JP2005219728A - 自転車および自転車用の差動装置 - Google Patents

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Abstract


【課題】コンパクト化、軽量化を可能とし、メンテナンスが容易でかつコストを低減しうる自転車およびこれに用いる自転車用の差動装置を提供する。
【解決手段】メインフレームFに、車輪駆動用の回動軸3を有する駆動手段4と、操舵手段5と、少なくとも一方を2輪とした、前輪6F、後輪6Rとを具え、回動軸3により駆動され、かつ2輪の駆動用車輪とそれぞれに伝導機構7を介して連係されることにより該2輪を駆動しうる差動装置8を具えるとともに、この差動装置8は、回動軸3と一体かつ放射状に延びる支軸9に枢支される傘状の第1の歯車10と、その両側で第1の歯車10と噛合して対向しかつ回動軸3と同芯に回転自在に枢支される傘状の第2の歯車11とからなり、第2の歯車11の各1を、伝導機構7を介して、2輪の駆動用車輪の各1に連係させたことを特徴とする自転車、および前記差動装置。
【選択図】図1

Description

本発明は、特にコーナーにおける走行安定性を高めつつ、コンパクト化、軽量化を可能とし、メンテナンスが容易でかつコストを低減しうる自転車およびこれに用いる自転車用の差動装置に関する。
従来から、自転車の走行安定性を高め又は荷物の運搬用として用いるため、後2輪、或いは前2輪の3輪自転車が多く用いられている。この3輪自転車は、図15に示すように、ハンドルaにより操作され、前フォークが支持する前輪bと、フレームcから後部にのびる一対のチェーンステーd、dで支持される二つの後輪e、eとを具え、フレームの下部で軸支されペダルfを漕ぐことにより回転するチェーンリングgと一方の後輪eのハブ軸hに設けたスプロケットギアiとの間にチェーンjを架け渡している。そして前記ペダルfを漕ぐことにより加えられる駆動力で前記一方の後輪eが回転駆動されて走行しうる(例えば、特許文献1参照)。
しかしながら、前記3輪自転車では、前後方向の中心線Xから外側に離れて配置された一方の後輪eのみが駆動されて前進するため、推進力の左右バランスが崩れて後部が横方向に振れる力が生まれる。その結果、自転車は直進性を損なって蛇行走行を起し易くなるとともにハンドルaによる操舵機能が不安定となり、特にスピードが速くなるとハンドル操作が困難となって、衝突、転倒などの危険を伴う。
また、駆動されない後輪が小石、段差など路面の凸部にぶつかり、これを乗り越える推進力が不足すると、駆動される後輪eのみが前進することになり、その結果車体に急激で大きな方向転換が生じ、転倒につながる危険性が高い。
そこでこれら問題を解決するため、図16に示すように、両端に車輪k、kを具えた車軸mを左右に分割し、駆動部からプロペラシャフトnにより伝導された駆動力で回転する複数の傘状の入力ギアpと、この入力ギアpに噛合って向合う一対のサイドギアq、qとを有する差動装置rにより前記分割された双方の車軸m1、m2を回転させ、これにより両側の車輪k、kに駆動力を伝える駆動伝導機構を自転車に採用することが考えられる。この駆動伝導機構は自動車において多用されており、両側の車輪k、kに駆動を伝えることができる上に、直進しているときは双方のサイドギアq、qが一つになって回転し、しかし旋回中はサイドギアq、qの回転速度に差を生じて外側のタイヤが内側のタイヤより早く回る。その結果カーブを曲がる時、左右のタイヤの軌跡による移動距離の差を吸収することにより生じるタイヤのスリップを防止でき、旋回時のスムースな走行を得ることができる。
特開2000−335468号公報
しかしながら、前記駆動伝導機構は両端に車輪k、kを具えて左右に分割された車軸m1、m2の間に差動装置rを設け、また駆動部から差動装置rへプロペラシャフトnにより駆動力を伝達するため、装置の小型化軽量化には限界があり、自転車に搭載するには自転車のフレームを相当大きく構成することが必要となる。その結果自転車自体が大型化、重量化して実用性を欠くという問題があった。
本発明は、前記した自転車が有する問題点を解消し、回動軸により駆動されかつ2輪の駆動用車輪とそれぞれに伝導機構を介して連係されることにより該2輪を駆動しうる差動装置を具えることを基本とし、コンパクト化、軽量化を可能とし、メンテナンスが容易でかつコストを低減しうる自転車およびこれに用いる自転車用の差動装置の提供を課題としている。
