JP2005218423A - 養魚用固形飼料およびその製造方法 - Google Patents

養魚用固形飼料およびその製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】 油脂を高含有する養魚用固形飼料において、形状、物性がよく、油漏れ量が少ない高油脂含有の養魚用固形飼料およびその製造方法を提供する。
【解決手段】 油脂を高含有する養魚用固形飼料において、固形飼料の外側を常温で固まる性状を有する油脂にて被覆して、固形飼料に吸着された油分が油漏れしないようにした養魚用固形飼料。
【選択図】 なし

Description

本発明は水産養殖において利用される油脂を高含有する養魚用固形飼料に関する。
水産養殖における養魚用飼料はその生産性、環境問題から固形化が進み、更にその生産物の食味の問題等から油脂を高含有する養魚用飼料の開発が望まれている。通常使われている油脂は常温で液体であり、大量の油脂を固形飼料の成形前の飼料混合物中に添加すれば、成形時に圧力が加わり難く、得られる固形飼料の物性は脆く、耐久性は劣るものとなる。また、多量の油脂を成形後の固形飼料に添加すれば、貯蔵期間中に滲みや漏れが発生するとか、養殖魚に投与する際、水質を汚染させるなどの問題を引起す他、飼料製造工程においても輸送機、包装機を汚し、装置の故障原因となるなどの問題がある。
現在使用の油脂含量の高い養魚用固形飼料は脂肪含有量として、約20〜30%程度のものである。更にその比率を高めて欲しいとの要望もあるが、上記課題解決のため、例えば特開平3−108454は、油脂含有率が10〜50%の養魚用ドライペレットを製造する場合において、グリセリン脂肪酸エステル等を油脂に対し0.1〜10%添加することを提案し、更に油脂としては硬化油も使用できるとしている。しかしながら、押出し成形する前の飼料混合物にグリセリン脂肪酸エステルと多量の油脂を添加することは、押出し成形の際、圧力がかからず成形性が悪く、壊れやすい固形飼料となることが知られている。
特表平9−502101は多孔質ペレット飼料に脂質とモノグリセリド、ジグリセリドなどの乳化剤またはナタネ調質油との混合物により結晶構造を形成させ、脂質を飼料中に保持させることが提案されている。しかし、このようにして得られた多孔質ペレットも、ある程度の油漏れの問題があることが知られている。
特表2001−527405では、養魚飼料の主要原料に、通常の環境下で固体である脂質又は脂肪酸の添加物を添加混合し、プレコンディショニングを行った後、押出し成形したペレットに魚油など吸収させることで離油を防ぐことが提案されている。しかし、添加物を成形前に通常の環境下で固体である脂質又は脂肪酸の添加物を加え、成形後に魚油などの油を吸収させるものであるので、気温が高くなると油脂が滲み易くなる難点がある。また、原料コストが非常に高くなり、コスト削減のため、脂質又は脂肪酸等の添加剤の添加量を減らして得られるペレットでは、油の漏出を防げない事が判っている。
従来技術に従って製造される油脂を高含有する養魚用固形飼料の多くは、その物性が不満足であるか、または油脂が滲み易く又は油漏れが多く不経済であり、また水質汚染になるなどの問題がある。
本発明は油脂を高含有する養魚用固形飼料において、形状、物性がよく、油漏れ量が少ない高油脂含有の養魚用固形飼料およびその製造方法を提供することにある。
上記課題を解決するために本発明者が鋭意検討を行った結果、固形飼料の外側を常温で固まる性状を有する油脂にて被覆することにより、形状、物性がよく、油漏れ量が少ない高油脂含有の養魚用固形飼料を得ることに成功し、本発明を完成するに至った。
すなわち本発明は油脂を高含有する養魚用固形飼料において、固形飼料の外側を常温で固まる性状を有する油脂にて被覆してなる養魚用固形飼料であり、また油脂が水素添加魚油、水素添加菜種油、水素添加大豆油、水素添加ヒマワリ油及び水素添加パーム油等の硬化油と通常の油脂との混合物、又はパームステアリン、パーム油をエステル交換処理した油脂から選択される1種以上の油脂、又はパームステアリン、パーム油をエステル交換処理した油脂から選択される1種以上の油脂と通常の油脂との混合物である前記飼料である。
