JP2005195166A - 潤滑剤の供給状態監視センサおよび供給状態監視装置 - Google Patents

潤滑剤の供給状態監視センサおよび供給状態監視装置 Download PDF

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Abstract

【課題】回転機械の軸受け等の潤滑個所に供給される潤滑剤の供給状態を、各潤滑個所近傍において確実に監視することができ、かつ安価である潤滑剤の供給状態監視センサおよび供給状態監視装置を提供すること。
【解決手段】油状または脂状の潤滑剤の供給が必要となる機器に直接、またはこの機器へ潤滑剤を供給する潤滑剤供給配管に設置されて、この機器への潤滑剤の供給を検知することにより潤滑剤の供給状態を監視するセンサ1は、一端が固定され、他端が前記潤滑剤が供給された際に形成される潤滑剤の流れの中に位置するように配置され、潤滑剤の流れによって他端に変位が生じて曲げ変形する検知部材6を備え、検知部材6は、曲げ変形により電圧を発生する圧電素子8を有する。
【選択図】図1

Description

本発明は、回転機械の軸受け等の潤滑個所に供給される潤滑剤の供給状態を監視するためのセンサおよび装置に関する。
工場などに備えられている生産設備には回転機械が多く用いられ、これと共に、回転機械の軸受等に一定時間間隔でグリースなどの潤滑剤を供給するための自動集中潤滑装置が多数使用されている。一方、回転機械の設備異常の主な原因の一つとして潤滑不良が挙げられており、それぞれの設備に潤滑剤が適正に給油脂されていることを監視することの重要性が指摘されている。
自動集中潤滑装置からの潤滑剤の供給状態を監視する方法として、潤滑剤が一定時間間隔で供給されるときに分配弁が動作することを利用し、所定時間内の分配弁の作動回数をカウントして、潤滑剤の供給が適正に行われているかどうかを確認するものが知られている。
しかしながら、この方法では、分配弁以降の経路における潤滑剤の供給状態については知ることができないため、分配弁から軸受け等までの間で発生する給油脂配管の破損、詰り等による潤滑剤の供給不良については監視することができない。
他の方法としては、分配弁から軸受け等の潤滑剤供給機械部品への供給状態を確認する方法で、各潤滑個所直近の給油脂管に取り付けた圧力センサを用いて潤滑剤の供給状態を確認するものである。この圧力センサ方式には、該圧力センサで測定した各給油脂管内の潤滑剤の圧力と予め設定した設定圧力とをコントローラで比較し、その比較結果に応じて潤滑剤の不供給、あるいは圧力センサの異常を判定して警報を発するものが知られている(例えば、特許文献1)。
しかしながら、このような圧力センサを利用する方式では、各潤滑個所直近の各給油脂配管に圧力センサを取り付け、さらに圧力センサに電源を供給する必要がある。したがって、生産工場などでの数千個所に及ぶ監視ポイントをこの圧力センサ方式で構成しようとした場合には、監視装置が大掛かりとなり、設置費用も高価なものとなってしまうという問題がある。
一方、さらに他の方法として、潤滑剤の通流路に接する状態に圧電素子を設け、通流路内の脈動圧力を圧電素子に作用させ、その圧電効果により得られる電荷を電圧に変換して潤滑剤の供給状況を検出するものが知られている(例えば、特許文献2)。
しかしながら、このような通流路に接する状態の圧電素子に潤滑剤の脈動圧力を作用させる方法では、十分に大きな信号を得ることが困難であり、潤滑剤の供給状態を把握するための実用上十分な出力が得難く、確実性に欠けるという問題がある。
特開2001−164916号公報 特開平1−197623号公報
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたものであって、回転機械の軸受け等の潤滑個所に供給される潤滑剤の給油脂状態を、各潤滑個所近傍において確実に監視することができ、かつ安価である潤滑剤の供給状態監視センサおよび供給状態監視装置を提供することを目的とする。
