JP2005209745A - 抵抗体ペースト及びその製造方法、抵抗体及び電子部品 - Google Patents
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Abstract
【課題】 例えば10kΩ/□以上の高い抵抗値を有する抵抗体において、温度特性(TCR)及び耐電圧特性(STOL)の両立を図る。
【解決手段】 少なくともガラス組成物と導電性材料とを有機ビヒクルに分散してなる抵抗体ペーストである。ガラス組成物は、B2O3及びSiO2の少なくとも一方を含み、ガラス組成物中におけるこれら成分の比率が一定ではない。例えば、ガラス組成物を3点以上組成分析したときに、B2O3及びSiO2の合計の比率の相違が測定誤差範囲内であり、B2O3又はSiO2の比率の最大値と最小値の差が1モル%以上である。
【選択図】 なし
【解決手段】 少なくともガラス組成物と導電性材料とを有機ビヒクルに分散してなる抵抗体ペーストである。ガラス組成物は、B2O3及びSiO2の少なくとも一方を含み、ガラス組成物中におけるこれら成分の比率が一定ではない。例えば、ガラス組成物を3点以上組成分析したときに、B2O3及びSiO2の合計の比率の相違が測定誤差範囲内であり、B2O3又はSiO2の比率の最大値と最小値の差が1モル%以上である。
【選択図】 なし
Description
本発明は、抵抗体ペースト及びその製造方法に関するものであり、特に、含まれるガラス組成物の改良に関する。さらには、これを適用した抵抗体及び電子部品に関する。
例えば抵抗体ペーストは、一般に、抵抗値の調節及び結合性を与えるためのガラス組成物と、導電性材料と、有機ビヒクルとを主たる成分として構成されており、これを基板上に印刷した後、焼成することによって、厚さ5〜20μm程度の厚膜抵抗体が形成される。そして、この種の抵抗体ペースト(厚膜抵抗体)においては、通常、導電性材料として酸化ルテニウム(RuO2)や鉛ルテニウム酸化物等が用いられ、ガラスとして酸化鉛(PbO)系ガラス等が用いられている。
近年、環境問題が盛んに議論されてきており、鉛等の有害物質の電子部品からの排除が進められている。前記抵抗体ペーストや厚膜抵抗体も例外ではなく、鉛フリーとするための研究が行われている。
抵抗体ペーストの鉛フリー化における課題の一つとして、特に高抵抗(10kΩ/□以上)の抵抗体ペーストにおいて、温度特性(TCR)と耐電圧特性(STOL)の両立が挙げられる。例えば、従来の鉛系抵抗体ペーストにおいて用いられてきた金属酸化物を添加することによるTCRの調節を、そのまま鉛フリーの組成に応用した場合、電圧印加による抵抗値の変動が鉛系組成と比較して大きく起こるため、結果としてTCRとSTOLの両立を実現することは困難である。
このような事情から、鉛を含まないガラス組成物、鉛を含まない導電性材料、及び有機ビヒクルを主成分とする抵抗体ペーストにおいて、添加物としてCaTiO3若しくはNiOを添加し、温度特性(TCR)と耐電圧特性(STOL)とを両立する試みがなされている(例えば、特許文献1等を参照)。
特許文献1には、抵抗体ペーストに例えばCaTiO3を0vol%超、13vol%以下、若しくはNiOを0vol%超、12vol%以下含有させることが好ましく、さらにはCuO、ZnO、MgO等の添加物を同時に添加させることが好ましい旨の記述があり、それにより、高い抵抗値を有しながらも、抵抗値の温度特性(TCR)および耐電圧特性(STOL)が小さい抵抗体を得ることに適した鉛フリーの抵抗体ペーストを提供することが可能であるとされている。
特開2003−197405号公報