また、本発明は固形飼料に通常の油脂を添加後、更に常温で固まる性状を有する油脂を添加して固形飼料を被覆する養魚用固形飼料の製造方法であり、また、減圧下にて常温で固まる性状を有する油脂を添加して固形飼料を被覆する前記製造方法である。
本発明における油脂を高含有する養魚用固形飼料とは、脂肪分として飼料中10〜40%含有する飼料である。
また、固形飼料とはペレットミル、エキスパンダーとペレットミル、1軸または2軸のエクストルーダー等の成形機にて押出し成形された固形飼料をいい、ペレットまたは多孔性ペレットと言われる。押出し成形された固形飼料の嵩比重は約400〜700g/Lであり、好ましくは500〜600g/Lである。
本発明の養魚用固形飼料は通常次のような方法で製造される。
(1)飼料原料混合物に蒸気または水分を添加後成形機にて固形状に成形する。(2)この成形したものを乾燥した後、油脂を添加吸着させる。(3)更に、油脂を吸着した固形飼料に対し、常温で固まる性状を有する油脂を添加し固形飼料を被覆する。
本発明で使用される油脂以外の原料としては魚粉、大豆油粕、小麦グルテン、コーングルテンミールなどの蛋白源、小麦粉、澱粉、加工澱粉など炭水化物・バインダー、ビタミン類、ミネラル類などの栄養成分が挙げられ、これらを適宜選択して使用する。
また、魚粉も油脂源となるが、本発明において油脂原料は通常3工程にて添加される。すなわち▲1▼成形時のプレコンディショナーでの添加、▲2▼次に成形、乾燥後に添加、▲3▼更に、常温で固まる性状を有する油脂を添加し被覆する。
成形時のプレコンディショナーでの添加および成形、乾燥後に添加する油脂としてはタラ肝油、イワシ油、イカ油、シシャモ油、ニシン油およびウグイ油のような魚油が挙げられ、これら油脂は単一でもよく、個々の油脂の混合物でもよい。通常プレコンディショナーでは飼料全体の3〜15%(重量%)が添加され、更に成形、乾燥後に10〜30%程度添加される。これら油脂の添加量は対象とする魚種の栄養要求により適宜その必要量を選択できる。
本発明においては油脂を吸着させた上記固形飼料の外側に常温で固まる性状を有する油脂を添加し、被覆させる。この際に使用する油脂は通常の魚油、穀物油などを水素添加により製造したものと魚油との混合物、又はパームステアリン、パーム油をエステル交換処理した油脂から選択される1種以上と魚油との混合物、又はパームステアリン、パーム油をエステル交換処理した油脂から選択される1種以上の油脂であればよく、融点としては40〜65℃程度のものが望ましく、特に40〜50℃のものが好ましい。添加量としては少ないと被覆効果が出ず、また量が多すぎると消化に難点があるので2〜6%の範囲が望ましい。
押出し成形された固形飼料への油脂添加については、押出し成形の直後に行う場合と、少し時間を経た後に行う場合とがある。油脂添加は混合、漬込み、噴霧、コーティング、その他など種々の手段によって実施できる。また、油脂の添加は常圧下の回転ドラムで混合することでも可能であるが、加圧下あるいは減圧下でも可能であり、減圧下で添加すると固形飼料に油脂が十分に吸着または被覆されるので望ましい。
例えば押出し成形された固形飼料を減圧下に置き、同時あるいは続いて油脂と接触させる。この段階の圧力は1〜50kPaの間で、好ましくは10〜30kPaである。固形飼料への油脂吸着時間は30秒〜10分、より好ましくは2〜5分である。減圧下で固形飼料に油脂を吸着させた後、圧力は常圧に戻される。固形飼料により多くの油脂を吸着させる為に、油脂を添加する工程を2回以上反復してもよい。
本発明では、最終油脂添加工程において、常温で固まる性状を有する油脂を添加するが、これは予め加温し、融解した後に使用する。減圧下で油脂を添加する場合、先ず、常温では固まらない通常の融点の油脂を減圧下で吸着させ、圧力を常圧に戻す間に融点の高い油脂を添加する方法をとることが出来る。また、減圧下の油脂添加を2回行う場合は、前の工程で使用した油脂より高い融点の油脂を2回目に使用するのが望ましい。
油脂添加後はクーラーにより固形飼料の品温が下げられ、製品は包装、保管される。固形飼料外側の融点の高い油脂は常温に戻ると固体となり、プレコンディショナー等の前工程で添加した常温で液体の油脂を、固形飼料内部に閉じ込めた形となる。
