JP2005219313A - 積層シート - Google Patents

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Abstract

【課題】 重ね合わされたシート間のずれを確実に抑えることができる積層シートを提供すること。
【解決手段】 複数のシート2が重ね合わされた積層シートである。重ね合わされたシート2を貫く切り込み3が設けられているとともに、切り込み3の両側の断層部分30に切り込み3の深さ方向のずれが設けられている。切り込み3は、シート2を全て貫くように設けられていることが好ましい。シート2は、被酸化性金属、保水剤及び繊維状物を含む抄造シートであることが好ましい。
【選択図】 図1

Description

本発明は、複数のシートが重ね合わされた積層シートに関わり、特に、そのシートの剥がれやシート間のずれを抑えた積層シートに関する。
近年、発熱シートや、汚れふきとりシート、メイク落としシート、清掃用シート、シートパック等の様々なシート状の製品が提供されている。これらの製品は、複数のシートが積層された積層シートからなるものが多い。そして、その製造工程においては、複数のシートが積層された状態で曲げ加工、薬剤等の効能剤の塗布、裁断、切断加工が施される場合が多い。このため、その製造途中において、シート間にずれが生じてしまうとその後の加工に支障を来す場合があった。
斯かる製造途中におけるシート間のずれを抑えるために、粘着成分や接着成分を塗工したり加えたりすることが考えられるが、製品によっては通気性が損なわれたり、効能剤の塗布や含浸が悪くなったり、裁断や切断に支障を来すこともあるため、それらの成分を加えることが望ましくない場合もある。
一方、複数のシートを積層して積層する技術として、ヒートエンボスローラーに通してヒートエンボス加工を施すことは知られている(例えば、下記特許文献1参照)。しかし、ヒートエンボス加工は、溶融樹脂等の成分がシートに含まれている場合には有効であるが、そのような成分を含まないシートには有効ではない。
特開平9―85871号公報
本発明は、上述の問題点に鑑みてなされたものであり、本発明の目的は、重ね合わされたシートの剥がれやシート間のずれを確実に抑えることができる積層シート及びその製造方法を提供することにある。
本発明は、複数のシートが重ね合わされた積層シートであって、重ね合わされた前記シートを貫く切り込みが設けられているとともに、該切り込みの両側の断層部分に該切り込みの深さ方向のずれが設けられている積層シートを提供することにより、前記目的を達成したものである。
また、本発明は、上記本発明の積層シートの製造方法であって、複数のシートを重ね合わせるか又は一枚のシートを折り重ね合わせた後に、重ね合わされた複数の該シートの表裏両面側からその厚み方向にせん断力を加えて切り込みを設けるとともに、該切り込みの両側の断層部分に該切り込みの深さ方向にずれを設ける積層シートの製造方法を提供するものである。
本発明の積層シートによれば、重ね合わされたシートの剥がれやシート同士がすべってずれることを確実に抑えることができる。また、本発明の積層シートの製造方法によれば、上記効果を奏する積層シートを好適に製造することができる。
以下本発明を、その好ましい実施形態に基づき図面を参照しながら説明する。
図1及び図2は、本発明の積層シートを、空気中の酸素と被酸化性金属との酸化反応に伴って発熱する発熱シートに用いられる積層シートに適用した一実施形態を示すものである。これらの図において、符号1は積層シートを示している。
図1に示すように、本実施形態の積層シート1は、4枚のシート2が重ね合わされている。積層シート1は、重ね合わされた4枚のシートの全てを貫く多数の切り込み3が設けられている。
切り込み3の長さLは、シートの用途、シートの発熱特性、シート枚数、シート厚み、シートの柔軟性、伸び特性等に応じて適宜設定することができるが、本実施形態のような発熱シートに用いられる積層シートの場合には、積層シートの厚さ、伸び、柔軟性、シート間剥離力などを考慮すると、1〜50mm、特に1〜15mmが好ましい。切り込みの長さは一定に揃えることが好ましいが、異なる長さの切り込みを組み合わせることもできる。
切り込み3の列内での間隔D1は、シートの用途、シートの発熱特性、シート枚数、シート厚み、シートの柔軟性、伸び特性等に応じて適宜設定することができるが、本実施形態のような発熱シートに用いられる積層シートの場合には、積層シートの厚さ、伸び、柔軟性、シート間剥離力、加工上の制約などを考慮すると、1〜50mm、特に5〜20mmが好ましい。
切り込み3の列間の間隔D2は、シートの用途、シートの発熱特性、シート枚数、シート厚み、シートの柔軟性、伸び特性等に応じて適宜設定することができるが、本実施形態のような発熱シートに用いられる積層シートの場合には、積層シートの厚さ、伸び、柔軟性、シート間剥離力、加工上の制約など考慮すると、1〜100mm、特に1〜20mmが好ましい。
切り込み3の配設形態は、シートの柔軟性、シート間剥離力、シート加工上の観点から、本実施形態のような所定間隔おきにほぼ平行で並列に設けられている形態が好ましいが、これ以外の配設形態として、千鳥格子状、外周のみ、中央部のみ、シート内の数箇所に設ける等の形態が挙げられる。また、切り込み3は、積層されたシート2の流れ方向に沿って揃えられて設けられていることが好ましいが、本発明の効果に影響を及ぼさない範囲において、該流れ方向に対して所定の角度を有して設けられていてもよく、また、複数の方向に揃えられたり、ランダムな方向に設けられていてもよい。
