JP4897511B2 - 切削インサートおよびスローアウェイ式ドリル並びにそれを用いた切削方法 - Google Patents

切削インサートおよびスローアウェイ式ドリル並びにそれを用いた切削方法 Download PDF

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Description

本発明は、穴加工用の転削工具に装着される切削インサートおよびこれを用いるスローアウェイ式ドリル並びにそれを用いた切削方法に関する。
従来から金属等の被削材に穴加工を行う転削工具として、スローアウェイ式ドリルがある。このドリルは、略円柱状をなすドリル本体の先端部に、穴底面内周側を切削する内切刃部を備えた内刃インサートと、穴底面外周側を切削する外切刃部を備えた外刃インサートとを着脱自在にかつ内切刃部と外切刃部との回転軌跡が互いに交叉するように装着する。
ここで、前記内切刃部と外切刃部とを一つのインサート中に備えた切削インサートがある(例えば、特許文献1参照)。このような切削インサートは、内刃インサートおよび外刃インサートのいずれにも使用することができるので便利である。
一方、板状をなす基体の先端部において、基体の上面と側面との交差稜線部の一部に形成される内切刃部と基体の下面と側面との交差稜線部の一部に形成される外切刃部とを有する切削インサートがある(例えば、特許文献2参照)。このような切削インサートは、小径の穴加工用として好適である。
ところが、これらの切削インサートにて穴加工を行うと、より大きな切削抵抗がかかる厳しい切削条件下では、切刃が欠損しやすいという問題があった。
特開平11−235606号公報 特開平11−188518号公報
本発明の課題は、切刃の耐欠損性に優れる切削インサートおよびスローアウェイ式ドリル並びにそれを用いた切削方法を提供することである。
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、以下の構成からなる解決手段を見出し、本発明を完成するに至った。
(1)基体の上面と側面との交差稜線部に切刃を有し、前記切刃は、内切刃部と、この内切刃部に隣接する外切刃部とを有し、前記内切刃部および/または外切刃部は、上面視において凸状に屈曲する上面視屈曲点と、側面視において、一端側に高位コーナ部と、この高位コーナ部と略同一高さの直線状切刃部と、他端側に前記高位コーナ部より厚み方向において低位である低位コーナ部と、幅方向において前記高位コーナ部と前記低位コーナ部との間に位置する側面視屈曲点と、さらに前記直線状切刃部から前記側面視屈曲点を介して低位コーナ部に向かって傾斜した傾斜切刃部とを有するスローアウェイ式ドリル用の切削インサートであって、前記内切刃部および/または外切刃部において、前記上面視屈曲点と側面視屈曲点とを互いに重ならないように配置したことを特徴とする切削インサート。
(2)基体の先端部において、基体上面と側面との交差稜線部の一部に形成される内切刃部と、基体の下面と側面との交差稜線部の一部に形成される外切刃部とを有し、前記内切刃部は、上面視において凸状に屈曲する上面視屈曲点と、側面視において、一端側に高位コーナ部と、この高位コーナ部と略同一高さの直線状切刃部と、他端側に前記高位コーナ部より厚み方向において低位である低位コーナ部と、幅方向において前記高位コーナ部と前記低位コーナ部との間に位置する側面視屈曲点と、さらに前記直線状切刃部から側面視屈曲点を介して低位コーナ部に向かって傾斜した傾斜切刃部とを有するスローアウェイ式ドリル用の切削インサートであって、前記上面視屈曲点と側面視屈曲点とを互いに重ならないように配置したことを特徴とする切削インサート。
(3)前記内切刃部において、前記側面視屈曲点は、前記上面視屈曲点よりも前記低位コーナ部側に位置している前記(1)または(2)記載の切削インサート。
(4)側面視において、前記直線状切刃部と前記傾斜切刃部の接続部分は、曲線形状を有してなる前記(1)〜(3)いずれか記載の切削インサート。
