JP2015177745A - 肺癌の検査方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】DNAメチル化測定に基づいた肺癌の検査方法を提供する。
【解決手段】被験者の生物学的サンプルからDNAを回収すること、該DNAについてGFRA1、KCNJ3及びOSAPの3つの遺伝子のうち1つ以上の遺伝子のメチル化を測定し、メチル化陽性であるとき肺癌であると評価することを含む、肺癌のインビトロ検査方法、並びに、ICONプローブを用いたDNAメチル化測定方法。
【選択図】図1

Description

本発明は、7種の遺伝子のDNAメチル化異常を検出することを利用する肺癌の検査方法に関する。
本発明はまた、上記7種の遺伝子のDNAメチル化の測定をICONプローブを用いて行う方法に関する。
肺癌は、日本人における癌死亡の第1の原因を占める難治性癌である。分子標的治療薬の登場に個別化医療が進んでいるが、治療成績の向上のためには早期診断及び早期治療が欠かせない。
近年、肺癌の検出のために特定の遺伝子のDNAメチル化の検出を利用する方法が提案されている。そのような遺伝子として例えば、CDKN2A/p16遺伝子、PENK遺伝子、HOXA11遺伝子及びSFRP2遺伝子などが知られている。
CDKN2A/p16遺伝子については、ヒトの癌においてCDKN2A/p16遺伝子のプロモーター部位の高メチル化が癌に関与すること(特許文献1及び2)、CpGアイランドがDNAメチル化されたCDKN2A/p16遺伝子を検出することによる癌の診断方法が知られている(特許文献3及び4)。
PENK遺伝子については、肺腺癌においてPENKプロモーターのDNAメチル化が異なるパターンを示すことが知られている(特許文献5)。
HOXA11遺伝子については、肺腺癌においてDNAメチル化されている遺伝子の1つとして知られている(特許文献6)。
SERP2遺伝子については、該遺伝子のプロモーター領域のCpGを検出するためのプライマー(特許文献7及び8)、並びに、サンプルにおいて癌を検出するための遺伝子としてDNAメチル化されたSERP2が知られている(特許文献9及び10)。
しかしながら、これらの遺伝子のDNAメチル化の検出だけでは癌特異的な異常DNAメチル化を見出すことができない症例もあり、さらなる癌検査精度の向上が望まれている。また、これと併せて、侵襲性のかなり低い血液サンプルについて癌由来の微量DNAの異常DNAメチル化を検出する手法があれば、肺癌などの癌の簡便かつ早期の診断に役立つはずである。
特表2008−067716号公報 米国特許出願公開第2012/122088号 米国特許出願公開第2006/210990号 米国特許出願公開第2010/143899号 国際公開第WO2007/05077号 米国特許出願公開第2008/233101号 再表2008−149855号公報 再表2011−24999号公報 国際公開第WO2008/084219号 米国特許出願公開第2009/155786号
本発明の目的は、肺癌の検査に有用な遺伝子のDNAメチル化マーカーを見出すことである。
本発明の別の目的は、上記のDNAメチル化マーカーについてメチル化の有無を測定する肺癌の検査方法を提供することである。
本発明のさらに別の目的は、血液中の癌由来の微量DNAのメチル化異常を検出可能とする新規のDNAメチル化測定方法を提供することである。
本発明者らは、上記の課題を解決するために鋭意研究した結果、上記の目的を達成するために有用な7種の遺伝子を見出し、本発明を完成させた。したがって、本発明は以下の特徴を包含する。
(1)被験者の生物学的サンプルからDNAを回収すること、該DNAについてGFRA1、KCNJ3及びOSAPの3つの遺伝子のうち1つ以上の遺伝子のメチル化を測定し、メチル化陽性であるとき肺癌であると評価することを含む、肺癌のインビトロ検査方法。
(2)p16、PENK、HOXA11及びSFRP2の4つの遺伝子のうち1つ以上の遺伝子のメチル化を測定することをさらに含む、上記(1)に記載の方法。
(3)生物学的サンプルが、喀痰、血液、胸水、尿、便又は肺組織である、上記(1)又は(2)に記載の方法。
(4)測定を、メチル化特異的PCR(MSP)法、パイロシークエンス法、定量的MSP法、デジタルPCRによるMSP法、バオサルファイトシークエンス法、次世代シークエンサーを用いたバイサルファイトシークエンス法又はICONプローブを用いたDNAメチル化測定法によって行う、上記(1)〜(3)のいずれかに記載の方法。
(5)肺癌が肺腺癌である、上記(1)〜(4)のいずれかに記載の方法。
(6)GFRA1、KCNJ3及びOSAPの3つの遺伝子のうち1つ以上の遺伝子と、p16、PENK、HOXA11及びSFRP2の4つの遺伝子のうち1つ以上の遺伝子がともにメチル化陽性であるとき肺癌であると評価する、上記(2)〜(5)のいずれかに記載の方法。
(7)生物学的サンプルが血液であり、該血液からDNAを回収することを含む、上記(6)に記載の方法。
(8)DNAのメチル化を、デジタルPCRによるMSP法、次世代シークエンサーを用いたバイサルファイトシークエンス法又はICONプローブを用いたDNAメチル化測定法により行う、上記(6)又は(7)に記載の方法。
(9)被験者の生物学的サンプルからのDNAを、該DNAの塩基配列中のメチル化シトシンに結合する蛍光I標識ICONプローブと、該DNAのメチル化部位と非メチル化部位との両方に結合する蛍光II標識コントロールプローブとを反応させる工程、並びに、各プローブ由来の蛍光の数を測定してメチル化レベルを決定する工程を含む、ICONプローブを用いたDNAメチル化測定方法。
(10)蛍光IがFAM蛍光であり、蛍光IIがAlexa647蛍光である、上記(9)に記載の方法。
(11)癌が肺癌である、上記(10)に記載の方法。
(12)肺癌が肺腺癌である、上記(11)に記載の方法。
(13)上記(1)〜(8)のいずれかに記載の方法におけるDNAのメチル化の測定のために使用する、上記(9)〜(12)のいずれかに記載の方法。