切り込み3の数は、シートの用途、シート発熱特性、シート枚数、シート厚み、シートの柔軟性、伸び特性等に応じて適宜設定することができるが、本実施形態のような発熱シートに用いられる積層シートの場合には、積層シートの厚さ、伸び、柔軟性、シート間剥離力等を考慮すると、700〜30000本/m2、特に9000〜12000本/m2が好ましい。
切り込み3の両側の断層部分30には、切り込み3の深さ方向のずれが設けられており、これにより、前記シート2間のすべり、ずれ及び剥がれが規制されるようになっている。
断層部分30の切り込み深さ方向のずれは、本実施形態のように、切り込みがシートの全てを貫通するように設けられている場合には、切り込み3の両側の断層部分30において、最上層のシート20Aが少なくとも最下層のシート20Bに達するか又はそれを越える(それより低くなる)ように設けられていることが好ましい。切り込み長さは、シート厚みに対して1〜50倍の長さ、特に2〜20倍の長さが、シートの柔軟性、剥がれやずれ防止の観点から好ましい。
積層シート1では、断層部分30の深さ方向のずれによって空間が形成されていないが、例えば、図3(a)及び(b)に示すように、切り込み3の両側の断層部分30の切り込み3の深さ方向のずれによって空間が形成されるようにしてもよい。
積層シート1は、坪量100g/m2当たりの透気度が0.1〜8秒/(10cm2・300ml)、特に0.5〜6秒/(6.42cm2・300ml)であることが好ましい。透気度を斯かる範囲とすることによって、発熱特性がより良好となるほか、後述する電解質溶液を添加する際に、より均一に電解質溶液を含浸することができることとなる。本明細書において、透気度というときは、JIS P8117で測定される透湿度をいう。
積層シート1の坪量は、10〜1000g/m2、特に50〜600g/m2であることが好ましい。該坪量が10g/m2以上であると後述するシート2の成分である被酸化性金属等の中でも比重の大きなものを使用する場合等においても安定したシートを形成することができ好ましい。該坪量が1000g/m2以下であると使用感が良好であり、生産性や操業性等の面でも好ましい。
積層シート1の発熱到達温度は、30〜100℃、特に35〜90℃であることが好ましい。本明細書において、発熱到達温度というときは、50mm×50mmの試験片を切り出した後、該試験片に透湿度が5000g/(m2・24h)の透湿シートと不透湿シートとを両側に袋状に貼り合わせて包装した後、容積4.2リットル、相対湿度1%以下の環境下で密封系内に5.0リットル/minの乾燥空気を供給可能な試験機を準備し、その内部に前記透湿シート側を上面として静置して発熱させたときの試験片の下側の温度を熱電対で測定した値をいう。積層シート1の発熱到達温度は、用途によって任意に設計ができる。
積層シート1は、単位面積当たり10分間に発生する水蒸気発生量が0.1〜100mg/(cm2・10分)、特に1〜50mg/(cm2・10分)であることが好ましい。積層シート1の水蒸気発生量は、発熱到達時間と同様に商品用途によって急激な発熱が必要な場合や比較的低温で長時間の持続が必要な商品等、前述の配合組成の組み合わせにより任意に設計ができる。本明細書において、水蒸気発生量というときは、以下のように測定される値をいう。
容積4.2リットル、湿度1RH%以下とし、密閉系内に5.0リットル/minの乾燥空気を供給可能な試験機を準備し、その内部に水蒸気が蒸散可能なように試験片を静置して発熱させる。そして、前記密閉系外に排出される空気の湿度を湿度計で想定し、下記式(1)を用いて発熱開始後に発生する水蒸気量を求め、単位時間当たりの水蒸気量とした。そして、10分間の累積値を蒸気発生量として求めた。ここで、eは水蒸気圧(Pa)、esは飽和水蒸気圧(Pa:JIS Z8806より引用)、Tは温度(℃:乾球温度)、sはサンプリング周期(秒)である。
相対湿度U(%RH)=(e/es)×100
絶対湿度D(g/m3)=(0.794×10-2×e)/(1+0.00366T)
=(0.794×10-2×U×es)/〔100×(1+0.00366T)〕
単位空気容積P(リットル)=(2.1×s)/60
単位時間当たりの水蒸気量A(g)=(P×D)/1000・・・(1)
積層シート1を構成する前記シート2(以下、特に言及しない場合は前記切り込み3が設けられていない状態のシートをいう)は、被酸化性金属、保水剤及び繊維状物を含む抄造シートである。
積層シート1を構成する前記シート2に含まれる前記被酸化性金属には、従来からこの種の発熱成形体に通常用いられている被酸化性金属を特に制限無く用いることができる。該被酸化性金属の形態は、取り扱い性、成形性等の観点から粉体、繊維状の形態を有するものを用いることが好ましい。
粉体の形態を有する被酸化性金属としては、例えば、鉄粉、アルミニウム粉、亜鉛粉、マンガン粉、マグネシウム粉、カルシウム粉等が挙げられ、これらの中でも取り扱い性、安全性、製造コストの点から鉄粉が好ましく用いられる。該被酸化性金属には、後述の繊維状物への定着性、反応のコントロールが良好なことから粒径(以下、粒径というときには、粉体の形態における最大長さ、又は動的光散乱法、レーザー回折法等により測定される平均粒径をいう。)が0.1〜300μmのものを用いることが好ましく、粒径が0.1〜150μmものを50重量%以上含有するものを用いることがより好ましい。
