JP2005198533A - 哺乳動物の神経芽細胞腫の予後を判定する方法 - Google Patents

哺乳動物の神経芽細胞腫の予後を判定する方法 Download PDF

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Abstract

【課題】 哺乳動物の神経芽細胞腫の予後を正確に予測するための方法を提供する。
【解決手段】 哺乳動物の染色体DNA上の、プロトカドヘリンβファミリーに属するタンパク質をコードする遺伝子、プロトカドヘリンαファミリーに属するタンパク質をコードする遺伝子、肝細胞増殖因子様タンパク質をコードする遺伝子、DKFZp451I127遺伝子又はチトクロムp450 CYP26C1遺伝子からなる群より選ばれる1種又は2種以上の遺伝子に含まれるCpGアイランドのシトシンのメチル化頻度を測定し、該メチル化頻度に基いて神経芽細胞腫の予後を判定する。
【選択図】 図3

Description

本発明は哺乳動物の神経芽細胞腫の予後を判定する方法に関する。本発明はまた、哺乳動物の神経芽細胞腫の予後を判定するためのプローブ、プライマー又はキットに関する。
神経芽細胞腫(neuroblastoma)は、最も頻度の高い小児固形腫瘍である。この腫瘍には、悪性増殖する予後不良群と、機構は不明ながら自然退縮する予後良好群が存在する。予後を正確に予測できれば、不必要な放射線治療や化学療法を避けることが出来る。現在、予後の予測にはN-mycの増幅、TrkAの高発現などがマーカーとして用いられているが、より正確な診断のために新規マーカーの開発が求められている。
哺乳動物では、遺伝子(ゲノムDNA)を構成する4種類の塩基のうち、シトシンのみがメチル化されるという現象がある。DNAのメチル化修飾は、5'-CG-3'で示される塩基配列(Cはシトシンを表し、Gはグアニンを表す。以下、当該塩基配列をCpGアイランドまたはCGIと記すこともある。)中のシトシンに限られる。近年、CGIのシトシンのメチル化の程度が正常細胞とガン細胞とで異なることが報告され、CGIのシトシンのメチル化のガンへの関与が注目されている。ガンに関与するCGIとしては、主に乳癌への関与が示唆されているHeparan sulfate D-Glucosaminyl 3-O-sulfotransferase遺伝子のCGIが知られており、該遺伝子のメチル化を指標にして乳癌などのガンを判定する方法が報告されている(例えば、特許文献1参照)。一方、神経芽細胞種についてもいくつかの遺伝子のメチル化が知られていたが、神経芽細胞種に強く関連し、神経芽細胞種の予後の判定に使用することができるCGIマーカーはほとんど知られていなかった。
特開2003−144157号公報
本発明は、神経芽細胞腫の予後を正確に予測するための方法を提供することを課題とする。本発明はまた、神経芽細胞腫の予後を予測するための検査キットを提供することを課題とする。
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討を重ねた。その結果、予後不良の神経芽細胞腫において、プロトカドヘリンβ16遺伝子などのCGIのシトシンのメチル化頻度が予後良好群に比べて著しく増加していることを発見した。これらのシトシンのメチル化頻度を測定することによって、神経芽細胞腫の予後を正確に予測することができることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は以下の通りである。
(1) 哺乳動物の神経芽細胞腫の予後を判定する方法であって、該哺乳動物の染色体DNA上の、プロトカドヘリンβファミリーに属するタンパク質をコードする遺伝子、プロトカドヘリンαファミリーに属するタンパク質をコードする遺伝子、肝細胞増殖因子様タンパク質をコードする遺伝子、DKFZp451I127遺伝子又はチトクロムp450 CYP26C1遺伝子からなる群より選ばれる1種又は2種以上の遺伝子に含まれるCpGアイランドのシトシンのメチル化頻度を測定し、該メチル化頻度に基いて神経芽細胞腫の予後を判定することを特徴とする方法。
(2) 前記遺伝子が、プロトカドヘリンβ16をコードする遺伝子である、(1)の方法。
(3) さらに、プロトカドヘリンβ16以外のプロトカドヘリンβファミリーに属するタンパク質をコードする1種類以上の遺伝子に含まれるCpGアイランドのシトシンのメチル化頻度を測定する、(2)の方法。
(4) 前記遺伝子が、プロトカドヘリンα1をコードする遺伝子である、(1)の方法。
(5) さらに、プロトカドヘリンα1以外のプロトカドヘリンαファミリーに属するタンパク質をコードする1種類以上の遺伝子に含まれるCpGアイランドのシトシンのメチル化頻度を測定する、(4)の方法。
(6) メチル化特異的PCR法によってメチル化頻度を測定することを特徴とする、(1)〜(5)のいずれかの方法。
(7) プロトカドヘリンβファミリーに属するタンパク質をコードする遺伝子、プロトカドヘリンαファミリーに属するタンパク質をコードする遺伝子、肝細胞増殖因子様タンパク質をコードする遺伝子、DKFZp451I127遺伝子又はチトクロムp450 CYP26C1遺伝子に含まれるCpGアイランドのシトシンを1つ以上含む配列を有するプライマー。
(8) プロトカドヘリンβファミリーに属するタンパク質をコードする遺伝子、プロトカドヘリンαファミリーに属するタンパク質をコードする遺伝子、肝細胞増殖因子様タンパク質をコードする遺伝子、DKFZp451I127遺伝子又はチトクロムp450 CYP26C1遺伝子に含まれるCpGアイランドのシトシンを1つ以上含む配列を有するプローブ。
(9) (7)又は(8)のプライマー又はプローブを含む、神経芽細胞腫の予後判定用キット。