本発明により、肺癌、とりわけ肺腺癌の検出を特定の7種の遺伝子のDNAメチル化異常を検出又は測定することによって可能となった。この7種の遺伝子のうち4種の遺伝子は肺癌のDNAメチル化マーカーとして知られていたが、他の3種の遺伝子をDNAメチル化マーカーとして組み合わせることによって、肺癌の検出精度を向上させることができるという格別の作用効果を提供する。また、上記7種の遺伝子をDNAメチル化マーカーとしてDNAのメチル化異常を検出又は測定するためのICONプローブを使用する方法は早期癌の検出を可能にする。
この図は、蛍光ラベルされたICONプローブ(ビピリジン化合物)を用いたDNAメチル化検出法によるDNAメチル化レベル(縦軸)と、人工的に作製したメチル化DNAの予測メチル化率(横軸)との相関を示すグラフである。ここで、100%メチル化DNAはSSSI処理により作製し、0%メチル化DNAはGenomiphi処理により作製し、0%〜100%メチル化率の希釈系列を調製した。この実験では、LINE1遺伝子(■)とPENK遺伝子(●)を例示した。
本発明をさらに具体的に説明する。
1.肺癌の検査のための遺伝子のDNAメチル化マーカーと方法
本発明は、第1の態様において、肺癌のインビトロ検査方法を提供する。該方法は、被験者の生物学的サンプルからDNAを回収すること、該DNAについてGFRA1、KCNJ3及びOSAPの3つの遺伝子のうち1つ以上の遺伝子のメチル化を測定し、メチル化陽性であるとき肺癌であると評価することを含む。
GFRA1遺伝子、KCNJ3遺伝子及びOSAP遺伝子は、これまで肺癌の検査用マーカーになりうることを示す報告はなく、今回初めて肺癌のメチル化マーカーとしての有用性が明らかになった。
GFRA1(GDNF family receptor alpha 1)遺伝子の配列情報は、GenBankアクセッション番号NM_000077、HGNC ID:4243である。
KCNJ3(potassium inwardly−rectifying channel, subfamily J, member3)遺伝子の配列情報は、GenBankアクセッション番号NM_002239、HGNC ID:6264である。
OSAP(ovary−specific acidic protein)遺伝子 = MGARP(mitochondrial−localized glutamic acid−rich protein)遺伝子の配列情報は、GenBankアクセッション番号NM_032623、HGNC ID:29969である。
後述の実施例によれば、上記3遺伝子中メチル化が1遺伝子以上であるときを肺腺癌とする場合、感度74.7%、特異度91.1%、偽陽性8.9%、偽陰性25.3%であった。また、3遺伝子中メチル化が2遺伝子以上であるときを肺腺癌とする場合、感度47.4%、特異度100%、偽陽性0%、偽陰性52.6%であった。
ここで、特異度は、肺腺癌陰性の人の数のうち真に陰性として判定される人の数の割合を指すが、3遺伝子中メチル化が1遺伝子以上のとき、2遺伝子以上のとき、それぞれ91.1%、100%となり、上記の3遺伝子は、肺腺癌陰性とする判定に高い特異性を有する。
本発明の好適な実施形態によれば、上記の3遺伝子(GFRA1、KCNJ3、OSAP)のメチル化の測定に加えて、p16、PENK、HOXA11及びSFRP2の4つの遺伝子のうち1つ以上の遺伝子のメチル化を測定することをさらに含めることができる。
後述の実施例によれば、上記の3遺伝子中メチル化が1遺伝子以上と4遺伝子中メチル化が1遺伝子以上を含む、すなわち7遺伝子中メチル化が2遺伝子以上を使用して肺腺癌を診断する場合、感度80.0%、特異度97.8%、偽陽性2.2%、偽陰性20.0%であった。
ここで、感度は、肺腺癌陽性の人の数のうち真に陽性として判定される人の数の割合を指すが、上記の場合、感度が80.0%であり、また、特異度が97.8%であり、上記の3遺伝子と上記の4遺伝子を組み合わせることによる肺腺癌の陰性及び陽性の精度は高まる。
重要なことは、上記の4遺伝子のみで肺癌と判定できなかった14症例が、これらの4遺伝子と上記3遺伝子を組み合わせることによって複数の遺伝子(すなわち2遺伝子以上)で陽性として判定可能であったことから、判定精度が向上する。
4遺伝子の配列情報は、以下のとおり、GenBankやHGCNから入手可能である。
CDKN2A/p16(cyclin−dependent kinase inhibitor 2A)遺伝子の配列情報は、GenBankアクセッション番号NM_000077、HGNC ID:1787である。
HOXA11(homeobox A11)遺伝子の配列情報は、GenBankアクセッション番号NM_005523、HGNC ID:5101である。
PENK(proenkephalin)遺伝子の配列情報は、GenBankアクセッション番号NM_006211、HGNC ID:8831である。
SFRP2(secreted frizzled−related protein 2)遺伝子の配列情報は、GenBankアクセッション番号NM_003013、HGNC ID:10777である。
生物学的サンプルは、非限定的に、喀痰、血液、胸水、尿、便、肺組織などである。このうち、血液は、癌由来のDNAが微量のためDNAメチル化異常を検出することが難しいが、本発明の方法を使用することによって上記のDNAメチル化異常を検出できるようになった。
各サンプルから、フェノール/クロロホルム法などの一般的な手法によってDNAを抽出することができる。DNA抽出キットが市販されているので、そのようなキットを使用すると便利である。
本発明の方法では、上記遺伝子のメチル化を検出する。遺伝子上の好ましいメチル化部位は、該遺伝子のエクソン領域、イントロン領域、5'非翻訳領域、3'非翻訳領域、又はプロモーター領域に存在するCpG領域であり、この領域の塩基配列の異常なメチル化が検出または測定される。「CpG領域」は、CG配列に富む領域であり、例えば約20〜35%またはそれ以上のC+Gの塩基を含む領域である。
本明細書における「異常なメチル化」、「メチル化異常」などの用語は、上記7種の遺伝子について、肺腺癌などの肺癌に罹患した患者の上記遺伝子の特定領域に、正常人には実質的に認められないメチル化が存在する場合に使用される。
DNAメチル化測定は、市販のキット等を用いてDNAをバイサルファイト変換したのち、非限定的に、例えばメチル化特異的PCR(MSP)法、パイロシークエンス法、定量的MSP法、デジタルPCRによるMSP法、バオサルファイトシークエンス法、又は次世代シークエンサーを用いたバイサルファイトシークエンス法によって行うことができる。また、バイサルファイト変換を必要としない新規の手法である、ICONプローブを用いたDNAメチル化測定法によってもDNAメチル化を測定することができる。これらの手法については後述の実施例等でも説明されている。