また、繊維状の形態を有する被酸化性金属としては、スチール繊維、アルミ繊維、マグネシウム繊維等が挙げられる。これらのなかでも取り扱い性、安全性、製造コストの点からスチール繊維、アルミ繊維等が好ましく用いられる。繊維状の形態を有する被酸化性金属は、成形性や得られるシートの機械的強度、表面の平滑性、発熱性能の点から繊維長0.1〜50mm、太さ1〜1000μmのものを用いることが好ましい。
前記シート2中の前記被酸化性金属の配合量は、10〜95重量%であることが好ましく、30〜80重量%であることがより好ましい。該配合量が10重量%以上であると、得られる積層シート1の発熱温度を、人が指先等で触って熱く感じる程度に十分に上昇させることができ、シート2を構成する後述の繊維状物、接着成分(凝集剤等)の量を抑えることができるため、シートの柔軟性を維持することができるので好ましい。該配合量が95重量%以下であると、積層シート1の通気性も十分なものとなり、その結果シートの内部まで十分に反応が起こり発熱温度を十分に上昇させることができる。また、発熱時間も十分なものとできるほか、保水剤による水分供給も十分なものとすることができ、被酸化性金属の脱落も生じ難い。また、シート2を構成する後述の繊維状物、接着成分をある程度の量に維持できるため、曲げ強度や引張強度等の機械的強度を十分なものとすることができる。ここで、シート2中の被酸化性金属の配合量は、JIS P8128に準じる灰分試験で求めたり、例えば、鉄の場合は外部磁場を印加すると磁化が生じる性質を利用して振動試料型磁化測定試験等により定量することができる。
前記保水剤には、従来からこの種の発熱成形体に通常用いられている保水剤を特に制限無く用いることができる。該保水剤は、水分保持剤として働く他に、被酸化性金属への酸素保持/供給剤としての機能も有している。該保水剤としては、例えば、活性炭(椰子殻炭、木炭粉、暦青炭、泥炭、亜炭)、カーボンブラック、アセチレンブラック、黒鉛、ゼオライト、パーライト、バーミキュライト、シリカ、カンクリナイト、フローライト等が挙げられ、これらの中でも保水能、酸素供給能、触媒能を有する点から活性炭が好ましく用いられる。該保水剤には、被酸化性金属との有効な接触状態を形成できる点から粒径が0.1〜500μmの粉体状のものを用いることが好ましく、0.1〜200μmのものを50重量%以上含有するものを用いることがより好ましい。保水剤には、上述のような粉体状以外の形態のものを用いることもでき、例えば、活性炭繊維等の繊維状の形態のものを用いることもできる。
シート2中の前記保水剤の配合量は、0.5〜60重量%であることが好ましく、1〜50重量%であることがより好ましい。該配合量が0.5重量%以上であると、被酸化性金属が酸化反応により人体温度以上に温度上昇する程度に反応を持続させるために必要な水分を積層シート1中に十分に蓄積できる。また、通気性が十分に確保されるため、酸素供給が十分得られて発熱効率が高い発熱シートとなる。該配合量が60重量%以下であると、得られる発熱量に対する積層シート1の熱容量を小さく抑えることができるため、発熱温度上昇が大きくなり、人が温かいと体感できる温度上昇が得られる。また、被酸化性金属の脱落の発生やシート2を構成する後述の繊維状物、接着成分の減少が抑えられるため、曲げ強度や引張強度等の機械的強度も十分に得られる。
前記繊維状物としては、例えば、天然繊維状物としては植物繊維(コットン、カボック、木材パルプ、非木材パルプ、落花生たんぱく繊維、とうもろこしたんぱく繊維、大豆たんぱく繊維、マンナン繊維、ゴム繊維、麻、マニラ麻、サイザル麻、ニュージーランド麻、羅布麻、椰子、いぐさ、麦わら等)、動物繊維(羊毛、やぎ毛、モヘア、カシミア、アルカパ、アンゴラ、キャメル、ビキューナ、シルク、羽毛、ダウン、フェザー、アルギン繊維、キチン繊維、ガゼイン繊維等)、鉱物繊維(石綿等)が挙げられ、合成繊維状物としては、例えば、半合成繊維(アセテート、トリアセテート、酸化アセテート、プロミックス、塩化ゴム、塩酸ゴム等)、金属繊維、炭素繊維、ガラス繊維等が挙げられる。また、高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン、ポリエステル、ポリ塩化ビニリデン、デンプン、ポリビニルアルコール若しくはポリ酢酸ビニル又はこれらの共重合体若しくは変性体等の単繊維、又はこれらの樹脂成分を鞘部に有する芯鞘構造の複合繊維を用いることができる。そしてこれらの中でも、繊維どうしの接着強度が高く、繊維どうしの融着による三次元の網目構造を作り易すく、パルプ繊維の発火点よりも融点が低い点からポリオレフィン、変性ポリエステルが好ましく用いられる。また、枝分かれを有するポリオレフィン等の合成繊維も被酸化性金属や保水剤との定着性が良好なことから好ましく用いられる。これらの繊維は、単独で又は二種以上を組み合わせて用いることができる。また、これらの繊維は、その回収再利用品を用いることもできる。そして、これらの中でも、前記被酸化性金属、前記保水剤の定着性、得られる発熱シートの柔軟性、空隙の存在からくる酸素透過性、製造コスト等の点から、木材パルプ、コットンが好ましく用いられる。
