JP6877704B2 - 膵臓癌の検出のための方法及びキット - Google Patents

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Description

本発明は、膵臓癌の鑑別診断の支援を可能とするDNAメチル化異常の検出のための方法及びキットに関する。
膵臓癌は、半世紀に亘る研究や治療開発にも関わらず5年生存率が5%に満たない難治性癌のひとつであり、症状が判明したのち診断の時にすでに進行していることが多いため、早期診断マーカーの確立に対するニーズが高い。この癌では、KRASの変異による活性化がほぼ偏在的に存在することが知られている(非特許文献1)。
膵臓癌を検出するためのマーカーについては、特定の遺伝子やタンパク質の高発現若しくは低発現、特定のmiRNAの存在の有無、特定の遺伝子のプロモーターCpGアイランドの異常な高DNAメチル化若しくは低DNAメチル化などの面から研究されており、多くのマーカーが報告されている。このうち異常なDNAメチル化若しくは非メチル化は、例えば発癌における遺伝子の発現の抑制若しくは亢進と関係するエピジェネティックス事象として癌の診断への利用が検討されている。
膵臓癌を診断若しくは検出するための異常DNAメチル化の分析に関して、例えば、論文等で報告されたデータを基にして作成された膵臓癌の多数の遺伝子に関するメチル化データベース(http://crdd.osdd.net/raghava/pcmdb/)が提供されている(非特許文献2)。また、文献が提案する異常DNAメチル化遺伝子マーカーが異なるいくつかの例を以下に紹介する。
非特許文献3には、膵臓癌に関係する高頻度の異常DNAメチル化標的としてDLX4、ELAVL2、IRX1、PITX2、SIM2、TBX5及びTFAP2C遺伝子などが記載されている。
非特許文献4には、膵臓癌に関係する高DNAメチル化遺伝子としてp16、RASSF1A、MDFI、ZNF415、CNTNAP2、ELOVL4、SOX15、HOPX、KLF10、MLH1、SPARC、NPTX2、UCHL1遺伝子などが記載されている。
非特許文献5には、膵臓癌に関係する高DNAメチル化遺伝子としてGSTM2、NGFB、ALK、DES、CASP3、FLT4、ESR1、Cyclin D2(CCND2)遺伝子など多数が記載されている。
非特許文献6には、膵液中のDNAメチル化を1%より大のカットオフで定量MSPを用いて測定するとき膵臓癌を予測できることが記載されており、このときメチル化マーカーとしてFOXE1、NPTX2、ppENK、TEPI2、CCND2、p16遺伝子を使用し、特にFOXE1及びNPTX2は100%の陽性率を与えたことが記載されている。
特許文献1には、膵臓癌を検出することを可能にするメチル化サイレンシング(発現抑制)を受ける遺伝子として、CDH3、reprimo、CLDN5、DR3、FOXE1、LDOC1、LHX1、NEFH、NPTX2、PIG11、SARP2、ST14、SMRCA1、TJP2、UCHL1、WNT7Aなど多数が記載されている。
特許文献2には、RASGRF1遺伝子の定量メチル化測定法を用いて発癌リスクを予測することが記載されており、癌は、ras遺伝子変異をもつ、胃癌、十二指腸癌、大腸癌、膵癌及び肺癌であるとしているが、実施例では胃癌のみについて測定されている。
非特許文献7、8及び9には、血液中のDNAメチル化を測定して膵臓癌を予測することが記載されている。具体的には、非特許文献7には、膵臓癌を予測するためのメチル化マーカーとしてVHL、MYF3、TMS、GPC3及びSRBC遺伝子が記載されており、また、この5種のマーカーを組み合わせたときAUC0.848、感度0.807、特異度0.666であることが記載されている。非特許文献8には、血清DNAメチル化マーカーとして、膵臓癌と正常膵臓とを識別する6種の候補遺伝子、すなわちUCHL1、NPTX2、SARP2、ppENK、CDKN2A及びRASSF1Aが記載されている。非特許文献9には、血清DNAメチル化マーカーとして、BNC1とADAMTS1遺伝子が記載されており、早期癌の検出も可能であることが示されている。
特表2007-524369号公報 特開2012-90555号公報
Waddell et al., Nature 2015; 518: 495-501 G. Nagpal et al., Scientific Reports 2014, 4, 4197; doi: 10.1038/srep04197 Y. Zhao et al., Clinical Epigenetics 2014; 6:18 D. Neureiter et al., World J Gastroenterol 2014; 20: 7830-7848 A.C. Tan et al., Molecular Oncology 2009; 3: 425-438 H. Matsubayashi et al., Cancer Res 2006; 66: 1208-1217 J. Melson et al., Int J Cancer. 2014; 134: 2656-2662 K. Warton and G. Samimi, Frontiers in Molecular Biosciences 2015, 2, 13; doi: 10.3389/fmolb.2015.00013 J.M. Yi et al., Clin Cancer Res 2013; 19: 6544-6555