例えば、一般的に使用されているメチル化特異的PCR法(J.G. Herman et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 1996, 93:9821−9826; C.A. Eads et al., Nucleic Acids Res. 2000, 28:E32; K. Rand et al., Methods 2002, 27:114−120; D.T. Akey et al., Genomics 2002, 80:376−384)によってDNAメチル化を検出することができる。また、メチル化のレベルは、例えばパイロシークエンス(pyrosequencing)法(S. Colella et al., Biotechniques 2003, 35:146−150; J. Tost et al., Biotechniques 2003, 35:152−156)によって測定可能である。
メチル化特異的PCR法(Methylation Specific PCR; MSP)は、重亜硫酸ナトリウム(sodium bisulfite)で処理したDNAを鋳型にし、PCRを行うことによってメチル化の有無を調べる方法である。重亜硫酸ナトリウムは、DNA上のシトシンをウラシルに変換するが、メチル化シトシン(CpGのシトシン残基の5'位のメチル化)ではこの変換反応が起こらない。
PCR用プライマーとして、メチル化されている場合に増幅されるメチル化特異的プライマーセットと、メチル化されていない場合に増幅される非メチル化特異的プライマーセットの2種類が使用される。具体的には、これらのプライマーは、CpG領域の遺伝子配列を基準にして選択し、例えばDNA自動合成機を使用することによって作製することができる。
PCRによる増幅後に、この2種類のプライマーセットからの増幅産物の比を比較することによってメチル化の有無を決定する。すなわち、メチル化特異的プライマーによる増幅産物が、試験検体で検出された時、問題の遺伝子がメチル化されていると判定する。このプライマーは、元の配列に近い配列を増幅し検出する際に有効である。一方、非メチル化特異的プライマーは、重亜硫酸ナトリウムの処理で変化した配列を検出する際に有効である。さらにまた、試験検体の重亜硫酸ナトリウムで処理後のDNAの質的評価としてメチル化の有無に関わらずPCR増幅が行われる例えばLINE1プライマー(特開2010−279311号公報)を用いるときには、(メチル化特異的プライマーによる増幅産物)対(LINE1プライマーによる増幅産物)の比によりメチル化DNAの量的診断も可能となる。
パイロシークエンス法、定量的メチル化PCR(qMSP)法、デジタルPCR法、又は次世代シークエンサーを用いたバイサルファイトシークエンス法で使用可能なプライマーセットの非限定的な例は、以下のとおりである。これらのプライマーセットは、肺癌検査用キットとしても使用も可能である。
(パイロシークエンス法の場合)
CDKN2A/p16遺伝子:配列番号1〜3
GFRA1遺伝子:配列番号4〜6
HOXA11遺伝子:配列番号7〜9
OSAP遺伝子:配列番号10〜12
PENK遺伝子:配列番号13〜15
SFRP2遺伝子:配列番号16〜18
KCNJ3遺伝子:配列番号19〜21
(定量的メチル化PCR(qMSP)法及びデジタルPCR法の場合)
CDKN2A/p16遺伝子:配列番号22及び23(メチル化特異的プラーマー)、配列番号25及び26(非メチル化特異的プライマー)
GFRA1遺伝子:配列番号28及び29(メチル化特異的プラーマー)、配列番号30及び31(非メチル化特異的プライマー)
HOXA11遺伝子:配列番号32及び33(メチル化特異的プラーマー)、配列番号34及び35(非メチル化特異的プライマー)
OSAP遺伝子:配列番号36及び37(メチル化特異的プラーマー)、配列番号39及び40(非メチル化特異的プライマー)
PENK遺伝子:配列番号42及び43(メチル化特異的プラーマー)、配列番号44及び45(非メチル化特異的プライマー)
SFRP2遺伝子:配列番号46及び47(メチル化特異的プラーマー)、配列番号49及び50(非メチル化特異的プライマー)
KCNJ3遺伝子:配列番号52及び53(メチル化特異的プラーマー)、配列番号54及び55(非メチル化特異的プライマー)
(次世代シークエンサーを用いたバイサルファイトシークエンス法の場合)
CDKN2A/p16遺伝子:配列番号56及び57
GFRA1遺伝子:配列番号58及び59
HOXA11遺伝子:配列番号60及び61
OSAP遺伝子:配列番号62及び63
PENK遺伝子:配列番号64及び65
SFRP2遺伝子:配列番号66及び67
KCNJ3遺伝子:配列番号68及び69
本発明において、肺癌は、非小細胞肺癌であり、これには、腺癌、扁平上皮癌及び大細胞癌が含まれる。好ましい肺癌は、肺腺癌である。肺腺癌は、肺癌のなかで約50%以上を占め、肺の末梢にできやすく、遠隔転移しやすいという性質を有している。
本発明の好適な実施形態によれば、本発明の方法は、GFRA1、KCNJ3及びOSAPの3つの遺伝子のうち1つ以上の遺伝子と、p16、PENK、HOXA11及びSFRP2の4つの遺伝子のうち1つ以上の遺伝子がともにメチル化陽性であるとき肺癌、好ましくは非小細胞肺がん、より好ましくは肺腺癌、であると評価することを含む。
メチル化は、肺癌、より好ましくは肺腺癌、に特異的な異常メチル化であることが好ましい。3遺伝子群から1遺伝子以上と4遺伝子群から1遺伝子以上の、合せて2遺伝子以上のメチル化陽性を検出又は測定することによって肺癌であると評価する(又は、そのような評価を補助若しくは支援する)確度が高まる。
本発明の方法ではさらに、生物学的サンプルとして被験者の血液を使用することができる。血液中の癌由来のDNAは微量であるため、次世代シークエンサーを用いたバイサルファイトシークエンス法、デジタルPCR法、ICONプローブを用いたDNAメチル化測定法(下記参照)などの高感度DNAメチル化検出法を使用する必要がある。上記と同様に7種の遺伝子のDNAメチル化を測定可能とするプライマーやプローブを組み合わせて用いることによってメチル化検出を行うことができる。