前記繊維状物は、そのCSF(Canadian Standard Freeness)が、600ml以下であることが好ましく、450ml以下であることがより好ましい。600ml以下であると繊維状物と被酸化性金属や保水剤等の構成成分との定着性も十分に良好であり、所定の配合量を十分に保持でき発熱性能を十分に発揮させることができ、また、均一な厚みのシートが得られ、成形状態も良好なものとなる。また、繊維状物と被酸化性金属や保水剤との定着が良好となり被酸化性金属や保水剤の脱落がし難く、該被酸化性金属や保水剤と該繊維状物との絡み合い、水素結合により十分な結合強度を持たせることができる。また曲げ強度や引張強度等の機械的強度も十分なものとすることができ、加工性も良好である。
前記繊維状物のCSFは、低い程好ましいが、通常のパルプ繊維のみの抄紙では、繊維状物以外の成分比率が低い場合、CSFが100ml以上である方が濾水性が十分に良好であり、脱水を十分に行なうことができ均一な厚みのシートが得られ、乾燥時にブリスター破れが生じたりする等の成形不良も生じ難く好ましい。本発明においては、繊維状物以外の成分比率が高いことから、濾水性も良好で均一な厚みのシートを得ることができる。また、CSFが低い程、フィブリルが多くなるため、繊維状物と該繊維状物以外の成分との定着性が良好となり、高いシート強度を得ることができる。
繊維状物のCSFの調整は、叩解処理などによって行うことができる。CSFの低い繊維と高い繊維とを混ぜ合わせ、CSFの調整を行っても良い。
前記繊維状物は、そのゼータ電位がマイナス(負)であることが好ましい。ここで、ゼータ電位とは、荷電粒子界面と溶液間のずり面におけるみかけの電位をいい、流動電位法、電気泳動法等により測定される。該ゼータ電位がマイナスであると、繊維状物への前記被酸化性金属や保水剤等の構成成分の定着が良好となり、所定の配合量を保持できて発熱性能が優れたものとなるほか、排水に多量の被酸化性金属や保水剤等の構成成分が混じることを抑えることができるため、生産性、環境保全にも影響を及ぼすことがない。
該繊維状物には、平均繊維長が0.1〜50mmのものを用いることが好ましく、0.2〜20mmのものを用いることがより好ましい。平均繊維長が斯かる範囲であると、得られるシート2の曲げ強度や引張強度等の機械的強度が十分に確保できる。また、繊維層が所望の密度に形成されるため、シート2の通気性が十分確保され、得られる発熱シートの酸素供給も良好で発熱性に優れるものとなる。さらに、シート2中に該繊維状物を均一に分散できるため、一様な機械的強度が得られ、均一な肉厚のシートが得られる。また、繊維間隔が所望の範囲に保たれるため、繊維による被酸化性金属や保水剤等の構成成分の保持能力が維持され、これらの成分が脱落し難いものとなる。
シート2中の前記繊維状物の配合量は、2〜50重量%であることが好ましく、5〜40重量%であることがより好ましい。該配合量が2重量%以上であると、被酸化性金属や保水剤等の構成成分の脱落を十分に防止できるほか、シート2の強度を十分なものにすることができる。該配合量が50重量%以下であると、発熱成形体の発熱量に対する熱容量を抑えることができ、温度上昇を十分なものとすることができるほか、得られる積層シート1中の被酸化性金属や保水剤等の構成成分の比率をある程度以上に確保できるため、所望の発熱性能を十分に得ることができるので好ましい。
シート2には、後述するように凝集剤が添加されていることが好ましい。
また、シート2には、必要に応じ、サイズ剤、着色剤、紙力増強剤、歩留向上剤、填料、増粘剤、pHコントロール剤、嵩高剤等の抄紙の際に通常用いられる添加物を特に制限無く添加することができる。該添加物の添加量は、添加する添加物に応じて適宜設定することができる。
前記シート2は、前記繊維状物以外の成分を50重量%以上含んでいることが好ましく、70重量%以上含んでいることがより好ましく、80重量%以上含んでいることがさらに好ましい。繊維状物以外の成分が50重量%以上であると、発熱温度を人の指先等で触って熱く感じる程度以上に十分に上昇させることができる。繊維状物以外の成分は多い程好ましいが、シート2の加工性を維持するのに必要な強度を得る点から、その上限は、98重量%程度とするのが好ましい。ここで、繊維状物以外の成分は、以下のように測定される。
前記シート2中の繊維状物以外の成分は、原料組成物中の固形分重量、組成並びにシート2の乾燥重量より以下の式から求められる。
原料組成物中の固形分の重量:Ms
原料組成物中の固形分中繊維状物の含有率:a(%)
シート2の乾燥重量:Mh
シート2中の繊維状物以外の成分の含有率:b
b=(Mh/Ms)×(100−a)
シート2は、全て同じ配合組成とすることもできるし、異なる配合組成とすることもできる。
シート2の裂断長は100〜4000m、特に200〜3000mであることが好ましい。該裂断長が100m以上であると、切り込み設けるときのシートの破断等が生じ難く、安定的に切り込みを設けることができる点で好ましい。また、使用時においても腰があり、使用感に優れるものが得られる。該裂断長が4000m以下であると、シート2を構成する繊維状物、接着成分の量を抑えることができ、得られる積層シート1は十分に柔軟なものとすることができ、発熱性能も十分なものとなる。ここで、裂断長は、シート2から長さ150mm×幅15mmの試験片を切り出した後、JIS P8113に準じ、該試験片をチャック間隔100mmで引っ張り試験機に装着し、引っ張り速度20mm/minで引っ張り試験を行い、下記計算式により算出される値である。
