晶粒径を小さくしたり成分系を変更したりすると、電磁鋼板の磁気的特性が低下してしまう。このように、電磁鋼板においては、飽和磁束密度等の磁気的特性を低下させることなく、硬度を向上させることが困難である。したがって、渦電流を抑えて鉄損を低減させるべく、電磁鋼板の板厚を薄くした場合、電磁鋼板の変形等の問題が避けられない。
一方、窒化用鋼からなる金属部材の表面を硬化させる方法として、この金属部材の表面にショットピーニング加工を施してから窒化処理を施す表面硬化方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。
しかし、この表面硬化方法は、窒化用鋼からなる歯車等の歯部表面を硬化させるために行うものである。このため、電磁鋼板を対象としておらず、勿論飽和磁束密度等の磁気的特性についても何等考慮していない。
特開2001−59153号公報(第2−3頁)
本発明は上記実情に鑑みてなされたものであり、飽和磁束密度等の磁気的特性を低下させることなく、電磁鋼板の硬度を向上させることを解決すべき技術課題とするものである。
上記課題を解決する本発明の電磁鋼板の窒化処理方法は、電磁鋼板の表面にショットピーニング処理を施すショットピーニング工程と、前記ショットピーニング処理後の前記電磁鋼板を150〜300℃の温度範囲で窒素含有ガスと反応させて低温窒化処理してα''−Fe162 を含む窒化硬化層を形成する低温窒化処理工程とを含むことを特徴とするものである。
この電磁鋼板の窒化処理方法では、電磁鋼板の表面に予めショットピーニング処理を施してから所定の温度で低温窒化処理することにより、窒素がより内部深くまで浸透し易くなり、窒化処理時の窒化深さを深くすることができる。このため、電磁鋼板内の窒化量を増大させることができ、電磁鋼板の硬度を効果的に向上させることが可能となる。また、窒化処理を所定の温度で行う低温窒化処理とすることにより、α''−Fe162 を含む窒化硬化層を形成することができ、飽和磁束密度や保磁力等の磁気的特性が低下することを効果的に抑えることができる。したがって、飽和磁束密度等の磁気的特性を低下させることなく、電磁鋼板の硬度を向上させることが可能となる。
好適な態様において、前記ショットピーニング処理は、ショット粒径(D)が0.03〜0.3mmであり、かつ、ショットの投射速度(V)が50〜250m/secであるときに、カバレージ(N)が600〜2000%となるショット条件で行う。この態様によれば、電磁鋼板の表面を効果的に硬化させるとともに、該電磁鋼板の表面に適度の圧縮残留応力を発生させて低温窒化処理における窒素の拡散性を効果的に向上させることができる。
上記課題を解決する本発明の高硬度高磁気特性を有する電磁鋼板は、α''−Fe162 を含む窒化硬化層を有し、飽和磁束密度(σs)が198emu/g以上、内部硬さ(板厚方向の中心における内部硬さ。以下、同様。)がmHV250以上であることを特徴とするものである。
本発明に係る電磁鋼板の窒化処理方法は、ショットピーニング工程と、低温窒化処理工程とを含む。
前記ショットピーニング工程では、電磁鋼板の表面にショットピーニング処理を施す。このショットピーニング処理により、電磁鋼板を、特にその表面を硬化させることができる。また、電磁鋼板の表面から内部にかけてに圧縮残留応力を発生させることができる。このようにショットピーニング処理で電磁鋼板の表面から内部にかけて適度な圧縮残留応力を発生させることができると、その後に行う低温窒化処理で窒素の拡散性を効果的に向上させることができる。このため、低温窒化処理における窒化深さ(電磁鋼板の表面からどの程度まで窒素が進入しているかを示し、窒素の拡散性が増せば電磁鋼板のより内部深くまで窒素が進入して窒化深さも深くなる)を深くすることができ、電磁鋼板内における窒化物量(電磁鋼板の硬度向上に寄与する窒化物量)を増大させることが可能となる。したがって、電磁鋼板の硬度、特に表面硬さのみならず板厚方向の中心における内部硬さを効果的に向上させることができる。
