以下、本発明を図示の実施の形態により詳細に説明する。
図1は、本発明の実施形態の油圧ユニットを示す概略図である。この油圧ユニットは、工作機械としてのNC(数値制御)旋盤に用いている。図2は、上記油圧ユニットの外観を示す斜視図である。上記NC旋盤は、心押台クランプおよび刃物台クランプ等のように、ワークおよび工具を固定する複数の装置を有し、これらの装置を、上記油圧ユニットのアクチュエータで作動させる。本発明の油圧ユニットは、上記心押台クランプおよび刃物台クランプ等のように、締め付け動作を行う装置を作動させるものである。上記心押台クランプは、アクチュエータとしての第1油圧シリンダ106で作動し、上記刃物台クランプは、アクチュエータとしての第2油圧シリンダ206で作動する。以下、心押台クランプを第1軸といい、刃物台クランプを第2軸という。また、上記NC旋盤を主機という。
この油圧ユニットは、例えばギアポンプ、トロコイドポンプ、ベーンポンプ、ピストンポンプ等の固定容量型の油圧ポンプ1を、例えばスイッチリラクタンスモータ、埋め込み磁石型モータ(IPM)等の可変速モータ2で駆動する。この可変速モータ2への供給電力を、コントローラ10で制御して、この可変速モータ2の回転数を制御している。上記油圧ポンプ1の吐出流量に相当する可変速モータ2の回転速度を、エンコーダ11により検出し、このエンコーダ11が検出した回転数をコントローラ10が受け取るようになっている。また、上記油圧ポンプ1の吐出流体の圧力を、吐出ライン3に設けた圧力センサ9で検出している。
上記コントローラ10は、CPUと、このCPUによりスイッチング速度が制御されるインバータを有する。上記コントローラ10は、上記エンコーダ11および圧力センサ9からの信号に基づいて、上記可変速モータ2に供給する電力の周波数等を制御する。これにより、上記可変速モータ2の回転速度を制御して、上記油圧ポンプ1が吐出する流体の流量および圧力を制御するようになっている。
上記油圧ポンプの吐出ライン3は、図1に示すように、並列に配置された第1および第2切換弁104,204に接続されている。
上記第1切換弁104は、弁体を2つのソレノイド1A,1Bによって軸方向に往復駆動して、3位置に切り換える方向切換弁である。具体的には、第1のソレノイド1Aの励磁により、弁体が、吐出ライン3と第1油圧シリンダ106のヘッド側室とを連通すると共に、戻りラインと第1油圧シリンダ106のロッド側室とを連通する弁体位置となる。これにより、上記第1油圧シリンダ106を伸長して、第1軸の送り動作を行う。一方、第2のソレノイド1Bの励磁により、弁体が、吐出ライン3と油圧シリンダ106のロッド側室とを連通すると共に、戻りラインと油圧シリンダ106のヘッド側室とを連通する弁体位置となる。これにより、上記第1油圧シリンダ106を収縮して、第1軸の戻り動作を行う。また、いずれのソレノイド1A,1Bも励磁しない場合、第1油圧シリンダ106と各ラインとを遮断する弁体位置となり、上記第1油圧シリンダ106内の流体の保圧を行う。
上記第1切換弁104と第1油圧シリンダ106との間を接続する2つの給排油管には、漏れ防止手段としてのチェック弁111,112を各々介設している。上記2つの給排油管に、第1油圧シリンダ106のヘッド側室の圧力を検出する圧力センサ109と、第1油圧シリンダ106のロッド側室の圧力を検出する圧力センサ110とを夫々設けている。また、上記切換弁104に、上記第1油圧シリンダ106からの流体をタンク107に戻す戻りラインを接続している。
上記第1切換弁104は、上記圧力センサ109,110で検出される上記第1油圧シリンダ106のヘッド側とロッド側との両方の流体圧力に基づいて、上記コントローラ10によって、弁体の切り換えが制御される。
上記第2切換弁204もまた、第1切換弁104と同様の3位置方向切換弁からなり、2つのソレノイド2A,2Bによって駆動される弁体の位置に応じて、上記第2軸を駆動する第2油圧シリンダ206の伸長、流体の保圧および第2油圧シリンダ206の収縮を行う。
上記第2切換弁204と第2油圧シリンダ206との間を接続する2つの給排油管に、漏れ防止手段としてのチェック弁211,212を各々介設している。上記2つの給排油管のうちの一方に、第2油圧シリンダ206のヘッド側室の圧力を検出する圧力センサ209を設けている。また、上記切換弁204に、上記シリンダ206からの流体をタンク207に戻す戻りラインを接続している。
上記第2切換弁204は、上記圧力センサ209で検出される上記第2油圧シリンダ206のヘッド側の流体圧力と、このヘッド側の流体圧力から推定されるロッド側の流体圧力とに基づいて、上記コントローラ10によって、弁体の切り換えが制御される。すなわち、上記第2油圧シリンダ206は、ロッド側とヘッド側のいずれの駆動方向においても摺動抵抗が略同じであるので、この第2油圧シリンダ206のピストンのロッド側の受圧面積とヘッド側の受圧面積との比を用いて、ピストンをロッド側に駆動する際の上記圧力センサ209の検出値に基づいて、上記ピストンをヘッド側に駆動する際のロッド側、つまり、圧力センサを設けていない側の流体圧力が推定できる。上記コントローラ10で、上記第2油圧シリンダ206の流体圧力の推定を行い、この推定した流体圧力の値に基づいて、上記第2切換弁204の弁体の切り換え等の制御を行う。なお、上記第2油圧シリンダ206の長手方向が、重力が働く方向と直角以外の方向を向くように、上記第2油圧シリンダ206が配置される場合、この第2油圧シリンダ206のピストンに作用する重力を考慮する。つまり、この第2油圧シリンダ206を送り側(ロッド側)に駆動する場合の負荷と、戻り側(ヘッド側)に駆動する場合の負荷との間で、重力により生じる差を考慮して、上記流体圧力の推定を行う。
