JP4472063B2 - ジシクロヘキサン誘導体の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の技術分野】
本発明は、ジシクロヘキサン誘導体の製造方法に関し、さらに詳しくは、置換ビスフェノール類を有機溶媒中で水素化(還元)し、4−オキソ−4'−ヒドロキシジシクロヘキサン誘導体を高収率で得ることができるジシクロヘキサン誘導体の製造方法に関する。また、これらのトランスジシクロヘキサン誘導体の製造方法に関する。
【0002】
【発明の技術的背景】
4−オキソ−4'−ヒドロキシジシクロヘキサン誘導体、たとえば4-オキソ-4'-ヒドロキシジシクロヘキシルプロパン、4-オキソ-4'-ヒドロキシジシクロヘキサン、2-(4-オキソシクロヘキシル)-2-(4-ヒドロキシシクロヘキシル)プロパン等のジシクロヘキサン誘導体(脂環式モノケトン類)は、医薬品原料、工業薬品原料、ポリマー原料、重合開始剤、耐熱向上剤、酸化防止剤等の原料として期待される化合物である。特に、これらジシクロヘキサン誘導体のトランス体は、表示用液晶化合物、医薬品中間体等の原料として期待される化合物である。
【0003】
このようなジシクロヘキサン誘導体は、従来公知の脂環式ジケトン類の合成法において、脂環式ジオールを酸化した際に中間体として存在すると推定される。たとえば4,4'- ジヒドロキシジシクロヘキサンを酸化して、4,4'- ジオキソジシクロヘキサンを合成する方法において、中間体として4-オキソ-4'-ヒドロキシジシクロヘキサン(脂環式モノケトン体)が生成すると推定される。しかしながら、このような従来の酸化反応方法では、この中間体物質を選択的に得ることは困難であり、このようなジシクロヘキサン誘導体の工業的な製造を目的とした技術は知られていない。したがって、トランスジシクロヘキサン誘導体の製造を目的とした技術も知られていない。
【0004】
したがって、ジシクロヘキサン誘導体、特にトランスジシクロヘキサン誘導体を高収率で得ることができるジシクロヘキサンの製造方法の出現が望まれている。
【0005】
【発明の目的】
本発明は、上記のような従来技術に伴う問題を解決しようとするものであって、4−オキソ−4'−ヒドロキシジシクロヘキサン誘導体を高収率で得ることができるジシクロヘキサン誘導体の製造方法を提供することを目的としている。また、これらのトランスジシクロヘキサン誘導体の製造方法を提供することを目的としている。
【0006】
【発明の概要】
本発明に係るジシクロヘキサン誘導体の製造方法は、
下記一般式[I]
【0007】
【化3】
【0008】
[式中、Xは単結合、−CH2−、−C(CH3)2−、−O−または−SO2−であり、
R1 、R2 は、それぞれ独立に、水素原子または炭素原子数1〜6のアルキル基であり、
mおよびnは、それぞれ0〜2の整数であり、同一または異なる整数である]
で表わされる置換ビスフェノール類の水素化を、パラジウム触媒およびアルカリ金属化合物、またはアルカリ金属含有パラジウム触媒およびアルカリ金属化合物の存在下に、炭素原子数3以上の1価飽和アルコール溶媒中で行なうことにより、下記一般式[II]
【0009】
【化4】
【0010】
[式中、X、R1 、R2 、mおよびnは、それぞれ上記一般式[I]のX、R1、R2 、m、nと同義である]
で表わされるジシクロヘキサン誘導体を得ることを特徴としている。
また、前記[I]で表される置換ビスフェノール類の水素化を、パラジウム触媒およびアルカリ金属化合物の存在下に、またはアルカリ金属含有パラジウム触媒およびアルカリ金属化合物の存在下に、炭素原子数3以上の1価飽和アルコール溶媒中で行なうことにより得られる前記[II]で表されるジシクロヘキサン誘導体を、有機溶媒で晶析させることによりトランスジシクロヘキサン誘導体を得ることを特徴としている。
【0011】
前記パラジウム触媒としては、担体に1〜30重量%のパラジウムが担持されたものが好ましい。また、前記アルカリ金属含有パラジウム触媒としては、担体に1〜30重量%のパラジウムと0.5〜5重量%のアルカリ金属の双方が担持されたものが好ましい。前記パラジウム触媒またはアルカリ金属含有パラジウム触媒の担体は、カーボンまたはアルミナであることが好ましい。
