JP2005200595A - 液晶ディスプレイ部品 - Google Patents

液晶ディスプレイ部品

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JP2005200595A
JP2005200595A JP2004010216A JP2004010216A JP2005200595A JP 2005200595 A JP2005200595 A JP 2005200595A JP 2004010216 A JP2004010216 A JP 2004010216A JP 2004010216 A JP2004010216 A JP 2004010216A JP 2005200595 A JP2005200595 A JP 2005200595A
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一史 渡辺
Toshio Tashiro
敏夫 田代
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Abstract

【課題】 流動性が高く、剛性、耐衝撃性、耐熱性等に優れ、矩形状面の開口部の比率が大きく、また厚みが薄いながらもフレームの機能を効果的に遂行できる液晶ディスプレイ部品用材料を提供する。
【解決手段】 異方性溶融相を形成しない熱可塑性樹脂(A) 100重量部に、異方性溶融相を形成しうる液晶性ポリマー(B) 1〜100重量部を配合してなる複合樹脂組成物(C) を射出成形することにより得られる、液晶性ポリマー(B) が平均アスペクト比6以上の繊維状で異方性溶融相を形成しない熱可塑性樹脂(A) のマトリックス中に存在している成形品であって、矩形状面に所望の開口部が設けられ、開口部の比率が矩形状面の全面積の30〜95%であり、矩形状面の厚さが0.3〜3mmである液晶ディスプレイ部品。
【選択図】 なし

Description

本発明は、異方性溶融相を形成しない熱可塑性樹脂と液晶性ポリマーとの複合樹脂組成物から形成される、コンピューター、TVおよびモニターのような電子製品の表示機器で用いられる液晶ディスプレイ部品に関する。
一般に液晶ディスプレイ(LCD:Liquid Crystal Display)は、ガラス板(glass substrate)、透明電極(transparent electrode)、液晶(liquid crystal)及びカラーフィルター(color filter)からなるLCDパネル部分と、背面光源(backlight ling)を提供するための反射板(reflector)、蛍光ランプ(fluorescent lamp)、導光板(light guide panel)、拡散板(diffusion sheet)、プリズム(prism sheet)および全体を支持しながら反射板の機能をする背面光フレーム(backlight frame)からなる背面光ユニットの大きく2部分から構成されている。前記背面光フレームは、その機能上、矩形状面に開口部が設けられた形状を有している。この開口部の比率が大きいほど、液晶ディスプレイ自体の大きさに対し、液晶面の面積を大きく取ることが可能となる。また、矩形状面の厚みが薄いほど液晶ディスプレイ自体の薄型化が可能となる。このため、開口部の比率はより大きく、また、矩形状面の厚みが薄くなっていくのが一般的である。
このような目的を達成するため、即ち、厚みが薄いながらもフレームの機能を効果的に遂行できるように、液晶ディスプレイ部品用材料には、成形後の変形がない等の高い寸法安定性、高い流動性と剛性、耐衝撃性が要求される。また、背面光の発熱に耐えられる耐熱性、寸法安定性及び難燃性を有するべきである。このような特性を有する素材としては、これまでポリカーボネート樹脂が代表的であった。
ポリカーボネート樹脂は、他の樹脂と比較して、優れた低温耐衝撃性、自己消火性、電気的特性、透明性、寸法安定性および熱安定性を有し、エンジニアリングプラスチックスとして、事務自動化機器、電気及び電子製品等において広範囲に用いられてきた。しかし、ポリカーボネート樹脂は、流動性が低いため、薄肉化が進むフレームには対応しきれない状況が増えてきている。このような低い流動性を補完するため、射出成形時に高温での加工や、高速高圧での加工が適用されているが、それぞれ樹脂の加熱による熱分解や過度の残留応力を引き起こすため、その利用範囲は制限されている。
