JP2005193349A - 穴あけ工具 - Google Patents
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Abstract
【目的】動バランスが良好且つ工具剛性が高い1枚刃の穴あけ工具を提供する。
【構成】略円柱状をなす工具本体(2)の外周に、中心軸線(O)に沿って先端から後端側に延びる1条の切りくず排出溝(10)が設けられ、この切りくず排出溝(10)の先端部に切れ刃(3a)が設けられた1枚刃の穴あけ工具(1)において、該中心軸線(O)に沿う方向の前記切りくず排出溝(10)が設けられた範囲で、該中心軸線(O)に直交する面で切断したときの該穴あけ工具(1)の断面図形の図心(G)と該中心軸線(O)とを近づけるために、該中心軸線(O)に沿って先端から後端側に延びる少なくとも1つの穴(20A、20B)および/または少なくとも1条の溝(30A、40A)が形成される。
【選択図】図3
【構成】略円柱状をなす工具本体(2)の外周に、中心軸線(O)に沿って先端から後端側に延びる1条の切りくず排出溝(10)が設けられ、この切りくず排出溝(10)の先端部に切れ刃(3a)が設けられた1枚刃の穴あけ工具(1)において、該中心軸線(O)に沿う方向の前記切りくず排出溝(10)が設けられた範囲で、該中心軸線(O)に直交する面で切断したときの該穴あけ工具(1)の断面図形の図心(G)と該中心軸線(O)とを近づけるために、該中心軸線(O)に沿って先端から後端側に延びる少なくとも1つの穴(20A、20B)および/または少なくとも1条の溝(30A、40A)が形成される。
【選択図】図3
Description
本発明は、穴あけ工具に関し、特に1枚刃の穴あけ工具に関する。
略円柱状をなす工具本体の外周に、先端から後端側に延びる1条の切りくず排出溝(10)が設けられるとともに、前記切りくず排出溝の先端部に切れ刃が設けられた1枚刃の穴あけ工具(1)は、該穴あけ工具(1)の中心軸線(O)と重心のずれが大きくなるため、バランスが悪く高速回転での使用に不向きとされていた。これを解決するため、図7および図8に例示するようなリーマ(1)があった。図7はこのリーマ(1)の先端側の正面図であり、図8は先端視側面図である。これらの図に示すようにリーマ本体(2)の外周に、リーマ刃(3)の備わる1条の切りくず排出溝(10)と、これと略同一形状をした複数の溝(30A、30B)とを円周方向に等配し、しかも、中心軸線(O)を挟み前記リーマ刃(3)の略対称位置にガイドパッド(5)が存在するように配設されている。
リーマ刃(3A)が形成された切りくず排出溝(10)と、これと略同一形状のリーマ刃(3A)を有しない複数の溝(30A、30B)とを、リーマ本体(2)の外周に円周方向に等配することにより、重心が中心軸線(O)の近くにあってバランスの改善されたリーマとなる。また、リーマ刃(3A)の中心軸線(O)対称位置にガイドパッド(5)があることから、切削力は直接的に受け止められて切削が安定する。これにより、高速かつ高精度な穴加工が可能となる。さらに、先行刃(3A)を多刃とし、その後を1枚の仕上刃(3B)で仕上げる段付き切刃とすることで、高速高送り加工ができるようになって、高能率な加工が可能となる。(例えば、特許文献1参照)
しかしながら、上述したリーマ(1)においては、以下に列挙する問題があった。
(1)リーマ刃(3A)が形成された切りくず排出溝(10)と、これと略同一形状のリーマ刃(3A)を有しない複数の溝(30A、30B)とをリーマ本体(2)の外周に円周方向に等配するため、該リーマ(1)の剛性低下をまねき切削抵抗等による撓みが生じやすくなる。
(2)中心軸線(O)を挟みリーマ刃(3A)の略対称位置にガイドパッド(5)が形成されるため、前記位置にリーマ刃(3A)を有しない溝(30A、30B)を設けることができない。