【0012】
前記1価飽和アルコール溶媒としては、炭素原子数3〜12の1価脂肪族飽和アルコールであることが好ましい。また、前記有機溶媒は、脂肪族ケトン類、脂肪族アルコール類および脂環式アルコール類から選ばれる少なくとも1種の溶媒であることが好ましい。
【0013】
【発明の具体的説明】
以下、本発明に係るジシクロヘキサン誘導体の製造方法について具体的に説明する。
本発明に係るジシクロヘキサン誘導体の製造方法では、特定の置換ビスフェノール類を、パラジウム触媒とアルカリ金属化合物の存在下に、またはアルカリ金属含有パラジウム触媒およびアルカリ金属化合物の存在下に、特定の溶媒中で水素によって選択的に水素化し、目的とするジシクロヘキサン誘導体を高選択率・高収率で得る。また、ジシクロヘキサン誘導体のシス体およびトランス体の混合物を、有機溶媒で晶析することにより、トランスジシクロヘキサン誘導体を高純度で得る。
置換ビスフェノール類
本発明でジシクロヘキサン誘導体の原料として用いられる置換ビスフェノール類は、下記一般式[I]で表わされる。
【0014】
【化5】
【0015】
一般式[I]において、Xは単結合、−CH2−、−C(CH3)2−、−O−または−SO2−であり、
R1 、R2 は、それぞれ独立に、水素原子または炭素原子数1〜6のアルキル基であり、
mおよびnは、それぞれ0〜2の整数であり、同一または異なる整数である。
【0016】
R1 、R2 における炭素原子数1〜6のアルキル基としては、具体的には、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、s-ブチル基、t-ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、n-ヘキシル基、1,3-ジメチルブチル基、2,3-ジメチルブチル基、イソヘキシル基などが挙げられる。
【0017】
上記一般式[I]で表わされる置換ビスフェノール類としては、具体的には、ビス(4-ヒドロキシフェニル)、ビス(2-メチル-4- ヒドロキシフェニル)等の、Xが単結合である置換ビスフェノール類;
ビス(4-ヒドロキシフェニル)メタン、ビス(2-エチル-4- ヒドロキシフェニル)メタン等の、Xがメチレン基(−CH2−)である置換ビスフェノール類;
2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン[ビスフェノールA]、2,2-ビス(2-メチル-4- ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(3-メチル-4- ヒドロキシフェニル)プロパン等の、Xがイソプロピリデン基(−C(CH3)2−)である置換ビスフェノール類;
ビス(4-ヒドロキシフェニル)エーテル、ビス(2-メチル-4-ヒドロキシフェニル)エーテル等の、Xが酸素原子である置換ビスフェノール類;
ビス(4-ヒドロキシフェニル)スルホン[ビスフェノールS]、ビス(2-メチル-4- ヒドロキシフェニル)スルホン等の、Xがスルホニル基(−SO2−)である置換ビスフェノール類が挙げられる。
触媒
本発明で用いられる触媒としては、担体にパラジウム化合物を担持させたパラジウム触媒(1)または担体にパラジウム化合物およびアルカリ金属化合物を担持させたアルカリ金属含有パラジウム触媒(2)が用いられる。
【0018】
担体付パラジウム触媒(1)は、触媒金属活性成分としてのパラジウムを担体に担持したものである。担体付パラジウム触媒(1)は助触媒としてアルカリ金属化合物を併用する。
担体付アルカリ金属含有パラジウム触媒(2)は、触媒金属活性成分としてのパラジウムと助触媒成分としてのアルカリ金属の双方を担体に担持したものである。担体付アルカリ金属含有パラジウム触媒(2)を用いる場合も、助触媒としてアルカリ金属化合物を併用する。
【0019】
これらの触媒を形成する担体としては、具体的には、カーボン、アルミナ、シリカアルミナ、酸化ジルコニウム、酸化チタン、活性白土などが挙げられる。特にカーボンおよびアルミナが好ましい。
