JP2005225842A - 脳機能改善剤 - Google Patents
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Abstract
Description
本発明は、クロセチンまたはその薬理学的に許容しうる塩を有効成分とする脳機能改善剤および飲食品に関する。
近年、学習能力や記憶力といった脳の機能改善に作用する化学的合成品以外の物質に関する研究が進められており、例えば、ドコサヘキサエン酸またはその誘導体のうち少なくとも一種以上を有効成分として含有する脳機能改善組成物(例えば、特許文献1参照)、サフランめしべのアルコール抽出エキスを有効成分とする脳機能改善剤(例えば、特許文献2参照)、クロセチンジグルコースエステル等のクロセチンジ糖エステルよりなる脳機能改善剤(例えば、特許文献3参照)、サフランエキス、イチョウ葉エキス、卵黄レシチン、ビタミンB6などが配合された健脳食品(例えば、非特許文献1参照)、乳酸菌発酵乳、乳酸菌と酵母との共生発酵乳、これらの処理物、またはこれらの混合物を有効成分として含有する脳機能改善、学習能力増強および記憶力増強作用を有する機能性食品(例えば、特許文献4参照)などが、これまでに提案されている。
一方、近年カロテノイド色素の機能性に関する研究の進歩に伴い、クロセチンについても、一重項酸素消去剤(例えば、特許文献5参照)、コラーゲン産生促進剤(例えば、特許文献6参照)、皮膚免疫賦活剤(例えば、特許文献7参照)として皮膚に対する作用が示されている他、コレステロールの低下作用、腫瘍形成の阻止効果、肝毒性の抑制効果等の生理活性が報告されている(例えば、非特許文献2参照)。
しかし、脳機能分野の研究は、まだまだ理論的な面でも実用化の面でも、十分に研究され解明された段階とは言いがたく、一般的に顕著な効果が確認され、実用化されている物質は少ない。上記した公知技術はいずれも、実用化されていなかったり、実用化されていても、有効成分の純度に問題があったり、大量生産できなかったりして、必ずしも満足のいくものではなかった。
特開平1−279827号公報
特開平7−69908号公報
特開平7−223960号公報
特開平9−23848号公報
特開平5−320036号公報
特開平7−285846号公報
特開平11−246396号公報
杉浦実,「サフランの中枢神経系に対する薬理効果と健康食品への応用」,FOOD Style 21,1999,Vol3,No.6,p.67
近雅代,「くちなしカロテノイド色素について」,福岡女子短大紀要,1999,No.57,p.31−34
本発明は、脳機能改善効果を有し、且つ高純度のものを大量に生産し得る工業的に有利な物質を有効成分として含む脳機能改善剤及び脳機能改善用飲食品を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、カロテノイド色素の一種であるクロセチンが脳機能改善効果を有することを見出した。本発明者らはこれらの知見に基づいてさらに研究をすすめ、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、
(1) 一般式
で表されるクロセチンまたはその薬理学的に許容しうる塩を有効成分として含有することを特徴とする脳機能改善剤、
(2) クロセチンの純度が70質量%以上である前記(1)に記載の脳機能改善剤、
(1) 一般式
(2) クロセチンの純度が70質量%以上である前記(1)に記載の脳機能改善剤、
(4) クロセチンの純度が70質量%以上である前記(3)に記載の飲食品、
(5) 脳機能改善を目的とする飲食品である前記(3)に記載の飲食品、
(6) 学習能力および記憶力増強を目的とする健康食品または特定保健用食品である、前記(3)に記載の飲食品、
(5) 脳機能改善を目的とする飲食品である前記(3)に記載の飲食品、
(6) 学習能力および記憶力増強を目的とする健康食品または特定保健用食品である、前記(3)に記載の飲食品、