図3は、上記コントローラ10の構成を示すブロック図である。
上記コントローラ10は、電源により供給された交流電力からノイズを除去するノイズフィルタ21と、このノイズフィルタ21からの交流電力を直流電力に変換するコンバータ22を有する。上記コンバータ22からの直流電力は、内部電源24で所定の電圧に変圧されて、CPU25に供給される。また、上記コンバータ22からの直流電力は、インバータで構成された電流出力部23に供給される。この電流出力部23によって、CPU25の制御の下で、電流が所定の変動波形をなすように変更される。この電流出力部23からの電力は、電流検出部26により電流値が検出され、モータ2に出力される。こうして、上記CPU25によって、電流出力部23からの出力電力を制御して、上記モータ2の回転数およびトルクを制御している。すなわち、上記電流出力部23が電力調節手段として機能し、上記CPU25が制御手段として機能する。また、上記CPU25は、上記第2油圧シリンダ206のロッド側室に供給される流体の圧力を推定する圧力推定手段として機能する。
上記コントローラ10は、主機との間で通信信号を送受信する通信IF(インターフェース)31と、上記主機との間で入出力信号を送受信する入出力IF(インターフェース)32とを有する。また、上記コントローラ10は、上記可変速モータ2に設けられたエンコーダ11から信号を受けるエンコーダIF(インターフェース)33を有する。このエンコーダIF33で受けた信号に基づいて、上記可変速モータ2の回転数と、この可変速モータ2で駆動される油圧ポンプ1からの流量との両方を制御する。さらに、上記コントローラ10は、吐出ライン3に介設された圧力センサ9からの信号と、第1および第2油圧シリンダ106,206内の流体圧力を検出する各圧力センサ109,110,209からの信号を受ける圧力センサIF(インターフェース)34とを有する。また、上記コントローラのCPU25は、可変速モータ2の温度を検出するモータ温度検出器からの信号と、上記電流検出部26からの信号とを受けるようになっている。また、上記コントローラ10のCPU25は、バルブIF(インターフェース)35を介して、第1および第2切換弁104,204に、弁体の切換を行うための励磁信号を出力するようになっている。
上記コントローラ10のCPU25は、上記各インターフェース、モータ温度検出器および電流検出部26からの信号に基づいて、予め記憶されたプログラムに従って、上記電流出力部23の制御と、切換弁104,204の切り換えとを行う。これにより、油圧ユニットのPQ(圧力・流量)制御およびシーケンス制御を行うようになっている。
図4は、上記コントローラ10で行われる制御の概略を示したブロック図である。なお、図4に示す制御は、主に、コントローラのCPU25によって実行されるが、この制御は、コントローラ10を専用回路で構成して実行されてもよい。この場合、図4に示された各処理は、専用回路で夫々構成された複数の処理手段により実行される。
図4に示すように、上記コントローラ10のCPU25は、通信IF31を介して主機から受信した軸選択信号について、入力信号処理41を行う。上記軸選択信号とは、心押台クランプ(第1軸)または刃物台クランプ(第2軸)の作動を指令する信号である。また、上記CPU25は、出力信号処理42を行って、異常の発生等を通知する旨のアラーム信号や、上記各圧力センサ9,109,110,209が検出した圧力の値を示す信号等を生成し、通信IF31を介して主機に送信する。
上記CPU25は、各処理の状態を監視し、動作のシーケンス処理を管理する動作シーケンス処理43を行う。
また、上記CPU25は、圧力センサIF34を介して受けた信号と、エンコーダIF33を介して受けた信号と、後述する送り・保圧・戻り制御50による信号とに基づいて、PQ(圧力・流量)制御48を行う。すなわち、既に行った運転に関して記憶されたモータ回転数の値等から、目標とするモータ回転数である目標速度を設定する目標速度設定を行う。また、回転数入力処理47により得られたデータから、実速度を算出する実回転数演算を行う。そして、上記目標速度と実速度から、加速または減速のいずれを行うかを判断し、時定数を加味して、上記目標速度を得るための速度指令値およびトルク指令値を生成する変速処理を行う。
また、上記動作シーケンス処理43の管理の下、送り・保圧・戻り制御50を行う。すなわち、第1軸および第2軸の動作方向毎に、設定速度、加速時定数、減速時定数、および保圧回転数を記憶する。また、第1軸および第2軸の動作方向毎に、作動時間およびストロークエンド検出値等の学習結果を記憶する。この学習結果に基づいて、例えば可変速モータ2の回転数についてフィードフォワード制御を行う。
また、上記動作シーケンス処理43の管理の下、各切換弁104,204のソレノイド励磁を管理・出力する切換弁操作出力44を行って、バルブIF35を介して各切換弁104,204に駆動信号を送信する。
また、上記動作シーケンス処理43の管理の下、上記PQ制御48により生成された速度指令値およびトルク指令値を受けて、可変速モータ2に供給すべきモータ電流値に関する信号を電流出力部23に出力するモータ制御49を行う。このモータ制御49では、上記トルク指令値からモータ電流の値を算出するトルク指令処理を行うと共に、上記速度指令値からモータ電流の値と位相を算出する速度指令処理を行う。
図5A,5Bは、上記第1軸と第2軸に関する制御の内容を示したタイミングチャートである。図5Aは、コントローラ10が主機から受信する軸選択信号と、第1および第2切換弁104,204の各ソレノイドに印加する励磁信号と、上記CPU25での処理において第1軸および第2軸の動作を指示する送り信号または戻り信号とを、同一の時系列に示したものである。図5Bは、第1油圧シリンダ106のヘッド側室における負荷圧力と、上記第1油圧シリンダ106のロッド側室における負荷圧力と、第2油圧シリンダ204のヘッド側室における負荷圧力と、油圧ポンプ1の吐出圧力と、可変速モータ2の回転数とを、同一の時系列に示したものである。図5Aのタイミングチャートと図5Bのタイミングチャートは、同一の時間軸を用いている。