前記目的を達成するために、請求項1記載の発明は、メインフレームに、車輪駆動用の回動軸を有する駆動手段と、操舵手段と、少なくとも一方を2輪とした、前輪、後輪とを具え、前記2輪を駆動用車輪とする自転車であって、前記メインフレームは、前記回動軸により駆動され、かつ前記2輪の駆動用車輪とそれぞれに伝導機構を介して連係されることにより該2輪を駆動しうる差動装置を具えるとともに、この前記差動装置は、前記回動軸と一体かつ放射状に延びる支軸に枢支される傘状の第1の歯車と、その両側で該第1の歯車と噛合して対向しかつ前記回動軸と同芯に回転自在に枢支される傘状の第2の歯車とからなり、該第2の歯車の各1を、前記伝導機構を介して、前記2輪の駆動用車輪の各1に前記連係させたことを特徴とする。
また請求項2記載の発明は、前記伝導機構は、第2の歯車と同芯に取り付く駆動用の回転体と、前記2輪にそれぞれ取り付けられる被動用の回転体と、その間を継ぐ連結手段とからなることを特徴とする請求項1記載の自転車である。
また請求項3記載の発明は、前記回転体がスプロケットであり、かつ連結手段がチェーンであることを特徴とする請求項2記載の自転車である。
また請求項4記載の発明は、前記2輪は、メインフレームに対し各々独立して上下に揺動可能に支持されることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の自転車である。
また請求項5記載の発明は、前記回動軸は、ペダルを有するクランクアームと、電動式、又は内燃機関式の補助動力器との少なくとも一方を具えることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の自転車である。
また請求項6記載の発明は、前記駆動手段は、前記回転軸の回転速度を加減しうる変速装置を具えることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の自転車である。
また本発明の自転車用の差動装置は、少なくとも一方を2輪とした、前輪、後輪とを具え、前記2輪を駆動用車輪とする自転車用の差動装置であって、駆動用の回動軸に取り付けうるボスと一体かつ放射状に延びる支軸に枢支される傘状の第1の歯車と、その両側で該第1の歯車と噛合して対向しかつ前記回動軸と同芯に回転自在に枢支される傘状の第2の歯車とからなり、かつ第2の歯車は、前記2輪の駆動用車輪とそれぞれに伝導機構を介して連係可能としたことを特徴とする。
本発明の自転車は、回動軸により駆動され、かつ2輪の駆動用車輪とそれぞれに伝導機構を介して連係されることにより該2輪を駆動しうる差動装置を具えるため、2輪の駆動用車輪には各々駆動力が伝導され、しかも差動装置が旋回時に生じる内外車輪の回転速度の差を吸収し、コーナーを含め安定した走行性を得ることができる。また前記差動装置は、回動軸と一体の支軸に枢支される傘状の第1の歯車と、該第1の歯車と噛合し回動軸と同芯に枢支される傘状の第2の歯車とからなる。しかも第2の歯車の各1を伝導機構を介して2輪の駆動用車輪の各1に連係させたため、自転車自体の基本的な駆動機構と前記差動装置が組合せられることにより最小必要限の部品で構成でき、構造が簡単になる。そのため小型化、軽量化を図ることができ自転車としてコンパクトな設計が容易となる。従ってメカトラブルが減少し、かつ省メンテナンスを達成でき、更にコスト低減にも繋がる。
駆動手段、差動装置などの主要部は、メインフレームの回動軸の回りに配される。そのためこれら主要な可動部を覆って保護する防塵、防滴、及び内部潤滑剤のシールを簡単に行うことができ、しかもこれらの信頼性が長時間維持される。
請求項2記載の発明のように、前記伝導機構は、第2の歯車と同芯に取り付く駆動用の回転体と、前記2輪にそれぞれ取り付けられる被動用の回転体と、その間を継ぐ連結手段とからなる場合、伝導機構を簡単に構成することができる。また請求項3記載の発明のように、前記回転体がスプロケットであり、かつ連結手段がチェーンであると、2輪への駆動伝導がより確実となる。
請求項4記載の発明のように、前記2輪は、メインフレームに対し各々独立して上下に揺動可能に支持される場合、走路凸部との衝合時に衝撃を緩和して転倒を防止でき、しかも乗り手がカーブの半径、通過速度に応じて最適なリーン姿勢を容易にとることができるため、安全かつ快適にカーブを通過できる。また請求項5記載のように構成すると、乗り手の負担が軽減でき、快適な走行を可能とする。
