JP2005186612A - 液体吐出ヘッドおよびその製造方法、並びに圧電素子の製造方法 - Google Patents

液体吐出ヘッドおよびその製造方法、並びに圧電素子の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】圧電膜の成膜・結晶化工程において振動板が変形したり流路基板との陽極接合部が剥がれたりするのを防ぐ。
【解決手段】圧力発生室2、オリフィス4等を形成した流路基板1にホウケイ酸ガラス等の歪み点の高いガラス振動板6を陽極接合したのちガラス振動板6を研磨し、薄片化されたガラス振動板6上に、圧電素子7を構成するPZT膜等の圧電膜8、上下電極9a、9bを積層する。圧電膜8の成膜中または成膜後に、ガラス振動板6の歪み点より低い結晶化温度で圧電膜8を結晶化させることで、加熱処理中のガラス振動板6の変形を防ぐ。また、ガラス振動板6を陽極接合後に10μm以下に研磨薄片化し、たるみを発生させておくことで、圧電膜8の結晶化のための加熱処理中の熱歪によって陽極接合部が剥がれるのを防ぐ。
【選択図】図1

Description

本発明は、圧電性を有する薄膜(圧電膜)を用いたユニモルフ型圧電素子を搭載する液体吐出ヘッドおよびその製造方法、並びに圧電素子の製造方法に関するものである。プリンター等の記録装置に搭載する液体吐出ヘッド以外にも、圧電素子の駆動力を用いる各種デバイスに適用可能である。
近年、機能性薄膜を使ったデバイス研究が盛んであり、機能性材料を薄膜化し各種デバイスに応用することによって、優れた機能の実現が期待されている。
例えば、強誘電体の圧電性、焦電性、分極反転等の物性を用いた圧電素子やセンサー、不揮発メモリー等のデバイス研究が盛んであるが、なかでも圧電駆動力によってインク等液体を吐出させる液体吐出方式の記録装置は、高速高密度で高精細高画質の記録が可能であり、かつ、カラー化・コンパクト化にも適しており、プリンターはもとより、複写機、ファクシミリ等にも適用され、近年急速な発展を成し遂げた。このような記録技術分野においては将来におけるさらなる高品位・高精細な記録技術への要望が高まってきている。その実現のための一つの方法として圧電性を有する薄膜(圧電膜)を利用した圧電素子があげられ、次世代高品位・高精細記録技術への応用が期待されている。
圧電膜の作製にあたっては様々な方法が挙げられるが、例えば特許文献1にRFスパッタリングを用いたPZT膜の成膜方法が記載されている。また特許文献2にはゾルゲル法の前駆体分解温度制御により、(100)面に配向したPZT膜を形成する方法が記載されている。
圧電膜を利用した圧電素子には様々な方式が挙げられるが、特に、圧電体とはヤング率の異なる振動板に圧電膜を積層したユニモルフ型圧電素子は非常に簡易で優れた圧電素子であり、液体吐出ヘッドへの適応が容易である。
ユニモルフ型圧電素子を駆動源とする液体吐出ヘッドの一例として、流路基板であるSi基板に陽極接合したガラス基板(ガラス振動板)に、別基板上に成膜された圧電膜を転写した構成が挙げられる。ガラス基板は振動板として優れているとともに線膨張係数がSiと近いため、あらかじめ液体流路を形成したSi基板上に陽極接合してユニモルフ型圧電素子を形成するのに適している。
機能性薄膜の多くは酸化物であり、特に圧電性を有する薄膜は一般に複合酸化物であるため、結晶化には高い温度が必要となる。例えば、バルク体の圧電材料を結晶化させるためにはおおよそ1000℃以上の高温が必要であり、また、薄膜においてもゾルゲル法など後焼成(アニール)で結晶化させるためには、概して800℃〜900℃もの高温が必要である。そこで結晶化のために、別基板上に非加熱で圧電膜の成膜を行い、成膜後にアニールする方法や、別基板を加熱し結晶化しながら圧電膜の成膜を行う方法が採用されている。しかし高温で結晶化するため、圧電膜が成膜される別基板は高温に耐えうる単結晶基板が必要となる。単結晶基板には代表的なものとしてMgOやSrTiO3 などが挙げられるが、一般的に非常に高価であり、一回の成膜ごとに消費してしまう別基板として用いるのはコスト上非常に不利である。