上記課題を解決するため、本発明は、油状または脂状の潤滑剤の供給が必要となる機器に直接、またはこの機器へ潤滑剤を供給する潤滑剤供給配管に設置されて、この機器への潤滑剤の供給を検知することにより潤滑剤の供給状態を監視するセンサであって、一端が固定され、他端が前記潤滑剤が供給された際に形成される潤滑剤の流れの中に位置するように配置され、前記潤滑剤の流れによって前記他端に変位が生じて曲げ変形する検知部材を備え、前記検知部材は、曲げ変形により電圧を発生する圧電素子を有することを特徴とする潤滑剤の供給状態監視センサを提供する。
また、本発明は、油状または脂状の潤滑剤の供給が必要となる機器に直接、またはこの機器へ潤滑剤を供給する潤滑剤供給配管に設置されて、この機器への潤滑剤の供給を検知することにより潤滑剤の供給状態を監視するセンサと、前記センサから出力される検知信号に基づいて前記機器への潤滑剤供給回数をカウントするカウント装置とを備え、前記センサは、一端が固定され、他端が前記潤滑剤が供給された際に形成される潤滑剤の流れの中に位置するように配置され、前記潤滑剤の流れによって前記他端に変位が生じて曲げ変形する検知部材を有し、前記検知部材は、曲げ変形により電圧を発生する圧電素子を有し、前記カウント装置は、前記圧電素子から電圧として出力される検知信号の電圧パルスに基づいて潤滑剤供給回数をカウントすることを特徴とする潤滑剤の供給状態監視装置を提供する。
本発明においては、油状または脂状の潤滑剤の供給が必要となる機器に直接、またはこの機器へ潤滑剤を供給する潤滑剤供給配管に圧電素子を用いたセンサを設置するので、駆動電源が不要であり、安価に潤滑剤の供給状態を監視することができる。また、圧電素子を有する検知部材の一端を固定し、他端を潤滑剤が供給された際に形成される潤滑剤の流れの中に位置するように配置し、前記潤滑剤の流れによって前記他端に変位が生じて曲げ変形するようにし、曲げ変形により圧電素子に電圧を発生させるので、潤滑剤の脈動圧力を検知する場合よりも出力を大きくすることができ、潤滑剤の給油脂状態を、各潤滑個所近傍において確実に監視することができる。
本発明において、前記検知部材は、前記圧電素子を被覆する可撓性材料からなる被覆材をさらに有する構造とすることができる。このような被覆材を設けることにより圧電素子が保護されて破損し難くなるとともに、圧電素子が破損した場合であっても破損片が潤滑剤中に混入することによる設備異常を防止することができる。また、可撓性を有していることから圧電素子の変形に追従して変形することが可能である。
また、前記被覆材は、熱収縮性および弾力性を有する有機材料で構成され、前記圧電素子に被覆された後、加熱により収縮させてなるものとすることができる。このように熱収縮性を有する被覆材を圧電素子に被覆させた後、加熱により収縮させることにより、被覆材が前記圧電素子に密着されるので、被覆材の存在による感度低下が生じ難く、また被覆材の弾力性により高い保護効果を確保することができる。つまり、検出感度を低下させることなく高い保護効果を確保することができる。このような被覆材としては、熱収縮性を有する合成ゴムを好適に用いることができる。
さらに、前記圧電素子は、厚さが0.25mm以上であることが好ましい。これにより、取り扱い性や加工性を低下させることなく、良好な感度を得ることができる。
さらまた、前記センサは、前記潤滑剤供給配管に接続される潤滑剤通流部と、該潤滑剤通流部の中間部から垂直に伸び、前記検知部材が挿入される検知部材挿入部とを有するT型部材をさらに備え、前記検知部材の前記一端は前記検知部材挿入部の上部に固定され、前記他端は前記潤滑剤通流部内に非拘束状態で位置する構造とすることができる。
本発明によれば、回転機械の軸受け等の潤滑個所に供給される潤滑剤の給油脂状態を、各潤滑個所近傍において確実に監視することができ、かつ安価に構成することができる。
