以下、発明を実施するための最良の形態について図1〜図3を参照して説明する。
図1は、本実施形態の音響特性調整装置10の構成を表したブロック図である。図2は、直線位相フィルタと最小遅延位相フィルタのインパルス応答とゲイン及び位相特性等を模式的に表した図である。図3は、直線位相フィルタと最小遅延位相フィルタの入出力特性を模式的に表した図である。
図1において、この音響特性調整装置10は、p系統(pは1又は2以上の自然数、以下「pチャンネル」ともいう)分のデジタル信号処理部A1〜Apを備えて構成されている。
なお、本実施形態では、デジタル信号処理部A1〜Apの各々において、入力オーディオ信号の高周波数帯域と低周波数帯域の2つの帯域の信号成分に対して音響特性の調整を行う音響特性調整装置10の構成を例に挙げて説明する。ただし、本実施形態の構成は、あくまでも好適例の一つを示すものであり、本発明の構成としてはこの構成例に限られるものではない。例えば、オーディオ信号の1つの周波数帯域(例えば、オーディオ周波数帯域全体や、オーディオ周波数帯域のうちの一周波数帯域など)の信号成分に対して音響特性の調整を行う構成としても良く、また、オーディオ信号の3つ以上の周波数帯域(例えば、高域、中域、低域の周波数帯域など)の各々の信号成分に対して音響特性の調整を行う構成でも良い。
各デジタル信号処理部A1〜Apは、任意の信号源(図示略)から供給されるpチャンネル分の各デジタルオーディオ信号X1〜Xpに後述のデジタル信号処理を施して、各チャンネルのスピーカ(図示略)を駆動するための高周波帯域のデジタルオーディオ信号X1(H)〜Xp(H)と低周波帯域のデジタルオーディオ信号X1(L)〜Xp(L)を出力する。
また、デジタル信号処理部A1〜Apは、予め決められたアルゴリズムに従ってデジタル信号処理を行うDSP(Digital Signal Processor)やマイクロプロセッサ(MPU)或いはデジタル回路によって形成されている。
そして例えば、CDやDVDその他のストレージ媒体に記録されている情報を再生する再生装置等の信号源や、インターネット等の電気通信回線上に存在し音楽や映像等を配信するサイト等の信号源や、テレビジョン放送やラジオ放送の放送局その他様々な信号源からの供給を受けて、サンプル値系列から成るデジタルオーディオ信号X1〜Xpを入力するように各信号処理部A1〜Apの入力端を配線することが可能である。
また、デジタル信号処理部A1〜Apの出力端に、デジタルアナログ変換器(DAC)と電力増幅器を従属接続して各チャンネルのスピーカを接続することにより、デジタル信号処理を施したデジタルオーディオ信号X1(H)〜Xp(H)とX1(L)〜Xp(L)に基づいて各スピーカを鳴動させることが可能である。
すなわち、この音響特性調整装置10は、スピーカから放射され受聴位置(或いは視聴位置)に到達する音のゲイン及び位相特性等の音響特性を調整すべく、任意の信号源から供給されるpチャンネル分のデジタルオーディオ信号X1〜Xpに対してゲイン特性と位相特性等を調整することが可能な汎用性を有しており、例えばpチャンネル分のスピーカを駆動するマルチチャンネルスピーカシステムを備えたAV機器等を構築することが可能な構成となっている。
より具体的な場合として、夫々特有の周波数特性を有する複数個のスピーカを鳴動させることによって高品位の音を再生する5.1チャンネルのマルチチャンネルスピーカシステムに本音響特性調整装置10を適用する場合、少なくとも6系統(p=6)のデジタル信号処理部A1〜A6を備えて構成される。
また、音響特性調整装置10が、受聴位置(或いは視聴位置)に対して左右に2チャンネルずつの合計4チャンネル分のスピーカが配置される4チャンネルスピーカシステムに適応される場合には、少なくとも4系統(p=4)の信号処理部A1〜A4を備えて構成される。
信号処理部A1〜Apには、図1に示されているように、デジタルオーディオ信号X1〜Xpを入力して後述の畳み込み演算を行う高域畳み込み演算部B1〜Bp及び低域畳込み演算部C1〜Cpと、高域畳み込み演算部B1〜Bpの出力信号X11〜Xp1を時間遅延することによって、上述のデジタルオーディオ信号X1(H)〜Xp(H)を出力する遅延部D1〜Dpと、低域畳み込み演算部C1〜Cpの出力信号X12〜Xp2を時間遅延することによって、上述のデジタルオーディオ信号X1(L)〜Xp(L)を出力する遅延部E1〜Epとを備えて構成されている。
より詳細に述べれば、まず信号処理部A1には、高周波数帯域の信号成分に対して畳み込み演算処理を行う高域畳み込み演算部B1と、低周波数帯域の信号成分に対して畳み込み演算処理を行う低域畳み込み演算部C1と、遅延部D1,E1とが設けられている。
なお、既述したように、本実施形態では、各系統における畳み込み演算処理は、高周波数帯域の信号成分と低周波数帯域の2つの帯域に分割して行うが、これに限定されるものではなく、例えば、いわゆるオーディオ周波数の全周波数帯域の信号成分に対して畳み込み演算処理を行う1つの畳み込み演算部を設ける構成としてもよいし、オーディオ周波数帯域における一の周波数帯域の信号成分に対して畳み込み演算処理を行う1つの畳み込み演算部を設ける構成としてもよいし、オーディオ周波数帯域を3つ以上の周波数帯域に分けて各々の周波数帯域の信号成分に対して畳み込み演算処理を行う3つ以上の畳み込み演算部を設ける構成としてもよい。そして、こうした1又は複数の信号成分に対して畳み込み演算処理を行う1又は複数の畳み込み演算部を設ける場合には、それらの各畳み込み演算部に対応させて、1又は複数の遅延部が設けられることとなる。
再び図1において、高域畳み込み演算部B1は、ナイキストのサンプリング定理に従ったサンプリング周期に同期してデジタルオーディオ信号X1を入力し、該信号X1と後述のインパルス特性制御部21から供給されるM+1個の係数列から成るインパルス応答データh1mとの畳み込み演算を行うことによって、デジタルオーディオ信号X1の全周波数帯域(例えば、可聴周波数帯域20Hz〜20kHz)のうち、高周波帯域BH1の信号成分を周波数分割すると共に、その分割した信号成分に対してゲイン及び位相特性等を調整し、出力信号X11として出力する。
つまり、高域畳み込み演算部B1は、インパルス応答データh1mに基づいて上述の畳み込み演算を行うことによって、デジタルオーディオ信号X1に対し高域通過型のデジタルフィルタとして機能すると共に、インパルス応答データh1mに従ってその高周波帯域(通過帯域)BH1とゲイン及び位相特性等のフィルタ特性が調整されることにより、上述の高周波帯域BH1について周波数分割を行うチャンネルデバイダ機能とグラフィックイコライザ機能とを発揮する。
更に、高域畳み込み演算部B1は、インパルス特性制御部21から、図2(a)に例示するような直線位相フィルタ(Linear Phase Filter)のインパルス応答を示すインパルス応答データh1mと、図2(d)に例示するような最小遅延位相フィルタ(Minimum Phase Filter)のインパルス応答を示すインパルス応答データh1mが供給される。
直線位相フィルタのインパルス応答を示すインパルス応答データh1mが供給された場合には、高域畳み込み演算部B1は、そのインパルス応答データh1mに基づいて上述の畳み込み演算を行うことによってデジタルオーディオ信号X1に対し、図2(b)に例示する遅延時間一定の位相特性と図2(c)に例示するゲイン特性を有する高域通過直線位相フィルタとして機能する。
一方、最小遅延位相フィルタのインパルス応答を示すインパルス応答データh1mが供給された場合には、高域畳み込み演算部B1は、そのインパルス応答データh1mに基づいて上述の畳み込み演算を行うことによってデジタルオーディオ信号X1に対し、図2(e)に例示する位相特性と図2(f)に例示するゲイン特性を有する高域通過最小遅延位相フィルタとして機能する。
低域畳み込み演算部C1は、デジタルオーディオ信号X1を入力し、該信号X1と後述のインパルス特性制御部21から供給されるN+1個の係数列から成るインパルス応答データh1nとの畳み込み演算を行うことによって、デジタルオーディオ信号X1の全周波数帯域のうち、高域畳み込み演算部B1で分割される高周波帯域BH1を除いた低周波帯域BL1の信号成分を周波数分割すると共に、その分割した信号成分に対してゲイン及び位相特性等を調整し、出力信号X12として出力する。
つまり、低域畳み込み演算部C1は、インパルス応答データh1nに基づいて上述の畳み込み演算を行うことによって、デジタルオーディオ信号X1に対し低域通過型のデジタルフィルタとして機能すると共に、インパルス応答データh1nに従ってその低周波帯域(通過帯域)BL1とゲイン及び位相特性等のフィルタ特性が調整されることにより、上述の低周波帯域BL1について周波数分割を行うチャンネルデバイダ機能とグラフィックイコライザ機能を発揮する。
更に、低域畳み込み演算部C1にも、高域畳み込み演算部B1と同様に、インパルス特性制御部21から、直線位相フィルタのインパルス応答を示すインパルス応答データh1nと最小遅延位相フィルタのインパルス応答を示すインパルス応答データh1nが供給される。
そして、低域畳み込み演算部C1は、直線位相フィルタのインパルス応答を示すインパルス応答データh1nが供給された場合には、そのインパルス応答データh1nに基づいて上述の畳み込み演算を行うことによって、デジタルオーディオ信号X1に対し低域通過直線位相フィルタとして機能し、一方、最小遅延位相フィルタのインパルス応答を示すインパルス応答データh1nが供給された場合には、そのインパルス応答データh1nに基づいて上述の畳み込み演算を行うことによって、デジタルオーディオ信号X1に対し低域通過最小遅延位相フィルタとして機能する。
このように、高域畳み込み演算部B1がインパルス応答データh1mに従って高域通過直線位相フィルタ又は高域通過最小遅延位相フィルタとしての機能を発揮すると共に、低域畳み込み演算部C1がインパルス応答データh1nに従って低域通過直線位相フィルタ又は低域通過最小遅延位相フィルタとしての機能を発揮することによって、出力信号X11,X12の全周波数帯域において図2(g)に例示するようなゲイン対周波数特性を発揮するグラフィックイコライザとして機能する。
ここで、デジタルオーディオ信号X1は、ナイキストのサンプリング定理に従ったサンプル値系列(データ列)であることから、インパルス特性制御部21は、該サンプリング定理に従ったh1m(m=1,2,3,…M+1)で表記可能なM+1個の係数列から成るインパルス応答データh1mを高域畳み込み演算部B1に供給すると共に、該サンプリング定理に従ったh1n(n=1,2,3,…N+1)で表記可能なN+1個の係数列から成るインパルス応答データh1nを低域畳み込み演算部C1に供給する。
ただし、上述の低周波帯域BL1の信号成分について信号処理を行うためのインパルス応答データh1nに比して、高周波帯域BH1の信号成分について信号処理を行うためのインパルス応答データh1mの方が少ないサンプル数、すなわちN+1>M+1の関係に決められている。