しかしながら、特許文献1記載の発明のように、添加物を多量に含有させることでTCR特性を調整した抵抗体ペーストを用いて形成された抵抗体では、従来の鉛系組成の抵抗体ペーストを用いた場合よりもSTOL特性が低下する傾向にある。したがって、例えば添加物をあまり多量に添加しない状態で、STOL特性をさらに向上させることが望まれる。
そこで本発明はこのような従来の実情に鑑みて提案されたものであり、例えば10kΩ/□以上の高い抵抗値を有し、温度特性(TCR)及び耐電圧特性(STOL)の双方に優れた抵抗体の形成が可能な抵抗体ペースト及びその製造方法を提供することを目的とする。また、本発明は、高抵抗で温度特性(TCR)及び耐電圧特性(STOL)に優れた抵抗体を提供し、さらには電子部品を提供することを目的とする。
本発明者らは、高抵抗の抵抗体において、温度特性(TCR)と耐電圧特性(STOL)を両立することを目的に、長期に亘り種々の研究を重ねてきた。その結果、用いるガラス組成物を工夫することで、実現可能であるとの結論を得るに至った。
本発明は、このような知見に基づいて完成されたものである。すなわち、本発明に係る抵抗体ペーストは、少なくともガラス組成物と導電性材料とを有機ビヒクルに分散してなる抵抗体ペーストであって、前記ガラス組成物は、B2O3及びSiO2の少なくとも一方を含み、当該ガラス組成物中におけるこれら成分の比率が一定ではないことを特徴とする。具体的には、前記ガラス組成物を3点以上組成分析したときに、B2O3及びSiO2の合計の比率の相違が測定誤差範囲内であり、B2O3又はSiO2の比率の最大値と最小値の差が1モル%以上であることを特徴とする。
本発明の抵抗体ペーストでは、含まれるガラス組成物の組成が抵抗体ペースト内で均一でないことが大きな特徴である。特に、B2O3及びSiO2の比率が一定ではない。このような組成分布を持つガラス組成物を用いることで、従来のPbフリーガラス組成物を用いた抵抗体ペーストと比べて、温度特性(TCR)と耐電圧特性(STOL)の両者が大幅に改善される。
抵抗体ペーストに含まれるガラス組成物の組成に前述のような分布を持たせるには、ガラス組成物の製造に工夫を要する。これを規定したのが、本発明の抵抗体ペーストの製造方法である。すなわち、B2O3及びSiO2の少なくとも一方を含むガラス組成物を作製し、当該ガラス組成物及び導電性材料を有機ビヒクルと混合する抵抗体ペーストの製造方法であって、前記ガラス組成物の作製に際し、B2O3及びSiO2以外の原料を予め混合して混合粉とした後、B2O3及びSiO2の配合比に従って前記混合粉を取り分け、それぞれにB2O3またはSiO2を加え、るつぼ中で熱処理を行い、急冷によりガラス化することを特徴とする。
本発明の抵抗体ペースト及びその製造方法によれば、高い抵抗値を有し、且つTCR特性及びSTOL特性の両者に優れた抵抗体を形成し得る抵抗体ペーストを提供することができる。したがって、この抵抗体ペーストを抵抗体、電子部品の形成に適用することで、高抵抗値を有し、しかも温度特性(TCR)及び耐電圧特性(STOL)に優れた抵抗体、電子部品を得ることが可能である。
以下、本発明に係る抵抗体ペースト及びその製造方法、抵抗体及び電子部品について説明する。
抵抗体ペーストは、ガラス組成物及び導電性材料、さらには必要に応じて添加物を有機ビヒクルに分散してなるものである。ここで、本発明の抵抗体ペーストに用いられるガラス組成物は、その組成は特に限定されないが、本発明では環境保全上、鉛を実質的に含まない鉛フリーのガラス組成物を用いることが好ましい。なお、本発明において、「鉛を実質的に含まない」とは、不純物レベルとは言えない量を越える鉛を含まないことを意味し、不純物レベルの量(例えば、ガラス組成物中の含有量が0.05重量%以下程度)であれば含有されていてもよい趣旨である。鉛は、不可避不純物として極微量程度に含有されることがある。