図5Aおよび図5Bを参照すると、まず、時間T1において、主機から、第1軸を送り側に作動する旨の軸選択信号を受信する。この軸選択信号に伴って、バルブIF35を介して、第1切換弁104の第1ソレノイド1Aに励磁信号を送出すると共に、第1軸の送り信号をオンにする。この送り信号に基づいて、電流出力部23から所定の電力が可変速モータ2に供給される。これにより、上記可変速モータ2の回転数が最大回転数となり、上記油圧ポンプ1の吐出流量が最大定格流量となる。この最大定格流量の流体が、上記第1ソレノイド1Aの励磁により連通状態となった第1切換弁104を介して、上記第1油圧シリンダ106のヘッド側室に供給される。これにより、上記第1油圧シリンダ106が伸長して、第1軸を送り側に駆動する。
その後、時間T2において、上記第1油圧シリンダ106のヘッド側室の圧力がストロークエンド検出値に達すると、圧力センサ109からの信号を受けたCPU25は、第1油圧シリンダ106の伸長が終了したことを検知し、これに伴って第1軸の送り信号をオフにする。その結果、電力出力部23から出力される電力の周波数が低減されて、可変速モータ2の回転数が低減する。
そして、上記第1油圧シリンダ106のヘッド側室の圧力がストロークエンド検出値に達してから所定の待ち時間が経過した時間T3において、第1切換弁の第1ソレノイド1Aの励磁を解除する。これにより、上記第1切換弁104は遮断状態となり、上記第1油圧シリンダ106のヘッド側室の圧力が、予め定められた設定値M1に保圧される。
ここで、上記時間T2において可変速モータ2の回転数を低減して油圧ポンプ1からの吐出量を低減した後に、上記時間T3において第1切換弁104を遮断状態にしている。これにより、上記油圧ポンプ1および吐出ライン3に過大なサージ圧が生じることが防止できて、上記油圧ポンプ1や吐出ライン3等への悪影響を効果的に防止できる。なお、上記第1油圧シリンダ106のヘッド側室におけるストロークエンド検出値を、ピストンの駆動限界に達する前の値にしてもよい。これにより、実際にピストンが限界まで駆動される前に、このヘッド側室に供給する流体の流量を低減できるので、ピストンの駆動が限界に達した際に生じるサージ圧を、効果的に防止することができる。
また、上記第1切換弁104と、上記第1油圧シリンダ106のヘッド側室との連通路に、漏れ防止手段の一例としてのチェック弁111を設けているので、上記ヘッド側室の流体圧力を、設定値M1と下限値L1との間に比較的長時間に亘って維持できる。したがって、上記油圧シリンダ106の保圧状態を安定して保持できる。
この後、時間T4において、主機から、第2軸を送り側に作動する旨の軸選択信号を受信する。この軸選択信号に伴って、バルブIF35を介して、第2切換弁204の第1のソレノイド2Aに励磁信号を送出すると共に、第2軸の送り信号をオンにする。この送り信号に基づいて、電流出力部23から所定の電力が可変速モータ2に供給される。これにより、上記可変速モータ2の回転数が最大回転数となり、上記油圧ポンプ1の吐出流量が最大定格流量となる。この最大定格流量の流体が、上記第1ソレノイド2Aの作動により連通状態となった第2切換弁204を介して、上記第2油圧シリンダ206のヘッド側室に供給される。これにより、上記第2油圧シリンダ206が伸長して、第2軸を送り側に駆動する。
その後、時間T5において、上記第2油圧シリンダ206のヘッド側室の圧力がストロークエンド検出値に達すると、圧力センサ209からの信号を受けたCPU25は、第2油圧シリンダ206の伸長が終了したことを検知し、これに伴って第2軸の送り信号をオフにする。その結果、電力出力部23から出力される電力の周波数が低減されて、可変速モータ2の回転数が低減する。
そして、上記第2油圧シリンダ206のヘッド側室の圧力がストロークエンド検出値に達してから所定の待ち時間が経過した時間T6において、第2切換弁の第1ソレノイド2Aの励磁を解除する。これにより、上記第2切換弁204は遮断状態となり、上記第2油圧シリンダ206のヘッド側室の圧力が、予め定められた設定値M3に保圧される。
ここで、上記第2切換弁204と、上記第2油圧シリンダ206のヘッド側室との連通路に、漏れ防止手段の一例としてのチェック弁211を設けているので、上記ヘッド側室の流体圧力を、上記設定値M3と下限値L3との間に比較的長時間に亘って維持できる。したがって、上記油圧シリンダ106の保圧状態を安定して保持できる。
上記時間T3において第1切換弁104が遮断状態にされて、第1油圧シリンダ106内で保圧されている流体圧力は、保圧状態が継続されるに従って、圧力値が低減する。時間T7において、上記第1油圧シリンダ106のヘッド側室の圧力が、予め定められた下限値L1を下回ると、上記圧力センサ109からの信号を受けたコントローラ10は、第1軸の送り信号を生成する。これにより、上記電流出力部26から所定の電力が供給され、可変速モータ2の回転数が上昇して、油圧ポンプ1の吐出圧力が上昇する。そして、時間T8において、コントローラ10は第1切換弁104の第1ソレノイド1Aに励磁信号を送出する。これにより、上記第1切換弁104が連通状態となり、上記第1油圧シリンダ106のヘッド側室に、所定の吐出圧力M11となった油圧ポンプ1の吐出ライン3が連通される。その結果、上記第1油圧シリンダ106のヘッド側室の圧力が上昇して、当初の設定値M1に回復する。この第1油圧シリンダ106のヘッド側の圧力が、上記下限値を下回った時間T7から所定の待ち時間が経過した後(時間T9の時点)、第1切換弁の第1ソレノイド1Aの励磁をオフにする。これにより、上記第1切換弁104は遮断状態となり、上記第1油圧シリンダ106のヘッド側室の圧力が、上記設定値M1に補正された状態で保圧される。