これによって、少ないサンプル数(M+1)でも高周波帯域BH1の信号成分について信号処理を行うことを可能にすると共に、高周波帯域BH1と低周波帯域BL1での畳み込み演算を行うのに必要な総データ量の低減、及び信号処理部A1の構成の小型化を可能にしている。
遅延部D1は、後述の遅延時間制御部22から供給される遅延時間データd1によって指定される遅延時間τ11を設定し、高域畳み込み演算部B1からの出力信号X11を時間τ11で遅延することによって、遅延したデジタルオーディオ信号X1(H)を出力する。
すなわち、上述のナイキストのサンプリング定理に基づいて決まるサンプリング周期をTsで表記することとすると、遅延部D1は、遅延時間データd1とサンプリング周期Tsに比例した遅延時間τ11(0の場合を含むd1×Tsに比例した時間)を設定する。
遅延部E1は、後述の遅延時間制御部22から供給される遅延時間データe1によって指定される遅延時間τ12を設定し、低域畳み込み演算部C1からの出力信号X12を時間τ12で遅延することによって、遅延したデジタルオーディオ信号X1(L)を出力する。
すなわち、上述のナイキストのサンプリング定理に基づいて決まるサンプリング周期をTsで表記することとすると、遅延部E1は、遅延時間データe1とサンプリング周期Tsに比例した遅延時間τ12(0の場合を含むE1×Tsに比例した時間)を設定する。
このように、遅延部D1,E1は、遅延時間データd1,e1に従って各遅延時間τ11,τ12を設定することにより、各出力信号X11,X12の伝搬遅延時間を調整するタイムアラインメント機能を発揮する。
次に、残余の各信号処理部A2,A3〜Apも、基本的に信号処理部A1と同じ構成を有しており、各高域畳み込み演算部B2,B3〜Bpは高域畳み込み演算部B1、各低域畳み込み演算部C2,C3〜Cpは低域畳み込み演算部C1、各遅延部D2,D3〜Dpは遅延部D1、各遅延部E2,E3〜Epは遅延部E1と基本的に同じ構成となっている。
そして、各高域畳み込み演算部B2,B3〜Bpは、各デジタルオーディオ信号X2,X3〜Xpと、インパルス特性制御部21から供給される夫々M+1個の係数列から成るインパルス応答データh2m,h3m〜hpmとの畳み込み演算を行うことによって、各デジタルオーディオ信号X2,X3〜Xpの各高周波帯域BH2,BH3〜BHpの信号成分について周波数分割とゲイン及び位相特性の調整を行うチャンネルデバイダ機能とグラフィックイコライザ機能を発揮し、更に、直線位相フィルタのインパルス応答を示すインパルス応答データh2m,h3m〜hpmが供給された場合には高域通過直線位相フィルタ、最小遅延位相フィルタのインパルス応答を示すインパルス応答データh2m,h3m〜hpmが供給された場合には高域通過最小遅延位相フィルタとしての機能を発揮する。
各低域畳み込み演算部C2,C3〜Cpは、各デジタルオーディオ信号X2,X3〜Xpと、インパルス特性制御部21から供給される夫々N+1個の係数列から成るインパルス応答データh2n,h3n〜hpnとの畳み込み演算を行うことによって、各デジタルオーディオ信号X2,X3〜Xpの各低周波帯域BL2,BL3〜BLpの信号成分について周波数分割とゲイン及び位相特性の調整を行うチャンネルデバイダ機能とグラフィックイコライザ機能を発揮し、更に、直線位相フィルタのインパルス応答を示すインパルス応答データh2n,h3n〜hpnが供給された場合には高域通過直線位相フィルタ、最小遅延位相フィルタのインパルス応答を示すインパルス応答データh2n,h3n〜hpnが供給された場合には高域通過最小遅延位相フィルタとしての機能を発揮する。
各遅延部D2,D3〜Dpは、遅延時間制御部22から供給される遅延時間データd2,d3〜dpによって指定される遅延時間τ21,τ31〜τp1を夫々設定し、各高域畳み込み演算部B2,B3〜Bpから出力される出力信号X21,X31〜Xp1を遅延して、遅延したデジタルオーディオ信号X2(H),X3(H)〜Xp(H)を出力する。
つまり、各遅延部D2,D3〜Dpも、遅延部D1と同様に、遅延時間データd2,d3〜dpに従って、サンプリング周期Tsに比例した遅延時間τ21,τ31〜τp1(τ21=0,τ31=0,τp1=0の場合を含む)を設定することにより、タイムアラインメント機能を発揮する。
各遅延部E2,E3〜Epは、遅延時間制御部22から供給される遅延時間データd22,d32〜dp2によって指定される遅延時間τ22,τ32〜τp2を夫々設定し、各低域畳み込み演算部C2,C3〜Cpから出力される出力信号X22,X32〜Xp2を遅延して、遅延したデジタルオーディオ信号X2(L),X3(L)〜Xp(L)を出力する。
つまり、各遅延部E2,E3〜Epも、遅延部E1と同様に、遅延時間データd22,d32〜dp2に従って、サンプリング周期Tsに比例した遅延時間τ22,τ32〜τp2(τ22=0,τ32=0,τp2=0の場合を含む)を設定することにより、タイムアラインメント機能を発揮する。
また、各デジタルオーディオ信号X2,X3〜Xpは、ナイキストのサンプリング定理に従ったサンプル値系列(データ列)であることから、インパルス特性制御部21は、該サンプリング定理に従ったh2m(m=1,2,3,…M+1),h3m(m=1,2,3,…M+1)〜hpm(m=1,2,3,…M+1)で表記可能な夫々M+1個の係数列から成るインパルス応答データh2m,h3m〜hpmを、各高域畳み込み演算部B2,B3〜Bpに供給する。
また、インパルス特性制御部21は、上述のサンプリング定理に従ったh2n(n=1,2,3,…N+1),h3n(n=1,2,3,…N+1)〜hpn(n=1,2,3,…N+1)で表記可能な夫々N+1個の係数列から成るインパルス応答データh2n,h3n〜hpnを、各低域畳み込み演算部C2,C3〜Cpに供給する。
そして、上述の低周波帯域BL2,BL3〜BLpの信号成分について信号処理を行うための各インパルス応答データh2n,h3n〜hpnに比して、高周波帯域BH2,BH3〜BHpの信号成分について信号処理を行うための各インパルス応答データh2m,h3m〜hpmの方が少ないサンプル数、すなわちN+1>M+1の関係に決められており、これによって、各高域畳み込み演算部B2,B3〜Bpが少ないサンプル数(M+1)でも高周波帯域BH2,BH3〜BHpの信号成分について信号処理を行うことを可能にすると共に、高周波帯域BH2,BH3〜BHpと低周波帯域BL2,BL3〜BLpでの畳み込み演算を行うのに必要な総データ量の低減、及び信号処理部A2,A3〜Apの構成の小型化を可能にしている。
インパルス特性制御部21と遅延時間制御部22は、本音響特性調整装置10の動作を集中管理する制御部20内に備えられているマイクロプロセッサ(MPU)やDSP(Digital Signal Processor)やデジタル回路によって形成されている。
また、制御部20には、受聴者(或いは視聴者)が本音響特性調整装置10に対して所望の操作入力を行うための操作部30が接続されており、該操作部30には、高域畳み込み演算部B1〜Bpの各フィルタ特性と、低域畳み込み演算部C1〜Cpの各フィルタ特性と、遅延部D1〜Dp,E1〜Epの各遅延時間とを夫々独立に調整するための入力手段としての操作スイッチや操作キー等の操作手段の他、制御部20からの制御に従って操作手順等の操作情報を表示すると共に、受聴者等が操作手段を介して入力した情報を告知表示する等、受聴者等にとってインタラクティブな操作を行うことを可能にする液晶パネル等の表示手段が設けられている。
そして、次の動作説明において明らかなように、受聴者等がこれら表示手段を見ながら操作手段を操作すると、制御部20とインパルス特性制御部21及び遅延時間制御部22に、上述のチャンネルデバイダ機能とグラフィックイコライザ機能とタイムアラインメント機能を有する各信号処理部A1〜Apの夫々の周波数分割特性とゲイン及び位相特性と遅延時間を調整させ、受聴位置等における音の音響特性を所望の特性に調整することが可能である。
次に、かかる構成を有する音響特性調整装置10の動作を説明する。
受聴者等が、操作部30に設けられている所定の操作手段を操作して、所望のチャンネルを指定すると、制御部20がその指定されたチャンネルの信号処理部に対して制御する。
信号処理部A1が指定された場合を代表として説明すると、制御部20は、上述の表示手段に操作手順と第1チャンネルの信号処理部A1が指定されたことを示す表示を行わせ、受聴者等が調整しようとしている音響特性(以下「目標特性」という)を入力するように促す。
具体的には、制御部20は、高域畳み込み演算部B1と低域畳み込み演算部C1の特性と、第1チャンネルの各スピーカから受聴位置等までの距離を入力するように促す。
この表示に対して受聴者等が、高域畳み込み演算部B1で実現させるべきフィルタの種類として直線位相フィルタと最小遅延位相フィルタの何れか一方を指定し、また、低域畳み込み演算部C1で実現させるべきフィルタの種類として直線位相フィルタと最小遅延位相フィルタの何れか一方を指定すると、制御部20がこれら指定されたフィルタの種類を示すデータをインパルス特性制御部21へ供給する。
つまり、受聴者等は、高域畳み込み演算部B1と低域畳み込み演算部C1を夫々独立に直線位相フィルタと最小遅延位相フィルタの何れか一方に個別指定することが可能となっている。また、受聴者等は、最小遅延位相フィルタと直線位相フィルタの切り替え指定をすることも可能となっている。
また、受聴者等が高域畳み込み演算部B1に周波数分割を行わせるべき所望の高周波帯域(通過帯域)BH1と、その減衰域におけるしゃ断特性(高域及び低域カットオフ周波数と、各カットオフ周波数毎の減衰量であるカットオフスロープ)を入力すると、制御部20がその入力された高周波帯域BH1及びしゃ断特性を示すデータをインパルス特性制御部21へ供給する。
また、受聴者等が上述の高周波帯域(通過帯域)BH1内において1/3octずつの狭帯域毎に所望のゲイン(ブースト量又はカット量)を入力すると、制御部20がその入力された1/3octずつのゲインを示すデータをインパルス特性制御部21へ供給する。
また、受聴者等が低域畳み込み演算部C1に周波数分割を行わせるべき所望の低周波帯域(通過帯域)BL1と、その減衰域におけるしゃ断特性(高域及び低域カットオフ周波数と、各カットオフ周波数毎の減衰量であるカットオフスロープ)を入力すると、制御部20がその入力された低周波帯域BL1及びしゃ断特性を示すデータをインパルス特性制御部21へ供給する。また、受聴者等が上述の低周波帯域(通過帯域)BL1内において1/3octずつの狭帯域毎に所望のゲイン(ブースト量又はカット量)を入力すると、制御部20がその入力された1/3octずつのゲインを示すデータをインパルス特性制御部21へ供給する。
なお、本実施形態の操作部30を操作すると、高周波帯域BH1と低周波帯域BL1に関する夫々のしゃ断特性を、スルー(0dB)から最大−72dB/octまでの範囲内において、−6dB/oct単位で夫々個別に可変指定できるようになっている。
