JP2005220074A - 脂肪細胞分化抑制剤 - Google Patents
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Abstract
【課題】 副作用の恐れがない、効果的で安全性の高い前駆脂肪細胞分化抑制剤、抗肥満剤、蜂巣炎改善剤、およびこれらを含有する食品、医薬および化粧料を提供する。
【解決手段】 化学式(I)の環状ペプチドを有効成分とする前駆脂肪細胞の分化抑制剤、脂肪蓄積阻害剤、抗肥満剤、及びこれらを含有する食品、医薬、化粧料。本剤は、前駆脂肪細胞の分化を強力に抑制することから、脂肪の蓄積や肥満の抑制、改善に寄与し得ると共に、局所的な脂肪細胞の肥大に起因する蜂巣炎の予防、治療に有効である。
【選択図】なし
【解決手段】 化学式(I)の環状ペプチドを有効成分とする前駆脂肪細胞の分化抑制剤、脂肪蓄積阻害剤、抗肥満剤、及びこれらを含有する食品、医薬、化粧料。本剤は、前駆脂肪細胞の分化を強力に抑制することから、脂肪の蓄積や肥満の抑制、改善に寄与し得ると共に、局所的な脂肪細胞の肥大に起因する蜂巣炎の予防、治療に有効である。
【選択図】なし
Description
本発明は前駆脂肪細胞の分化抑制剤に関し、更に詳しくは成熟脂肪細胞数を抑制し全身及び/又は局所の過剰な脂肪の蓄積を防ぐことにより肥満を解消し防止する食品、医薬または化粧料に関する。
従来、からだの脂肪組織及び種々の臓器における異常な脂肪沈着による肥満、あるいは高脂血症は、高血圧、動脈硬化、糖尿病などの各種生活習慣病の発症に密接に関与していると考えられている。
また肥満は体の均整を失わせ、外観を著しく損なうため、美容の分野においても大きな問題となっている。皮下脂肪組織では局所的な脂肪細胞の肥大化により皮下結合組織の膨潤がおこり、オレンジ果皮にたとえられる皮膚表面の凸凹、すなわち蜂巣炎を引き起こす。
肥満は、体質的因子、食餌性因子、精神的因子、中枢性因子、代謝性因子、運動不足などが要因となり、結果的に摂取カロリーが消費カロリーを上回り、脂肪が蓄積して起こると言われている。肥満では、生体内における個々の脂肪細胞の蓄積している脂肪、すなわちトリグリセリド量が増加し細胞が肥大化している。また近年、成人期以降でも脂肪細胞数が増加することが明らかとなり、前駆脂肪細胞から成熟脂肪細胞への分化を抑制し、成熟脂肪細胞数を減少させることや、成熟脂肪細胞の脂肪蓄積を抑制することにより肥満の進行を抑え、肥満を改善させることが期待される。
脂肪細胞数の増加を抑制し抗肥満効果を示す食品または医薬または化粧料としてはあまり多くはなく、例えば前駆脂肪細胞分化抑制ペプチドを有効成分とするもの(特許文献1参照)や、活性化乳清を有効成分とするもの(特許文献2参照)がある。またω-3系高度不飽和脂肪酸を有効成分として皮膚外用剤に適用させる(特許文献3参照)試みがある。また、アルテレノールが脂肪細胞に分布するβ3アドレナリン受容体に作用し、プロテインキナーゼA(PKA)活性化、ホルモン感受性リパーゼ(HSL)の活性化を引き起こして油滴として蓄積された中性脂肪の分解を促進することが報告されている(非特許文献1参照)。しかしながら、未だ十分な効果がなく、新規な前駆脂肪細胞分化抑制剤が望まれていた。
本発明の化学式(I)の環状ペプチドに関しては、その一種であるテルナチン:cyclo[-D-Ile1-(N-Me)-L-Ala2-(N-Me)-L-Leu3-L-Leu4-(N-Me)-L-Ala5-(N-Me)-D-Ala6-β-OH-D-Leu7-]の物性やX線結晶構造解析が報告されているが(特許文献4、非特許文献2、3参照)、本発明の化学式(I)の環状ペプチドについて、前駆脂肪細胞の分化を抑制する効果は知られていない。
本研究者は脂肪細胞数の増加を抑制し、抗肥満効果を示す食品または医薬または化粧料について鋭意研究を続けており、本出願前に、カワラタケ、カノコソウ、ウワマサマナ、パスチャカ、パイコ、アグラヤホ、ガジュツ、カミツレ、クマザサ、グアバ葉、カッファライム、ジュニパーベリー、ナツメグ、バジル、メース、レモングラス、ローズマリー、柿の葉、ギムネマシルベスタ、青銭柳、レモンバーベナから成るキノコ又は植物から抽出した成分を有効成分とする前駆脂肪細胞分化抑制剤を特願2002−241369として特許出願した。本発明は、さらに研究開発を続けた結果、新たに脂肪細胞分化抑制剤を開発したものである。
特開平6-293796号公報
特開2000-37738号公報
特開平11-130656号公報
露国特許発明第N517198号明細書
Furutani, Y.; Karasawa, T. 蛋白質 核酸 酵素 2000, 45, 935-940.