ガラス組成物は、抵抗体とされたとき、抵抗体中で導電性材料及び添加物を基板と結着させる役割を持つ。ガラス組成物は、原料として、修飾酸化物成分、網目形成酸化物成分等を混合して用いる。主たる修飾酸化物成分としては、アルカリ土類酸化物、具体的にはCaO、SrO、BaOから選ばれる少なくとも1種を挙げることができる。また、網目形成酸化物成分としては、B2O3及びSiO2を挙げることができる。また、前記主たる修飾酸化物成分の他、その他の修飾酸化物成分として、任意の金属酸化物を用いることができる。具体的な金属酸化物は、例えばZrO2、Al2O3、ZnO、CuO、NiO、CoO、MnO、Cr2O3、V2O5、MgO、Li2O、Na2O、K2O、TiO2、SnO2、Y2O3、Fe2O3等から選ばれる少なくとも一種であり、中でもZrO2、Al2O3、MnOから選ばれる少なくとも一種であることが好ましい。
ガラス組成物における各成分の含有量にはそれぞれ最適範囲が存在し、例えば主たる修飾酸化物成分の含有量が少なすぎると、導電性材料との反応性が低下し、TCR、STOL特性を劣化させるおそれがある。逆に、主たる修飾酸化物成分の含有量が多すぎる場合、抵抗体を形成した時に、過剰な金属酸化物の析出が起こり、特性、信頼性を劣化させるおそれがある。網目形成酸化物成分の含有量が少ない場合、ガラス組成物の軟化点が高くなるため、所定の焼成温度にて抵抗体を形成した場合、抵抗体の焼結が不十分となり、信頼性を著しく低下させるおそれがある。逆に、網目形成酸化物成分の含有量が多すぎる場合、ガラス組成物の耐水性が低下するため、抵抗体としたときの信頼性を著しく低下させるおそれがある。また、その他の修飾酸化物成分の含有量が少なすぎる場合、ガラス組成物の耐水性が低下するため、抵抗体としたときの信頼性を著しく低下させるおそれがある。逆に、その他の修飾酸化物成分の含有量が多すぎる場合、抵抗体を形成した時に、過剰な金属酸化物の析出が起こり、特性、信頼性を劣化させるおそれがある。
本発明では、抵抗体ペーストに用いるガラス組成物の組成を均一とするのではなく、特にB2O3及びSiO2の組成に着目し、これらの比率が一定でない状態、すなわち所定の分布を持った状態とする。具体的には、ガラス組成物を3点以上組成分析したときに、B2O3及びSiO2の合計の比率の相違が測定誤差範囲内であり、B2O3又はSiO2の比率の最大値と最小値の差が1モル%以上となるようにする。前記B2O3又はSiO2の比率の最大値と最小値の差は、3モル%以上とすることが好ましい。他の成分については、基本的にはこのような分布は必要なく、前記のようにガラス組成物を3点以上組成分析したときに、これら成分の比率の相違は、測定誤差範囲内とする。
ガラス組成物に前述のような組成分布を持たせるためには、ガラス組成物の作製に際し、B2O3及びSiO2以外の原料を予め混合して混合粉とした後、B2O3及びSiO2の配合比に従って混合粉を取り分け、それぞれにB2O3またはSiO2を加える。こうしてから、るつぼ中で熱処理を行い、急冷によりガラス化する。B2O3やSiO2を別々に他の成分と混合することで、ガラス組成中のB2O3やSiO2の組成が不均一化され、前述の組成分布が実現される。
前記ガラス組成物の作製に際しては、熱処理を空気中、1000℃以上で行うことが好ましい。るつぼとしては、通常、Ptるつぼが用いられる。ガラス化後、得られたガラス材料を粉砕し、ガラス組成物の微粉末とする。この微粉末とされたガラス組成物において、前述の組成分布が踏襲される。