こうして受聴者等が高域畳み込み演算部B1と低域畳み込み演算部C1の各目標特性を指定すると、インパルス特性制御部21は、制御部20から供給された高域畳み込み演算部B1に関する上述のフィルタの種類と、高周波帯域BH1と、1/3octずつの狭帯域のブースト量又はカット量と、それらのしゃ断特性とのデータに基づいて、指定された目標特性を満足する高域通過フィルタのインパルス応答を表すインパルス応答データh1m、すなわちM+1サンプルの係数列h1m(m=1,2,3,…M+1)から成るインパルス応答データh1mを生成して高域畳み込み演算部B1へ供給する。
つまり、インパルス特性制御部21は、高域畳み込み演算部B1に関するフィルタの種類として直線位相フィルタが指定された場合には、その直線位相フィルタのゲイン及び位相特性を有し且つ目標特性を満足するインパルス応答データh1mを生成して高域畳み込み演算部B1へ供給する。最小遅延位相フィルタが指定された場合には、インパルス特性制御部21は、その最小遅延位相フィルタの周波数特性と位相特性を有し且つ目標特性を満足するインパルス応答データh1mを生成して、高域畳み込み演算部B1へ供給する。
更に、インパルス特性制御部21は、制御部20から供給された低域畳み込み演算部C1に関する上述のフィルタの種類と、低周波帯域BL1と、1/3octずつの狭帯域のブースト量又はカット量と、それらのしゃ断特性とのデータに基づいて、指定された目標特性を満足する低域通過フィルタのインパルス応答を表すインパルス応答データh1n、すなわちN+1サンプルの係数列h1n(n=1,2,3,…N+1)から成るインパルス応答データh1nを生成して低域畳み込み演算部C1へ供給する。
つまり、インパルス特性制御部21は、低域畳み込み演算部C1に関するフィルタの種類として直線位相フィルタが指定された場合には、その直線位相フィルタの周波数特性と位相特性を有し且つ目標特性を満足するインパルス応答データh1nを生成して低域畳み込み演算部C1へ供給し、最小遅延位相フィルタが指定された場合には、その最小遅延位相フィルタのゲイン及び位相特性を有し且つ目標特性を満足するインパルス応答データh1nを生成して、低域畳み込み演算部B1へ供給する。
そして、高域畳み込み演算部B1がインパルス応答データh1mに基づいてデジタルオーディオ信号X1との畳み込み演算を行うことにより、チャンネルデバイダ機能とグラフィックイコライザ機能を発揮し、低域畳み込み演算部C1がインパルス応答データh1nに基づいてデジタルオーディオ信号X1との畳み込み演算を行うことにより、チャンネルデバイダ機能とグラフィックイコライザ機能を発揮する。
また、上述の表示手段に表示された操作手順に応じて、受聴者等が遅延部D1側の経路に接続されるスピーカから受聴位置等までの距離L11と、遅延部E1側の経路に接続されるスピーカから受聴位置等までの距離L12を入力すると、制御部20が入力された各距離L11,L12を示すデータを遅延時間制御部22へ供給する。
そして、遅延時間制御部22は、各距離L11とL12とを音速で除算することにより、遅延部D1側の経路に接続されるスピーカから放射される音が受聴位置等に到達するのに要するアラインメント時間T11と、遅延部E1側の経路に接続されるスピーカから放射される音が受聴位置等に到達するのに要するアラインメント時間T12とを演算する。
そして更に、次の〈1〉〜〈4〉に列記するように、遅延時間制御部22は、指定された高域畳み込み演算部B1と低域畳み込み演算部C1に関するフィルタの種類に応じて、遅延部D1,E1の遅延時間τ11,τ12を設定するための遅延時間データd1,e1を生成して各遅延部D1,E1へ供給する。
〈1〉高域畳み込み演算部B1と低域畳み込み演算部C1が共に直線位相フィルタの場合
かかる場合には、遅延時間制御部22は、上述の多いサンプル数(N+1)から少ないサンプル数(M+1)を引き算した値(N−M)の2分の1の値〔(N−M)/2〕にサンプリング周期Tsを掛け算することによって補正時間ΔT11を演算し、更にその補正時間ΔT11と上述の距離L11から求めたアラインメント時間T11とを加算した時間(T11+ΔT11)を遅延時間τ11として演算する。そして、その遅延時間τ11を示す遅延時間データd1を遅延部D1に供給することで、遅延部D1の遅延時間τ11を上述の時間(T11+ΔT11)に設定させる。
一方、遅延部E1の遅延時間τ12については、遅延時間制御部22は上述の距離L12から求めたアラインメント時間T12を遅延時間τ12とし、遅延時間データe1を遅延部E1に供給することによって、遅延部E1の遅延時間τ12をアラインメント時間T12に設定させる。
このように、遅延時間制御部22は、上述の指定された各スピーカから受聴位置等までの各距離L11,L12に応じて、遅延部D1,E1の遅延時間τ11,τ12を調整することによってタイムアラインメント機能を発揮させる。
更に、高域畳み込み演算部B1と低域畳み込み演算部C1が共に直線位相フィルタとして機能することとなった場合には、図2(a)を参照して説明したように、遅延時間一定という直線位相フィルタの性質に従って、高域畳み込み演算部B1の出力信号X11に対し低域畳み込み演算部C1の出力信号X12の方が値〔(N−M)/2〕の分だけ遅相の状態となる。つまり、高域畳み込み演算部B1と低域畳み込み演算部C1が共に直線位相フィルタとして機能することとなった場合には、高域畳み込み演算部B1と低域畳み込み演算部C1は、図3(a)に例示するようなサンプル値系列x0,X1…から成るデジタルオーディオ信号X1に対して、夫々図3(b)に例示するような直線位相フィルタの特性を有するインパルス応答データh1mとh1nとを畳み込み演算し、図3(d)に例示するような遅相(位相遅れ)を生じた出力信号X11とX12を出力する。これら出力信号X11とX12との遅相分の時間差を遅延時間制御部22が補正時間ΔT11として演算し、距離L11から求めたアラインメント時間T11に補正時間ΔT11を加算した時間(T11+ΔT11)を遅延部D1の遅延時間τ11とするので、遅延部D1,E1を通過する際に出力信号X11,X12の位相のずれが相殺され、各スピーカから放射された音の受聴位置等における総合遅延時間と総合位相とを揃え、高品位の音を再生することを可能にしている。
〈2〉高域畳み込み演算部B1と低域畳み込み演算部C1が共に最小遅延位相フィルタの場合
かかる場合には、遅延時間制御部22は、上述の距離L11から求めたアラインメント時間T11を示す遅延時間データd1を遅延部D1に供給することによって、その遅延時間τ11をアラインメント時間T11、上述の距離L12から求めたアラインメント時間T12を示す遅延時間データe1を遅延部E1に供給することによって、その遅延時間τ12をアラインメント時間T12に設定させる。
高域畳み込み演算部B1と低域畳み込み演算部C1が共に最小遅延位相フィルタの場合には、デジタルオーディオ信号X1とインパルス応答データh1mとh1nとの各畳み込み演算を行うと、時間遅延を生じることなく出力信号X11,X12が生じる。つまり、高域畳み込み演算部B1と低域畳み込み演算部C1が共に最小遅延位相フィルタとして機能することとなった場合には、高域畳み込み演算部B1と低域畳み込み演算部C1は、図3(a)に例示するようなサンプル値系列x0,X1…から成るデジタルオーディオ信号X1に対して、夫々図3(c)に例示するような最小遅延位相フィルタの特性を有するインパルス応答データh1mとh1nとを畳み込み演算し、図3(e)に例示するような遅相(位相遅れ)の無い出力信号X11とX12を出力する。そこで、遅延時間制御部22が、上述の指示された各スピーカから受聴位置等までの各距離L11,L12に応じて遅延部D1,E1の遅延時間τ11,τ12を調整することによって、各スピーカから放射された音の受聴位置等における総合遅延時間と総合位相とを揃えるタイムアラインメント機能を発揮させると共に、高品位の音を再生することを可能にしている。
〈3〉高域畳み込み演算部B1が直線位相フィルタ、低域畳み込み演算部C1が最小遅延位相フィルタの場合
かかる場合には、遅延時間制御部22は、上述の指定された距離L11から求めたアラインメント時間T11を遅延時間τ11とし、遅延時間データd1を遅延部D1に供給することによって、遅延部D1の遅延時間τ11をアラインメント時間T11に設定させる。
一方、遅延部E1の遅延時間τ12については、遅延時間制御部22は上述のサンプル数(M+1)の2分の1の値〔(M+1)/2〕にサンプリング周期Tsを掛け算することによって補正時間ΔT12を演算し、更にその補正時間ΔT12と上述の距離L12から求めたアラインメント時間T12とを加算した時間(T12+ΔT12)を遅延時間τ12として演算する。そして、その遅延時間τ12を示す遅延時間データe1を遅延部E1に供給することで、遅延部E1の遅延時間τ12を上述の時間(T12+ΔT12)に設定させる。
このように、遅延時間制御部22は、上述の指定された各スピーカから受聴位置等までの各距離L11,L12に応じて、遅延部D1,E1の遅延時間τ11,τ12を調整することによってタイムアラインメント機能を発揮させる。
更に、高域畳み込み演算部B1が直線位相フィルタ、低域畳み込み演算部C1が最小遅延位相フィルタの場合には、デジタルオーディオ信号X1とインパルス応答データh1mとh1nとの各畳み込み演算を行うと、図3(b)(c)に例示した直線位相フィルタと最小遅延位相フィルタの性質に従って、図3(d)(e)に例示するような出力信号X11とX12が発生すると共に、低域畳み込み演算部C1の出力信号X12よりも高域畳み込み演算部B1の出力信号X11の方が値〔(M+1)/2〕の分だけ遅相(位相遅れ)の状態となる。この遅相分の時間を遅延時間制御部22が補正時間ΔT12として演算し、距離L12から求めたアラインメント時間T12に補正時間ΔT12を加算した時間(T12+ΔT12)を遅延部E1の遅延時間τ12とするので、遅延部D1,E1を通過する際に出力信号X11,X12の位相のずれが相殺され、各スピーカから放射された音の受聴位置等における総合遅延時間と総合位相とを揃え、高品位の音を再生することを可能にする。
〈4〉高域畳み込み演算部B1が最小遅延位相フィルタ、低域畳み込み演算部C1が直線位相フィルタの場合
かかる場合には、遅延時間制御部22は、上述のサンプル数(N+1)の2分の1の値〔(N+1)/2〕にサンプリング周期Tsを掛け算することによって補正時間ΔT11を演算し、更にその補正時間ΔT11と上述の距離L11から求めたアラインメント時間T11とを加算した時間(T11+ΔT11)を遅延時間τ11として演算する。そして、その遅延時間τ11を示す遅延時間データd1を遅延部D1に供給することで、遅延部D1の遅延時間τ11を上述の時間(T11+ΔT11)に設定させる。
一方、遅延部E1の遅延時間τ12については、遅延時間制御部22は上述の距離L12から求めたアラインメント時間T12を遅延時間τ12とし、遅延時間データe1を遅延部E1に供給することによって、遅延部E1の遅延時間τ12をアラインメント時間T12に設定させる。
このように、遅延時間制御部22は、上述の指定された各スピーカから受聴位置等までの各距離L11,L12に応じて、遅延部D1,E1の遅延時間τ11,τ12を調整することによってタイムアラインメント機能を発揮させる。