図1は、本発明の一実施の形態に係る潤滑剤の供給状態監視センサの構成を示す断面図である。
潤滑剤の供給状態監視センサ1は、油状または脂状の潤滑剤、例えばグリースを回転機械の軸受け等の潤滑個所に供給する潤滑剤供給配管に接続するT型管継手2の継手部2bにニップル3を接続するとともに、そのニップル3の反対側に、プラグ4を挿入したソケット5を接続し、さらにピエゾ素子(圧電素子)8を有する板状の検知部材6をプラグ4に設けた開孔からT型管継手2に挿入した構造を有している。なお、プラグ4とソケット5とはねじ止めされ、また、ニップル3とソケット5および継手部2bとの間もねじ止めされている。
T型管継手2の主管部2aは、図示しない潤滑剤供給配管に接続され、潤滑剤通流部として機能する。また、上記継手部2bは、主管部2aの中央から垂直に伸び、この継手部2b、ニップル3、プラグ4、およびソケット5により、検知部材6が挿入される検知部材挿入部15が構成される。なお、T型管継手2以外にも、Y型管継手やクロスにプラグを取り付けた継手を用いるものであってもよいが、構成のしやすさからT型管継手2を用いることが望ましい。
なお、ニップル3とソケット5は、検知部材6の長さに対応して検知部材挿入部15の長さを調整するために設けたもので、必ずしも必要とされるものではないが、後に説明するように、センサの感度を良くするためには検知部材6はある程度の長さが必要となるため、設けることが望ましい。
検知部材6の上端は、プラグ4の上部部分を樹脂7で固めることにより固定され、これによりT型管継手2からの潤滑剤の漏れを防止している。また、検知部材6の下端は、潤滑剤通流部として機能する主管部2a内に非拘束状態で位置する。したがって、潤滑剤が供給されて主管部2aを通流すると、潤滑剤の流れによって検知部材6の下端に変位が生じて曲げ変形し、ピエゾ素子8はこの曲げ変形により電荷を誘起し、電圧を発生する。
検知部材6は、図2の縦断面図に示すように、長尺状をなす角板形のピエゾ素子8の全体を可撓性を有する被覆材10で覆った構成を有している。
そして、ピエゾ素子8の両面にはそれぞれ端部電極が設けられており、この端部電極には、ピエゾ素子8で発生した電圧を取り出すためのリード線11がハンダ付けなどで接続されている。すなわち、ピエゾ素子8に潤滑剤の流れにともなう曲げ応力が作用して歪が生じた場合、リード線の両端には電圧が発生する。
ピエゾ素子8としては、屈曲型のもの、すなわち上述のように曲げ変形することにより電圧を発生させ得るものが用いられ、1枚のピエゾ素子で構成されるモノモルフ型でも、ピエゾ素子を2枚貼り合わせてなるバイモルフ型であってもよい。バイモルフ型のピエゾ素子は、力Fによって屈曲されると一方の素子が伸び他方の素子が縮むことによって両方の素子が共に電荷を発生し、出力をより大きくすることができる。さらにピエゾ素子8としては、板状のピエゾ素子を3枚以上貼合わせて構成するものであってもよい。ピエゾ素子8を構成する材料としては、圧電性を示す材料であればよいが、圧電セラミックスや高分子圧電フィルムが好適である。これらの中では、出力電圧が大きい圧電セラミックスが好ましい。また、ピエゾ素子8の形状は、潤滑剤の流れによる曲げを受けるようにある程度の長さがあれば、棒状でも、管を半割にした樋形等どのような形状でもよいが、取り扱い易さや製造コストを勘案すると長尺状の直方体形状が望ましい。
ピエゾ素子8の厚さは、0.25mm以上であることが好ましい。理論的には、ピエゾ素子8が薄いほど最大出力が大きくなるが、厚さと最大出力との関係を求めた結果、図3に示すように、0.25mmより薄くなっても出力が飽和し、かえって薄くなることにともなう取り扱い性や加工性の低下による悪影響のほうが大きくなる。このため、ピエゾ素子8の厚さの好ましい範囲を0.25mm以上とした。なお、図3は、ピエゾ素子の長さを60mmとして厚さを変化させ、一端をテーブルに固定し、他端を手で動かした場合の折損前の最大出力を示す。