ここに、電磁鋼板の表面から内部にかけて圧縮残留応力を発生させることにより、その後に行う低温窒化処理で窒化深さを深くすることができるのは、前記圧縮残留応力により窒素の材料内への拡散性が向上するためと考えられる。
前記電磁鋼板としては、例えば、3〜4wt%のSiを含むFe−Si系の電磁鋼板を用いることができる。また、この電磁鋼板の板厚は特に限定されず、0.1〜0.5mm程度のものを用いることができる。
前記ショットピーニング処理は、ショット粒径(D)が0.03〜0.3mm(好ましくは0.05〜0.2mm)であり、かつ、ショットの投射速度(V)が50〜250m/sec(好ましくは100〜150m/sec)であるときに、カバレージ(N)が600〜2000%となるショット条件で行うことが好ましく、カバレージ(N)が1300〜2000%となるショット条件で行うことがより好ましい。このときのカバレージ(N)が600%未満になると、電磁鋼板の表面(被ショット面)から内部にかけて発生する圧縮残留応力が不足し、その後に行う低温窒化処理で必要な窒化深さを確保することが困難となる。一方、カバレージ(N)が2000%を超えると電磁鋼板の破損が起こりうる。
なお、ショット粒径(D)が0.03mm未満になると衝突エネルギー不足となり、0.3mmを超えると電磁鋼板の破損が起こりうる。また、ショットの投射速度(V)が50m/sec未満になると衝突エネルギー不足となり、250m/secを超えることは設備的に困難である。
また、前記ショットピーニング処理においては、投射圧は0.3〜0.5MPa程度とすることができる。また、ショット粒の種類(材質)も特に制限はなく、前記鋼材と同等又はそれ以上の硬さを有するもの、具体的には炭素鋼、鋳鉄やセラミックス等を採用することができる。
ここに、前記ショットピーニング工程では、前記ショットピーニング処理を施した電磁鋼板の表面(被ショット面)に表面硬化層が形成される。このショットピーニング処理により、ショットピーニング処理前の表面硬さよりもmHV50〜100程度表面硬さを上昇させることが好ましく、したがって前記表面硬化層としては、mHV250〜300程度のビッカース硬さをもち、また、100〜200μm程度の厚さで形成することが好ましい。
なお、前記表面硬化層の内部(表面硬化層よりも板厚方向に深い部分)においても、ショットの投射圧力により圧縮残留応力が付与された加工影響部が存在しうる。
また、前記ショットピーニング工程では、前記電磁鋼板の両面に前記ショットピーニング処理を施して前記表面硬化層を該電磁鋼板の両面に形成してもよいし、片面のみに前記ショットピーニング処理を施して電磁鋼板の片面のみに前記表面硬化層を形成してもよい。ただし、磁気特性向上の観点より、電磁鋼板の両面に前記ショットピーニング処理を施して電磁鋼板の両面に前記表面硬化層を形成することが好ましい。
前記低温窒化処理工程では、前記ショットピーニング処理後の前記電磁鋼板を150〜300℃の温度範囲で窒素含有ガス(例えば、アンモニアの単独ガスやアンモニアガスと他のガス(COやCO2 )との混合ガス)と反応させる低温窒化処理する。このように低温窒化処理することにより、前記電磁鋼板の表面から進入した窒素が電磁鋼板の内部に拡散する。これにより、前記ショットピーニング処理により加工硬化された前記表面硬化層(前記硬化層)及び前記ショットピーニング処理により圧縮残留応力が付与された前記加工影響部が窒化されてα''−Fe162 を含む窒化硬化層が形成される。
こうして、ビッカース硬さでmHV300〜360程度の表面硬さをもつとともに、mHV250以上(より好ましくはmHV280以上、特に好ましくはmHV300以上)の内部硬さをもつ窒化硬化層を形成することができ、したがってこのような高硬度の電磁鋼板を得ることができる。
本発明に係る電磁鋼板の窒化処理方法においては、ショットピーニング処理及び低温窒化処理による内部硬さの増加量(ショットピーニング処理及び低温窒化処理する前の電磁鋼板における内部硬さに対するショットピーニング処理及び低温窒化処理後の電磁鋼板における内部硬さの変化量)はmHV50以上(より好ましくはmHV80以上、特に好ましくはmHV100以上)であることが好ましい。なお、ショットピーニング処理及び低温窒化処理後の電磁鋼板における内部硬さの上限はmHV350程度とされる。