更に、高域畳み込み演算部B1が最小遅延位相フィルタ、低域畳み込み演算部C1が直線位相フィルタの場合には、デジタルオーディオ信号X1とインパルス応答データh1mとh1nとの各畳み込み演算を行うと、図3(b)(c)に例示した直線位相フィルタと最小遅延位相フィルタの性質に従って、図3(d)(e)に例示するような出力信号X11とX12が発生すると共に、高域畳み込み演算部B1の出力信号X11よりも低域畳み込み演算部C1の出力信号X12の方が値〔(N+1)/2〕の分だけ遅相の状態となる。この遅相分の時間を遅延時間制御部22が補正時間ΔT11として演算し、距離L11から求めたアラインメント時間T11に補正時間ΔT11を加算した時間(T11+ΔT11)を遅延部D1の遅延時間τ11としているので、遅延部D1,E1を通過する際に出力信号X11,X12の位相のずれが相殺され、各スピーカから放射された音の受聴位置等における総合遅延時間と総合位相とを揃え、高品位の音を再生することを可能にする。
そして、残余の信号処理部A2,A3〜Apが指定された場合にも、信号処理部A1が指定された場合と同様に、インパルス特性制御部21及び遅延時間制御部22等が各高域畳み込み演算部B2,B3〜Bp及び低域畳み込み演算部C2,C3〜Cpと、遅延部D2,D3〜Bp及びE2,E3〜Epの各特性を受聴者等の所望する目標特性に設定する。
このように本実施形態の音響特性調整装置10によれば、受聴者等(すなわち受聴者或いは視聴者)が操作部30を操作することによって、信号処理部A1〜Ap中の高域畳み込み演算部B1〜Bpと低域畳み込み演算部C1〜Cpを直線位相フィルタと最小遅延位相フィルタの何れかに個別に且つ自在に設定することができ、また、直線位相フィルタ又は最小遅延位相フィルタに設定されるのに応じて、各スピーカから放射される音の受聴位置等(すなわち受聴位置或いは視聴位置)における総合遅延時間と総合位相とを揃えるように遅延部D1〜Dp,E1〜Epの各遅延時間を自動的に設定するので、受聴者等に使用目的等に応じた様々のチャンネルデバイダ機能とグラフィックイコライザ機能とタイムアラインメント機能を提供することができる。
また、映像と音とを再生するAV機器等に本音響特性調整装置10を適用した場合、受聴者等は信号処理部A1〜Ap中の高域畳み込み演算部B1〜Bpと低域畳み込み演算部C1〜Cpを共に最小遅延位相フィルタに設定することによって、高域畳み込み演算部B1〜Bpと低域畳み込み演算部C1〜Cpにおける畳み込み演算の際の時間遅延を無くすことができるため、ディスプレイ等に表示される映像に対して整合性を有した音を受聴位置(或いは視聴位置)において生じさせる、すなわち映像と整合性を有した音響特性を有した音を受聴位置(或いは視聴位置)において生じさせることができる。
また、インパルス応答データh1n〜hpnの各サンプル数(N+1)より、インパルス応答データh1m〜hpmの各サンプル数(M+1)を少なくし、これらの各インパルス応答データh1m〜hpm,h1n〜hpnに基づいて各高域畳み込み演算部B1〜Bpと各低域畳み込み演算部C1〜Cpにおいて畳み込み演算を行うようにしたので、各畳み込み演算を行うのに要するインパルス応答データh1m〜hpm,h1n〜hpnの総データ量を低減すると共に、信号処理部A1〜Apの小型化等を実現することができる。
なお、以上の説明では、各チャンネルの目標特性とフィルタの種類を個別に操作入力する構成とした場合について説明したが、これに限らず、他の操作入力を行う構成としてもよい。
例えば、各チャンネルの目標特性とフィルタの種類とを所定の関係で関連付けたいわゆる検索データ群を有するデータベースを構成しておき、受聴者等が目標特性又はフィルタの種類、若しくは目標特性とフィルタの種類とを適宜に操作入力をすると、その操作入力された目標特性やフィルタの種類に関連付けられている各チャンネルの目標特性とフィルタの種類とを自動的に検索して、各チャンネルの目標特性とフィルタの種類とを自動的に設定する構成としてもよい。より具体的に述べれば、例えばチャンネルが複数存在するシステム構成の場合、受聴者等が特にチャンネル指定をせず、それらのチャンネルに対する或る目標特性又はフィルタの種類、若しくは目標特性とフィルタの種類を操作入力するだけで、その入力された目標特性やフィルタの種類に関連付けられている複数の各チャンネルの目標特性とフィルタの種類を自動的に検索して自動的に設定する構成としてもよい。かかる構成にすると、受聴者等にとって簡単な操作を行うだけで、複数の各チャンネルに対し設定するための目標特性とフィルタの種類を、統一的に操作入力することができ、利便性の向上等を図ることが可能となる。
また、上述の検索データ群を所定のシーケンスで関連付けて上記データベースに格納しておき、受聴者等からの簡単な操作入力に応じて、上記データベースをインクリメンタル検索(incremental search)することにより、各チャンネルの目標特性とフィルタの種類を設定するように構成してもよい。つまり、受聴者等が所定の操作キーを継続してオン操作すると、所定の単位時間毎に、上述のシーケンスで関連付けられている各チャンネルの目標特性とフィルタの種類を順次に検索してその検索結果を受聴者等に提示していき、受聴者等から確定の操作指示がなされると、その指示されたときに提示していた各チャンネルの目標特性とフィルタの種類を自動的に設定する構成、いわゆるインクリメンタル検索を行う構成としてもよい。かかる構成にすると、受聴者等に対して優れた利便性、操作性を提供することができる。
また、各チャンネルの目標特性とフィルタの種類との設定を同時に行うようにしてもよいが、目標特性とフィルタの種類を各々別個に設定するようにしてもよい。つまり、各チャンネルの目標特性とフィルタの種類とが既に設定されている場合、受聴者がフィルタの種類だけを操作入力すると、その入力されたフィルタの種類のみを変更(更新)し、既に設定されている目標特性はそのまま維持し、また、受聴者が目標特性だけを操作入力すると、その入力された目標特性のみを変更(更新)し、既に設定されているフィルタの種類はそのまま維持する構成としてもよい。かかる構成にすると、受聴者にとって細かな設定が可能となり、利便性の向上等を実現することができる。
次に、本実施形態に関するより具体的な実施例を図4〜図7を参照して説明する。
図4は本実施例の音響特性調整装置の構成を表したブロック図、図5は本音響特性調整装置に備えられている高域畳み込み演算部と低域畳み込み演算の構成を表した図、図6は本音響特性調整装置に備えられている操作部の構成を表した図、図7は動作を説明するためのフローチャートである。また、図4〜図6において、図1と同一又は相当する部分を同一符号で示している。
図4において、本実施例の音響特性調整装置10は、図1に示したのと同様にpチャンネル分の信号処理部A1〜Apが設けられ、各信号処理部A1〜Apは、高域畳み込み演算部B1〜Bpと低域畳み込み演算部E1〜Epと、遅延部D1〜Dp及びE1〜Epを備えて構成されている。
ここで、高域畳み込み演算部B1は、図5(a)に示すように、M+1個の遅延素子DHが従属接続された構成を有する遅延回路DHBと、各遅延素子DHの出力端に接続されたM+1個の乗算器KB1,KB2〜KBM+1と、乗算器KB1,KB2〜KBM+1のM+1個の出力を加算することによって出力信号X11を生成する加算器ADDBを備えて構成されている。
そして、遅延回路DHB中の従属接続された各遅延素子DHが、サンプリング周期Tsに同期してサンプル値系列のデジタルオーディオ信号X1を順次に入力し、ファーストインファーストアウト(FIFO)処理を行うことによってM+1サンプルのデジタルオーディオ信号X1を保持しつつ更新する。
また、M+1個の乗算器KB1,KB2〜KBM+1は、後述のインパルス応答データ出力部21aから供給されるインパルス応答データh1mによって夫々の係数値が設定される。
つまり、係数列h1m(m=1,2,3,…M+1)で表記可能な各係数値h11,h12…h1M+1が各乗算器KB1,KB2〜KBM+1に対応付けて設定されることにより、乗算器KB1に設定された係数値h11と遅延回路DHB中の先頭の遅延素子DHの出力とが乗算され、更に乗算器KB2に設定された係数値h12と遅延回路DHB中の第2番目の遅延素子DHの出力とが乗算され、以下同様に、乗算器KBM+1に設定された係数値h1M+1と遅延回路DHB中の最後の遅延素子DHの出力とが乗算される。
そして、加算器ADDBが、サンプリング周期Ts毎に乗算器KB1,KB2〜KBM+1のM+1個の出力を加算することにより、畳み込み演算の結果を示す出力信号X11を出力する。
このように、高域畳み込み演算部B1は、M+1個の遅延素子DH及び乗算器KB1,KB2〜KBM+1と加算器ADDBとによって、M+1個のタップ数を有するFIRデジタルフィルタとなっており、入力されるデジタルオーディオ信号X1にゲイン及び位相特性の調整を施すことによって出力信号X11を出力する。
また、図4中には簡略化して示されているが、残余の各高域畳み込み演算部B2〜Bpも、図5(a)に示した高域畳み込み演算部B1と基本的に同じ構成を有したM+1個のタップ数を有するFIRデジタルフィルタとなっており、後述のインパルス応答データ出力部21aから供給される各インパルス応答データh2m〜hpmとデジタルオーディオ信号X2〜Xpとの畳み込み演算を行うことによって出力信号X21〜Xp1を出力する。
低域畳み込み演算部C1は、図5(b)に示すように、N+1個の遅延素子DLが従属接続された構成を有する遅延回路DLCと、各遅延素子DLの出力端に接続されたN+1個の乗算器KC1,KC2〜KCN+1と、乗算器KC1,KC2〜KCN+1の出力を加算することによって出力信号X12を生成する加算器ADDCを備えて構成されている。
すなわち、低域畳み込み演算部C1は、上述の高域畳み込み演算部A1と同様に、サンプリング周期Ts毎に、遅延回路DLC中の各遅延素子DLがデジタルオーディオ信号X1をFIFO処理を行うと共に、N+1個の乗算器KC1,KC2〜KCN+1が後述のインパルス応答データ出力部21aから供給される係数列h1n(n=1,2,3,…N+1)で表記可能な各係数値h11,h12…h1N+1と各遅延素子DLの出力とを乗算し、そして加算器ADDCが乗算器KC1,KC2〜KCN+1のN+1個の出力を加算することにより、畳み込み演算の結果を示す出力信号X12を出力する。つまり、低域畳み込み演算部C1は、N+1個のタップ数を有するFIRデジタルフィルタとなっている。
また、図4中には簡略化して示されているが、残余の各低域畳み込み演算部C2〜Cpも、図5(b)に示した低域畳み込み演算部C1と基本的に同じ構成を有したN+1個のタップ数を有するFIRデジタルフィルタとなっており、後述のインパルス応答データ出力部21aから供給される各インパルス応答データh2n〜hpnとデジタルオーディオ信号X2〜Xpとの畳み込み演算を行うことにより、出力信号X22〜Xp2を出力する。