裂断長〔m〕=(1/9.8)×(引張強さ〔N/m〕)×106/(試験片坪量〔g/m2〕)
切り込み3が形成されていないシート2の坪量は10〜1000g/m2、特に50〜600g/m2であることが好ましい。該坪量が10g/m2以上であると被酸化性金属等の中でも比重の大きなものを使用する場合等においても安定したシートを形成することができるので好ましい。該坪量が1000g/m2以下であると使用感良好であり、生産性や操業性等にも優れる。
シート2の厚みは0.08〜1.2mmであることが好ましく、0.1〜0.6mmであることがより好ましい。該厚みが0.08mm以上であると、機械的強度、被酸化性金属や保水剤等の構成成分の定着も十分なものとなり、安定した均一の肉厚、組成分布が得られるので好ましいほか、ピンホールの発生等によるシートの破壊等も発生し難い。また、生産性及び加工性にも優れる。また、得られる発熱シートの発熱性も良好なものとなる。該厚みが1.2mm以下であると折曲強度の低下もなく、脆性破壊も起こし難く好ましい。また、肘、膝、顔等の身体部位の屈伸する部位に装着した場合、装着性が良好である。また、生産性においても、紙層形成時間や乾燥時間の面で、操業性に優れ、発熱性能の低下や、割れ、折れ等も発生し難く、加工性に優れている。
シート2には電解質が含まれていることが好ましい。前記電解質には、従来からこの種の発熱成形体に通常用いられている電解質を特に制限なく用いることができる。該電解質としては、例えば、アルカリ金属、アルカリ土類金属若しくは重金属の硫酸塩、炭酸塩、塩化物又は水酸化物等が挙げられる。そしてこれらの中でも、導電性、化学的安定性、生産コストに優れる点から塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、塩化鉄(第1、第2)等の各種塩化物が好ましく用いられる。これらの電解質は、単独で又は二種以上を組み合わせて用いることもできる。該電解質は、後述のようにシート2を積層して切り込みを施した後に含ませることが好ましい。
前記電解質の配合量は、シート2中の水重量比で0.5〜30重量%であることが好ましく、1〜25重量%であることがより好ましい。該配合量が0.5重量%以上であると、得られる積層シート1の酸化反応を十分に進行させることができる。また、発熱機能に必要な電解質を確保するための、シート2中の水分の比率も抑えることができ、積層シート1の水分比率が大きくなり、発熱温度上昇が小さくなるのを防止できるため好ましい。該配合量が30重量%以下であると電解質の析出もし難く、積層シート1の通気性が良好であり、また、発熱機能に必要な電解質を確保するために、積層シート1中の水分比率をある程度の大きさに保つことができ、十分な水が被酸化性金属等に供給され、発熱性能に優れ、また、シート2に均一に電解質を配合することができるので好ましい。
シート2は、含水率(重量含水率、以下同じ。)が10〜80%であることが好ましく、20〜60%であることがより好ましい。該含水率が10%以上であると酸化反応を持続するために必要な水分を十分に確保でき、積層シート1に均一に水分を供給することができる。また、均一な発熱性能を十分に得ることができる点で優れている。該含水率が80%以下であると積層シート1の発熱量に対する熱容量を抑えることができ、発熱温度上昇を十分なものとできる点で優れ、積層シート1の通気性も十分なものとなり、発熱性能に優れ、保形性や機械的強度も十分なものとなる。
シート2は、発熱到達温度が30〜100℃であることが好ましく、35〜90℃であることがより好ましい。シート2の発熱到達温度は、積層シート1の発熱到達温度に応じて任意に設計ができる。
シート2の水蒸気発生量は、0.1〜100mg/(cm2・10分)であることが好ましく、1〜50mg/(cm2・10分)であることがより好ましい。シート2の水蒸気発生量は、積層シート1の水蒸気発生量に応じて任意に設計ができる。
次に、積層シート1の製造方法について説明する。
積層シート1の製造に際しては、先ず、前記被酸化性金属、前記保水剤、前記繊維状物、及び水を含む原料組成物(スラリー)を調製し、該原料組成物からシート2を抄紙により成形する。
該原料組成物には、前記凝集剤を添加することが好ましい。
該凝集剤としては、硫酸バンド、ポリ塩化アルミニウム、塩化第二鉄、ポリ硫酸第二鉄、硫酸第一鉄等の金属塩からなる無機凝集剤;ポリアクリルアミド系、ポリアクリル酸ナトリウム系、ポリアクリルアミドのマンニッヒ変性物、ポリ(メタ)アクリル酸アミノアルキルエステル系、カルボキシメチルセルロースナトリウム系、キトサン系、デンプン系、ポリアミドエピクロヒドリン系等の高分子凝集剤;ジメチルジアリルアンモニウムクロライド系若しくはエチレンイミン系のアルキレンジクロライドとポリアルキレンポリアミンの縮合物、ジシアンジアミド・ホルマリン縮合物等の有機凝結剤;モンモリロナイト、ベントナイト等の粘土鉱物;コロイダルシリカ等の二酸化珪素若しくはその水和物;タルク等の含水ケイ酸マグネシウム等が挙げられる。そして、これら凝集剤の中でもシートの表面性、地合い形成、成形性の向上、被酸化性金属や保水剤等の構成成分の定着性、紙力向上の点からアニオン性のコロイダルシリカやベントナイト等とカチオン性のデンプンやポリアクリルアミド等の併用やアニオン性のカルボキシメチルセルロースナトリウム塩とカチオン性のポリアミドエピクロルヒドリン系のカチオン性とアニオン性の薬剤の併用が特に好ましい。上述の組み合わせ以外でも、これらの凝集剤は単独で又は二種以上を併用することもできる。