本発明は、大量に生産し得る工業的に有利な物質であるクロセチン、特に高純度のクロセチンが用いられるため、品質の安定した脳機能改善剤及び脳機能改善用飲食品を提供できる。
本発明で原料として使用されるクロセチンは、一般式
で表される化合物である。このクロセチンは、通常、カロテノイド系の黄色色素であるクロシン(クロセチンのジゲンチオビオースエステル)を加水分解することにより得られる。クロシンは、アカネ科クチナシ(Gardenia augusta MERRIL var. grandiflora HORT.、Gardenia jasminoides ELLIS)の果実、サフランの柱頭の乾燥物などに含まれるが、クロシンを得るための工業的原料としてはクチナシの果実が好ましく用いられる。
本発明において、上記植物起源からクロシンを抽出する方法に制限は無く、例えば、粉砕されたクチナシの乾燥果実から水またはアルコール、およびそれらの混合液を用いて抽出するなどの公知の方法が用いられる。
クロシンの加水分解は、常法に従って行われてよく、通常、酸、アルカリあるいは適当な加水分解酵素の作用で行われる。ここで酸としては、例えば塩酸、硫酸、リン酸等が挙げられ、アルカリとしては例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等が挙げられる。また加水分解酵素としては、β−グルコシダーゼ等が挙げられる。
工業的には、クロシンの加水分解がアルカリによる加水分解であるのが好ましい。
また、上記加水分解は、攪拌および/または加熱下で行われてもよい。好ましくは攪拌下適当な温度に加熱して行われる。このようにして、加水分解することにより、その分解が促進され得る。
工業的には、クロシンの加水分解がアルカリによる加水分解であるのが好ましい。
また、上記加水分解は、攪拌および/または加熱下で行われてもよい。好ましくは攪拌下適当な温度に加熱して行われる。このようにして、加水分解することにより、その分解が促進され得る。
クロシンの加水分解がアルカリによる加水分解である場合、通常、加水分解終了後、反応液に塩酸、硫酸、リン酸等の無機酸、あるいはクエン酸等の有機酸の水溶液を適当量加え、液性を約pH4.0以下、好ましくは約pH3.0以下にするか、または反応液を塩酸、硫酸、リン酸等の無機酸、あるいはクエン酸等の有機酸の水溶液に加え、液性を約pH4.0以下、好ましくは約pH3.0以下にすることで、クロセチンを析出させる。その後、クロセチンを析出させた混合液を、ろ紙あるいはろ布に通してろ過することにより、クロセチンをペースト状の固形物として回収できる。
また、クロシンの加水分解が酸による加水分解である場合、通常、加水分解と同時にクロセチンが析出するため、懸濁状の反応物が得られる。反応終了後、得られた懸濁液を、ろ紙あるいはろ布に通してろ過し、クロセチンをペースト状の固形物として回収できる。
上記のようにして得られたクロセチン(ペースト状の固形物)は、通常、酸、中和塩或いは原料由来の不純物が固形物表面に付着しているため、不純物を除去する目的で、洗浄処理や乾燥処理に付される。このような処理は、公知の方法を用いて行われてよく、例えば、上記ペースト状の固形物を十分量の水で水洗し、ついで、例えば棚式の真空乾燥機等を用いて、好ましくは窒素ガスの雰囲気下50℃を越えない温度で、固形物に残留する水を除去することにより行われる。
しかしながら、このようにして得られたクロセチンでさえも、クロセチン以外の物質、例えば脂質及びその分解物、クロロゲン酸等のポリフェノール類、或いは加水分解により生成し、洗浄で完全に除去されなかったグルコース、ゲンチオビオース等の糖類を含んでいることがあるため、該クロセチンを更に精製するのが好ましい。ここで、該クロセチンを精製する方法に制限は無く、例えばカラムクロマトグラフィー、溶剤分別、溶剤抽出、再結晶などの公知の方法が用いられる。