Langs, D.A., 「Acta Crystallographica,Section D」, 1993, 49, 158-167.
Miller, R.; Galitsky, N. M.; Duax, W. L.; Langs, D. A. Pletnev, V. Z.: Ivanov, V. T. 「International Journal of Peptide & Protein Reserch」 1993, 42, 539-549.
本発明の課題は、副作用の恐れがない、効果的で安全性の高い前駆脂肪細胞分化抑制剤、脂肪細胞の脂肪蓄積阻害剤、抗肥満剤、蜂巣炎改善剤、およびこれらを含有する食品、医薬および化粧料を提供することにある。
本発明者は、カワラタケから抽出した化学式(I)の環状ペプチド(以下、本発明のペプチドとも呼ぶ)に強い前駆脂肪細胞分化抑制活性を見出し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明は、
1.化学式(I)の環状ペプチドを有効成分とする前駆脂肪細胞の分化抑制剤。
2.化学式(I)の環状ペプチドを有効成分とする脂肪細胞の脂肪蓄積阻害剤。
3.化学式(I)の環状ペプチドを有効成分とする抗肥満剤。
4.化学式(I)の環状ペプチドを有効成分とする蜂巣炎改善剤。
5.化学式(I)の環状ペプチドがキノコ又は植物由来であることを特徴とする請求項1〜4いずれかの剤。
6.化学式(I)の環状ペプチドがカワラタケ由来であることを特徴とする請求項1〜4いずれかの剤。
7.請求項1〜6のいずれかの剤を含有する食品。
8.請求項1〜6のいずれかの剤を含有する医薬。
9.請求項1〜6のいずれかの剤を含有する化粧料。
に関する。
1.化学式(I)の環状ペプチドを有効成分とする前駆脂肪細胞の分化抑制剤。
2.化学式(I)の環状ペプチドを有効成分とする脂肪細胞の脂肪蓄積阻害剤。
3.化学式(I)の環状ペプチドを有効成分とする抗肥満剤。
4.化学式(I)の環状ペプチドを有効成分とする蜂巣炎改善剤。
5.化学式(I)の環状ペプチドがキノコ又は植物由来であることを特徴とする請求項1〜4いずれかの剤。
6.化学式(I)の環状ペプチドがカワラタケ由来であることを特徴とする請求項1〜4いずれかの剤。
7.請求項1〜6のいずれかの剤を含有する食品。
8.請求項1〜6のいずれかの剤を含有する医薬。
9.請求項1〜6のいずれかの剤を含有する化粧料。
に関する。
本発明の環状ペプチドは、前駆脂肪細胞の分化を強力に抑制することから、脂肪の蓄積や肥満の抑制、改善に寄与し得ると共に、局所的な脂肪細胞の肥大に起因する蜂巣炎の予防、治療に有効である。
本発明の環状ペプチドはカワラタケ(Coriolus versicolor(L.:Fr.)Quel)やその他本発明の環状ペプチドを含有するキノコ又は植物から抽出し、精製して得ることができる。
カワラタケ(Coriolus versicolor(L.:Fr.)Quel)は担子菌類、サルノコシカケ科のキノコのことであり、亜熱帯から亜寒帯にかけて広く分布する。この菌の培養菌糸から分離した複合多糖類は抗腫瘍作用のあることがわかり、臨床的に応用されている。本発明で使用するカワラタケ(Coriolus versicolor(L.:Fr.)Quel)の産地は特に限定されない。本発明の環状ペプチドの一種に、既知の物質であるテルナチンがあり、絶対構造が得られているが、本発明の環状ペプチドは7個のアミノ酸[-Ile-(NMe)Ala-(NMe)Leu-Leu-(NMe)Ala-(NMe)Ala-β-OH-Leu-]からなる平面構造であればよく、絶対構造によって限定されるものではない。
本発明の環状ペプチドを含有するキノコ、植物又はその部位は、それ自身を乾燥させた乾燥物、その粉砕物、それら自身を圧搾抽出することにより得られる搾汁、水あるいはアルコール、エーテル、アセトンなどの有機溶媒による粗抽出物、および粗抽出物を分配、カラムクロマトなどの各種クロマトグラフィーなどで段階的に精製して得られた抽出物画分など、全てを利用することができる。これらは単独で用いても良く、また2種以上混合して用いても良い。
