JP2005187352A - シクロヘキサンカルバルデヒドの製造方法 - Google Patents

シクロヘキサンカルバルデヒドの製造方法

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Abstract

【課題】シクロヘキサンカルバルデヒドの工業的に容易で、且つ有利な製造方法を提供すること。
【解決手段】(A)ベンズアルデヒドジアルキルアセタールを、水素化触媒存在下、シクロヘキサンカルバルデヒドジアルキルアセタールに核水素化する工程、及び(B)(A)工程で得られたシクロヘキサンカルバルデヒドジアルキルアセタールを、シクロヘキサンカルバルデヒドに加水分解する工程を含有することを特徴とするシクロヘキサンカルバルデヒドの製造方法。



Description

本発明は、医薬、農薬、高分子化合物等の原料として有用なシクロヘキサンカルバルデヒドの製造方法に関する。
従来、シクロヘキサンカルバルデヒドの製造方法としては、(1)3−シクロヘキセン−1−カルバルデヒドを水素化する方法(例えば、特許文献1、非特許文献1参照)、(2)シクロヘキサンメタノールを脱水素化する方法(例えば、非特許文献2参照)、(3)シクロヘキセンをヒドロホルミル化する方法(例えば、非特許文献3参照)等が提案されている。
しかしながら、(1)法は、通常、水素化原料の3−シクロヘキセン−1−カルバルデヒドの製造に非常に毒性の強いアクロレインを使用する、(2)法は、原料シクロヘキサンメタノールの入手が困難である、(3)法は、毒性の高い一酸化炭素及び高価な触媒を使用する等の問題点を有し、工業的に十分に満足できる製造方法とは言い難いのが現状である。
特開昭62−22739 J.Org.Chem.,26,4678(1961) J.Amer.Chem.Soc.,55,2993(1933) J.Amer.Chem.Soc.,103,7594(1981)
本発明は、工業的に容易に、しかも有利にシクロヘキサンカルバルデヒドを製造する方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記課題を達成すべく鋭意検討の結果、シクロヘキサンカルバルデヒドを製造するために従来行われてきた方法とは全く異なる方法を採用し、ベンズアルデヒドジアルキルアセタールを核水素化し、次いで、得られた核水素化物を、無触媒、高温高圧水中で、加水分解することにより、シクロヘキサンカルバルデヒドを極めて容易に製造することができることを見出し、かかる知見に基づいて本発明を完成するに至った。
即ち、本発明は、以下のシクロヘキサンカルバルデヒドの製造方法を提供するものである。
項1 (A)一般式(1)
Figure 2005187352
[式中、Rは、水素原子又は炭素数1〜4の直鎖状もしくは分枝状アルキル基、nは1〜5の整数を表し、n≧2の場合、これらのアルキル基のうち隣接する2個のアルキル基が、相互に結合してそれらが結合するベンゼン環と共にアルキル基を有してもよいインダン環又はテトラリン環を形成してもよい。Rは、同一又は異なって、それぞれ炭素数1〜18の直鎖状若しくは分枝状のアルキル基を表し、これらのアルキル基は、相互に結合してそれらが結合する酸素と共にアルキル基を有してもよい1,3−ジオキサン環又は1,3−ジオキソラン環を形成してもよい。]
で表されるベンズアルデヒドジアルキルアセタールを、水素化触媒存在下、一般式(2)
Figure 2005187352
[式中、R、R及びnは、一般式(1)と同義である。]
で表されるシクロヘキサンカルバルデヒドジアルキルアセタールに核水素化する工程、及び(B)(A)工程で得られたシクロヘキサンカルバルデヒドジアルキルアセタールを、一般式(3)
Figure 2005187352
[式中、R及びnは、一般式(1)と同義である。]
で表されるシクロヘキサンカルバルデヒドに加水分解する工程を含有することを特徴とするシクロヘキサンカルバルデヒドの製造方法。
項2 Rが水素又はメチル基である上記項1に記載のシクロヘキサンカルバルデヒドの製造方法。
項3 (A)工程で用いる水素化触媒が、ルテニウム触媒である上記項1又は2に記載のシクロヘキサンカルバルデヒドの製造方法。
項4 (B)工程の加水分解を高温高圧水中で行う上記項1〜3のいずれかに記載のシクロヘキサンカルバルデヒドの製造方法。
項5 上記項4に記載の加水分解を、触媒を用いずに行う上記項4に記載のシクロヘキサンカルバルデヒドの製造方法。