時間T10において、主機から、第2軸を戻り側に作動する旨の軸選択信号を受信する。この軸選択信号に伴って、第2切換弁204の第2のソレノイド2Bに励磁信号を送出すると共に、第2軸の戻り信号をオンにする。この第2軸の戻り信号に基づいて、電流出力部23から所定の電力が可変速モータ2に供給される。これにより、上記可変速モータ2の回転数が最大回転数となり、上記油圧ポンプ1の吐出流量が所定の最大定格流量となる。この油圧ポンプ1の吐出流体が、連通状態となった第2切換弁204を介して、上記第2油圧シリンダ206のロッド側室に供給され、上記第2油圧シリンダ206が収縮して、第2軸を戻り側に駆動する。時間T11において、コントローラ10は、圧力センサ9からの信号により、油圧ポンプ1の吐出圧力が所定のストロークエンド検出値に達したことを検知すると、電流出力部23からの出力電力の周波数を低減して、可変速モータ2の回転数を低減する。ここで、上記コントローラ10は、上記圧力センサ9の検出値に基づいて、上記第2油圧シリンダ206のロッド側室の流体の圧力を推定している。このロッド側室の流体圧力は、第2油圧シリンダ206の伸長時のヘッド側室の圧力に基づいて推定している。つまり、上記コントローラ10のCPU25が、圧力推定手段として機能する。
そして、上記第2油圧シリンダ206のロッド側室の負荷圧力が設定値となってから所定の待ち時間を経過した時間T12において、第2切換弁204の第2ソレノイド2Bの励磁をオフにする。これにより、上記第2切換弁204が遮断状態となり、上記第2油圧シリンダ206のロッド側室の圧力が設定値に保圧される。
上記第2油圧シリンダ206のロッド側室の流体の圧力は、このロッド側室と第2切換弁204との間に介設されたチェック弁212により、比較的長時間に亘って、設定値と下限値との間に保持される。
時間T13において、コントローラ10は、主機から、第1軸を戻り側に作動する旨の軸選択信号を受信する。この軸選択信号に伴って、第1切換弁104の第2ソレノイド1Bに励磁信号を送出すると共に、第1軸の戻り信号をオンにする。この第1軸の戻り信号に基づいて、電流出力部23から所定の電力が可変速モータ2に供給される。これにより、上記可変速モータ2の回転数が最大回転数となり、上記油圧ポンプ1の吐出流量が所定の最大定格流量となる。この油圧ポンプ1の吐出流体が、連通状態となった第1切換弁104を介して、上記第1油圧シリンダ106のロッド側室に供給され、上記第1油圧シリンダ106が収縮して、第1軸を戻り側に駆動する。時間T14において、コントローラ10は、圧力センサ110からの信号により、上記第1油圧シリンダ106のロッド側室の負荷圧力が所定のストロークエンド検出値に達したことを検知すると、電流出力部23からの出力電力の周波数を低減して、可変速モータ2の回転数を低減する。そして、上記第1油圧シリンダ106のロッド側室の圧力がストロークエンド検出値となってから所定の待ち時間を経過した時間T15において、第1切換弁104の第2ソレノイド1Bの励磁をオフにする。これにより、上記第1切換弁104が遮断状態となり、上記第1油圧シリンダ106のロッド側室の圧力が設定値M2に保圧される。
上記第1油圧シリンダ106のロッド側室の流体の圧力は、このロッド側室と第1切換弁104との間に介設されたチェック弁112により、比較的長時間に亘って、上記設定値M2と下限値L2との間に安定に保持される。
図5Aおよび5Bに示したタイミングチャートにおいて、第1油圧シリンダ106と第2油圧シリンダ206の両方が保圧状態である場合、可変速モータ2を停止している。例えば、時間T6から時間T7までの間の一部に、可変速モータ2が停止する比較的長い期間を有する。この期間において、可変速モータ2に電力を供給しないので、この油圧ユニットは消費電力を効果的に削減できる。
図6は、図5Aおよび5Bに示すタイミングチャートの制御を行う際に、CPU25で実行される処理を示したフローチャートである。
まず、ステップS1において、動作パラメータの初期化を行う。詳しくは、可変速モータ2の保圧回転数の設定と、保圧タイマの初期化と、安定待ちタイマの初期化と、保圧圧力の設定を行う。
上記可変速モータ2の保圧回転数とは、例えば、図5Aおよび5B中の時間T2からT3までの間に、第1油圧シリンダ106のヘッド側室の圧力を設定値M1とするための回転数である。また、上記保圧タイマとは、油圧シリンダ106,206の保圧状態の継続時間を計るものであり、例えば、第1油圧シリンダ106のヘッド側室の圧力が、ストロークエンド検出値に達した時間T2に、計時を開始する。また、上記安定待ちタイマとは、油圧シリンダ106,206内の圧力が、ストロークエンド検出値に達した時間T2からの経過時間を計るものであり、所定の待ち時間が経過すると、油圧シリンダ106,206と油圧ポンプ1との連通を切換弁104,204が遮断する。例えば、第1油圧シリンダ106のヘッド側室の圧力がストロークエンド検出値となった時間T2に、上記安定待ちタイマが計時を開始し、所定の待ち時間が経過した時間T3に、第1切換弁104を遮断状態にしている。
上記ステップS1の後、第1軸および第2軸について、主機から受けた軸選択信号に基づいて、軸選択入力がオンか否かを判断する(S2)。
上記ステップS2で、軸選択入力がオンであると判断した場合、動作シーケンス管理を行う(S3)。すなわち、第1および第2油圧シリンダ106,206の送り動作と、戻り動作と、保圧力補正動作とのいずれを優先して行うかを決定する。