例えば、カワラタケ(Coriolus versicolor(L.:Fr.)Quel)の乾燥物1Kgに99.5%エタノール3Lを加え、室温で一晩浸漬することにより得た抽出液をそのまま前駆脂肪細胞の分化抑制剤及びそれらを含有する食品、医薬あるいは化粧料として使用しても良いし、各種クロマトグラフィーを組み合わせて、精製したものを使用しても良い。
本発明の環状ペプチドが、前駆脂肪細胞の分化抑制活性を有することは、従来から全く知られておらず、本発明により得られた新知見である。
本発明の環状ペプチドは、卓越した前駆脂肪細胞の分化抑制活性を有しており、脂肪蓄積阻害剤、抗肥満剤、蜂巣炎改善剤、及びこれらを含有する食品、医薬及び化粧料として使用可能である。
本発明の環状ペプチドを、前駆脂肪細胞の分化抑制剤、脂肪蓄積阻害剤、抗肥満剤、蜂巣炎改善剤、及びこれらを含有する食品、医薬及び化粧料として製造することができる。
医薬としての適用方法は、経口投与又は非経口投与のいずれも採用することができる。投与に際しては、有効成分を経口投与、直腸内投与、注射などの投与方法に適した固体又は液体の医薬用無毒性担体と混合して、慣用の医薬製剤の形態で投与することができる。このような製剤としては、例えば、錠剤、顆粒剤、散剤、カプセル剤などの固形剤、溶液剤、懸濁剤、乳剤などの液剤、凍結乾燥製剤などが挙げられ、これらの製剤は製剤上の常套手段により調製することができる。上記の医薬用無毒性担体としては、例えば、グルコース、乳糖、ショ糖、澱粉、マンニトール、デキストリン、脂肪酸グリセリド、ポリエチレングルコール、ヒドロキシエチルデンプン、エチレングリコール、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、アミノ酸、ゼラチン、アルブミン、水、生理食塩水などが挙げられる。また、必要に応じて、安定化剤、湿潤剤、乳化剤、結合剤、等張化剤などの慣用の添加剤を適宜添加することもできる。
食品としては、そのまま、又は種々の栄養成分を加えて、若しくは飲食品中に含有せしめて、蜂巣炎あるいは肥満の治療及び予防に有用な保健用食品又は食品素材として食される。例えば、上述した適当な助剤を添加した後、慣用の手段を用いて、食用に適した形態、例えば、顆粒状、粒状、錠剤、カプセル、ペーストなどに成形して食用に供してもよく、また種々の食品、例えば、ハム、ソーセージなどの食肉加工食品、かまぼこ、ちくわなどの水産加工食品、パン、菓子、バター、粉乳、発酵乳製品に添加して使用したり、水、果汁、牛乳、清涼飲料などの飲料に添加して使用してもよい。
有効投与量は、患者の年齢、体重、症状、患者の程度、投与経路、投与スケジュール、製剤形態、素材の阻害活性の強さなどにより、適宜選択・決定されるが、例えば、経口投与の場合、1日当たり本発明の環状ペプチド0.001〜1000mg/kg体重程度が好ましく、1日に数回に分けて投与してもよい。カワラタケ(Coriolus versicolor(L.:Fr.)Quel)の熱水抽出物の場合、1日当たり1〜1000mg/kg体重程度が好ましい。
また、化粧料または化粧料素材として使用する場合、本発明の環状ペプチドを小麦胚芽油あるいはオリーブ油に添加して前駆脂肪細胞分化抑制剤含有組成物とし、これを化粧料素材として使用することができる。添加量は、特に限定されるものではないが、一例としてあげると、小麦胚芽油あるいはオリーブ油の重量に対して0.1質量%以上60質量%以下、好ましくは、0.5質量%以上50質量%以下が適当である。
また、直接、化粧料成分として使用し、前駆脂肪細胞分化作用を有する化粧料を製造することができる。化粧料としては特に限定されるものではないが、機能面からは、例えばフェイス又はボディ用乳液、化粧液、クリーム、ローション、エッセンス、パック、シートなどが好ましい。