(5)前記外切刃部の一端側に、上面視において前記基体の外方に突出する突出部を設けた前記(1)〜(4)のいずれかに記載の切削インサート。
(6)先端部に、内切刃部を備えた切削インサートと、外切刃部を備えた切削インサートとを着脱自在にかつ内切刃部と外切刃部との回転軌跡が互いに交叉するように装着したスローアウェイ式ドリルであって、前記切削インサートが前記(1),(3)〜(5)のいずれかに記載の切削インサートであることを特徴とするスローアウェイ式ドリル。
(7)先端部に、内切刃部と外切刃部とを備えた切削インサートを着脱自在に装着したスローアウェイ式ドリルであって、前記切削インサートが前記(2)〜(5)のいずれかに記載の切削インサートであることを特徴とするスローアウェイ式ドリル。
(8)前記(6)または(7)記載のスローアウェイ式ドリルを用いて、被削材を切削する切削方法であって、前記スローアウェイ式ドリルまたは前記被削材の少なくとも一方を回転させ、前記被削材に前記スローアウェイ式ドリルを近接する工程と、前記切削インサートに形成される切刃を前記被削材の表面に接触させ、前記被削材を切削する工程と、前記被削材から前記スローアウェイ式ドリルを退避させる工程と、を備えることを特徴とする切削方法。
前記(1),(2),(6)〜(8)によれば、上面視屈曲点と側面視屈曲点とを互いに重ならないように配置したので、切刃の耐欠損性に優れるという効果を有する。すなわち、前記(1),(2),(6)〜(8)のように上面視屈曲点と側面視屈曲点とを互いに重ならないように配置すると、切削時において屈曲点に集中する応力を緩和させることができ、よって優れた切刃の耐欠損性を示すことができる。
前記(3)によれば、内切刃部において、側面視屈曲点が上面視屈曲点よりも低位コーナ部側に位置しているので、内切刃部によって生成される切屑がホルダ壁面に接触しにくくなり、切屑排出性を向上させることができる。
前記(4)によれば、直線状切刃部と傾斜切刃部の接続部分は、側面視において曲線形状を有してなるので、直線状切刃部と傾斜切刃部との間が滑らかな曲線で接続され、その結果、より優れた切刃の耐欠損性を示すことができる。
前記(5)によれば、外切刃部の一端側に、上面視において基体の外方に突出する突出部を設けるので、外切刃部の被削材への食い付きを向上させ、切刃の欠損を抑制することができる。
<切削インサート>
(第1の実施形態)
以下、本発明の切削インサートにかかる第1の実施形態について図面を参照して詳細に説明する。図1は、本実施形態にかかる切削インサートを示す平面図である。図2は、図1に示す切削インサートを矢印I側から見た側面図である。図3は、図1に示す切削インサートを矢印I側から見た斜視図である。図4は、図1に示す切削インサートを矢印II側から見た側面図である。図5は、図1に示す切削インサートを矢印III側から見た斜視図である。図6は、本実施形態にかかる側面視屈曲点を示す概略説明図である。
図1〜図5に示すように、本実施形態にかかる切削インサート(以下、単に「インサート」と略す。)10は、具体的には多角形板状をなす基体において、すくい面をなす上面1と、逃げ面をなす側面2との交差稜線部に切刃3を有している。前記基体としては、例えば超硬合金、サーメット、セラミックス等の焼結体に膜を被覆したものからなる。
前記膜は、インサート10の耐摩耗性、耐欠損性等を改善するためのものであり、その組成としては、例えば炭化チタン、窒化チタン、炭窒化チタン等のチタン系化合物や、アルミナ等が挙げられる。また、前記膜は少なくとも1層であればよく、複数層で構成されていてもよい。なお、前記基体としては、このような膜を被覆したものに限定されるものではなく、膜を被覆しない超硬合金、サーメット、セラミックス等の焼結体からなるものを用いてもよい。