本発明の目的は、被験体における膵臓癌を、特定の遺伝子のDNAメチル化異常に基づいて、かつ、約90%以上の感度と特異度で、すなわち高い正診率で、検出若しくは検出支援(或いは、検査、又は判定支援)する方法を提供することである。
本発明の別の目的は、上記方法に使用するための膵臓癌を検出若しくは検出支援(或いは、検査、又は判定支援)するためのキットを提供することである。
本発明者らは、上記の課題を解決するために、被験体における膵臓癌の発症及び罹患を、従来法と比べて、並びに、他の癌(例えば、大腸癌、胃癌、肺腺癌、肺扁平上皮癌、乳癌、腎癌、膀胱癌、急性骨髄性白血病及び皮膚癌)と比べて膵臓癌で高頻度にDNAメチル化している遺伝子セットを選択することによって、より精確に検出(若しくは検出支援)することを可能にする特定の遺伝子の異常なメチル化の存在を見出し、本発明を完成させるに至った。
したがって、本発明は、以下の特徴を含む。
(1)被験体の生物学的検体において、HOXA1、ADAMTS2、PCDH10、SEMA5A、SPSB4及びC13orf18遺伝子からなる群から選択される少なくとも1種の遺伝子のプロモーターCpGアイランドのDNAメチル化の有無を測定し、該少なくとも1種の遺伝子のプロモーターCpGアイランドがDNAメチル化されている場合、被験体は膵臓癌を発症していると決定することを含む、該被験体の膵臓癌の発症をインビトロで検出若しくは検出支援する方法。
(2)前記遺伝子のうち少なくとも2種の遺伝子のプロモーターCpGアイランドのDNAメチル化の有無を測定することを含む、上記(1)に記載の方法。
(3)HOXA1遺伝子のプロモーターCpGアイランドのDNAメチル化を測定する、上記(1)又は(2)に記載の方法。
(4)PCDH10遺伝子のプロモーターCpGアイランドのDNAメチル化をさらに測定する、上記(3)に記載の方法。
(5)CCND2遺伝子及び/又はBMP3遺伝子のプロモーターCpGアイランドのDNAメチル化を測定することをさらに含む、上記(1)〜(4)のいずれかに記載の方法。
(6)生物学的検体が、血液、血漿、血清、唾液、尿、膵液、糞便、腹水又は膵臓組織である、上記(1)〜(5)のいずれかに記載の方法。
(7)上記遺伝子のプロモーターCpGアイランドのDNAメチル化をパイロシークエンス法、メチル化特異的PCR法、定量的メチル化特異的PCR法、高感度DNAメチル化検出法、又はそれらの組み合わせによって測定する、上記(1)〜(6)のいずれかに記載の方法。
(8)HOXA1、ADAMTS2、PCDH10、SEMA5A、SPSB4及びC13orf18遺伝子からなる群から選択される少なくとも1種の遺伝子のプロモーターCpGアイランドのDNAメチル化の有無を検出するための試薬を含む膵臓がん検査用キット。
(9)CCND2遺伝子及び/又はBMP3遺伝子のプロモーターCpGアイランドのDNAメチル化の有無を検出するための試薬をさらに含む、上記(8)に記載のキット。
(10)試薬が、HOXA1、ADAMTS2、PCDH10、SEMA5A、SPSB4、BMP3、C13orf18及びCCND2遺伝子のプロモーターCpGアイランドのDNAメチル化領域を特異的に増幅するためのプライマーである、上記(8)又は(9)に記載のキット。
(11)試薬が、バイサルファイト試薬及びPCR反応試薬をさらに含む、上記(8)〜(10)のいずれかに記載のキット。
本発明は、低侵襲性(血液、血清若しくは血漿検体使用可能)及び高陽性率(かつ、偽陽性率がかなり低い)で膵臓癌を(他の癌種と区別して)特異的に、かつ、早期膵臓癌(ステージI/II)でさえも、検出(又は検出支援)することを可能にするという優れた作用効果を提供する。
この図は、膵臓癌患者からの膵臓癌組織(A)及び血清(B)検体中のDNAについて、パイロシークエンス法によってHOXA1遺伝子プロモーター領域のCpGアイランドの標的配列(配列番号45)におけるメチル化率(%)を測定した結果を示す。縦軸はシグナル強度であり、横軸は入れる塩基と順番を示す。
本発明をさらに詳細に説明する。
1.膵臓癌の検出方法
本発明は、第1の態様において、被験体の生物学的検体において、HOXA1、ADAMTS2、PCDH10、SEMA5A、SPSB4及びC13orf18遺伝子からなる群から選択される少なくとも1種の遺伝子のプロモーターCpGアイランドのDNAメチル化の有無を測定し、該少なくとも1種の遺伝子のプロモーターCpGアイランドがDNAメチル化されている場合、被験体は膵臓癌を発症していると決定することを含む、該被験体の膵臓癌の発症をインビトロで検出若しくは検出支援する方法を提供する。
本明細書において使用する「膵臓癌」は、膵臓の癌腫を指し、例えば、膵管腺癌、膵内分泌腫瘍、膵管内乳頭粘液性腫瘍、粘液性嚢胞腫瘍などを含む。
本明細書において使用する「被験体」は、ヒトを含む哺乳動物であり、例えば、ヒト、ペット動物、動物園で飼育する動物など、好ましくはヒトである。