また請求項5記載の発明のように、駆動手段に回転軸の回転速度を加減しうる変速装置を設けると、登り走行などにおいて増加する乗り手の負荷を軽減でき、かつ平坦路での快適な高速走行を可能とする。
また本発明の自転車用の差動装置は、回動軸に取り付けうるボスと一体の支軸に枢支される傘状の第1の歯車と、該第1の歯車と噛合し回動軸と同芯に枢支される傘状の第2の歯車とからなり、しかも第2の歯車は2輪の駆動用車輪と伝導機構を介して連係可能としたため、自転車自体の基本的な駆動機構と組合せることにより最小必要限の部品で構成できる。更には構造が簡単なため小型化、軽量化が図れ、その結果メカトラブルが減少し、コスト低減にも繋がる。
以下、本発明の実施の一形態を、図示例とともに説明する。本発明の自転車1は、メインフレームFと、前輪6F、後輪6Rと、操舵手段5と、駆動手段4と、差動装置8とを具える。
前記メインフレームFは本形態では、前後にのびるトップチューブ21と、このトップチューブ21の後端部に一体に設けられ上端部にサドル39を取り付けるサドルパイプ22と、このサドルパイプ22の下端部から垂下する左右一対のボトムフレーム23、23とを含み構成されたものを例示している。
本形態の自転車1は、前輪6F、後輪6Rが共に2輪で構成され、しかも後輪6Rを駆動用車輪としたものを例示している。しかし、前輪6F、後輪6Rの何れか一方が1輪で構成されることもあり、その時には他方の2輪が駆動用車輪として構成される。各車輪は、一端がハブに取り付けられ放射状に配された複数のスポーク(図示せず)によりハブとリムとの間を連結して構成され、前記リムにはタイヤが装着される。
前記前輪6Fは、図1に示すように、操舵手段5により支持される。本形態の操舵手段5は、ハンドル24とフロントフレーム25とを含み構成されたものを例示している。前記ハンドル24は略水平な棹状をなし、両端部に把持部を有する。
前記フロントフレーム25は、図1、5に示すように、ステアリング軸26と、該ステアリング軸26の下部に該ステアリング軸26と一体に回動可能に設けられた前フォーク部材27とを含み構成される。
前記前フォーク部材27は、本形態では、前記ステアリング軸26の下端に取り付けられ下方にのびるガイド部28と、このガイド部28に案内され上下動し前記前輪6Fを枢支する前輪支持部29と、この前輪支持部29を下に付勢する弾性部材30とを含み構成されたものを例示している。
本形態のガイド部28は、図6に示すように、ステアリング軸26の下端に形成された上支持板31Aと下方の下保持板31Bの間に、前後に平行なガイド軸28a、28bを左右2列に固着した枠体として構成される。
前記前輪支持部29は、前記ガイド軸28a、28bが挿通する縦方向の案内孔を設けた左右のスライド体29Aを含み構成される。そしてこのスライド体29Aには、前記前輪6Fおよびこの前輪6Fと一体に構成されたディスク32aを回転自在に枢支する片持ち状の前輪支持軸33と、ハンドルに設けた操作レバー(図示せず)により作動して前記ディスク32aを制動する制動具32bとが取り付けられる。なお、このディスク32aと制動具32bとで制動手段32を構成している。
前記弾性部材30は、コイルバネからなり、前記左右のガイド軸28b、28bに各々外挿され、かつ前記上支持板31Aとスライド体29Aとの間に配される。そして左右のスライド体29Aを別々に下向きに付勢して、独立懸架式のサスペンションが構成される。その結果前記左右の前輪6F、6Fは、走路凸部、路肩段差部などとの衝突時に、バネ力に抗して個別に持ち上がることができるため衝撃を緩和して転倒を防止できる。さらにコーナリングにおいては、カーブの半径、通過速度に対応したリーン姿勢を容易にとることができるため、安全かつ過度に減速することなくスムースにカーブを通過できる点で好ましい。
前記ステアリング軸26は、上端部に前記ハンドル24の中央部が固定され、前記メインフレームFのトップチューブ21前端部に一体に形成されたヘッドパイプ34に回転可能に挿入される。これによりフロントフレーム25は、ハンドル24を回動して前記前輪6Fを操作し、自転車1の走行を操舵しうる。