ピエゾ素子8の長さは、長いほど出力が上昇するが、図4に示すように、長さが40mm以上であれば急激に出力が増加するので40mm以上であることが好ましい。長さの上限は出力の点からは存在しないが、事実上ピエゾ素子8の設置部分の大きさによって制限される。なお、図4は、ピエゾ素子8の厚さを0.3mmとして長さを変化させ、同様に一端をテーブルに固定し、他端を手で動かした場合の折損前の最大出力を示す。
被覆材10は、ピエゾ素子8を保護するとともに、もしピエゾ素子8が破損した場合であっても、潤滑剤中に破損片が混入して設備異常を発生させることを防止するためのものである。この被覆材10は、特に、ピエゾ素子8が脆いセラミックスで形成されている場合に有効である。被覆材10の材料としては、可撓性を有するものを挙げることができる。これにより圧電素子の変形に追従して変形することが可能である。
また、被覆材10は、熱収縮性および弾力性を有する有機材料で構成され、ピエゾ素子8に被覆された後、加熱により収縮させてなるものが好ましい。このように熱収縮性を有する被覆材10をピエゾ素子8に被覆させた後、加熱により収縮させることにより、被覆材10がピエゾ素子8に密着されるので、被覆材10の存在による感度低下が生じ難く、また被覆材10の弾力性により高い保護効果を確保することができる。つまり、被覆材10としてこのような材料を用いることにより、検出感度を低下させることなく高い保護効果を確保することができる。具体的材料としては、熱収縮性を有する合成ゴムを好適に用いることができる。このような熱収縮性を有する合成ゴムとして、フィルム状のものが商品名「スミチューブ」(住友電工ファインポリマー株式会社製)として市販されている。このような熱収縮性を有する合成ゴムは絶縁性が高く、ピエゾ素子8から取り出した信号のノイズが小さい。被覆材10は接着剤によりピエゾ素子8に接着されていることが好ましい。熱収縮性を有する被覆材10をさらに接着剤を用いてピエゾ素子8に接着させることにより、ピエゾ素子8と被覆材との間の密着性を一層高めてピエゾ素子8の感度をより上昇させることができる。
被覆材10の効果を確認した実験について説明する。被覆材としては、一般的なシリコーンワニススプレー、および上記スミチューブを用いた。比較のため被覆材を用いないものについても実験を行った。ピエゾ素子としては、厚さ0.3mm、長さ60mmのものを用いた。シリコーンワニススプレーの被覆材は、5回吹き付けることにより形成し、厚さ0.1〜0.23mm程度となった。また、スミチューブの被覆材は厚さが0.35mm程度であった。このような被覆材ありまたはなしのピエゾ素子について上記実験と同様、一端をテーブルに固定し、他端を手で動かした場合の出力を測定した。その結果を図5に示す。
図5に示すように、折損前の最大出力は、被覆材のないものが1.0V、被覆材としてシリコーンワニススプレーを用いたものが1.5V、被覆材としてスミチューブを用いたものが3.0Vとなり、被覆材の保護効果が確認された。特に、スミチューブを用いたものが感度を落とすことなく高い保護効果が得られることが確認された。これに対し、シリコーンワニススプレーの被覆材は、厚さが0.1〜0.23mmの範囲でばらつき、また硬化までに約2時間と長時間を要するため、多少の保護効果は認められるものの実用的ではない。
被覆材10は、ピエゾ素子8の材質、使用条件などにより、多層構造にしてもよい。また、被覆材10は必須ではなく、ピエゾ素子8が十分な強度や靱性を有していれば、ピエゾ素子8単独で検知部材6を構成してもよい。ただし、被覆材10は、ピエゾ素子8に対する防湿、電気的絶縁を強化する働きも有しているので設けることが好ましい。また、ピエゾ素子8の強度が低い場合には、ピエゾ素子8の周囲に補強材を設けてもよい。ただし、この場合は補強材により感度が低下するおそれがあるため、補強材の材質および厚さ等に注意を要する。
図6は、上述した潤滑剤の供給状態監視センサ1を潤滑剤供給回路に組込んだ構成例を示す図である。