このような化粧料は、常法に従って製造することができる。化粧料における添加量は、特に限定されるものではないが、一例としてあげると、化粧料全重量の0.01質量%以上20質量%以下程度が適当である。
脂肪蓄積阻害活性物質の分離岩手県で採取されたカワラタケCoriolus versicolorを用い、マウス胎仔由来白色脂肪細胞(前駆脂肪細胞)3T3-L1に対する脂肪蓄積阻害活性を指標にして分離を行った。
カワラタケCoriolus versicolor 5 Kg(乾重量)を粉砕し、含水エタノールに30日間浸出させた (図1)。吸引濾過により得られた濾液を減圧濃縮し、酢酸エチル/水で分配した。得られた酢酸エチル層にマウス胎仔由来白色脂肪細胞3T3-L1に対する脂肪蓄積阻害活性が見られた (脂肪蓄積率 18%)。酢酸エチル層を90%メタノール/ヘキサンで分配したところ、90%メタノール層に脂肪蓄積阻害活性が見られた(脂肪蓄積率 15%)。
得られた90%メタノール層21.64 gを4回のODSシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより6画分 (Fr.1〜6) に分離した (図2)。得られた画分のうち、Fr.4に脂肪蓄積阻害活性が見られた (脂肪蓄積率 6%) のに対し、細胞毒性はFr.5〜6に見られ、大部分の毒性成分を除去することができた。さらに得られたFr.4をLH-20ゲルを用いた4回のゲル濾過カラムクロマトグラフィーにより5画分 (Fr.4-1〜5) に分離し、得られたFr.4-2 (脂肪蓄積率 1.3%) を再びLH-20ゲルを用いた2回のゲル濾過カラムクロマトグラフィーにより4画分 (Fr.4-2-1〜4) に分離した。得られたFr.4-2-3(脂肪蓄積率 4.7%) を11回の逆相高速液体クロマトグラフィーにより6画分 (Fr.4-2-3-1〜6) に分離すると、Fr.4-2-3-4として、化学式(I)の環状ペプチド11.5 mg(収率 2.3×10-4%)を無色無定形固体として単離することに成功した。
前駆脂肪細胞の脂肪蓄積阻害活性試験法マウス胎仔由来白色脂肪細胞(前駆脂肪細胞)3T3-L1細胞を用いた脂肪蓄積阻害活性試験法の概略を図3に示した。まず、3T3-L1細胞を増殖用培地で培養する。4〜7日目にコンフルエントに達するので、試料を添加した分化誘導培地(含インスリン)に交換する。細胞内に球状の微細な脂肪滴が出現し、11〜14日目に十分に分化した脂肪細胞となる。そこで、脂肪蓄積率を算出するために0.2%Triton X溶液を添加して室温放置30分間、超音波1分間かけた後に、トリグリセライド E-テストワコーを予め添加してある96穴プレートに添加して30分間培養し、630nmの吸光度を測定した。一方、細胞生存率を算出するために、先の十分に分化した脂肪細胞にCellCounting Kit-8を添加し、4時間培養後450nmの吸光度を測定した。
この前駆脂肪細胞は分化後、脂肪を蓄積する性質を有する。本試験は、インスリンにより 3T3-L1 前駆脂肪細胞の分化誘導を行うが、同時に添加した試料により前駆脂肪細胞の分化を阻害、あるいは分化後の代謝を促進し、脂肪蓄積を抑制する効果が見られるか否かを検討した。なお、本試験の評価として脂肪蓄積率と細胞生存率の2 つのパラメーターを用いることとした。脂肪蓄積率は次式で算出した。
なお、コントロールはインスリンにより 3T3-L1 前駆脂肪細胞の分化誘導を行った分化細胞をさす。本試験において、細胞毒性を有する試料を用いた場合、細胞は死滅あるいは増殖を阻害されるため、一見脂肪蓄積率が低い良好な結果に見えてしまう恐れがあるが、このとき細胞生存率も低くなってしまう。そこで、この細胞毒性の有無を判断できるように、本試験には細胞生存率による評価を導入し、また随時、顕微鏡で脂肪の蓄積の様子を観察した。細胞毒性が弱く、かつ脂肪蓄積を強く阻害する生物活性物質を効率良くアッセイできるように工夫した。