2.ICONプローブを用いたDNAメチル化測定方法
本発明はさらに、被験者の生物学的サンプルからのDNAを、該DNAの塩基配列中のメチル化シトシンに結合する蛍光I標識ICONプローブと、該DNAのメチル化部位と非メチル化部位との両方に結合する蛍光II標識コントロールプローブとを反応させる工程、並びに、各プローブ由来の蛍光の数を測定してメチル化レベルを決定する工程を含む、ICONプローブを用いたDNAメチル化測定方法を提供する。
ICONプローブは、東京大学の岡本晃光博士らによって開発された、特定のDNA配列内の1つのメチル化シトシンに結合するプローブ(ビピリジン化合物)である(K. Tainaka and A. Okamoto, Curr Protoc Nucleic Acid Chem 2011 Dec;Chapter 8:Unit 8.7.1−17)。このプローブをFAM(カルボキシフルオレセイン)で蛍光ラベル(緑)し、コントロールプローブをAlexa647(赤)でラベルする場合、この2種類のプローブをDNAに反応すると、非メチル化DNAはコントロールプローブのみに結合するため赤色の蛍光として観察され、一方、メチル化DNAは、ICONプローブとコントロールプローブが結合するため黄色の蛍光として観察される。このとき、蛍光は、高感度の蛍光顕微鏡で観察することができる。また、メチル化レベルは、(黄色蛍光の数)÷(黄色蛍光の数+赤色蛍光の数)×100(%)で算出できる。このようにして算出されたDNAメチル化レベルは、人工的に作成したメチル化DNAの予測メチル化率と高い相関を示す(図1)。
上記の蛍光Iと蛍光IIの組み合わせの例には、FAMとAlexa647の組み合わせ、Alexa488とCy5の組み合わせなどがある。
上記の方法で使用可能なプローブを以下に例示する。これらのプローブのセットは、肺癌検査用キットとしても使用も可能である。
CDKN2A/p16遺伝子:配列番号70(ICONプローブ)、配列番号71(コントロールプローブ)
GFRA1遺伝子:配列番号72(ICONプローブ)、配列番号73(コントロールプローブ)
HOXA11遺伝子:配列番号74(ICONプローブ)、配列番号75(コントロールプローブ)
OSAP遺伝子:配列番号76(ICONプローブ)、配列番号77(コントロールプローブ)
PENK遺伝子:配列番号78(ICONプローブ)、配列番号79(コントロールプローブ)
SFRP2遺伝子:配列番号80(ICONプローブ)、配列番号81(コントロールプローブ)
KCNJ3遺伝子:配列番号82(ICONプローブ)、配列番号83(コントロールプローブ)
LINE1遺伝子:配列番号84(ICONプローブ)、配列番号85(コントロールプローブ)
本発明の方法は、バイサルファイト変換を必要とせず、また、血液中の癌由来の微量DNAのメチル化異常を検出する方法としても使用することができる。この方法は、簡便であり、かつ、微量DNAをロスすることなく分析に使用できる。検出においては、蛍光顕微鏡の他に、マイクロアレイ、スキャナーによる蛍光検出などが可能であると考えられる。
本発明の方法は、被験者における肺癌、より好ましくは肺腺癌、の検査や、上記1節に記載の方法でのDNAメチル化検出などに使用できる。
上記の1節及び2節に記載された特定のプラーマーセット及びプライマーセットは、肺癌(好ましくは非小肺癌、より好ましくは肺腺癌)の検査用キットとして使用できる。キットには、他に、使用説明書、DNA抽出キット、PCR測定キットなどを包含させることができる。
以下の実施例によって本願発明をさらに具体的に説明するが、本発明の範囲は、その実施例に制限されないものとする。
(実施例1)
<種々のDNAメチル化検出法による肺腺癌の検出>
[I]実験手順
(1)DNA抽出
腫瘍組織及び正常肺組織DNAについて、肺腺癌患者の手術検体から得られた腫瘍組織もしくは正常肺組織からDNAを抽出した。方法はフェノール/クロロホルムを用いた一般的手法である。
また、血液中DNAについて、肺腺癌患者の手術時に末梢血約5mlをEDTA−Naスピッツに採取し、フィコールを用いて血漿のみを分離し、−80℃に保存した。血液中のDNAはキアゲン社のQIAmp Circulating Nucleic Acid キットを用いて抽出した。
上記の肺腺癌患者は、愛知県がんセンターにて手術を受けた患者であり、該患者に対しインホームドコンセントにより研究へのサンプル提供が要請された。
(2)バイサルファイト変換
組織由来DNA及び血液由来DNAはキアゲン社のEpiTect Plus DNA Bisulfiteキットを用いてバイサルファイト変換を行った。DNAは500ngから2μgを使用し、最終25μlで溶出した。バイサルファイト変換を行ったうえでメチル化アッセイ(パイロシークエンス法、定量的メチル化PCR(qMSP)法、デジタルPCR法、次世代シークエンサーを用いたバイサルファイトシークエンス)を行った。
(3)パイロシークエンス法
バイサルファイト変換後のサンプルをPCRで目的遺伝子領域を増幅する。PCRはPCRバッファー(Tris−HCl pH8.8 670mM,(NHSO 166mM, MgCl 67mM, βメルカプトエタノール 100mM)、プライマー 05.pmol、MgCl 3mM、dNTP 1.25mM、ポリメラーゼ(Takara rTaq)1Uを用いてPCRを行った。PCRは95℃ 30秒、アニーリング温度 30秒、72℃ 30秒で50サイクル行った。各遺伝子のアニーリング温度は、HOXA11 55℃, OSAP 57.5℃, SFRP2 56℃, GFRA1 52.5℃である。
得られたPCR産物を用いてパイロシークエンスによりメチル化率を解析した。PCR産物はビオチンを利用して選別し、シークエンスプライマーをアニールさせることでシークエンスを行った。
測定に使用したプライマーは、7種の遺伝子について以下のものを使用した。Fwdは、フォワード(正方向)プライマーを表し、Revは、リバース(逆方向)プライマーを表し、Sequence primerは、パイロシークエンサーでアニールさせるプライマーを表す。
(CDKN2A/p16)
Fwd: GGTTGTTTTYGGTTGGTGTTTT(配列番号1)
