JP2005226032A - 水溶性ブロック共重合体及びその製造方法 - Google Patents

水溶性ブロック共重合体及びその製造方法 Download PDF

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大英 中熊
Jinka Kin
仁華 金
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Abstract

【課題】 線状のカチオン性が相対的に優位なブロックと、水溶性であり、かつ有機溶媒への溶解性を有する線状の非イオン性が相対的に優位なブロックとからなる線状の分子鎖を有する水溶性ブロック共重合体およびその水系溶媒中での製造方法を提供する。
【解決手段】
一般式(1)
【化1】
Figure 2005226032

(式中、mは20〜5000の整数であり、nは20〜5000の整数である。X1は0〜0.6であり、X2は0.4〜0.99であり、Y1は0.4〜1.0であり、Y2は0.01〜0.6であり、またX1 + Y1 = 1、X2 + Y2 = 1である。)で表される水溶性ブロック共重合体。
【選択図】 なし

Description

本発明は、互いにもう一方のブロックに対して、カチオン性が相対的に優位なブロックと、非イオン性が相対的に優位なブロックとからなる分子鎖を有し、遺伝子キャリアーや、塗料あるいはインキの染料、顔料分散剤など、幅広い用途に有用な水溶性ブロック共重合体及びその製造方法に関する。
従来、ポリ(エチレンイミン)が製紙、化粧品、水の純化などに使用されてきた。しかしながら、ここ数年来、カチオン性重合体であるポリ(エチレンイミン)が、アニオン性高分子、たとえばDNAなどとの静電気的なイオン相互作用により、イオンコンプレックスを形成することから、遺伝子キャリアーとして注目を集めている。
ポリ(エチレンイミン)は本来カチオン性水溶性重合体であるが、DNAなどのアニオン性高分子とイオンコンプレックスを形成すると水に対して不溶となってしまうため、その用途は非常に限られたものとなる。
そのため二重親水性ブロック共重合体が提案されている。かかる二重親水性ブロック共重合体は、両ブロック共に水溶性であるが、両ブロックそれぞれが異なった機能を有する。その結果、イオンコンプレックスをコアとし、非イオン性ブロックをコロナとするナノミセルが形成され、水中に均一に分散する。このようにして得られるナノミセルは、広い用途に応用可能で、特にDNAキャリアーとして有用である。
例えば、ポリ(エチレンイミン)と、分子鎖片末端にエポキシ基を有するポリ(エチレングリコール)をカップリングさせて得られる水溶性ブロック共重合体が挙げられる(たとえば、非特許文献1参照。)。かかる水溶性ブロック共重合体非イオン性部分はポリ(エチレングリコール)ブロックであるため、広い範囲での物質との相溶性が乏しいという問題点があった。
また、ポリ(エチルオキサゾリン)の一部を加水分解して得られる、分子中にエチレンイミンを有するエチレンイミンとエチルオキサゾリンとのランダム共重合体も知られている(たとえば、特許文献1参照)。かかる共重合体については、ポリエチルオキサゾリンを単に加水分解してその程度を調整しているため、ランダム共重合体となっても決してブロック共重合体にはならない。このランダム共重合体は、アニオン性化合物とイオン結合体を形成するという特性を有していても、ブロック共重合体のような明確なコアとコロナ区分を有するイオンコンプレックスナノミセルを形成する特性を示すものではない。
さらに、線状のポリ(エチレンイミン)に2−エチル−2−オキサゾリンを反応させて得られるグラフト共重合体も提案されている(特許文献2参照)。この共重合体は、幹ポリマーがポリ(エチレンイミン)であるため、分子中の多数の窒素原子にポリ(2−エチル−2−オキサゾリン)が結合したグラフト共重合体であって、所謂ブロック共重合体ではない。
ミロス・セドラック(Milos Sedlak),外2名,「マクロモレキュラー・ケミストリー・アンド・フィジクス(Macromolecular Chemistry and Physics)」,1999年,第199巻,p.247−254 特開2002−194116号公報 特開平08−120035号公報
本発明が解決しようとする課題は、線状のカチオン性が相対的に優位なブロックと、水溶性であり、かつ有機溶媒への溶解性を有する線状の非イオン性が相対的に優位なブロックとからなる線状の分子鎖を有する水溶性ブロック共重合体およびその水系溶媒中での製造方法を提供することにある。
本発明は、一般式(1)
Figure 2005226032
(式中、mは20〜5000の整数であり、nは20〜5000の整数である。X1は0〜0.6であり、X2は0.4〜0.99であり、Y1は0.4〜1.0であり、Y2は0.01〜0.6であり、またX1 + Y1 = 1、X2 + Y2 = 1である。)で表される水溶性ブロック共重合体を提供するものである。