(3)リーマ刃(3A)が形成された切りくず排出溝(10)と、これと略同一形状のリーマ刃(3A)を有しない複数の溝(30A、30B)とを、リーマ本体(2)の外周に円周方向に等配するため、該リーマ(1)の内部に給油穴を設ける場合、前記給油穴の直径、位置の少なくとも一方が制約されるおそれがある。
(4)該リーマ(1)の内部に給油穴を設けた場合、その給油穴の位置または形状によっては該リーマ(1)の重心が中心軸線(O)から大きくずれてしまためバランスが劣化するおそれがある。
(1)リーマ刃(3A)が形成された切りくず排出溝(10)と、これと略同一形状のリーマ刃(3A)を有しない複数の溝(30A、30B)とをリーマ本体(2)の外周に円周方向に等配するため、該リーマ(1)の剛性低下をまねき切削抵抗等による撓みが生じやすくなる。
(2)中心軸線(O)を挟みリーマ刃(3A)の略対称位置にガイドパッド(5)が形成されるため、前記位置にリーマ刃(3A)を有しない溝(30A、30B)を設けることができない。
(3)リーマ刃(3A)が形成された切りくず排出溝(10)と、これと略同一形状のリーマ刃(3A)を有しない複数の溝(30A、30B)とを、リーマ本体(2)の外周に円周方向に等配するため、該リーマ(1)の内部に給油穴を設ける場合、前記給油穴の直径、位置の少なくとも一方が制約されるおそれがある。
(4)該リーマ(1)の内部に給油穴を設けた場合、その給油穴の位置または形状によっては該リーマ(1)の重心が中心軸線(O)から大きくずれてしまためバランスが劣化するおそれがある。
本発明は、上述した問題に鑑みなされたものであり、その目的は、1枚刃の穴あけ工具において、動バランスが良好且つ工具剛性が高い穴あけ工具を提供することにある。
上記課題を解決するために、第1の発明は、略円柱状をなす工具本体の外周に、中心軸線(O)に沿って先端から後端側に延びる1条の切りくず排出溝が設けられ、この切りくず排出溝の先端部に切れ刃が設けられた1枚刃の穴あけ工具において、該中心軸線(O)に沿う方向の前記切りくず排出溝が設けられた範囲で、該中心軸線(O)に直交する面で切断したときの該穴あけ工具の断面図形の図心(G)と該中心軸線(O)とを近づけるために、該中心軸線(O)に沿って先端から後端側に延びる少なくとも1つの穴および/または少なくとも1条の溝が形成されたことを特徴とする。
また、第2の発明は、略円柱状をなす工具本体の外周に、先端側の小径部から後端側に向かって段状に拡径する少なくとも1つの拡径部と、中心軸線(O)に沿って先端から後端側に延びる1条の切りくず排出溝が設けられ、この切りくず排出溝の工具回転方向(K)側を向く壁面と該工具本体の先端面とがなす交差稜線部、および、前記壁面と前記拡径部の先端側に向く端面との交差稜線部に切れ刃が形成された1枚刃の穴あけ工具において、中心軸線(O)に沿う方向の前記切りくず排出溝が設けられた範囲で、該中心軸線(O)に直交する面で切断したときの先端側の前記小径部および各拡径部の断面図形の図心(G)と該中心軸線(O)とを近づけるために、該中心軸線(O)に沿って先端から後端側に延びる少なくとも1つの穴および/または少なくとも1条の溝が、該中心軸線(O)に沿う方向の少なくとも前記切りくず排出溝が設けられた範囲にわたって形成されたことを特徴とする。
第1の発明の穴あけ工具によれば、中心軸線(O)に直交する面で切断した断面図形において、図心(G)と該中心軸線(O)とを近づけるために、少なくとも1つの穴および/または少なくとも1条の溝が該中心軸線(O)に沿う方向の少なくとも切りくず排出溝の設けられた範囲にわたって形成される。そのため、該穴あけ工具は、動バランスが向上し高精度な穴あけ加工が可能となる。ここで、加工穴の精度とは、真直度、真円度、円筒度、加工穴の内周壁面の表面粗さ、加工穴径の精度等のことを指す。
第2の発明の穴あけ工具によれば、段状に拡径する拡径部を中心軸線(O)に直交する面で切断した各断面図形において、図心(G)と該中心軸線(O)とを近づけるために、少なくとも1つの穴および/または少なくとも1つの溝が該中心軸線(O)に沿う方向の少なくとも切りくず排出溝の形成された範囲にわたって形成される。そのため、該穴あけ工具は、動バランスが向上し高精度な穴あけ加工が可能となる。