本発明の養魚用固形飼料はブリ、タイ、ギンザケ、シマアジ、カンパチ、フグ、ウナギ、コイ、マスなどの養殖魚に給餌することが出来る。
本発明により、油脂を高含有する養魚用固形飼料において、油漏れの程度が従来技術に比べ極端に少なくすることができたため、保管中や使用時に油脂のロスを極端に少なくでき、経済的で、かつ水質を汚さない養魚用固形飼料が提供される。
また、本発明において使用する油脂が硬化油単独の場合に比しハンドリングも容易となり、かつ被覆に用いる油脂量も多くすることができるので添加の均一性も上昇し見場が良くなるほか、油脂漏れ防止効果も大きくなるなどの効果があり、コストダウンにもつながるものである。
以下に、実施例を示して本発明を具体的に説明するが、本発明はこれら実施例により制限されるものではない。
〔実施例1〕
表1に示す基本原料を配合粉砕して原料配合品を製造した。この原料配合品はウェンガー製2軸エクストルーダーTX−115型を用いて、プレコンディショナーにて水分の調湿と表1に示す油脂添加を行い、2T/Hで押し出し成形した。得られた固形飼料は直径16mm、長さ14mmで概ね円筒形だった。この押出された固形飼料は水分含量が約22%であり、次に乾燥機を通過させ、水分量をほぼ10%以下まで減少させた。この乾燥した固形飼料を減圧式油脂添加装置に投入し、まず25kPa前後まで減圧し、次いで通常の魚油10%を添加した。添加後、常圧に戻し固形飼料に魚油を完全に含浸させた後に、2回目の油脂添加において、70℃に温めておいた、パーム硬化油脂と魚油を半々混合した油脂(融点43〜46℃)4%を添加し、次いで冷却して本発明の養魚用固形飼料を得た。
Figure 2005218423
〔実施例2〕
実施例1と同様にして得られた固形飼料を減圧式油脂添加装置にて25kPa前後まで減圧し、固形飼料に魚油を8%添加し、その後実施例1と同様の方法にてパーム硬化油と魚油を半々混合した油脂(融点43〜46℃)6%を添加し本発明の養魚用固形飼料を得た。
〔対照例〕
実施例1と同様にして得た固形飼料を減圧式油脂添加装置に投入し、25kPa前後まで減圧した後、通常の液状魚油を14%添加し、融点の高い油脂を使用しない以外は実施例1と同様にして製造し、対照飼料を得た。
(結果)
各実施例飼料及び対照飼料の油脂含量は表2に示す通りであった。また、各飼料の油漏れ量を次の方法で測定した。養魚用固形飼料を5個ずつ取り重量を測定する。各飼料を、濾紙を敷いた皿に取り、その上に2kgの加重をかけた。皿を40℃の恒温器中で一晩置いた後、濾紙の重量を測定し、その増加量を油漏れ量とし粗脂肪分に対する割合で算出した。測定結果は表2の通りである。本測定は実際の工場での保管条件(パレット3段積み重ね)の下部圧力を想定したものである。
Figure 2005218423
各飼料の粗脂肪含量は何れも25%台であった。本発明による製造方法およびそれにより得られた養魚用固形飼料の油漏れ量は2.8〜5.5%であり、対照飼料の26.1%に比し格段と優れたものであった。油脂を高含有する養魚用固形飼料においてこのように低いレベルの油漏れは、従来の技術では達成できなかったものである。

Claims (4)

  1. 油脂を高含有する養魚用固形飼料において、固形飼料の外側を常温で固まる性状を有する油脂にて被覆してなることを特徴とする養魚用固形飼料。
  2. 常温で固まる性状を有する油脂が水素添加魚油、水素添加菜種油、水素添加大豆油、水素添加ヒマワリ油及び水素添加パーム油等の硬化油と通常の油脂との混合物である請求項1記載の飼料。
  3. 常温で固まる油脂がパームステアリン、パーム油をエステル交換処理した油脂から選択される1種以上と通常の油脂の混合物である請求項1記載の飼料。
  4. 常温で固まる油脂がパームステアリン、パーム油をエステル交換処理した油脂から選択される1種以上である請求項1記載の飼料。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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