また本発明は、ポリ(N−アセチルエチレンイミン)単位とポリ(N−プロピオニルエチレンイミン)単位とからなるブロック共重合体の水溶液に酸又は塩基を添加して加水分解を行うことにより、ポリ(エチレンイミン)が相対的に優位なブロックと、ポリ(N−プロピオニルエチレン)が相対的に優位なブロックからなる水溶性ブロック共重合体の製造方法を提供するものである。
本発明は、新規な、カチオン性ブロックであるエチレンイミンリッチなブロックと、プロピオニルエチレンイミンリッチなブロックとからなる分子鎖を有する線状の水溶性ブロック共重合体を提供することができる。
また、本発明の水溶性ブロック共重合体の製造方法によれば、ブロック前駆体を、水中に溶解させて酸またはアルカリ存在下で加水分解することによって、カチオン性ブロックであるエチレンイミンリッチなブロックとプロピオニルエチレンイミンリッチなブロックとからなる分子鎖を有する線状の水溶性ブロック共重合体をもたらすことができる。
本発明の水溶性ブロック共重合体は、上記一般式(1)で示される、水系溶媒中でカチオン性を示す線状のポリ(エチレンイミン)優位なブロック単位(以下、単にエチレンイミンリッチなブロックという)と線状のポリ(N−プロピオニルエチレンイミン)優位なブロック単位(以下、単にプロピオニルエチレンイミンリッチなブロックという)とを有しているものである。ここで言うポリ(エチレンイミン)優位なブロックあるいは、ポリ(N−プロピオニルエチレンイミン)優位なブロックとは、あくまでも他方のブロックに対して相対的に優位ということであって、ポリエチレンイミン単位あるいはポリ(N−プロピオニルエチレンイミン)単位が該ブロック共重合体中で最も多く存在しているということを示さない。
本発明の水溶性ブロック共重合体は、上述するように次の一般式(1)で示されるものである。
一般式(1)
Figure 2005226032
(式中、mは20〜5000の整数であり、nは20〜5000の整数である。X1は0〜0.6であり、X2は0.4〜0.99であり、Y1は0.4〜1.0であり、Y2は0.01〜0.6であり、またX1 + Y1 = 1、X2 + Y2 = 1である。)
上記式中のm、nに関して、m、nが20未満の場合、分子鎖が短すぎるため、例えばアニオン性高分子の分散性などといった、二重親水性ブロック共重合体としての機能を発現しにくい可能性があるし、m、nが5000以上の場合、分子量が大きすぎるため水系溶媒中に溶解しにくい可能性がある。好ましくはmとnとの和が50〜5000で、m:nが0.25〜4に設定するのが望ましい。このような範囲内で、カチオン性親水基と中性親水基がバランスよく存在し、水系溶媒への溶解性および二重親水性ブロック共重合体としての機能を充分に発現させることができる。
また、上記式中のY1、X2に関して、Y1が0.4未満、あるいはX2が0.4未満の場合、ブロック間の機能の差が小さく、二重親水性ブロック共重合体としての機能を発現しにくい可能性がある。好ましくはY1が0.6〜1.0、X2が0.7〜0.99、さらに好ましくは、Y1が0.7〜1.0、X2が0.8〜0.99になるように設定するのが望ましい。このような範囲内で、それぞれのブロック間の極性が大きく異なるため、二重親水性ブロック共重合体としての機能をさらに発現することが可能となる。
上記式中、エチレンイミン単位が20モル%未満、あるいは80モル%よりも大きい場合、二重親水性ブロック共重合体としての機能を発現しにくい可能性がある。好ましくは、30〜70モル%になるように、さらに好ましくは40〜60モル%になるように設定するのが望ましい。
次に、本発明の水溶性ブロック共重合体の製造方法について述べる。以下に詳述する製造方法は、エチレンイミンリッチなブロックAとプロピオニルエチレンイミンリッチなブロックBとからなる線状の分子鎖を有する水溶性ブロック共重合体を、水系溶媒中でもたらす画期的なものである。
即ち、分子中に線状のポリ(N−アセチルエチレンイミン)ブロック単位とプロピオニルエチレンイミンブロック(線状のポリ(N−プロピオニルエチレンイミン)ブロック単位)とを有する水溶性ブロック共重合体(以下、「ブロック前駆体」と称す)を、水系溶媒中に溶解または分散させ、酸またはアルカリ存在下に、該ブロック前駆体のポリ(N−アセチルエチレンイミン)ブロック単位(以下、「アセチルエチレンイミンブロック」と称す)をプロピオニルエチレンイミンブロックに対して比較的多く加水分解することにより水溶性ブロック共重合体を製造することができる。
本発明は、アセチルエチレンイミンブロックの加水分解に対する反応性が、プロピオニルエチレンイミンブロックの反応性に比べて高いことに着目してなされた。また、環境への配慮という観点から、水系の溶媒を用いる合成法は工業的に、一般的に重要である。