本明細書において使用する「生物学的検体」は、被験体において膵臓癌の発症若しくは罹患を検出することができる限り制限はないが、例えば、血液、血漿、血清、唾液、尿、膵液、糞便、腹水又は膵臓組織を挙げることができる。とりわけ、低侵襲性の検査が可能な検体が好ましく、例えば、血液、血漿、血清、唾液、尿、及び糞便が挙げられる。本発明の実施形態によれば、好ましい生物学的検体は、血液、血漿又は血清である。
本明細書において使用する「DNAメチル化」は、学術的に一般的な意味を有し、哺乳動物ゲノム上の上記遺伝子の非翻訳領域、特にプロモーター領域のCpGアイランド(「プロモーターCpGアイランド」とも称する。)配列においてシトシン(C)の5位炭素原子が高メチル化(hypermethylation)されている現象を指す。CpGアイランドは、哺乳動物のゲノム配列において非翻訳領域に存在するシトシン(C)グアニン(G)含量が多い領域であり、CGからなるジヌクレオチドの繰り返し配列をしばしば含む。癌組織でのDNAメチル化異常においても、特定の遺伝子のプロモーター領域が高頻度にメチル化され遺伝子発現が低下している。
本発明の方法で標的となる遺伝子は、HOXA1、ADAMTS2、PCDH10、SEMA5A、SPSB4及びC13orf18の6種の遺伝子、並びに、場合によりCCND2(cyclin D2)遺伝子及び/又はBMP3遺伝子を含む。
膵臓癌でのこれらの遺伝子のCpGアイランドの高メチル化異常は、膵臓癌において該遺伝子のサイレンシング(発現抑制)を起こすと推定される。正常組織の該遺伝子では非メチル化状態である(ただし、老化等に起因してメチル化される場合も知られている。)ことを考慮すると、上記遺伝子のサイレンシングは癌抑制遺伝子の発現低下と関連する可能性も推定される。
上記8種の遺伝子のうちCCND2遺伝子は、例えば上記非特許文献6のなかで膵管腺癌において膵液DNAメチル化が検出された標的のひとつとして記載されている。本発明者らは、CCND2遺伝子について血液DNAメチル化を検討したときには、後述の表2(学習セット)及び表3(検証セット)に示されるように65%以上の検体で非メチル化という結果となった。膵液と血液の検体の違いとメチル化の有無との関係は不明である。
本発明の方法で標的となる遺伝子は、HOXA1、ADAMTS2、PCDH10、SEMA5A、SPSB4、BMP3、C13orf18及びCCND2の8種の遺伝子のうち、特に2種以上の遺伝子のCpGアイランドでDNAメチル化を検出する場合には、検証セットで感度94.7%及び特異度100%となり、非常に高い陽性率(偽陽性率0%)が達成できる(後述実施例の表3参照)。
上記8種の遺伝子のうち、HOXA1遺伝子は、膵臓癌検出のための特に優れたDNAメチル化マーカーであり、この遺伝子をPCDH10遺伝子と組み合わせるとき、膵臓癌において、一方又は両方の遺伝子のCpGアイランドがDNAメチル化される(表3)。それゆえ、上記2種以上の遺伝子として、少なくともHOXA1及びPCDH10遺伝子を含むことが好ましい。
以下に、各遺伝子のプロモーター領域のCpGアイランドを含む周辺配列として、ヒト遺伝子の例を示す。なお、ヒト以外の哺乳動物種の該当する遺伝子の配列については、例えばGenBank(米国NCBI)のデータベース等から入手することができる。
HOXA1は、homeobox A1の遺伝子名であり、そのヒト塩基配列は「NG_011813」の登録番号でGenBank(米国NCBI)に登録されている。ヒトHOXA1遺伝子のプロモーターCpGアイランドを含む周辺配列の例を以下に示す。
[配列番号1](配列中、下線部はプライマーを示し、陰影部はSeqプライマーを示す。また、太字ATGは開始コドンを示す。)
Figure 0006877704
ADAMTS2は、ADAM metallopeptidase with thrombospondin type 1 motif, 2 の遺伝子名であり、そのヒト塩基配列は「NG_023212」の登録番号でGenBank(米国NCBI)に登録されている。ヒトADAMTS2遺伝子のプロモーターCpGアイランドを含む周辺配列の例を以下に示す。
[配列番号2](配列中、下線部はプライマーを示す。また、太字AGCはプローブを示す。)
Figure 0006877704
PCDH10は、protocadherin 10の遺伝子名であり、そのヒト塩基配列は「NM_020815」の登録番号でGenBank(米国NCBI)に登録されている。ヒトPCDH10遺伝子のプロモーターCpGアイランドを含む周辺配列の例を以下に示す。
[配列番号3](配列中、下線部はプライマーを示す。また、太字CAGは転写開始点を示す。)
Figure 0006877704
SEMA5Aは、Sema Domain, Seven Thrombospondin Repeats (Type 1 And Type 1-Like), Transmembrane Domain (TM) And Short Cytoplasmic Domain, (Semaphorin) 5Aの遺伝子名であり、そのヒト塩基配列は「NG_016410.1」の登録番号でGenBank(米国NCBI)に登録されている。ヒトSEMA5A遺伝子のプロモーターCpGアイランドを含む周辺配列の例を以下に示す。