ここで、図5(b)に示した各低域畳み込み演算部C1〜Cp内の遅延素子DL及び乗算器KC1〜KCN+1の個数すなわちタップ数(N+1)よりも、図5(a)に示した各高域畳み込み演算部B1〜Bp内の遅延素子DH及び乗算器KB1〜KBM+1の個数すなわちタップ数(M+1)の方が少なく、それに応じて、インパルス応答データh1n〜hpnの各係数値の個数(N+1)よりも、インパルス応答データh1m〜hpmの各係数値の個数(M+1)の方が少なくなっており、これによって、上述の実施形態で述べたように、デジタル演算処理に要する総データ量の低減と、高域畳み込み演算部B1〜Bpの小型化が実現されている。なお、1の畳み込み演算部を用いた処理を行う場合には、周波数帯域が高い周波数となるに従ってタップ数を少なくするように、利用される遅延素子DL及び乗算器Kの個数を少なく設定することとなる。
遅延部D1〜Dp,E1〜Epは、何れも後述の遅延時間制御部22から供給される遅延時間データd1〜dp,e1〜epに従って各遅延時間τ11〜τp1,τ12〜τp2を可変調節する可変シフトレジスタ等で形成されている。
本音響特性調整装置10の全体動作を制御する制御部20は、DSPやMPUやデジタル回路で形成されており、インパルス応答データ出力部21aと、窓関数演算部21bと、フーリエ逆変換演算部21cと、遅延時間制御部22と、目標特性決定部23を備えて構成されている。
更に制御部20には、液晶パネル等で形成された表示部31とスイッチ類が設けられている操作パネル部32を備えた操作部30と、半導体メモリで形成された記憶部40とが接続されている。例えば、本音響特性調整装置10が車載用のAV機器に適用される場合、運転手や同乗者に対向するようにしてそのAV機器に取り付けられるフロントパネル面に操作部30が設けられる。
記憶部40は、再記憶が可能な不揮発性半導体メモリと読み出し専用半導体メモリで形成されており、当該読み出し専用半導体メモリには標準データ記憶領域MEMA、当該不揮発性半導体メモリには履歴記憶領域MEMBと動作データ記憶領域MEMCが設けられている。
標準データ記憶領域MEMAには、可聴周波数帯域において直線位相フィルタの特性を有する周波数スペクトルの標準データHa(f)と、可聴周波数帯域において最小遅延位相フィルタの特性を有する周波数スペクトルの標準データHb(f)とが予め記憶されており、これらの標準データHa(f),Hb(f)は実験等によって適切なものに決められている。
履歴記憶領域MEMBは、後述のメモリキーと呼ばれる操作スイッチS4又はS5が操作された場合に、現在設定されている全チャンネルの高域畳み込み演算部B1〜Bp及び低域畳み込み演算部C1〜Cpと遅延部D1〜Dp,E1〜Epの特性を記憶するために設けられている。
より詳細に述べれば、履歴記憶領域MEMBは、各高域畳み込み演算部B1〜Bp及び低域畳み込み演算部C1〜Cpに現在設定されているフィルタの種類と、各高域畳み込み演算部B1〜Bpで現在実現されている後述の周波数スペクトルのデータBH(f)と、各低域畳み込み演算部C1〜Cpで現在実現されている後述の周波数スペクトルのデータBL(f)と、各遅延部D1〜Dp,E1〜Epに現在設定されている遅延時間τ11〜τp1,τ12〜τp2のデータd11〜dp1,e12〜ep2等の特性データを少なくとも記憶するために設けられており、操作スイッチS4又はS5が操作されるのに従って、これらの特性データを記憶する。
動作データ記憶領域MEMCは、後述のチャンネルディバイダ、グラフィックイコライザ、タイムアラインメントの調整に際して受聴者等から入力された最も新しい目標特性に関するデータを記憶するために設けられている。
より具体的には、チャンネルディバイダ、グラフィックイコライザ、タイムアラインメントの調整が行われるのに際して、受聴者等が操作部30を介して入力した目標特性である各高域畳み込み演算部B1〜Bp及び低域畳み込み演算部C1〜Cpの各フィルタの種類と、当該目標特性に従って目標特性決定部23が生成した各高域畳み込み演算部B1〜Bp毎の直線位相フィルタや最小遅延位相フィルタの特性を有する周波数スペクトルのデータBH(f)と、当該目標特性に従って目標特性決定部23が生成した各高域畳み込み演算部B1〜Bp毎の直線位相フィルタや最小遅延位相フィルタの特性を有する周波数スペクトルのデータBL(f)と、遅延時間制御部22が生成した各遅延部D1〜Dp,E1〜Ep毎の遅延時間τ11〜τp1,τ12〜τp2のデータd11〜dp1,e12〜ep2等の特性データを少なくとも記憶し保存しておくために、動作データ記憶領域MEMCが設けられている。
目標特性決定部23は、受聴者等から操作部30を介して音響特性を調整するための指示、すなわちチャンネルディバイダ、グラフィックイコライザ、タイムアラインメントの調整のための指示がなされると、その指示に応じた操作手順等を表示部31に表示させ、更にその操作手順に応じて受聴者等から所望のチャンネルについての目標特性が入力されると、可聴周波数帯域においてその目標特性を満足する周波数スペクトルのデータBH(f),BL(f)を生成する。
より詳細に述べれば、上述の音響特性を調整するための指示がなされると目標特性決定部23は、動作データ記憶領域MEMCを検索して、受聴者等の指示したチャンネルに関する目標特性のデータが既に記憶されているか調べ、記憶されていなければ、標準データ記憶領域MEMAから標準データHa(f),Hb(f)を取得する。そして、操作部30を介して受聴者等から入力される目標特性のデータに基づいて標準データHa(f),Hb(f)を編集することによって、受聴者等の所望する目標特性に合った高周波帯域BHにおける周波数スペクトルを示すデータBH(f)と、低周波帯域BLにおける周波数スペクトルを示すデータBL(f)とを生成し、フーリエ逆変換演算部21cへ供給した後、動作データ記憶領域MEMCに記憶させる。
また、受聴者等の指定したチャンネルに関する目標特性のデータが既に動作データ記憶領域MEMCに記憶されていた場合には、目標特性決定部23は、そのチャンネルに該当する高周波帯域BHの周波数スペクトルのデータBH(f)と低周波帯域BLの周波数スペクトルのデータBL(f)を動作データ記憶領域MEMCから取得する。そして、操作部30を介して受聴者等から入力される目標特性のデータに基づいて、その取得したデータBH(f),BL(f)を編集することによって、受聴者等の所望する目標特性に合った高周波帯域BHにおける周波数スペクトルを示す新規なデータBH(f)と、低周波帯域BLにおける周波数スペクトルを示す新規なデータBL(f)とを生成し、それら新規なデータBH(f),BL(f)をフーリエ逆変換演算部21cへ供給した後、動作データ記憶領域MEMCに記憶させことによって、該当する旧いデータを新規なデータBH(f),BL(f)で更新させて記憶させる。
このように、目標特性決定部23は、動作データ記憶領域MEMCに既に記憶されている特性データを利用して、新規の特性データを生成して動作データ記憶領域MEMCに更新記憶させるので、受聴者等が既に調整しておいた音響特性のうち、所望の特性だけを調整することが可能となっている。また、既述したように、動作データ記憶領域MEMCに既に記憶されている特性データを利用して、フィルタの種類のみを変更(更新)することで調整するようにしてもよい。
フーリエ逆変換演算部21cは、目標特性決定部23から供給される周波数スペクトルのデータBH(f)をフーリエ逆変換することにより、受聴者等によって指定された目標特性のインパル応答を示すインパルス応答データhBHを演算すると共に、データBL(f)をフーリエ逆変換することにより、受聴者等によって指定された目標特性のインパル応答を示すインパルス応答データhBLを演算する。
窓関数演算部21bは、インパルス応答データhBHとhBLに所定の時間窓(いわゆる荷重関数)ωを乗算することにより、その時間窓で振幅調整を施した係数列から成る各インパルス応答データ(hBH)ωと(hBL)ωを演算する。本実施例の窓関数演算部21bでは、コサインテーパ窓又はハニング窓若しくはハニング窓が用いられている。
インパルス応答データ出力部21aは、上述のインパルス応答データ(hBH)ωを高域畳み込み演算部B1〜Bpに供給するためのインパルス応答データh1m〜hpmに決めると共に、音響特性の調整の際に受聴者等によって指定されたチャンネルの高域畳み込み演算部にのみ供給する。例えば、第1チャンネルが指定された場合には、インパルス応答データ(hBH)ωをインパルス応答データh1mとして高域畳み込み演算部B1に供給し、その高域畳み込み演算部B1内の乗算器KB1,KB2〜KBM+1の各係数を設定する。
また、インパルス応答データ出力部21aは、上述のインパルス応答データ(hBL)ωを低域畳み込み演算部C1〜Cpに供給するためのインパルス応答データh1n〜hpnに決めると共に、上述の音響特性の調整の際に受聴者等によって指定されたチャンネルの低域畳み込み演算部にのみ供給する。例えば、第1チャンネルが指定された場合には、インパルス応答データ(hBL)ωをインパルス応答データh1nとして低域畳み込み演算部C1に供給し、その低域畳み込み演算部C1内の乗算器KC1,KC2〜KCM+1の各係数を設定する。
更に、目標特性決定部23とフーリエ逆変換演算部21c及び窓関数演算部21bは、次の〔1〕〜〔4〕に列記するように、各高域畳み込み演算部B1〜Bpに設定すべきM+1個ずつのインパルス応答データh1m〜hpmと、各低域畳み込み演算部C1〜Cpに設定すべきN+1個ずつのインパルス応答データh1n〜hpnを生成するようになっている。
〔1〕高域畳み込み演算部B1〜Bpと低域畳み込み演算部C1〜Cpとの各チャンネルにおける組み合わせを共に直線位相フィルタとすべき指示がなされた場合
かかる指示が受聴者等からなされた場合には、目標特性決定部23は受聴者等の指定した目標特性に従って、可聴周波数帯域を高周波帯域BHと低周波帯域BLに周波数分割する。
そして、上述したように記憶部40を検索し、標準データ記憶領域MEMAに記憶されている直線位相フィルタの特性を有する周波数スペクトルの標準データHa(f)、又は、既に動作データ記憶領域MEMCに記憶されており且つチャンネル指定された高周波帯域BHに関する直線位相フィルタの特性を有する周波数スペクトルのデータBH(f)を取得して、その取得した一方のデータ(すなわち、直線位相フィルタの特性を有するHa(f)又はBH(f)の一方)を目標特性に従ったゲイン及び位相特性に調整することにより、高周波帯域BHにおける周波数スペクトルを示す新規なデータBH(f)を生成する。そして、その高周波帯域BHに関する新規なデータBH(f)をフーリエ逆変換演算部21cに供給すると共に、動作データ記憶領域MEMCに記憶させる。