しかも、第1および第2の発明の穴あけ工具では、その断面図形の図心(G)と中心軸線(O)とを近づけるにあたって、前記溝をなくすこと、または、前記溝の断面積を切りくず排出溝より小さくすることが可能なので、該穴あけ工具の剛性低下がおさえられる。
さらに、該穴あけ工具の断面図形の図心(G)と中心軸線(O)とを近づけるにあたって、少なくとも1つの穴と少なくとも1つの溝とは、それらの断面形状や設定位置を多種多様に組合せ可能なため、前記断面形状や設定位置の自由度が高められる。そのため、例えばガイドパッドを外周部に付設する場合等、前記ガイドパッドの円周方向の設定位置を自由に設定することができる。
第1および第2の発明の穴あけ工具において、該中心軸線(O)に沿う方向に切りくず排出溝の形成された範囲にわたって、該中心軸線(O)に直交する面で切断した断面図形の図心(G)と該中心軸線(O)との距離は、0〜0.05D(D:該穴あけ工具の先端部に設けられた切れ刃の直径)の範囲に設定されるのが好ましい。前記距離のより好ましい範囲は0〜0.02Dである。このように限定したのは、前記距離が0.05Dより大きくなると該穴あけ工具の動バランスの改善効果が得られないおそれがあるからである。0.02D以下とした場合には、さらに高回転時のバランスが高められ、高速切削により高能率且つ高精度な穴あけ加工が可能となる。
また、第1および第2の発明の穴あけ工具において、中心軸線(O)に沿って先端から後端側に延びる前記穴は、切削用媒体を供給する給油穴とされるのが好ましい。そうした場合には、前記穴は、穴あけ工具の断面図形における図心(G)と該中心軸線(O)とを近づける作用とともに、切削油、加圧空気、ミスト等の切削用媒体を該穴あけ工具先端部へ供給するため給油穴として作用し、切れ刃および被削材の温度上昇および切れ刃の損傷の抑制、さらに切れ刃への被削材の凝着をおさえ加工穴内壁の面粗度を向上させる効果を奏する。このとき、前記穴の断面形状は、円形状とされるのが好ましい。そうした場合には、前記穴の断面積の増加に対して該穴あけ工具の強度低下がおさえられる。
次に、本発明の実施形態について図を参照しながら説明する。本発明を適用した第1の実施形態に係る穴あけ工具を例示する。この穴あけ工具は、あらかじめ加工された穴の仕上げ加工に用いられるリーマである。図1はこのリーマの正面図であり、図2は図1に示すリーマの先端視側面図である。
図1および図2に示すように、この実施形態のリーマ本体(2)は、略円柱状をなし、その外周には中心軸線(O)に沿って先端から後端側に延びる1条の切りくず排出溝(10)が形成される。前記切りくず排出溝(10)の先端部には、該リーマ(1)の回転方向(K)を向く壁面(4)に凹部が形成され、前記凹部に切れ刃部材(3)がろう付け固定される。そして、該リーマ(1)は、前記切れ刃部材(3)の前記回転方向(K)を向く壁面と先端側を向く先端逃げ面(2a)との交差稜線部に切れ刃(3a)が形成された1枚刃のリーマである。
前記リーマ本体(2)は、例えば炭素鋼、合金鋼、高速度鋼、工具鋼、ステンレス鋼等の鉄基金属からなり、前記切れ刃部材(3)は、例えば超硬合金、サーメット、セラミックス、ダイヤモンド、cBN等の硬質材料からなる。前記切れ刃部材(3)は、上述したろう付け固定以外に、ねじ部材、楔部材等の固定手段によって前記リーマ本体(2)へ着脱自在に固定されてもよい。あるいは、該リーマ(1)全体が超硬合金、サーメット、セラミックス等の硬質材料により一体無垢に構成されるものであってもよい。