なお、ガラス組成物においては、各酸化物はそのままの形で含有されるわけではなく、例えば複合酸化物の形態となっているものと推測される。しかしながら、本明細書においては、ガラス組成物における組成の表記は、通例にしたがい、各酸化物に換算したときの値として表記する。例えば、本発明に係る抵抗体ペースト用ガラス組成物は、厳密に言えばBやSiをB2O3やSiO2の形態のままで含有するわけではなく、したがって、「B2O3又はSiO2の比率の最大値と最小値の差が1モル%以上」とは、「BやSiの比率の最大値と最小値の差がB2O3換算、あるいはSiO2換算で1モル%以上」という意味である。
抵抗体ペーストを製造するには、前述の方法でガラス組成物を作製した後、これを導電性材料及び必要に応じて添加物とともに有機ビヒクルと混合すればよい。ここで、導電性材料は、絶縁体であるガラス中に分散されることで、構造物である厚膜抵抗体に導電性を付与する役割を持つ。導電性材料は、環境保全上、やはり鉛を実質的に含まない導電性材料を用いることが好ましい。ここでは、先のガラス組成物との組合せを考慮して、RuO2、またはRu複合酸化物を用いる。Ru複合酸化物としては、CaRuO3、SrRuO3、BaRuO3、Bi2Ru2O7から選ばれる少なくとも1種が好ましい。
抵抗体ペースト中の導電性材料の含有量は、ガラス組成物、導電性材料、及び添加物の合計重量を100重量%とした場合に、9.4重量%〜53.3重量%とするのが好ましい。導電性材料の含有量が前記範囲を下回る場合、抵抗値が高くなりすぎてしまい、抵抗体ペーストとしての使用に適さなくなるおそれがある。逆に、導電性材料の含有量が前記範囲を越えると、ガラス組成物による導電性材料の結着が不十分になり、信頼性が低下するおそれがある。
抵抗体ペースト中のガラス組成物の含有量は、導電性材料、ガラス組成物、添加物の合計の重量を100重量%とした時に、47.7重量%〜90.6重量%とするのが好ましい。含有量が少ない場合、導電性材料、添加物の結着が不十分となり、信頼性が著しく低下するおそれがある。逆に、ガラス組成物の含有量が前記範囲を越えると、抵抗値が高くなり過ぎてしまい、抵抗体ペーストとしての使用に適さなくなるおそれがある。
抵抗体ペーストには、前述のガラス組成物、導電性材料の他、特性の調整等を目的として、添加物が含まれていてもよい。抵抗体ペーストにおける添加物の含有量は、ガラス組成物、導電性材料、及び添加物の合計重量を100重量%とした場合に、0〜27.2重量%とするのが好ましく、1.0重量%〜27.2重量%とするのがより好ましい。添加物の含有量が少ない場合、十分な特性の調整が困難となる。逆に、添加物の含有量が多すぎる場合、導電性材料、添加物の結着が不十分となり、信頼性が著しく低下するおそれがある。
添加物としては、任意の金属酸化物を用いることができる。具体的には、MgO、TiO2、SnO2、ZnO、CoO、CuO、NiO、MnO、Mn3O4、Fe2O3、Cr2O3、Y2O3、V2O5等が挙げられる。中でも、TCR調整剤として効果の高い酸化物であるCuO、NiO、MgOが好ましい。それぞれの添加物の含有量が多すぎる場合、STOL特性が劣化するおそれがある。
有機ビヒクルは、ガラス組成物、導電性材料と添加物とを混練しペースト化させる役割を有し、この種の抵抗体ペーストに用いられるものがいずれも使用可能である。有機ビヒクルは、バインダを有機溶剤中に溶解することによって調製されるものである。バインダとしては、特に限定されず、例えば、エチルセルロース、ポリビニルブチラール等、各種バインダから適宜選択すればよい。有機溶剤も限定されず、テルピネオール、ブチルカルビトール、アセトン、トルエン等、各種有機溶剤から適宜選択すればよい。さらに、抵抗体ペーストの物性を調節するために、分散剤等の各種添加剤を加えてもよい。