上記ステップS2で、軸選択入力がオンでないと判断した場合、このステップS2の処理を繰り返す。
そして、上記ステップS3の後、第1軸および第2軸である動作軸への運転指令を行う(S4)。具体的には、第1および第2切換弁104,204の切り換えと、可変速モータ2への供給電力の調節を行う。
続いて、各軸の動作モード管理を行う(S5)。
そして、可変速モータ2が運転中か否かを判断し(S6)、運転中であるときは、軸選択信号に基づいて、第1軸および第2軸のいずれかについての軸選択入力がオフか否かを判断する(S7)。
上記ステップS6において、上記可変速モータ2が運転中でない場合は、上記ステップS2に戻る。
上記ステップS7において、軸選択入力がオフである場合、作動軸への停止指令を行う(S8)一方、軸選択入力がオフでない場合、上記ステップS5に戻る。
上記ステップS8で作動軸への停止指令を行った後、上記ステップS2に戻る。
図6には、上記CPU25による処理において、出力が要求された際に実行する出力処理を示している。すなわち、出力要求の管理を行い(S11)、出力要求の内容を判断する。そして、要求内容に該当する切換弁への出力処理を行う(S12)。例えば、要求内容に応じた適切な切換弁104,204のソレノイドに励磁信号を出力する。また、要求内容に応じて、電流出力部23を介して可変速モータ2への出力処理を行う(S13)。また、要求内容に応じて、主機に、流体の漏れ等を通知するアラーム信号や、各軸の動作状況を通知する動作信号や、各圧力センサ9,109,110,209の検出値を通知する圧力通知信号等のような外部信号の出力処理を行う(S14)。
また、図6には、上記CPU25による処理において、異常が検出された際に実行する異常処理を示している。すなわち、可変速モータ2を停止し、主機に異常の旨を通知する異常出力を行い、ブザーや画像表示装置等によるアラーム表示を行う(S16)。
以下、図7乃至図13を参照して、第1軸に関して行われる各制御について詳細に説明する。
図7は、第1軸について実行される制御に関して、特に、送り制御と戻り制御を詳細に説明するタイミングチャートである。図8は、第1軸の送り制御を行う際にCPU25で実行される処理を示したフローチャートである。
図7の時間T21において、主機から第1軸の送りを指令する旨の軸選択信号を受けると、図8の送り制御を開始する。すなわち、図4の処理シーケンス処理において、上記主機から受けた軸選択信号を解析し、第2軸との動作スケジュールにおいて第1軸の動作を行うと判断した場合、この第1軸の送り制御を開始する。
まず、図8に示すように、第1軸の動作パラメータを設定する(S21)。詳しくは、可変速モータ2の送り動作における回転数を設定し、送りタイマを初期化すると共に、ストロークエンド検出値を設定する。
続いて、第1切換弁104の第1ソレノイド1Aの励磁要求と、可変速モータ2の起動要求と、送りタイマの起動を行う(S22)。
その後、上記可変速モータ2の回転数が設定回転数に達したか否かを判断する(S23)。
上記可変速モータ2の回転数が設定回転数に達している場合、第1油圧シリンダ106のヘッド側室の負荷圧力は安定しているか否かを判断する(S24)。この負荷圧力が安定しているか否かは、例えば、圧力センサ109の検出値の変動幅が、予め定められた値よりも小さいか否かによって判断する。
上記可変速モータ2の回転数が設定回転数に達しており、上記第1油圧シリンダ106のヘッド側室の負荷圧力が安定していると判断された場合、このヘッド側室の圧力である送り圧力および油圧ポンプの吐出圧力の記憶・学習を行う(S25)。図7のタイミングチャートでは、時間T22の直後に、この処理が行われる。
上記ステップS23において、可変速モータ2の回転数が設定回転数に達していないと判断された場合、および、上記ステップS24において、第1油圧シリンダ106のヘッド側室の負荷圧力が安定していないと判断された場合、ステップS25は実行しないでステップS26に移る。
ステップS26では、圧力センサ109の検出値から、上記第1油圧シリンダ106のヘッド側室の圧力が、ストロークエンド検出値に達したか否かを判断する。
上記第1油圧シリンダ106のヘッド側室の圧力が、ストロークエンド検出値に達していないと判断した場合、上記ステップS23に戻る。
上記ステップS26において、上記第1油圧シリンダ106のヘッド側室の圧力が、ストロークエンド検出値に達したと判断した場合、このストロークエンド検出値に達した時点での油圧ポンプ1の吐出圧力を記憶して、この油圧ポンプ1におけるストロークエンド検出値として学習する。また、上記送りタイマの計時時間を記憶して、送り制御の実行時間を学習する(S27)。図7のタイミングチャートでは、時間T23において、このステップS27の処理が行われて、送り制御が終了する。
図9は、第1油圧シリンダ106の保圧制御を行う際にCPU25で実行される処理を示したフローチャートである。
図7の時間T23において、送り制御が終了すると、CPU25は保圧制御を開始する。
まず、図9に示すように、第1軸の動作パラメータを設定する(S31)。詳しくは、可変速モータ2の保圧時における回転数を設定し、保圧タイマを初期化すると共に、第1油圧シリンダ106のヘッド側室において保圧すべき保圧圧力(設定値M1)を設定する。
続いて、安定待ちタイマを起動すると共に、保圧タイマを起動し(S32)、その後、可変速モータ2の回転数が低下して、設定回転数に達したか否かを判断する(S33)。
上記可変速モータ2の回転数が設定回転数に達すると(図7の時間T24)、保圧時の回転数の学習を行うと共に、第1油圧シリンダ106のヘッド側室の圧力である負荷圧力のサンプリングを行う(S34)。なお、上記ステップS33において可変速モータ2の回転数が設定回転数に達していないと判断した場合、上記ステップS34の学習とサンプリングは行わない。