この系に、酸またはアルカリを加えて加熱することによって、アセチルエチレンイミンブロックが比較的多く加水分解される結果、エチレンイミンリッチなブロックと、プロピオニルエチレンイミンリッチなブロックとからなる線状の分子鎖を有する水溶性ブロック共重合体が得られる。該水溶性ブロック共重合体は、アニオン性化合物とイオンコンプレックスを形成した後も水溶性を保持し、かつ有機溶媒にも相溶性を示す。
本発明の、エチレンイミンブロックと、プロピオニルエチレンイミンブロックとからなる分子鎖を有する水溶性ブロック共重合体は、その前駆重合体である、アセチルエチレンイミンブロックと、プロピオニルエチレンイミンブロックとからなる分子鎖を有するブロック前駆体のアセチルエチレンイミンブロックをプロピオニルエチレンイミンブロックに対して比較的多く加水分解することによって得られる。
前記ブロック前駆体は、2−オキサゾリンまたは2−メチル−2−オキサゾリンをカチオン開環リビング重合した後、得られたリビングポリマーに、さらに2−エチル−2−オキサゾリンを重合させることによって得られる。勿論、2−エチル−2−オキサゾリンの重合を先に行い、次いで2−オキサゾリンまたは2−メチル−2−オキサゾリンの重合を行うこともできる。このようなブロック前駆体の製法については、例えばアドバンセス・イン・ケミストリー・シリーズ 142,320(1975)などで知られている。
カチオン開環リビング重合反応に使用する溶媒としては、非プロトン性不活性溶媒や非プロトン性極性溶媒など、公知慣用の溶媒を使用することができる。
ブロック前駆体の各ブロックの重合度は20以上であるのが好ましい。各ブロックの重合度が20未満であるときは、最終的に得られる水溶性ブロック共重合体としての特徴が発現しにくい。 また、ブロック前駆体の一分子鎖当たりの重合度は50〜5000であるのが好ましい。
ブロック前駆体の一分子中のアセチルエチレンイミンブロックの重合度と、プロピオニルエチレンイミンブロックの重合度との比は、2:8〜8:2の範囲にあるのが好ましい。
カチオン開環リビング重合の重合開始剤としては、分子中に塩化アルキル基、臭化アルキル基、ヨウ化アルキル基、トルエンスルホニルオキシ基、あるいはトリフルオロメチルスルホニルオキシ基などの官能基を有する化合物を用いることができる。具体的には、たとえば、塩化メチルベンゼン、臭化メチルベンゼン、ヨウ化メチルベンゼン、トルエンスルホン酸メチルベンゼン、トリフルオロメチルスルホン酸メチルベンゼン、臭化メタン、ヨウ化メタン、トルエンスルホン酸メタンまたはトルエンスルホン酸無水物、トリフルオロメチルスルホン酸無水物、5−(4−ブロモメチルフェニル)-10,15,20-トリ(フェニル)ポルフィリン、ブロモメチルピレンなどの1価のもの、ジブロモメチルベンゼン、ジヨウ化メチルベンゼン、ジブロモメチルビフェニレン、ジブロモメチルアゾベンゼンなどの2価のもの、トリブロモメチルベンゼン、などの3価のもの、テトラブロモメチルベンゼン、テトラ(4−クロロメチルフェニル)ポルフィリン、テトラブロモエトキシフタロシアニンなどの4価のもの、ヘキサブロモメチルベンゼン、テトラ(3,5−ジトシリルエチルオキシフェニル)ポルフィリンなどの5価以上のものが使用に供される。
上記重合開始剤は価数に応じて、アセチルエチレンイミンブロックあるいはプロピオニルエチレンイミンブロックに結合している。すなわち、価数が1価もしくは2価のものでは得られるポリマー前駆体は線状のものとなり、価数が3以上の場合には星型のポリマー前駆体が得られる。かかる重合開始剤の価数は、好ましくは1〜12価、より好ましくは1〜6価である。
かかる星型のポリマー前駆体から得られる、ポリ(エチレンイミン)が相対的に優位なブロックと、ポリ(N−プロピオニルエチレンイミン)が相対的に優位なブロックからなる水溶性ブロック共重合体は、A−(B−C)p又はA−(C−B)q (A:1価以上の重合開始剤残基、B及びC:上記一般式(1)に示されるブロック単位、p及びq:Aの価数)になる。
次に、ブロック前駆体のアセチルエチレンイミンブロックをプロピオニルエチレンイミンブロックに対して比較的多く加水分解して、水溶性ブロック共重合体を製造する方法について説明する。
反応溶媒としては水を用いるが、反応を阻害しない範囲において、水と容易に混和する溶媒を20%未満含んでいても良い。水と容易に混和する溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、アセトン、ピリジンなどがある。
加水分解反応時、公知の加水分解触媒として酸またはアルカリを添加する。酸としては、塩酸、硫酸、硝酸、リン酸など通常の無機酸類を、またアルカリとしては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニアなど通常の無機アルカリ類を使用することができる。また、無機アルカリ類を使用する際、公知の相間移動触媒として、テトラブチルアンモニウムクロライドなどといった有機アンモニウム塩を使用することができる。