上述のリーマ(1)は、1条の切りくず排出溝(10)が形成された中心軸線(O)方向の範囲では、該中心軸線(O)に対して直交する面で切断した断面図形が中心軸線(O)を基準として非対称な形状となり、前記断面図形の図心(G)が中心軸線(O)から大きくずれ動バランスが悪化してしまう。そこで、本実施形態のリーマ(1)では、前記図心(G)と該中心軸線(O)とを近づけるため、図2に示すように、前記断面図形において、該リーマ本体(2)の内部に、該中心軸線(O)を挟んで前記切りくず排出溝(10)の略反対側に、2つの円形状の穴(20A、20B)が該中心軸線(O)に沿う方向に設けられる。また、これら穴(20A、20B)の断面形状および形成される位置は、前記切りくず排出溝(10)の断面形状に応じて決定され、また、前記穴(20A、20B)それぞれの断面形状および形成される位置は、互いの断面形状および形成される位置に応じて適宜決定される。そして、前記穴(20A、20B)は、軸線(O)に沿う方向で少なくとも前記切りくず排出溝(10)が設けられた範囲にわたって設けられればよい。または、前記穴(20A、20B)のうち少なくとも一方がシャンク部(2B)まで延び後端面に開口してもよい。
以上の構成を有するリーマ(1)の作用効果について以下に説明する。該リーマ(1)では、上述した2つの円形状の穴(20A、20B)により、該中心軸線(O)に沿う方向で切りくず排出溝(10)の形成された範囲にわたって、該中心軸線(O)に直交する面で切断した断面の断面図形の図心(G)と中心軸線(O)とを近づけられ、該リーマ(1)の動バランスが改善されて高精度な穴あけ加工が可能となる。
しかも、該リーマ(1)の外周には切りくず排出溝(10)以外の溝が形成されないので、該リーマ(1)の剛性低下がおさえられる。そのため、加工中の切削抵抗等による撓みがおさえられ加工穴の精度が向上する。
該リーマ(1)では、リーマ本体(2)の内部に穴(20A、20B)が設けられるだけで、外周には切れ刃(3)を形成した切りくず排出溝(10)以外には溝等が一切形成されないので、外周に設けられるガイドパッド(5)は、その円周方向の設定位置を制約されない。そのため、ガイドパッド(5)は、中心軸線(O)を基準として切れ刃(3)の略対称な位置に形成され、切れ刃(3a)に生じた切削抵抗が直接的に受け止めるので、該リーマ(1)の撓みを効果的におさえる。
また、該リーマ本体(2)内部の穴(20A、20B)の少なくとも一方がシャンク部(2B)まで延び後端面に開口するように形成されれば、切削油、高圧エアー、ミスト等の切削用媒体を該リーマ(1)の先端部へ確実に十分な切削用媒体を供給することができ、加工穴の精度が向上するとともに切れ刃(3)の損傷の進展がおさえられる。
中心軸線(O)に直交する面で切断した断面図形の図心(G)と該中心軸線(O)との距離は、該リーマ(1)の切れ刃(3a)の直径をDとしたとき、0〜0.05Dの範囲に設定されることが好ましい。上述の範囲であれば該リーマ(1)の動バランスを大幅に向上することができるが、前記距離が0.05Dより大きくなると、動バランスの改善効果が得られないおそれがある。前記距離を0〜0.02Dの範囲に設定した場合には、さらに高回転時のバランスが高められ、高速切削により高能率且つ高精度な穴あけ加工が可能となる。
該リーマ本体(2)の内部に形成される穴(20A、20B)は、本実施形態に例示した個数、断面形状、設定位置に限定されるものではなく、該リーマ(1)の断面図形の図心(G)と中心軸線(O)との距離を小さくする作用を有するものであれば、個数は1つまたは3つ以上としてもよく、断面形状は長円形、多角形、自由曲線からなる形状等のなかから適宜選ばれてもよい。
次に本発明を適用した第2の実施形態のリーマを図3に例示する。第1の実施形態と同一箇所には同一符号を付している。図3はこのリーマの先端視側面図である。この実施形態のリーマ(1)の切りくず排出溝(10)および切れ刃(3a)の態様については第1の実施形態と同一であり、説明を省略する。