上面1には、切屑を処理するためのブレーカ溝7が切刃3に沿って形成されている。また、上面1の中央部には、貫通穴50が形成されている。この貫通穴50は、インサート10を後述するドリル本体に固定するためのネジ穴である。インサート10は、該貫通穴50の中心軸に対して180度回転対称な形状であり、これにより使用している一方の切刃が摩耗した際には、インサート10を180度回転させ、使用していない他方の切刃を用いることができるので経済的である。
切刃3は、内切刃部4と、この内切刃部4に隣接する外切刃部5とを有している。この内切刃部4は、ドリルホルダに装着されて加工に用いられる際に穴底面内周側を切削する。外切刃部5は、ドリルホルダに装着されて加工に用いられる際に穴底面外周側を切削する。また、外切刃部5には、その一端側に、上面視において、基体の外方に突出する突出部13が設けられている。これにより、外切刃部5の被削材への食い付きを向上させ、切刃の欠損を抑制することができる。具体的には、突出部13はR端部13a,13bを有する。R端部13a,13bとは、曲線部分の両端に連続する直線がなす角が直角に近く、60ー〜160ーの範囲のものを意味する。また、後述する図10に示すインサートのように、R端部13bに隣接して凹状切刃部を設け、突出部とその他の切刃部との段差が大きくなる構成とすることで、切屑を分断することができ、切屑排出性を向上させることができる。具体的には、前記R端部の曲線部分の両端に連続する直線のなす角が上記範囲のうち、より小さい値、すなわち鋭角とすることで、段差部が大きくなり、切屑を分断する効果を高めることができる。その結果、切屑排出性を効果的に向上させることができる。なお、外切刃部5の構成は、その一端側に突出部13を設ける構成に限定されるものではなく、用途に応じて突出部13を設けない構成であってもよい。
ここで、内切刃部4は、図1〜図3に示すように、インサート10の上面視において凸状に屈曲する上面視屈曲点6aを有している。また、内切刃部4はインサート10の側面視において、一端側に高位コーナ部4aと、この高位コーナ部4aと略同一高さの直線状切刃部4bと、他端側に高位コーナ部4aより厚み方向において低位である低位コーナ部4cと、幅方向において、高位コーナ部4aと低位コーナ部4bとの間に位置する側面視屈曲点8aと、さらに直線状切刃部4bから側面視屈曲点8aを介して低位コーナ部4cに向かって傾斜した傾斜切刃部4dとを有している。上面視屈曲点6aおよび側面視屈曲点8aは、切削抵抗のバランスを調整するためのものである。
そして、本実施形態では、上面視屈曲点6aと側面視屈曲点8aとを異なる位置、すなわち互いに重ならないように配置している。これにより、切削時において屈曲点に集中する応力を緩和させることができ、よって優れた切刃(内切刃部4)の耐欠損性を示すことができる。これに対し、上面視屈曲点6aと側面視屈曲点8aとを同じ位置、すなわち互いに重なるように配置すると、切削時において屈曲点に応力が集中しやすく、その結果、切刃(内切刃部4)の欠損が生じやすい。
具体的には、図6に示すように、内切刃部4の側面視形状を、上面視屈曲点6aから低位コーナ部4cに向かって一定区間直線状で延長した後、低位コーナ部4cに向かって傾斜させて屈曲する構成にするのが好ましい(図6の実線)。すなわち、側面視屈曲点8aが、上面視屈曲点6aよりも低位コーナ部4c側に位置した構成とするのが好ましい。これにより、内切刃部4のうち、側面視屈曲点8aが上面視屈曲点6aよりも低位コーナ部4c側に位置するので、内切刃部4によって生成される切屑がホルダ壁面に接触しにくくなり、切屑排出性を向上させることができる。具体的には、インサートをホルダに装着した時に、内切刃部4の傾斜切刃部4dがホルダ本体のより外周側に位置するよう形成されるため、ホルダ本体の外周側に向かって延びる切屑排出経路を広く確保することができる。その結果、優れた切屑排出性を発揮することができる。