[配列番号4](配列中、下線部はプライマーを示す。また、太字GCTは転写開始点を示す。)
Figure 0006877704
SPSB4は、splA/ryanodine receptor domain and SOCS box containing 4の遺伝子名であり、そのヒト塩基配列は「NC_000003.12」の登録番号でGenBank(米国NCBI)に登録されている。ヒトSPSB4遺伝子のプロモーターCpGアイランドを含む周辺配列の例を以下に示す。
[配列番号5](配列中、下線部はプライマーを示す。また、太字GGCGは転写開始点を示す。)
Figure 0006877704
BMP3は、bone morphogenetic protein 3の遺伝子名であり、そのヒト塩基配列は「NC_000004.12」の登録番号でGenBank(米国NCBI)に登録されている。ヒトBMP3遺伝子のプロモーターCpGアイランドを含む周辺配列の例を以下に示す。
[配列番号6](配列中、下線部はプライマーを示し、陰影部はSeqプライマーを示す。)
Figure 0006877704
C13orf18は、KIAA0226-likeの遺伝子名であり、そのヒト塩基配列は「NC_000013.11」の登録番号でGenBank(米国NCBI)に登録されている。ヒトC13orf18遺伝子のプロモーターCpGアイランドを含む周辺配列の例を以下に示す。
[配列番号7](配列中、下線部はプライマーを示す。)
Figure 0006877704
CCND2は、cyclin D2の遺伝子名であり、そのヒト塩基配列は「NG_034254.1」の登録番号でGenBank(米国NCBI)に登録されている。ヒトCCND2遺伝子のプロモーターCpGアイランドを含む周辺配列の例を以下に示す。
[配列番号8](配列中、下線部はプライマーを示し、陰影部はProbeを示す。)
Figure 0006877704
DNAメチル化の測定は、例えば以下のように行うことができる。
上記の生物学的検体を、体液の場合、例えばフィルター濾過、遠心分離などの分離手段にかけて固形分を除いたのち、或いは、糞便の場合、精製水を加えて、同様に分離手段にかけて固形分を除いたのち、或いは、組織の場合、精製水を加えてホモゲナイズし、同様に分離手段にかけて固形分を除いたのち、上清をフェノール/クロロホルム法などの公知の手法によるか又は市販キットを用いてゲノムDNAを抽出する。
DNAメチル化を解析する方法には、バイサルファイトシークエンス法、メチル化特異的PCR(MSP; Methylation Specific PCR)法、定量的MSP法、COBRA(Combined Bisulfite Restriction Analysis)法、パイロシークエンス法などの方法があり、それぞれ解析範囲、感度、精度、必要な機器が大きく異なる。これらは全てバイサルファイト(bisulfite)処理によってメチル化していないシトシンのみをウラシルに変換するという原理を利用している(牛島俊和ら編、エピジェネティクス実験プロトコール、羊土社(2008年))。
以下にDNAメチル化測定法の例を示す。
(a) パイロシークエンス法
ポリメラーゼ塩基伸長反応によるルシフェラーゼ発光反応を検出することで塩基配列を解読する方法であり、伸長反応の際に生成されるピロリン酸と発光強度が完全に比例関係にあるため高精度な定量解析を行うことができる。この原理により、バイサルファイト処理を行ったDNAのCpGサイトのT%/C%を解読してDNAメチル化比率を決定する(Alliance Biosystems)。
(b) バイサルファイトシークエンス法
DNAをバイサルファイト処理することによってDNA中のメチル化されていないシトシン(非メチル化シトシン)はウラシルに変換される。一方、メチル化シトシンはバイサルファイト処理で変換されない。それゆえ、このような処理によってメチル化シトシンと非メチル化シトシンを区別できるので、PCR増幅したのち、塩基配列を決定するとか、制限酵素処理などの手法によってDNAメチル化を解析することができる(特表2002-535998号公報)。
PCR増幅は、PCRバッファー中、dNTP mixture、プライマー、DNA、耐熱性DNAポリメラーゼの存在下で行う。耐熱性DNAポリメラーゼは、TaKaRa Taq HS(タカラバイオ)などの市販の酵素を使用できる。PCR条件として、例えば95〜98℃、5〜60秒の変性反応、50〜55℃、30〜60秒のアニーリング反応、及び72℃、20秒〜60秒の伸長反応を1サイクルとし、これを30〜40サイクル行うことができる。
(c) メチル化特異的PCR(MSP)法
DNAをバイサルファイト変換し、このDNAを鋳型にして、メチル化DNAを特異的に増幅するプライマーと、非メチル化DNAを特異的に増幅するプライマーを用いて別々にPCRを行い、PCR産物の有無によりDNAメチル化の有無を判定する(特表2002-535998号公報)。
(d) 定量的MSP法
MSP法は、methylation specific PCR技術であり、Na bisulfiteで処理したDNAを、目的遺伝子内部のメチル化領域及び非メチル化領域に特異的な予想配列のプライマーを用いてPCR増幅することを基本としている(上記(c))。