以下に本実施形態の特徴部分について説明する。図3に示すように、切りくず排出溝(10)が設けられた長手方向の範囲において、該中心軸線(O)に直交する面で切断した断面図形の図心(G)と該中心軸線(O)との距離を小さくするため、該リーマ本体(2)の内部には、該中心軸線(O)を挟んで切れ刃(3a)の略反対側に円形状の穴(20)が形成される。さらに、該リーマ(1)の外周には、切れ刃を有しない2つの溝(30A、40A)が設けられ、これら溝(30A、40A)は協働して前記断面図形における図心(G)を該中心軸線(O)に近づける。ここで、前記溝(30A、40A)はともに、切りくず排出溝(10)よりも断面積を小さく設定されるのが好ましい。
中心軸線(O)に沿う方向において、前記穴(20)および前記溝(30A、40A)は、該リーマ(1)の先端から少なくとも前記切りくず排出溝(10)が形成された範囲にわたって形成されるのが好ましいが、前記穴(20)については、シャンク部(2B)まで延び後端面に開口するように形成されてもよい。
以上の構成を有するリーマ(1)の作用効果については、第1の実施形態と同様に、上述の円形状の穴(20)および2つの溝(30A、40A)により、該中心軸線(O)に沿う方向で切りくず排出溝(10)の形成された範囲にわたって、該中心軸線(O)に直交する面で切断した断面の断面図形の図心(G)と中心軸線(O)との距離が小さくなるため、該リーマ(1)の動バランスが改善され高精度な穴あけ加工が可能となる。
また、該リーマ(1)では、前記断面において、2つの前記溝(30A、40A)のそれぞれの断面積は、切りくず排出溝(10)の断面積よりも小さく設定されているため、該リーマ(1)の剛性の低下がおさえられ、加工穴の精度を向上させる。
さらに、前記断面において、該リーマの図心(G)と中心軸線(O)との距離を小さくするにあたっては、前記穴(20)と2つの前記溝(30A、40A)のそれぞれの断面形状や設定位置を多種多様に組合せることが可能であるので、前記断面形状や設定位置の設計の自由度が高められる。そのため、該リーマ本体(2)の外周に付設されたガイドパッド(5)は、中心軸線(O)を基準として切れ刃(3)の略対称な位置に形成され、切れ刃(3a)に生じた切削抵抗を直接的且つ効果的に受け止めるので安定した切削を可能とする。
前記断面における断面図形の図心(G)と中心軸線(O)との距離は、該リーマ(1)の切れ刃(3)の直径をDとしたとき、0〜0.05Dの範囲に設定されることが好ましい。このような範囲に限定したのは、前記距離が0.05Dより大きなると、動バランスの改善効果が得られないおそれがあるからである。前記距離を0〜0.02Dの範囲に設定した場合には、さらに高回転時のバランスが高められ、高速切削により高能率且つ高精度な穴あけ加工が可能となる。
前記断面において、前記穴(20)の個数および断面形状は、上述した第1の実施形態と同様に種々変更可能である。また、2つの前記溝(30A、40A)の断面形状や設定位置についても、この実施形態に限定されることはなく、例えば断面形状は、L字状、円弧状、自由曲線状等の形状から適宜選択可能であり、個数についても1つまたは3つ以上から選択可能である。
次に本発明を適用した第3の実施形態のリーマを図4〜図6に例示する。第1の実施形態と同一箇所には同一符号を付している。図4はこのリーマ(1)の正面図である。図5、図6はそれぞれ図4におけるS1−S1断面図、S2−S2断面図である。
図4〜図6に示すように、このリーマ本体(2)は略円柱状をなし、先端部に小径部(6a)が設けられ、この先端部よりも後端側に段状に拡径する1つの拡径部(6b)が形成される。さらに、該リーマ本体(2)の外周には、先端から後端側に延びる1条の切りくず排出溝(10)が形成される。図5および図6に示すように、中心軸線(O)に直交する面で切断した前記小径部(6a)、前記拡径部(6b)の各断面では、異なる形状の切りくず排出溝(10)が形成されるとともに、各断面における断面図形は、中心軸線(O)を基準として非対称であり、前記断面図形の図心(G)は該中心軸線(O)からずれている。