一方、材料面から流動性を向上させる手法として、ポリカーボネート樹脂とABS樹脂等とのアロイ化も検討されている。例えば、特許文献1では、ポリカーボネート樹脂と、ABSグラフト共重合体及び分子量分布が特定された二種のアクリロニトリル/スチレン共重合体とを特定比率で配合することにより、成形加工性に優れるポリカーボネート/ABSアロイ組成物が得られることを示しているが、その耐熱性は充分なものではない。
特開平11−293102号公報
本発明は、かかる従来技術の問題点を解決し、流動性が高く、成形後の変形がない等の高い寸法安定性を有し、剛性、耐衝撃性、耐熱性等に優れ、矩形状面の開口部の比率が大きく、また厚みが薄いながらもフレームの機能を効果的に遂行できる液晶ディスプレイ部品用材料の提供を目的とする。
本発明者らは上記目的を達成すべく、高流動・高剛性かつ高耐熱性である素材について鋭意探索、検討を重ねた結果、異方性溶融相を形成しない熱可塑性樹脂に液晶性ポリマーを配合した複合樹脂組成物を液晶ディスプレイ部品の材料とすることにより、薄肉化対応が可能となることを見出し、本発明を完成するに至った。
即ち本発明は、異方性溶融相を形成しない熱可塑性樹脂(A) 100重量部に、異方性溶融相を形成しうる液晶性ポリマー(B) 1〜100重量部を配合してなる複合樹脂組成物(C) を射出成形することにより得られる、液晶性ポリマー(B) が平均アスペクト比6以上の繊維状で異方性溶融相を形成しない熱可塑性樹脂(A) のマトリックス中に存在している成形品であって、矩形状面に所望の開口部が設けられ、開口部の比率が矩形状面の全面積の30〜95%であり、矩形状面の厚さが0.3〜3mmであることを特徴とする液晶ディスプレイ部品である。
以下、本発明について詳細に説明する。本発明で使用する異方性溶融相を形成しない熱可塑性樹脂(A) としては、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ4−メチル−1−ペンテン等のポリオレフィン系(共)重合体、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリカーボネート樹脂等のポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ABS樹脂、ポリアリーレンサルファイド樹脂、ポリアクリレート、ポリアセタールおよびこれらの樹脂を主体とする樹脂等が挙げられる。これらの中でも、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリカーボネート樹脂等のポリエステル系樹脂が好ましく、成形収縮率と線膨張率が比較的低いポリカーボネート樹脂が特に好ましい。
本発明で使用する液晶性ポリマー(B) とは、光学異方性溶融相を形成し得る性質を有する溶融加工性ポリマーを指し、溶融状態で剪断応力を受けることによりポリマー分子鎖が規則的な平行配列をとる性質を有している。このようなポリマー分子は、一般に細長く、偏平で、分子の長軸に沿ってかなり剛性が高く、普通は同軸または平行のいずれかの関係にある複数の連鎖伸長結合を有しているようなポリマーである。異方性溶融相の性質は、直交偏光子を利用した慣用の偏光検査法により確認することが出来る。より具体的には、異方性溶融相の確認は、Leitz偏光顕微鏡を使用し、Leitzホットステージに載せた溶融試料を窒素雰囲気下で40倍の倍率で観察することにより実施できる。本発明に適用できる液晶性ポリマーは直交偏光子の間で検査したときに、たとえ溶融静止状態であっても偏光は通常透過し、光学的に異方性を示す。
前記のような液晶性ポリマー(B)としては特に限定されないが、芳香族ポリエステル又は芳香族ポリエステルアミドであることが好ましく、芳香族ポリエステル又は芳香族ポリエステルアミドを同一分子鎖中に部分的に含むポリエステルもその範囲にある。これらは60℃でペンタフルオロフェノールに濃度0.1重量%で溶解したときに、好ましくは少なくとも約2.0dl/g、さらに好ましくは2.0〜10.0dl/gの対数粘度(I.V.)を有するものが使用される。