本発明に用いられるクロセチンは、精製により得られる純度約70質量%以上のクロセチンであるのが好ましく、約80質量%以上のものがより好ましい。また、上記精製に再結晶を用いて得られたクロセチンであるのも好ましく、再結晶により得られる純度約90質量%以上のクロセチンであるのがより好ましく、純度約95質量%以上のものであるのが最も好ましい。尚、ここで純度は、純品のクロセチンの色価を35,700として、この値を基準として算出される。色価は、後記実施例に記載の[色価測定方法]で測定される値である。
本発明においては、クロセチンは、その薬理学的に許容しうる塩としても使用することができる。かかる塩としては、例えば、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属塩、マグネシウム、カルシウム等のアルカリ土類金属塩、ピリジン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、エタノールアミン等の医薬的に許容される有機アミノ化合物の塩が挙げられる。
本発明においては、クロセチンは、その薬理学的に許容しうる塩としても使用することができる。かかる塩としては、例えば、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属塩、マグネシウム、カルシウム等のアルカリ土類金属塩、ピリジン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、エタノールアミン等の医薬的に許容される有機アミノ化合物の塩が挙げられる。
本発明にかかるクロセチンは、脳機能改善作用を有するため、該クロセチンまたはその薬理学的に許容しうる塩を有効成分とする脳機能改善剤として、或いは脳機能改善を目的とする飲食品として有用である。
クロセチンの脳機能改善作用は、例えば非特許文献1に記載の方法により評価できる。すなわち、ラットの海馬体の興奮性入力繊維の一つである貫通線維に短時間の高頻度刺激を適用するとその後の誘発電位の大きさ(シナプス伝達効率)が増大し、この状態が長時間にわたって持続することが知られており、この現象は長期増強(long−term potentiation;LTP)現象と呼ばれ、シナプス可塑性の典型例として知られている。一方、海馬におけるLTPがエタノールにより抑制されることも知られている。従って、エタノールを投与することにより惹起されるLTPの抑制が、検体を投与することにより、阻害されるか否かを評価することにより、脳機能改善効果が評価できる。この方法により、後記実施例に示したように、クロセチンは優れた脳機能改善効果を示した。このため、本発明の脳機能改善剤または脳機能改善を目的とする飲食品、すなわち脳機能改善用飲食品は、学習能力および記憶力の増強を目的として、或いは痴呆症の予防または治療を目的として使用することができる。
クロセチンの脳機能改善作用は、例えば非特許文献1に記載の方法により評価できる。すなわち、ラットの海馬体の興奮性入力繊維の一つである貫通線維に短時間の高頻度刺激を適用するとその後の誘発電位の大きさ(シナプス伝達効率)が増大し、この状態が長時間にわたって持続することが知られており、この現象は長期増強(long−term potentiation;LTP)現象と呼ばれ、シナプス可塑性の典型例として知られている。一方、海馬におけるLTPがエタノールにより抑制されることも知られている。従って、エタノールを投与することにより惹起されるLTPの抑制が、検体を投与することにより、阻害されるか否かを評価することにより、脳機能改善効果が評価できる。この方法により、後記実施例に示したように、クロセチンは優れた脳機能改善効果を示した。このため、本発明の脳機能改善剤または脳機能改善を目的とする飲食品、すなわち脳機能改善用飲食品は、学習能力および記憶力の増強を目的として、或いは痴呆症の予防または治療を目的として使用することができる。