前記切りくず排出溝(10)先端の稜線部には第1の切れ刃(3a)が形成され、前記拡径部(6b)先端の稜線部には第2の切れ刃(3b)が形成される。そして、このリーマ(1)は、先行して加工する前記第1の切れ刃(3a)と、この第1の切れ刃(3a)による加工穴をくり広げる前記第2の切れ刃(3b)からなる1枚刃の段付きリーマ(1)である。
該リーマ(1)の第1の切れ刃(3a)、第2の切れ刃(3b)は、上述した第1の実施形態と同様に、例えば超硬合金、サーメット、セラミックス、ダイヤモンド、cBN等の硬質材料から適宜選ばれる。また、これら切れ刃(3a、3b)を炭素鋼、合金鋼、高速度鋼、工具鋼、ステンレス鋼等の鉄基金属からなるリーマ本体(2)にろう付け固定したものを例示しているが、該リーマ(1)全体が上記の硬質材料から一体無垢に構成されるものであってもよい。また、これら切れ刃(3a、3b)がねじ部材、楔部材等の固定手段によって着脱自在に固定されてもよい。
図5に示すように、該リーマ(1)の先端部の小径部(6a)を中心軸線(O)に直交する面で切断した断面において、該リーマ(1)の断面図形の図心(G)と該中心軸線(O)との距離を小さくするため、該リーマ(1)の内部には、該中心軸線(O)を挟んで第1の切れ刃(3a)の反対側に円形状の穴(20A)が設けられるとともに、該リーマ(1)の外周には、切れ刃を有しない2つの溝(30A、40A)が設けられる。ここで、2つの前記溝(30A、40A)はともに、切りくず排出溝(10)よりも断面積を小さく設定されるのが好ましい。また、上述の穴(20A)および溝(30A、40A)は、該中心軸線(O)に沿う方向において、該リーマ(1)の先端から小径部(6a)に設けられた切りくず排出溝(10)の範囲にわたって形成されるのが好ましい。
同様に、図6に示すように、拡径部(6b)を中心軸線(O)に直交する面で切断した断面において、該リーマ(1)の断面図形の図心(G)と中心軸線(O)との距離を小さくするため、該リーマ(1)の内部には、該中心軸線(O)を挟んで第2の切れ刃(3b)の反対側に円形状の穴(20B)が設けられるとともに、該リーマ(1)の外周には、切れ刃を有しない2つの溝(30B、40B)が設けられる。ここで、2つの前記溝(30B、40B)は、切りくず排出溝(10)よりも断面積を小さく設定されるのが好ましい。また、上述の穴(20B)および溝(30B、40B)は、該中心軸線(O)に沿う方向で、前記拡径部(6b)に設けられた切りくず排出溝(10)の範囲にわたって設けられるのが好ましい。また、前記穴(20B)は、該リーマ(1)のシャンク部(2B)まで延び且つ後端面に開口してもよい。
図4に示すように、前記穴(20B)は、その後端側において、シャンク部(2B)の後端面に開口し中心軸線(O)に沿って形成された穴(20C)に連通し、さらに先端側において、該リーマ(1)の小径部に形成された穴(20A)に連通している。そうして、上述の3つの穴(20A、20B、20C)は、該リーマ(1)の後端面と先端面とを貫通するように形成される。
上述した該リーマ(1)内部に設けられた穴(20A、20B)、および、切れ刃を有しない溝(30A、40A、30B、40B)の前記断面における断面形状および設定位置は、図5および図6に示した形態に限定されることはなく、第1および第2の実施形態で説明したとおり適宜選択可能である。
本実施形態では、前記穴(20A、20B)および前記溝(30A、40A、30B、40B)を設けたリーマ(1)を例示したが、前記穴(20A、20B)、前記溝(30A、40A、30B、40B)のどちらか一方のみが設けられたものであってもよい。また、1つの拡径部(6b)が形成された段付きリーマに限定されるものではなく、2つ以上の拡径部が形成された段付きリーマにも適用可能であり、その場合には、各拡径部における断面図形の図心(G)と中心軸線(O)との距離を小さくするために形成される前記穴および/又は前記溝の断面形状および設定位置は、各拡径部の断面図形に応じて相違してもよい。