本発明に適用できる液晶性ポリマー(B)としての芳香族ポリエステル又は芳香族ポリエステルアミドとして特に好ましくは、芳香族ヒドロキシカルボン酸、芳香族ヒドロキシアミン、芳香族ジアミンの群から選ばれた少なくとも1種以上の化合物を構成成分として有する芳香族ポリエステル、芳香族ポリエステルアミドである。
より具体的には、
(1)主として芳香族ヒドロキシカルボン酸およびその誘導体の1種又は2種以上からなるポリエステル;
(2)主として(a)芳香族ヒドロキシカルボン酸およびその誘導体の1種又は2種以上と、(b)芳香族ジカルボン酸、脂環族ジカルボン酸およびその誘導体の1種又は2種以上と、(c)芳香族ジオール、脂環族ジオール、脂肪族ジオールおよびその誘導体の少なくとも1種又は2種以上、とからなるポリエステル;
(3)主として(a)芳香族ヒドロキシカルボン酸およびその誘導体の1種又は2種以上と、(b)芳香族ヒドロキシアミン、芳香族ジアミンおよびその誘導体の1種又は2種以上と、(c)芳香族ジカルボン酸、脂環族ジカルボン酸およびその誘導体の1種又は2種以上、とからなるポリエステルアミド;
(4)主として(a)芳香族ヒドロキシカルボン酸およびその誘導体の1種又は2種以上と、(b)芳香族ヒドロキシアミン、芳香族ジアミンおよびその誘導体の1種又は2種以上と、(c)芳香族ジカルボン酸、脂環族ジカルボン酸およびその誘導体の1種又は2種以上と、(d)芳香族ジオール、脂環族ジオール、脂肪族ジオールおよびその誘導体の少なくとも1種又は2種以上、とからなるポリエステルアミドなどが挙げられる。さらに上記の構成成分に必要に応じ分子量調整剤を併用してもよい。
本発明に適用できる前記液晶性ポリマー(B)を構成する具体的化合物の好ましい例としては、p−ヒドロキシ安息香酸、6−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸等の芳香族ヒドロキシカルボン酸、2,6−ジヒドロキシナフタレン、1,4−ジヒドロキシナフタレン、4,4’−ジヒドロキシビフェニル、ハイドロキノン、レゾルシン、下記一般式(V)および下記一般式(VI)で表される化合物等の芳香族ジオール;テレフタル酸、イソフタル酸、4,4’−ジフェニルジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸および下記一般式(VII)で表される化合物等の芳香族ジカルボン酸;p−アミノフェノール、p−フェニレンジアミン等の芳香族アミン類が挙げられる。
Figure 2005200595
(但し、X :アルキレン(C1〜C4)、アルキリデン、-O- 、-SO-、-SO2- 、-S-、-CO-より選ばれる基、Y :-(CH2)n-(n =1〜4)、-O(CH2)nO-(n =1〜4)より選ばれる基)
本発明が適用される特に好ましい液晶性ポリマー(B)としては、p−ヒドロキシ安息香酸及び6−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸を主構成単位成分とする芳香族ポリエステルである。
本発明における液晶ディスプレイ部品を構成する複合樹脂組成物(C) は、前記異方性溶融相を形成しない熱可塑性樹脂(A) と異方性溶融相を形成しうる液晶性ポリマー(B) とからなるものであり、液晶性ポリマー(B) が熱可塑性樹脂(A) のマトリックス相に繊維状に、好ましくはアスペクト比6以上にミクロ分散していることが必要である。これにより、液晶性ポリマー(B) が繊維状補強材の役目をし、熱可塑性樹脂(A) の補強が可能となる。ここで言う繊維化とは、液晶性ポリマー(B) が繊維状または針状構造となることであり、繊維化した幹繊維に対して枝分かれした繊維構造を有するものも含まれる。液晶性ポリマー(B) が熱可塑性樹脂(A) のマトリックス相に繊維状にミクロ分散した前記複合樹脂組成物(C) は、通常の押出装置により両者を混練し、射出成形の際の剪断力で得られるが、液晶性ポリマー(B) の割合が熱可塑性樹脂(A) よりも多い場合にはマトリックス相が反転してしまう場合があるため、前記複合樹脂組成物(C) 中の組成割合は、熱可塑性樹脂(A) 100重量部に対し液晶性ポリマー(B) 1〜100重量部の範囲にあることが必要である。