担体付パラジウム触媒(1)を形成するパラジウム成分としては、具体的には、金属パラジウム、パラジウム酸化物またはパラジウム水酸化物などが挙げられる。
【0020】
本発明で用いられる担体付パラジウム触媒(1)において、担体に担持されるパラジウム成分の量は、金属パラジウムとして、好ましくは1〜30重量%、より好ましくは5〜30重量%、特に好ましくは10〜30重量%である。
担体付アルカリ金属含有パラジウム触媒(2)を形成するアルカリ金属成分としては、具体的には、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属水酸化物;無水炭酸ナトリウム(ソーダ灰)、無水炭酸カリウム等のアルカリ金属炭酸塩などが挙げられる。中でも、水酸化ナトリウム、無水炭酸ナトリウムが好ましい。
【0021】
本発明で用いられる担体付アルカリ金属含有パラジウム触媒(2)においては、このアルカリ金属塩に由来するアルカリ金属含有量は好ましくは0.5〜5重量%、さらに好ましくは0.5〜3重量%、特に好ましくは1.0〜1.5重量%である。また、アルカリ金属含有パラジウム触媒(2)において、担体に担持されるパラジウム成分の量は、金属パラジウムとして、好ましくは1〜30重量%、さらに好ましくは5〜30重量%とすることができる。
【0022】
本発明で用いられる担体付アルカリ金属含有パラジウム触媒(2)は、カーボンなどの担体に金属パラジウム等を触媒金属活性成分とし、アルカリ金属塩を助触媒成分として担持させ、次いで乾燥し、400〜600℃の温度で焼成することにより調製することができる。
本発明で用いられる担体付パラジウム触媒(1)ないし担体付アルカリ金属含有パラジウム触媒(2)の形状は、特に限定されず、その反応形態に応じて粉末状、タブレット状等適宜選択して使用される。
【0023】
本発明においては、1種または2種以上の担体付パラジウム触媒(1)または担体付アルカリ金属含有パラジウム触媒(2)を水素化触媒として用いることができる。
担体付パラジウム触媒(1)または担体付アルカリ金属含有パラジウム触媒(2)は、原料の置換ビスフェノール類100重量部に対して、好ましくは0.5〜10重量部、さらに好ましくは0.5〜5重量部、特に好ましくは1.0〜3.0重量部の割合で用いられる。担体付パラジウム触媒(1)または担体付アルカリ金属含有パラジウム触媒(2)を上記の割合で用いると、原料の置換ビスフェノール類の転化率が高く、しかも目的物(ジシクロヘキサン誘導体)の選択率も高くなるため、目的物を高収率で得ることができる。
【0024】
上記転化率、選択率および収率は、それぞれ次式により算出される。
転化率[%]=(B/A)×100
ジシクロヘキサン誘導体選択率[%]=(C/B)×100
ジシクロヘキサン誘導体の収率[%]=(C/A)×100
これらの計算式において、Aは、置換ビスフェノール類の仕込量[モル]であり、Bは、反応した置換ビスフェノール類の量[モル]であり、Cはジシクロヘキサン誘導体の生成量[モル]である。
助触媒
本発明では、上記担体付パラジウム触媒(1)の場合は、アルカリ金属化合物からなる助触媒を併用する。この助触媒を用いることにより、目的物を工業上十分な高い収率で得ることができる。また、担体付アルカリ金属含有パラジウム触媒(2)の場合も、アルカリ金属化合物からなる助触媒を併用する。
【0025】
このような助触媒としては、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属の水酸化物、炭酸塩などが挙げられる。中でも、炭酸ナトリウム等のアルカリ金属炭酸塩が好ましく用いられる。
このような助触媒は、原料の置換ビスフェノール類100重量部に対して、好ましくは0.01〜1重量部、さらに好ましくは0.05〜0.5重量部、特に好ましくは0.05〜0.2重量部の割合で用いられる。
溶 媒
本発明に係るジシクロヘキサン誘導体の製造方法では、上記置換ビスフェノール類の水素化は、溶媒中で行なわれる。本発明で用いられる溶媒は、反応の選択性を高め、かつ原料や生成物が溶解しやすいという理由で、炭素原子数3以上の1価飽和アルコール、特に炭素原子数3〜12の1価脂肪族飽和アルコールが好ましい。