加水分解を行う際に、酸をブロック前駆体のアセチル基に対して好ましくは 0.75〜10倍モル、より好ましくは1〜5倍モル添加して反応せしめ、ブロック前駆体のアセチル基およびプロピオニル基を所望量で加水分解することができる。また、アルカリを使用する場合には、ブロック前駆体のアセチル基に対してより選択的に加水分解する特徴が認められ、ブロック前駆体のアセチル基に対して好ましくは0.75〜20倍モル、より好ましくは1〜10倍モル添加して反応せしめることにより、ブロック前駆体のアセチル基およびプロピオニル基の加水分解を制御することが容易である。
加水分解反応温度は100℃以下が好ましく、使用する酸またはアルカリの濃度に合わせて設定するとよい。酸またはアルカリの濃度が高い場合は、温度を低く、たとえば室温程度に設定し、酸またはアルカリの濃度が低い場合は、反応温度を高めに設定するとよい。
一般的に、加水分解反応は2〜48時間が好適であるが、酸またはアルカリの濃度、反応温度などの条件によって異なる。アルカリで加水分解をする場合は、反応性が酸を用いる場合に比べて低いので、100時間以上反応をさせる場合もありうる。
酸で加水分解をする場合、ブロック前躯体のアセチルエチレンイミンブロックとプロピオニルエチレンイミンブロックの反応性の比は7:3〜9:1程度であり、プロピオニルエチレンイミン部分も加水分解された分子鎖を有する水溶性ブロック共重合体が得られる。しかし、この水溶性ブロック共重合体は、ランダム共重合体とは異なり、エチレンイミンが相対的に豊富な部分とプロピオニルエチレンイミンが相対的に豊富な部分のブロック共重合体である。
一方、アルカリで加水分解をする場合、ブロック前躯体のアセチルエチレンイミンブロックとプロピオニルエチレンイミンブロックの反応性の比は9:1〜99:1程度であり、酸の場合に比べて、ブロック前躯体のアセチルエチレンイミン部分を選択的に加水分解したブロック共重合体を得ることができる。
特に水酸化ナトリウムを用いた場合の選択性は極めて高く、選択的にアセチルエチレンイミンブロックを加水分解させることができる。
本発明の水溶性ブロック共重合体の製造方法によれば、ブロック前駆体を、水系溶媒中、酸またはアルカリ存在下で加水分解することによって、該ブロック前駆体のアセチルエチレンイミンブロックを比較的多く加水分解することができ、カチオン性ブロックである線状のエチレンイミンリッチなブロックと、線状のプロピオニルエチレンイミンリッチなブロックとからなる分子鎖を有する水溶性ブロック共重合体が得られる。
本発明の水溶性ブロック共重合体は、線状のカチオン性ブロックを有しており、生体高分子などとの水中ナノミセル形成に用いることができる。くわしくいえば、本発明での水溶性ブロック共重合体はアニオン性のDNA、タンパク質、ウイルス、ばい菌などとイオン結合し、それらを取り込んだキャリアーとして用いることができる。このようなキャリアーは医療またはナノ医療分野での、臨床用診断剤、治療剤、生体組織接着剤、保護剤として有用である。特に、本発明での水溶性ブロック共重合体はDNAとのナノミセル形成に極めて有用であり、そのミセルは遺伝子治療用のベクター調製の重要な素材として用いることができる。ポルフィリンまたはフタロシアニンなどを含む水溶性ブロック共重合体は光線力学ガン治療のレーザー光線による色素型制ガン剤として用いることができる。また、光機能性を有するナノミセルをナノリアクター(nanoreactor)、またはナノ粒子型触媒として用いることもできる。
また、本発明の水溶性ブロック共重合体は、アニオン性の染料、顔料との水中ナノ分散体作製に有用であり、前記、医療またはナノ医療分野における用途、あるいは、ナノリアクター(nanoreactor)やナノ粒子型触媒などの用途以外に、各種水性塗料や水性インキ、中でも水性ジェットインキなどにも好適に使用することができる。特にアニオン性基を有する染料としては、コンゴーレッド、アシッドレッド、アシッドバイオレット、インジゴカルミン、フタロシアニンスルホン酸ナトリウム、フタロシアニンカルボン酸ナトリウム、クロロフィリンナトリウム、フェニルポルフィリンスルホン酸ナトリウム、フェニルポルフィリンカルボン酸ナトリウム、フェニルポルフィリンカルリン酸ナトリウム、ピロガロールレッド、ピロガロールバイオレット、ヘスペリジンなどが挙げられる。
以下、実施例および参考例によって本発明をさらに具体的に説明する。特に断らない限り、「%」は「質量%」を表す。
<分子量測定法>
東ソー株式会社製高速液体クロマトグラフィー「HLC−8000」(RI検出器、TSKge12000x1+3000Hxl+5000Hxl+guardcolumnHx1−H、溶媒ジメチルホルムアミド、流速1.0ml/分、温度40℃)を使用して測定した。
<粒径および粒径分布の測定法>