実施例1で得られた環状ペプチドの構造解析形状 無色無定形固体分子式 C37H67N7O8[α]20 D -23.5°(c 0.13, EtOH)MS (FAB) m/z760(M+Na)+HRMS(FAB) 760.4945([M+Na]、Δ-0.4mmu). 測定値:760.4945 (Δ-0.4mmu) C37H67N7NaO8 (M+Na)+としての計算値:760.4949. 実施例1で得られた環状ペプチドの分子式は、高分解能質量分析より、C37H67N7O8であることが判明した。
表1、2に環状ペプチドの1Hおよび13C NMRスペクトルデータを示す。重ベンゼン中で測定した1H NMRスペクトル、13C NMRスペクトル、HMBCスペクトルの解析により、環状ペプチドの平面構造は [-Ile1-(N-Me)Ala2-(N-Me)Leu3-Leu4-(N-Me)Ala5-(N-Me)Ala6-β-OH-Leu7-] から成る環状ヘプタペプチドであると決定した(図4)。
実施例1で得られた環状ペプチドの絶対立体構造 既知のテルナチンはX線結晶構造解析により、その絶対立体構造を決定している(テルナチン: cyclo[-D-Ile1-(N-Me)-L-Ala2-(N-Me)-L-Leu3-L-Leu4-(N-Me)-L-Ala5-(N-Me)-D-Ala6-β-OH-D-Leu7-])。今回、実施例1で単離して平面構造を決定した環状ペプチドの比旋光度を測定した結果、測定値 [α]20 D-23.5°(c 0.13, EtOH) であった。しかし、文献値は [α]20 D39.9°(c 0.40, EtOH) であり、比旋光度の符号が逆となったため、今回単離した環状ペプチドの絶対立体構造を決定することとした。
実施例1で得られた環状ペプチドには8箇所の不斉中心が存在する。絶対立体配置を決定するために、酸加水分解反応により、7個のアミノ酸へと分解し、その立体配置を決定することとした(図5)。
このうち、NMeアミノ酸のN-Me-D,L-Leucine およびN-Me-D,L-Alanineを判別するためにそれぞれ合成した(図6)。
Boc-L-AlaおよびBoc-D-Alaを出発原料とし、Nメチル化反応 [無水ヨウ化メチル、水素化ナトリウム、無水テトラヒドロフラン]を行
いNメチル体1 , 2 へと誘導した後、Boc基を除去 [トリフルオロ酢酸、無水ジクロロメタン] することで、NMe-L-Alanine 5 およびNMe-D-Alanine 6 を得た。
いNメチル体1 , 2 へと誘導した後、Boc基を除去 [トリフルオロ酢酸、無水ジクロロメタン] することで、NMe-L-Alanine 5 およびNMe-D-Alanine 6 を得た。
次にZ-L-LeucineおよびZ-D-Leucineを出発原料とし、同様にNメチル化反応[無水ヨウ化メチル、水素化ナトリウム、無水テトラヒドロフラン]を行いNメチル体へと誘導した後、Z基を除去 [10% パラジウム/炭素、メタノール、水素雰囲気下]することで、NMe-L-Leucine 7 およびNMe-D-Leucine 8 を得た。
実施例1で得られた環状ペプチドを6N HClに溶解し、加熱還流を行った。得られた分解生成物を塩基性条件下、Marfey試薬と反応させ(図7)、逆相カラムクロマトグラフィー[Develosil ODS HG-5、アセトニトリル水溶液 (TFA 0.1%) (40%-50%、60min)、1 mL/min、UV 254nm] でMarfey試薬との反応生成物を分析した。各ピークがどのアミノ酸を示すのかを判断するため、環状ペプチドを構成するアミノ酸のうち、Leu、Ile、(N-Me)Leu、(N-Me)AlaそれぞれD体とL体を用意した。Marfey試薬と反応させ、逆相カラムクロマトグラフィー[Develosil ODS HG-5、アセトニトリル水溶液 (TFA 0.1%) (40%-50%、60min)、1 mL/min、UV 254nm] でそれぞれ分析し、実施例1で得られた環状ペプチド分解生成物と比較した。