項6 一般式(2)で表されるシクロヘキサンカルバルデヒドジアルキルアセタールを高温高圧水中で加水分解することを特徴とする一般式(3)で表されるシクロヘキサンカルバルデヒドの製造方法。
項7 上記項6に記載の加水分解を、触媒を用いずに行う上記項6に記載のシクロヘキサンカルバルデヒドの製造方法。
項8 一般式(2)においてRが、水素又はメチル基である上記項6又は7に記載のシクロヘキサンカルバルデヒドの製造方法。
本発明によれば、ベンズアルデヒドジアルキルアセタールからシクロヘキサンカルバルデヒドを工業的に容易に、しかも有利に製造することができる。
(A)核水素化工程
本発明の核水素化原料となる一般式(1)で表される非環状又は環状のベンズアルデヒドジアルキルアセタールとしては、市販されているものを使用できる他、p−トルエンスルホン酸、硫酸、リン酸等の酸触媒存在下、対応する脂肪族一価アルコール成分、又は1,2−又は1,3−脂肪族二価アルコール成分とベンズアルデヒド成分とをアセタール化反応させることにより容易に製造できる。上記1,2−又は1,3−脂肪族二価アルコール成分は、アセタール化反応に関与しない水酸基を分子内に1個以上有していてもよい。
一般式(1)においてRとしては、水素原子、メチル基、エチル基、n−プロピル基、iso−プロピル基、n−ブチル基、iso−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基等の炭素数1〜4の直鎖状もしくは分枝状アルキル基が例示され、これらのうち特に、水素原子、メチル基が好ましい。また、n=2〜5の場合、Rは、同一でも異なっていてもよく、これらのアルキル基のうち隣接する2個のアルキル基が、相互に結合してそれらが結合するベンゼン環と共にアルキル基を有してもよいテトラリン環又はインダン環を形成していてもよい。
一般式(1)においてRとしては、炭素数1〜18の直鎖状若しくは分枝状のアルキル基が挙げられ、これらのアルキル基は、相互に結合してそれらが結合する酸素と共にアルキル基を有してもよい1,3−ジオキサン環又は1,3−ジオキソラン環を形成してもよい。
上記脂肪族一価アルコール成分としては、具体的には、メタノール、エタノール、n−プロピルアルコール、iso−プロピルアルコール、n−ブチルアルコール、iso−ブチルアルコール、n−ペンチルアルコール、n−ヘキシルアルコール、n−ヘプチルアルコール、n−オクチルアルコール、2−エチル−ヘキシルアルコール、n−ノニルアルコール、n−デシルアルコール、n−ウンデシルアルコール、n−ドデシルアルコール等が例示され、また、1,2−又は1,3−脂肪族二価アルコール成分としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、2,3−ブタンジオール、2−メチル−2,3−ブタンジオール、2,3−ジメチル−2,3−ブタンジオール、1,3−プロパンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、グリセリン等が例示される。これらのうち特にメタノール、エタノール、n−ブチルアルコール、エチレングリコール、プロピレングリコールが好ましい。
上記一般式(1)で表される非環状又は環状ベンズアルデヒドジアルキルアセタールとしては、具体的には、ベンズアルデヒドジメチルアセタール、ベンズアルデヒドジエチルアセタール、ベンズアルデヒドジ−n−プロピルアセタール、ベンズアルデヒドジ−iso−プロピルアセタール、ベンズアルデヒドジ−n−ブチルアセタール、ベンズアルデヒドジ−iso−ブチルアセタール、ベンズアルデヒドジ−sec−ブチルアセタール、ベンズアルデヒドジペンチルアセタール、ベンズアルデヒドジヘキシルアセタール、ベンズアルデヒドジヘプチルアセタール、ベンズアルデヒドジ−n−オクチルアセタール、ベンズアルデヒドジ−2−エチルヘキシルアセタール、4−メチル−ベンズアルデヒドジメチルアセタール、4−メチル−ベンズアルデヒドジエチルアセタール、4−メチル−ベンズアルデヒドジ−n−プロピルアセタール、4−メチル−ベンズアルデヒドジ−iso−プロピルアセタール、4−メチル−ベンズアルデヒドジ−n−ブチルアセタール、4−メチル−ベンズアルデヒドジ−iso−ブチルアセタール、4−メチル−ベンズアルデヒドジ−sec−ブチルアセタール、4−メチル−ベンズアルデヒドジペンチルアセタール、