加えて、圧電膜を例えば単結晶基板上に成膜した場合、振動板となるガラス基板に接着した後に単結晶基板のみを熱燐酸等で溶解して除去しなければならず、このような溶解プロセスは非常に時間を要するため、コストのみならずスループット上も非常に不利であり、量産化の大きな障壁になる。
このような問題点を解決するためには、耐熱性のガラス振動板等に圧電膜を直接成膜する方法が有効である。例えば特許文献3には、Si基板上にスパッタされたSiN上に鉛拡散防止層であるジルコニア膜を介してPZTを直接成膜する方法が記載されているが、これはSiNがSiに比べて線膨張係数が非常に小さいためPZT膜の熱処理段階でSi基板から剥がれやすく、プロセス上の問題がある。また剥がれずに熱処理工程を終了できても、その後にSi基板を裏側からエッチングして圧力発生室等の液体流路を形成し、さらに、別途作製したインク等液体供給系と組み合わせる必要がある。この場合微細な加工品同士の接着工程でロスが発生し、歩留まりの低下が懸念される。すなわちSi基板にあらかじめ加工を施すことができないため歩留まりの向上が難しい。
また特許文献4には、液体流路を設けたヘッド基台にITO電極付きのガラス基板を振動板として陽極接合し、PZTオクチル酸塩をスクリーン印刷して500℃で焼成結晶化する方法が記載されているが、振動板にはハンドリング可能な数十μm以上の厚みのものが用いられており、結晶化のための熱処理時には熱膨張差による熱歪の影響を振動板の接合部で直接受けるため、この熱処理において接合強度が劣化するおそれがあるうえに、PZT塩基物を500℃で充分に結晶化させるのは難しい。
また、特許文献5には、液体流路を設けたヘッド基台にガラスセラミックス基板を振動板として陽極接合し、PZTペーストをスクリーン印刷して1000℃で焼成結晶化する方法が記載されているが、やはり振動板にはハンドリング可能な数十μm以上の厚みが必要であり、加えて、熱処理時には熱膨張差による熱歪の影響を振動板の接合部で直接受けるため、接合強度が劣化し、また、PZTを1000℃で結晶化させたときにガラスセラミックス基板が高温に耐えることができず、陽極接合による振動板の結合部も1000℃まで剥がれを生じずに保たれる保証はない。
ところで、転写プロセスを用いることなく耐熱性の振動板に圧電膜を直接成膜する方法も有効である。耐熱性の振動板に圧電膜を直接成膜する方法に関しては、特許文献6に開示されたように、Si基板の表面を熱酸化してSiO2 層を形成し、振動板として用いる方法がある。
しかし圧電膜を、転写プロセスを用いずに振動板上に形成する手法の場合、以下のような改善点が挙げられる。上記の特許文献6に開示された構成においては、Si基板上にSiO2 層が形成され、その上にPZT膜が直接成膜されて結晶化された後、Si基板がPZT膜面とは反対の面からエッチングにより裏抜きされて圧力室等の液体流路が形成される。このような製造方法の場合、PZT膜が高温で結晶化して室温まで冷却される際に、成膜基板であるSi基板の熱膨張係数に大きく影響を受けて格子定数が変化し、PZT膜の圧電性が大きく劣化する。この現象の理由は完全には解明できていないが、以下のように考えられる。
PZT膜の熱膨張係数は組成によって異なるが、最も圧電性の高いMPB組成(Zr:Ti=0.53:0.47)近傍では9×10-6(/℃)程度である。一方、Si基板は3×10-6(/℃)であり、PZTに比べてかなり小さい。このためPZT膜が結晶化し、キュリー点を経て室温まで冷却される際に、PZT膜が大きく収縮しようとするのに対してSi基板の収縮量は小さいため、PZT膜は引っ張り方向の力を受けることになる。この力を緩和するため、正方晶であるPZTの結晶の方位は、結晶軸の長いC軸が引っ張りの力を受けるSi基板の面内方向に向くものが多くなる。正方晶であるPZTの分極軸はC軸方向であるから、電界のかかる基板面上下方向に対して分極方向が垂直に向いた結晶いわゆる90°ドメインが多くなり、圧電性の大きな劣化を引き起こすと考えられる。