前記左右の後輪6R、6Rは、図2に示すように、その中心のハブ6hが前記左右のボトムフレーム23、23の下端部から後方にのびる左右のチェーンステー35、35の後端部に枢支される。そしてこのチェーンステー35は、その前端部がボトムフレーム23の下端部の後側に一体に設けられた受部36に枢支点36aで枢支される。これにより左右の後輪6R、6Rは、図3に示すように、メインフレームFの後側で各々独立して上下に揺動可能に支持される。しかもコイルバネが内蔵された弾性体37の上下各端部がボトムフレーム23の上部とチェーンステー35の後部に各々枢着され、これにより前記チェーンステー35の後部側が弾性体37により下方に付勢された独立懸架式のサスペンションが構成される。その結果この独立懸架式のサスペンションで支持された左右の後輪6R、6Rは、各々が走路から受ける上向きの反力に応じて前記弾性体37のバネ力に抗して上昇でき、走路の凹凸に対応した個別の持ち上がりにより、悪路走行時の衝撃緩和と車体の傾きを減じて安定した走行が維持できる。そしてさらにはコーナリング走行で乗り手がカーブの半径、通過速度に応じて最適なリーン姿勢を容易にとることができるため、速度をあまり落とすことなくかつ安全にカーブを通過できる。
しかも本形態では、図1に示すように、前輪6F、6F、後輪6R、6Rの4輪全てが独立懸架式のサスペンションで支持されるため、クッション性能が一段と優れ、かつ安定したスムースな走行が得られる点で好ましい。
前記駆動手段4は、本形態では図2、4に示すように、前記ボトムフレーム23、23の下端部間でボールベアリング軸受により軸支された回動軸3と、この回動軸3の両端部から該回動軸3に対して直角かつ互いに反対方向に向いてのびる左右のクランクアーム18、18と、このクランクアーム18の先端部に取り付けられたペダル17とを含み構成されたものを例示している。そして乗り手がペダル17を漕ぐことにより回動軸3に生じる駆動力は、前記差動装置8、伝導機構7を介して駆動用車輪である後輪6Rに伝導される。
前記差動装置8は、傘状の第1の歯車10と、その両側でこの第1の歯車10と噛合して向き合う傘状の第2の歯車11とを含み構成される。前記第1の歯車10は、前記回動軸3に設けられたボス20から放射状に延びる3本の支軸9に枢支される。そして前記ボス20はキー溝40に嵌め込まれた図示されないキーによって前記回動軸3に相対回転不能に取り付けられている。
本形態の支軸9は、両端にネジ部を有するボルト9aにより形成されたものが例示され、前記ボス20に周面に隔設されたネジ孔に螺着される。また前記第1の歯車10は、焼結メタル、含油樹脂(ポリアセタール樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂)などの含油材を用いたベアリングブッシュ41を介してボルト9aに枢支されている。そしてボルト9aの先端にワッシャ9b、ナット9cが螺装される。
本形態では、回動軸3に放射状に等間隔で隔設された3本の支軸9に枢支された3個の第1の歯車10が第2の歯車11、11の間に配されて差動装置8を構成する。しかし回転軸3から反対方向へのびる2本の支軸9を設けて、一対の第1の歯車10を配することもでき、或いは4個以上の第1の歯車10を放射状に配置することでもよい。
またボス20を用いることなく、回動軸3から直接放射方向に支軸9を一体に形成し、この支軸9に第1の歯車10を枢支させることもできる。
なお第1の歯車10は、歯数が例えば12〜25程度、好ましくは15〜20、本形態では18、ピッチ円直径が15〜60mm程度、好ましくは20〜50mm程度、本形態では40mmのかさ歯車を用いる。
前記第2の歯車11は、一対のものが回動軸3と同芯に配されそのボス部が回動軸3にボールベアリング軸受42を介して回転自在に枢支され、かつ前記第1の歯車10の両側で向き合って該第1の歯車10と噛合う。しかして、前記駆動手段4により回動軸3が回転すると、この回動軸3に設けられた支軸9に枢支された前記第1の歯車10は回動軸3と一体に該回動軸3を中心として回転する。そのためこの第1の歯車10と噛合する左右の第2の歯車11、11は、負荷が同じときは双方が同じ速度で回動軸3を中心に回転する。しかし左右の第2の歯車11、11の回転に対する負荷に差がある場合、第1の歯車10に支軸9を中心とした回転が生じることにより、負荷の大きな側の第2の歯車11の回転速度が低下し双方の回転速度に差を生じる。