潤滑剤の供給状態監視センサ1は、一定間隔で潤滑剤を供給する自動集中潤滑装置で構成される潤滑剤供給回路の一部に組み込まれている。具体的には、分配弁12から分岐される潤滑剤供給配管13の途中に設置するが、潤滑個所への潤滑剤の供給を監視できるためには、潤滑個所である軸受け14の直近あるいは軸受け14自体に取り付けることが望ましい。
以上のように構成された潤滑剤の供給状態監視センサ1においては、潤滑剤供給配管13を介して潤滑個所に潤滑剤が供給される際に、T型継手2の主管部2aに、図1に示す矢印の方向の潤滑剤の流れが発生する。そうすると、検知部材6は、樹脂7により固定された部分を支点として流れの下流方向に曲げられる。この結果、ピエゾ素子8の表裏面にそれぞれ逆の電荷が発生してリード線11の両端に電圧が発生する。したがって、この電圧を検出することにより、潤滑剤の供給状態を把握することができる。
この際の出力波形を図7に示す。図7の縦軸はリード線11に発生する電圧を示し、横軸は経過時間を示している。図7に示すように、間欠的な潤滑剤の圧送流が検知部材6に作用して曲げが生じると、パルス状の電圧17が発生する。そして、潤滑剤の流れが停止すると検出部6はピエゾ素子8と補強板9の弾性力により元の状態に復元する。このとき、加えられていた曲げ歪が減少する結果、逆の極性をもつパルス状の電圧18が発生する。
このように、間欠的な潤滑剤の流れによって正負の対になった電圧パルスが発生し、図7に示すように、ノイズの少ない波形が得られる。したがって、検知部材6の長さが長ければ長いほど、曲げ歪が大きくなるためより大きな発生電圧が得られる。
本実施の形態の潤滑剤の供給状態監視センサ1においては、ピエゾ素子8を用いた以上のような原理に基づいて設計しているため、発生する電圧も大きく信号処理する際にも特別な増幅処理、ノイズ除去処理を必要としないレベルである。また、ピエゾ素子8を用いているため、電源を用いることなく潤滑剤の供給状態を把握することができる。したがって、潤滑剤の供給状態監視センサを小型かつ安価なものとすることができる。
また、この原理によれば流れる潤滑剤の量が多くなれば検出部6の曲げ歪は大きくなるため、発生する電圧17のピークも大きくなることがわかる。したがって、電圧17が一定以上の大きさであれば十分な量の潤滑剤が供給され、逆に、電圧17が一定以下であれば供給される潤滑剤の量は不十分であると判定することができる。
さらに、このようにピエゾ素子8を有する検知部材6の上端を固定し、下端を潤滑剤が供給された際に形成される潤滑剤の流れの中に位置するように配置し、潤滑剤の流れによって下端に変位が生じて曲げ変形するようにし、曲げ変形によりピエゾ素子8に電圧を発生させるので、上記特許文献2のような潤滑剤の脈動圧力を検知する場合よりも本質的に大きな出力を得ることができ、潤滑剤の給油脂状態を、各潤滑個所近傍において確実に監視することができる。
さらにまた、ピエゾ素子8に可撓性材料からなる被覆材10を設けることにより、圧電素子が保護されて破損し難くなるとともに、圧電素子が破損した場合であって破損片が潤滑剤中に混入することによる設備異常を防止することができる。特に、被覆材10として、熱収縮性および弾力性を有する有機材料、典型的には熱収縮性を有する合成ゴムを用いることにより、加熱によりピエゾ素子8に密着され、かつ保護効果が大きいので、検出感度を低下させることなく高い保護効果を確保することができる。
次に、本発明の効果を確認した実験について説明する。
図8の(a)に示すような潤滑剤としてのグリス供給装置を準備し、上述した図1に示すような構造の実施例の潤滑剤の供給状態監視センサと、図8の(b)に示すような構造の比較例の潤滑剤の供給状態監視センサを図示のように取り付けた。すなわち、実施例の供給状態監視センサは、検知部材を片持ち状態でT型管継手(1/4B)内に鉛直に取り付けたものであり、比較例の供給状態監視センサは、上記特許文献2(特開平1−197623号公報)のセンサを模擬して、検知部材をT型管継手(1/4B)内に両持ち状態で水平に取り付けたものである。検知部材を構成するピエゾ素子としては5mm×60mm×0.5mmのチタン酸ジルコン酸鉛系セラミックスを用い、その上に熱収縮性フィルム(商品名スミチューブ)を被覆して検知部材とした。