【0026】
炭素原子数3〜12の1価脂肪族飽和アルコールとしては、具体的には、プロピルアルコール、ブチルアルコール、アミルアルコール、ヘキシルアルコール、ヘプチルアルコール、オクチルアルコール、カプリルアルコール(=sec-オクチルアルコール)、ノニルアルコール、デシルアルコール、ウンデシルアルコールなどが挙げられる。中でも、2級または3級アルコールが好ましく、特にsec-ブタノール、イソプロピルアルコール、カプリルアルコールが好ましい。
【0027】
これらの溶媒は、1種単独で、または2種以上組み合わせて用いることができる。
上記のような溶媒は、置換ビスフェノール類の種類および溶媒の種類により異なるが、置換ビスフェノール類100重量部に対して、通常100〜500重量部、好ましくは100〜300重量部、さらに好ましくは100〜150重量部の割合で用いられる。上記のような割合で炭素原子数3以上の飽和アルコール、特に炭素原子数3〜12の1価脂肪族飽和アルコールを用いると、置換ビスフェノール類の転化率が高く、しかも目的物(ジシクロヘキサン誘導体)の選択率も高くなるため、目的物を高収率で得ることができる。
置換ビスフェノール類の水素化
本発明に係るジシクロヘキサン誘導体の製造方法における置換ビスフェノール類の水素化は、上記担体付パラジウム触媒(1)およびアルカリ金属化合物の存在下に、または担体付アルカリ金属含有パラジウム触媒(2)の存在下に、溶媒、好ましくは炭素原子数3以上の飽和アルコール、特に好ましくは炭素原子数3〜12の1価脂肪族飽和アルコール中で行なわれる。
【0028】
この置換ビスフェノール類の水素化は、系内を窒素ガス、アルゴンガス等の不活性ガスで置換した後、水素置換して行なうことが望ましい。
本発明に係るジシクロヘキサン誘導体の製造方法では、反応系に水素を理論量供給することが好ましい。
本発明における水素化の反応温度は、100〜180℃、好ましくは120〜150℃であり、水素圧力は1〜15kg/cm2-G、好ましくは5〜10kg/cm2-G、より好ましくは6〜10kg/cm2-Gであり、反応時間は3〜10時間、好ましくは3〜6時間である。
4−オキソ−4 ' −ヒドロキシジシクロヘキサン誘導体
本発明によって得られるジシクロヘキサン誘導体は、下記一般式[II]で表わされる、4−オキソ−4'−ヒドロキシジシクロヘキサン誘導体である。
【0029】
【化6】
【0030】
一般式[II]において、X、R1 、R2 、mおよびnは、それぞれ上記一般式[I]のX、R1 、R2 、m、nと同義である。
上記一般式[II]で表わされるジシクロヘキサン誘導体としては、具体的には、
ビス(4-ヒドロキシフェニル)の水添物である4-オキソ-4'-ヒドロキシジシクロヘキサン、
ビス(2-メチル-4- ヒドロキシフェニル)の水添物である2,2'- ジメチル-4- オキソ-4'-ヒドロキシジシクロヘキサン等の、Xが単結合であるジシクロヘキサン誘導体;
ビス(4-ヒドロキシフェニル)メタンの水添物である(4-オキソシクロヘキシル)-(4-ヒドロキシシクロヘキシル)メタン、
ビス(2-エチル-4- ヒドロキシフェニル)メタンの水添物である(2-エチル-4- オキソシクロヘキシル)-(2-エチル-4- ヒドロキシシクロヘキシル)メタン等の、Xがメチレン基(−CH2−)であるジシクロヘキサン誘導体;
ビスフェノールAの水添物である2-(4-オキソシクロヘキシル)-2-(4-ヒドロキシシクロヘキシル)プロパン、
2,2-ビス(2-メチル-4- ヒドロキシフェニル)プロパンの水添物である2-(2-メチル-4- オキソシクロヘキシル)-2-(2-メチル-4- ヒドロキシシクロヘキシル)プロパン、
2,2-ビス(3-メチル-4- ヒドロキシフェニル)プロパンの水添物である2-(3-メチル-4- オキソシクロヘキシル)-2-(3-メチル-4- ヒドロキシシクロヘキシル)プロパン等の、Xがイソプロピリデン基(−C(CH3)2−)であるジシクロヘキサン誘導体;