この第2の歯車11は、歯数が例えば24〜60程度、好ましくは30〜50、本形態では40、ピッチ円直径が50〜160mm程度、好ましくは80〜125mm程度、本形態では100mmのかさ歯車を用いる。
前記伝導機構7は、第2の歯車11と同芯に取り付けられる駆動用の回転体12と、後輪6Rに取り付けられる被動用の回転体13と、双方の回転体12、13を継ぐ連結手段14とからなる。そして、本形態では、双方の第2の歯車11、11に各々取り付けられた駆動用の回転体12、12と、左右の後輪6R、6Rに各々取り付けられた被動用の回転体13、13と、これらの間に各々架け渡された連結手段14、14とを介して第2の歯車11、11の駆動力が左右の後輪6R、6Rに個別に伝達される。
本形態の駆動用の回転体12は、図2に示すように、駆動用のスプロケット15Aを用いて形成され、チェーンリングを構成している。この駆動用のスプロケット15Aは、前記左右の第2の歯車11、11の外側面にボルト44により固着されている。他方本形態の被動用の回転体13は、同様に被動用のスプロケット15Bを用いて形成され、後輪6Rの内側で前記ハブ6hに固着されて後輪6Rと一体に回転する。また本形態の連結手段14は、前記双方のスプロケット15A、15Bに噛合する環状のチェーン16で形成される。このように本形態の伝導機構7は、スプロケット15を用いた駆動用、被動用の回転体12、13を、これに噛合うチェーン16からなる連結手段14で継ぐため、双方の駆動用車輪へ駆動力を確実に伝導できる点で好ましい。
しかして本形態の自転車1は、駆動手段4のペダル17を足漕ぎすると回動軸3が回転し、この回動軸3の駆動力が前記差動装置8、伝導機構7を介して駆動用車輪である双方の後輪6R、6Rのそれぞれに対して伝導され、しかも差動装置8によりその左右の駆動用車輪に伝導される回転速度は負荷に応じて変化できる。そのため図7に示すように、旋回時に回転半径の差(R1−R2)により生じる左右の駆動用車輪の回転速度の差が吸収され両輪がスリップすることなく走行でき、コーナー走行時の安定性を維持する。またスリップによるエネルギーロスを減じるため、快適な走行ができる。
また前記差動装置8は、駆動手段4の回動軸3と一体に形成された支軸9で枢支される第1の歯車10と、該第1の歯車10と噛合し前記回動軸3に枢支される第2の歯車11とからなる。このように差動装置8は、自転車自体の基本機構である駆動手段4と組合せて構成されるため、部品数を最小必要限に留めることができ構造が簡単になる。従って、全体を小型化し、併せ重量の軽減を図ることができ、その結果コンパクトで操作性に優れた自転車1の設計が可能となる。さらには故障の頻度も減少し、メンテナンスの手間が省け、コスト低減にも繋がる。
また前記従来のように、車輪k、k間の車軸mに差動装置rを設ける機構においては、差動装置rと車輪k、k間はユニバーサルジョイントシャフトなどで接続されており、前記車輪k、kが独立して上下動可能とする独立懸架装置を設ける場合には、車輪k、k間に相応の間隔を設ける必要がある。しかし、本形態の自転車1は、駆動手段4と組み合わせて構成された差動装置8から、スプロケット15とチェーン16を含む伝導機構7を介して上下動可能に支持された左右の後輪6R、6Rに駆動力を伝導するため、後輪6R、6Rを幅狭に配置することができ、しかも後輪6R、6Rの前記上下動のストロークを充分確保することができる。
また本形態の左右の後輪6R、6Rは、前記の如くチェーンステー35の前端部がボトムフレーム23下端部近傍の枢支点36aで枢支される。従って、図3に示すように、チェーンステー35の後端部が上下動し後輪6R、6Rが上下に揺動しても、前記チェーン16が架け渡される駆動用、被動用の回転体12、13間の距離は殆ど変化しないため、チェーンのテンションは一定に維持される。その結果チェーン16の緩み防止用のテンション調整装置が不要で構造が簡単となり、重量、コストを低減しうる。なお前記チェーンステー35の前端部の枢支点36aを、駆動手段4の回動軸3の中心に設けると、後輪6Rが上下揺動しても、駆動用、被動用の回転体12、13間の距離を不変とすることができる。
前記伝導機構7は、ベルト車で形成された駆動用、被動用の回転体12、13間を、ベルトからなる連結手段14で継ぐこともできる。さらには、ユニバーサルジョイント機構とプロペラシャフトを組み合わせて形成された伝導機構7を用いることもできる。