複数の蛍光団(fluorophore)を使用することによってリアルタイム定量MSPを行うことが可能であり、この場合メチル化領域特異的プライマーと非メチル化領域特異的プライマーを使用する(T. Swift-Scanlan et al., BioTechniques 2006, 40: 210-219)。
(e) COBRA法
バイサルファイト処理後にメチル化DNAと非メチル化DNAに共通のプライマーを用いて目的のDNAをPCR増幅後、メチル化DNAと非メチル化DNAで配列が異なる箇所を認識する制限酵素で処理し、断片をエタノール沈殿して濃縮し、電気泳動でメチル化DNAと非メチル化DNAを識別できる。PCR増幅は、バイサルファイトシークエンス法と同様に行うことができる(Z. Xiong and P.W. Laird, Nucleic Acids Res. 25(1): 2532-2534, 1997)。
本発明の方法で使用可能な上記遺伝子のDNAメチル化を測定するためのプライマーセットの例は、以下のとおりである。ここで、Fはフォワードプライマー、Rはリバースプライマーであり、これらのそれぞれの遺伝子のプライマーセットのうち1つもしくは2つ以上のセット〜全セットを用いてPCR増幅を行うことができる。Seqはパイロシークエンスに用いるシークエンスプライマーを示し、また、probeは定量的メチル化特異的PCR法に用いるプローブを示す。
HOXA1のプライマーセットを以下に例示する。
HOXA1-PY-F: TTTTATGGAGGAAGTGAGAAAGT(配列番号9)
HOXA1-PY-RU: GGGACACCGCTGATCGTTTATCCAAAAAAAAATTCATTCTTACA(配列番号10)
HOXA1-PY-Seq: AAGTGAGAAAGTTGGTATAG(配列番号11)
SPSB4のプライマーセットを以下に例示する。
SPSB4-MSP-MF: GGCGTTTGAGCGTTAATTTC(配列番号12)
SPSB4-MSP-MR: CGCAAATACCGACTCTCTCC(配列番号13)
ADMTS2のプライマーセットを以下に例示する。
ADMTS2-MSP-MF: TTTCGGGGTGTTTTTGTTTC(配列番号14)
ADMTS2-MSP-MR: TAACCCGACGCATCTTAACG(配列番号15)
ADMTS2-MSP-probe: CGAGTTCGGTATCGCGGCGAC(配列番号16)
C13orf18のプライマーセットを以下に例示する。
C13orf18-MSP-MF: GGTATTTGGGGTTGGGAAGT(配列番号17)
C13orf18-MSP-MR: TCCTAAAAATCCCGCCCTAC(配列番号18)
C13orf18-MSP-Probe: TTTGAAAGCGTCGTTGCGTTTCGC(配列番号19)
CCND2のプライマーセットを以下に例示する。
CCND2-MSP-MF: TATTTCGGGCGGTTTGTTAG(配列番号20)
CCND2-MSP-MR: CTCTTCGAACGCCGTAAAAC(配列番号21)
CCND2-MSP-Probe: CGGTTTTAGACGTTGTATCGCGTCG(配列番号22)
PCDH10のプライマーセットを以下に例示する。
PCDH10-MSP-MF: TTGGGGATTGGGAATTTTTC(配列番号23)
PCDH10-MSP-MR: ACAACCGAACGAAACGAAAC(配列番号24)
SEMA5Aのプライマーセットを以下に例示する。
SEMA5A-MSP-MF: GGTTTCGTAGTTTTAGGTTAGTCGC(配列番号25)
SEMA5A-MSP-MR: GAAATAAACGACACTAACCGAACCG(配列番号26)
BMP3のプライマーセットを以下に例示する。
BMP3-PY-F: AGTTGTTTTAATTTTTGGAAAAGG(配列番号27)
BMP3-PY-RU: GGGACACCGCTGATCGTTTAAAATCTATCTATACCTTCCCTCCTC(配列番号28)
BMP3-PY-Seq: TAATTTTTGGAAAAGGTAA(配列番号29)
上記のプライマーセットの他に、配列番号1〜配列番号8の塩基配列においてCpG、すなわち5'-CG-3'配列、を複数個含む領域を増幅するためのプライマーセットを適宜選択することができる。プライマーの各塩基配列のヌクレオチド数は、通常、17〜30ヌクレオチド、好ましくは20〜25ヌクレオチドである。さらなるプライマーセットの例は、以下のとおりである。
HOXA1遺伝子について、TTTTATGGAGGAAGTGAGAAAGT(配列番号9;HOXA1-PY-Fと同じ)及びTCCAAAAAAAAATTCATTCTTACA(配列番号30)である。
ADAMTS2遺伝子について、TGTTTTAGAGTATAGAGATAGGGGGAT(配列番号31)及びAACCACCCCAAAAACACAAC(配列番号32)である。
PCDH10遺伝子について、TTTTAAAGGAAAAAGAATGTTAGTATTATT(配列番号33)及びAAAAATTCCCAATCCCCAAC(配列番号34)である。