本発明の脳機能改善剤又は脳機能改善用飲食品は、上記クロセチンまたはその薬理学的に許容しうる塩をそのまま、あるいはクロセチンに製薬学的に許容される添加物、あるいは食品素材、食品原料、さらに必要に応じて食品添加物等を適宜混合し、常法に従い例えば液剤、散剤、顆粒剤、錠剤、マイクロカプセル、ソフトカプセルあるいはハードカプセル等の製剤又は飲食品として製造される。また、上記クロセチンを用いて常法に従い、例えば上記クロセチンまたはその薬理学的に許容しうる塩を主成分とする油脂組成物、O/W型乳化液、W/O型乳化液または可溶化液などのクロセチン含有飲食品添加物を製造し、このクロセチン含有飲食品添加物を、飲食品に添加して本発明の飲食品を製造してもよい。
上記飲食品は、固形食品、クリーム状またはジャム状の半流動食品、ゲル状食品、飲料等あらゆる食品形態をとることが可能である。飲食品の例としては、清涼飲料、ドロップ、キャンディ、チューインガム、チョコレート、グミ、ヨーグルト、アイスクリーム、プリン、ゼリー菓子、クッキー、マーガリン、ショートニング、マヨネーズ、ドレッシング等が挙げられる。上記飲食品は、学習能力および記憶力増強、および痴呆症の治療・予防を目的とする健康食品または特定保健用食品として有用である。
上記飲食品は、固形食品、クリーム状またはジャム状の半流動食品、ゲル状食品、飲料等あらゆる食品形態をとることが可能である。飲食品の例としては、清涼飲料、ドロップ、キャンディ、チューインガム、チョコレート、グミ、ヨーグルト、アイスクリーム、プリン、ゼリー菓子、クッキー、マーガリン、ショートニング、マヨネーズ、ドレッシング等が挙げられる。上記飲食品は、学習能力および記憶力増強、および痴呆症の治療・予防を目的とする健康食品または特定保健用食品として有用である。
上記製剤および飲食品の製造に用いられる添加物、食品素材、食品原料あるいは食品添加物としては、例えば賦形剤(乳糖、デキストリン、コーンスターチ、結晶セルロース等)、滑沢剤(ステアリン酸マグネシウム、ショ糖脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル等)、崩壊剤(カルボキシメチルセルロースカルシウム、無水リン酸水素カルシウム、炭酸カルシウム等)、結合剤(デンプン糊液、ヒドロキシプロピルセルロース液、アラビアゴム液等)、溶解補助剤(アラビアゴム、ポリソルベート80等)、甘味料(砂糖、果糖・ブドウ糖液糖、ハチミツ、アスパルテーム等)、着色料(β−カロテン、食用タール色素、リボフラビン等)、保存料(ソルビン酸、パラオキシ安息香酸メチル、亜硫酸ナトリウム等)、増粘剤(アルギン酸ナトリウム、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリアクリル酸ナトリウム等)、酸化防止剤(BHT、BHA、アスコルビン酸、トコフェロール等)、香料(ハッカ、ストロベリー香料等)、酸味料(クエン酸、乳酸、DL−りんご酸等)、調味料(DL−アラニン、5’−イノシン酸ナトリウム、L−グルタミン酸ナトリウム等)、乳化剤(グリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル等)、pH調整剤(クエン酸、クエン酸三ナトリウム等)、ビタミン類、ミネラル類、アミノ酸類等を使用することができる。
上記製剤の場合、クロセチンまたはその薬理学的に許容しうる塩の含有量は、その目的・用途により異なり一様ではないが、製剤の全質量に対して、純度100質量%のクロセチンに換算して、通常約0.0001〜50質量%、好ましくは約0.001〜20質量%、より好ましくは約0.01〜10質量%である。
また、上記飲食品の場合、クロセチンまたはその薬理学的に許容しうる塩の含有量は、飲食品の全質量に対して、純度100質量%のクロセチンに換算して、通常約0.00003〜10質量%、好ましくは約0.01〜5質量%である。
また、上記飲食品の場合、クロセチンまたはその薬理学的に許容しうる塩の含有量は、飲食品の全質量に対して、純度100質量%のクロセチンに換算して、通常約0.00003〜10質量%、好ましくは約0.01〜5質量%である。
上記製剤および飲食品を経口的に摂取する場合、クロセチンまたはその薬理学的に許容しうる塩の成人1日当たりの用量は、純度100質量%のクロセチンに換算して、約0.1mg〜500mg、好ましくは約1mg〜300mg、さらに好ましくは約2mg〜100mgの範囲である。この用量を、1回または数回に分けて摂取するとよい。但し、実際の用量は、目的や摂取者の状況(性別、年齢、健康状態等)を考慮して決められるべきである。