更に目標特性決定部23は、上述の記憶部40の検索結果に応じて、標準データ記憶領域MEMAに記憶されている直線位相フィルタの特性を有する周波数スペクトルの標準データHa(f)、又は、既に動作データ記憶領域MEMCに記憶されており且つチャンネル指定された低周波帯域BLに関する直線位相フィルタの特性を有する周波数スペクトルのデータBL(f)を取得して、その取得した一方のデータ(すなわち、直線位相フィルタの特性を有するHa(f)又はBL(f)の一方)を目標特性に従ったゲイン及び位相特性に調整することにより、低周波帯域BLにおける周波数スペクトルを示す新規のデータBL(f)を生成する。そして、その低周波帯域BLに関する新規なデータBL(f)をフーリエ逆変換演算部21cに供給すると共に、動作データ記憶領域MEMCに記憶させる。
次に、フーリエ逆変換演算部21cが、目標特性決定部23から供給された周波数スペクトルのデータBH(f)をフーリエ逆変換することによって、M+1個の係数列から成るインパルス応答データhBHを演算すると共に、周波数スペクトルのデータBL(f)をフーリエ逆変換することによって、N+1個の係数列から成るインパルス応答データhBLを演算する。
次に、窓関数演算部21bが、M+1個の係数列から成るインパルス応答データhBHにM+1個のサンプル値系列から成る窓関数ωを乗算することによって、M+1個の係数列から成るインパルス応答データ(hBH)ωを生成して出力し、更に、N+1個の係数列から成るインパルス応答データhBLにN+1個のサンプル値系列から成る窓関数ωを乗算することによってN+1個の係数列から成るインパルス応答データ(hBL)ωを生成して出力する。
次に、インパルス応答データ出力部21aが、高域畳み込み演算部B1〜Bpのうち受聴者等の指定したチャンネルの高域畳み込み演算部へ、上述のインパルス応答データ(hBH)ωを供給すると共に、低域畳み込み演算部C1〜Cpのうち受聴者等の指定したチャンネルの低域畳み込み演算部へ、上述のインパルス応答データ(hBL)ωを供給する。
したがって、例えば調整すべきチャンネルとして第1チャンネルが指定された場合には、インパルス応答データ出力部21aは、M+1個の係数列から成るインパルス応答データ(hBH)ωをインパルス応答データh1mとして高域畳み込み演算部B1内の乗算器KB1,KB2〜KBM+1に供給すると共に、N+1個の係数列から成るインパルス応答データ(hBL)ωをインパルス応答データh1nとして低域畳み込み演算部C1内の乗算器KC1,KC2〜KCN+1に供給して夫々の係数を調整する。
〔2〕高域畳み込み演算部B1〜Bpと低域畳み込み演算部C1〜Cpとの各チャンネルにおける組み合わせを共に最小遅延位相フィルタとすべき指示がなされた場合
かかる指示が受聴者等からなされた場合には、目標特性決定部23は、受聴者等の指定した目標特性に従って、可聴周波数帯域を高周波帯域BHと低周波帯域BLに周波数分割する。
そして、上述したのと同様に記憶部40の検索結果に応じて、標準データ記憶領域MEMAに記憶されている最小遅延位相フィルタの特性を有する周波数スペクトルの標準データHb(f)、又は、既に動作データ記憶領域MEMCに記憶されており且つチャンネル指定された高周波帯域BHに関する最小遅延位相フィルタの特性を有する周波数スペクトルのデータBH(f)と低周波帯域BLに関する最小遅延位相フィルタの特性を有する周波数スペクトルのデータBL(f)を取得する。
そして更に、標準データHb(f)又は高周波帯域BHに関する最小遅延位相フィルタの特性を有する周波数スペクトルのデータBH(f)のうちの取得した一方のデータ(すなわち、最小遅延位相フィルタの特性を有するHb(f)又はBH(f)の一方)を目標特性に従ったゲイン及び位相特性に調整することにより、高周波帯域BHにおける周波数スペクトルを示す新規のデータBH(f)を生成すると共に、標準データHb(f)又は低周波帯域BLに関する最小遅延位相フィルタの特性を有する周波数スペクトルのデータBL(f)のうちの取得した一方のデータ(すなわち、最小遅延位相フィルタの特性を有するHb(f)又はBL(f)の一方)を目標特性に従ったゲイン及び位相特性に調整することにより、低周波帯域BLにおける周波数スペクトルを示す新規のデータBL(f)を生成する。そして、その高周波帯域BHに関する新規なデータBH(f)と低周波帯域BLに関する新規なデータBL(f)とをフーリエ逆変換演算部21cに供給すると共に、動作データ記憶領域MEMCに記憶させる。
次に、フーリエ逆変換演算部21cが、目標特性決定部23から供給された周波数スペクトルのデータBH(f)をフーリエ逆変換することによって、M+1個の係数列から成るインパルス応答データhBHを演算すると共に、周波数スペクトルのデータBL(f)をフーリエ逆変換することによって、N+1個の係数列から成るインパルス応答データhBLを演算する。
次に、窓関数演算部21bが、M+1個の係数列から成るインパルス応答データhBHにM+1個のサンプル値系列から成る窓関数ωを乗算することによって、M+1個の係数列から成るインパルス応答データ(hBH)ωを出力すると共に、N+1個の係数列から成るインパルス応答データhBLにN+1個のサンプル値系列から成る窓関数ωを乗算することによってN+1個の係数列から成るインパルス応答データ(hBL)ωを出力する。
次に、インパルス応答データ出力部21aが、高域畳み込み演算部B1〜Bpのうち指定されたチャンネルの高域畳み込み演算部へ上述のインパルス応答データ(hBH)ωを供給すると共に、低域畳み込み演算部C1〜Cpのうち指定されたチャンネルの低域畳み込み演算部へ上述のインパルス応答データ(hBL)ωを供給し、夫々の演算部内に設けられている乗算器KB1,KB2〜KBM+1,KC1,KC2〜KCN+1の係数を調整する。
〔3〕高域畳み込み演算部B1〜Bpと低域畳み込み演算部C1〜Cpの各チャンネルの組み合わせにおいて、高域畳み込み演算部を直線位相フィルタ、低域畳み込み演算部を最小遅延位相フィルタとすべき指示がなされた場合
かかる指示が受聴者等からなされた場合には、目標特性決定部23は、受聴者等の指定した目標特性に従って、可聴周波数帯域を高周波帯域BHと低周波帯域BLに周波数分割する。
そして、上述したように記憶部40を検索し、その結果に応じて、標準データ記憶領域MEMAに記憶されている直線位相フィルタと最小遅延位相フィルタの特性を有する周波数スペクトルの標準データHa(f)とHb(f)、又は、既に動作データ記憶領域MEMCに記憶されており且つチャンネル指定された高周波帯域BHに関する直線位相フィルタの特性を有する周波数スペクトルのデータBH(f)と低周波帯域BLに関する最小遅延位相フィルタの特性を有する周波数スペクトルのデータBL(f)を取得する。
そして更に、標準データHa(f)又は高周波帯域BHに関する直線位相フィルタの特性を有する周波数スペクトルのデータBH(f)のうちの取得した一方のデータ(すなわち、直線位相フィルタの特性を有するHa(f)又はBH(f)の一方)を目標特性に従ったゲイン及び位相特性に調整することにより、高周波帯域BHにおける周波数スペクトルを示す新規のデータBH(f)を生成すると共に、標準データHb(f)又は低周波帯域BLに関する最小遅延位相フィルタの特性を有する周波数スペクトルのデータBL(f)のうちの取得した一方のデータ(すなわち、最小遅延位相フィルタの特性を有するHb(f)又はBL(f)の一方)を目標特性に従ったゲイン及び位相特性に調整することにより、低周波帯域BLにおける周波数スペクトルを示す新規のデータBL(f)を生成する。そして、その高周波帯域BHに関する新規なデータBH(f)と低周波帯域BLに関する新規なデータBL(f)とをフーリエ逆変換演算部21cに供給すると共に、動作データ記憶領域MEMCに記憶させる。
次に、フーリエ逆変換演算部21cと窓関数演算部21bが、上述の〔1〕〔2〕の場合と同様に、目標特性決定部23から供給された周波数スペクトルの各データBH(f),BL(f)をフーリエ逆変換して窓関数ωを乗算することにより、M+1個の係数列から成るインパルス応答データ(hBH)ωと、N+1個の係数列から成るインパルス応答データ(hBL)ωを演算する。
次に、インパルス応答データ出力部21aが、高域畳み込み演算部B1〜Bpのうち指定されたチャンネルの高域畳み込み演算部へ、上述の直線位相フィルタの特性を有するインパルス応答データ(hBH)ωを供給して、その乗算器KB1,KB2〜KBM+1の係数を設定すると共に、低域畳み込み演算部C1〜Cpのうち指定されたチャンネルの低域畳み込み演算部へ、上述の最小遅延位相フィルタの特性を有するインパルス応答データ(hBL)ωを供給して、その乗算器KC1,KC2〜KCN+1の係数を設定する。
〔4〕高域畳み込み演算部B1〜Bpと低域畳み込み演算部C1〜Cpの各チャンネルの組み合わせにおいて、高域畳み込み演算部を最小遅延位相フィルタ、低域畳み込み演算部を直線位相フィルタとすべき指示がなされた場合
かかる指示が受聴者等からなされた場合には、目標特性決定部23は、受聴者等の指定した目標特性に従って、可聴周波数帯域を高周波帯域BHと低周波帯域BLに周波数分割する。
そして、上述したように記憶部40を検索し、その結果に応じて、標準データ記憶領域MEMAに記憶されている直線位相フィルタと最小遅延位相フィルタの特性を有する周波数スペクトルの標準データHa(f)とHb(f)、又は、既に動作データ記憶領域MEMCに記憶されており且つチャンネル指定された高周波帯域BHに関する最小遅延位相フィルタの特性を有する周波数スペクトルのデータBH(f)と低周波帯域BLに関する直線位相フィルタの特性を有する周波数スペクトルのデータBL(f)を取得する。
そして更に、標準データHb(f)又は高周波帯域BHに関する最小遅延位相フィルタの特性を有する周波数スペクトルのデータBH(f)のうち取得した一方のデータ(すなわち、最小遅延位相フィルタの特性を有するHb(f)又はBH(f)の一方)を目標特性に従ったゲイン及び位相特性に調整することにより、高周波帯域BHにおける周波数スペクトルを示す新規のデータBH(f)を生成すると共に、標準データHa(f)又は低周波帯域BLに関する直線位相フィルタの特性を有する周波数スペクトルのデータBL(f)のうち取得した一方のデータ(すなわち、直線位相フィルタの特性を有するHa(f)又はBL(f)の一方)を目標特性に従ったゲイン及び位相特性に調整することにより、低周波帯域BLにおける周波数スペクトルを示す新規のデータBL(f)を生成する。そして、その高周波帯域BHに関する新規なデータBH(f)と低周波帯域BLに関する新規なデータBL(f)とをフーリエ逆変換演算部21cに供給すると共に、動作データ記憶領域MEMCに記憶させる。
次に、フーリエ逆変換演算部21cと窓関数演算部21bが、上述の〔1〕〔2〕〔3〕の場合と同様に、目標特性決定部23から供給された周波数スペクトルの各データBH(f),BL(f)をフーリエ逆変換して窓関数ωを乗算することにより、M+1個の係数列から成るインパルス応答データ(hBH)ωと、N+1個の係数列から成るインパルス応答データ(hBL)ωを演算する。
次に、インパルス応答データ出力部21aが、高域畳み込み演算部B1〜Bpのうち指定されたチャンネルの高域畳み込み演算部へ、上述の最小遅延位相フィルタの特性を有するインパルス応答データ(hBH)ωを供給して、その乗算器KB1,KB2〜KBM+1の係数を設定すると共に、低域畳み込み演算部C1〜Cpのうち指定されたチャンネルの低域畳み込み演算部へ、上述の直線位相フィルタの特性を有するインパルス応答データ(hBL)ωを供給して、その乗算器KC1,KC2〜KCN+1の係数を設定する。