4−メチル−ベンズアルデヒドジヘキシルアセタール、4−メチル−ベンズアルデヒドジヘプチルアセタール、4−メチル−ベンズアルデヒドジ−n−オクチルアセタール、4−メチル−ベンズアルデヒドジ−2−エチルヘキシルアセタール等の非環状アセタールの他、ベンズアルデヒドエチレングリコールアセタール、ベンズアルデヒドプロピレングリコールアセタール、ベンズアルデヒド−1,2−ジメチルエチレングリコールアセタール、ベンズアルデヒド−1,1,2−トリメチルエチレングリコールアセタール、ベンズアルデヒド−1,1,2,2−テトラメチルエチレングリコールアセタール、ベンズアルデヒドヒドロキシメチルエチレングリコールアセタール、ベンズアルデヒド−1,3−プロパンジオールアセタール、ベンズアルデヒド−2−メチル−1,3−プロパンジオールアセタール、ベンズアルデヒド−2−ヒドロキシ−1,3−プロパンジオールアセタール、4−メチル−ベンズアルデヒドエチレングリコールアセタール、4−メチル−ベンズアルデヒドプロピレングリコールアセタール、4−メチル−ベンズアルデヒド−1,2−ジメチルエチレングリコールアセタール、4−メチル−ベンズアルデヒド−1,1,2−トリメチルエチレングリコールアセタール、4−メチル−ベンズアルデヒド−1,1,2,2−テトラメチルエチレングリコールアセタール、4−メチル−ベンズアルデヒドヒドロキシメチルエチレングリコールアセタール、4−メチル−ベンズアルデヒド−1,3−プロパンジオールアセタール、4−メチル−ベンズアルデヒド−2−メチル−1,3−プロパンジオールアセタール、4−メチル−ベンズアルデヒド−2−ヒドロキシ−1,3−プロパンジオールアセタール等の5又は6員の環状アセタールが例示される。これらのうち特にベンズアルデヒドジメチルアセタール、ベンズアルデヒドジエチルアセタール、ベンズアルデヒドジ−n−ブチルアセタール、ベンズアルデヒドエチレングリコールアセタール、ベンズアルデヒドプロピレングリコールアセタールが好ましい。
(A)工程では、通常、核水素化反応に使用される金属系触媒が用いられる。該金属系触媒としては、ニッケル、コバルト、銅、ロジウム、ルテニウム、白金、パラジウム、イリジウム及びオスミウムからなる群から選ばれる少なくとも1種の金属系触媒が用いられる。具体的には、ニッケル、コバルト、銅、ロジウム、ルテニウム、白金、パラジウム、イリジウム、オスミウム等の0価の金属;これらの金属の硝酸塩、硫酸塩、酢酸塩、塩化物、臭化物、酸化物、水酸化物等の各種無機化合物;アセチルアセトナート化合物等の各種有機化合物;アミン錯体、ホスフィン錯体、カルボニル化合物等の各種錯体化合物等の金属化合物が例示される。
上記金属系触媒は、そのまま反応系で使用することもできるが、ラネー型触媒や担体担持型触媒として使用することが好ましい。
これら金属系触媒のなかでも、ルテニウム系触媒、パラジウム系触媒、ラネーニッケル触媒、安定化ニッケル触媒等が好ましく、特にルテニウム系触媒が好ましい。
担体担持型触媒としては、従来公知或いは市販されているものでもよく、ベンゼン環を核水素化できる触媒であれば特に限定されない。該担体担持型触媒に使用される坦体としては、珪藻土、軽石、活性炭、グラファイト、シリカゲル、アルミナ、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、酸化チタン、ゼオライト、炭酸カルシウム、硫酸バリウム等が例示され、通常これらの1種または2種以上の組み合わせで使用することができる。
尚、上記担体担持型触媒の調製方法としては、含浸法、共沈法等の従来公知の方法が採用できる。これらの担体担持型触媒の活性化方法としては、特に限定されないが、通常は使用する前に還元して活性化することができる。
該担体担持型触媒の金属成分の担持量は、特に限定されないが、触媒の総重量に対して、金属分として、通常、0.1〜15重量%程度、好ましくは0.5〜10重量%である。担持量が0.1重量%未満では触媒重量当たりの活性が低下し、触媒を多量に使用する必要が生じ設備的にも経済的にも不利である。また坦持量が15重量%を超えても、担持した金属量に見合う反応速度の向上は得られず好ましくない。
これら水素化触媒の形態は特に限定されず、選択される反応方式に応じて粉末状、成型触媒など適宜選択して使用される。粉末状の触媒は、通常、回分あるいは連続の懸濁床の水素化反応に用いられ、成型触媒は、固定床連続式の水素化反応に使用される。また、成型触媒としては、使用する反応器の大きさにより適宜選択されるが、通常は直径2〜6mm、高さ2〜8mmの範囲の円柱状が好ましい。