なお、内切刃部4の側面視の形状を、上面視屈曲点6aから高位コーナ部4aに向かって一定区間直線状で短縮した後、低位コーナ部4cに向かって傾斜させて屈曲する構成にしてもよい。すなわち、上面視屈曲点6aが、側面視屈曲点8aよりも低位コーナ部4c側に位置した構成にしてもよい(図6の破線)。このように構成しても、上面視屈曲点6aと側面視屈曲点8a’とを互いに重ならないように配置することができる。
上面視屈曲点6aと側面視屈曲点8aとの間隔L1は、通常、0.3〜1.5mm程度、好ましくは0.5〜1.0mmであるのがよい。また、上面視屈曲点6aと側面視屈曲点8a’との間隔L2についても、前記間隔L1と同様に、通常、0.3mm以上、好ましくは0.5mm以上であるのがよい。
また、傾斜切刃部4dの傾斜角度は、切削インサート10の座面に対して5度〜15度程度であるのが良い。
また、直線状切刃部4bと傾斜切刃部4dとの接続部分は、側面視において曲線形状を有してなる。これにより、直線状切刃部4bと傾斜切刃部4dとの間が滑らかな曲線で接続されるので、より優れた切刃(内切刃部4)の耐欠損性を示すことができる。本実施形態では、直線状切刃部4bと傾斜切刃部4dとの接続部分は、円弧形状で構成される。なお、直線状切刃部4bと傾斜切刃部4dとの接続部分の構成は、前記した構成に限定されるものではなく、用途に応じて曲線形状、例えば円弧形状を有していない構成であってもよい。
ここで、本実施形態では、外切刃部5にかかる上面視屈曲点6b,側面視屈曲点8bについても、内切刃部4にかかる上面視屈曲点6a,側面視屈曲点8aと同様に、互いに重ならないように配置している。すなわち外切刃部5は、図1,図4,図5に示すように、インサート10の上面視において凸状に屈曲する上面視屈曲点6bを有している。また、外切刃部5はインサート10の側面視において、一端側に高位コーナ部5aと、この高位コーナ部5aと略同一高さの直線状切刃部5bと、他端側に高位コーナ部5aより厚み方向において低位である低位コーナ部5cと、さらに直線状切刃部5bから側面視屈曲点8bを介して低位コーナ部5cに向かって傾斜した傾斜切刃部5dとを有している。
そして、前記した上面視屈曲点6a,側面視屈曲点8aと同様に、上面視屈曲点6bと、側面視屈曲点8bとを異なる位置、すなわち互いに重ならないように配置している。これにより、外切刃部5についても前記した内切刃部4と同様の効果を奏することができる。また、直線状切刃部5bと傾斜切刃部5dとは、前記した直線状切刃部4bと傾斜切刃部4dと同様に、接続部分が、曲線、具体的には円弧形状を有してなる。よって、直線状切刃部5bと傾斜切刃部5dとの間が滑らかな曲線で接続されるので、より優れた切刃(外切刃部5)の耐欠損性を示すことができる。
また、外切刃部5の傾斜切刃部5dは、側面視屈曲点8bを介して低位コーナ部5cに向かって傾斜する形状をなす。具体的には、図4に示すように、上方に向かって円弧状に凹ませた形状で構成することができる。このように、外切刃部5の傾斜切刃部5dを凹状とすることで、より一層切刃の耐欠損性を向上させることができる。なお、本実施形態にかかる外切刃部5の傾斜切刃部5dは、これに限定されず、低位コーナ部5cに向かって直線状に傾斜する形状であっても構わない。その他の構成は、前記した上面視屈曲点6a,側面視屈曲点8aと同様であるので、説明を省略する。
なお、本実施形態にかかる内切刃部4,外切刃部5は、いずれも上面視屈曲点6a,6bと、側面視屈曲点8a,8bとを有し、上面視屈曲点6a,6bと、側面視屈曲点8a,8bとが互いに重ならないように配置された構成であるが、本発明はこれに限定されるものではない。すなわち、内切刃部4,外切刃部5のうち、少なくとも一方の切刃部において、上面視屈曲点および側面視屈曲点を有し、かつ上面視屈曲点と側面視屈曲点とが互いに重ならないように配置された構成であればよい。
(第2の実施形態)
次に、本発明のインサートにかかる第2の実施形態について図面を参照して詳細に説明する。図7は、本実施形態にかかる切削インサートを示す斜視図である。なお、図7においては、前述した図1〜図6と同一の構成部分には同一の符号を付して説明は省略する。