また、注射剤または輸液剤などの非経口剤の場合は、成人1日当たり、純度100質量%のクロセチンに換算して、クロセチンまたはその薬理学的に許容しうる塩を約0.1mg〜100mg、好ましくは約0.1mg〜50mg、さらに好ましくは約0.5mg〜10mgの投与量となるよう、設定するのが望ましい。
また、注射剤または輸液剤などの非経口剤の場合は、成人1日当たり、純度100質量%のクロセチンに換算して、クロセチンまたはその薬理学的に許容しうる塩を約0.1mg〜100mg、好ましくは約0.1mg〜50mg、さらに好ましくは約0.5mg〜10mgの投与量となるよう、設定するのが望ましい。
以下、実施例をもって本発明を具体的に説明する。
[クロセチン作製]
粉砕したクチナシの乾燥果実150gにメタノール・水混合液(1:1)300mlを加え、室温で3時間攪拌した後吸引ろ過した。抽出残にメタノール・水混合液(1:1)300mlを加え、室温で30分間攪拌した後吸引ろ過する操作を2回繰り返し、ろ液として計約900mlの抽出液を得た。この抽出液を、ロータリーエバポレーターを用いて減圧下、60℃で濃縮し、クロシンを含む濃縮物(色価(E10% 1cm)=573)約50gを得た。
得られた濃縮物と40質量%水酸化ナトリウム水溶液17gとを混合し、撹拌下50℃で3.5時間加水分解反応を行った。反応終了後、反応液を4質量%リン酸水溶液420mlに加えて酸性とした後、そのまま約3時間室温で放置した。
析出した沈殿を遠心分離(10,000×g、10分間)により回収し、更に水100mlで洗浄と遠心分離操作を2回繰り返した。
得られたペースト状の固形物を50℃で8時間真空乾燥し、クロセチン約1.2gを得た。色価(E10% 1cm)は約12,500であった。
粉砕したクチナシの乾燥果実150gにメタノール・水混合液(1:1)300mlを加え、室温で3時間攪拌した後吸引ろ過した。抽出残にメタノール・水混合液(1:1)300mlを加え、室温で30分間攪拌した後吸引ろ過する操作を2回繰り返し、ろ液として計約900mlの抽出液を得た。この抽出液を、ロータリーエバポレーターを用いて減圧下、60℃で濃縮し、クロシンを含む濃縮物(色価(E10% 1cm)=573)約50gを得た。
得られた濃縮物と40質量%水酸化ナトリウム水溶液17gとを混合し、撹拌下50℃で3.5時間加水分解反応を行った。反応終了後、反応液を4質量%リン酸水溶液420mlに加えて酸性とした後、そのまま約3時間室温で放置した。
析出した沈殿を遠心分離(10,000×g、10分間)により回収し、更に水100mlで洗浄と遠心分離操作を2回繰り返した。
得られたペースト状の固形物を50℃で8時間真空乾燥し、クロセチン約1.2gを得た。色価(E10% 1cm)は約12,500であった。
[クロセチン精製物の作製]
上記で得られたクロセチン1gにジメチルホルムアミド18mlを加え、80℃で溶解した。不溶物を定量ろ紙(No.5C,アドバンテック東洋社)でろ過し、ろ液を10℃で3日間放置した。次に生成したクロセチンの結晶を含む母液をガラスろ過器No.3でろ過し、メタノール20mlで洗浄後、結晶を50℃で真空乾燥し、精製クロセチン約0.16gを得た。このものの色価(E10% 1cm)は約34,200であった。
尚、色価(E10% 1cm)は『化学的合成品以外の食品添加物 自主規格(第二版)』、日本食品添加物協会編、「クチナシ黄色素」を参考にして、以下の方法で測定した。
上記で得られたクロセチン1gにジメチルホルムアミド18mlを加え、80℃で溶解した。不溶物を定量ろ紙(No.5C,アドバンテック東洋社)でろ過し、ろ液を10℃で3日間放置した。次に生成したクロセチンの結晶を含む母液をガラスろ過器No.3でろ過し、メタノール20mlで洗浄後、結晶を50℃で真空乾燥し、精製クロセチン約0.16gを得た。このものの色価(E10% 1cm)は約34,200であった。