続いて、上記安定待ちタイマが計時する時間が、予め定められた安定待ち時間に達したか否かを判断する(S35)。安定待ち時間に達したと判断した場合、上記第1油圧シリンダ106の負荷圧力が保圧範囲内の圧力であるか否かを判断する(S36)。この保圧範囲は、上記ステップS31で設定された設定値M1と、予め定められた下限値L1との間である。
上記ステップS35において、上記安定待ちタイマが計時する時間が、予め定められた安定待ち時間に達していないと判断した場合、上記ステップS33に戻る。
上記ステップS36において、上記第1油圧シリンダ106の負荷圧力が保圧範囲内の圧力であると判断した場合(図7では時間T25)、第1切換弁の第1ソレノイド1Aに対する励磁の停止要求を行うと共に、この第1切換弁104が切り換わるまでの時間待ちを行う(S37)。
そして、可変速モータ2の停止要求を行い(S38)、送り動作完了信号の主機への出力を入出力IF32に要求して(S39)、保圧監視制御に移る。
一方、上記ステップS36において、上記第1油圧シリンダ106の負荷圧力が保圧範囲内の圧力でないと判断した場合、第1油圧シリンダ106の負荷圧力を記憶し、第1切換弁の第1ソレノイド1Aに対する励磁の停止要求を行うと共に、この第1切換弁104が切り換わるまでの時間待ちを行う(S40)。
そして、主機に通知すべきアラームの分類・管理を行って(S41)、図6の異常処理に移る。このとき、上記CPU25は、第1の異常検出手段として機能する。
このように、上記第1油圧シリンダ106の負荷圧力について、上記安定待ち時間を経た後の圧力が保圧範囲内であるか否かを判断することにより、例えば、上記シリンダ106の異常な漏れ等によって流体圧力が下限値L1を下回ったことが検出される。したがって、上記第1油圧シリンダ106の異常を比較的容易に検出できる。
上記保圧制御に続いて行われる保圧監視制御では、図9に示すように、上記第1油圧シリンダ106の負荷圧力が保圧範囲外であるか否かを判断する(S45)。上記負荷圧力が保圧範囲内である場合、このステップS45を繰り返す。
上記負荷圧力が保圧範囲外であると判断した場合(図7の時間T26)、保圧タイマの計時時間を記憶すると共に保圧時間の学習を行い(S46)、圧力補正制御に移る。
図10は、第1油圧シリンダ106における保圧圧力の補正を行う際にCPU25で実行される処理を示したフローチャートである。
まず、第1軸の動作パラメータを設定する(S51)。詳しくは、保圧圧力の生成に要する可変速モータ2の回転数を設定し、保圧タイマおよび安定待ちタイマを初期化する。また、補正されて回復すべき保圧圧力(設定値M1)を設定する。
続いて、安定待ちタイマを起動すると共に保圧タイマを起動し、可変速モータ2の起動要求を行う(S52)。
そして、可変速モータ2の回転数が増大して、設定回転数に達したか否かを判断する(S53)。上記可変速モータ2の回転数が設定回転数に達すると(図7の時間T27)、第1切換弁の第1ソレノイド1Aに対する励磁の要求を行う(S54)。また、保圧時の回転数の学習を行うと共に、第1油圧シリンダ106の負荷圧力のサンプリングを行う(S55)。なお、上記ステップS53において可変速モータ2の回転数が設定回転数に達していないと判断した場合、上記ステップS55の学習とサンプリングは行わない。
続いて、上記安定待ちタイマが計時する時間が、予め定められた安定待ち時間に達したか否かを判断する(S56)。安定待ち時間に達したと判断した場合、上記第1油圧シリンダ106の負荷圧力が保圧範囲内の圧力であるか否かを判断する(S57)。この保圧範囲は、図9のステップS36の保圧範囲と同一である。
上記ステップS56において、上記安定待ちタイマが計時する時間が、予め定められた安定待ち時間に達していないと判断した場合、上記ステップS53に戻る。
上記ステップS57において、上記第1油圧シリンダ106の負荷圧力が保圧範囲内の圧力であると判断した場合(図7では時間T28の時点)、第1切換弁の第1ソレノイド1Aに対する励磁の停止要求を行うと共に、この第1切換弁104が切り換わるまでの時間待ちを行う(S58)。
そして、可変速モータ2の停止要求を行い(S59)、保圧監視制御に戻る。
一方、上記ステップS57において、上記第1油圧シリンダ106の負荷圧力が保圧範囲内の圧力でないと判断した場合、第1油圧シリンダ106の負荷圧力を記憶し、第1切換弁の第1ソレノイド1Aに対する励磁の停止要求を行うと共に、この第1切換弁104が切り換わるまでの時間待ちを行う(S60)。
そして、主機に通知すべきアラームの分類・管理を行って(S61)、図6の異常処理に移る。このとき、上記CPU25は、第1の異常検出手段として機能する。
このように、上記第1油圧シリンダ106の負荷圧力について、上記安定待ち時間を経た後の圧力が保圧範囲内であるか否かを判断することにより、例えば、上記シリンダ106の異常な漏れ等によって流体圧力が下限値L1を下回ったことが検出される。したがって、上記第1油圧シリンダ106の異常を比較的容易に検出できる。
上記圧力補正制御は、1回の保圧制御において、複数回繰り返して行ってもよい。すなわち、図11の保圧制御を示すタイミングチャートにおいて、第1油圧シリンダ106の負荷圧力が保圧範囲外であると判断された時間T41から、図10のステップS51からS59までの処理が行われる。これにより、圧力補正制御が行われ、上記第1油圧シリンダ106の負荷圧力が所定の設定値M1に補正されて、時間T42に可変速モータ2が停止する。その後、時間T44において、再度、第1油圧シリンダ106の負荷圧力が保圧範囲外であると判断され、図10のステップS51からS59までの処理が行われる。これにより、圧力補正制御が行われ、上記第1油圧シリンダ106の負荷圧力が所定の設定値M1に補正されて、時間T45に可変速モータ2が停止する。このように、送り制御の後の保圧制御において、保圧圧力を補正する圧力補正制御を複数回実行することにより、少ない消費エネルギーで、第1油圧シリンダ106の保圧圧力を安定して維持できるのである。