更に、本発明においては、上記の通り、成形時に液晶性ポリマー(B) を繊維化するためには、りん化合物を添加することが好ましい。特に、異方性溶融相を形成しない熱可塑性樹脂(A) がポリカーボネート樹脂の場合、液晶性ポリマーとポリカーボネート樹脂が島状の分散をせず、射出成形しても繊維化しない場合があり、その効果が顕著である。このりん化合物としては、りんオキソ酸モノエステルおよびジエステル(D) であり、下記一般式(I)、(II)で示されるような物質である。
(X)nP(=O)(OR)3-n (I)
(X)nP(OR)3-n (II)
〔式中、n は1または2であり、X は水素原子、水酸基、または一価の有機基であり、複数の場合同一でも異なっていてもよい。R は一価の有機基であり、複数の場合同一でも異なっていてもよい。〕
一般にホスホネート化合物、ホスフィネート化合物、ホスホナイト化合物、ホスフィナイト化合物およびこれらの構造要素を分子内に含む有機りん化合物が該当する。
ホスホネート化合物の具体例としては、例えばジメチルホスホネート、ジエチルホスホネート、ジブチルホスホネート、ジ(エチルヘキシル)ホスホネート、ジデシルホスホネート、ジパルミチルホスホネート、ジステアリルホスホネート、ジラウリルホスホネート、ジフェニルホスホネート、ジベンジルホスホネート、ジトルイルホスホネート、ジ(ノニルフェニル)ホスホネート、ジオレイルホスホネート、ジメチルメチルホスホネート、ジエチルメチルホスホネート、ジ(エチルヘキシル)メチルホスホネート、ジパルミチルメチルホスホネート、ジステアリルメチルホスホネート、ジラウリルメチルホスホネート、ジフェニルメチルホスホネート、ジメチルフェニルホスホネート、ジエチルフェニルホスホネート、ジ(エチルヘキシル)フェニルホスホネート、ジパルミチルフェニルホスホネート、ジステアリルフェニルホスホネート、ジラウリルフェニルホスホネート、ジフェニルフェニルホスホネート、ジベンジルフェニルホスホネート等が挙げられる。
ホスフィネート化合物の具体例としては、たとえばメチルホスフィネート、エチルホスフィネート、ブチルホスフィネート、エチルヘキシルホスフィネート、パルミチルホスフィネート、ステアリルホスフィネート、ラウリルホスフィネート、フェニルホスフィネート、ベンジルホスフィネート、トルイルホスフィネート、ノニルフェニルホスフィネート、オレイルホスフィネート、エチルメチルホスフィネート、エチルジメチルホスフィネート、(エチルヘキシル)メチルホスフィネート、(エチルヘキシル)ジメチルホスフィネート、パルミチルメチルホスフィネート、パルミチルジメチルホスフィネート、ステアリルメチルホスフィネート、ステアリルジメチルホスフィネート、ラウリルメチルホスフィネート、ラウリルジメチルホスフィネート、フェニルメチルホスフィネート、エチルフェニルホスフィネート、(エチルヘキシル)フェニルホスフィネート、パルミチルフェニルホスフィネート、ステアリルフェニルホスフィネート、ステアリルジフェニルホスフィネート、ラウリルフェニルホスフィネート、ラウリルジフェニルホスフィネート、フェニルフェニルホスフィネート、ベンジルフェニルホスフィネート等が挙げられる。
ホスホナイト化合物の具体例としては、たとえばジメチルホスホナイト、ジエチルホスホナイト、ジブチルホスホナイト、ジ(エチルヘキシル)ホスホナイト、ジデシルホスホナイト、ジパルミチルホスホナイト、ジステアリルホスホナイト、ジラウリルホスホナイト、ジフェニルホスホナイト、ジベンジルホスホナイト、ジトルイルホスホナイト、ジ(ノニルフェニル)ホスホナイト、ジオレイルホスホナイト、ジメチルメチルホスホナイト、ジエチルメチルホスホナイト、ジ(エチルヘキシル)メチルホスホナイト、ジパルミチルメチルホスホナイト、ジステアリルメチルホスホナイト、ジラウリルメチルホスホナイト、ジフェニルメチルホスホナイト、ジメチルフェニルホスホナイト、ジエチルフェニルホスホナイト、ジ(エチルヘキシル)フェニルホスホナイト、ジパルミチルフェニルホスホナイト、ジステアリルフェニルホスホナイト、ジラウリルフェニルホスホナイト、ジフェニルフェニルホスホナイト、ジベンジルフェニルホスホナイト等が挙げられる。