Rev: Biotin-ACCCTATCCCTCAAATCCTCTAAAA(配列番号2)
Sequence primer: TTTTTGTTTGGAAAGAT(配列番号3)
(GFRA1)
Fwd: GYGGGYGAGTTTAGGAGGGAGTT(配列番号4)
Rev: GGGACACCGCTGATCGTTTAAAAAAACCCTCRACCTACTCCTATT(配列番号5)
Sequence primer: TAGGAGGGAGTTGGAG(配列番号6)
(HOXA11)
Fwd: TTTTTTGTTAAGGATGGGGATAGA(配列番号7)
Rev: GGGACACCGCTGATCGTTTAAACCACCCTCATCAAAATCCATTAT(配列番号8)
Sequence primer: AGTGGAGAATTATGTTAAGT(配列番号9)
(OSAP)
Fwd: GGGACACCGCTGATCGTTTAGGAGGATGGTGAGGATTATAAAGG(配列番号10)
Rev: AACTACCCTTCCACAAAAAAACT(配列番号11)
Sequence primer: AAAAAAACTAAAAACCTAAC(配列番号12)
(PENK)
Fwd: GGAAAAGAGTYGGGTGTTTTAGG(配列番号13)
Rev: GGGACACCHCTGATCGTTTACCCRACCRACAACTTTTAAAT(配列番号14)
Sequence primer: GGGTGTTTTAGGTAGT(配列番号15)
(SFRP2)
Fwd: GGGACACCGCTGATCGTTTAGGTTTATTTT(配列番号16)
Rev: CCRAAATTCRAACTTATCCC(配列番号17)
Sequence primer: CCCRCTCTCTTCRCTAAATA(配列番号18)
(KCNJ3)
Fwd: GGGATTTTGGTTAAAAGATAGGA(配列番号19)
Rev: GGGACACCGCTGATCGTTTAAATCCCAACCCACCTACCAA(配列番号20)
Sequence primer: TTAAAAGATAGGAGATAGGT(配列番号21)
(4) 定量的メチル化PCR(qMSP)法
バイサルファイト変換後のサンプルをメチル化配列特異的プライマー、メチル化に関係ない領域のコントロールプライマーを用いてSYBR Green法でリアルタイムPCRを行った。SYBR Green PCR master mix、プライマー 05.pmolを用いてリアルタイムPCRを行い、サンプルと同時に0%メチル化および100%メチル化サンプルをコントロールとしてPCRを行い、サイクル数を比較することでメチル化率を計算した。
測定に使用したプライマーは、7種の遺伝子について以下のものを使用した。Mは、メチル化を示し、UMは、非メチル化を示す。M−probe(FAM)は、メチル化特異的プローブを表し、UM−probe(VIC)は、非メチル化特異的プローブを表す。
(CDKN2A/p16)
M-Fwd: TTGGTAGTTAGGAAGGTTGTATCGC(配列番号22)
M-Rev: TCCCTACTCCCAACCGCG(配列番号23)
M-probe(FAM): ACGTTTTTGTTGGTAGGCGG(配列番号24)
UM-Fwd: GGTAGTTAGGAAGGTTGTATTGT(配列番号25)
UM-Rev: TCCCTACTCCCAACCACA(配列番号26)
UM-probe(VIC): TATGTTTTTGTTGGTAGGTGG(配列番号27)
(GFRA1)
M-Fwd: TCGAGTCGAGGGTTTTGTTC(配列番号28)
M-Rev: CTCCTTCCCTTTCCGAACTC(配列番号29)
UM-Fwd: GGTGGGAATAGGAGTAGGTT(配列番号30)
UM-Rev: AATTTCCAAACAAAACCCTCAA(配列番号31)
(HOXA11)
M-Fwd: TTAAGGACGGGGATAGATTTTTAC(配列番号32)
M-Rev: CTCCGCGATAACCGAACTTA(配列番号33)
UM-Fwd: TTAAGGATGGGGATAGATTTTTAT(配列番号34)
UM-Rev: CCTTAAACTCTCCACAATAACCAAA(配列番号35)
(OSAP)
M-Fwd: GGATGAAGGTCGACGTGTTTTTTTC(配列番号36)
M-Rev: CAACGACAACGCCAAAATCT(配列番号37)
M-probe(FAM): TTCGGGCGGGGCGT(配列番号38)
UM-Fwd: GGGTTGGATGAAGGTTGATG(配列番号39)
UM-Rev: CCCTCAACAACAACACCAAAA(配列番号40)
UM-probe(VIC): TTTGGGTGGGGTGTTGT(配列番号41)
(PENK)
M-Fwd: AATTTTGTTTTGGGTCGCGGAC(配列番号42)
M-Rev: CTCGCGATTCCCGAAATAAC(配列番号43)
UM-Fwd: TTGTGGATGTTTAGGAAAAGAGTT(配列番号44)
UM-Rev: ACCCTCCCAACCAACAACTT(配列番号45)
(SFRP2)
M-Fwd: GTTTCGTTCGCGTTGTTTTTTC(配列番号46)
M-Rev: ACCCGCTCTCTTCGCTAAAT(配列番号47)
M-probe(FAM): TTTTTCGGGGTTTCGAGTCG(配列番号48)
UM-Fwd: TGTTTTGTTTGTGTTGTTTTTTT(配列番号49)
UM-Rev: CCCAAACCCACTCTCTTCAC(配列番号50)
UM-probe(VIC): TTTTGGGGTTTTGAGTTGTA(配列番号51)
(KCNJ3)
M-Fwd: GGTTTTTGGAGTTCGGAATTC(配列番号52)
M-Rev: CCCGCCCAAAAACATATCTA(配列番号53)
UM-Fwd: GGGGGTGTTGTATTAGTGTTTG(配列番号54)
UM-Rev:CCAACCCACCTACCAACTCA(配列番号55)
(5)デジタルPCR法