前記凝集剤の添加量は、原料組成物の固形分に対して、0.01〜5重量%であることが好ましく、0.05〜1重量%であることがより好ましい。0.01重量%以上であると、凝集効果に優れ、抄紙時の被酸化性金属や保水剤等の構成成分の脱落も抑えることができ原料組成物が均一となり、肉厚及び組成の均一なシートを得ることができる点で優れている。該添加量が5重量%以下であると、乾燥時の乾燥ロールへの貼りつき、破れ、焼け、焦げ等の発生を抑えることができ、生産性に優れ、原料組成物の電位バランスを良好に保ち、抄紙時の白水への被酸化性金属や保水剤等の構成成分の脱落量も抑えることができる点で優れている。また、シートの酸化反応の進行を適度に抑制し、発熱特性や強度等の保存安定性に優れる。
前記原料組成物の濃度は、0.05〜10重量%が好ましく、0.1〜2重量%がより好ましい。該濃度が0.05重量%以上であると大量の水を必要とせず、シートの成形にも大きな時間を要せずに均一な厚みのシートを成形することができる点で優れ、該濃度が10重量%以下であると原料組成物の分散状態も良好であり、得られるシートの表面性にも優れ、均一な厚みのシートが得られる点で優れている。
次に、前記原料組成物を抄紙してシート2を成形する。
シート2の抄紙方法には、例えば、連続抄紙式である円網抄紙機、長網抄紙機、ヤンキー抄紙機、ツインワイヤー抄紙機などを用いた抄紙方法、バッチ方式の抄紙方法である手漉法等が挙げられる。更に、前記原料組成物と、該原料組成物と異なる組成の組成物とを用いた多層抄き合わせによってシートを成形することもできる。また、前記原料組成物を抄紙して得られたシートどうしを多層に貼り合わせたり、該シートに該原料組成物と異なる組成を有する組成物から得られたシート状物を貼り合わせることによってシートを成形することもできる。
シート2は、抄紙後における形態を保つ(保形性)点や、機械的強度を維持する点から、含水率(重量含水率、以下同じ。)が70%以下となるまで脱水させることが好ましく、60%以下となるまで脱水させることがより好ましい。抄紙後のシート2の脱水方法は、例えば、吸引による脱水のほか、加圧空気を吹き付けて脱水する方法、加圧ロールや加圧板で加圧して脱水する方法等が挙げられる。
前記被酸化性金属を含有する2シートを、積極的に乾燥させて水分を分離することにより、製造工程中における被酸化性金属の酸化抑制、長期の保存安定性に優れたシートを得ることが可能となる。さらに、乾燥後の前記繊維状物への被酸化性金属の担持力を高めてその脱落を抑える点に加え、熱溶融成分、熱架橋成分の添加による機械的強度の向上が期待できる点から、シート2の抄紙後で前記電解質の電解液を含有させる前にこれらを乾燥させることが好ましい。
シート2は、加熱乾燥によって乾燥することが好ましい。この場合、加熱乾燥温度は、60〜300℃であることが好ましく、80〜250℃であることがより好ましい。加熱乾燥温度を斯かる温度範囲とすることで、乾燥時間を短くできるため、水分の乾燥に伴う被酸化性金属の酸化反応を抑えることができ、得られる発熱シートの発熱性の低下を防ぐことができる。また、発熱シートの表裏層の被酸化性金属の酸化反応を抑えることができるため、うす茶色に変色することを防ぐことができる。さらに、保水剤等の性能劣化を抑えることができるため、発熱シートの発熱効果が維持することができるほか、シート内部で急激に水分が気化してシートの構造が破壊されたりすることを防ぐことができる。
乾燥後におけるシート2の含水率は、20%以下であることが好ましく、10%以下であることがより好ましい。含水率が20%以下であると長期保存安定性に優れ、例えば巻きロール状態で一時保存しておく場合等においても該ロールの厚み方向で水分の移動が起こり難く、発熱性能、機械的強度に変化がなく、優れている。
シート2の乾燥方法は、当該シートの厚さ、乾燥前のシートの処理方法、乾燥前の含水率、乾燥後の含水率等に応じて適宜選択することができる。該乾燥方法としては、例えば、加熱構造体(発熱体)との接触、加熱空気や蒸気(過熱蒸気)の吹き付け、真空乾燥、電磁波加熱、通電加熱等の乾燥方法が挙げられる。また、前述の脱水方法と組み合わせて同時に実施することもできる。
シート2の成形(脱水、乾燥)は、不活性ガス雰囲気下で行うことが好ましいが、上述のようにシートに酸化助剤となる電解質を含有していないので、必要に応じて通常の空気雰囲気下で成形を行うこともできる。このため、製造設備を簡略化することができる。得られたシートは、薄くて破れにくいので、必要に応じ、ロール状に巻き取ることができる。
次に、図4に示すように、上述のようにして得られたシート2の帯状物を4枚重ね合わせた後に、重ね合わせた4枚のシートをスチールマッチングエンボスローラー10に通す。そして、重ね合わされたシート2の表裏両面側からその厚み方向にせん断力を加え、シートの搬送方向に沿って切り込み3を設けるとともに、切り込み3の両側の断層部分30に切り込み3の深さ方向にずれを設けて積層シート1の帯状物を製造する。なお、シートの多層化は、幅広のシートを折り重ねる(例えば、4層の場合は2回折り重ねる。)ことによって行うこともできる。