また本形態の自転車1は、図1、4に示すように、前記差動装置8を覆う保護カバー43が形成される。この保護カバー43は、横筒状をなし、前記ボルト9aのワッシャ9bとナット9cの間で挟着され、差動装置8、駆動手段4の回動軸3の中央部を覆い、これら回転部分に対する砂塵、雨水などの浸入を防止し、併せて潤滑油などが充填された潤滑剤をシールしている。このように、主要部を構成する回転部分がメインフレームの回動軸の回りに配されている。そのためこれらを保護する防塵、防滴、及び内部潤滑剤のシールを簡単、確実に行うことができ、しかもその信頼性を長時間維持することができる。
また、前記のように前輪6F、後輪6Rを共に2輪で構成した4輪の自転車は、安定性に優れるため、図8に示すように、サドル39、ハンドル24及び駆動手段4を高く配置して重心を高く設定することができる。この場合、駆動手段4のペダル17は、回転運動の最下点における路面からの高さHが高くなるため、オフロードなど凹凸の大きな路面で使用しても底打ちすることがなく安全な走行が確保でき、特にマウンテンバイクなどに好適に採用しうる。
前記実施形態は、前輪6F、後輪6Rを共に2輪で構成した4輪の自転車1を例示している。しかし図9に示すように、操舵手段5で支持された1輪の前輪6F、および駆動用車輪として形成された2輪の後輪6Rを具える3輪の自転車として構成することもできる。
図10は、他の実施形態を例示している。以下異なる内容のみを説明し、それ以外は図中に表れた同等の構成に同じ符号を付すのみとし、説明を省略している。本形態の自転車は、前輪6Fが2輪の駆動用車輪で形成され、後輪6Rが操舵機能を備えた1輪で形成されている。前記前輪6Fは、メインフレームFの前端部に固着された前フォーク部材27に枢支される。そしてペダル17を有する駆動手段4により加えられた駆動力が、差動装置8、伝導機構7を介して前輪6Fに伝導され、左右の前輪6F、6Fが駆動される。
前記後輪6Rは、メインフレームFの後端部に回動可能に支持された後フォーク45に枢支されている。この後フォーク45はメインフレームの内部に装備されたチェーンなどの連動手段46を介しハンドル24の操作に連動して回動し、これにより後輪6Rが操舵される。本形態では前記ハンドル24、連動手段46、後フォーク45により操舵手段5が形成される。
このように本形態の自転車は、駆動される前輪6Fが車体全体を牽引してスリップの少ないスムースな走行を可能とし、また1輪の後輪6Rで操舵されるため小回りの効いた運転が可能となり狭小路での走行を楽に行える。
図11は、更に他の実施形態を例示している。本形態の駆動手段4は、回動軸3の両端部に固着されペダル17を有するクランクアーム18と、蓄電電池(図示せず)で駆動するモータMからなる電動式の補助動力器19とを含み構成される。このモータMは図示されないブラケットによりメインフレームFに固定され、その回転力は連動機構47により回動軸3に伝導される。
前記連動機構47は、前記モータMの回転軸に固着されたモータギア47aと、回動軸3と同芯に固着された軸ギア47bと、モータギア47aおよび軸ギア47b間に架け渡される環状の連動チェーン47cとからなる。許容伝導力を高めるため前記モータギア47a、軸ギア47bは各々一対のギアが並んで一体に形成され、連動チェーン47cは一対のものが各々のギア間に架け渡される。また前記軸ギア47bは、差動装置8の第1の歯車10を枢支する支軸9の先端部に固着され、第1の歯車10と一体に回転する。
このように本形態では、上り坂、逆風など負荷の大きな時に補助動力器19を作動させると、ペダル17による足漕ぎの駆動力を補うことができ、速度が低下することなく走行を維持でき、同時に乗り手の負担を軽減して楽で快適な走行を実現できる。
また前記補助動力器19は、モータMを始めとする電動式のもののほか、ガソリンエンジンを始めとする内燃機関式の補助動力器19を用いることもできる。更には本発明の自転車は、回動軸3にペダル17を有するクランクアーム18を設けることなく、補助動力器19のみで回動軸3を駆動する形態も含まれる。
図12、13は、更に他の実施形態を例示している。本形態は、仰向きの姿勢でペダルを漕ぐリカンベントタイプの自転車が例示される。従って本形態のサドル39は、メインフレームFを構成するトップチューブ21の後端部に、サドルブラケット48を介して取り付けられ、比較的低レベルに配置される。サドル39上で後傾姿勢となる乗り手の上半身を支持するため、背もたれ49が前記サドルブラケット48に取り付けられる。