水素化反応に用いられる坦体坦持型触媒の使用量は、ベンズアルデヒドジアルキルアセタールに対して、金属分を基準として、0.005〜2重量%、好ましくは0.01〜1重量%の範囲が反応速度と経済性の点から好ましい。
ラネーニッケル触媒又は安定化ニッケル触媒を用いる場合、その使用量は、ベンズアルデヒドジアルキルアセタールに対して、0.01〜20重量%程度、好ましくは0.05〜10重量%程度の範囲が反応速度と経済性の点から好ましい。
本発明の核水素化反応は、無溶媒、溶媒中のいずれでも行うことができるが、特に無溶媒での反応は、反応後に触媒を除去するのみで生成物を単離できるために好ましい。
溶媒中で行う場合に使用可能な溶媒としては、核水素化反応に悪影響を与えない限り特に限定されない。
上記溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、n−プロピルアルコール、iso−プロピルアルコール、n−ブチルアルコール、iso−ブチルアルコール、sec−ブチルアルコール、tert−ブチルアルコール、ペンタノール、ヘキサノール、ヘプタノール、オクタノール、2−エチルヘキサノール、2−メトキシエタノール、2−エトキシエタノール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、シクロヘキサノール、メチルシクロヘキサノール等のアルコール系溶媒、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル、メチルtert−ブチルエーテル、ジメトキシエタン、ジエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、テトラヒドロフラン、1,3−ジオキソラン、ジオキサン等のエーテル系溶媒、ペンタン、n−ヘキサン、n−ヘプタン、n−オクタン、2−エチルヘキサン、n−ノナン、n−デカン、シクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、1,2−ジメチルシクロヘキサン、1,3−ジメチルシクロヘキサン、1,4−ジメチルシクロヘキサン、1,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,2,4−トリメチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロオクタン、デカリン等の脂肪族炭化水素系溶媒、酢酸エチル、酢酸−n−プロピル、酢酸−iso−プロピル、酢酸−n−ブチル、酢酸−iso−ブチル、酢酸−sec−ブチル、酢酸−tert−ブチル、酢酸ヘキシル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸−n−プロピル、プロピオン酸−iso−プロピル、プロピオン酸−n−ブチル、プロピオン酸−iso−ブチル、プロピオン酸−sec−ブチル、プロピオン酸−tert−ブチル、プロピオン酸ヘキシル等のエステル系溶媒、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、炭酸ジメチル、炭酸ジエチル等の炭酸エステル系溶媒、γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、δ−バレロラクトン、ε−カプロラクトン等のラクトン系溶媒等が挙げられる。これらの溶媒は、1種単独で又は2種以上組み合わせて用いることができる。
上記溶媒の使用量は、反応条件、反応形態等に応じて任意に選択することができる。
反応圧力としては、反応系の水素分圧で、通常、0.1〜30MPa、好ましくは0.1〜10MPa程度の範囲である。低圧では反応に必要以上の長時間を要し、また高圧では反応速度は上昇するが、あまり高すぎても顕著な有意性は認められず、経済的に不利である。
水素化反応の反応温度としては、通常、20〜200℃、好ましくは40〜150℃である。この温度範囲より低い場合には十分な反応速度が得られず、高い場合には副反応や分解反応を伴うため収率が低下する傾向が見られ、経済的にも好ましくない。
反応時間は、触媒量や諸条件によって異なるが、通常0.5〜50時間程度、工業的な観点からは1〜20時間になるように条件などを適宜選択することが好ましい。