潤滑剤であるグリースの供給は、ファーバルポンプを用いて間欠的に行った。その際の電圧検出状態を図9に示す。この図に示すように、比較例の場合にはグリースの供給によって高々数mVのパルスが得られたに過ぎないのに対し、実施例の場合には20mVを超えるパルスが得られた。このことから、本発明の構成により、潤滑剤の給油脂状態をより確実に監視可能なことが確認された。
次に、以上説明した潤滑剤の供給状態監視センサ1を用いて潤滑剤の供給状態を監視するための監視装置の構成について説明する。
図10は、潤滑剤の供給状態監視装置の第1の実施の形態を示す構成図である。
第1の実施の形態の潤滑剤の供給状態監視装置は、潤滑剤の供給状態監視センサ1にカウンタ装置25を設けたもので、潤滑剤の供給状態監視センサ1のリード線11とカウンタ装置25の入力端子を接続して構成したものである。
潤滑剤の流れが発生する度に、その流れを検知部材6で検知し、潤滑剤が供給された回数をカウンタ装置25によってカウントして表示する。そこで、カウンタ装置25の初期カウント数を記録しておき、ある一定時間経過した後に、該カウンタ装置25に表示されたカウント数を確認して、差し引き演算をすることにより、その一定時間内に供給される潤滑剤の供給回数を算定することができる。ここで、カウントされない場合は、潤滑剤が供給されていないかあるいは供給量が少ない場合である。したがって、この算定回数を、一定時間内に供給されるべき潤滑剤の供給回数と比較することにより、潤滑剤が正常に供給されているか否かを判定することができる。
この場合に、検知部材6としてピエゾ素子8を使用しているので、上述したように検知部材6に給電するための電源は不要であり、カウンタ装置25にのみ電源を供給すればよいので、カウンタ装置25に小型電池等を使用することにより、装置全体として小型でかつ安価な装置とすることができる。
図11は、潤滑剤の供給状態監視装置の第2の実施の形態を示す構成図である。本実施の形態の装置は、潤滑剤の供給状態監視センサ1にカウンタ装置25とタイマー装置26および警報装置27を設けたものである。
カウンタ装置25によりカウントされた潤滑剤の供給回数とタイマー装置26の時間情報により、図示していない演算装置で、所定時間内に潤滑剤が供給されたか否かを判定し、所定時間内に潤滑剤が供給されていない場合あるいは供給量が少ない場合は、警報装置27により警報する。
本実施の形態においては、比較的小型の装置で潤滑剤の供給不良を監視し警報することができる。したがって、カウンタ装置25、タイマー装置26および警報装置27を一体として構成してもよく、それぞれを分離して信号線で接続するように構成してもよい。
また、警報装置27は、光、音などによって警報を発してもよく、電子的にデスプレイ表示するのみでなく機械的に切り替えて警報を表示するものであってもよい。
図12は、潤滑剤の供給状態監視装置の第3の実施の形態を示す構成図である。本実施の形態の装置は、潤滑剤の供給状態監視センサ1、カウンタ装置25、警報装置27および分配弁変位センサ28を設けたものである。
分配弁変位センサ28は分配弁12の作動を検出し、分配弁12が作動したタイミングを潤滑剤の給油脂タイミングとして取り込む。そして、分配弁12が作動してから所定時間内にカウンタ装置25のカウントが増加しない場合は、潤滑剤の給油脂不良と判定して警報装置27により警報する。
本実施の形態の装置は、第2の実施の形態の装置のタイマー装置26に替えて分配弁変位センサ28を設け、分配弁の変位を検出して分配弁12の作動時に潤滑剤の給油脂状態を監視するものである。したがって、タイマー装置26を用いるよりも早く異常を検出することができる。