以上の構成を有するリーマ(1)の作用効果について以下に説明する。該リーマ(1)では、小径部(6a)および拡径部(6b)の長手方向の範囲にわたって、断面図形の図心(G)と中心軸線(O)との距離が小さくなるため、該リーマ(1)の動バランスが改善され、先行する第1の切れ刃(3a)と第2の切れ刃(3b)により段付き加工穴の精度を向上することができる。加工穴の精度とは、真直度、真円度、円筒度、同軸度、加工穴の内周壁面の表面粗さ、加工穴径の精度等のことを指す。
また、切れ刃直径が相違する小径部と拡径部のそれぞれの断面において、該リーマ本体(2)の外周に設けられた溝(30A、40A、30B、40B)は、対向する切りくず排出溝(10)の断面積よりも小さく設定されるため、該リーマ(1)の剛性低下をおさえ、加工穴の精度を向上させる。さらに、前記各断面において、該リーマの断面図形の図心(G)と中心軸線(O)との距離を小さくするにあたっては、前記穴(20A、20B)と2つの前記溝(30A、40A、30B、40B)のそれぞれの断面形状や設定位置を多種多様に組合せることが可能であるので、前記断面形状や設定位置の設計の自由度が高められる。したがって、該リーマ本体(2)の外周にガイドパッド(5)を付設する場合、このガイドパッド(5)が形成される円周方向位置を制約されないので、前記ガイドパッド(5)は、中心軸線(O)を基準として切れ刃(3)の略対称な位置に形成され、第1および第2の切れ刃(3a、3b)に生じた切削抵抗を直接的且つ効果的に受け止めるので安定した切削を可能とする。
また、該リーマ本体(2)の内部に設けられた穴(20A、20B)は、シャンク部(2B)に設けられた穴(20C)とともに、該リーマ(1)の後端面と先端面を貫通するように設けられるので、切削油、高圧エアー、ミスト等の切削用媒体を供給する給油穴として作用する。したがって、他の給油穴を設ける必要がなく、該リーマ(1)の動バランスや剛性を低下させることなく、切削点に確実に十分な切削用媒体を供給することができる。
前記断面において、前記図心(G)と中心軸線(O)との距離は、該リーマ(1)の第1の切れ刃(3a)の直径をDとしたとき、0〜0.05Dの範囲に設定されることが好ましい。上述の範囲に限定したのは、前記距離が0.05Dより大きくなると、動バランスの改善効果が得られないおそれがあるからである。前記距離を0〜0.02Dの範囲に設定した場合には、さらに高回転時のバランスが高められ、高速切削により高能率且つ高精度な穴あけ加工が可能となる。
以上に説明した実施の形態は、リーマに限定されるものではなく、1枚刃の構成を有するドリル、ボーリング工具等の穴あけ工具であってもよい。
1 穴あけ工具、リーマ
2 工具本体、リーマ本体
2a 先端逃げ面
3 切れ刃部材
3a 切れ刃、第1の切れ刃
3b 第2の切れ刃
5 ガイドパッド
6a 小径部
6b 拡径部
10 切りくず排出溝
20、20A、20B、20C 穴
30、30A、30B、40、40A、40B 溝
2 工具本体、リーマ本体
2a 先端逃げ面
3 切れ刃部材
3a 切れ刃、第1の切れ刃
3b 第2の切れ刃
5 ガイドパッド
6a 小径部
6b 拡径部
10 切りくず排出溝
20、20A、20B、20C 穴
30、30A、30B、40、40A、40B 溝
Claims (6)
- 略円柱状をなす工具本体の外周に、中心軸線(O)に沿って先端から後端側に延びる1条の切りくず排出溝が設けられ、この切りくず排出溝の先端部に切れ刃が設けられた1枚刃の穴あけ工具において、少なくとも該中心軸線(O)に沿う方向の前記切りくず排出溝が設けられた範囲で、該中心軸線(O)に直交する面で切断したときの該穴あけ工具の断面図形の図心(G)と該中心軸線(O)とを近づけるために、該中心軸線(O)に沿って先端から後端側に延びる少なくとも1つの穴および/または少なくとも1条の溝が形成されたことを特徴とする穴あけ工具。