Leu DNP-L-LeuおよびDNP-D-Leuを同様の条件で分析した。DNP-環状ペプチド分解生成物とDNP-L-Leuを当モルずつ混合したサンプルを分析した結果、DNP-L-LeuはDNP-環状ペプチド分解生成物の保持時間tR14.2 minのピークと一致した。従って、実施例1で得られた環状ペプチドを構成するLeuはL体であることが判明した。
Ile DNP-L-ILeおよびDNP-D-Ileを同様の条件で分析した。DNP-環状ペプチド分解生成物とDNP-D-Ileを当モルずつ混合したサンプルを分析した結果、DNP-D-IleはDNP-環状ペプチド分解生成物の保持時間tR 18.3 minのピークと一致した。従って、実施例1で得られた環状ペプチドを構成するIleはD体であることが判明した。
NMe-Leu DNP-NMe-L-LeuおよびDNP-NMe-D-Leuを同様の条件で分析した。DNP-環状ペプチド分解生成物とDNP-NMe-L-Leuを当モルずつ混合したサンプルを分析した結果、DNP-NMe-L-LeuはDNP-環状ペプチド分解生成物の保持時間tR15.4minのピークと一致した 。従って、実施例1で得られた環状ペプチドを構成するNMe-LeuはL体であることが判明した。
NMe-Ala DNP-NMe-L-AlaおよびDNP-NMe-D-Alaを同様の条件で分析したが、DNP-NMe-D-AlaとDNP-NMe-L-Alaとの分離がうまくいかなかった。DNP-環状ペプチド分解生成物とDNP-NMe-D,L-Alaを当モルずつ混合したサンプルを分析した結果、DNP-NMe-D,L-AlaはDNP-環状ペプチド分解生成物の保持時間tR6.4minのピークと一致した。したがって、実施例1で得られた環状ペプチドにNMe-Alaがあることを確認できた。
以上の結果より、実施例1で得られた環状ペプチドを酸加水分解し、Marfer法により酸加水分解物を分析したところ、L-Leu、D-Ile、NMe-L-Leu、NMe-Alaが構成されていることが判明した。
実施例1で得られた環状ペプチドの相対立体構造 実施例1で得られた環状ペプチドの相対立体構造は、ROESYスペクトルより推定した。Ile1のH-Cα/(NMe)Ala2のNCH 3、(NMe)Ala2のNCH 3/(NMe)Ala2のH-Cβ、(NMe)Ala2のH-Cα/(NMe)Lue3のNCH 3、(NMe)Ala2のH-Cα/(NMe)Lue3のH-Cα、(NMe)Lue3のH-Cα/Leu4のNH、Leu4のCH 3(δ1)/(NMe)Ala5のNCH 3、Leu4のH-Cα/(NMe)Ala5のNCH 3、Leu4のCH 3(δ2)/(NMe)Ala5のNCH 3、(NMe)Ala5のNCH 3/(NMe)Ala5のH-Cβ、(NMe)Ala6のNCH 3/(NMe)Ala6のH-Cβ、(NMe)Ala6のNCH 3/β-OH-Leu7のNH、β-OH-Leu7のH-Cα/β-OH-Leu7のCH 3(δ2)、β-OH-Leu7のH-Cβ/β-OH-Leu7のCH 3(δ1)、β-OH-Leu7のOH/Ile1のCH 3(γ)に相関が観測され、相対立体構造を以下のように推定した(図8)。