ビス(4-ヒドロキシフェニル)エーテルの水添物である(4-オキソシクロヘキシル)-(4-ヒドロキシシクロヘキシル)エーテル、ビス(2-メチル-4-ヒドロキシフェニル)エーテルの水添物である(2-メチル-4- オキソシクロヘキシル)-(2-メチル-4- ヒドロキシシクロヘキシル)エーテル等の、Xが酸素原子であるジシクロヘキサン誘導体;
ビス(4-ヒドロキシフェニル)スルホン[ビスフェノールS]の水添物である(4-オキソシクロヘキシル)-(4-ヒドロキシシクロヘキシル)スルホン、
ビス(2-メチル-4- ヒドロキシフェニル)スルホンの水添物である(2-メチル-4- オキソシクロヘキシル)-(2-メチル-4- ヒドロキシシクロヘキシル)スルホン等の、Xがスルホニル基(−SO2−)であるジシクロヘキサン誘導体が挙げられる。
精製およびトランスジシクロヘキサン誘導体の晶析
精製は、たとえば目的物を含む上記水素化反応終了液から触媒を濾過分離除去した後、晶析、濾過、乾燥することにより行われ、ジシクロヘキサン誘導体の精製結晶を得ることができる。
【0031】
水素化反応終了液中のジシクロヘキサン誘導体は、シス体とトランス体の混合物であるが、トランス体の収率を向上させるためには、水素化反応終了液から触媒を濾過分離除去した後に得られる粗結晶または濃縮液に、水素化の反応溶液である炭素原子数3〜12の1価脂肪族飽和アルコールとは異なる他の溶媒を加えて晶析を行うことが好ましい。他の溶媒としては、メチルエチルケトン(MEK)、メチルイソプロピルケトン、メチルイソブチルケトン(MIBK)またはジエチルケトンなどの脂肪族ケトン類、イソプロピルアルコールなどの脂肪族アルコールまたはシクロヘキサノールなどの脂環式アルコールが好ましく、特に好ましくはケトン類が用いられる。
【0032】
また、他の溶媒の添加量は、粗結晶の重量の2〜5倍の量または濃縮後の反応溶媒の2〜5倍の量が好ましい。
【0033】
【発明の効果】
本発明に係るジシクロヘキサン誘導体の製造方法によれば、反応工程が、比較的マイルドな条件下で置換ビスフェノール類の水素化反応を行なう1段階であるので、簡単な工程でジシクロヘキサン誘導体が高選択率・高収率で得られる。また、ジシクロヘキサン誘導体のシス体およびトランス体の混合物を、有機溶媒で晶析することにより、トランスジシクロヘキサン誘導体が高純度で得られる。
【0034】
【実施例】
以下、本発明を実施例により説明するが、本発明は、これら実施例により限定されるものではない。
なお、以下の実施例および比較例における4−オキソ−4'−ヒドロキシジシクロヘキサン誘導体のシス体、トランス体の同定は1H−NMR(300MHz)で行った。また、1H−NMR(300MHz)の測定結果とガスクロマトグラフィーでの測定のピーク位置との対応を確認した上で、トランス体の純度およびシス−トランス生成比は、ガスクロマトグラフィーの面積比により算出した。
【0035】
また、トランス体とは、ヒドロキシル基の置換したシクロヘキサン環の炭素原子に結合したOH基とX基が共にエカトリアル結合であるものを指す。
【0036】
【化7】
【0037】
【実施例1】
[4-オキソ-4'-ヒドロキシジシクロヘキサンの調製]
内容積1リットルのオートクレーブに、4,4'- ジヒドロキシビフェニル100g(0.54モル)と、2-ブタノール(sec-ブタノール)150gを仕込み、アルカリ金属含有触媒として5重量%Pdおよび1〜1.5重量%のNaがカーボンに担持された触媒3g(含水触媒の乾燥触媒換算量)と、助触媒として炭酸ナトリウム(Na2CO3)0.1gを添加した。
【0038】
上記の仕込み終了後、純窒素でオートクレーブ内(系内)を10kg/cm2-Gまで昇圧し、その後脱圧する操作を計3回繰り返し、系内の窒素置換を行なった。
次いで、水素で上記窒素置換と同様の操作で系内を水素置換し、その後系内を昇温し、140℃に達した時点で系内の水素圧力が6kg/cm2-Gになるように調整し、水添に必要な理論水素量の水素を供給した。
【0039】