- 略円柱状をなす工具本体の外周に、先端側の小径部から後端側に向かって段状に拡径する少なくとも1つの拡径部と、中心軸線(O)に沿って先端から後端側に延びる1条の切りくず排出溝が設けられ、この切りくず排出溝の工具回転方向(K)側を向く壁面と該工具本体の先端面とがなす交差稜線部、および、前記壁面と前記拡径部の先端側に向く端面との交差稜線部に切れ刃が形成された1枚刃の穴あけ工具において、少なくとも該中心軸線(O)に沿う方向の前記切りくず排出溝が設けられた範囲で、該中心軸線(O)に直交する面で切断したときの先端側の前記小径部および各拡径部の断面図形の図心(G)と該中心軸線(O)とを近づけるために、該中心軸線(O)に沿って先端から後端側に延びる少なくとも1つの穴および/または少なくとも1条の溝が、該中心軸線(O)に沿う方向の少なくとも前記切りくず排出溝が設けられた範囲にわたって形成されたことを特徴とする穴あけ工具。
- 該中心軸線(O)に沿う方向に、前記切りくず排出溝の形成された範囲にわたって、該中心軸線(O)に直交する面で切断した断面において、該穴あけ工具の断面図形の図心(G)と該中心軸線(O)との距離が0〜0.05D(D:該穴あけ工具の先端部に設けられた切れ刃の直径)の範囲に設定されることを特徴とする請求項1又は2に記載の穴あけ工具。
- 該中心軸線(O)に沿う方向に、前記切りくず排出溝の形成された範囲にわたって、該中心軸線(O)に直交する面で切断した断面において、該穴あけ工具の断面図形の図心(G)と該中心軸線(O)との距離が0〜0.02D(D:該穴あけ工具の先端部に設けられた切れ刃の直径)の範囲に設定されることを特徴とする請求項1又は2に記載の穴あけ工具。
- 該中心軸線(O)に沿って先端から後端側に延びる前記穴が、切削用媒体を供給するための給油穴とされることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の穴あけ工具。
- 該中心軸線(O)に沿って先端から後端側に延びる前記穴が、該中心軸線(O)に直交する面で切断した断面において、円形状とされることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の穴あけ工具。
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Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
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JP2004003904A JP2005193349A (ja) | 2004-01-09 | 2004-01-09 | 穴あけ工具 |
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JP2004003904A JP2005193349A (ja) | 2004-01-09 | 2004-01-09 | 穴あけ工具 |
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Publication Number | Publication Date |
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JP2005193349A true JP2005193349A (ja) | 2005-07-21 |
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-
2004
- 2004-01-09 JP JP2004003904A patent/JP2005193349A/ja active Pending
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