図13は、潤滑剤の供給状態監視装置の第4の実施の形態を示す構成図である。本実施の形態の装置は、潤滑剤の供給状態監視センサ1、カウンタ装置25、警報装置27および給油脂ポンプ起動信号29で構成される。
給油脂ポンプ起動信号29がONしてから所定時間内にカウンタ装置25のカウントが増加しない場合は、潤滑剤の給油脂不良と判定して警報装置27により警報する。
本実施の形態の装置は、第2の実施の形態の装置のタイマー装置26に替えて給油脂ポンプ起動信号29を設け、給油脂ポンプ起動信号29のONを検出して潤滑剤の給油脂状態を監視するものである。したがって、タイマー装置26を用いるよりも早く異常を検出することができる。
図14は、潤滑剤の供給状態監視装置の第5の実施の形態を示す構成図である。本実施の形態の装置は、第1または第2の実施の形態の装置に無線装置30とデータ収集装置31を設けたものである。
本実施形態の装置では、安全上の問題などで、設備の稼動中に容易に近づくことができない設備に対しても潤滑剤の給油脂状態に関するデータを収集して監視することができる。この場合の収集されるデータは、カウンタ値であってもよく、潤滑剤の供給状態の判定結果であってもよい。
図15は、潤滑剤の供給状態監視装置の第6の実施の形態を示す構成図である。本実施形態の装置は、オンラインモニタリングシステムとして構成される。潤滑剤の供給状態監視センサ1は、リード線11を介してカウンタ装置25およびデータ収集監視装置35と接続され、さらに図示していないケーブル、無線、電話回線、LAN等を利用してパソコン36に潤滑剤の給油脂状態に関するデータを伝送する。
この構成により、特に重要な設備に関しては、潤滑剤の供給状態を遠隔で常時集中監視することができる。なお、オンラインモニタリングは図15に示す形態に限定されず、上記第1〜第5の実施の形態と組み合わせて、データ収集監視装置35とパソコン36を備えた構成とすることができ、それぞれの実施の形態で発生するデータをデータ収集監視装置35を用いてモニタリングすることも可能である。さらに、潤滑剤の供給状態監視センサ1の出力信号を直接データ収集監視装置35に接続することも可能である。
以上のような各実施の形態に係る潤滑剤の供給状態監視装置は、供給される潤滑剤の状態を、潤滑個所あるいは潤滑剤供給配管に設置した潤滑剤の供給状態監視センサ1を用いて、ある一定以上の潤滑剤が供給されたか否かを監視するものである。このような潤滑剤の供給状態監視センサ1に、上記各実施形態のように、必要に応じた各部品、装置を組み合わせて監視装置を構成することにより、種々の機能が付加され、種々の適用において、潤滑剤の供給状態を監視するに必要かつ十分な装置構成とすることができる。したがって、潤滑個所あるいは潤滑個所直近の潤滑剤供給状態を監視することができ、潤滑剤供給不良による初期異常を未然に防止することができる。
なお、本発明は上記実施の形態に限定されることなく、種々変形可能である。例えば、上記実施の形態では、潤滑剤としてグリースを例示したが、潤滑オイル等、油状および脂状の種々の潤滑剤を用いることができる。また、上記実施の形態では、本発明の装置を自動集中潤滑装置に適用した例について示したが、手動の潤滑装置にも適用することができる。
以上説明したように本発明によれば、潤滑個所に供給される潤滑剤の給油脂状態を、各潤滑個所近傍において確実に監視することができ、かつ安価に構成することができるので、回転機械の軸受け等、潤滑剤が必要な種々の個所に適用可能である。