本発明の反応方式としては、特に限定されず、水素化触媒を反応溶液中に分散させて行う液相懸濁床による方法、水素化触媒を反応器中に固定させ、これに反応液を作用させる固定床流通反応による方法などが採用される。
反応終了後は、濾過、遠心分離等の従来公知の方法を用いて触媒を除去することによりシクロヘキサンカルバルデヒドジアルキルアセタールを得ることができる。特に精製せずに次工程の加水分解に使用できるが、必要であれば更に蒸留等により精製して使用することもできる。
回収した溶媒及び触媒は、循環使用が可能であり、極めて経済的である。
上記条件で(A)工程の核水素化反応を実施することにより、原料のベンズアルデヒドジアルキルアセタールのベンゼン環が水素化され、シクロヘキサンカルバルデヒドジアルキルアセタールが得られる。以下に説明する(B)工程では得られたシクロヘキサンカルバルデヒドジアルキルアセタールを加水分解することによりアセタール部分が加水分解され、目的とするシクロヘキサンカルバルデヒドが得られる。
(B)加水分解工程
本発明に係る一般式(3)で表されるシクロヘキサンカルバルデヒドは、一般式(2)で表される非環状又は環状シクロヘキサンカルバルデヒドジアルキルアセタールを、加水分解することにより製造することができる。
本発明に用いられるシクロヘキサンカルバルデヒドジアルキルアセタールとしては、具体的には、シクロヘキサンカルバルデヒドジメチルアセタール、シクロヘキサンカルバルデヒドジエチルアセタール、シクロヘキサンカルバルデヒドジ−n−プロピルアセタール、シクロヘキサンカルバルデヒドジ−iso−プロピルアセタール、シクロヘキサンカルバルデヒドジ−n−ブチルアセタール、シクロヘキサンカルバルデヒドジ−iso−ブチルアセタール、シクロヘキサンカルバルデヒドジ−sec−ブチルアセタール、シクロヘキサンカルバルデヒドジペンチルアセタール、シクロヘキサンカルバルデヒドジヘキシルアセタール、シクロヘキサンカルバルデヒドジヘプチルアセタール、シクロヘキサンカルバルデヒドジ−n−オクチルアセタール、シクロヘキサンカルバルデヒドジ−2−エチルヘキシルアセタール、4−メチル−シクロヘキサンカルバルデヒドジメチルアセタール、4−メチル−シクロヘキサンカルバルデヒドジエチルアセタール、4−メチル−シクロヘキサンカルバルデヒドジ−n−プロピルアセタール、4−メチル−シクロヘキサンカルバルデヒドジ−iso−プロピルアセタール、4−メチル−シクロヘキサンカルバルデヒドジ−n−ブチルアセタール、4−メチル−シクロヘキサンカルバルデヒドジ−iso−ブチルアセタール、4−メチル−シクロヘキサンカルバルデヒドジ−sec−ブチルアセタール、4−メチル−シクロヘキサンカルバルデヒドジペンチルアセタール、4−メチル−シクロヘキサンカルバルデヒドジヘキシルアセタール、4−メチル−シクロヘキサンカルバルデヒドジヘプチルアセタール、4−メチル−シクロヘキサンカルバルデヒドジ−n−オクチルアセタール、4−メチル−シクロヘキサンカルバルデヒドジ−2−エチルヘキシルアセタール等の非環状アセタールのほか、シクロヘキサンカルバルデヒドエチレングリコールアセタール、シクロヘキサンカルバルデヒドプロピレングリコールアセタール、シクロヘキサンカルバルデヒド−1,2−ジメチルエチレングリコールアセタール、シクロヘキサンカルバルデヒド−1,1,2−トリメチルエチレングリコールアセタール、シクロヘキサンカルバルデヒド−1,1,2,2−テトラメチルエチレングリコールアセタール、シクロヘキサンカルバルデヒドヒドロキシメチルエチレングリコールアセタール、シクロヘキサンカルバルデヒド−1,3−プロパンジオールアセタール、シクロヘキサンカルバルデヒド−2−メチル−1,3−プロパンジオールアセタール、シクロヘキサンカルバルデヒド−2−ヒドロキシ−1,3−プロパンジオールアセタール、4−メチル−シクロヘキサンカルバルデヒドエチレングリコールアセタール、4−メチル−シクロヘキサンカルバルデヒドプロピレングリコールアセタール、4−メチル−シクロヘキサンカルバルデヒド−1,2−ジメチルエチレングリコールアセタール、4−メチル−シクロヘキサンカルバルデヒド−1,1,2−トリメチルエチレングリコールアセタール、4−メチル−シクロヘキサンカルバルデヒド−1,1,2,2−テトラメチルエチレングリコールアセタール、4−メチル−シクロヘキサンカルバルデヒドヒドロキシメチルエチレングリコールアセタール、4−メチル−シクロヘキサンカルバルデヒド−1,3−プロパンジオールアセタール、4−メチル−シクロヘキサンカルバルデヒド−2−メチル−1,3−プロパンジオールアセタール、4−メチル−シクロヘキサンカルバルデヒド−2−ヒドロキシ−1,3−プロパンジオールアセタール等の5又は6員の環状アセタールが例示される。これらのうち、シクロヘキサンカルバルデヒドジメチルアセタール、シクロヘキサンカルバルデヒドジエチルアセタール、シクロヘキサンカルバルデヒドジ−n−ブチルアセタール、シクロヘキサンカルバルデヒドエチレングリコールアセタール、シクロヘキサンカルバルデヒドプロピレングリコールアセタールが好ましい。