日機装株式会社製UPA粒度分析計「Microtrac 9203」(レーザー光波長780nm、反射角180o、温度25℃)を使用して、動的光散乱(DLS)法による粒径および粒径分布を測定した。
(合成例1)
<ブロック前駆体(1−1)の合成>
容積50mlの反応容器内部を窒素ガスで置換した後、カチオン開環リビング重合開始剤であるトルエンスルホン酸メタン0.088g(0.47mmol)、N,N−ジメチルアセトアミド5mlを加え、室温で攪拌した。この溶液に、2−メチル−2−オキサゾリン2.01g(23.6mmol)を加えた後、100℃で24時間攪拌しながら2−メチル−2−オキサゾリンをカチオン開環リビング重合させた。重合率は98%であった。
反応液温度を60℃に下げた後、2−エチル−2−オキサゾリン2.34g(23.6mmol)を加えた後、100℃に加熱し24時間攪拌した。反応混合液の温度を室温に下げ、メタノール10mlを加えた後、反応混合液を減圧濃縮した。この濃縮液をジエチルエーテル100ml中に注いで、重合体を沈殿させた。
得られた重合体のメタノール溶液を、ジエチルエーテル中に注いで再沈殿させ、吸引濾過後、濾過物を真空乾燥し、ブロック前駆体(1−1)3.77gを得た。収率は86%であった。
得られたブロック前駆体(1−1)の分子量を測定した結果、数平均分子量(以下、「Mn」と略記する。)は9800であり、分子量分布は1.15であった。
1H−NMR(dTMS = 0, D2O)測定からアセチルエチレンイミンブロックにおける側鎖メチル基のシグナル(CH3 1.97ppm)と、プロピオニルエチレンイミンブロックにおける側鎖エチル由来のシグナル(CH3 1.13ppm, CH2 2.41ppm)および両ブロックの主鎖エチレンシグナル(CH2CH2 3.46ppm)を確認した。従って、両単位の1H−NMR測定による積分比から、アセチルエチレンイミンブロックとプロピオニルエチレンイミンブロックとのモル組成比は48:52であることがわかった。このことから、その平均モノマーの質量を92.4と見積もることができる。
(合成例2)
<ブロック前駆体(1−2)の合成>
反応容器に、トルエンスルホン酸メタン0.044g(0.024mmol)を加え、窒素置換した。窒素気流中、2−メチル−2−オキサゾリン2.01g(23.6mmol)、およびN,N−ジメチルアセトアミド5mlを順次加えた。撹拌しながら100℃に昇温し、24時間撹拌した。H−NMRの測定結果から、2−メチル−2−オキサゾリンがほぼ定量的に重合し、ポリ(N−アセチルエチレンイミン)が得られたことが確認できた。
上記反応液に、さらに2−エチル−2−オキサゾリン2.34g(23.6mmol)を加え、100℃で24時間撹拌した。反応混合液の温度を室温に下げ、メタノール10mlを加えた後、反応混合液を減圧濃縮した。この濃縮液をジエチルエーテル100ml中に注いで、重合体を沈殿させた。
得られた重合体のメタノール溶液を、ジエチルエーテル中に注いで再沈殿させ、吸引濾過後、濾過物を真空乾燥し、水溶性のブロック前駆体(1−2)3.77gを得た。収率は86%であった。
分子量測定およびH−NMR測定した結果、その質量平均分子量が17000、その分子量分布が1.72であった。
1H−NMR(dTMS = 0, D2O)測定からアセチルエチレンイミンブロックにおける側鎖メチル基のシグナル(CH3 1.99ppm)と、プロピオニルエチレンイミンブロックにおける側鎖エチル由来のシグナル(CH3 1.13ppm, CH2 2.41ppm)および両ブッロクの主鎖エチレンシグナル(CH2CH2 3.46ppm)を確認した。従って、両単位の1H−NMR測定による積分比から、アセチルエチレンイミンブロックと、プロピオニルエチレンイミンブロックのモル組成比は52:48であることがわかった。
(合成例3)
<ブロック前駆体(1−3)の合成>
反応容器に、トルエンスルホン酸メタン0.044g(0.024mmol)を加え、窒素置換した。窒素気流中、2−メチル−2−オキサゾリン1.01g(11.8mmol)、およびN,N−ジメチルアセトアミド5mlを順次加えた。撹拌しながら100℃に昇温し、24時間撹拌した。H−NMRの測定結果から、2−メチル−2−オキサゾリンがほぼ定量的に重合し、ポリ(N−アセチルエチレンイミン)が得られたことが確認できた。
上記反応液に、さらに2−エチル−2−オキサゾリン2.34g(23.6mmol)を加え、100℃で24時間撹拌した。反応混合液の温度を室温に下げ、メタノール10mlを加えた後、反応混合液を減圧濃縮した。この濃縮液をジエチルエーテル100ml中に注いで、重合体を沈殿させた。
得られた重合体のメタノール溶液を、ジエチルエーテル中に注いで再沈殿させ、吸引濾過後、濾過物を真空乾燥し、水溶性のブロック前駆体(1−3)3.18gを得た。収率は93%であった。