尚、色価(E10% 1cm)は『化学的合成品以外の食品添加物 自主規格(第二版)』、日本食品添加物協会編、「クチナシ黄色素」を参考にして、以下の方法で測定した。
[色価測定方法]
測定する吸光度が0.3〜0.7の範囲になるように、試料を精密に量り、Kolthoff氏緩衝液(50mM Na2CO3−50mM Na2B4O7、pH10.0)に溶かして正確に500mlとする。溶解しにくい場合は、超音波処理により溶解する。その10mlを正確に量り、Kolthoff氏緩衝液(50mM Na2CO3−50mM Na2B4O7、pH10.0)を加えて50mlとし、試験溶液とする。Kolthoff氏緩衝液(50mM Na2CO3−50mM Na2B4O7、pH10.0)を対照とし、液層の長さ1cmで420nm付近の極大吸収部における吸光度Aを測定し、次式により色価を求める。
測定する吸光度が0.3〜0.7の範囲になるように、試料を精密に量り、Kolthoff氏緩衝液(50mM Na2CO3−50mM Na2B4O7、pH10.0)に溶かして正確に500mlとする。溶解しにくい場合は、超音波処理により溶解する。その10mlを正確に量り、Kolthoff氏緩衝液(50mM Na2CO3−50mM Na2B4O7、pH10.0)を加えて50mlとし、試験溶液とする。Kolthoff氏緩衝液(50mM Na2CO3−50mM Na2B4O7、pH10.0)を対照とし、液層の長さ1cmで420nm付近の極大吸収部における吸光度Aを測定し、次式により色価を求める。
〔実施例1〕
ラットの扁桃体−海馬経路における長期増強に対する効果
7〜9週齢のWistar系雄性ラットを、ウレタンとα−クロラロースの混合液で麻酔し、脳定位固定装置に固定した。電気ドリルを用いて頭蓋骨に穴を空け、脳座標に基づき、双極性刺激電極を扁桃体基底外側核に、記録電極を海馬歯状回に刺入した。
テスト刺激として0.08msec幅の単一矩形波を刺激電極を通して与え、シナプス伝達の結果生じる誘発電位を記録電極から導出した。
薬物を脳室内投与(i.c.v.)するときは、ステンレス製のカニューレを脳座標に従って側脳室内に刺入し、マイクロシリンジを用いて5μlの薬液を2.5分かけて注入した。薬物を静脈内投与(i.v.)するときは、静脈カニューレを大腿静脈に刺入して2ml/kgの割合で薬液を注入した。
安定したシナプス電位が記録できたら、100Hz−100発の高頻度刺激(HFS)を30秒間隔で2回与え、長期増強を誘導した。高頻度刺激を与える直前のシナプス電位の大きさを100%とし高頻度刺激後のシナプス電位の大きさの変化を定量した。長期増強の変化を時間経過曲線で確認したうえで、高頻度刺激30〜60分後の値を平均してまとめ、薬効の有無を有意差検定により判定した。
ラットの扁桃体−海馬経路における長期増強に対する効果
7〜9週齢のWistar系雄性ラットを、ウレタンとα−クロラロースの混合液で麻酔し、脳定位固定装置に固定した。電気ドリルを用いて頭蓋骨に穴を空け、脳座標に基づき、双極性刺激電極を扁桃体基底外側核に、記録電極を海馬歯状回に刺入した。
テスト刺激として0.08msec幅の単一矩形波を刺激電極を通して与え、シナプス伝達の結果生じる誘発電位を記録電極から導出した。
薬物を脳室内投与(i.c.v.)するときは、ステンレス製のカニューレを脳座標に従って側脳室内に刺入し、マイクロシリンジを用いて5μlの薬液を2.5分かけて注入した。薬物を静脈内投与(i.v.)するときは、静脈カニューレを大腿静脈に刺入して2ml/kgの割合で薬液を注入した。
安定したシナプス電位が記録できたら、100Hz−100発の高頻度刺激(HFS)を30秒間隔で2回与え、長期増強を誘導した。高頻度刺激を与える直前のシナプス電位の大きさを100%とし高頻度刺激後のシナプス電位の大きさの変化を定量した。長期増強の変化を時間経過曲線で確認したうえで、高頻度刺激30〜60分後の値を平均してまとめ、薬効の有無を有意差検定により判定した。