遅延時間制御部22は、各チャンネルの信号処理部A1〜Apに設けられている遅延部D1〜Dp,E1〜Epの各遅延時間τ11〜τ1p,τ21〜τ2pを設定するための遅延時間データd1〜dp,e1〜epを生成する。
つまり、図4に示されている本実施例の遅延時間制御部22も、図1に示した実施形態の遅延時間制御部22と同様に、高域畳み込み演算部B1〜Bpと低域畳み込み演算部C1〜Cpに対して指定されたフィルタ(直線位相フィルタ又は最小遅延位相フィルタ)の種類と、指定されたチャンネルに応じて、上述の〈1〉〜〈4〉に列記した補正時間算出処理等を行うことにより、補正時間等を調整して、遅延部D1〜Dp,E1〜Epの各遅延時間τ11〜τ1p,τ21〜τ2pを設定するための遅延時間データd1〜dp,e1〜epを生成する。
次に、図6を参照して操作部30の構成及び機能を説明する。
図6(a)に示すように、操作部30には、制御部20によって制御される表示部31と操作パネル部32が設けられており、操作パネル部32には、受聴者等が所望の目標特性を制御部20側へ入力するための複数の操作スイッチS1〜S12と、回動量に応じてスピーカの音量を調節するいわゆるボリュームスイッチS13が備えられている。
操作スイッチS1〜S12の各機能を説明すると、まず操作スイッチS1は、直線位相フィルタと最小遅延位相フィルタの一方を指定するために設けられており、受聴者等が押下操作する毎に、直線位相フィルタと最小遅延位相フィルタを交互に指定することが可能となっている。
操作スイッチS2は、チャンネルディバイダとグラフィックイコライザとタイムアラインメントの何れか1つの調整を指定するために設けられており、受聴者等が押下操作する毎に、チャンネルディバイダとグラフィックイコライザとタイムアラインメントの指定を順繰りに切替えることが可能となっている。
操作スイッチS3は、受聴者等が目標特性として指定した高周波帯域BHと低周波帯域BLにおける各カットオフスロープ、すなわち高周波帯域BHの高域カットオフ周波数からのカットオフスロープと低域カットオフ周波数からのカットオフスロープと、低周波帯域BLの高域カットオフ周波数からのカットオフスロープと低域カットオフ周波数からのカットオフスロープとを指定するために設けられており、受聴者が押下操作する毎に、各カットオフスロープの指定を切替えることが可能となっている。
操作スイッチS4は、メモリキーと呼ばれ、全チャンネルの信号処理部A1〜Apに備えられている高域畳み込み演算部B1〜Bp及び低域畳み込み演算部C1〜Cpと、遅延部D1〜Dp,E1〜Epに設定されている現在の特性を上述した履歴記憶領域MEMBに記憶させるために設けられている。
そして、受聴者等が予め決められた時間以上連続して操作スイッチS4を押下操作すると、上述の現在の特性を履歴記憶領域MEMBに更新記憶させることができ、また、短時間で押下操作(いわゆるワンタッチ操作)すると、目標特性決定部23とフーリエ逆変換演算部21cと窓関数演算部12b及びインパルス応答データ出力部21aに指示して、履歴記憶領域MEMBメモリに既に記憶されている特性のデータに基づいて、高域畳み込み演算部B1〜Bp及び低域畳み込み演算部C1〜Cpと遅延部D1〜Dp,E1〜Epの特性を再設定させることが可能となっている。
操作スイッチS5も操作スイッチS4と同じいわゆるメモリキーであり、これら2つの操作スイッチS4とS5が設けられていることで、2つの特性を履歴記憶領域MEMBに記憶させ且つ再設定を行うことが可能となっている。
操作スイッチS6は、チャンネルディバイダとグラフィックイコライザとタイムアラインメントの調整入力の開始と終了を行うためと、入力した目標特性を確定するために設けられている。そして、受聴者等が操作スイッチS6を所定時間以上継続して1回押下操作すると、チャンネルディバイダとグラフィックイコライザとタイムアラインメントの調整入力の開始となり、また、チャンネルディバイダ又はグラフィックイコライザ若しくはタイムアラインメントの調整入力中に、操作スイッチS6を所定タイミングで2回押下操作すると、それらの調整入力のモードを終了させることができる。また、受聴者等が所望の目標特性を入力した後操作スイッチS6を短時間で1回押下操作(いわゆるワンタッチ操作)すると、その目標特性を確定して目標特性決定部23へ供給することが可能となっている。
操作スイチS7は、受聴者等が調整しようとする高周波帯域BHと低周波帯域BLを切替え指定するために設けられている。受聴者等が操作スイッチS7を押下操作する毎に、交互に高周波帯域BHと低周波帯域BLの切替え指定することが可能となっている。
操作スイッチS8は、受聴者等が調整しようとしているチャンネルを指定するために設けられている。そして、受聴者等が操作スイッチS8を押下操作する毎に、上述の第1〜第pチャンネルの指定を切り替えることが可能となっている。
操作スイッチS9とS10は、受聴者等がグラフィックイコライザの調整を行う際、可聴周波数帯域の範囲内において1/3octずつの狭帯域を切替え指定するために設けられている。そして、受聴者等が操作スイッチS9を押下操作する毎に、可聴周波数帯域内の低い周波数側から高い周波数側へと狭帯域を変化させさせ、操作スイッチS10を押下操作する毎に、可聴周波数帯域内の高い周波数側から低い周波数側へと狭帯域を変化させて切替え指定することが可能となっている。
操作スイッチS11はダウン(down)キー、操作スイッチS12はアップ(up)キーと呼ばれており、受聴者等が周波数分割(チャンネルディバイダ)とグラフィックイコライザ及びタイムアラインメントの調整を行う際に、具体的な目標特性を入力するために設けられている。詳細には後述の動作説明において述べるが、受聴者等が操作スイッチS11,S12を適宜操作することにより、高周波帯域BHと低周波帯域BLの各帯域幅を細かく指定する等の入力操作を行うことができる。
次に、本実施例の音響特性調整装置10の動作を図6と図7のフローチャートを参照して説明する。なお、実際に受聴者等が各操作スイッチS1〜S12を操作した場合の動作について説明する。
受聴者等が操作スイッチS6を所定時間押下操作すると、制御部20が目標特性を入力するための動作モードとなり、引き続き受聴者等が各操作スイッチS1〜S12を操作するのに応じて、制御部20が以下の動作を行う。
まず、受聴者等が操作スイッチS2を押し続けると、制御部20の指示に従って表示部31が、図6(b)に示すチャンネルディバイダの調整入力モード表示と、図6(c)に示すグラフィックイコライザの調整入力モード表示と、図6(d)に示すタイムアラインメントの調整入力モード表示とを所定時間毎に順次切り替えて表示する。
ここで、受聴者等が図6(b)に示す表示が行われている間に操作スイッチS2を放すと、制御部20の制御下で図7(a)に示すチャンネルディバイダの調整入力モードが開始され、図6(c)に示す表示が行われている間に操作スイッチS2を放すと、制御部20の制御下で図7(b)に示すグラフィックイコライザの調整入力モードが開始され、また、図6(d)に示す表示が行われている間に操作スイッチS2を放すと、制御部20の制御下で図7(c)に示すタイムアラインメントの調整入力モードが開始される。
〔チャンネルディバイダの調整入力モードの動作〕
チャンネルディバイダの調整入力モードが開始されると、ステップST10において、図6(b)に示したように高周波帯域BHと低周波帯域BLを示す曲線が表示される。
次に、ステップST11において、受聴者等が操作スイッチS11又はS12を適宜操作し、所望のチャンネルを設定して操作スイッチS6をワンタッチ操作すると、目標特性決定部23が指定されたチャンネルを示すデータを入力する。
上述のチャンネル指定を行った後、受聴者等が操作スイッチS7を適宜押下操作すると、高周波帯域BHの曲線と低周波帯域BLの曲線が交互に点滅表示される。そして、受聴者等が高周波帯域BHのゲイン特性を示す標準の曲線が点滅表示されているときに操作スイッチS7を放すと高周波帯域BHの調整開始、低周波帯域BLのゲイン特性を示す標準の曲線が点滅表示されているときに操作スイッチS7を放すと低周波帯域BLの調整開始となる。
高周波帯域BHを選択した後、受聴者等が操作スイッチS3を操作すると、操作毎に高周波帯域BHの低域カットオフ周波数と高域カットオフ周波数の指定が交互に切り替わる。そして、高域カットオフ周波数を選択して操作スイッチS11,S12を適宜操作することによって高域カットオフ周波数を増減調整した後、操作スイッチS6をワンタッチ操作すると、目標特性決定部23がその高周波帯域BHの高域カットオフ周波数のデータを入力し、また、低域カットオフ周波数を選択して操作スイッチS11,S12を適宜操作することによって低域カットオフ周波数を増減調整した後、操作スイッチS6をワンタッチ操作すると、目標特性決定部23がその高周波帯域BHの低域カットオフ周波数のデータを入力する。
また、低周波帯域BLを選択した後、受聴者等が操作スイッチS3を操作すると、操作毎に低周波帯域BLの低域カットオフ周波数と高域カットオフ周波数の指定が交互に切り替わる。そして、高域カットオフ周波数を選択して操作スイッチS11,S12を適宜操作することによって高域カットオフ周波数を増減調整した後、操作スイッチS6をワンタッチ操作すると、目標特性決定部23がその低周波帯域BLの高域カットオフ周波数のデータを入力し、また、低域カットオフ周波数を選択して操作スイッチS11,S12を適宜操作することによって低域カットオフ周波数を増減調整した後、操作スイッチS6をワンタッチ操作すると、目標特性決定部23がその低周波帯域BLの低域カットオフ周波数のデータを入力する。
このように、受聴者等が操作スイッチS7とS11,S12及びS6を適宜操作すると、高周波帯域BHと低周波帯域BLの夫々の高域カットオフ周波数と低域カットオフ周波数を指定し、更に各帯域BH,BLの帯域幅を指定することができる。
次に、制御部20がステップST12の処理に移行する。ここで受聴者等が操作スイッチS7を適宜操作して高周波帯域BHを選択した後、操作スイッチS1を操作することによって直線位相フィルタ又は最小遅延位相フィルタを選択指定して操作スイッチS6をワンタッチ操作すると、目標特性決定部23が、高周波帯域BHのフィルタ(直線位相フィルタ又は最小遅延位相フィルタ)の種類を示すデータを入力する。また、受聴者等が操作スイッチS7を適宜操作して低周波帯域BLを選択した後、操作スイッチS1を操作することによって直線位相フィルタ又は最小遅延位相フィルタを選択指定して操作スイッチS6をワンタッチ操作すると、目標特性決定部23が、低周波帯域BLのフィルタ(直線位相フィルタ又は最小遅延位相フィルタ)の種類を示すデータを入力する。
次に、制御部20がステップST13の処理に移行する。ここで受聴者等が操作スイッチS3を適宜操作すると、高周波帯域BHと低周波帯域BLの各カットオフスロープを示す曲線q1〜q4が順繰りに点線表示に切り替わる。