前記有機ビヒクルの配合比率であるが、ガラス組成物、導電性材料、及び添加物を合計した合計重量(W1)と、有機ビヒクルの重量(W2)の比率(W2/W1)が、0.25〜4(W2:W1=1:0.25〜1:4)であることが好ましい。より好ましくは、前記比率(W2/W1)が0.5〜2である。前記比率を外れると、抵抗体を例えば基板上に形成するのに適した粘度の抵抗体ペーストを得ることができなくなるおそれがある。
抵抗体を形成するには、前述の成分を含む抵抗体ペーストを例えば基板上にスクリーン印刷等の手法で印刷(塗布)し、850℃程度の温度で焼成すればよい。基板としては、Al2O3基板やBaTiO3基板の誘電体基板や、低温焼成セラミック基板、AlN基板等を用いることができる。基板形態としては、単層基板、複合基板、多層基板のいずれであってもよい。多層基板の場合、抵抗体は、表面に形成してもよいし、内部に形成してもよい。
抵抗体の形成に際しては、通常、基板に電極となる導電パターンを形成するが、この導電パターンは、例えば、AgやPt、Pd等を含むAg系の良導電材料を含む導電ペーストを印刷することにより形成することができる。また、形成した抵抗体の表面に、ガラス膜等の保護膜を形成してもよい。
本発明の抵抗体を適用可能な電子部品としては特に限定されないが、例えば単層または多層の回路基板、チップ抵抗器等の抵抗器、アイソレータ素子、C−R複合素子、モジュール素子の他、積層チップコンデンサ等のコンデンサやインダクタ等が挙げられ、コンデンサやインダクタ等の電極部分にも適用することができる。
以下、本発明を適用した具体的な実施例について、実験結果に基づいて説明する。なお、本発明が以下の実施例に限定されるものでないことは言うまでもない。
<ガラス組成物の作製>
B2O3、SiO2、CaCO3、ZrO2を所定量秤量し、ボールミルにて混合した後、乾燥した。得られた粉末をPtるつぼに投入し、空気中で5℃/分の速度で1300℃まで昇温し、その温度に1時間保持した後に急冷し、ガラス化した。得られたガラス化物をボールミルで粉砕し、ガラス組成物粉末を得た。作製したガラス組成物の仕込み組成は、CaO:B2O3:SiO2:ZrO2=34:36:25:5(mol%)である。これをガラスNo.1(比較例ガラス)とした。
B2O3、SiO2、CaCO3、ZrO2を所定量秤量し、ボールミルにて混合した後、乾燥した。得られた粉末をPtるつぼに投入し、空気中で5℃/分の速度で1300℃まで昇温し、その温度に1時間保持した後に急冷し、ガラス化した。得られたガラス化物をボールミルで粉砕し、ガラス組成物粉末を得た。作製したガラス組成物の仕込み組成は、CaO:B2O3:SiO2:ZrO2=34:36:25:5(mol%)である。これをガラスNo.1(比較例ガラス)とした。
同様に、B2O3、SiO2、CaCO3、ZrO2を所定量秤量し、先ずCaCO3、ZrO2のみを混合し、得られた混合粉を6:4(仕込み組成におけるB2O3とSiO2の比)に取り分けた。そして、量の多い方(6/10)にB2O3を、量の少ない方(4/10)にSiO2を加え、それぞれボールミルにて混合し、乾燥した。これらをPtるつぼに投入し、空気中で5℃/分の速度で1300℃まで昇温し、その温度に1時間保持した後に急冷し、ガラス化した。得られたガラス化物をボールミルで粉砕し、ガラス組成物粉末を得た。作製したガラス組成物の仕込み組成は、CaO:B2O3:SiO2:ZrO2=34:36:25:5(mol%)である。これをガラスNo.2(実施例ガラス)とした。
<組成分析>