また、前記電磁鋼板の表面を前記ショットピーニング処理することなく、前記低温窒化処理する場合は、窒素の拡散向上に寄与しうる圧縮残留応力がないため、電磁鋼板の表面から窒素が進入、拡散することがない。
ここに、前記低温窒化処理工程では、前述のように150〜300℃の温度範囲で低温窒化処理することにより、前記表面硬化層及び前記加工影響部を窒化して直接、飽和磁束密度等の磁気特性の高いα''−Fe162 を形成することができ、α''−Fe162 を含む窒化硬化層を容易に形成することが可能となる。300℃を超える温度で窒化処理すると、α''−Fe162 ではなくてFe2 NやFe3 N等の窒化物となり、飽和磁束密度等の磁気特性が低下してしまう。一方、150℃より低い温度で窒化処理すると窒化物自体が形成されず、磁気特性及び硬度の向上を図れない。また、低温窒化処理における窒化処理時間は、飽和磁束密度等の磁気特性及び硬度に影響を与える。この低温窒化処理時間としては、5〜100時間程度とすることが好ましい。
そして、このような低温窒化処理により形成されたα''−Fe162 を含む前記窒化硬化層を有する前記電磁鋼板は、飽和磁束密度(σs)が198emu/g以上(好ましくは200emu/g以上)、透磁率(μ)が18以上、保磁力(Hc)が5Oe以下の高磁気特性の電磁鋼板とすることができる。
こうして得られた高硬度で高磁気特性の電磁鋼板は、例えば、ハイブリッド電気自動車や燃料電池自動車等の電気自動車用の駆動モータや他種モータの構成部品である鉄心等に好適に供することができる。
以下、実施例により、本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
(実施例1)
図1は本実施例に係る電磁鋼板の窒化処理方法を模式的に示す工程図であり、この製造方法は微細結晶化工程と窒化処理工程と切断工程とからなる。
<ショットピーニング工程>
電磁鋼板1として、3wt%のSiを含み、残部がFeよりなるFe−Si系の電磁鋼板を準備した。なお、この電磁鋼板1の形状及び寸法は、厚さが0.35mmの薄板(10mm×10mm)である。
そして、この電磁鋼板1の両表面に、カバレージが680%となる以下に示すショット条件で、ショットピーニング処理を施して、mHV250で厚さ100μmの表面硬化層1a、1aを該電磁鋼板1の両表面にそれぞれ形成した(図2(a)参照)。このとき、両表面硬化層1a、1aの間には、ショットの投射圧力で圧縮残留応力が付与された加工影響部1bが形成されている。なお、この加工影響部1bはショットピーニング処理によってはほとんど硬化されておらず、加工影響部1bの硬さは元の硬さのままのmHV200程度である。
ショット粒の種類 :炭素鋼
ショット粒の硬さ :HV800
ショット粒径 :0.3mm
ショットの投射速度 :100m/sec
カバレージ :680%
<低温窒化処理工程>
次に、前記表面硬化層1a、1a及び加工影響部1bが形成された前記電磁鋼板1を以下に示す条件で窒素含有ガスと反応させる低温窒化処理をすることにより、前記表面硬化層1a、1a及び加工影響部1bの全体を窒化して窒化硬化層1cとし、本実施例に係る高硬度高磁気特性を有する電磁鋼板10を得た(図2(b)参照)。
窒化温度 :150℃
窒化時間 :7時間
窒素含有ガス:NH3 ガス
得られた高硬度高磁気特性を有する電磁鋼板10からサンプルを切り出し、X線回折装置により窒化硬化層1cにおける結晶相を調べた結果、α''−Fe162 の単一結晶相であった。
(比較例1)
<ショットピーニング工程>
前記実施例1と同様にして、電磁鋼板1の両表面に前記表面硬化層1a、1aをそれぞれ形成するとともに、前記加工影響部1bを形成した。
<高温窒化処理工程>
次に、前記表面硬化層1a、1a及び前記加工影響部1bが形成された前記電磁鋼板1を以下に示す条件で窒素含有ガスと反応させる高温窒化処理をすることにより、前記表面硬化層1a、1a及び前記加工影響部1bの全体を窒化して窒化硬化層とし、比較例に係る電磁鋼板を得た。