この切り込み3を設けるときにせん断力を作用させる凹凸部の側面間のクリアランス(本実施形態では、図5に示す、スチールマッチングエンボスローラー10の一対のローラー11、12の凸部110と凹部120の側面間のクリアランスC)は、0〜2mm、特に0.1〜0.5mmとすることが好ましい。該クリアランスを斯かる範囲とすることで、設けられる切り込みの両側の断層部分を粗くすることができるため、当該切り込みの両側の断層部分の深さ方向のずれの戻りを抑えることができ、シート2がほとんどずれることなく一体化された積層シート1を製造することができる。
また、凸部110とローラー12の凸部121との噛み込みの深さDは、切り込みを行う上で、積層シート1一枚の厚さの2分の1以上とすればよい。斯かる範囲内において、該深さDは深さ方向の切り込み量に応じて適宜設定することができる。凸部110の形状は、加工上の観点から半円状の形状が好ましい。また、凸部110及び凸部121の表面にはシート加工時の滑りを解消するために、シートの流れ方向にほぼ直交する方向の凹凸(例えば溝、図4のAで示す拡大部分の溝111参照。)や各種パターンなどの表面加工を施しておくことが好ましい。
このようにして得られた積層シート1は、切り込み3がシートの搬送方向に沿って多数設けられているとともに、その両側の断層部分30に所定の切り込み3の深さ方向のずれが設けられているため、その後の加工の際におけるシート2間のずれを確実に防ぐことができる。また、切り込みを有していないシートのみを積層した場合に比べて柔軟性にも優れている。
切り込み3が形成された積層シート1は、図4に示すように、シート反転用のサクションローラー13に巻回された状態でカッター14で所定長さに切断される。そして、例えば、上流の搬送経路から搬送されてくる透湿シート4上に載置され、その後の工程に搬送される。
切断された積層シート1は、以下に述べるように、前記電解質を含有させることで発熱シートとすることができる。この電解質を含有させる工程は、窒素、アルゴン等の不活性ガス雰囲気下で行うことが好ましいが、通常の空気雰囲気下で該電解質を含有させることもできる。
積層シート1に前記電解質を含有させる方法は、抄紙後におけるシート2の処理方法、含水率、形態等に応じて適宜設定することができる。該電解質を含有させる方法としては、例えば、前記積層シート1に、前記電解質の所定濃度の電解液を含浸させる方法、前記電解質の所定粒径のものを固体のまま添加して積層シートに含有させる方法等が挙げられる。積層シートに電解質を均一に含有させることができる点や含水率の調整が同時に行える点からは、所定濃度の電解液を含浸させる方法が好ましい。
上述のように前記電解質をその電解液で前記積層シートに含浸させる場合、その含浸方法は、該積層シートの厚み等の形態、含水率に応じて適宜選択することができる。該含浸方法には、該電解液を該積層シートにスプレー塗工する方法、所定濃度の電解液をシリンジ等で該シートの一部分に注入し、前記繊維状物の毛管現象を利用して該積層シート全体に浸透させる方法、刷毛等で塗工する方法、該電解液に浸漬する方法、グラビアコート法、リバースコート法、ドクターブレード法等が挙げられ、これらの中でも、電解質を均一に分布でき、簡便で、設備コストも比較的少なくて済む点からスプレー塗工する方法が好ましい。また、複雑な形状、層構成の商品においては生産性が向上する点や、最終仕上げを別工程とできることにより生産のフレキシブル性が良好となる点、設備が簡便となる点からは、所定濃度の電解液をシリンジ等で注入する方法が好ましい。この電解液を注入する方法は、該積層シートを所定の収容体に収容した後に行うこともできる。
上述のようにシートに電解質を含有させた後、必要に応じて含水率を調整し、安定化させて積層シート1とすることができる。そして必要に応じ、トリミング等の処理を施し、所定の大きさに加工することができる。得られた発熱シートは、未使用状態では酸素不透過性の包装材で包装されて提供される。得られた発熱シートは、通気性を有する袋等の収容体に収容されて使用される。
このようにして得られた発熱シートは、多数の切り込み3が設けられた積層シート1に電解質を含ませているため、シート2間のずれが確実に抑えられている。従って、その後の包装工程等においてシール部分へのシートのかみ込み等が抑えられる。また、本発明の発熱シートは柔軟性及び発熱特性にも優れている。
本発明は、前記実施形態に制限されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において適宜変更することができる。
本発明の積層シートは、前記実施形態の積層シート1のように、切り込み3が積層されたシート2の全てを貫通するように設けられていることが好ましいが、積層されたシートの一部のみを貫通するように設けることもできる。
以下、本発明の積層シートを実施例によりさらに具体的に説明する。
下記実施例1及び2のようにシートを作製し、得られたシートから下記のように積層シートを作製するとともに、該積層シートに電解質を含ませて発熱シートを作製した。そして、得られた積層シートにおけるシートのずれ難さを下記のような剥離強度によって評価するとともに、発熱シートの発熱特性を下記のように調べた。
〔実施例1〕
<原料組成物の配合>
被酸化性金属:鉄粉、同和鉄粉鉱業(株)製、商品名「RKH」、75重量%
繊維状物:パルプ繊維(NBKP、製造者:フレッチャー チャレンジ カナダ、商品名「Mackenzi」、CSF200ml)、15重量%