加水分解する方法としては、例えば、メタノール、エタノール等の極性溶媒と水の混合溶媒に原料アセタールを均一に溶解させ、塩酸、硫酸、リン酸等の無機酸類、ギ酸、酢酸、シュウ酸、クロロ酢酸、p−トルエンスルホン酸等の有機酸類等の酸触媒存在下に、通常25〜100℃の温度範囲で、0.5〜20時間処理する従来公知の方法が挙げられるが、この方法では酸触媒を除去する工程が必要で操作が複雑になり、アルカリ金属又はアルカリ土類金属水酸化物による中和処理による塩等の廃棄物も発生する等の問題を有しているため、工業的な観点から無触媒条件下、好ましくは無触媒及び無溶媒条件下で高温高圧水中で加水分解する方法が好ましい。以下に本発明に係る高温高圧水中での加水分解反応について説明する。
本発明に係る高温高圧水の原料に用いる水としては、蒸留水、イオン交換水、水道水、地下水等を好適に用いることができる。これらの原料水を高温高圧水として使用する際、溶存酸素は、目的のシクロヘキサンカルバルデヒドを酸化する可能性があるため、予め窒素ガス等でバブリングして除去してから用いるのが好ましい。
シクロヘキサンカルバルデヒドジアルキルアセタールと加熱水の重量割合は、原料アセタールの種類によっても変わってくるが、通常、1:0.3〜100、好ましくは1:0.5〜10の範囲である。この範囲よりも小さい場合には十分な転化率が得られず、大きい場合には装置が大きくなる他、エネルギーロスが大きく不経済となる。
また、必要に応じて、加水分解反応において不活性な溶媒や酸触媒を用いることもできる。その溶媒や酸触媒の使用量は、反応条件、反応形態等に応じて任意に選択することができる。
上記溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、n−プロピルアルコール、iso−プロピルアルコール、n−ブチルアルコール、iso−ブチルアルコール、sec−ブチルアルコール、tert−ブチルアルコール、ペンタノール、ヘキサノール、ヘプタノール、オクタノール、2−エチルヘキサノール、2−メトキシエタノール、2−エトキシエタノール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、シクロヘキサノール、メチルシクロヘキサノール等のアルコール系溶媒、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル、メチルtert−ブチルエーテル、ジメトキシエタン、ジエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、テトラヒドロフラン、1,3−ジオキソラン、ジオキサン等のエーテル系溶媒、ペンタン、n−ヘキサン、n−ヘプタン、n−オクタン、2−エチルヘキサン、n−ノナン、n−デカン、シクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、1,2−ジメチルシクロヘキサン、1,3−ジメチルシクロヘキサン、1,4−ジメチルシクロヘキサン、1,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,2,4−トリメチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロオクタン、デカリン等の脂肪族炭化水素系溶媒、及びベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、1,3,5−トリメチルベンゼン、1,2,4−トリメチルベンゼン、1,2,3−トリメチルベンゼン等が例示される。これらの溶媒は、1種単独で又は2種以上組み合わせて用いることができる。
上記酸触媒としては、 塩酸、硫酸、リン酸等の無機酸類、ギ酸、酢酸、シュウ酸、クロロ酢酸、p−トルエンスルホン酸等の有機酸類等を用いることができる。