各ガラス組成物について、ICP定量分析により組成分析を行った。分析に際しては、Ptるつぼに試料0.05g、NaCO30.5g+H3BO30.5gを入れ、ガスバーナーで溶融後、HCl20mlを加えて加熱溶解し、500mlに定容後、ICP−AESにより定量した。別途、B測定用に、NaCO32gで溶融した溶液を準備し、ICP−AESによりBを定量した。測定には、島津製作所社製、商品名ICPS−8000を使用した。また、測定は5点について行った。ガラスNo.1
(比較例ガラス)の分析結果を表1に、ガラスNo.2(実施例ガラス)の分析結果を表2に示す。
各ガラス組成物について、ICP定量分析により組成分析を行った。分析に際しては、Ptるつぼに試料0.05g、NaCO30.5g+H3BO30.5gを入れ、ガスバーナーで溶融後、HCl20mlを加えて加熱溶解し、500mlに定容後、ICP−AESにより定量した。別途、B測定用に、NaCO32gで溶融した溶液を準備し、ICP−AESによりBを定量した。測定には、島津製作所社製、商品名ICPS−8000を使用した。また、測定は5点について行った。ガラスNo.1
(比較例ガラス)の分析結果を表1に、ガラスNo.2(実施例ガラス)の分析結果を表2に示す。
ガラスNo.1(比較例ガラス)では、組成がほとんど一様であり、B2O3の比率の最大値と最小値の差は0.33モル%、SiO2の比率の最大値と最小値の差は0.23モル%であった。これに対して、ガラスNo.2(実施例ガラス)では、B2O3とSiO2の合計の比率はほとんど変わらないが、B2O3の比率の最大値と最小値の差は4.60モル%、SiO2の比率の最大値と最小値の差は5.05モル%であった。
<導電性材料の作製>
CaCO3粉末とRuO2粉末をCaRuO3となるように秤量し、ボールミルにて混合して乾燥した。得られた粉末を5℃/分の速度で1200℃まで昇温し、その温度に5時間保持した後、5℃/分の速度で室温まで冷却することによってCaRuO3の粉末を得た。得られた導電性材料は、ボールミルにて粉砕した。
CaCO3粉末とRuO2粉末をCaRuO3となるように秤量し、ボールミルにて混合して乾燥した。得られた粉末を5℃/分の速度で1200℃まで昇温し、その温度に5時間保持した後、5℃/分の速度で室温まで冷却することによってCaRuO3の粉末を得た。得られた導電性材料は、ボールミルにて粉砕した。
<添加物>
添加物として、CuO、NiO、MgO等を用いた。
添加物として、CuO、NiO、MgO等を用いた。
<有機ビヒクルの作製>
バインダとしてエチルセルロース、有機溶剤としてテルピネオールを用い、有機溶剤を加熱撹拌しながらバインダを溶かして、有機ビヒクルを作製した。
バインダとしてエチルセルロース、有機溶剤としてテルピネオールを用い、有機溶剤を加熱撹拌しながらバインダを溶かして、有機ビヒクルを作製した。
<抵抗体ペーストの作製>
前述の導電性材料の粉末と、ガラス組成物粉末、添加物、及び有機ビヒクルを各組成となるように秤量し、3本ロールミルで混練し、抵抗体ペーストを得た。なお、導電性材料粉末、ガラス組成物粉末及び添加物粉末の合計重量と有機ビヒクルの重量の比は、得られた抵抗体ペーストがスクリーン印刷に適した粘度となるように、重量比で1:0.25〜1:4の範囲で調合し、抵抗体ペーストを作製した。
前述の導電性材料の粉末と、ガラス組成物粉末、添加物、及び有機ビヒクルを各組成となるように秤量し、3本ロールミルで混練し、抵抗体ペーストを得た。なお、導電性材料粉末、ガラス組成物粉末及び添加物粉末の合計重量と有機ビヒクルの重量の比は、得られた抵抗体ペーストがスクリーン印刷に適した粘度となるように、重量比で1:0.25〜1:4の範囲で調合し、抵抗体ペーストを作製した。
<抵抗体の作製>
96%のアルミナ基板上に、Ag−Pt導体ペーストを所定形状にスクリーン印刷して乾燥させた。Ag−Pt導体ペーストにおけるAgの割合は95重量%、Ptの割合は5重量%とした。このアルミナ基板をベルト炉に入れ、投入から排出まで1時間のパターンで焼き付けを行った。この時の焼き付け温度は850℃、その温度での保持時間は10分間とした。