また、環状ペプチドを重メタノール中で1H NMRスペクトルを測定した際、L-Leu4のNH、β-OH-Leu7のNHとOHのシグナルが観測されたため、これら3つの水素はカルボニル酸素と分子内で3つの水素結合をしていると示唆された。水素結合の位置については、過去に報告されているテルナチンのX線結晶構造解析のデータと今回のROESYのデータを比較した。L-Leu4のNHとβ-OH-Leu7のカルボニル酸素、β-OH-Leu7のNHとL-Leu4のカルボニル酸素、β-OH-Leu7のOHとD-Ile1のカルボニル酸素が水素結合を形成していると推定すると、実施例1で得られた環状ペプチドは図8に示すように配座が固定された構造であると考えられる。
さらに、実施例1で得られた環状ペプチドの酸加水分解物においてはMarfey法により、1,3,4のアミノ酸は絶対立体構造が決定している。また、2については図8 にしめすROESYの相関と、両側のアミノ酸1と3の絶対立体構造が決定していることから、NMe-L-Ala2と断定できる。7についてはα水素とβ水素との結合定数の値が9.4Hzであることからこれらの水素はアンチの位置にあることと、α水素とγCH3にROESYの相関が見られることから、絶対立体構造はβ-OH-D-Leu7であると断定できる。
5,6のアミノ酸はそれぞれのDLどちらも可能性が考えられる。なお、5,6がそれぞれL,Dであるならば、報告されているテルナチンと絶対立体構造は完全に一致する。
実施例1で得られた環状ペプチドの前駆脂肪細胞の脂肪蓄積阻害活性 実施例1に示した方法にしたがって、実施例1で得られた環状ペプチドの前駆脂肪細胞の脂肪蓄積阻害活性を調べた。その結果、環状ペプチドはマウス胎仔由来白色脂肪細胞(前駆脂肪細胞)3T3-L1に対し、強力な脂肪蓄積阻害活性を示した(表3) 。
標準物質 (-)-アルテレノール (+)-酒石酸塩水和物(非特許文献1参照)濃度100μg/mL の添加で、細胞生存率 84 % 、脂肪蓄積率29 % であったことに対し、実施例1で得られた環状ペプチドは濃度0.63μg/mL の添加で、細胞生存率 87 % 、脂肪蓄積率25 % と、ほぼ同程度の活性を示した。したがって、実施例1で得られた環状ペプチドはアルテレノールよりも約160倍も脂肪蓄積阻害活性が強いことが判明した。また、安全性も高いことが確認できた。図9にコントロールの分化細胞、図10に実施例1で得られた環状ペプチド 12.5μg/mL 添加した分化細胞の顕微鏡写真を示した。コントロールと比べて、環状ペプチドを添加した脂肪細胞内には、明らかに脂肪滴が少なく、脂肪蓄積が阻害されていることがわかる。
処方例1
[錠剤の製造]
(組 成) (配合:質量%)
カワラタケ抽出物* 10
乳糖 60
コーンスターチ 29
グァーガム 1
*本発明の環状ペプチドを1質量%含有する。
処方例2
[ジュースの製造]
(組 成) (配合:質量%)
冷凍濃縮温州みかん果汁 5.0
果糖ブドウ糖液糖 11.0
クエン酸 0.2
L-アスコルビン酸 0.02
香料 0.2
色素 0.1
カワラタケ抽出物* 1.0
水 82.48
*本発明の環状ペプチドを1質量%含有する。
処方例3
[フェイスクリームの製造]
(組 成) (配合:質量%)
イソステアリン酸イソプロピル 8.0
ホホバ油 6.0
セタノール 8.0
ステアリルアルコール 2.0
ポリオキシエチレンラウリルエーテル 1.5
プロピレングリコール 6.0
ソルビトール 1.0
パラベン 0.4
カワラタケ抽出物* 1.0
ビタミンE 0.5
香料 0.1
精製水 65.5
*本発明の環状ペプチドを1質量%含有する。
Claims (9)
- 化学式(I)
- 化学式(I)
- 化学式(I)
- 化学式(I)
- 化学式(I)の環状ペプチドがキノコ又は植物由来であることを特徴とする請求項1〜4いずれかの剤。
- 化学式(I)の環状ペプチドがカワラタケ由来であることを特徴とする請求項1〜4いずれかの剤。
- 請求項1〜6のいずれかの剤を含有する食品。
- 請求項1〜6のいずれかの剤を含有する医薬。
- 請求項1〜6のいずれかの剤を含有する化粧料。
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