図12は、第1軸の戻り制御を行う際にCPU25で実行される処理を示したフローチャートである。
図7の時間T29において、主機から第1軸の戻り制御を指令する軸選択信号を受けると、図12の戻り制御を開始する。すなわち、図4の処理シーケンス処理において、上記主機から受けた軸選択信号を解析し、第2軸との動作スケジュールにおいて第1軸の動作を行うと判断した場合、この第1軸の戻り制御を開始する。
まず、図12に示すように、第1軸の動作パラメータを設定する(S71)。詳しくは、可変速モータ2の回転数を設定し、戻りタイマを初期化すると共に、戻りのストロークエンド検出値を設定する。なお、本実施形態では、第1油圧シリンダ106のロッド側室の流体圧力を圧力センサ110で検出し、この圧力センサ110の検出値から戻りのストロークエンドを検知するが、ロッド側室の流体圧力を検出する圧力センサ110は削除してもよい。この場合、圧力センサ109が検出するヘッド側室の流体圧力からロッド側室の流体圧力を推定し、この推定した流体圧力に基づいてストロークエンドを検知する。
続いて、第1切換弁104の第2ソレノイド1Bの励磁要求と、可変速モータ2の起動要求と、戻りタイマの起動を行う(S72)。
その後、上記可変速モータ2の回転数が設定回転数に達したか否かを判断する(S73)。
上記可変速モータ2の回転数が設定回転数に達している場合、油圧ポンプ1の吐出圧力が安定しているか否かを判断する(S74)。このポンプ圧力が安定しているか否かは、例えば、圧力センサ9の検出値の変動幅が、予め定められた値よりも小さいか否かによって判断する。
上記可変速モータ2の回転数が設定回転数に達しており、上記油圧ポンプ1の吐出圧力が安定していると判断された場合、この吐出圧力の記憶・学習を行う(S75)。図7のタイミングチャートでは、時間T30の直後に、この処理が行われる。
上記ステップS73において、可変速モータ2の回転数が設定回転数に達していないと判断された場合、および、上記ステップS74において、油圧ポンプ1の吐出圧力が安定していないと判断された場合、ステップS75は実行しないでステップS76に移る。
ステップS76では、圧力センサ9の検出値から、上記油圧ポンプ1の吐出圧力が、ストロークエンド検出値に達したか否かを判断する。なお、この油圧ポンプ1におけるストロークエンド検出値は、ステップS75において記憶・学習した第1軸の送り制御時のストロークエンド検出値を用いる。あるいは、予め記憶されたストロークエンド検出値を用いてもよい。
上記油圧ポンプ1の吐出圧力が、ストロークエンド検出値に達していないと判断した場合、上記ステップS73に戻る。
上記ステップS76において、上記油圧ポンプ1の吐出圧力が、ストロークエンド検出値に達したと判断した場合、このストロークエンド検出値に達した時点での油圧ポンプ1の吐出圧力を記憶・学習する(S77)。また、この時点での戻りタイマの計時時間を、第1軸の戻り制御の実行時間として記憶・学習する(S78)。図7のタイミングチャートでは、時間T31において、このステップS78の処理が行われて、戻り制御から戻り保圧制御に移る。
図13は、図12に引き続いて実行される戻り保圧制御を示すフローチャートである。
まず、第1軸の動作パラメータを設定する(S81)。詳しくは、可変速モータ2の保圧時における回転数を設定し、タイマを初期化する。
続いて、安定待ちタイマを起動すると共に、保圧タイマを起動し(S82)、その後、可変速モータ2の回転数が低下して、設定回転数に達したか否かを判断する(S83)。
上記可変速モータ2の回転数が設定回転数に達すると(図7の時間T32)、保圧時の回転数のサンプリングを行うと共に、油圧ポンプ1の吐出圧力のサンプリングを行う(S84)。なお、上記ステップS83において可変速モータ2の回転数が設定回転数に達していないと判断した場合、上記ステップS84のサンプリングは行わない。
続いて、上記安定待ちタイマが計時する時間が、予め定められた安定待ち時間に達したか否かを判断する(S85)。安定待ち時間に達したと判断した場合、上記油圧ポンプ1の吐出圧力が保圧範囲内の圧力であるか否かを判断する(S86)。この保圧範囲は、所定の上限値と、予め定められた下限値との間である。
上記ステップS85において、上記安定待ちタイマが計時する時間が、予め定められた安定待ち時間に達していないと判断した場合、上記ステップS83に戻る。
上記ステップS86において、上記油圧ポンプ1の吐出圧力が保圧範囲内の圧力であると判断した場合(図7では時間T33)、第1切換弁の第2ソレノイド1Bに対する励磁の停止要求を行うと共に、この第1切換弁104が切り換わるまでの時間待ちを行う(S87)。
そして、可変速モータ2の停止要求を行い(S88)、送り動作完了信号の主機への出力を入出力IF32に要求して(S89)、保圧制御を終了する。
一方、上記ステップS86において、上記油圧ポンプ1の吐出圧力が保圧範囲内の圧力でないと判断した場合、この吐出圧力を記憶し、第1切換弁の第2ソレノイド1Bに対する励磁の停止要求を行うと共に、この第1切換弁104が切り換わるまでの時間待ちを行う(S90)。
そして、主機に通知すべきアラームの分類・管理を行って(S91)、図6の異常処理に移る。このとき、上記CPU25は、第1の異常検出手段として機能する。