4,4'- ジヒドロキシビフェニルの水添反応を4.2時間行なった後、系内の反応液を80℃まで冷却し、反応液から触媒を濾別除去した後の反応液についてガスクロマトグラフィー(GC)、質量スペクトル(MS)により生成物の組成分析を行なった。その結果、目的物である4-オキソ-4'-ヒドロキシジシクロヘキサン選択率は60%であった。4-オキソ-4'-ヒドロキシジシクロヘキサンのシス体/トランス体比は、25/75であった。
【0040】
また、前記触媒を濾別除去した後の反応液を30℃まで冷却し、析出した結晶を濾過し、精製結晶を得た。
得られた精製結晶について、1H-NMR(300MHz)で同定を行ない、この精製結晶がトランス4-オキソ-4'-ヒドロキシジシクロヘキサンであることを確認した。また、精製結晶の純度は85.5%であった。
【0041】
その結果を第1表に示す。
【0042】
【実施例2】
[4-オキソ-4'-ヒドロキシジシクロヘキサンの調製]
実施例1において、系内の水素圧力を7kg/cm2-Gになるように調整した以外は、実施例1と同様にして、4,4'- ジヒドロキシビフェニルの水添反応を4.2時間行なった後、系内の反応液を80℃まで冷却し、反応液から触媒を濾別除去した後の反応液についてガスクロマトグラフィー(GC)、質量スペクトル(MS)により生成物の組成分析を行なった。その結果、目的物である4-オキソ-4'-ヒドロキシジシクロヘキサン選択率は65%であった。4-オキソ-4'-ヒドロキシジシクロヘキサンのシス体/トランス体比は、25/75であった。
【0043】
また、前記触媒を濾別除去した後の反応液から溶媒を蒸発させ、その残査にメチルイソブチルケトン(MIBK)150gを添加し、残査を溶解させた後冷却し、析出させた結晶を濾過、乾燥することにより精製結晶を得た。得られた精製結晶について、1H-NMR(300MHz)で同定を行ない、この精製結晶がトランス4-オキソ-4'-ヒドロキシジシクロヘキサンであることを確認した。また、精製結晶の純度は75.9%であった。
【0044】
その結果を第1表に示す。
【0048】
【実施例3】
[4-オキソ-4'-ヒドロキシジシクロヘキサンの調製]実施例2において、パラジウム触媒として5重量%のパラジウムがアルミナに担持された触媒3gと助触媒として炭酸ナトリウム(Na2CO3)0.05gを用いた以外は、実施例2と同様にして、4,4'- ジヒドロキシビフェニルの水添反応を5.5時間行った後、系内の反応液を80℃まで冷却し、2-ブタノールを50g添加し、70℃で反応液から触媒を濾別除去し、その反応液についてガスクロマトグラフィー(GC)、質量スペクトル(MS)により、生成物の組成分析を行った。その結果、目的物である4-オキソ-4'-ヒドロキシジシクロヘキサンの選択率は70%であった。4-オキソ-4'-ヒドロキシジシクロヘキサンのシス体/トランス体比は、16/84であった。
【0049】
また、前記触媒を濾別除去した後の反応液から溶媒175gを除去して反応液を濃縮し、その後、MIBK75gを加えて晶析操作を行い、析出した結晶を濾過、乾燥することにより、精製結晶を得た。得られた精製結晶について、1H-NMR(300MHz)で同定を行ない、この精製結晶がトランス4-オキソ-4'-ヒドロキシジシクロヘキサンであることを確認した。また、精製結晶の純度は84%であった。
【0050】
その結果を第1表に示す。
【0051】
【実施例4】
[4-オキソ-4'-ヒドロキシジシクロヘキサンの調製]実施例2において、パラジウム触媒として20重量%のパラジウムがカーボンに担持された触媒0.75g(含水触媒の乾燥触媒換算量)と助触媒として炭酸ナトリウム(Na2CO3)0.1gを用いた以外は、実施例2と同様にして、4,4'- ジヒドロキシビフェニルの水添反応を3.0時間行った後、系内の反応液を80℃まで冷却し、2-ブタノールを50g添加し、70℃で反応液から触媒を濾別除去し、その反応液についてガスクロマトグラフィー(GC)、質量スペクトル(MS)により、生成物の組成分析を行った。その結果、目的物である4-オキソ-4'-ヒドロキシジシクロヘキサンの選択率は70%であった。4-オキソ-4'-ヒドロキシジシクロヘキサンのシス体/トランス体比は、20/80であった。
【0052】