以下に本発明を詳細に説明する。
本発明の方法は、哺乳動物の神経芽細胞腫の予後を判定する方法であって、該哺乳動物の染色体DNA上の、プロトカドヘリンβファミリーに属するタンパク質をコードする遺伝子、プロトカドヘリンαファミリーに属するタンパク質をコードする遺伝子、肝細胞増殖因子様タンパク質をコードする遺伝子、DKFZp451I127遺伝子又はチトクロムp450 CYP26C1遺伝子からなる群より選ばれる1種又は2種以上の遺伝子に含まれるCpGアイランドのシトシンのメチル化頻度を測定し、該メチル化頻度に基いて神経芽細胞腫の予後を判定することを特徴とする方法である。ここで、哺乳動物の種類は特に制限されないが、ヒトが好ましい。
哺乳動物の染色体DNAは、該哺乳動物由来の検体から常法によって抽出することができる。また、市販のDNA抽出キットなどを用いて抽出してもよい。哺乳動物由来の検体としては、例えば、神経や副腎髄質等由来の生体試料を挙げることができる。これらは手術によって摘出された組織であってもよいし、手術によって摘出された組織から調製されるプライマリー細胞などの細胞であってもよい。なお、メチル化頻度の測定には、必ずしも抽出又は精製された染色体DNAを用いる必要はなく、これらの組織や細胞をホモゲナイズしたような試料を直接用いることも可能である。
CpGアイランド(CGI)とは、染色体DNA上に存在する5’-C→G-3’配列(5’-シトシン-グアニン-3’配列)を意味する。本発明において、神経芽細胞腫の予後の判定に用いることのできるCGIとしては、プロトカドヘリンβ(PCDHB)ファミリーに属するタンパク質をコードする遺伝子、プロトカドヘリンα(PCDHA)ファミリーに属するタンパク質をコードする遺伝子、肝細胞増殖因子様タンパク質(hepatocyte growth factor-like protein:HLP)をコードする遺伝子、DKFZp451I127遺伝子、またはチトクロムp450 CYP26C1(CYP26C1)遺伝子に含まれるCGIを挙げることができる。
PCDHBファミリーに属するタンパク質をコードする遺伝子としては、PCDHB1〜18をコ
ードする遺伝子を挙げることができるが、プロトカドヘリンβ16(PCDHB16)をコードする遺伝子(PCDHB16遺伝子)が特に好ましい。本発明においては、PCDHBファミリーに属するタンパク質をコードする遺伝子は、タンパク質コード領域、プロモーター領域、及び3’非翻訳領域を含む遺伝子を意味する。この中で、PCDHB16遺伝子としては、例えば、GenBank Accession No. NG_000017の149533〜154349で示される遺伝子を挙げることができる。PCDHB16遺伝子に含まれるCGIとしては、上記領域に含まれるCGIを挙げることができるが、好ましくは、NG_000017の152547〜152659(配列番号1)及び151812〜152302の配列中に存在するCGIを挙げることができる。具体的には、例えば、NG_000017で登録されている塩基配列において、152552、152559、152564、152644、152651、152656番目(配列番号1の6,13,18,94,98,105,110)で示されるシトシンなどを挙げることができる。
なお、プロトカドヘリンβ(PCDHB)ファミリーに属するタンパク質をコードする遺伝子の塩基配列は非常に保存性が高いため、PCDHB16以外のPCDHBファミリーに属するタンパク質をコードする遺伝子、すなわち、PCDHB1〜15、17及び18をコードする遺伝子においても、PCDHB16遺伝子のCGIのシトシンに相当するシトシンが存在する場合が多い。これらの遺伝子もPCDHB16遺伝子同様、Accession No. NG_000017で登録されている。例えば、PCDHB2遺伝子の場合、上記のPCDHB16のシトシン(配列番号1の6,13,18,94,98,105,110のシトシン)に対応するシトシンとして、NG_000017の64798、67805、67810、64886、64890、64897、64902番目のシトシンが挙げられる。したがって、PCDHB1〜15、17及び18遺伝子のうちの1種類以上の遺伝子に含まれるCGIのシトシンと、PCDHB16遺伝子に含まれるCGIのシトシンのメチル化頻度を組み合わせて測定してもよい。例えば、配列番号2〜5のプライマーはPCDHB2〜18遺伝子に共通する領域に設定されたプライマーであるため、これらのプライマーを用いることで、PCDHB16遺伝子のCGIのメチル化頻度と、PCDHB2〜15、17及び18遺伝子のCGIのメチル化頻度とを組み合わせて測定することができる。なお、各遺伝子のシトシンのメチル化頻度を組み合わせて測定する場合、上記のように各遺伝子のメチル化頻度を同時に測定してもよいし、別々に測定してそれぞれのメチル化頻度の平均値をとるなどしてもよい。
PCDHB1〜15、17及び18遺伝子もPCDHB16遺伝子と同様に高メチル化されている可能性が高いため、これらの遺伝子に含まれるCGIのシトシンを独自にメチル化頻度測定してもよい。このように、PCDHBファミリーをコードする遺伝子に含まれるCGIのシトシンは神経芽細胞腫において高頻度にメチル化されているため、哺乳動物の染色体DNA上のこれらの遺伝子に含まれるCGIのシトシンのメチル化頻度を測定することにより、神経芽細胞腫の予後の判定に利用することができる。