このように、上記第1油圧シリンダ106の負荷圧力について、上記安定待ち時間を経た後の圧力が保圧範囲内であるか否かを判断することにより、例えば、上記シリンダ106の異常な漏れ等によって流体圧力が下限値を下回ったことが検出される。したがって、上記第1油圧シリンダ106の異常を比較的容易に検出できる。
本実施形態の油圧ユニットは、保圧制御の途中において、あるいは、送り制御、戻り制御および保圧制御の間において、油圧ポンプ1による流体の供給が不要であるときは、可変速モータ2を停止できる。したがって、可変速モータ2の消費エネルギーを削減して、効果的に省エネルギーを行うことができる。
また、本実施形態の油圧ユニットは、第1軸および第2軸の作動中においても、上記可変速モータ2を停止することができるので、モータを常時運転していた従来と比較して、上記可変速モータ2やタンク7内の流体の温度上昇を効果的に低減できる。したがって、可変速モータ2やタンク7を従来よりも小型にでき、油圧ユニットの小型化を行うことができる。
また、本実施形態の油圧ユニットは、上記第1油圧シリンダ106および第2油圧シリンダ206の制御モードに応じて、油圧ポンプ1の吐出圧力を制御するので、従来におけるような油圧ポンプの吐出圧力を減圧する減圧弁が不要である。したがって、減圧弁の操作の手間を削除でき、また、流体の配管を簡易にしてコストダウンを行うことができる。
また、各油圧シリンダ106,206の制御に用いる圧力センサ109,110,209の検出値を用いて異常を検出するので、少ないコストで異常検出を行うことができる。
なお、図12に示した第1軸の戻り制御と、図13に示した戻り保圧制御とは、第1油圧シリンダ106内の圧力ではなく、油圧ポンプ1の吐出圧力に基づいている。したがって、上記第1油圧シリンダ106のロッド側室の流体圧力を検出する圧力センサ110を削除してもよい。あるいは、第1軸の戻り制御と保圧制御を、上記圧力センサ110の検出値に基づいて行ってもよい。
また、上記保圧制御および圧力補正制御において、CPU25は、安定待ちタイマが安定待ち時間を計時した後に、上記第1油圧シリンダ106の保圧圧力が所定の範囲内であるか否かを判断することにより、上記シリンダ106の異常を検出している。しかしながら、これに代えて、上記第1油圧シリンダ106の保圧圧力が下限値を下回った際に、上記安定待ちタイマの計時時間を検出し、この計時時間と、正常な運転時に学習した計時時間とを比較することにより、流体の漏れ等の異常を検出してもよい。この場合、上記安定待ちタイマは、上記第1油圧シリンダ106が保圧状態となる第1切換弁104の遮断時に起動してもよい。すなわち、上記第1油圧シリンダ106の保圧開始時から、保圧圧力が下限値を下回った時までの時間に基づいて、異常を検出してもよい。
また、図7から図13を参照して第1軸に関する制御を説明したが、第2軸についても同様の制御を行うことができる。ここで、第2軸を作動する第2油圧シリンダ206には、ロッド側室の流体圧力を検出する圧力センサを設けていない。したがって、図12および図13に示すように、油圧ポンプ1の吐出圧力に基づいて、戻り制御および保圧制御を実行する。
図14Aは、図7のタイミングチャートにおいて、送り制御から保圧制御の際に、第1油圧シリンダ106に供給される流体について、圧力Pと流量Qとの間に生じるPQ特性を示した図である。図7に示された第1油圧シリンダの負荷圧力における点E,F,G,Hに該当する点を、図14AのPQ座標に示している。
また、図14Bは、図7のタイミングチャートにおいて、戻り制御から戻り保圧制御の際に、油圧ポンプ2から吐出される流体のPQ特性を示した図である。図7に示された油圧ポンプ1の吐出圧力における点K,L,M,Nに該当する点を、図14BのPQ座標に示している。
図14Aおよび14Bにおいて、油圧ユニットに予め設定された目標PQ特性線50を重ねて示している。上記目標PQ特性線50は、最大流量運転直線51と、定馬力運転曲線52と、最大圧力運転直線53とからなる。通常運転時において、上記目標PQ特性線50上の流体圧力および流量となるように、コントローラ10によって可変速モータ2の回転数を制御している。これにより、油圧ユニットを自律的かつ省エネルギー運転を行うものである。
図14Aに示すように、第1軸の送り制御および保圧制御におけるPQ特性は、比較的小さいサージ圧が生じる点G以外の点は、目標PQ特性線50の範囲内に位置している。すなわち、送り制御および保圧制御を、必要最小限の消費エネルギーで実行できる。これは、負荷圧力のストロークエンド検出値に基づいて可変速モータ2の回転数を制御しているように、フィードフォワード制御を行っていることに起因している。
また、図14Bにおいても、図14Aと同様に、第1軸の戻り制御および保圧制御におけるPQ特性は、比較的小さいサージ圧が生じる点M以外の点は、目標PO特性線50の範囲内に位置している。したがって、戻り制御および保圧制御を、必要最小限の消費エネルギーで実行できる。
上記実施形態では、本発明の油圧ユニットをNC旋盤に用いた場合について説明したが、本発明の油圧ユニットは、NC旋盤に限らず、マシニングセンタ等の他の工作機械に用いてもよい。
また、上記実施形態では、上記油圧ユニットはアクチュエータとしての油圧シリンダ106,206を駆動したが、油圧シリンダ以外の他のアクチュエータを駆動してもよい。
また、上記実施形態では、上記アクチュエータは心押台クランプおよび刃物台クランプを駆動したが、他のクランプ装置を駆動してもよい。
また、上記実施形態では、漏れ防止手段の一例としてチェック弁111,112,211,212を設けたが、チェック弁以外のカウンターバランス弁等を設けてもよい。また、上記切換弁104,204に漏れ防止手段を一体に形成してもよい。