SEMA5A遺伝子について、GGGGTGGGTTTAGGTTGTTT(配列番号35)及びCTAACCRAACCRCCCCTAC(配列番号36)である。
SPSB4遺伝子について、TGGTTTTTAGGGATGAGTTTAGTTAGA(配列番号37)及びCCCTCCCCTAAAACTAAATACTTTTATAC(配列番号38)である。
BMP3遺伝子について、GGAGAGATTGGTTGAGGATTTTATAG(配列番号39)及びCCTTTTCCAAAAATTAAAACAACTAC(配列番号40)である。
C13orf18遺伝子について、GTGAAGTAGTTAGTAGAGGTTAGAGAGAGA(配列番号41)及びATACCCCCAACAACAATATTTAACA(配列番号42)である。
CCND2遺伝子について、TTTTTTGTATATATTTTGTAGGGGG(配列番号43)及びCATACCCAAAAATAAAAATCATATCC(配列番号44)である。
さらにまた、検体が、血液、唾液、尿などの体液、或いは糞便であるときには、遊離DNAを回収し、DNAメチル化状態を解析する。体液中の癌由来のDNAは微量であるため、高感度DNAメチル化検出法、例えば次世代シークエンサーを用いたバイサルファイトシークエンス法、デジタルPCRを用いたMSP法などを使用することによって、DNAメチル化の検出が可能である。
次世代シークエンサーを用いたバイサルファイトシークエンス法及びデジタルPCRを用いたMSP法の手法について以下に説明する。
(f) 次世代シークエンサーを用いたバイサルファイトシークエンス法
DNAをバイサルファイト変換し、このDNAを鋳型にして、標的遺伝子領域のPCR増幅を行う。得られたサンプルを精製後、ライブラリー作成とサンプルIDがわかるようにIDを付加したのち、次世代シークエンサーでシークエンスを行う。得られたデータをバイサルファイト変換後のリファレンスシークエンスにマッピングし、メチル化Cと非メチル化Cを算出しDNAメチル化率を計算する。
(g) デジタルPCRを用いたMSP法
DNAをバイサルファイト変換し、このDNAを鋳型にして、メチル化DNAを特異的に増幅するプライマー、プローブセットと、非メチル化DNAを特異的に増幅するプライマー、プローブセットを用いてPCRを行う。それぞれのPCR反応で得られる蛍光をデジタルPCR法で検出することでメチル化DNAと非メチル化DNAのコピー数を算出する。デジタルPCRは通常のリアルタイムPCRよりも検出感度が高く、0.01%の感度を持つと報告されている。
2.膵臓癌検査用キット
本発明はさらに第2の態様において、膵臓癌の発症又は罹患を検査するためのキットを提供する。
具体的には、本発明は、HOXA1、ADAMTS2、PCDH10、SEMA5A、SPSB4及びC13orf18遺伝子からなる群から選択される少なくとも1種、好ましくは少なくとも2種の遺伝子のプロモーターCpGアイランドのDNAメチル化の有無を検出するための試薬を含む膵臓癌検査用キットを提供する。
本発明のキットにはさらに、CCND2遺伝子及び/又はBMP3遺伝子のプロモーターCpGアイランドのDNAメチル化の有無を検出するための試薬を含むことができる。
上記のHOXA1、ADAMTS2、PCDH10、SEMA5A、SPSB4、BMP3、C13orf18及びCCND2遺伝子、該遺伝子のプロモーターCpGアイランド、並びにCpGアイランドのメチル化については、上で説明したとおりである。
本発明のキットは、上記遺伝子のそれぞれのDNAメチル化を測定するための上記の方法に使用するための少なくとも1つの、好ましくは複数のプライマーセット、及び、場合により、非メチル化特異的プライマーセットを含み、これに加えてバイサルファイト試薬、PCR反応試薬ならびに使用説明書などを含むことができる。
上記遺伝子のそれぞれのパイロシークエンス法、MSP法、定量MSP法、パイロシークエンス法、COBRA法、高感度DNAメチル化検出法などの方法に使用可能なプライマーは、HOXA1、ADAMTS2、PCDH10、SEMA5A、SPSB4、BMP3、C13orf18及びCCND2遺伝子の配列番号1〜配列番号8の塩基配列によって示されたプロモーターCpGアイランドのDNAメチル化領域を特異的に増幅するためのプライマーである。具体的には、各遺伝子のDNAメチル化領域を特異的に増幅するためのプライマーセット(フォワードプライマーとリバースプライマー)の例は、非限定的に、上記の配列番号9から配列番号29の配列のプライマーのうち、HOXA1遺伝子について配列番号9と配列番号10のプライマーセット、SPSB4遺伝子について配列番号12と配列番号13のプライマーセット、ADMTS2遺伝子について配列番号14と配列番号15のプライマーセット、C13orf18遺伝子について配列番号17と配列番号18のプライマーセット、CCND2遺伝子について配列番号20と配列番号21のプライマーセット、PCDH10遺伝子について配列番号23と配列番号24のプライマーセット、SEMA5A遺伝子について配列番号25と配列番号26のプライマーセット、並びに、BMP3遺伝子について配列番号27と配列番号28のプライマーセットである。