PCDHAファミリーに属するタンパク質をコードする遺伝子としては、PCDHA1〜14をコードする遺伝子を挙げることができるが、プロトカドヘリンα1(PCDHA1)をコードする遺伝子(PCDHA1遺伝子)が特に好ましい。本発明においては、PCDHAファミリーに属するタンパク質をコードする遺伝子は、タンパク質コード領域、プロモーター領域、及び3’非翻訳領域を含む遺伝子を意味する。この中で、PCDHA1遺伝子は、例えば、GenBank Accession NG_000016の52164〜248436で示される遺伝子を挙げることができる。PCDHA1遺伝子に含まれるCGIとしては上記領域に含まれるCGIを挙げることができるが、好ましくは、GenBank Accession No. NG_000016の53686〜53806(配列番号6)、及び52822〜53571の配列中に存在するCGIを挙げることができる。具体的には、例えば、NG_000016で登録されている塩基配列において、53696、53698、53705、53786、53791番目(配列番号6の11,13,20,101,106)で示されるシトシンなどを挙げることができる。
なお、プロトカドヘリンα(PCDHA)ファミリーに属するタンパク質をコードする遺伝子の塩基配列は非常に保存性が高いため、PCDHA1以外のPCDHAファミリーに属するタンパ
ク質をコードする遺伝子、すなわち、PCDHA2〜14をコードする遺伝子においても、PCDHA1遺伝子のCGIのシトシンに相当するシトシンが存在する場合が多い。これらの遺伝子もPCDHA1遺伝子同様、Accession No. NG_000016で登録されている。例えば、PCDHA2遺伝子の場合、上記のPCDHA1のシトシン(配列番号6の11,13,20,101,106のシトシン)に対応するシトシンとして、NG_000016の62370、62372、62379、62460、62465番目のシトシンが挙げられる。したがって、PCDHA2〜14遺伝子のうちの1種類以上の遺伝子に含まれるCGIのシトシンと、PCDHA1遺伝子に含まれるCGIのシトシンのメチル化頻度を組み合わせて測定してもよい。配列番号7〜10のプライマーはPCDHA1〜14遺伝子に共通する領域に設定されたプライマーであるため、これらのプライマーを用いることで、PCDHA1遺伝子のCGIのメチル化頻度と、PCDHA2〜14遺伝子のCGIのメチル化頻度とを組み合わせて測定することができる。なお、各遺伝子のシトシンのメチル化頻度を組み合わせて測定する場合、上記のように各遺伝子のメチル化頻度を同時に測定してもよいし、別々に測定してそれぞれのメチル化頻度の平均値をとるなどしてもよい。
また、PCDHA2〜14遺伝子もPCDHA1遺伝子と同様に高メチル化されている可能性が高いため、これらの遺伝子に含まれるCGIのシトシンを独自にメチル化頻度測定してもよい。このように、PCDHAファミリーをコードする遺伝子に含まれるCGIのシトシンは神経芽細胞腫において高頻度にメチル化されているため、哺乳動物の染色体DNA上のこれらの遺伝子に含まれるCGIのシトシンのメチル化頻度を測定することにより、神経芽細胞腫の予後の判定に利用することができる。
肝細胞増殖因子様タンパク質(hepatocyte growth factor-like protein:HLP)をコードする遺伝子(HLP遺伝子)は、本発明においては、該タンパク質のタンパク質コード領域、プロモーター領域、及び3’非翻訳領域を含む遺伝子を意味し、例えば、GenBank Accession No. U37055の4078〜8843で示される遺伝子を挙げることができる。HLP遺伝子に含まれるCGIとしては、上記領域に含まれるCGIを挙げることができるが、好ましくは、GenBank Accession No. U37055の6845〜6940(配列番号11)及び6953〜7110に存在するCGIを挙げることができる。具体的には、例えば、U37055で登録されている塩基配列において、6845,6861,6863、6919、6922、6931番目(配列番号11の1,17,19,75,78,87)で示されるシトシンなどを挙げることができる。HLP遺伝子に含まれるCGIのシトシンは神経芽細胞腫において高メチル化されているため、哺乳動物の染色体DNAのHLP遺伝子に含まれるCGIのシトシンのメチル化頻度を測定することにより、神経芽細胞腫の予後の判定に利用することができる。
DKFZp451I127遺伝子のCGIとは、例えば、GenBank Accession No. AC026779の90988〜91336で示される遺伝子を挙げることができる。DKFZp451I127遺伝子に含まれるCGIとしては、上記領域に含まれるCGIを挙げることができるが、好ましくは、GenBank Accession
No. AC026779の90988〜91084(配列番号16)に存在するCGIを挙げることができる。また、GenBank Accession No. AC026779の91325〜91745に存在するCGIであってもよい。具体的には、例えば、AC026779で登録されている塩基配列において、91000、91006、91078番目(配列番号16の13,19,91)で示されるシトシンなどを挙げることができる。DKFZp451I127遺伝子に含まれるCGIのシトシン残基は神経芽細胞腫において高メチル化されているため、哺乳動物のDNAのDKFZp451I127遺伝子に含まれるCGIのシトシンのメチル化頻度を測定することにより、神経芽細胞腫の予後の判定に利用することができる。
チトクロムp450 CYP26C1遺伝子のCGIとは、例えば、GenBank Accession No. AL358613の10896〜18329で示される遺伝子を挙げることができる。CYP26C1遺伝子のCGIとしては、上記領域に含まれるCGIを挙げることができるが、好ましくは、GenBank Accession No. AL358613の11646-11759(配列番号21)及び11222〜11851に存在するCGIを挙げるこ