一方、特許文献7には、振動板となるSiO2 層を設けたSi基板上にPZT膜を形成する構成において、PZT膜に引っ張り応力を加える中間膜を設ける構成が開示されている。これは、PZTの熱膨張係数が振動板となるSiO2 より大きいため、圧電膜であるPZT膜と反対側から圧力室等の液体流路を形成すると、数ミクロンと薄くなったSiO2 の振動板がPZT膜との熱膨張差によって圧縮方向の力を受けて液体流路側に変形してしまうのを防ぐ目的で中間膜を設けるものである。しかしこの方法では、前述の引っ張り応力によって、PZT膜の圧電性に寄与しない90°ドメインが逆に増えてしまう傾向があり、圧電性の劣化が著しい。
また、特許文献3にはSi基板上にスパッタされた振動板となるSiN上に鉛拡散防止を目的としたジルコニア膜を介してPZT膜を成膜する方法が開示されている。ジルコニア膜は熱膨張係数がPZTより大きいため、目的は異なるが、このような膜を振動板と圧電膜の間に設けることは圧電膜の引っ張り応力を軽減するのにも有効である。しかし、応力はヤング率とひずみ量の積であるから、熱履歴によって発生する応力はその材料の熱膨張係数と断面積とヤング率の積に比例する。そして、断面積のうち膜同士で接している長さは同じであるから、問題となるのは膜厚であり、特定の膜厚関係を満たさないと、PZT膜への引っ張り応力を低減することはできない。
特開平06−290983号公報 特開平11−220185号公報 特開平07−246705号公報 特開平05−286131号公報 特開平05−286132号公報 特開2000−52550号公報 特開2000−141644号公報
本発明は上記従来の技術の有する未解決の課題に鑑みてなされたものであって、圧電膜の成膜・結晶化工程における振動板の熱歪みによる変形や剥離を回避することにより、液体吐出記録装置等の吐出性能の信頼性の向上や低コスト化に大きく貢献できる液体吐出ヘッドの製造方法を提供することを目的とするものである。
上記目的を達成するため、本発明の液体吐出ヘッドの製造方法は、圧電素子の圧電駆動力によって圧力発生室内の液体を加圧し、前記圧力発生室に連通するノズルから液体を吐出する液体吐出ヘッドの製造方法であって、前記圧力発生室を備えた流路基板を提供する提供工程と、前記流路基板に振動板を陽極接合する接合工程と、前記振動板上に、前記圧電素子の電極層および圧電膜を積層する積層工程と、積層中または積層後の前記圧電膜を、前記振動板の転移点未満の温度で結晶化させる結晶化工程と、を有することを特徴とする。
前記結晶化工程では、前記振動板の歪み点以下の温度で結晶化させるのが好ましい。
転移点は、この温度未満ではガラス状態であり、この温度以上では性質が大きく変わる(例えば体積や熱膨張など)温度である。歪み点は、その温度以下では歪みが発生しない温度である。
前記接合工程の後、前記積層工程の前に、前記振動板を厚さ10μm以下に研磨薄片化する工程を有するとよい。
本発明の圧電素子の製造方法は、Naを含むガラスからなる振動板を提供する提供工程と、前記振動板上に、前記圧電素子の電極層および圧電膜を積層する積層工程と、積層中または積層後の前記圧電膜を、前記振動板の転移点未満の温度で結晶化させる結晶化工程と、を有することを特徴とする。
ガラスは一般に歪み点が低いものが多いが、アルミノケイ酸ガラスなどの一部のものは歪み点が650℃以上のものも存在する。これらのガラス材料はNaを含むため、ガラス振動板の陽極接合が可能であり、また線膨張係数がSiに近いため、Si基板からなる流路基板にガラス振動板を陽極接合した後に600℃〜700℃程度の高い温度を加えても、強固な接合が失われない。
一方で、圧電性を有する材料の焼結温度は非常に高く、圧電材料として代表的なPZTはバルクでは1000℃以上の温度で焼結しないと充分に結晶化しないが、真空成膜したPZTの薄膜の場合は焼結温度が大きく低下し、650℃程度の焼成(アニール)でも充分に結晶化することを本発明者らは見出した。
そこで、前述のように歪み点の高いアルミノケイ酸ガラス等を用いたガラス振動板を、あらかじめ圧力発生室等を形成したSiの流路基板に陽極接合したうえで、ガラス振動板を研磨薄片化して、その上に直接、圧電素子の電極層や圧電膜を成膜・積層し、圧電膜の結晶化は、ガラス振動板の歪み点以下の温度に加熱しながら成膜するか、あるいは常温で成膜後にガラス振動板の歪み点以下でアニールすることにより行う。このように圧電膜の結晶化温度より歪み点の高いガラスの振動板材料を選択することで、アニール工程等におけるガラス振動板の熱歪を低減し、ユニモルフ型圧電素子を駆動源とする信頼性の高い液体吐出ヘッドを簡易に作製することができる。