本実施形態にかかるインサートは、具体的には多角形板状をなす基体の先端部において、基体の上面と側面との交差稜線部の一部に形成される内切刃部と、基体の下面と側面との交差稜線部の一部に形成される外切刃部とを有する単一刃構成のインサートである。すなわち、図7に示すように、本実施形態にかかるインサート20は、多角形板状をなす基体の先端部において、互いに背面の位置関係を有するすくい面21a,21bを有する。また、その先端部には、逃げ面をなす側面22a,22bを有する。そして、すくい面21aと側面22aとの交差稜線部に内切刃部24を、すくい面21bと側面22bとの交差稜線部に外切刃部25をそれぞれ有している。なお、内切刃部24は、穴底面内周側を切削する切刃であり、外切刃部25は、穴底面外周側を切削する切刃に相当する。
すくい面21a,21bには、切屑を処理するためのブレーカ溝27が内切刃部24および外切刃部25に沿って形成されている(すくい面21b側は不図示)。また、外切刃部25には、その一端側に突出部13が設けられている。そして、基体の略中央には、貫通穴55が形成されている。この貫通穴55は、インサート20を後述するドリル本体に固定するためのネジ穴である。また、貫通穴55は、基体のうち外切刃部25側に位置するよう構成されている。これにより、以下に説明するドリル本体に装着した際に、内切刃部24のすくい面21aの回転方向側に非常に大きな切屑排出用ポケットを確保することができる。そのため、切屑排出性の向上が図れる。
ここで、内切刃部24は、インサート20の上面視において凸状に屈曲する上面視屈曲点26を有している。また、内切刃部24はインサート20の側面視において、一端側に高位コーナ部24aと、この高位コーナ部24aと略同一高さの直線状切刃部24bと、他端側に高位コーナ部24aより厚み方向において低位である低位コーナ部24cと、幅方向において高位コーナ部24aと低位コーナ部24bとの間に位置する側面視屈曲点28と、さらに直線状切刃部24bから側面視屈曲点28を介して低位コーナ部24cに向かって傾斜した傾斜切刃部24dとを有している。なお、ここでいう低位とは、図7の紙面上、下方を意味する。
そして、上面視屈曲点26と側面視屈曲点28とを異なる位置、すなわち互いに重ならないように配置している。これにより、切削時において屈曲点に集中する応力を緩和させることができ、よって優れた切刃(内切刃部24)の耐欠損性を示すことができる。これに対し、上面視屈曲点26と側面視屈曲点28とを同じ位置、すなわち互いに重なるように配置すると、切削時において屈曲点に応力が集中しやすく、その結果、切刃(内切刃部24)の欠損が生じやすい。
また、傾斜切刃部24dの傾斜角度は、切削インサート20の座面に対して5度〜15度程度であるのが良い。
なお、本実施形態のように、内切刃部24と外切刃部25とを兼備する単一刃構成のものの場合、図7に示すように、内切刃部24と外切刃部25の高さは、インサート20全体の厚みの略中央部分に配置され、各々の高さが大きく異ならないようにするのが良い。これにより、インサート20全体の厚みが大きくなるのを抑制でき、ドリル本体の機械的強度の低下を抑制することができる。したがって、傾斜切刃部24dの傾斜角度は、上述の範囲に加えて、傾斜切刃部24dがインサート20全体の厚みの1/4の範囲内に収まるようにするのがよい。それによって、ドリル本体の機械的強度の低下を抑制するとともに、切刃の耐欠損性も確保できるため、長時間に渡って安定した加工が可能となる。なお、ここでいうインサート20全体の厚みとは、側面視において、インサート20の厚み方向における最大の寸法のことである。
また、直線状切刃部24bと傾斜切刃部24dの接続部分は、曲線形状を有してなる。よって、直線状切刃部24bと傾斜切刃部24dとの間が滑らかな曲線で接続されるので、より優れた切刃(内切刃部24)の耐欠損性を示すことができる。さらに、側面視屈曲点28を有することにより、内切刃部24のすくい面21a上方の空間が確保されるので、切屑処理が損なわれることもない。その他の構成は、前記した第1の実施形態にかかるインサート10と同様であるので、説明を省略する。