本発明に係る高温高圧条件における反応温度としては、通常100〜300℃、好ましくは150〜250℃である。100℃未満の温度では十分な反応速度が得られにくく、一方、300℃を越える温度ではそれに見合った反応速度の促進効果は得られず経済的にも好ましくない。
反応圧力としては、ゲージ圧力で、通常、0.05〜30MPa、好ましくは0.1〜10MPa程度の範囲である。通常、反応温度における水の飽和蒸気圧以上にゲージ圧力は上昇する。
反応は、目的のシクロヘキサンカルバルデヒドが酸化され易いため、窒素、ヘリウム、アルゴン等の不活性ガス雰囲気下もしくは気流下で実施することが好ましい。
反応時間は、原料アセタールの種類や濃度、反応温度、反応器容積等の諸条件によって異なるが、通常0.2〜50時間程度、工業的な観点からは0.5〜20時間になるように条件などを適宜選択することが好ましい。
(B)工程における反応方式としては、特に限定されず、回分反応方式、連続反応方式のいずれの方式でも実施可能である。回分反応方式としては、例えば、原料アセタール、水を耐圧反応器中で加熱撹拌し反応する方式、また、連続反応方式としては、例えば、連続反応耐圧反応器の一方より原料アセタールと水との混合液を流通させる並流方式、連続反応耐圧反応器の両端の一方から原料アセタールを、他方から水を流通させることにより加水分解反応を行う向流方式等が挙げられるが、本発明においてはこれらいずれの方式を採用してもよい。
また、加水分解反応の転化率が不十分な場合には、水相を分離後、さらに所定量の水を添加して加水分解を行う操作を繰り返すことにより容易に高転化率を得ることもできる。
加水分解反応後、水相を分離除去することにより容易に高純度のシクロヘキサンカルバルデヒドを得ることができる。必要に応じて、更に脱水処理、活性炭、白土等の吸着剤処理、蒸留等の従来公知の方法を適宜組み合わせて精製することもができる。また、蒸留精製後の残渣には、通常、未反応の原料アセタール化合物が含まれるため、該化合物を回収して加水分解反応に再利用することもでき極めて経済的である。
以下、実施例を掲げて本発明を詳しく説明する。本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。尚、各実施例における純度、転化率及び生成率はガスクロマトグラフィー分析により算出した。
[核水素化工程]
電磁誘導撹拌を備え付けた500mlオートクレーブに、ベンズアルデヒドプロピレングリコールアセタール150.0g、5%Ru/アルミナ触媒7.5gを入れ、系内を水素ガスで置換後、水素分圧3.0MPa、80℃で反応により消費された水素を補充しながら圧力減少が終了するまで核水素化反応を行った。反応終了後、冷却し、触媒を減圧濾過により除去し、シクロヘキサンカルバルデヒドプロピレングリコールアセタール151.0g(純度96.0%)を得た。
[加水分解工程]
電磁誘導撹拌を備え付けた1.5Lオートクレーブに、前記核水素化工程で得られたシクロヘキサンカルバルデヒドプロピレングリコールアセタール150g、イオン交換水300gを入れ、系内を窒素置換後、攪拌しながら180℃で1時間加水分解反応を行った。その時の最終到達圧力はゲージ圧1.2MPaであった。加水分解反応粗液を冷却後、分液ロートにより静置分液し、有機相を分離した。得られた有機相をガスクロマトグラフィー分析を行った結果、転化率70.3%、選択率95.7%でシクロヘキサンカルバルデヒドが生成していることを確認した。さらに、得られた有機相をオートクレーブに入れ、イオン交換水300gを添加し、攪拌しながら180℃で1時間加水分解反応を行った。反応終了後、上記と同様に処理を行い、無色透明液体91.1gを得た。得られた無色透明液体をガスクロマトグラフィー分析を行った結果、転化率95.2%、選択率94.8%でシクロヘキサンカルバルデヒドが生成していることを確認した。次に、この無色透明液体を30cmヴィドマー精留管を用いて減圧蒸留精製(65〜67℃/4kPa)を行い、シクロヘキサンカルバルデヒド82.8g(純度99.7%)を得た。生成物はFT−IR分析によりアルデヒド基(1727cm−1)の吸収により確認した。
[核水素化工程]
5%Ru/アルミナの代わりに5%Ru/カーボンを使用した他は、実施例1の〔核水素化工程〕と同様に反応を実施し、シクロヘキサンカルバルデヒドプロピレングリコールアセタール150.4g(純度95.9%)を得た。