ホスフィナイト化合物の具体例としては、たとえばメチルホスフィナイト、エチルホスフィナイト、ブチルホスフィナイト、エチルヘキシルホスフィナイト、パルミチルホスフィナイト、ステアリルホスフィナイト、ラウリルホスフィナイト、フェニルホスフィナイト、ベンジルホスフィナイト、トルイルホスフィナイト、ノニルフェニルホスフィナイト、オレイルホスフィナイト、エチルメチルホスフィナイト、エチルジメチルホスフィナイト、(エチルヘキシル)メチルホスフィナイト、(エチルヘキシル)ジメチルホスフィナイト、パルミチルメチルホスフィナイト、パルミチルジメチルホスフィナイト、ステアリルメチルホスフィナイト、ステアリルジメチルホスフィナイト、ラウリルメチルホスフィナイト、ラウリルジメチルホスフィナイト、フェニルメチルホスフィナイト、エチルフェニルホスフィナイト、(エチルヘキシル)フェニルホスフィナイト、パルミチルフェニルホスフィナイト、ステアリルフェニルホスフィナイト、ステアリルジフェニルホスフィナイト、ラウリルフェニルホスフィナイト、ラウリルジフェニルホスフィナイト、フェニルフェニルホスフィナイト、ベンジルフェニルホスフィナイト等が挙げられる。これらの中で、特に一般式(III)で示されるホスホン酸エステルが好ましく用いられる。
H(OH)mP(=O)(OR)2-m (III)
〔式中、m は0または1であり、R は一価の有機基である。〕
また、(C) のりん化合物として、上述のホスホネート、ホスフィネート、ホスホナイト、ホスフィナイト構造要素を分子内に含む有機りん化合物も使用できる。その具体例として以下のような化合物が挙げられる。
Figure 2005200595
本発明において、上記の特定のりん化合物を配合することにより、樹脂成分の一部である液晶性ポリマー(B) が低い剪断速度領域でも容易に繊維化するため、成形時の射出速度が遅くても、薄肉部はもとより厚肉部の表層からかなり内部まで液晶性ポリマーの繊維化した層が形成され、成形後の変形がなく高い寸法安定性を保持し、高弾性率、即ち高い比剛性を有する成形品を得ることが可能になるのである。
この特定のりん化合物(D) の配合量は、複合樹脂組成物(C) 100重量部に対して0.001〜2重量部、特に好ましくは0.01〜0.5 重量部である。配合量が 0.001重量部未満であると成形中の液晶性ポリマーを繊維化する効果が少なく、2重量部を超えて配合するとむしろ材料物性を低下させる。
更に、本発明に用いる複合樹脂組成物(C) には、場合によっては、本発明の効果を阻害しない範囲で、平均繊維径0.5〜20μm の繊維状充填材(E) 、及び/又は、平均粒径0.1〜50μm の粒状充填材(F) を配合してもよい。
本発明において、平均繊維径0.5〜20μm (好ましくは平均アスペクト比5以上)の繊維状充填材(E) としては、チョップドガラスファイバー、炭素繊維、ガラスミルドファイバー、炭素ミルドファイバー、ウォラストナイト、ウィスカー、金属繊維、無機系繊維及び鉱石系繊維等の各種繊維が使用可能である。
炭素繊維、炭素ミルドファイバーとしては、ポリアクリロニトリルを原料とするPAN系、ピッチを原料とするピッチ系繊維が用いられる。ウィスカーとしては、窒化珪素ウィスカー、三窒化珪素ウィスカー、塩基性硫酸マグネシウムウィスカー、チタン酸バリウムウィスカー、炭化珪素ウィスカー、ボロンウィスカー等が用いられ、金属繊維としては、軟鋼、ステンレス、銅及びその合金、黄銅、アルミニウム及びその合金、鉛等の繊維が用いられる。無機系繊維としては、ロックウール、ジルコニア、アルミナシリカ、チタン酸カリウム、チタン酸バリウム、炭化珪素、アルミナ、シリカ、高炉スラグ等の各種繊維が用いられる。鉱石系繊維としては、アスベスト等が用いられる。その中でも性能の面および価格の面から、チョップドガラスファイバー、ガラスミルドファイバー、炭素ミルドファイバー、ウォラストナイトの一種または二種以上が好ましい。
本発明において、粒状充填材(F) とは、繊維状、板状、短冊状の如き特定の方向への広がりを持たない粒状体を意味し、平均アスペクト比が1〜2であるようなものを指す。その平均粒径は0.1〜50μm である。粒状充填材として、具体的には、カオリン、クレー、バーミキュライト、タルク、珪酸カルシウム、珪酸アルミニウム、長石粉、酸性白土、ロウ石クレー、セリサイト、シリマナイト、ベントナイト、ガラス粉、ガラスビーズ、スレート粉、シラン等の珪酸塩、炭酸カルシウム、胡粉、炭酸バリウム、炭酸マグネシウム、ドロマイト等の炭酸塩、バライト粉、沈降性硫酸カルシウム、焼石膏、硫酸バリウム等の硫酸塩、水和アルミナ等の水酸化物、アルミナ、酸化アンチモン、マグネシア、酸化チタン、亜鉛華、シリカ、珪砂、石英、ホワイトカーボン、珪藻土等の酸化物、二硫化モリブデン等の硫化物、金属粉粒体等の材質からなるものである。その中でも価格と性能の面から、マイカ、タルク、酸化チタンから選ばれる一種または二種以上が好ましい。