とができる。具体的には、例えば、AL358613で登録されている塩基配列において、11646、11648、11663,11666番目(配列番号21の1,3,18,21,99)で示されるシトシンなどを挙げることができる。CYP26C1遺伝子に含まれるCGIのシトシンは神経芽細胞腫において高メチル化されているため、哺乳動物の染色体DNAのCYP26C1遺伝子に含まれるCGIのシトシンのメチル化頻度を測定することにより、神経芽細胞腫の予後の判定に利用することができる。
本発明においては、上記のようなCGIのシトシンのメチル化頻度を測定する。測定対象のシトシンは1個でもよいし、複数でもよい。複数のシトシンについて測定する場合、同一遺伝子の複数のシトシンについて測定してもよいし、上記遺伝子のうちの2種類以上の遺伝子のシトシンについて測定してもよい。「メチル化頻度」とは、例えば、測定対象となるCpG中のシトシンのメチル化の有無を複数のハプロイドについて調べたときの、メチル化シトシンと非メチル化シトシンの総和(UM+M)に対する、メチル化シトシン(M)の割合[M/(UM+M)]で表すことができる。複数のシトシンについて調べるときは、例えば、各シトシンについて算出したメチル化頻度の平均値や総和、または、各シトシンのメチル化頻度に神経芽細胞腫に対する相関係数を乗じた値の総和などをメチル化頻度とすることも可能である。なお、メチル化特異的PCRなどによってメチル化頻度を調べるときは、DNAの増幅数などをメチル化頻度としてもよい。
シトシン残基のメチル化頻度を測定する方法としては、まず、亜硫酸水素ナトリウム等の重亜硫酸塩(bisulfite)を用いて染色体DNAを化学処理し、該化学処理された配列を解析する方法を挙げることができる。亜硫酸水素ナトリウム処理により、非メチル化シトシンはチミン(ウラシル)に変換されるが、メチル化されているシトシンはチミン(ウラシル)に変換されず、シトシンのままである。したがって、この違いを利用して、メチル化の有無を検出することができる。亜硫酸水素ナトリウム等の重亜硫酸塩(bisulfite)を用いて染色体DNAを化学処理するための条件としては、例えば、まず染色体DNAをアルカリ溶液(pH9〜14)中で亜硫酸水素ナトリウム等の重亜硫酸塩(bisulfite)(溶液中の濃度:例えば、終濃度3M)等で約10〜16時間(一晩)、55℃で処理する条件を例示することができる。
このようにして亜硫酸水素ナトリウム等の重亜硫酸塩処理を行った染色体DNAについて、メチル化の有無を測定する方法としては、例えば、以下の3種類の方法を挙げることができる。
第一の方法は、重亜硫酸塩処理を行ったDNAを鋳型にし、メチル化特異的プライマー、又は非メチル化特異プライマーを用いてそれぞれPCRを行い、各増幅産物の量を比較することによりメチル化頻度を検出する方法である。この方法は、一般にメチル化特異的PCR法とも呼ばれ、Hermanら(Herman et al., Proc. Natl. Acad. Sci USA, 93, 9821-9826, 1996)によって報告されている方法である。
メチル化特異的PCR法においては、メチル化特異的プライマーとして、解析対象であるCGIのシトシンを含む配列又はその相補配列を有するプライマーを用いる。一方、非メチル化特異的プライマーとして、解析対象であるCGIのシトシンを含む配列又はその相補配列において、該シトシンがチミンに置換された配列を有するプライマー(Forward Primer)又はメチル化部位のシトシンに対応するグアニンがアデニンに置換された配列を有するプライマー(Reverse Primer)を用いる。かかるプライマーは、メチル、非メチルの特異性を高めるために、プライマーの3'末端近傍にCGI中のシトシンを含むように設計することが好ましい。また、解析を容易にするために、プライマーの一方を標識してもよい。
PCRは通常の遺伝子増幅に用いる条件で行うことができる。例えば、94℃、30秒次いで5
5〜65℃、60秒さらに72℃、45秒のサイクルを40サイクル行う条件で行うことができる。ただし、各遺伝子について最適条件を検討することがより好ましい。上記PCRにおいて、メチル化特異的プライマーを用いるPCRの場合には、解析対象とするシトシンがメチル化されているDNAが増幅される。一方、非メチル化特異的プライマーを用いるPCRの場合には、解析対象とするシトシンがメチル化されていないDNAが増幅される。したがって、これらの増幅産物の量を検出し、その量を比較することにより、対象となるシトシンのメチル化頻度を調べることができる。検出は、例えば、増幅産物について、ポリアクリルアミドゲル電気泳動やアガロースゲル電気泳動行い、泳動後のゲルをエチジウムブロミドなどで染色することにより行うことができる。また、DNA染色の代わりに予め蛍光物質などで標識されたプライマーを使用してPCRを行い、増幅産物の量を標識物質由来の蛍光強度などにより検出することもできる。
さらに、メチル化頻度測定の定量性を高めるために、定量PCRを行うことが好ましい。定量PCRとは、まず、メチル化シトシンを含むDNAを定量するための標準DNA及び非メチル化シトシンを含むDNAを定量するための標準DNAを所定量用意し、被験DNA及び上記標準DNAを鋳型にしてPCRをそれぞれ行う。そして、被験DNAを用いて増幅されたPCR産物の量を、標準DNAを用いて増幅されたPCR産物の量と比較することによって、被験DNA中に含まれる目的配列の量を算出する。メチル化シトシンを含むDNAを定量するための標準DNAとは、メチル化部位がシトシンのままであるDNAをいい、非メチル化シトシンを含むDNAを定量するための標準DNAとは、メチル化部位がチミンとなったDNAをいう。このような標準DNAとしては、メチル化用プライマーを用いて増幅されたDNAが組み込まれたプラスミド又は非メチル化用プライマーを用いて増幅されたDNAが組み込まれたプラスミドなどを使用することができる。所定量のDNAとしては、例えば、標準DNAまたは被験DNAを含む溶液を、それぞれ1,10,100,1000,10000倍に希釈した溶液を用意し、それぞれ鋳型として反応液に加えることができる。増幅産物の量の確認は、例えば、電気泳動で行うこともできるが、いわゆるリアルタイムPCRにより行うことが好ましい。リアルタイムPCRに使用する装置としては、iCycler Thermal Cycler(Bio-Rad Laboratories)などが挙げられ、検出試薬としてはSYBR Green PCR Core Reagents(PE Biosystems)などが挙げられる。