或いは、別のプライマーセットとして、HOXA1遺伝子について配列番号9と配列番号30のプライマーセット、SPSB4遺伝子について配列番号37と配列番号38のプライマーセット、ADMTS2遺伝子について配列番号31と配列番号32のプライマーセット、C13orf18遺伝子について配列番号41と配列番号42のプライマーセット、CCND2遺伝子について配列番号43と配列番号44のプライマーセット、PCDH10遺伝子について配列番号33と配列番号34のプライマーセット、SEMA5A遺伝子について配列番号35と配列番号36のプライマーセットなどである。
これらのプライマーセットの他に、配列番号1〜配列番号8の塩基配列においてCpG、すなわち5'-CG-3'配列、を複数個含む領域を増幅するためのプライマーセットを適宜選択することができる。プライマーの各塩基配列のヌクレオチド数は、通常、17〜30ヌクレオチド、好ましくは20〜25ヌクレオチドである。
本発明のキットには、各遺伝子あたり、少なくとも1つのセット、好ましくは少なくとも2つのセットが含まれる。
バイサルファイト試薬は非メチル化シトシンをウラシルに変換するための試薬であり、この試薬には、重亜硫酸ナトリウム(Na bisulfite)、スカベンジャー(ハイドロキノン等)などを含むことができる。
PCR反応試薬には、dNTP mixture、PCRバッファー、耐熱性ポリメラーゼなどを含むことができる。
上記プライマー及び上記試薬の他に、DNA抽出及び制限消化のための、フェノール/クロロホルム溶液又はフェノール/クロロホルム/イソアミルアルコール溶液、制限酵素などを含むことができる。
使用説明書には、DNAメチル化検査のためのプロトコールなどが記載されうる。
以下に実施例によって本発明をさらに具体的に説明するが、本発明の技術的範囲はこれらの実施例によって制限されないものとする。
<膵臓癌検査用遺伝子マーカーの選択とDNAメチル化>
愛知県がんセンター中央病院消化器内科(名古屋、愛知)において、内視鏡下生検(EUS-FNA)で得られたサンプルでKRAS変異を有するステージIII及びステージVIの症例38例を用いてIllumina Infinium HumanMethylation 450(イルミナ)による網羅的DNAメチル化解析を行った。膵臓癌では90%以上の症例でKRAS変異を有することが報告されているため、KRAS変異陽性(Mt)のサンプルを用いた。
これらの結果と、The Cancer Genome Atlas(TCGA)(NIH、米国)に登録されている各種癌のDNAメチル化プロファイルとを比較解析を行い、膵臓癌症例の12例(約30%)以上でメチル化されており、他の癌種ではメチル化頻度が低い遺伝子を13遺伝子選択した(表1)。
[表1]
膵臓癌のメチル化データとTCGAの各種癌のメチル化データとの比較
(メチル化陽性症例数の%)
Figure 0006877704
これらの遺伝子のメチル化状態をメチル化特異的PCR法(MSP法)、パイロシークエンス法または定量的MSP法で解析した。メチル化検出用プライマーは、各遺伝子について上記の配列番号9〜29の配列を使用した。
学習セット(n=22)の検体を用いるとき、22遺伝子のうち8遺伝子(ADAMTS2、HOXA1、PCDH10、SEMA5A、SPSB4、BMP3、C13orf18、CCND2)を選択し、そのうち2遺伝子以上メチル化がある場合を陽性とすると、感度90.9%、特異度100%であった(表2)。
[表2]
学習セット(n=22)の8遺伝子のDNAメチル化状態
(M:メチル化陽性、UM:メチル化陰性)
Figure 0006877704
検証セット(n=19)において、8遺伝子中2遺伝子以上メチル化がある場合を陽性とすると、感度94.7%、特異度100%であった。また、これら8遺伝子のうちADAMTS2、HOXA1、PCDH10、SEMA5A、SPSB4の5遺伝子に絞った場合、検証セット(n=19)において、2遺伝子以上メチル化がある場合を陽性とすると、感度89.5%、特異度100%、AUC 0.947であった。合計8遺伝子を評価することで感度の増加が認められた。
[表3]
検証セット(n=19)の8遺伝子のDNAメチル化状態
(M:メチル化陽性、UM:メチル化陰性)
Figure 0006877704
さらに、TCGA(The Cancer Genome Atlas)の膵臓癌のDNAメチル化データからの膵臓癌のステージI及びステージIIの症例について、上記8遺伝子中2遺伝子以上でメチル化がある場合を陽性とすると、感度66.7%、特異度98%、AUC0.97となり、本発明の方法はまた、膵臓癌の早期診断にも用いることができると考えられる。
さらにまた、膵臓癌患者由来の血液から遊離DNAを回収し、DNAメチル化状態を解析するための予備実験において、血液中の膵臓癌由来のDNAは微量であるが、高感度DNAメチル化検出法として、デジタルPCRを用いたMSP法、次世代シークエンサーを用いたバイサルファイトシークエンス法によってDNAメチル化の検出が可能であることを確認した。
<膵臓癌組織及び血液検体でのDNAメチル化検出>