バイサルファイト変換後のサンプルをメチル化配列特異的プライマー(M)、非メチル化配列特異的プライマー(UM)を用いてTaq Man法を用いたドロップレットPCRを行う。反応後のドロップレットをQX100 Droplet Reader(BioRad)により蛍光をカウントしサンプル中のコピー数を算出する。Mプライマーでのカウント数とUMプライマーでのカウント数とを合わせて計算することにより、サンプルのメチル化率を算出した。
測定に使用したプライマーは、上記のqMSPと同じプライマーである。
(6)次世代シークエンサーを用いたバイサルファイトシークエンス法
バイサルファイト変換後のサンプルを用いてPCRを行い、目的遺伝子領域を増幅する。PCRバッファー(Tris−HCl pH8.8 670mM,(NHSO 166mM, MgCl 67mM, βメルカプトエタノール 100mM)、プライマー 05.pmol、MgCl 3mM、dNTP 1.25mM、ポリメラーゼ(Takara rTaq)1Uを用いてPCRを行った。PCRは95℃ 30秒、アニーリング温度 30秒、72℃ 30秒で50サイクル行った。アニーリング温度はHOXA11 57.5℃, OSAP 60℃, SFRP2 50℃, GFRA1 52.5℃, KCNJ3 57.5℃, PENK 57.5℃, p16 64℃から60℃に段階的に下げる、の各温度である。得られた産物はキアゲン社 QIA qick PCR purification キットにて精製した。精製産物はNew England BioLabs社のNEBnext DNA library Prep Master Mix Set for Illuminaを用いて次世代シークエンス用にライブラリーを作成した。次世代シークエンスはイルミナ社 MiSEQを用いて行った。
測定に使用したプライマーは、7種の遺伝子について以下のものを使用した。
(CDKN2A/p16)
Fwd: GTATYGYGGAGGAAGGAAA(配列番号56)
Rev: AACTCCTCCCCACCTACCC(配列番号57)
(GFRA1)
Fwd: GGYGAGTTTAGGAGGGAGTT(配列番号58)
Rev: CRTATTCCRAAACCAAATTTCT(配列番号59)
(HOXA11)
Fwd: TTTTGTTAAGGATGGGGATAGATT(配列番号60)
Rev: AACCACRCTCATCAAAATCC(配列番号61)
(OSAP)
Fwd: AGATGGGTTAGGGGAGGATG(配列番号62)
Rev: AAACRCAAACTACCCTTCCA(配列番号63)
(PENK)
Fwd: GGAAAAGAGTYGGGTGTTTTAGG(配列番号64)
Rev: CCCRACCRACAACTTTTAAAT(配列番号65)
(SFRP2)
Fwd: AAYGGTTTATTTTGTTTTTT(配列番号66)
Rev: RCCCGCTCTCTTCRCTAAAT(配列番号67)
(KCNJ3)
Fwd: GGYGGATAGGTTTTTGGAGT(配列番号68)
Rev: AATCTCCCRCCCCCTAAA(配列番号69)
[II]肺腺癌の検出に有効な遺伝子のスクリーニング
肺腺癌と診断された41人の患者の臨床検体(肺癌組織及び正常肺組織)からDNAを抽出した後、制限酵素のイソシゾマー性質を利用したMCA(methylated CpG island amplification)法を用いて、メチル化しているDNA断片を増幅したうえで回収し、マイクロアレイ(アジレント社、G4497A)で解析した。高頻度でメチル化している遺伝子を選択し、別のメチル化検出法(パイロシークエンス法及び定量的MSP法)によってメチル化レベルの検証を行い、正常組織ではメチル化が検出されず、肺腺癌組織でのみDNAメチル化を示す7種の遺伝子、すなわちGFRA1、KCNJ3、OSAP、p16、PENK、HOXA11及びSFRP2遺伝子を最終的に選択した。7遺伝子のうち、p16、PENK、HOXA11及びSFRP2の4種の遺伝子はメチル化マーカーとして肺癌の検出において知られている(上記「背景技術」参照)が、GFRA1、KCNJ3、OSAPの3種の遺伝子については肺癌のメチル化マーカーとなりうることが今回初めて見出された。
上記の7遺伝子の配列情報については、以下のとおりGenBank等から入手可能である。
CDKN2A/p16 (cyclin-dependent kinase inhibitor 2A)
RefSeq: NM_000077
HGNC ID: 1787
GFRA1(GDNF family receptor alpha 1)
RefSeq: NM_145793
HGNC ID: 4243
HOXA11 (homeobox A11)
RefSeq: NM_005523
HGNC ID: 5101
OSAP (ovary-specific acidic protein) = MGARP(mitochondrial-localized glutamic acid-rich protein)
RefSeq: NM_032623
HGNC ID: 29969
PENK (proenkephalin)
RefSeq: NM_006211
HGNC ID: 8831
SFRP2 (secreted frizzled-related protein 2)
RefSeq: NM_003013
HGNC ID: 10777
KCNJ3 (potassium inwardly-rectifying channel, subfamily J, member3)
RefSeq: NM_002239
HGNC ID: 6264
以下で説明するように、上記4遺伝子、上記3遺伝子、或いはそれらの組み合わせによって、DNAメチル化しているものを陽性とした場合、肺腺癌を高い特異度で検出可能であった。
[III]7遺伝子のメチル化と肺腺癌の検出との関係
上で選択された7種の遺伝子のメチル化マーカーについて、肺腺癌患者からの肺組織臨床サンプル(腫瘍組織95検体、正常組織45検体)を用いてDNAメチル化検出法にてメチル化の有無を測定した。メチル化されている場合陽性とし、メチル化されていない場合陰性とした。上記の7遺伝子、4遺伝子又は3遺伝子について、それぞれの遺伝子群のなかで何個の遺伝子がメチル化されているかを調べ、例えば1遺伝子以上の場合又は2遺伝子以上の場合を肺腺癌と判定すると仮定し、測定結果から感度、特異度、偽陽性、及び偽陰性を決定した。
感度は、(真陽性の数)÷(真陽性の数+偽陰性の数)で表される。