窒化温度 :580℃
窒化時間 :3時間
窒素含有ガス:NH3 ガス
得られた比較例の電磁鋼板からサンプルを切り出し、X線回折装置により窒化硬化層における結晶相を調べた結果、Fe3 Nの単一結晶相であった。
(磁気特性及び硬度の評価)
最初に準備した電磁鋼板、実施例1で得られた高硬度高磁気特性の電磁鋼板10及び比較例1で得られた電磁鋼板について、飽和磁束密度(σs)、保磁力(Hc)及び透磁率(μ)の磁気特性並びにビッカース硬さをそれぞれ測定した。その結果を表1に示す。なお、ビッカース硬さは、電磁鋼板10からサンプルを切り出し、表面硬さ及び板厚方向中心における内部硬さをそれぞれ測定した。また、磁気特性の測定は、振動型磁力計により行った。
Figure 2005226118
表1から明らかなように、比較例に係る電磁鋼板は、最初に準備した入手したままの電磁鋼板と比べて、飽和磁束密度(σs)が低下し、保磁力(Hc)が大きく上昇しており、磁気特性が低下していた。これに対し、本実施例1の高硬度高磁気特性を有する電磁鋼板10は、入手したままの電磁鋼板と比べて、飽和磁束密度(σs)及び透磁率(μ)が上昇しており、入手したままの電磁鋼板以上の磁気特性を有していた。また、本実施例1の電磁鋼板10は、内部硬さがmHV80程度上昇してmHV280となり、表面硬さがmHV150程度上昇してmHV350となった。
(カバレージと内部硬さとの関係)
前記実施例1及び前記比較例1のショットピーニング工程において、ショット時間を種々変更することによりカバレージを種々変更してショットピーニング処理し、カバレージと前記窒化硬化層1cにおける内部硬さの変化量との関係を調べた。その結果を図3に示す。
図3より、ショットピーニング後に低温窒化処理する本実施例1においては、カバレージを600%程度以上(より好ましくは1300%以上)とすることにより、内部硬さを効果的に上昇させうることがわかる。具体的には、カバレージを600%程度以上とすることで内部硬さをmHV50程度以上上昇させてmHV250程度以上とすることができ、カバレージを1300%程度以上とすることで内部硬さをmHV100程度以上上昇させてmHV300程度以上とすることができる。
一方、ショットピーニング後に高温窒化処理する比較例1においては、カバレージを200%程度を超えた時点で内部硬さが急激に上昇した。これより、高温窒化は窒素の拡散が容易であることがわかる。
(カバレージと窒化深さとの関係)
前記実施例1の微細結晶化工程において、ショット時間を種々変更することによりカバレージを種々変更してショットピーニング処理し、カバレージと窒化深さ(電磁鋼板1の表面からどの程度まで窒素が進入しているかを示すもの、すなわち前記窒化硬化層1bの厚さに相当する)との関係を調べた。その結果を図4に示す。
図4より、ショットピーニング処理時のカバレージを600%以上(より好ましくは1300%以上)とすることにより、窒化深さを0.07mm以上(より好ましくは0.1mm以上)とすることができることがわかる。したがって、図3との関係より、カバレージを600%以上(より好ましくは1300%以上)とすることにより、窒化深さを効果的に深くして(窒化量を効果的に増大させて)内部硬さを効果的に上昇させうることがわかる。
(カバレージ及び窒化温度と磁気特性との関係)
最初に準備した入手したままの電磁鋼板に対して、ショットピーニング処理をすることなく実施例1の低温窒化処理したもの、同じくショットピーニング処理をすることなく比較例1の高温窒化処理したもの、カバレージ120%となるショット条件でショットピーニング処理した後に実施例1の低温窒化処理したもの、及び同じくカバレージ120%となるショット条件でショットピーニング処理した後に比較例1の高温窒化処理したものについて、それぞれ磁気特性を調べた。その結果を図5に示す。