以上のようにしてメチル化特異的PCR法でメチル化頻度を測定する場合は、メチル化DNAの増幅産物の量の、メチル化DNAの増幅産物及び非メチル化DNAの増幅産物の量の総和に対する割合をメチル化頻度とすることができる。
以下に、PCDHB16遺伝子の場合、メチル化特異的PCRに用いるためのプライマーを例示する。これらのプライマーは、PCDHB2〜18遺伝子において配列が保存されている領域に設定されているため、PCDHB2〜18遺伝子のCGIのシトシンのメチル化を同時に測定することができる。また、これらのプライマーは重亜硫酸塩処理により、メチル化されていないシトシンがチミン(ウラシル)に変換することを考慮して設計されている。
<メチル化特異的プライマー>
M1:5'- aatggcgagg tgcgtatc -3'(配列番号2)
M2:5'-aacgtaacga taaccgaacg -3'(配列番号3)
<非メチル化特異的プライマー>
UM1:5'- tataatggtg aggtgtgtat t -3'(配列番号4)
UM2:5'-caacataaca ataaccaaac a -3'(配列番号5)
メチル化頻度解析の第二の方法としては、重亜硫酸塩処理を行ったDNAについて、塩基配列を直接的に解析する方法を挙げることができる。測定対象であるCGIのシトシンを含む断片をPCR法により直接シークエンスするか、または、PCRで得られた増幅産物をプラスミドに組み込んで、これを用いて当該DNAの塩基配列を解析してもよい。
直接シークエンス又はPCRに用いるプライマーは、解析対象とするシトシンの5’側の塩基配列または3’側の塩基配列を基にして設計するとよい。プライマー設計のための塩基配列は、解析対象とするCGI中のシトシンを含まないように選定することが好ましい。そして、プライマー設計のために選定された塩基配列が、シトシンを全く含まない場合には、選定された塩基配列またはかかる塩基配列に対して相補的な塩基配列をプライマーの塩基配列とすることができる。また、プライマー設計のために選定された塩基配列がシトシンを含むが、これらがメチル化されるものではない場合には、これらシトシンがチミン(ウラシル)に変換されることを考慮してプライマーを設計する。即ち、全てのシトシンがチミン(ウラシル)となった塩基配列または該塩基配列に対して相補的な塩基配列を有するプライマーを設計する。なお、プライマー設計のために選定された塩基配列に、メチル化シトシンが含まれる場合には、メチル化を受けていないシトシンがチミン(ウラシル)に変換され、かつ、メチル化を受けているシトシンはチミン(ウラシル)に変換されないことを考慮してプライマーを設計する。この場合、上記のPCRには、メチル化特異的プライマー対と非メチル化特異的プライマー対とを等量ずつ混合して用いることが好ましい。
シークエンスは常法に従って行うことができる。シークエンスによって得られる各塩基を示す波形データにおいて、解析対象とするシトシンに相当する位置に検出されたシトシンを示すピークの面積とチミン(ウラシル)を示すピークの面積とを比較することにより、解析対象となるシトシンのメチル化の頻度を測定することができる。
第三の方法として、重亜硫酸塩処理を行ったDNAについて、解析対象とするシトシンのメチル化の有無を識別可能なプローブをハイブリダイゼーションさせ、前記DNAと当該プローブとの結合の有無を調べる方法を挙げることもできる。
メチル化の有無を識別可能なプローブとして、メチル化用と非メチル化用の2種類のプローブを用いることができる。メチル化用プローブは、解析対象とするシトシンを含む塩基配列において、メチル化部位のシトシンはシトシンのままで、メチル化部位以外のシトシンはチミン(ウラシル)に変換された配列を有する核酸プローブである。一方、非メチル化用プローブとしては、解析対象とするシトシンを含む塩基配列において、メチル化部位も含めて全てのシトシンがチミン(ウラシル)に変換された配列を有する核酸プローブである。プローブはオリゴヌクレオチドプローブでもよいし、RNAプローブでもよい。尚、このようなプローブは、DNAとプローブとの結合の有無についての解析を容易にするためにビオチンや蛍光物質などで標識してから用いてもよい。またプローブを通常の方法に準じて担体上に固定して用いてもよいが、この場合には、哺乳動物由来の検体から抽出された染色体DNAを予め標識しておくとよい。
ハイブリダイゼーションは、例えば、Sambrook J., Frisch E. F., ManiatisT.著、モレキュラークローニング第2版(Molecular Cloning 2nd edition)、コールド スプリング ハーバー ラボラトリー発行(Cold Spring Harbor Laboratory press)等に記載される通常の方法に準じて行うことができる。ハイブリダイゼーションは、通常ストリンジェントな条件下に行われる。ここで「ストリンジェントな条件」とは、例えば、通常のサザンハイブリダイゼーションの洗いの条件である60℃、1×SSC,0.1%SDS、好ましくは、0.1×SSC、0.1%SDSに相当する塩濃度でハイブリダイズする条件が挙げられる。かかるハイブリダイゼーションを行った後、メチル化特異的プローブと結合するDNAの量と、非メチル化特異的プローブと結合するDNAの量とを比較することにより、解析対象となるシトシンのメチル化の頻度を測定することができる。