また、ガラス振動板を研磨薄片化することによって、ガラス振動板の陽極接合後に凹凸や特性の変化した部分を完全に除去し、平坦化するとともに、ガラス振動板を10μm以下の厚さに研磨することによって、圧力発生室上で10nm以上撓ませる。この撓みによって、結晶化のための熱処理時の熱膨張差を吸収して、ガラス振動板の陽極接合部の剥離を防ぐことが可能になる。さらに研磨薄片化によってガラス振動板が1nm以上に一様に表面荒さをもつことになり、ガラス振動板上に形成された圧電素子膜の密着性が向上し、熱処理時に剥がれにくくなる。
また、ガラス振動板上に直接圧電膜等を成膜・積層すれば、従来例のようにPZT膜を転写するために消耗品となる単結晶基板を使う場合に比べて、材料コストを大きく下げることができるうえに、非常に時間のかかる単結晶基板の溶解工程を省くことによって、スループットを大きく向上させることが可能となる。
更に、本発明に係る液体吐出ヘッドは、以下の関係が成立することが好ましい。
(中間膜の熱膨張係数×ヤング率×厚さ)−(振動板の熱膨張係数×ヤング率×厚さ)
≧(圧電膜の熱膨張係数×ヤング率×厚さ)
圧力室等の液体流路を形成する流路基板にSi基板を用いる場合、振動板はSiに近い熱膨張係数のものを用いないと熱履歴により剥離する確率が大きくなる。Si基板は熱膨張係数が3×10-6(/℃)程度とかなり小さい部類に入り、振動板も熱膨張係数の比較的小さなガラス材料等を選択する必要性がある。またSi基板の表面を酸化することによってSiO2 層を作成し、Si基板を裏抜きして振動板として用いる場合でも、SiO2 の熱膨張係数は0.2×10-6(/℃)程度と非常に小さく、熱膨張係数の小さな振動板を用いることに変わりはない。
これに対して、圧電膜を形成する圧電材料は熱膨張係数の大きなものが多く、特に代表的なPZTは最も圧電性の高いMPB組成において9×10-6(/℃)程度とかなり大きい。従って、熱膨張係数の大きな圧電膜を熱膨張係数の小さな振動板に成膜することになり、圧電膜を結晶化して冷却する際に圧電膜に引っ張り応力を加えることになる。
一例として図7に充分に厚いMgO基板上にPZT膜を成膜し焼成・結晶化させたときのX線回折パターンを示す。また、図8には、充分に厚いSi基板上にPZT膜を成膜・焼成したときの熱膨張係数とX線回折で得られたPZT(112)(211)混合ピークの面間隔dの関係を示す。図7に示されるPZT膜は無配向であり、PZT(211)は正確にはPZT(112)(211)混合ピークである。このPZT(112)(211)混合ピークに着目すると、図8に示すように熱膨張係数の小さなSi基板上では面間隔dが小さくなり引っ張りに、PZTより熱膨張係数の大きなMgO上では面間隔dが大きくなり圧縮になっている様子がわかる。
図9は圧電性劣化の原因を説明するもので、Siのように熱膨張係数の小さな基板上に成膜された場合、結晶化温度からキュリー点を超えて室温まで冷却される際に引っ張りの応力が結晶の相転移時にかかり、PZTのような正方晶においては分極軸であるC軸方向が引っ張り応力の加わる電界と垂直な面内を向くいわゆる90°ドメインが多くなる。例えば、正方晶である結晶化温度で(100)(010)(001)等価面であったものは、キュリー点を通過して正方晶に転移する際に面内の引っ張りにより(100)を向くものが多くなり、結晶化温度で(110)(101)(011)等価面であったものは、(110)を向くものが多くなる。このように、電界に対し分極軸が垂直に向いているものが多くなるため、圧電性が大きく劣化すると考えられる。
図10に、熱膨張係数の大きなMgO基板上にPZT膜を成膜した場合の電気的特性を、図11に熱膨張係数の小さなSi基板上にPZT膜を成膜したときの電気的特性を示す。図10および図11のグラフを比較すると、電界と電束密度の関係(P−Eカーブ)においてMgO基板上では角型比が高く飽和電束密度が高い良好なヒステリシスを描き圧電性も高いが、Si基板上では角型比が落ち飽和電束密度も低くヒステリシスが劣化し、圧電性も低くなることが分かる。