本形態の駆動手段4は、前記トップチューブ21中間部の下側に軸支されたクランクシャフト54と、このクランクシャフト54と一体に回動するフロントチェーンリング50と、前記トップチューブ21の後端部で軸支された回動軸3と、この回動軸3の一方端部に固着され、回動軸3と一体に回動するカセットスプロケット51と、このカセットスプロケット51及びフロントチェーンリング50の双方に噛合する環状のフロントチェーン52と、このフロントチェーン52のカセットスプロケット51に対する噛合位置を変更して回動軸3の回転速度を加減しうるディレーラー53とを含み構成されたものを例示している。なお前記カセットスプロケット51は、歯数の異なる複数のスプロケットが同芯にセットして形成される。
前記クランクシャフト54は、先端にペダル55を設けた一対のクランクアーム56、56が固着される。乗り手がペダル55を漕いで発生するフロントチェーンリング50の回転力は、フロントチェーン52及びカセットスプロケット51を介して回動軸3に伝達される。このとき、変速レバー(図示せず)によりディレーラー53を操作すると、フロントチェーン52が噛合するカセットスプロケット51の段数(スプロケットの種類)が切り替わる。これによりクランクシャフト54と回動軸3との回転比を変化させることができる。従って例えば、登坂道路、向かい風など走行負荷が増加した時には、ギヤ比を落としてペダル55の負荷を軽減し、逆にギヤ比を大きくして、スピードアップするなど、状況に応じたギヤ比を選択して、快適な走行が可能となる。
前記カセットスプロケット51、ディレーラー53、変速レバーにより変速装置Sが形成される。また変速装置Sは、前記の外装タイプに替えて、内装変速機を装着することもできる。なお、図14に示すように、前記変速装置Sによりトルク調整された回動軸3の駆動力は、前記実施態様と同様、差動装置8及び伝導機構7を介して後輪6R、6Rを回転させる。本形態では、旋回走行、路面の凹凸状況など、左右の負荷のバランスに応じた駆動が左右後輪6R、6Rに伝達されてエネルギーロスが減少する上、負荷の増減、或いは乗り手の疲労度に応じてペダル重さを増減しうるため、軽快な走行を持続できる点で好ましい。
本発明の自転車用の差動装置は、図2、4に示すように、前輪6F、後輪6Rを具え、少なくともその一方が2輪であり、しかもその2輪が駆動用車輪として構成される自転車に用いられる。そして図2、4に示すように、ボス20に設けられた支軸9に枢支される傘状の第1の歯車10と、その両側でこの第1の歯車10と噛合して向き合う左右一対の傘状の第2の歯車11とを含み構成される。そして前記ボス20は、駆動用の回動軸3に相対回転不能に取り付けられている。
前記第1の歯車10は、前記回動軸3に設けられたボス20から放射状に延びる3本の支軸9に枢支される。この支軸9は、両端にネジ部を有するボルト9aにより形成され、前記ボス20に周設されたネジ孔に螺着される。また前記第1の歯車10は、焼結メタル、含油樹脂など含油材を用いた滑り軸受41を介してボルト9aに枢支され、ボルト9aの先端はワッシャ9b、ナット9cが螺装される。なお前記第1の歯車10は、ニードルベアリング軸受などの回転軸受を介してボルト9aに支持させてもよい。
本形態の差動装置8は、回動軸3に放射状に隔設された3本の支軸9に枢支された3個の第1の歯車10を有する。しかし回転軸3から反対方向へのびる2本の支軸9を設けて、一対の第1の歯車10を配することもでき、或いは4個以上の第1の歯車10を放射状に配置することでもよい。
前記第2の歯車11は、一対のものが前記第1の歯車10の両側で向合って前記第1の歯車10に噛合う。そして第2の歯車11は、そのボス部が回動軸3にボールベアリング軸受42を介して回転自在に枢支されうるように形成され、また前記2輪の駆動用車輪とそれぞれに伝導機構7を介して連動可能となるように形成されている。なお第2の歯車11は、ニードルベアリング軸受、滑り軸受などを介して枢支してもよい。
自転車用の差動装置は、ボス20を回動軸3に取り付けるとともに第2の歯車11を回動軸3に回転自在に枢支させると、負荷が同じときは左右の第2の歯車11は同速度で回転するが、負荷に差がある場合負荷の大きな側の回転速度が低下し、双方の速度に差を生じる。そのため自転車の旋回時に回転半径の差により生じる左右の駆動用車輪の回転速度の差が吸収されてコーナー走行時の安定性が保たれ、またスリップによるエネルギーロスを減じて快適な走行を可能とする。