特異度は、(真陰性の数)÷(真陰性の数+偽陽性の数)で表される。
偽陽性は、(真陽性の数)÷(真陽性の数+偽陽性の数)で表される。
偽陰性は、(真陰性の数)÷(真陰性の数+偽陰性の数)で表される。
(1)3遺伝子(GFRA1、KCNJ3、OSAP)中メチル化が1遺伝子以上であるときを肺腺癌とする場合
結果を表1に示した。
Figure 2015177745
表において、「1以上」は、メチル化が1遺伝子以上の症例数が71であることを示し、「1未満」は、メチル化が0の症例数が24であることを示す。
感度74.7%、特異度91.1%、偽陽性8.9%、偽陰性25.3%であった。
(2)3遺伝子(GFRA1、KCNJ3、OSAP)中メチル化が2遺伝子以上であるときを肺腺癌とする場合
結果を表2に示した。
Figure 2015177745
表において、「2以上」は、メチル化が2遺伝子以上の症例数が45であることを示し、「2未満」は、メチル化が1遺伝子又は0の症例数が50であることを示す。
感度47.4%、特異度100%、偽陽性0%、偽陰性52.6%であった。
(3)4遺伝子(p16、PENK、HOXA11、SFRP2)中メチル化が1遺伝子以上であるときを肺腺癌とする場合
結果を表3に示した。
Figure 2015177745
表において、「1以上」は、メチル化が1遺伝子以上の症例数が85であることを示し、「1未満」は、メチル化が0の症例数が10であることを示す。
感度89.5%、特異度88.9%、偽陽性11.1%、偽陰性10.5%であった。
(4)4遺伝子(p16、PENK、HOXA11、SFRP2)中メチル化が2遺伝子以上であるときを肺腺癌とする場合
結果を表4に示した。
Figure 2015177745
表において、「2以上」は、メチル化が2遺伝子以上の症例数が66であることを示し、「2未満」は、メチル化が1遺伝子又は0の症例数が29であることを示す。
感度69.5%、特異度100%、偽陽性0%、偽陰性30.5%であった。
(5)7遺伝子(GFRA1、KCNJ3、OSAP、p16、PENK、HOXA11、SFRP2)中メチル化が1遺伝子以上であるときを肺腺癌とする場合
結果を表5に示した。
Figure 2015177745
表において、「1以上」は、メチル化が1遺伝子以上の症例数が86であることを示し、「1未満」は、メチル化が0の症例数が9であることを示す。
感度90.5%、特異度82.2%、偽陽性17.8%、偽陰性9.5%であった。
(6)7遺伝子(GFRA1、KCNJ3、OSAP、p16、PENK、HOXA11、SFRP2)中メチル化が2遺伝子以上であるときを肺腺癌とする場合
結果を表6に示した。
Figure 2015177745
表において、「2以上」は、メチル化が2遺伝子以上の症例数が76であることを示し、「2未満」は、メチル化が1遺伝子又は0の症例数が19であることを示す。
感度80.0%、特異度97.8%、偽陽性2.2%、偽陰性20.0%であった。
(7)3遺伝子(GFRA1、KCNJ3、OSAP)から1遺伝子以上と4遺伝子(p16、PENK、HOXA11、SFRP2)から1遺伝子以上を含む2遺伝子以上を使用して肺腺癌を診断する場合
結果を表7に示した。
Figure 2015177745
表において、「2以上」は、メチル化が2遺伝子以上の症例数が76であることを示し、「2未満」は、メチル化が1遺伝子又は0の症例数が19であることを示す。
感度80.0%、特異度97.8%、偽陽性2.2%、偽陰性20.0%であった。
(実施例2)
<ICONプローブ反応を利用する高感度DNAメチル化測定>
ICONプローブはジーンデザイン社製のものを使用した。メチル化DNAに結合するメチル化プローブにはFAM(カルボキシフルオレセイン)蛍光(緑)を、コントロールプローブにはAlex647蛍光(赤)を付加している。ゲノムDNA500ngを95℃5分加熱し1本鎖にしたのち、バッファー(Potassium osmate 5mM, Potassium hexacyanoferrate 100mM, Tris−HCl pH7.7 50mM, EDTA 0.5mM, NaCl 1M)とプローブ0.002pmolとを加え0℃で15分反応させる。反応後はキアゲン社のQIA qick PCR purification キットを用いて精製し、最終30μlで溶出した。
観察用ガラス(松浪24×60mmカバーガラス)は1N NaOHで40分で洗浄後、超純水にて洗浄し乾燥したものを使用した。
サンプルはガラス上に滴下したのち、カバーガラス(松浪5×5mmカバーガラス)をかぶせたのちに顕微鏡(オリンパス、高感度全反射蛍光イメージングシステム)で観察した。
細胞株由来のDNAをSssIメチラーゼ(New England BioLabs)処理して作成した100%メチル化サンプルと、ゲノムDNA増幅試薬(GE Illustra GenomiPhi DNA Amplification Kit)を用いてDNA増幅して作成した0%メチル化サンプルとを混合し、0,1,10,25,50,75,90,99,100%の各メチル化率のサンプルを作成した。このサンプルを用いてICONプローブ反応を行い、上記の顕微鏡で観察した。
ICONプローブ配列としては、以下のものを使用した。Bはビピリジンを表わし、FAM及びAlexa647は、蛍光ラベルを表す。Methyprobeは、メチル化特異的プローブを表し、UnMethyprobeは、非メチル化特異的プローブを表す。なお、各配列番号について配列表に示された配列は、塩基配列のみを示し、該配列にはビピリジンや蛍光プローブは示されていない。
(CDKN2A/p16)
Methyprobe: FAM-GTCCCTCAAATCCTCTGGAGGGACCGCBGTATCTTTCCAGGCAAGGGGAC(配列番号70)
UnMethyprobe: BGCGAGTGCTCGGAGGAGGTGCTATTAACTCCGAGCACTTAGCGAATGTG-Alexa647(配列番号71)
(GFRA1)
Methyprobe: FAM-CGGCCTGCTCCTGTTCCCGCCBCTCCGCAGCTCCAGCTCCCTCCTAAGCT(配列番号72)
UnMethyprobe: BTAGATGCGGTAATCTTCGAGAGCTCGAAGGGCCGAGTTGGGCCAGGACG-Alexa647(配列番号73)