分子量測定およびH−NMR測定した結果、その質量平均分子量が12000、その分子量分布が1.35であった。
1H−NMR(dTMS = 0, D2O)測定による積分比から、アセチルエチレンイミンブロックと、プロピオニルエチレンイミンブロックのモル組成比は35:65であることがわかった。
(合成例4)
<星型のブロック前駆体(1−4)の合成>
内部をアルゴンガスで置換した反応容器に、四官能性のカチオン開環リビング重合開始剤であり、星型のブロック前駆体の核(1)となるテトラ(4−クロロメチルフェニル)ポルフィリン0.022g(0.027mmol)、ヨウ化ナトリウム0.12g、およびN,N−ジメチルアセトアミド6mlを加え、室温で3時間攪拌した。この溶液に、2-エチル-2-オキサゾリン0.99g(10mmol)を加え、100℃に昇温し24時間撹拌した。
反応液温度を60℃に下げた後、2−メチル−2−オキサゾリン1.53g(18mmol)を加え、100℃に昇温して24時間攪拌した。得られた重合体を、
合成例1と同様の方法で単離し、水溶性の星型のブロック前駆体(1−4)2.4gを得た。収率は95%であった。
(実施例1)
<水溶性ブロック共重合体(2−1a)の合成>
合成例1で得たブロック前駆体(1−1)1.0gを、5mol/lの塩酸水溶液1.32ml中に溶解させた。この溶液を85℃に加熱し、9時間攪拌した。反応液にアセトン50mlを加えて重合体を沈殿させた後、吸引濾過し、アセトンで洗浄した。得られた重合体を乾燥し、エチレンイミンリッチなブロックと、プロピオニルエチレンイミンリッチなブロックとからなる分子鎖を有する水溶性ブロック共重合体(2−1a)0.90gを得た。
この水溶性ブロック共重合体(2−1a)0.05gを0.1gの水に溶解させ、透析チューブ(Spectrum Laboratories社製、透過分子量3500)中に入れ、10%アンモニア水100ml中で一晩攪拌させた。この溶液を乾燥させてエチレンイミン部分が中性化された水溶性ブロック共重合体(2−1b)を得た。
水溶性ブロック共重合体(2−1b)の、H−NMR(TMS外部標準、重水中)測定の結果、加水分解前のアセチルエチレンイミンブロックの側鎖メチルに由来した1.98ppm のピーク、プロピオニルエチレンイミンブロックの側鎖のエチル基に由来した1.18ppm(CH3)と2.25ppm(CH2)のピークはいずれも減少した。また、ポリマーの主鎖(CHCH)由来のピークは、加水分解されたアミンの近傍のエチレンのピークは2.9ppmを中心に現れ、加水分解されていないアミンの近傍のエチレンのピークは3.5ppmを中心に現れた。これらのピークの積分値の比から、アセチルエチレンイミンブロック由来の分子鎖中のエチレンイミン単位と、アセチルエチレンイミン単位のモル組成比はほぼ79:21であった。また、プロピオニルエチレンイミンブロック由来の分子鎖中のエチレンイミン単位と、プロピオニルエチレンイミン単位のモル組成比はほぼ29:71であった。
(実施例2)
<水溶性ブロック共重合体(2−2a)の合成>
合成例1で得た水溶性ブロック共重合体(1−1)0.2gを、5mol/lの塩酸0.33mlに溶解し、70℃に加熱し16時間攪拌した。反応液にアセトン20mlを加えて重合体を沈殿させた後、吸引濾過し、アセトンで洗浄した。得られた重合体を乾燥し、エチレンイミンリッチなブロックと、プロピオニルエチレンイミンリッチなブロックとからなる分子鎖を有する水溶性ブロック共重合体(2−2a)0.17gを得た。
実施例1と同様の方法で、エチレンイミンを中性化した水溶性重合体(2−2b)を調整し、H−NMR測定したところ、アセチルエチレンイミンブロック由来の分子鎖中のエチレンイミン単位と、アセチルエチレンイミン単位のモル組成比はほぼ50:50であった。また、プロピオニルエチレンイミンブロック由来の分子鎖中のエチレンイミン単位と、プロピオニルエチレンイミン単位のモル組成比はほぼ12:88であった。
(実施例3)
<水溶性ブロック共重合体(2−3a)の合成>
合成例1で得た水溶性ブロック共重合体(1−1)0.2gを、5mol/lの塩酸0.66mlに溶解し、70℃に加熱し20時間攪拌した。反応液にアセトン20mlを加えて重合体を沈殿させた後、吸引濾過し、アセトンで洗浄した。得られた重合体を乾燥し、エチレンイミンリッチなブロックと、プロピオニルエチレンイミンリッチなブロックとからなる分子鎖を有する水溶性ブロック共重合体(2−3a)0.17gを得た。
実施例1と同様の方法で、エチレンイミンを中性化した水溶性重合体(2−3b)を調整し、H−NMR測定したところ、アセチルエチレンイミンブロック由来の分子鎖中のエチレンイミン単位と、アセチルエチレンイミン単位のモル組成比はほぼ96:4であった。また、プロピオニルエチレンイミンブロック由来の分子鎖中のエチレンイミン単位と、プロピオニルエチレンイミン単位のモル組成比はほぼ47:53であった。