また自転車に取り付ける際、前記ボス20は自転車の駆動手段4の回動軸3に固着され、また第2の歯車11は回動軸3に回転自在に枢支される。このように自転車自体の基本機構である駆動手段4と組み合せて差動機構を構成するため、部品数を最小必要限に留めることができ、構造が簡単になる。従って、小型化軽量化を図ることができ、その結果コンパクトで操作性に優れた自転車の設計を可能とする。さらには故障の頻度も減少し、メンテナンスの手間が省け、コスト低減にも繋がる。
また前記自転車用の差動装置は、自転車用の内装式変速装置を一体に組み込むことにより、コンパクトな変速機能付きの差動装置を構成することができる。
本発明の一実施の形態を例示する斜視図である。 その要部拡大斜視図である。 その動作状態を説明する略図である。 そのA−A断面図である。 フロントフレームの正面図である。 その要部拡大斜視図である。 自転車1の走行状態を説明する平面図である。 他の実施形態を例示する略正面図である。 更に他の実施形態を例示する略平面図である。 更に他の実施形態を例示する斜視図である。 更に他の実施形態を例示する要部の断面図である。 更に他の実施形態を例示する側面図である。 その平面図である。 その要部拡大図である。 従来例を例示する平面図である。 他の従来例を例示する略図である。
符号の説明
1 自転車
2 自転車用の差動装置
3 回動軸
4 駆動手段
5 操舵手段
6F 前輪
6R 後輪
7 伝導機構
8 差動装置
9 支軸
10 第1の歯車
11 第2の歯車
12 駆動用の回転体
13 被動用の回転体
14 連結手段
15 スプロケット
16 チェーン
17 ペダル
18 クランクアーム
19 補助動力器
20 ボス
S 変速装置
F メインフレーム

Claims (7)

  1. メインフレームに、車輪駆動用の回動軸を有する駆動手段と、操舵手段と、少なくとも一方を2輪とした、前輪、後輪とを具え、前記2輪を駆動用車輪とする自転車であって、
    前記メインフレームは、前記回動軸により駆動され、かつ前記2輪の駆動用車輪とそれぞれに伝導機構を介して連係されることにより該2輪を駆動しうる差動装置を具えるとともに、
    この前記差動装置は、前記回動軸と一体かつ放射状に延びる支軸に枢支される傘状の第1の歯車と、その両側で該第1の歯車と噛合して対向しかつ前記回動軸と同芯に回転自在に枢支される傘状の第2の歯車とからなり、
    該第2の歯車の各1を、前記伝導機構を介して、前記2輪の駆動用車輪の各1に前記連係させたことを特徴とする自転車。
  2. 前記伝導機構は、第2の歯車と同芯に取り付く駆動用の回転体と、前記2輪にそれぞれ取り付けられる被動用の回転体と、その間を継ぐ連結手段とからなることを特徴とする請求項1記載の自転車。
  3. 前記回転体がスプロケットであり、かつ連結手段がチェーンであることを特徴とする請求項2記載の自転車。
  4. 前記2輪は、メインフレームに対し各々独立して上下に揺動可能に支持されることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の自転車。
  5. 前記回動軸は、ペダルを有するクランクアームと、電動式、又は内燃機関式の補助動力器との少なくとも一方を具えることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の自転車。
  6. 前記駆動手段は、前記回転軸の回転速度を加減しうる変速装置を具えることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の自転車。
  7. 少なくとも一方を2輪とした、前輪、後輪とを具え、前記2輪を駆動用車輪とする自転車用の差動装置であって、
    駆動用の回動軸に取り付けうるボスと一体かつ放射状に延びる支軸に枢支される傘状の第1の歯車と、その両側で該第1の歯車と噛合して対向しかつ前記回動軸と同芯に回転自在に枢支される傘状の第2の歯車とからなり、
    かつ第2の歯車は、前記2輪の駆動用車輪とそれぞれに伝導機構を介して連係可能としたことを特徴とする自転車用の差動装置。
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