本発明者らは鋭意研究を重ね、10μm以下の薄い振動板と圧電膜の間に、圧電膜より熱膨張係数の大きな中間膜を設けて、その膜厚が、(中間膜の熱膨張係数×ヤング率×厚さ)−(振動板の熱膨張係数×ヤング率×厚さ)≧(圧電膜の熱膨張係数×ヤング率×厚さ)の関係を満たすように設計することによって、結晶化温度から常温に冷却する過程で圧電膜に圧縮方向の応力を加え、90°ドメインの増加を抑制することに成功した。
すなわち、振動板と圧電膜の間に上記の関係を満たす熱膨張係数の大きな中間膜を介在させることによって、圧電性を劣化させることなく、転写プロセスを用いずに振動板上へ直接圧電膜を形成し、優れたユニモルフ型の圧電膜素子を形成することが可能になる。またこの手法を用いて作製したユニモルフ型の圧電膜素子を駆動源とする高性能で安価な液体吐出ヘッドを実現することが可能になる。
以上まとめると、本発明は次の様な作用効果を奏するものである。
・陽極接合は、接合強度が比較的高い上、簡易である。
・積層中または積層後の圧電膜を、振動板の転移点未満の温度で結晶化させるので、振動板と流路基板との接合強度が低下しない。
・積層工程を接合工程の後に行えば、振動板を歪みのない状態で流路基板に接合できる。
図1は、一実施の形態による液体吐出ヘッドを示す。流路基板1は圧力発生室2およびこれに連通するノズル3を有し、圧力発生室2は、オリフィス4を介してインク等の液体を供給する液体供給室5に連通する。このようにノズル3に連通する圧力発生室2を有する流路基板1と、圧力発生室2に圧力を印加するための振動板であるガラス振動板6上に積層された圧電素子7とを有する液体吐出ヘッドにおいて、圧電素子7は、ガラス振動板6上に圧電膜8および下電極9a、上電極9b等の電極層を後述するように順次成膜・積層したユニモルフ型圧電素子である。
流路基板1はSi基板であり、ガラス振動板6には、歪み点が650℃以上のガラス振動板材料であるホウケイ酸ガラス、アルミノケイ酸ガラスおよびアルミノホウケイ酸ガラスのなかから適宜選択する。また、圧電膜8は後述する成膜方法によって成膜された圧電体薄膜であり、例えば、650℃以下の温度でも充分に結晶化するPZT膜である。従って、ガラス振動板6を著しく変形させることなく、成膜中または成膜後の圧電膜8の結晶化を行うことができる。
また、ガラス振動板6は、陽極接合によってSi基板である流路基板1に結合され、研磨によって厚さ10μm以下に薄片化されている。このような薄片化のために、ガラス振動板6には圧力発生室2に対応する部分の中央が最大で10nm以上撓んだ状態となり、この撓みによって、圧電膜8の焼結時のガラス振動板6と流路基板1との熱膨張差を吸収し、陽極接合部に大きな熱歪がかかるのを防ぐことができる。
図2は、図1の液体吐出ヘッドの製造方法を説明する工程図であり、同図の(a)に示すように、ノズル3、圧力発生室2、オリフィス4、液体供給室5等を形成する溝を微細加工したSi基板からなる流路基板1上にガラス振動板材料であるガラス基板6aを陽極接合し、(b)に示すように、陽極接合後のガラス基板6aを研磨薄片化してガラス振動板6を形成する。続いて図2の(c)に示すように、ガラス振動板6上に圧電膜8および上下電極9a、9b等を成膜・積層し、圧電素子7を直接形成する。
すなわち、図2の(c)に示すように、まず下電極9aをガラス振動板6上に成膜し、その上に圧電膜8を成膜する。圧電膜8は、その成膜中もしくは成膜後に、ガラス振動板6の転移点未満、好ましくは歪み点以下の温度で熱処理して結晶化させ、圧電特性を持たせる。次いで、図2の(d)に示すように、圧電膜8上に上電極9bを成膜し、同図の(e)に示すように圧電膜8および上電極9bをパターニングし、(f)に示すように、ノズル3の中間部でダイシングソーによって切断し、ノズル3を開口させる。
ここで、ガラス振動板6(ガラス基板6a)の材料は、前述のように歪み点が高いガラス材料であるホウケイ酸ガラス、アルミノケイ酸ガラスあるいはアルミノホウケイ酸ガラスが選択される。これらのガラスは、線膨張係数が、前記熱処理温度において流路基板1を構成するSi基板の50%以内であり、かつ、ガラス内の不純物イオンが陽極接合時に可動イオンとして作用し、陽極接合が容易なガラス材料である。