膵臓癌患者からの膵臓癌組織(FNA)と血液(血清)を検体としてDNAを回収し、パイロシークエンス法を用いてHOXA1遺伝子のCpGアイランドのDNAメチル化を測定した。標的配列は、配列番号1の塩基配列中のtcaCGcCGggcttCGcaggaccaggtcac(配列番号45)の配列である。大文字の「C」を含む部分についてメチル化を評価する。
配列決定するとメチル化Cの場合はC、非メチル化Cの場合はTと判定されるので、それぞれのシグナル強度を計算しC/C+Tからメチル化レベルを計算した。
測定手順は次のとおりであった。
腫瘍組織からはキアゲンDNeasy Blood & Tissue kitでDNAを回収し、一方、血清DNAは血清からキアゲンCirculating Nucleic Acid kitにてDNAを回収した。DNAをキアゲンEpiTect Plus bisulfite kitを用いてバイサルファイト変換後、HOXA1遺伝子のプロモーター部位でPCRを行い、PCR産物をパイロシークエンスにて解析した。
結果を、図1のA(腫瘍組織検体)とB(血清DNA検体)に示した。バイサルファイト処理後のHOXA1標的部分の配列は、TTA(5mc)GT(5mc)GGGTTT(5mc)GTAGGATTAGGTTAT(配列番号46;ここで、5mcは5-メチル化シトシンを表す。)となり、5mc部位に相当するCが5-メチル化されていた。(ES)A,C,T,G,A,T,C,T,G,T,C,A,G,T,T,C,G,T,A(ここで、ESは試薬を表し、Eはenzyme(酵素)を表し、Sはsubstrate(基質)を表す。)という順番で塩基を入れるとT2個分のピーク、A1個分のピーク、CかTのピーク、G1個分のピーク、T1個分、CかTのピーク、G3個分、T3個分、CかTのピーク、G1個分、T1個分、A1個分のピークというようになり、図のA及びBにおいて、例えば、初めから数えて3塩基目Tのところでピークが出ているのは、T塩基を入れたときにTが結合したことを示し、その次のGでピークが出ていないのは、実際にはTの次はAであり、この部分にGがないはずであるので、ピークが出ないことを示している。図に示すようにCかTのピークのところで、C/C+Tを計算してメチル化率を求めたところ、図に示すように、配列番号45の塩基配列中の大文字C部位のメチル化率は、5'側から図のA及びBに示すとおりであった。
したがって、HOXA1遺伝子マーカーにおいては、腫瘍組織サンプルで高メチル化を示す症例では、血液由来のDNAにおいても、(メチル化陽性を10%以上とするとき)メチル化レベルは低いもののメチル化が検出された。
膵臓癌の診断マーカーとしてCA19-9がよく使用されているが、その他の消化器腫瘍でも検出されることが多く、特異性が低い点が問題となっている。本発明者らは今回、EUS-FNAで得られたサンプルの解析から膵臓癌診断を可能とするDNAメチル化遺伝子セット(8遺伝子)を同定した。これらのマーカーの中には膵臓癌でより特異的にDNAメチル化される遺伝子を含んでいる点が特徴である。これら8遺伝子はEUS-FNAサンプルの検証セットでも高感度で膵臓癌の診断を行うことが可能であった。さらに公共のデータベースであるTCGAのメチル化データの解析から、本発明の方法はまた、早期の膵臓癌の診断にも使用できることを確認した。上記の遺伝子マーカーを用いて、低侵襲性の血液を検体とすることによって、膵臓癌の検出が可能である。

Claims (7)

  1. 被験体の生物学的検体において、HOXA1、PCDH10、SEMA5A、ADAMTS2及びSPSB4遺子のプロモーターCpGアイランドのDNAメチル化の有無を測定し、該HOXA1遺伝子のプロモーターCpGアイランド、及びその他の遺伝子のうち少なくとも1種の遺伝子のプロモーターCpGアイランドがDNAメチル化されている場合、被験体は膵臓癌を発症していると決定することを含む、該被験体の膵臓癌の発症をインビトロで検出若しくは検出支援する方法。
  2. 生物学的検体が、血液、血漿、血清、唾液、尿、膵液、糞便、腹水又は膵臓組織である、請求項1に記載の方法。
  3. 上記遺伝子のプロモーターCpGアイランドのDNAメチル化を、パイロシークエンス法、メチル化特異的PCR法、定量的メチル化特異的PCR法、高感度DNAメチル化検出法、次世代シークエンサーを用いるバイサルファイトシークエンス法、又はそれらの組み合わせによって測定する、請求項1又は2に記載の方法。
  4. HOXA1、PCDH10、SEMA5A、ADAMTS2及びSPSB4遺子のプロモーターCpGアイランドのDNAメチル化の有無を検出するための試薬を含む、膵臓癌検査用キット。
  5. 試薬が、HOXA1、ADAMTS2、PCDH10、SEMA5A及びSPSB4遺伝子のプロモーターCpGアイランドのDNAメチル化領域を特異的に増幅するためのプライマーである、請求項に記載のキット。
  6. 試薬が、バイサルファイト試薬及びPCR反応試薬をさらに含む、請求項4又は5に記載のキット。
  7. 検査が、被験体の血液、血漿又は血清を用いて行われる、請求項のいずれか1項に記載のキット。
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