また、前記触媒を濾別除去した後の反応液から溶媒100gを除去して反応液を濃縮し、その後、晶析操作を行い、析出した結晶を濾過、乾燥することにより、精製結晶を得た。得られた精製結晶について、1H-NMR(300MHz)で同定を行ない、この精製結晶がトランス4-オキソ-4'-ヒドロキシジシクロヘキサンであることを確認した。また、精製結晶の純度は86.7%であった。
【0053】
その結果を第1表に示す。
【0054】
【比較例】
【0055】
【比較例1】
[4-オキソ-4'-ヒドロキシジシクロヘキサンの調製]
実施例2において、ロジウム触媒として5重量%のロジウムがカーボンに担持された触媒3.0g(含水触媒の乾燥触媒換算量)と助触媒として炭酸ナトリウム(Na2CO3)0.1gを用いた以外は、実施例2と同様にして、4,4'- ジヒドロキシビフェニルの水添反応を1.8時間行った後、系内の反応液についてガスクロマトグラフィー(GC)により、組成分析を行った。その結果、目的物である4-オキソ-4'-ヒドロキシジシクロヘキサンの選択率は6%であった。4-オキソ-4'-ヒドロキシジシクロヘキサンのシス体/トランス体比は、65/35であった。
【0056】
その結果を第2表に示す。
【0057】
【比較例2】
[4-オキソ-4'-ヒドロキシジシクロヘキサンの調製]実施例3において、助触媒の炭酸ナトリウム(Na2CO3)を添加しない以外は、実施例3と同様にして、4,4'- ジヒドロキシビフェニルの水添反応を6.0時間行った後、系内の反応液を80℃まで冷却し、2-ブタノールを50g添加し、70℃で反応液から触媒を濾別除去し、その反応液についてガスクロマトグラフィー(GC)により、生成物の組成分析を行った。その結果、目的物である4-オキソ-4'-ヒドロキシジシクロヘキサンの選択率は52%であった。4-オキソ-4'-ヒドロキシジシクロヘキサンのシス体/トランス体比は、37/63であった。
【0058】
その結果を第2表に示す。
【0059】
【表1】
【0060】
【表2】
Claims (7)
- 下記一般式[I]
R1 、R2 は、それぞれ独立に、水素原子または炭素原子数1〜6のアルキル基であり、
mおよびnは、それぞれ0〜2の整数であり、同一または異なる整数である]
で表わされる置換ビスフェノール類の水素化を、パラジウム触媒およびアルカリ金属化合物の存在下に、またはアルカリ金属含有パラジウム触媒およびアルカリ金属化合物の存在下に、炭素原子数3以上の1価飽和アルコール溶媒中で行なうことにより、下記一般式[II]
で表わされるジシクロヘキサン誘導体を得ることを特徴とするジシクロヘキサン誘導体の製造方法。 - 前記[I]で表される置換ビスフェノール類の水素化を、パラジウム触媒およびアルカリ金属化合物の存在下に、またはアルカリ金属含有パラジウム触媒およびアルカリ金属化合物の存在下に、炭素原子数3以上の1価飽和アルコール溶媒中で行なうことにより得られる前記[II]で表されるジシクロヘキサン誘導体を、有機溶媒で晶析させることによりトランスジシクロヘキサン誘導体を得ることを特徴とする請求項1に記載のジシクロヘキサン誘導体の製造方法。
- 前記パラジウム触媒が、担体に1〜30重量%のパラジウムが担持されたものであることを特徴とする請求項1または2に記載のジシクロヘキサン誘導体の製造方法。
- 前記アルカリ金属含有パラジウム触媒が、担体に1〜30重量%のパラジウムと0.5〜5重量%のアルカリ金属の双方が担持されたものであることを特徴とする請求項1または2に記載のジシクロヘキサン誘導体の製造方法。
- 前記パラジウム触媒またはアルカリ金属含有パラジウム触媒の担体が、カーボンまたはアルミナであることを特徴とする請求項3または4に記載のジシクロヘキサン誘導体の製造方法。
- 前記1価飽和アルコール溶媒が、炭素原子数3〜12の1価脂肪族飽和アルコールであることを特徴とする請求項1または2に記載のジシクロヘキサン誘導体の製造方法。
- 前記有機溶媒が、脂肪族ケトン類、脂肪族アルコール類および脂環式アルコール類から選ばれる少なくとも1種の溶媒であることを特徴とする請求項2に記載のジシクロヘキサン誘導体の製造方法。
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