弾性率向上を達成するためには、前記繊維状充填材及び粒状充填材の添加量、特に繊維状充填材の添加量が多いほど良いが、添加量過多は比重の増加、押出性および成形性、特に流動性を悪化させ、更には機械的強度を低下させる。また、添加量が少なすぎても添加量に見合った弾性率が発現されない。そのため、繊維状充填材(E) および粒状充填材(F) の添加量は、複合樹脂組成物(C) 100重量部に対しそれぞれ5〜100重量部、好ましくは10〜50重量部である。また、(E) および(F) 成分の総添加量は、複合樹脂組成物(C) 100重量部に対し150重量部以下、好ましくは100重量部以下にする必要がある。
本発明に使用する繊維状充填材、粒状充填材はそのままでも使用できるが、一般的に用いられる公知の表面処理剤、収束剤で処理したものでも良い。
尚、複合樹脂組成物(C) に対し、核剤、カーボンブラック等の顔料、酸化防止剤、安定剤、可塑剤、滑剤、離型剤および難燃剤等の添加剤を添加して、所望の特性を付与した組成物も本発明で言う複合樹脂組成物に含まれる。
本発明の複合樹脂組成物は、異方性溶融相を形成しない熱可塑性樹脂(A) と液晶性ポリマー(B) 、更に特定のりん化合物(D) 、繊維状充填材(E) 、粒状充填材(F) を用いることにより、各々の欠点を補い合うことにより低比重であり、弾性率に優れた材料であり、更には成形体中の各充填材が均一に分散し、粒状充填材の間に繊維状充填材が存在するような分散状態で、より高性能が発揮される。
このような複合樹脂組成物を製造するには、各成分を前記組成割合で配合し、混練すればよい。通常、押出機で混練し、ペレット状に押出し、射出成形等に用いるが、このような押出機による押出に限定されるものではない。本発明の液晶ディスプレイ部品は、上記複合樹脂組成物から通常の成形方法、例えば射出成形により容易に成形される。
かくして得られる成形品は、薄肉でも十分金型充填可能な流動性を有していることに加え、高い弾性率、高い形状(寸法)安定性を有しているため、厚さが3mm以下で、なおかつ開口部の比率が矩形状面の全面積の30〜95%を有するような成形品でも問題なく成形でき、かつ、捻れ変形を起こすようなことがない。また、その優れた成形性を生かして、従来の製品よりもゲート点数を削減することができるため、ランナーの重量減が可能となり、極めて経済的であるといえる。
このため、近年ますます薄肉化が進む液晶ディスプレイ部品の材料として最適であり、TV用モニターを始めとして、例えば、デジタルカメラ、カメラ一体型VTR、携帯電話、PDA、ノートパソコン等の携帯情報端末等に有用である。
以下、実施例により本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
実施例1
ポリカーボネート樹脂(帝人化成(株)製、パンライトL1225L)100重量部と液晶性ポリマー(ポリプラスチックス(株)製、A950)30重量部からなる樹脂成分に対して、ジステアリルハイドロゲンホスファイト(城北化学工業(株)製、JP218SS)0.2重量部を添加し、更にチョップドガラスファイバー(旭ファイバー(株)製、CS03JA416♯)60重量部を添加し、30mmの2軸押出機にて樹脂温度300℃で溶融混練し、ペレット化して目的の樹脂組成物を得た。
押出し工程は、押出し中、混練物に空気が混入し酸化条件とならないように注意を払い、ベントから減圧操作により揮発成分を除去しながら目的樹脂組成物の調製を行った。次いで、該ペレットから下記試験片を成形し評価した。
(曲げ弾性率)
射出成形にて樹脂温度300℃で、厚み0.4mmの試験片を成形し、ISO178 D 790に従って曲げ弾性率を測定した。
(棒流動長)
幅20mm、厚み1mmのスパイラルフロー型を樹脂温度300℃で、射出圧75MPaにて成形し、流動長を測定した。
(変形)
縦250mm、横350mm、厚み1mmの矩形面の中央部に縦210mm、横310mmの同じく矩形状の開口部を持つ成形品(4点ピンゲート、ゲート径;1mm)を、樹脂温度300℃、金型温度80℃、射出速度3m/分にて成形した。その後、成形品を水平な机の上に静置し、机と成形品の隙間をノギスにて測定した。