(実施例4)
<水溶性ブロック共重合体(2−4a)の合成>
合成例2で得た水溶性ブロック共重合体(1−2)1.0gを、5mol/lの塩酸1.56mlに溶解し、85℃に加熱し9時間攪拌した。反応液にアセトン50mlを加えて重合体を沈殿させた後、吸引濾過し、アセトンで洗浄した。得られた重合体を乾燥し、エチレンイミンリッチなブロックと、プロピオニルエチレンイミンリッチなブロックとからなる分子鎖を有する水溶性ブロック共重合体(2−4a)0.87gを得た。
実施例1と同様の方法で、エチレンイミンを中性化した水溶性重合体(2−4b)を調整し、H−NMR測定したところ、アセチルエチレンイミンブロック由来の分子鎖中のエチレンイミン単位と、アセチルエチレンイミン単位のモル組成比はほぼ88:12であった。また、プロピオニルエチレンイミンブロック由来の分子鎖中のエチレンイミン単位と、プロピオニルエチレンイミン単位のモル組成比はほぼ15:85であった。
(実施例5)
<水溶性ブロック共重合体(2−5a)の合成>
合成例3で得た水溶性ブロック共重合体(1−3)1.0gを、5mol/lの塩酸1.56mlに溶解し、85℃に加熱し9時間攪拌した。反応液にアセトン50mlを加えて重合体を沈殿させた後、吸引濾過し、アセトンで洗浄した。得られた重合体を乾燥し、エチレンイミンリッチなブロックと、プロピオニルエチレンイミンリッチなブロックとからなる分子鎖を有する水溶性ブロック共重合体(2−5a)0.89gを得た。
実施例1と同様の方法で、エチレンイミンを中性化した水溶性重合体(2−5b)を調整し、H−NMR測定したところ、アセチルエチレンイミンブロック由来の分子鎖中のエチレンイミン単位と、アセチルエチレンイミン単位のモル組成比はほぼ86:14であった。また、プロピオニルエチレンイミンブロック由来の分子鎖中のエチレンイミン単位と、プロピオニルエチレンイミン単位のモル組成比はほぼ29:71であった。
(実施例6)
<水溶性ブロック共重合体(2−6a)の合成>
合成例2で得た水溶性ブロック共重合体(1−2)0.2gを、0.33mlのイオン交換水に溶解させた後、5mol/lの水酸化ナトリウム0.66mlを加えたところ、沈殿が析出した。この混合物を、85℃に加熱し155時間攪拌後、反応溶液をメタノール15mlで抽出した。得られた重合体を乾燥し、エチレンイミンリッチなブロックと、プロピオニルエチレンイミンリッチなブロックとからなる分子鎖を有する水溶性ブロック共重合体(2−6a)と酢酸ナトリウムの混合物0.20gを得た。
H−NMR測定したところ、アセチルエチレンイミンブロック由来の分子鎖中のエチレンイミン単位と、アセチルエチレンイミン単位のモル組成比はほぼ60:40であった。また、プロピオニルエチレンイミンブロック由来の分子鎖中のプロピオニルエチレンイミンはほとんど加水分解されておらず、プロピオニルエチレンイミンブロック単位とエチレンイミン単位のモル組成比は、99:1であった。
(実施例7)
<水溶性ブロック共重合体(2−7a)の合成>
合成例1で得た水溶性ブロック共重合体(1−1)0.2gを、0.33mlのイオン交換水に溶解させた後、3mol/lの水酸化セシウム1.1mlを加えたところ、沈殿が析出した。この混合物を、85℃に加熱し40時間攪拌後、反応溶液をメタノール15mlで抽出した。得られた重合体を乾燥し、エチレンイミンリッチなブロックと、プロピオニルエチレンイミンリッチなブロックとからなる分子鎖を有する水溶性ブロック共重合体(2−6a)と酢酸セシウムの混合物0.21gを得た。
H−NMR測定したところ、アセチルエチレンイミンブロック由来の分子鎖中のエチレンイミン単位と、アセチルエチレンイミン単位のモル組成比はほぼ60:40であった。また、プロピオニルエチレンイミンブロック由来の分子鎖中のプロピオニルエチレンイミンブロック単位とエチレンイミン単位のモル組成比は、93:7であった。
(実施例8)
<星型の水溶性ブロック共重合体(2−8a)の合成>
合成例4で得た星型の水溶性ブロック共重合体(1−4)0.2gを、5mol/lの塩酸0.33mlに溶解し、85℃に加熱し8時間攪拌した。反応液にアセトン20mlを加えて重合体を沈殿させた後、吸引濾過し、アセトンで洗浄した。得られた重合体を乾燥し、エチレンイミンリッチなブロックと、プロピオニルエチレンイミンリッチなブロックとからなる分子鎖を有する水溶性ブロック共重合体(2−2a)0.18gを得た。
実施例1と同様の方法で、エチレンイミンを中性化した水溶性重合体(2−2b)を調整し、H−NMR測定したところ、アセチルエチレンイミンブロック由来の分子鎖中のエチレンイミン単位と、アセチルエチレンイミン単位のモル組成比はほぼ75:25であった。また、プロピオニルエチレンイミンブロック由来の分子鎖中のエチレンイミン単位と、プロピオニルエチレンイミン単位のモル組成比はほぼ20:80であった。
(応用例1)