また、亜硫酸水素ナトリウム等の重亜硫酸塩(bisulfite)を用いずに解析する方法として、DNAをシトシンのメチル化の有無を識別可能な制限酵素を用いて解析する方法が
挙げられる。当該方法で用いられる「シトシンのメチル化の有無を識別可能な制限酵素」(以下、メチル化感受性制限酵素と記すこともある。)とは、メチル化されたシトシンを含む認識配列を消化せず、メチル化されていないシトシンを含む認識配列を消化することのできる制限酵素を意味する。認識配列に含まれるシトシンがメチル化されているDNAの場合、メチル化感受性制限酵素を作用させても当該DNAは切断されず、一方、認識配列に含まれるシトシンがメチル化されていないDNAの場合、メチル化感受性制限酵素を作用させれば当該DNAは切断される。この違いを利用してメチル化を検出することができる。メチル化感受性酵素の具体的な例としては、例えば、HpaII(ccgg)、BstUI(cgcg)等を挙げることができる。
具体的な方法としては、染色体DNAを上記制限酵素で消化した後、この制限酵素消化物を鋳型に、制限酵素認識部位の前後に設定したプライマーを用いてPCRを行い、増幅の有無を調べる方法を挙げることができる。解析対象とするシトシンがメチル化されている場合には、増幅産物が得られる。一方、解析対象とするシトシンがメチル化されていない場合には、増幅産物が得られない。また、当該制限酵素による消化の有無は、消化後にサザンハイブリダイゼーションを行い、ハイブリダイズしたDNAの長さを調べてもよい。解析対象とするシトシンがメチル化されている場合には制限酵素で切断されず、当該シトシンがメチル化されていない場合よりも長いDNAが検出される。検出された長いDNAの量と短いDNAの量とを比較することにより、解析対象となるシトシンのメチル化の頻度を測定することができる。さらに、メチル化部位の前後に設定したプライマーを用いたPCRで増幅した後、増幅産物を制限酵素で消化し、PCR産物の長さにより解析する方法も挙げることができる。
例えば、PCDHB16遺伝子の場合、GenBank Accession No. NG_000017の塩基配列において塩基番号151811、152302などで示されるシトシンはHpaIIの認識配列に含まれており、上記方法により当該シトシンのメチル化頻度を測定することができる。
本発明の方法においては、上記のような方法により求めたメチル化頻度に基いて、神経芽細胞腫の予後を判定する。正確に判定するためには、あらかじめ、測定対象のシトシンについて、予後良好または予後不良と判定するメチル化頻度の基準を数値化しておくことが好ましい。その上で、該基準値と、測定値とを比較し、被験哺乳動物の神経芽細胞腫の予後を判定することができる。例えば、配列番号2〜5のプライマーを用いたメチル化特異的PCRにより、PCDHB16遺伝子のシトシンのメチル化頻度を判定に使用する場合、60%以上のメチル化頻度であれば予後不良、それ未満であれば予後良好と判定することができる。また、被験哺乳動物のメチル化頻度を、健常な哺乳動物又は予後良好群の哺乳動物のメチル化頻度と比較することにより予後を判定してもよい。予後は、例えば、神経芽細胞腫が自然退縮する予後良好群、または、数ヶ月または1年以内に死亡する予後不良群に判定することができるが、神経芽細胞腫の臨床の各ステージに分類されるように判定してもよい。
本発明はまた、神経芽細胞腫の予後を判定するためのキットを提供する。本発明のキットは、上述したような神経芽細胞腫の予後不良群においてメチル化頻度の高いCGIの検出に用いることのできる、PCR用プライマー又はハイブリダイゼーション用プローブを含むキットを挙げることができる。PCR用プライマー又はハイブリダイゼーション用プローブとしては、上述したようなプロトカドヘリンβファミリーに属するタンパク質をコードする遺伝子、プロトカドヘリンαに属するタンパク質をコードする遺伝子、肝細胞増殖因子様タンパク質をコードする遺伝子、DKFZp451I127遺伝子又はチトクロムp450 CYP26C1遺伝子に含まれるCpGアイランドのシトシンを含む配列を有するオリゴヌクレオチドなどを例示することができる。プライマー又はプローブの長さは特に制限されないが、10〜50merが好ましく、15〜35merがより好ましい。なお、プライマー又はプローブの
配列は、亜硫酸水素ナトリウム等によりメチル化されていないシトシンがチミン(ウラシル)に変換されることを考慮して決定する。プローブは検出のための標識物質が結合したものであってもよい。さらに、プローブは担体上に固定化された検出用チップであってもよい。本発明のキットをメチル化特異的PCR用とする場合は、プライマーのほかにポリメラーゼ等、PCR用試薬を含んでいてもよい。また、ハイブリダイゼーションキットとする場合は、プローブのほかに検出用の基質や酵素を含むものであってもよい。
以下、本発明を実施例によりさらに具体的に説明する。
神経芽細胞腫の臨床ステージは国際神経芽細胞腫分類(International Neuroblastoma Staging System)によって分類した。染色体DNAはOncogene 1999; vol.18:p1061-1066に記載の方法に従って抽出した。
<予後不良群でメチル化頻度の高いCGIの単離>