(HOXA11)
Methyprobe: FAM-TGGGCTACCTTGGGCTCTCCBCAGTAGCCGAGCTTAACATGATTCTCCAC(配列番号74)
UnMethyprobe: BGCTGCCTCTTTGAAGCGGATCCGTGAAGTAGAAATTTGGAGACGTAAGC(配列番号75)
(OSAP)
Methyprobe: FAM-CTGAGAGCCTGGCAGCGCCCCBCCCGGAGGAGGCACGTCGACCTTCATCC(配列番号76)
UnMethyprobe: BGTCTTGGAGACCGCCCTGCGGAGATACATCGCGCCCGCTGTCCGCCGCG-Alexa647(配列番号77)
(PENK)
Methyprobe: FAM-CGGTTCCCGGGATGGCGCGGTCGCCCCCAACGCBAGGCTGCCTGGGGCAC(配列番号78)
UnMethyprobe: BGGGCAAGATTCCGGAGAGAACGCCGCAGACCAGGGGCGAGAGAGCGGGA-Alexa647(配列番号79)
(SFRP2)
Methyprobe: FAM-TCTCTTCGCTGGGTGCGACTCBGGGCCCCGAAAAGCTGGCAGCCGGCGGC(配列番号80)
UnMethyprobe: BTTGCTGCGCTTGTAGGAGAAGTCGGGCTGGCCAAAGAGGAAGAGCCCGC-Alexa647(配列番号81)
(KCNJ3)
Methyprobe: FAM- GGGACCGCTCCCCGCACCCCCBGCGCACCTGTCTCCTATCTTTTAGCCAA(配列番号82)
UnMethyprobe: BTTAATGAGTTGACAAGCGAGTCCCAACCCACCTGCCAACTCGCTGGCTG-Alexa647(配列番号83)
(LINE1)
Methyprobe: FAM- TTTTCAGACCGGCTTAAGAAACGGCGCACCACBAGACTATATCCCACACC(配列番号84)
UnMethyprobe: BGAGGGTCCTACGCCCACGGAATCTCGCTGATTGCTAGCACAGCAGTCTG-Alexa647(配列番号85)
蛍光顕微鏡では、非メチル化DNAはコントロールプローブのみ結合しているため赤色で観察されるが、一方、メチル化DNAはICONプローブとコントロールプローブが結合するため黄色で観察される。メチル化レベルは、[(黄色の数)÷(黄色の数+赤色の数)]×100(%)となる。
様々なメチル化レベルになるように調整したDNA(0〜100%メチル化)にプローブを反応させたところ、予想されるメチル化レベルと実際に観察した蛍光の数は高い相関を示した(図1)。ここで、100%メチル化DNAはSSSI処理により作製し、0%メチル化DNAはGenomiphi処理により作製し、0%〜100%メチル化率の希釈系列を調製した。LINE1は、遺伝子全体のDNAメチル化レベルを反映する遺伝子である。PENK遺伝子について、その遺伝子のメチル化レベルを測定した。
肺腺癌が疑われる被験者からのサンプルについて上記7種の遺伝子のDNAメチル化を測定することによって肺腺癌を検出することが可能になった。本発明の方法では、血液中の癌由来の微量DNAの異常DNAのメチル化の検出も可能となる。
配列番号1〜69: プライマー
配列番号70〜85: プローブ

Claims (13)

  1. 被験者の生物学的サンプルからDNAを回収すること、該DNAについてGFRA1、KCNJ3及びOSAPの3つの遺伝子のうち1つ以上の遺伝子のメチル化を測定し、メチル化陽性であるとき肺癌であると評価することを含む、肺癌のインビトロ検査方法。
  2. p16、PENK、HOXA11及びSFRP2の4つの遺伝子のうち1つ以上の遺伝子のメチル化を測定することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
  3. 生物学的サンプルが、喀痰、血液、胸水、尿、便又は肺組織である、請求項1又は2に記載の方法。
  4. 測定を、メチル化特異的PCR(MSP)法、パイロシークエンス法、定量的MSP法、デジタルPCRによるMSP法、バオサルファイトシークエンス法、次世代シークエンサーを用いたバイサルファイトシークエンス法又はICONプローブを用いたDNAメチル化測定法によって行う、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
  5. 肺癌が肺腺癌である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
  6. GFRA1、KCNJ3及びOSAPの3つの遺伝子のうち1つ以上の遺伝子と、p16、PENK、HOXA11及びSFRP2の4つの遺伝子のうち1つ以上の遺伝子がともにメチル化陽性であるとき肺癌であると評価する、請求項2〜5のいずれか1項に記載の方法。
  7. 生物学的サンプルが血液であり、該血液からDNAを回収することを含む、請求項6に記載の方法。
  8. DNAのメチル化を、デジタルPCRによるMSP法、次世代シークエンサーを用いたバイサルファイトシークエンス法又はICONプローブを用いたDNAメチル化測定法により行う、請求項6又は7に記載の方法。
  9. 被験者の生物学的サンプルからのDNAを、該DNAの塩基配列中のメチル化シトシンに結合する蛍光I標識ICONプローブと、該DNAのメチル化部位と非メチル化部位との両方に結合する蛍光II標識コントロールプローブとを反応させる工程、並びに、各プローブ由来の蛍光の数を測定してメチル化レベルを決定する工程を含む、ICONプローブを用いたDNAメチル化測定方法。
  10. 蛍光IがFAM蛍光であり、蛍光IIがAlexa647蛍光である、請求項9に記載の方法。
  11. 癌が肺癌である、請求項10に記載の方法。
  12. 肺癌が肺腺癌である、請求項11に記載の方法。
  13. 請求項1〜8のいずれか1項に記載の方法におけるDNAのメチル化の測定のために使用する、請求項9〜12のいずれか1項に記載の方法。
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