本発明の一実施形態に係る潤滑剤の供給状態監視センサの構成を示す断面図。 図1の潤滑剤の供給状態監視センサの検知部材の構成を示す断面図。 ピエゾ素子の厚さと最大出力との関係を示す図。 ピエゾ素子の長さと最大出力との関係を示す図。 被覆材のない検知部材、被覆材としてシリコーンワニススプレーを用いた検知部材、被覆材としてスミチューブを用いた場合のものについて破損前最大出力を示す図。 潤滑剤の供給状態監視センサを潤滑剤供給回路に組込んだ構成例を示す図。 本発明の一実施形態に係る潤滑剤の供給状態監視センサの出力波形を示す図。 本発明の効果を確認するための実験に用いた装置を示す模式図。 実施例および比較例の潤滑剤の供給状態監視センサの出力波形を示す図。 第1の実施の形態に係る潤滑剤の供給状態監視装置を示す構成図。 第2の実施の形態に係る潤滑剤の供給状態監視装置を示す構成図。 第3の実施の形態に係る潤滑剤の供給状態監視装置を示す構成図。 第4の実施の形態に係る潤滑剤の供給状態監視装置を示す構成図。 第5の実施の形態に係る潤滑剤の供給状態監視装置を示す構成図。 第6の実施の形態に係る潤滑剤の供給状態監視装置を示す構成図。
符号の説明
1…潤滑剤の供給状態監視センサ
2…T型管継手
2a…主管部(潤滑剤通流部)
6…検知部材
8…ピエゾ素子
10…被覆材
11…リード線
12…分配弁
13…給油脂配管
14…軸受け
15…検知部材挿入部
25…カウンタ装置
26…タイマー装置
27…警報装置
28…分配弁変位センサ
29…給油脂ポンプ起動信号
30…無線装置
31…データ収集装置
35…データ収集監視装置
36…パソコン

Claims (7)

  1. 油状または脂状の潤滑剤の供給が必要となる機器に直接、またはこの機器へ潤滑剤を供給する潤滑剤供給配管に設置されて、この機器への潤滑剤の供給を検知することにより潤滑剤の供給状態を監視するセンサであって、
    一端が固定され、他端が前記潤滑剤が供給された際に形成される潤滑剤の流れの中に位置するように配置され、前記潤滑剤の流れによって前記他端に変位が生じて曲げ変形する検知部材を備え、
    前記検知部材は、曲げ変形により電圧を発生する圧電素子を有することを特徴とする潤滑剤の供給状態監視センサ。
  2. 前記検知部材は、前記圧電素子を被覆する可撓性材料からなる被覆材をさらに有することを特徴とする請求項1に記載の潤滑剤の供給状態監視センサ。
  3. 前記被覆材は、熱収縮性および弾力性を有する有機材料で構成され、前記圧電素子に被覆された後、加熱により収縮されてなるものであることを特徴とする請求項2に記載の潤滑剤の供給状態監視センサ。
  4. 前記被覆材は、熱収縮性を有する合成ゴムで形成されていることを特徴とする請求項3に記載の潤滑剤の供給状態監視センサ。
  5. 前記圧電素子の厚さが0.25mm以上であることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の潤滑剤の供給状態監視センサ。
  6. 前記潤滑剤供給配管に接続される潤滑剤通流部と、該潤滑剤通流部の中間部から垂直に伸び、前記検知部材が挿入される検知部材挿入部とを有するT型部材をさらに備え、前記検知部材の前記一端は前記検知部材挿入部の上部に固定され、前記他端は前記潤滑剤通流部内に非拘束状態で位置することを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の潤滑剤の供給状態監視センサ。
  7. 油状または脂状の潤滑剤の供給が必要となる機器に直接、またはこの機器へ潤滑剤を供給する潤滑剤供給配管に設置されて、この機器への潤滑剤の供給を検知することにより潤滑剤の供給状態を監視するセンサと、
    前記センサから出力される検知信号に基づいて前記機器への潤滑剤供給回数をカウントするカウント装置と
    を備え、
    前記センサは、一端が固定され、他端が前記潤滑剤が供給された際に形成される潤滑剤の流れの中に位置するように配置され、前記潤滑剤の流れによって前記他端に変位が生じて曲げ変形する検知部材を有し、前記検知部材は、曲げ変形により電圧を発生する圧電素子を有し、
    前記カウント装置は、前記圧電素子から電圧として出力される検知信号の電圧パルスに基づいて潤滑剤供給回数をカウントすることを特徴とする潤滑剤の供給状態監視装置。
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