<スローアウェイ式ドリル>
(第1の実施形態)
次に、本発明のスローアウェイ式ドリルにかかる第1の実施形態について図面を参照して詳細に説明する。図8は、本実施形態にかかるスローアウェイ式ドリルを示す側面図である。図9は、本実施形態にかかるスローアウェイ式ドリルを示す概略正面図である。図10は、本実施形態にかかるインサートによる切削状態を示す概略説明図である。なお、図10中、破線で示すインサートは、実線で示すインサートが180度回転した状態を示している。また、図8〜図10においては、前述した図1〜図7と同一の構成部分には同一の符号を付して説明は省略する。
本実施形態にかかるスローアウェイ式ドリルは、前記した第1の実施形態にかかるインサート10を2つ装着したものである。すなわち、図8に示すように、本実施形態にかかるスローアウェイ式ドリル30は、2つのインサート10のうち、一方を内刃インサート10a,他方を外刃インサート10bとして一本のドリル本体31の先端部に装着したものである。
具体的には、ドリル本体31は略円柱状をなし、その後端側にドリル本体31を工作機械に固定するためのシャンク部32を有している。また、ドリル本体31の先端側には、切屑を先端からシャンク部32側へ排出するための切屑排出溝33が長手方向に沿って螺旋状に形成されている。そして、ドリル本体31の先端部には、内刃インサート10a,外刃インサート10bを取り付けるためのポケット34,35がそれぞれ設けられている。
ポケット34,35は、いずれもドリル本体31の軸線方向先端側が開放されてなる。ポケット34は、内刃インサート10aを着脱自在に装着するためのものであり、ドリル本体31の径方向内側に形成される。ポケット35は、外刃インサート10bを着脱自在に装着するためのものであり、ドリル本体31の径方向外側に形成される。さらに、ポケット35は、穴底面外周側も開放されてなる。したがって、穴底面内周側を切削する内刃インサート10aがドリル本体31の径方向内側に、穴底面外周側を切削する外刃インサート10bがドリル本体31の径方向外側に、それぞれ取付け方向を変えてポケット34,35に装着される。
すなわち、図9,図10に示すように、内刃インサート10aは内切刃部4が、外刃インサート10bは外切刃部5が、それぞれドリル本体31の軸方向先端から突出するように、かつ軸方向先端側における内切刃部4と外切刃部5との回転軌跡が互いに交叉し、ドリル本体31の軸心36から側面37までをカバーするように、ポケット34,35にそれぞれ装着される。なお装着は、図8に示すように、内刃インサート10a,外刃インサート10bの貫通穴50にそれぞれ締付けネジ51を挿通し、該締付けネジ51の先端側をポケット34,35に形成されたネジ穴(不図示)に螺合して行う。
このようにして装着された内刃インサート10a,外刃インサート10bは、図9、図10に示すように、両者の上面1を同一回転方向(矢印A方向)に向けている。すなわち、内刃インサート10aの上面1と、外刃インサート10bの上面1とは180度反対方向を向いた状態になっている。そして、ドリル本体31を、該ドリル本体31の軸心36を中心に回転させて、内刃インサート10a,外刃インサート10bにて被削材に穴加工を行う。
ここで、インサート10における内切刃部4,外切刃部5は、前記した通り、それぞれ上面視屈曲点6a,6bと、側面視屈曲点8a,8bとを有し、上面視屈曲点6a,6bと、側面視屈曲点8a,8bとが互いに重ならないように配置されている。これにより、切削時において屈曲点に集中する応力が緩和され、よって優れた切刃(内切刃部4,外切刃部5)の耐欠損性を示すことができる。その結果、加工面精度の高い切削加工が可能となる。
(第2の実施形態)