<水溶性ブロック共重合体(2−1a)を用いた染料コンゴーレッドの水中分散体の調製>
実施例1で得た水溶性ブロック共重合体ポリマー(2−1a)10mgを3mLの蒸留水に溶解した。攪拌しながら、その溶液にコンゴーレッド(東京化成社製、アニオン性の赤染料)の水溶液(3.5mg/mL)2.0mLを滴下した。それを一晩放置させた後、得られた分散体の粒径分布測定を行った結果、平均粒径150nmの単分散を示した。この分散液を円心分離装置にて処理すると、上澄みは全く無色透明になった。即ち、液中には、フリーな染料はないと考えられる。
(応用例2)
<水溶性ブロック共重合体(2−1a)とDNAとのイオン会合によるナノ粒子の形成>
実施例1で得た星型の水溶性ブロック共重合体(2−1a)0.015gを1mlの蒸留水に溶解し、この溶液を、サケの精子から抽出したDNAを含む濃度2.2mg/mlの水溶液4ml中に滴下し、1時間攪拌した。該分散液について、動的光散乱法によって、星型の水溶性ブロック共重合体(2−1a)とDNAとの会合粒子の形成を確認したところ、平均中心粒径が175nmで、単分散状態のナノ粒子が観測された。さらに、この分散液に、0.2gの食塩を加え、塩濃度を0.69mol/lに調製し、再び会合粒子の粒径を確認したところ、平均中心粒径は175nmのままであった。DNAを含むナノ粒子は、これほどの高濃度の食塩中でも全く凝集することなく、これを半年間放置した後にも粒径変化は起こらず、きわめて高い安定性を保持した。この安定性の高さは、星型の水溶性ブロック共重合体(2−1a)のプロピオニルエチレンイミンブロックがイオン会合コアを取り囲む水溶性コロナ層を形成したことを強く示唆する。この中性のコロナ層が塩の静電気的な遮蔽効果を弱める働きをしたと推測できる。
上記実施例に示した本発明における加水分解反応の特徴は、アセチルエチレンイミンブロックが優先的に加水分解されることと、加水分解を受けるのが側基であるアシル基であり、分子鎖の主鎖構造は全く変化しないことである。したがって、加水分解反応前後で水溶性ブロック共重合体の重合度は変わらない。
実施例1〜5で得られた水溶性ブロック共重合体(2−1a)〜(2−5a)のH−NMR測定の結果、前駆重合体であるブロック前駆体(1−1)〜(1−3)で1.97ppmに現れたアセチルエチレンイミンブロックのメチル基に由来するピークの積分値が相対的に、大幅に減少していた。一方、プロピオニルエチレンイミンブロックのメチル基に由来する1.13ppmのピークの積分強度は加水分解前よりは、相対的に少なく減少していた。これらのことから、アセチルエチレンイミンブロックが比較的多く加水分解されていることが明らかである。
また、特に実施例6で得られたアルカリ条件の反応では、水溶性ブロック共重合体(2−6a)のH−NMR測定の結果、アセチルエチレンイミンブロックのメチル基に由来するピークの積分値が大幅に減少していた。一方プロピオニルエチレンイミンブロックのピークの積分値はほとんど変化しておらず、アセチルエチレンイミンブロックが選択的に加水分解されているのは明らかである。
上記応用例2からも明らかなように、本発明の水溶性ブロック共重合体の製造方法によって得られる、エチレンイミンブロックと、プロピオニルエチレンイミンブロックとからなる分子鎖を有する水溶性ブロック共重合体は、エチレンイミンブロックがカチオン性ブロックであり、アニオン性の生体高分子であるDNAとイオンコンプレックスを形成し、ナノ粒子となって水相に分散している。

Claims (7)

  1. 一般式(1)
    Figure 2005226032
    で表されるブロック共重合体。
    (式中、mは20〜5000の整数であり、nは20〜5000の整数である。X1は0〜0.6であり、X2は0.4〜0.99であり、Y1は0.4〜1.0であり、Y2は0.01〜0.6であり、またX1 + Y1 = 1、X2 + Y2 = 1である。)
  2. エチレンイミン単位が20〜80モル%である請求項1に記載のブロック共重合体。
  3. 一般式(1)において、mとnの和が40〜8000である請求項1又は2に記載のブロック共重合体。
  4. ポリアセチルオキサゾリン単位とポリエチルオキサゾリン単位とからなるブロック共重合体の水溶液に酸又は塩基を添加して加水分解を行うことからなる請求項1〜3のいずれかに記載のブロック共重合体の製造方法。
  5. 酸又は塩基がアセチルオキサゾリン単位1当量に対して0.5〜50当量で添加することからなる請求項4に記載のブロック共重合体の製造方法。
  6. 酸が塩酸または硝酸である請求項4又は5に記載のブロック共重合体の製造方法。
  7. 塩基が水酸化ナトリウム、水酸化カリウムまたは水酸化セシウムである請求項4〜6のいずれかに記載のブロック共重合体の製造方法。

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