保水剤:活性炭、武田薬品(株)製、商品名「カルボラフィン」)、10重量%
上記原料組成物100重量部に対し
凝集剤:カルボキシメチルセルロースナトリウム(第一工業薬品(株)製、商品名「セロゲン」WS−C)0.25重量部、及びポリアミドエピクロロヒドリン樹脂(日本PMC(株)製、商品名「WS547」)0.5重量部
水:工業用水、固形分濃度0.3%となるまで添加
<抄紙条件>
上記原料組成物を用い、傾斜型短網小型抄紙機(高知県紙産業技術センター所有。)によって、ライン速度7m/分で抄紙して湿潤状態のシートを作製した。
<脱水・乾燥条件>
フェルトで挟持して加圧脱水し、そのまま120℃の加熱ロール間にライン速度7m/分で通し、含水率が5重量%以下になるまで乾燥した。
<積層及び切り込みの配設加工>
得られたシートを4枚重ねた後、図4に示す工程に従って、下記のように切り込みを設けるとともに、該切り込みの両側の断層部分に該切り込みの深さ方向に2mmのずれを設けた。
切り込みの長さL:6mm
切り込みの列内での間隔D1:20mm
切り込みの列の間隔D2:5mm
単位面積当たりの切り込みの数:80本
スチールマッチングロールの凹凸部分の側面間のクリアランスC:0.2mm
スチールマッチングロールの凹凸部分の噛み込みの深さ(シート表面からの押し込み)D:0.5mm
<電解液添加条件>
得られた積層シートに下記電解液をスプレー塗布して含浸させて含水率が36%の発熱シートを作製した。
<電解液>
電解質:精製塩(NaCl)
水:工業用水
電解液濃度:5wt%
〔実施例2〕
得られたシートを6枚重ね、切り込みの長さLを7mm、前記深さ方向のずれを2.5mmとした以外は、実施例1と同様にして発熱シートを作製した。そして、実施例1と同様にして剥離強度及び発熱特性を調べた。
〔180°剥離強度の測定〕
得られ積層シートから100×80mmの試料を切り出し、該試料の表層と他積層部をチャックにて把持し、下記条件で剥離強度を測定した。そして、該剥離強度によってシートのずれ難さを評価。
引張試験機:オリエンテック社製、テンシロン(ロードセル1kgf、レンジ200gf)
引っ張り速度:200mm/min
試験温度:180℃、20℃、50%RH
〔発熱シートの温度特性〕
得られた発熱シートから100mm×80mmの試験片を切り出した後、該発熱シートにJIS Z208で測定される透湿度が600g/(m2・24h)の透湿シートと、不透湿のシートとを両側に袋状に貼り合わせて包装した。
そして、容積4.2リットル、湿度1RH%以下とし、密封系内に5.0リットル/minの乾燥空気を供給可能な試験機を準備し、その内部に前記透湿シート側を上面として静置して発熱させた。
発熱シートの発熱温度は当該発熱シートの下側の温度を熱電対で測定した。
実施例1及び2の発熱シートの剥離強度は、それぞれ、60.5gf、46.4gfであり、シートどうしを単に重ね合わせた場合に比べて高かった。また、図6及び図7に示すように、最大発熱温度及び40℃以上継続時間ともに良好な発熱特性を示した。
本発明の積層シートの用途に特に制限はない。前記実施形態のような発熱シートとしての用途以外に、前記通気性を有する収容体内に収容され、例えば、洗浄・除菌、ワックス徐放、芳香、消臭等の諸機能剤と組み合わせ、フローリング、畳み、レンジ周り、換気扇等のハウスケア用途、車等の洗浄、ワックスかけ等のカーケア用途、顔、身体の洗浄、除菌、保湿、メイク落とし等のスキンケア用途にも適用することができる。
本発明の積層シートの一実施形態を模式的に示す斜視図である。 同実施形態の要部を模式的に示す図であり、(a)は拡大平面図、(b)は(a)のA−A矢視断面図、(c)はB−B矢視拡大断面図である。 本発明の積層シートの他の実施形態の要部を模式的に示す図であり、(a)は図1(b)相当図、(b)は図1(c)相当図である。 本発明の積層シートの一実施形態の製造工程を模式的に示す図である。 本発明の積層シートの一実施形態の製造工程における切り込みを設けるときのせん断力を作用させる凹凸部の位置関係を模式的に示す要部断面図である。 本発明の実施例の発熱特性を示すグラフである。 本発明の実施例の発熱特性を示すグラフである。
符号の説明
1、1’ 積層シート
2 シート
3 切り込み
30 断層部分

Claims (5)

  1. 複数のシートが重ね合わされた積層シートであって、重ね合わされた前記シートを貫く切り込みが設けられているとともに、該切り込みの両側の断層部分に該切り込みの深さ方向のずれが設けられている積層シート。
  2. 前記切り込みは、前記シートを全て貫くように設けられている請求項1記載の積層シート。
  3. 前記シートが被酸化性金属、保水剤及び繊維状物を含む抄造シートである請求項1又は2記載の積層シート。
  4. 請求項1記載の積層シートの製造方法であって、複数のシートを重ね合わせるか又は一枚のシートを折り重ね合わせた後に、重ね合わされた該シートの表裏両面側からその厚み方向にせん断力を加えて切り込みを設けるとともに、該切り込みの両側の断層部分に該切り込みの深さ方向にずれを設ける積層シートの製造方法。
  5. 前記ずれが設けられた前記シートを所定の大きさに切断し、切断された該シートを反転させた後に、別の搬送経路に移行する請求項4記載の積層シートの製造方法。

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