96%のアルミナ基板上に、Ag−Pt導体ペーストを所定形状にスクリーン印刷して乾燥させた。Ag−Pt導体ペーストにおけるAgの割合は95重量%、Ptの割合は5重量%とした。このアルミナ基板をベルト炉に入れ、投入から排出まで1時間のパターンで焼き付けを行った。この時の焼き付け温度は850℃、その温度での保持時間は10分間とした。
このようにして導体が形成されたアルミナ基板上に、先に作製した抵抗体ペーストをスクリーン印刷法にて所定の形状(1mm×1mmの方形状)のパターンで塗布し、乾燥した。その後、導体焼き付けと同じ条件で抵抗体ペーストを焼き付け、厚膜抵抗体を得た。
<抵抗体の特性評価>
(1)抵抗値
Agilent Technologies 社製の製品番号 34401Aにより測定。試料数24個の平均値を求めた。
(1)抵抗値
Agilent Technologies 社製の製品番号 34401Aにより測定。試料数24個の平均値を求めた。
(2)TCR
室温25℃を基準として、−55℃及び125℃へ温度を変えた時の抵抗値変化率を求めた。試料数10個の平均値である。−55℃、25℃、125℃の抵抗値をR-55、R25、R125(Ω/□)とおくと、TCR(ppm/℃)=[(R-55-R25)/R25/80]×1000000、あるいは、TCR(ppm/℃)=[(R125-R25)/R25/100]×1000000である。数値の大きい方をTCR値とした。
室温25℃を基準として、−55℃及び125℃へ温度を変えた時の抵抗値変化率を求めた。試料数10個の平均値である。−55℃、25℃、125℃の抵抗値をR-55、R25、R125(Ω/□)とおくと、TCR(ppm/℃)=[(R-55-R25)/R25/80]×1000000、あるいは、TCR(ppm/℃)=[(R125-R25)/R25/100]×1000000である。数値の大きい方をTCR値とした。
(3)STOL(耐電圧特性)
厚膜抵抗体に試験電圧を5秒間印加し、その前後における抵抗値の変化率を求めた。試料数10個の平均値である。試験電圧=2.5×定格電圧であり、定格電圧=√(R/8)、Rは抵抗値(Ω/□)である。計算した試験電圧が200Vを越える抵抗値を持つ抵抗体については、試験電圧を200Vにて行った。
厚膜抵抗体に試験電圧を5秒間印加し、その前後における抵抗値の変化率を求めた。試料数10個の平均値である。試験電圧=2.5×定格電圧であり、定格電圧=√(R/8)、Rは抵抗値(Ω/□)である。計算した試験電圧が200Vを越える抵抗値を持つ抵抗体については、試験電圧を200Vにて行った。
(4)経時変化
抵抗体の信頼性試験の1つである。温度85℃、相対湿度85%の環境下に1000時間放置したときの抵抗値の変化率ΔR(%)を求めた。ΔR≦±1.0%が特性の基準となる。
抵抗体の信頼性試験の1つである。温度85℃、相対湿度85%の環境下に1000時間放置したときの抵抗値の変化率ΔR(%)を求めた。ΔR≦±1.0%が特性の基準となる。
<評価結果>
先ず、ガラス組成物としてガラスNo.1(比較例ガラス)を用いた抵抗体について特性を評価したところ、抵抗値1.230MΩ、TCR−90ppm/℃、STOL−5.1%、ΔR+2.4%であった。これに対して、ガラス組成物として、ガラスNo.2(実施例ガラス)を用いた抵抗体では、抵抗値1.069MΩ、TCR−75ppm/℃、STOL−3.5%、ΔR+0.4%であり、TCR値やSTOL値が改善されるとともに、ΔRも極めて小さな値に抑えられた。