MS-RDA法(特開平11-146788号公報)を用いて、神経芽細胞腫の予後不良群でメチル化頻度の高いシトシンを含むフラグメントの取得を試みた。予後良好群の検体として、予後の良好な神経芽細胞腫5例から調製したプライマリー細胞を用いた。一方、予後不良群の検体としては、予後不良の神経芽細胞腫由来の5種類のセルライン(CHP134、IMR32、GAMB、NGP、TGW)を用いた。なお、これらの5種類のセルラインはJapanses Collection of Bioresources (Tokyo, Japan)又はAmerican Type Culture Collection (ATCC: Manassas, VA,米国)から入手した。
これらの細胞から単離した染色体DNAを用いてMS-RDA法を行った結果、神経芽細胞腫に特異的なフラグメントが96クローン得られた。これらの96クローンのうち、重複しない30クローンについて、BigDye Terminator kit(PE Biosystems, Foster City, CA)及びABI自動DNAシーケンサー(PE Biosystems)を用いて塩基配列を決定した。その結果、7クローンは、それぞれ、プロトカドヘリンβ16(PCDHB16)遺伝子、プロトカドヘリンα1(PCDHA1)遺伝子、肝細胞増殖因子様タンパク質(HLP)遺伝子、DKFZp451I127遺伝子、FLJ37440遺伝子、ジンクフィンガータンパク質297(ZNF297)遺伝子及びチトクロムp450 CYP26C1(CYP26C1)遺伝子に由来するものであった。これらは、それぞれ、GenBank Accession No. NG_000017の塩基番号151812〜152302、NG_000016の塩基番号52822〜53571、U37055の塩基番号6953〜7110、AC026779の塩基番号91325〜91745、AC092645の塩基番号73684〜74289、Z97183の塩基番号34892〜35447、AL358613の塩基番号11222〜11851に相当する配列であった(図1)。
<メチル化特異的PCR(MS-PCR)によるメチル化頻度の解析>
上記遺伝子のうち、PCDHB16、PCDHA1、HLP、DKFZp451I127、CYP26C1の5種類の遺伝子について、メチル化特異的PCRを行い、メチル化頻度と神経芽細胞腫の予後との相関を調べた。まず、上記MS-RDAによる解析に用いた5種類のプライマリー細胞及び5種類のセルラインから、染色体DNAを抽出した。次に、得られたDNAを、TEバッファー中で、亜硫酸水素ナトリウム(溶液中の濃度3M)を用いて一晩、55℃で処理した。
上記処理により得られたDNAを鋳型とし、各遺伝子について以下の表1の条件でMS-PCRを行った。
Figure 2005198533
これらのPCRによって増幅される領域は、PCDHB16遺伝子がGenBank Accession No. NG_000017の152547-152659又は152544-152660、PCDHA1遺伝子がGenBank Accession No. NG_000016の53686-53806又は53681-53807、HLP遺伝子がGenBank Accession No. U37055の6845-6940又は6840-6945、DKFZp451I27遺伝子がGenBank Accession No. AC026779の90988-91084又は90987-91094、CYP26C1遺伝子がGenBank Accession No. AL358613の11646-11759又は11643-11752である(図1に□で示した)。なお、上記プライマーはメチル化されていないシトシン(C)が亜硫酸水素ナトリウムによりチミン(ウラシル)(T/U)に変換されることを考慮して設計されたものである。さらに、上記PCDHB16遺伝子増幅用プライマーは、PCDHB2〜15、17及び18遺伝子も同時に増幅するものであり、これらの遺伝子のシトシンも同時に解析することができる。また、上記PCDHA1遺伝子増幅用プライマーは、PCDHA2〜18遺伝子も同時に増幅するものであり、これらの遺伝子のシトシンも同時に解析することができる。
上記のメチル化特異的PCRを行った後、増幅産物を含むPCRの反応液をアガロースゲル電気泳動に供し、増幅産物をエチジウムブロマイドにより染色して検出した。その結果、予後不良群において、PCDHB16遺伝子、PCDHA1遺伝子、HLP遺伝子、DKFZp451I127遺伝子、及びCYP26C1遺伝子が高メチル化されていることがわかった(図2)。
<定量MS-PCRによる組織サンプルの解析>
臨床ステージの異なる非再発性の神経芽細胞腫の102種類の組織サンプルについて、PCDHB16遺伝子(PCDHB2〜15,17,18も含む)、PCDHA1遺伝子(PCDHA2〜18も含む)、HLP遺伝子、DKFZp451I127遺伝子、及びCYP26C1遺伝子のメチル化頻度を調べるために、それぞれ定量MS-PCRを行った。まず上記各組織サンプルから、染色体DNAを単離し、該DNAの亜硫酸水素ナトリウム処理を行った。
定量MS-PCRの鋳型には、被験サンプルとして、上記亜硫酸水素ナトリウム処理されたDNAを10、10,10,10,10,10分子用いた。一方、標準サンプルとしては、あらかじめ表1のメチル化プライマー又は非メチル化プライマーで増幅して得たDNAをpGEM-T Easy Vector(Promega社)に組み込んだものを、それぞれ、メチル化用コントロール又は非メチル化用コントロールとして、10、10,10,10,10,10分子用いた。プライマーは表1に記載したものを用いた。定量MS-PCRは、iCycle