次に、本発明のスローアウェイ式ドリルにかかる第2の実施形態について図面を参照して詳細に説明する。図11は、本実施形態にかかるスローアウェイ式ドリルの先端部付近を示す部分拡大斜視図である。なお、図11においては、前述した図1〜図10と同一の構成部分には同一の符号を付して説明は省略する。
本実施形態にかかるスローアウェイ式ドリルは、前記した第2の実施形態にかかるインサート20を装着したものである。すなわち、図11に示すように、本実施形態にかかるスローアウェイ式ドリル40は、インサート20を一本のドリル本体41の先端部に装着したものである。
具体的には、ドリル本体41は略円柱状をなし、その先端部には、インサート20を着脱自在に装着するためのポケット44が設けられている。そして、インサート20の貫通穴55(図7参照)に締付けネジを挿通し、該締付けネジの先端側をポケット44に形成されたネジ穴56に螺合して、インサート20をポケット44に装着する。そして、ドリル本体41を、該ドリル本体41の軸心を中心に回転させて、内切刃部24,外切刃部25にて被削材に穴加工を行う。
ここで、インサート20における内切刃部24は、前記した通り、上面視屈曲点26と側面視屈曲点28とを有し、上面視屈曲点26と側面視屈曲点28とが互いに重ならないように配置されている。これにより、切削時において屈曲点に集中する応力が緩和され、よって優れた切刃(内切刃部24)の耐欠損性を示すことができる。その他の構成は、前記した第1の実施形態にかかるスローアウェイ式ドリル30と同様であるので、説明を省略する。
最後に、上述したスローアウェイ式ドリルを用いた本発明に係る被削材の切削方法について説明する。
本発明の被削材の切削方法は、上述した本発明に係るスローアウェイ式ドリルを用いて、被削材を切削する。具体的には、スローアウェイ式ドリルまたは被削材の少なくとも一方を回転させ、被削材に前記スローアウェイ式ドリルを近接する工程と、切削インサートに形成される切刃を被削材の表面に接触させ、被削材を切削する工程と、被削材からスローアウェイ式ドリルを退避させる工程と、を備えてなる。これにより、ドリルの耐欠損性が向上し、優れた加工精度を示すことができる。その結果、より厳しい切削条件や難易度の高い被削材に対しても良好な仕上げ面を得ることができる。また、長時間に渡って安定した加工が可能となる。
以上、本発明にかかるいくつかの実施形態について示したが、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で変更や改良したものにも適用できることは言うまでもない。例えば、前記した実施形態にかかるインサートにおいて、傾斜切刃部と低位コーナ部とは連続して形成されているが、低位コーナ部と略同一高さの直線状切刃部を介して傾斜切刃部と低位コーナ部とが接続されていてもよい。
本発明の第1の実施形態にかかる切削インサートを示す平面図である。 図1に示す切削インサートを矢印I側から見た側面図である。 図1に示す切削インサートを矢印I側から見た斜視図である。 図1に示す切削インサートを矢印II側から見た側面図である。 図1に示す切削インサートを矢印III側から見た斜視図である。 本発明の第1の実施形態にかかる側面視屈曲点を示す概略説明図である。 本発明の第2の実施形態にかかる切削インサートを示す斜視図である。 本発明の第1の実施形態にかかるスローアウェイ式ドリルを示す側面図である。 本発明の第1の実施形態にかかるスローアウェイ式ドリルを示す概略正面図である。 本発明の第1の実施形態にかかるインサートによる切削状態を示す概略説明図である。 本発明の第2の実施形態にかかるスローアウェイ式ドリルの先端部付近を示す部分拡大斜視図である
符号の説明
1 上面
2,22a,22b 側面
3 切刃
4,24 内切刃部
4a,5a,24a 高位コーナ部
4b,5b,24b 直線状切刃部
4c,5c,24c 低位コーナ部
4d,5d,24d 傾斜切刃部