[加水分解工程]
電磁誘導撹拌を備え付けた0.5Lオートクレーブに、前記核水素化工程で得られたシクロヘキサンカルバルデヒドプロピレングリコールアセタール20g、イオン交換水80gを入れ、系内を窒素置換後、攪拌しながら180℃で1時間加水分解反応を行った。その時の最終到達圧力はゲージ圧1.2MPaであった。加水分解反応粗液を冷却後、分液ロートにより静置分液し、有機相を分離した。得られた有機相をガスクロマトグラフィー分析を行った結果、転化率80.7%、選択率95.4%でシクロヘキサンカルバルデヒドが生成していることを確認した。
[核水素化工程]
電磁誘導撹拌を備え付けた1.5Lオートクレーブに、ベンズアルデヒドプロピレングリコールアセタール800g、5%Ru/アルミナ触媒40gを入れ、系内を水素ガスで置換後、水素分圧3.0MPa、80℃で反応により消費された水素を補充しながら圧力減少が終了するまで核水素化反応を行った。反応終了後、冷却し、触媒を減圧濾過により除去し、シクロヘキサンカルバルデヒドプロピレングリコールアセタール807g(純度96.2%)を得た。
[加水分解工程]
内径15mm、長さ1mのステンレス製耐圧反応器に、反応温度180℃、反応圧力を1.5MPaに維持しながら、反応器下部より前記核水素化工程で得られたシクロヘキサンカルバルデヒドプロピレングリコールアセタールを150g/hで、反応器上部よりイオン交換水を150g/hで供給し、上部より有機相を、下部より水相を連続的に取り出した。得られた有機相をガスクロマトグラフィー分析を行った結果、転化率95.8%、選択率94.3%でシクロヘキサンカルバルデヒドが生成していることを確認した。
本発明の製造方法により製造されるシクロヘキサンカルバルデヒドは医薬、農薬、高分子化合物等の原料として利用できる。

特許出願人 新日本理化株式会社

Claims (8)

  1. (A)一般式(1)
    Figure 2005187352
    [式中、Rは、水素原子又は炭素数1〜4の直鎖状もしくは分枝状アルキル基、nは1〜5の整数を表し、n≧2の場合、これらのアルキル基のうち隣接する2個のアルキル基が、相互に結合してそれらが結合するベンゼン環と共にアルキル基を有してもよいテトラリン環又はインダン環を形成してもよい。Rは、同一又は異なって、それぞれ炭素数1〜18の直鎖状若しくは分枝状のアルキル基を表し、これらのアルキル基は、相互に結合してそれらが結合する酸素と共にアルキル基を有してもよい1,3−ジオキサン環又は1,3−ジオキソラン環を形成してもよい。]
    で表されるベンズアルデヒドジアルキルアセタールを、水素化触媒存在下、一般式(2)
    Figure 2005187352
    [式中、R、R及びnは、一般式(1)と同義である。]
    で表されるシクロヘキサンカルバルデヒドジアルキルアセタールに核水素化する工程、及び(B)(A)工程で得られたシクロヘキサンカルバルデヒドジアルキルアセタールを、一般式(3)
    Figure 2005187352
    [式中、R及びnは、一般式(1)と同義である。]
    で表されるシクロヘキサンカルバルデヒドに加水分解する工程を含有することを特徴とするシクロヘキサンカルバルデヒドの製造方法。
  2. が水素又はメチル基である請求項1に記載のシクロヘキサンカルバルデヒドの製造方法。
  3. (A)工程で用いる水素化触媒が、ルテニウム触媒である請求項1又は2に記載のシクロヘキサンカルバルデヒドの製造方法。
  4. (B)工程の加水分解を高温高圧水中で行う請求項1〜3のいずれかに記載のシクロヘキサンカルバルデヒドの製造方法。
  5. 請求項4に記載の加水分解を、触媒を用いずに行う請求項4に記載のシクロヘキサンカルバルデヒドの製造方法。
  6. 一般式(2)で表されるシクロヘキサンカルバルデヒドジアルキルアセタールを高温高圧水中で加水分解することを特徴とする一般式(3)で表されるシクロヘキサンカルバルデヒドの製造方法。
  7. 請求項6に記載の加水分解を、触媒を用いずに行う請求項6に記載のシクロヘキサンカルバルデヒドの製造方法。
  8. 一般式(2)においてRが、水素又はメチル基である請求項6又は7に記載のシクロヘキサンカルバルデヒドの製造方法。
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