カットオフスロープの曲線q1が点線表示されているときに、受聴者等が操作スイッチS3を放して操作スイッチS11,S12を適宜に操作すると、表示される曲線q1の傾きが変化し、曲線q1の傾きによってそのカットオフスロープの減衰量をスルー(0dB)から最大−72dB/octの範囲内で−6dB/oct単位で増減変化させることができる。そして、受聴者等が操作スイッチS6をワンタッチ操作して確定すると、目標特性決定部23が、その曲線q1の傾きに相当するカットオフスロープの減数量を示すデータを入力する。
また、同様に受聴者等が操作スイッチS3とS11,S12及びS6を操作して、残余の曲線q2〜q4の傾きを変化させて確定すると、目標特性決定部23が、それらの曲線q2〜q4の傾きに相当するカットオフスロープの減数量を示すデータを入力する。
次に、受聴者等が操作スイッチS6を2回操作すると、制御部20はチャンネルディバイダの調整入力モードを終了する。
そして引き続き、目標特性決定部23が、今まで入力したチャンネルディバイダに関する目標特性のデータに基づいて、上述したように標準データ記憶領域MEMA又は履歴記憶領域MEMBに記憶されている周波数スペクトルのデータを編集すると共に、新規に作成した周波数スペクトルのデータBH(f),BL(f)を逆フーリエ変換演算部21cへ供給すると共に標準データ記憶領域MEMAに記憶させ、更に逆フーリエ変換演算部21cと窓関数演算部12bが、データBH(f),BL(f)から新規なインパルス応答データ(hBH)ω(hBL)ωを生成し、インパルス応答データ出力部21aがそのインパルス応答データ(hBH)ω(hBL)ωを、指定されたチャンネルの高域畳み込み演算部と低域畳み込み演算部へ供給することで、そのチャンネルの音響特性を更新する。
更に、時間遅延制御部22が、上述のステップST12において指定された高域畳み込み演算部と低域畳み込み演算部のフィルタ(直線位相フィルタ又は最小遅延位相フィルタ)の種類に基づいて、上述の実施形態で説明した〈1〉〜〈4〉と同様の処理を選択的に行うことで、新規の補正時間のデータを生成し、指定されたチャンネルの信号処理部内に設けられている遅延部に設定されている遅延時間のうちの補正時間を上述の新規の補正時間のデータによって調整することで、高域畳み込み演算部と低域畳み込み演算部から出力される出力信号の位相を合わせる。
例えば、指定されたチャンネルが第1チャンネルで、遅延部D1に設定されている遅延時間τ11が時間(T11+ΔT11)の場合には、遅延時間制御部22は、そのアラインメント時間T11と、上述の演算した新規の補正時間とを加算した遅延時間τ11によって遅延部D1を調整する。
〔グラフィックイコライザの調整入力モードの動作〕
上述したように受聴者等が操作スイッチS6を所定時間押下操作することによって、制御部20を目標特性の入力動作モードに設定した後、操作スイッチS2を適宜操作すると、図7(b)に示すグラフィックイコライザの調整入力モードが開始される。
まず、ステップST20において、図6(c)に示したように、1/3octずつの狭帯域毎の標準ゲインを示す棒グラフ状の周波数対ゲイン特性が表示される。
次に、制御部20がステップST21の処理に移行する。ここで、受聴者等が操作スイッチS9,S10を適宜操作すると、操作スイッチS9が操作される毎に低い周波数から高い周波数へと上述の棒グラフが点滅表示に切り替わり、また、操作スイッチS10が押下操作される毎に高い周波数から低い周波数へと上述の棒グラフが点滅表示に切り替わる。
そして、受聴者等が操作スイッチS9,S10の操作を停止した後、操作スイッチS11,S12を適宜操作すると、表示部31が点滅表示している棒グラフの長さを増減させて表示し、次に受聴者等が操作スイッチS6をワンタッチ操作すると、目標特性決定部23がその棒グラフの長さに比例したブースト量又はカット量を示すデータを入力する。
また、同様に受聴者等が操作スイッチS9,S10とS11,S12を繰り返し操作すると、所望の残りの棒グラフも点滅表示に切替えて長さを増減させることができ、受聴者等が操作スイッチS6をワンタッチ操作すると、目標特性決定部23が残りの棒グラフの長さに比例したブースト量又はカット量を示すデータを入力する。
次に、受聴者等が操作スイッチS6を2回操作すると、目標特性決定部23が、受聴者等が入力しなかった残りの狭帯域のブースト量又はカット量を0dBとするデータを入力した後、制御部20がグラフィックイコライザの調整入力モードを終了する。
そして引き続き、目標特性決定部23が、受聴者等の入力した狭帯域のブースト量又はカット量を示すデータと残りの狭帯域のデータ(0dBとしたデータ)、すなわち可聴周波数帯域全体におけるブースト量又はカット量を示すデータに基づいて、上述したように標準データ記憶領域MEMA又は履歴記憶領域MEMBに記憶されている周波数スペクトルのデータを編集すると共に、新規に作成した周波数スペクトルのデータBH(f),BL(f)を逆フーリエ変換演算部21cへ供給すると共に標準データ記憶領域MEMAに記憶させ、更に逆フーリエ変換演算部21cと窓関数演算部12bが、データBH(f),BL(f)から新規なインパルス応答データ(hBH)ω(hBL)ωを生成し、インパルス応答データ出力部21aがそのインパルス応答データ(hBH)ω(hBL)ωを、指定されたチャンネルの高域畳み込み演算部と低域畳み込み演算部へ供給することで、そのチャンネルの音響特性を更新する。
〔タイムアラインメントの調整入力モードの動作〕
上述したように受聴者等が操作スイッチS6を所定時間押下操作することによって、制御部20を目標特性の入力動作モードに設定した後、操作スイッチS2を適宜操作すると、図7(c)に示すタイムアラインメントの調整入力モードが開始される。
まず、ステップST30において、図6(d)に示したように、各チャンネル毎のスピーカから受聴位置等までの各距離を入力するための表が表示される。
各チャンネルの「Hi」の欄は、各遅延部D1〜Dpの経路に接続されているスピーカから受聴位置等までの各距離、各チャンネルの「LOW」の欄は、各遅延部E1〜Epの経路に接続されているスピーカから受聴位置等までの各距離を入力するための欄となっている。
次に、制御部20がステップST31の処理に移行する。ここで、受聴者等が操作スイッチS7を適宜に操作すると、同図(c)中に「****cm」で示されている各欄の色が上側から下側へと順番に反転し、また受聴者等が操作スイッチS8を適宜に操作すると、上述の「****cm」で示されている各欄の色が下側から上側へと順番に反転する。例えば、「****cm」の文字色が黒から灰色に反転する。
そして、受聴者等が所望の欄を反転表示に切り替えさせた後、操作スイッチS11又はS12を適宜の時間押し続けると、反転表示となっている欄に数値が増減表示され、次に受聴者等が操作スイッチS6をワンタッチ操作すると、目標特性決定部23が、反転表示となっている欄の数値をスピーカから受聴位置等までの距離(単位:cm)を示すデータとして入力する。
また、同様に受聴者が操作スイッチS7,S8とS11,S12を操作すると、残りの欄も反転表示に切り替えさせて、スピーカから受聴位置等までの距離を示す数値を入力することができ、更に操作スイッチS6をワンタッチ操作することで、スピーカから受聴位置等までの距離を示すデータを目標特性決定部23に入力させることができる。
そして、受聴者等が操作スイッチS6を2回操作すると、制御部20がタイムアラインメントの調整入力モードを終了する。
そして引き続き、遅延時間制御部22が、目標特性決定部23が入力した上述の距離のデータに基づいて、各チャンネルにおける新規のアラインメント時間を演算し、指定されたチャンネルの遅延部に設定されている補正時間を除いたアラインメント時間を、上述の新規のアラインメント時間によって調整することで、高域畳み込み演算部と低域畳み込み演算部から出力される出力信号の位相を合わせる。
例えば、指定されたチャンネルが第1チャンネルで、遅延部D1に設定されている遅延時間τ11が時間(T11+ΔT11)の場合には、遅延時間制御部22は、上述の演算した新規のアラインメント時間と補正時間ΔT11とを加算した遅延時間τ11によって遅延部D1を調整する。
以上説明したように本実施例の音響特性調整装置10は、チャンネルディバイダとグラフィックイコライザとタイムアラインメントの調整入力を行うための操作部30を備え、受聴者等が操作部30を操作すると夫々の調整入力を別々に且つ精密に行うことができるため、受聴者等に対して高い満足度や自由度を提供すると共に、優れた操作性を提供することができる。
また、受聴者等がチャンネルディバイダとグラフィックイコライザとタイムアラインメントの調整入力を行うと、入力された目標特性のデータに基づいて制御部20が各チャンネルの信号処理部A1〜Apの特性、すなわちゲイン特性、位相特性、遅延特性を自動的に調整するので、受聴者に対し優れた操作性等を提供することができる。
また、映像と音とを再生するAV機器等に本実施例の音響特性調整装置10を適用した場合、受聴者等は信号処理部A1〜Ap中の高域畳み込み演算部B1〜Bpと低域畳み込み演算部C1〜Cpを共に最小遅延位相フィルタに設定することによって、高域畳み込み演算部B1〜Bpと低域畳み込み演算部C1〜Cpにおける畳み込み演算の際の時間遅延を無くすことができる。このため、ディスプレイ等に表示される映像に対して整合性を有した音を受聴位置(或いは視聴位置)において生じさせる、すなわち映像と整合性を有した音響特性を有した音を受聴位置(或いは視聴位置)において生じさせることができる。
また、インパルス応答データh1n〜hpnの各サンプル数(N+1)より、インパルス応答データh1m〜hpmの各サンプル数(M+1)を少なくし、これらの各インパルス応答データh1m〜hpm,h1n〜hpnに基づいて各高域畳み込み演算部B1〜Bpと各低域畳み込み演算部C1〜Cpにおいて畳み込み演算を行うようにしたので、各畳み込み演算を行うのに要するインパルス応答データh1m〜hpm,h1n〜hpnの総データ量を低減すると共に、信号処理部A1〜Apの小型化等を実現することができる。
なお、図6を参照して説明した操作部30の構成及び操作方法は一具体例であり、図7のフローチャートを参照して説明した動作と同様の機能が得られる構成及び操作方法であれば、操作部30を他の構成としてもよい。
また、本実施例では、図4に示したように記憶部40に周波数スペクトルのデータを記憶させておき、制御部20内で、そのデータを目標特性に合わせるべく編集してフーリエ逆変換することにより、各高域畳み込み演算部と低域畳み込み演算部に供給するためのインパルス応答データを演算することとしているが、周波数スペクトルのデータに変えて、予め各高域畳み込み演算部と低域畳み込み演算部に供給するためのインパルス応答データを記憶部40に記憶させるようにしてもよい。かかる構成によると、記憶部40の記憶容量が増加することになるが、フーリエ逆変換や窓関数の演算を行うための処理を軽減することができ、また、フーリエ逆変換演算部21cと窓関数演算部21bを省略することが可能である。