r Thermal Cycler(Bio-Rad Laboratories)によって行い、SYBR Green PCR Core Reagents(PE Biosystems)を用いて検出した。被験サンプル中のメチル化CGIを含むDNA及び非メチル化CGIを含むDNAの分子数は、メチル化プライマー又は非メチル化プライマーによって得られた増幅産物の量を、それぞれメチル化用コントロール又は非メチル化用コントロールを鋳型にして得られた増幅産物の量と比較することにより算出した。メチル化DNAの増幅量/(メチル化DNAの増幅量+非メチル化DNAの増幅量)の値を各遺伝子のメチル化頻度とした。
このメチル化頻度と神経芽細胞腫の臨床ステージとの相関を、図3にプロットした。その結果、上記5種類の遺伝子のメチル化頻度は神経芽細胞腫の臨床ステージと強い相関を示した。その中でも、PCDHB16遺伝子(P=1.2X10-16)及びCYP26C1遺伝子(P=2.9X10-15)が特に強い高い相関を示した。
上記102例のうちの生存情報が得られる94例について、PCDHB16遺伝子(PCDHB2〜15,17,18のメチル化頻度も同時に識別する)、PCDHA1遺伝子(PCDHA2〜18のメチル化頻度も同時に識別する)、HLP遺伝子、DKFZp451I127遺伝子、及びCYP26C1遺伝子の5種類の遺伝子のCGIのメチル化頻度と神経芽細胞腫患者の生存率との関係を調べた。すなわち、各遺伝子について、一定の境界値に基いて高メチル化群と低メチル化群に分け、医学の分野で広く使われているKaplan-Meier分析により、高メチル化群、低メチル化群それぞれについて、罹患期間と生存率の関係をプロットした。Kaplan-Meier分析はAabal Software(GigaWiz, Inc)を用いて行った。なお、高メチル化群と低メチル化群の境界値は、PCDHB16遺伝子が60%、PCDHA1遺伝子が90%、HLP遺伝子が30%、DKFZp451I127遺伝子が20%、CYP26C1遺伝子が30%と定めた。また、上記5種類の遺伝子のデータとともに、Sarteletらの文献(J Pathol, vol. 198, p83-91, 2002)又はNakagawaraらの文献(N Engl J Med, vol. 328, p847-854, 1993)に従って測定したN-mycの増幅レベル及びTrkAの発現レベルをプロットした。
結果を図4に示す。上記5種類の遺伝子のいずれにおいても、高メチル化群と低メチル化群とでは、生存カーブが大きく異なることがわかった。特にPCDHB16遺伝子の高メチル化の危険率はN-mycのそれとほぼ同等であり、PCDHB16遺伝子のメチル化頻度測定により神経芽細胞腫を正確に予測できることがわかった。
本発明の方法により、神経芽細胞腫の予後を正確に予測することができる。判定結果に基いて治療方針を決定することができ、不必要な放射線治療や化学療法を避けることができる。
遺伝子におけるCpGアイランドの位置を示す図。各遺伝子の最下段に記載されている□はMS-RDA法により得られた領域を、■はMS-PCRにより増幅された領域を示す。 予後良好群及び予後不良群の細胞由来の染色体DNAを用いたメチル化特異的PCRの結果を示す図(写真)。 各遺伝子のメチル化頻度と神経芽細胞腫の臨床ステージとの相関を示す図。 各遺伝子の高メチル化群及び低メチル化群それぞれに属する神経芽細胞腫患者の罹患期間と生存率との相関を示す図。

Claims (9)

  1. 哺乳動物の神経芽細胞腫の予後を判定する方法であって、該哺乳動物の染色体DNA上の、プロトカドヘリンβファミリーに属するタンパク質をコードする遺伝子、プロトカドヘリンαファミリーに属するタンパク質をコードする遺伝子、肝細胞増殖因子様タンパク質をコードする遺伝子、DKFZp451I127遺伝子又はチトクロムp450 CYP26C1遺伝子からなる群より選ばれる1種又は2種以上の遺伝子に含まれるCpGアイランドのシトシンのメチル化頻度を測定し、該メチル化頻度に基いて神経芽細胞腫の予後を判定することを特徴とする方法。
  2. 前記遺伝子が、プロトカドヘリンβ16をコードする遺伝子である、請求項1に記載の方法。
  3. さらに、プロトカドヘリンβ16以外のプロトカドヘリンβファミリーに属するタンパク質をコードする1種類以上の遺伝子に含まれるCpGアイランドのシトシンのメチル化頻度を測定する、請求項2に記載の方法。
  4. 前記遺伝子が、プロトカドヘリンα1をコードする遺伝子である、請求項1に記載の方法。
  5. さらに、プロトカドヘリンα1以外のプロトカドヘリンαファミリーに属するタンパク質をコードする1種類以上の遺伝子に含まれるCpGアイランドのシトシンのメチル化頻度を測定する、請求項4に記載の方法。
  6. メチル化特異的PCR法によってメチル化頻度を測定することを特徴とする、請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
  7. プロトカドヘリンβファミリーに属するタンパク質をコードする遺伝子、プロトカドヘリンαファミリーに属するタンパク質をコードする遺伝子、肝細胞増殖因子様タンパク質をコードする遺伝子、DKFZp451I127遺伝子又はチトクロムp450 CYP26C1遺伝子に含まれるCpGアイランドのシトシンを1つ以上含む配列を有するPCR用プライマー。
  8. プロトカドヘリンβファミリーに属するタンパク質をコードする遺伝子、プロトカドヘリンαファミリーに属するタンパク質をコードする遺伝子、肝細胞増殖因子様タンパク質をコードする遺伝子、DKFZp451I127遺伝子又はチトクロムp450 CYP26C1遺伝子に含まれるCpGアイランドのシトシンを1つ以上含む配列を有するハイブリダイゼーション用プローブ。
  9. 請求項7又は8に記載のプライマー又はプローブを含む、神経芽細胞腫の予後判定用キット。
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