(液晶性ポリマーの平均アスペクト比(長さ/太さ))
変形評価で用いた試験片を流動方向に平行な面が出るように切削した後、断面を鏡面研磨し、その表面を電子顕微鏡により観察して評価した。即ち、任意に選んだ繊維化している液晶性ポリマー50本の長さ/太さを測定して平均値を出した。尚、長さについては、表面上で観察できる長さを測定した。評価基準は以下の通りとした。
平均アスペクト比6以上 ○
平均アスペクト比6未満 ×
実施例2〜3
更にタルク(松村産業(株)製、クラウンタルクPP)、またはマイカ(山口雲母(株)製、A−41)を配合した組成物(各成分の配合量は表1に示す通り)を用いた以外は実施例1と同様に試験片を作成し、評価した。
比較例1〜3
表1に示すように、樹脂成分としてポリカーボネート樹脂のみからなる組成物を用いた場合、ポリカーボネート樹脂とABS樹脂(ダイセル化学工業(株)製、DP611)とからなる組成物を用いた場合、(D) 成分のりん化合物を含まない組成物を用いた場合について、同様に試験片を作成し、評価した。
これらの結果を表1に示す。
Figure 2005200595

Claims (9)

  1. 異方性溶融相を形成しない熱可塑性樹脂(A) 100重量部に、異方性溶融相を形成しうる液晶性ポリマー(B) 1〜100重量部を配合してなる複合樹脂組成物(C) を射出成形することにより得られる、液晶性ポリマー(B) が平均アスペクト比6以上の繊維状で異方性溶融相を形成しない熱可塑性樹脂(A) のマトリックス中に存在している成形品であって、矩形状面に所望の開口部が設けられ、開口部の比率が矩形状面の全面積の30〜95%であり、矩形状面の厚さが0.3〜3mmであることを特徴とする液晶ディスプレイ部品。
  2. 異方性溶融相を形成しない熱可塑性樹脂(A) がポリカーボネート樹脂である請求項1記載の液晶ディスプレイ部品。
  3. 複合樹脂組成物(C) 100重量部に対し、下記一般式(I)、(II)で示されるりんオキソ酸モノエステルおよびジエステル(D) から選ばれる一種または二種以上を0.001 〜2重量部配合してなる熱可塑性樹脂組成物から形成される請求項1又は2記載の液晶ディスプレイ部品。
    (X)nP(=O)(OR)3-n (I)
    (X)nP(OR)3-n (II)
    〔式中、n は1または2であり、X は水素原子、水酸基、または一価の有機基であり、複数の場合同一でも異なっていてもよい。R は一価の有機基であり、複数の場合同一でも異なっていてもよい。〕
  4. 更に、平均繊維径0.5〜20μm の繊維状充填材(E) を、複合樹脂組成物(C) 100重量部に対し5〜100重量部配合してなる熱可塑性樹脂組成物から形成される請求項1〜3の何れか1項記載の液晶ディスプレイ部品。
  5. 更に、平均粒径0.1〜50μm の粒状充填材(F) を、複合樹脂組成物(C) 100重量部に対し5〜100重量部配合してなる熱可塑性樹脂組成物から形成される請求項1〜4の何れか1項記載の液晶ディスプレイ部品。
  6. りんオキソ酸モノエステルおよびジエステル(D) が下記一般式(III)で示されるホスホン酸エステルである請求項2〜5の何れか1項記載の液晶ディスプレイ部品。
    H(OH)mP(=O)(OR)2-m (III)
    〔式中、m は0または1であり、R は一価の有機基である。〕
  7. りんオキソ酸モノエステルおよびジエステル(D) が下記一般式(IV)で示されるホスホン酸エステルである請求項2〜5の何れか1項記載の液晶ディスプレイ部品。
    Figure 2005200595
    〔式中、Y は二価のα,ω−ジオキシ有機基である。〕
  8. 繊維状充填材(E) が、チョップドガラスファイバー、ミルドファイバー、ウォラストナイトから選ばれる一種または二種以上である請求項4〜7の何れか1項記載の液晶ディスプレイ部品。
  9. 粒状充填材(F) が、マイカ、タルク、酸化チタンから選ばれる一種または二種以上である請求項5〜8の何れか1項記載の液晶ディスプレイ部品。
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