40%エタノール静脈内投与による長期増強の抑制とクロセチンの効果
最初に、高頻度刺激適用の20分前に生理食塩水5μlを側脳室内投与し、その10分後に生理食塩水を2ml/kgの静脈内投与し、対照群での長期増強の誘発を測定した。図1は、経時的な誘発電位の大きさの変化として示したグラフである。
また、高頻度刺激適用の20分前に生理食塩水5μlを側脳室内投与し、その10分後に40%エタノールを2ml/kgの用量で静脈内投与し、エタノール投与による長期増強の抑制効果を測定した。図2は、経時的な誘発電位の大きさの変化として示したグラフである。
続いて、高頻度刺激適用の20分前にクロセチンを25、50および100nmolの用量で側脳室内投与し、その10分後に40%エタノールを2ml/kgの用量で静脈内投与し、エタノール投与による長期増強の抑制に対するクロセチンの効果を検討した。経時的な誘発電位の大きさの変化として測定し、その結果を図3(25nmol)、図4(50nmol)及び図5(100nmol)のグラフに示した。また、これらの結果をもとに高頻度刺激適用後30分〜60分の値を平均してまとめ、その結果を図6に示した。
なお、図中の記号は次の通りである。
i.c.v.:側脳室内投与
i.v.:静脈内投与
HFS:高頻度刺激
また、高頻度刺激適用後、30分から60分の値を平均してまとめ、Tukey’s testによる有意差検定を行った。
* P<0.05 vs.対照群(n=12)
# P<0.05 vs.40%エタノール単独(n=8)
これらの図から、クロセチンがエタノール静脈内投与による長期増強の抑制を顕著に阻害したこと、すなわち脳機能改善作用を示したことがわかる。
最初に、高頻度刺激適用の20分前に生理食塩水5μlを側脳室内投与し、その10分後に生理食塩水を2ml/kgの静脈内投与し、対照群での長期増強の誘発を測定した。図1は、経時的な誘発電位の大きさの変化として示したグラフである。
また、高頻度刺激適用の20分前に生理食塩水5μlを側脳室内投与し、その10分後に40%エタノールを2ml/kgの用量で静脈内投与し、エタノール投与による長期増強の抑制効果を測定した。図2は、経時的な誘発電位の大きさの変化として示したグラフである。
続いて、高頻度刺激適用の20分前にクロセチンを25、50および100nmolの用量で側脳室内投与し、その10分後に40%エタノールを2ml/kgの用量で静脈内投与し、エタノール投与による長期増強の抑制に対するクロセチンの効果を検討した。経時的な誘発電位の大きさの変化として測定し、その結果を図3(25nmol)、図4(50nmol)及び図5(100nmol)のグラフに示した。また、これらの結果をもとに高頻度刺激適用後30分〜60分の値を平均してまとめ、その結果を図6に示した。
なお、図中の記号は次の通りである。
i.c.v.:側脳室内投与
i.v.:静脈内投与
HFS:高頻度刺激
また、高頻度刺激適用後、30分から60分の値を平均してまとめ、Tukey’s testによる有意差検定を行った。
* P<0.05 vs.対照群(n=12)
# P<0.05 vs.40%エタノール単独(n=8)
これらの図から、クロセチンがエタノール静脈内投与による長期増強の抑制を顕著に阻害したこと、すなわち脳機能改善作用を示したことがわかる。
本発明の脳機能改善剤及び脳機能改善用飲食品は、学習能力および記憶力増強或いは痴呆症の予防・治療に有用である。
Claims (8)
- クロセチンの純度が70質量%以上である請求項1に記載の脳機能改善剤。
- クロセチンの純度が70質量%以上である請求項3に記載の飲食品。
- 脳機能改善を目的とする飲食品である請求項3に記載の飲食品。
- 学習能力および記憶力増強を目的とする健康食品または特定保健用食品である、請求項3に記載の飲食品。
- 痴呆症の予防または治療を目的とする健康食品または特定保健用食品である、請求項3に記載の飲食品。
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