図5より、カバレージ120%となるショット条件でショットピーニング処理した後に比較例1の高温窒化処理したものだけが、入手したままの電磁鋼板と比べて、飽和磁束密度(σs)が低下し、かつ、保磁力(Hc)が上昇しており、磁気特性が低下していた。これは、高温窒化処理により、α''−Fe162 ではなくてFe2 NやFe3 N等の窒化物が形成されたためと考えられる。なお、ショットピーニング処理をすることなく比較例1の高温窒化処理したものは、磁気特性の低下が認められなかった。これは、窒素が含有されなかったためと考えられる。
(実施例2)
本実施例は、ショットピーニング処理におけるカバレージ及び低温窒化処理における窒化時間を変更すること以外は前記実施例1と同様である。
<ショットピーニング工程>
前記実施例1と同様の電磁鋼板1の両表面に、カバレージが1340%となる以下に示すショット条件でショットピーニング処理を施して、mHV260で厚さ100μmの表面硬化層1a、1aを該電磁鋼板1の両表面にそれぞれ形成した。なお、両表面硬化層1a、1aの間には、ショットの投射圧力で圧縮残留応力が付与された加工影響部(mHV220程度)1bが形成されている。
ショット粒の種類 :炭素鋼
ショット粒の硬さ :HV800
ショット粒径 :0.3mm
ショットの投射速度 :100m/sec
カバレージ :1340%
<低温窒化処理工程>
次に、前記表面硬化層1a、1a及び加工影響部1bが形成された前記電磁鋼板1を以下に示す条件で窒素含有ガスと反応させる低温窒化処理をすることにより、前記表面硬化層1a、1a及び加工影響部1bの全体を窒化して窒化硬化層1cとし、本実施例に係る高硬度高磁気特性を有する電磁鋼板10を得た。
窒化温度 :150℃
窒化時間 :8時間
窒素含有ガス:NH3 ガス
得られた高硬度高磁気特性を有する電磁鋼板10からサンプルを切り出し、X線回折装置により窒化硬化層1cにおける結晶相を調べた結果、α''−Fe162 の単一結晶相であった。
(磁気特性及び硬度の評価)
実施例2で得られた高硬度高磁気特性の電磁鋼板10について、飽和磁束密度(σs)、保磁力(Hc)及び透磁率(μ)の磁気特性並びにビッカース硬さをそれぞれ測定した。その結果を表2に示す。
Figure 2005226118
表2から明らかなように、本実施例2の高硬度高磁気特性鋼材10は、入手したままの電磁鋼板と同等の磁気特性を有していた。また、本実施例2の電磁鋼板10は、内部硬さがmHV100程度上昇してmHV300となり、表面硬さがmHV160程度上昇してmHV360となった。
本実施例に係る電磁鋼板の窒化処理方法を模式的に説明する工程図である。 本実施例に係る電磁鋼板の窒化処理方法の各工程で得られた物を模式的に示す断面図であり、(a)はショットピーニング工程で得られた物、(b)は低温窒化処理工程で得られた物(高硬度高磁気特性を有する電磁鋼板)をそれぞれ示す。 ショットピーニング処理時のカバレージと内部硬さの変化量との関係を示すグラフである。 ショットピーニング処理時のカバレージと窒化深さとの関係を示すグラフである。 カバレージ及び窒化温度と磁気特性との関係を示すグラフである。
符号の説明
1…電磁鋼板 1a…表面硬化層
1b…加工影響部 1c…窒化硬化層
10…高硬度高磁気特性を有する電磁鋼板

Claims (3)

  1. 電磁鋼板の表面にショットピーニング処理を施すショットピーニング工程と、
    前記ショットピーニング処理後の前記電磁鋼板を150〜300℃の温度範囲で窒素含有ガスと反応させて低温窒化処理してα''−Fe162 を含む窒化硬化層を形成する低温窒化処理工程とを含むことを特徴とする電磁鋼板の窒化処理方法。
  2. 前記ショットピーニング処理は、ショット粒径(D)が0.03〜0.3mmであり、かつ、ショットの投射速度(V)が50〜250m/secであるときに、カバレージ(N)が600〜2000%となるショット条件で行うことを特徴とする請求項1記載の電磁鋼板の窒化処理方法。
  3. α''−Fe162 を含む窒化硬化層を有し、飽和磁束密度(σs)が198emu/g以上、内部硬さが250mHV以上であることを特徴とする高硬度高磁気特性を有する電磁鋼板。
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