先ず、ガラス組成物としてガラスNo.1(比較例ガラス)を用いた抵抗体について特性を評価したところ、抵抗値1.230MΩ、TCR−90ppm/℃、STOL−5.1%、ΔR+2.4%であった。これに対して、ガラス組成物として、ガラスNo.2(実施例ガラス)を用いた抵抗体では、抵抗値1.069MΩ、TCR−75ppm/℃、STOL−3.5%、ΔR+0.4%であり、TCR値やSTOL値が改善されるとともに、ΔRも極めて小さな値に抑えられた。
Claims (14)
- 少なくともガラス組成物と導電性材料とを有機ビヒクルに分散してなる抵抗体ペーストであって、
前記ガラス組成物は、B2O3及びSiO2の少なくとも一方を含み、当該ガラス組成物中におけるこれら成分の比率が一定ではないことを特徴とする抵抗体ペースト。 - 前記ガラス組成物を3点以上組成分析したときに、B2O3及びSiO2の合計の比率の相違が測定誤差範囲内であり、B2O3又はSiO2の比率の最大値と最小値の差が1モル%以上であることを特徴とする請求項1記載の抵抗体ペースト。
- 前記B2O3又はSiO2の比率の最大値と最小値の差が3モル%以上であることを特徴とする請求項2記載の抵抗体ペースト。
- 前記ガラス組成物は、主たる修飾酸化物成分としてCaO、SrO及びBaOから選ばれる少なくとも1種と、網目形成酸化物成分としてB2O3及びSiO2から選ばれる少なくとも1種とを含有することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項記載の抵抗体ペースト。
- 前記ガラス組成物が、その他の修飾酸化物成分としてZrO、Al2O3、ZnOから選ばれる少なくとも1種を含有することを特徴とする請求項4記載の抵抗体ペースト。
- 前記導電性材料が、RuO2、Ru複合酸化物の少なくとも1種であることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項記載の抵抗体ペースト。
- 前記導電性材料が、RuO2、CaRuO3、SrRuO3、BaRuO3、Bi2Ru2O7から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項6記載の抵抗体ペースト。
- NiO、CuO、MgOの少なくとも1種を添加物として含むことを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項記載の抵抗体ペースト。
- 前記ガラス組成物、導電性材料、及び添加物を合計した合計重量と、前記有機ビヒクルの重量との比率が、1:0.25〜1:4であることを特徴とする請求項1乃至8のいずれか1項記載の抵抗体ペースト。
- B2O3及びSiO2の少なくとも一方を含むガラス組成物を作製し、当該ガラス組成物及び導電性材料を有機ビヒクルと混合する抵抗体ペーストの製造方法であって、
前記ガラス組成物の作製に際し、B2O3及びSiO2以外の原料を予め混合して混合粉とした後、B2O3及びSiO2の配合比に従って前記混合粉を取り分け、それぞれにB2O3またはSiO2を加え、るつぼ中で熱処理を行い、急冷によりガラス化することを特徴とする抵抗体ペーストの製造方法。 - 前記熱処理を空気中、1000℃以上で行うことを特徴とする請求項10記載の抵抗体ペーストの製造方法。
- 前記ガラス化の後、粉砕してガラス組成物を微粉末とすることを特徴とする請求項10又は11記載の抵抗体ペーストの製造方法。
- 請求項1乃至9のいずれか1項記載の抵抗体ペーストを用いて形成されたことを特徴とする抵抗体。
- 請求項13記載の抵抗体を有することを特徴とする電子部品。
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