5,25 外切刃部
6a,6b,26 上面視屈曲点
7,27 ブレーカ溝
8a,8b,28 側面視屈曲点
10,20 切削インサート
10a 内刃インサート
10b 外刃インサート
13 突出部
13a,13b R端部
21a,21b すくい面
30,40 スローアウェイ式ドリル
31,41 ドリル本体
32 シャンク部
33 切屑排出溝
34,35,44 ポケット
36 軸心
37 側面
50,55 貫通穴
51,56 締付けネジ

Claims (8)

  1. 基体の上面と側面との交差稜線部に切刃を有し、
    前記切刃は、内切刃部と、この内切刃部に隣接する外切刃部とを有し、
    前記内切刃部および/または外切刃部は、上面視において凸状に屈曲する上面視屈曲点と、側面視において、一端側に高位コーナ部と、この高位コーナ部と略同一高さの直線状切刃部と、他端側に前記高位コーナ部より厚み方向において低位である低位コーナ部と、幅方向において前記高位コーナ部と前記低位コーナ部との間に位置する側面視屈曲点と、さらに前記直線状切刃部から前記側面視屈曲点を介して低位コーナ部に向かって傾斜した傾斜切刃部とを有するスローアウェイ式ドリル用の切削インサートであって、
    前記内切刃部および/または外切刃部において、前記上面視屈曲点と側面視屈曲点とを互いに重ならないように配置したことを特徴とする切削インサート。
  2. 基体の先端部において、基体の上面と側面との交差稜線部の一部に形成される内切刃部と、基体の下面と側面との交差稜線部の一部に形成される外切刃部とを有し、
    前記内切刃部は、上面視において凸状に屈曲する上面視屈曲点と、側面視において、一端側に高位コーナ部と、この高位コーナ部と略同一高さの直線状切刃部と、他端側に前記高位コーナ部より厚み方向において低位である低位コーナ部と、幅方向において前記高位コーナ部と前記低位コーナ部との間に位置する側面視屈曲点と、さらに前記直線状切刃部から側面視屈曲点を介して低位コーナ部に向かって傾斜した傾斜切刃部とを有するスローアウェイ式ドリル用の切削インサートであって、
    前記上面視屈曲点と側面視屈曲点とを互いに重ならないように配置したことを特徴とする切削インサート。
  3. 前記内切刃部において、前記側面視屈曲点は、前記上面視屈曲点よりも前記低位コーナ部側に位置している請求項1または2記載の切削インサート。
  4. 側面視において、前記直線状切刃部と前記傾斜切刃部の接続部分は、曲線形状を有してなる請求項1〜3いずれか記載の切削インサート。
  5. 前記外切刃部の一端側に、上面視において前記基体の外方に突出する突出部を設けた請求項1〜4のいずれかに記載の切削インサート。
  6. 先端部に、内切刃部を備えた切削インサートと、外切刃部を備えた切削インサートとを着脱自在にかつ内切刃部と外切刃部との回転軌跡が互いに交叉するように装着したスローアウェイ式ドリルであって、
    前記切削インサートが請求項1,3〜5のいずれかに記載の切削インサートであることを特徴とするスローアウェイ式ドリル。
  7. 先端部に、内切刃部と外切刃部とを備えた切削インサートを着脱自在に装着したスローアウェイ式ドリルであって、
    前記切削インサートが請求項2〜5のいずれかに記載の切削インサートであることを特徴とするスローアウェイ式ドリル。
  8. 請求項6または7記載のスローアウェイ式ドリルを用いて、被削材を切削する切削方法であって、
    前記スローアウェイ式ドリルまたは前記被削材の少なくとも一方を回転させ、前記被削材に前記スローアウェイ式ドリルを近接する工程と、
    前記切削インサートに形成される切刃を前記被削材の表面に接触させ、前記被削材を切削する工程と、
    前記被削材から前記スローアウェイ式ドリルを退避させる工程と、
    を備えることを特徴とする切削方法。
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