ガラス基板6aを陽極接合後に研磨薄片化によって10μm以下の厚みのガラス振動板6にすると、圧力発生室2の中央部で10nm以上撓ませることができる。同時に、1nm以上の表面荒さに粗面化されるため、圧電素子7との密着性が向上する。
このように、ガラス振動板となるガラス材料として、ヤング率が低く、高耐熱性を有する様々なガラス基板のなかで、特に歪み点が650℃以上で、Si基板と熱膨張係数が高い温度領域まで近く、陽極接合後に剥がれの発生しにくいホウケイ酸ガラスやアルミノケイ酸ガラス、アルミノホウケイ酸ガラスを選択して用いる。
また、圧電膜8の成膜方法には、例えばRFスパッタリング、イオンビームスパッタ、イオンプレーティング、EB蒸着、プラズマCVD、MO−CVD、レーザーアブレーションなどを用いることができる。
特に圧電性を有する膜の成膜においては、組成がその特性に大きく寄与するため、基体の温度が可変でかつガス圧により組成制御の容易なRFスパッタリングが好ましい。
圧電膜8の材料には、圧電性を有する様々な膜材料を用いることができるが、特にPb、Zr、Tiを含むものが望ましい。例えばPZTと呼ばれるPb(Zr、Ti)O3 、(Pb、La)(Zr、Ti)O3 などがその代表例としてあげられる。特にPb(Zr、Ti)O3 は圧電特性に優れ、材料として好ましい。
本実施例は、圧電膜8の成膜方法としてRFスパッタリングを用いたものであり、あらかじめ圧力発生室2等を設けたSi基板からなる流路基板1上にガラス振動板6となるアルミノケイ酸ガラスSD2(HOYA株式会社製)からなるガラス基板6aを陽極接合し、研磨薄片化ののち、ガラス振動板6上に下電極9aを介して圧電膜8であるPZT膜を非加熱で成膜し、その後に結晶化のための焼成を行った。アルミノケイ酸ガラスSD2(HOYA株式会社製)の転移点は720℃、歪み点は670℃である。
まず、Si(100)基板上に異方性エッチング技術を用いてノズルとなる溝等を形成した。溝は三角柱の形状をしており、さらに、圧力発生室、オリフィス、液体供給室等が形成されている。そして、ガラス振動板となる30μm厚のアルミノケイ酸ガラス基板を溝加工されたSi基板上に陽極接合によって結合し、アルミノケイ酸ガラス基板を研磨にて5μmまで薄片化した。研磨によって薄片化したアルミノケイ酸ガラスのガラス振動板上に密着層としてTiを厚さ20nm、さらにその上に上電極となるPtを厚さ150nm、RFスパッタリングによって形成した。その上に表示Arガス圧3.0Paで、アモルファスの圧電膜であるPZT膜を3μmの厚さに無加熱で成膜した。このアモルファスのPZT膜は650℃の処理により圧電性を有するPZT膜となる。
成膜したPZT膜を酸素雰囲気中で昇降温1℃/min、650℃で5時間アニールし、結晶化を行った。ガラス振動板を構成するアルミノケイ酸ガラスSD2(HOYA株式会社製)は歪み点が667℃であり、650℃で焼成しても問題は発生しなかった。図3にSi基板とアルミノケイ酸ガラスの熱膨張曲線を示すが、Si基板とアルミノケイ酸ガラスは線膨張係数が高温まで非常に近く、焼成によっても剥離等の問題は全く発生しなかった。その後、結晶化したPZT膜の表面に上電極となるPtをRFスパッタにより形成した。
なお、本実施例は、圧電膜の上下に電極を設けた圧電素子の片方の面に、ガラス振動板が貼り付けられたユニモルフ型の圧電素子が形成された液体吐出ヘッドであるが、あらかじめSi基板に様々な加工を施すことにより、ユニモルフ型の圧電素子を用いた様々なデバイスが作製可能である。
PZT膜上の下電極PtをSi基板の溝等に合わせてドライエッチングにてパターニングを行い、さらにPtのパターンに沿ってウェットエッチングによりPZT膜をエッチングした。このようにして作製したユニモルフ型の圧電素子を図4に示すような矩形波を印可してレーザードップラー変位計による測定を行ったところ、ユニモルフ型圧電素子として充分な変位を確認できた。
またこのように作製した液体吐出ヘッドにIPAを充填して図4のような駆動波形によって駆動したところ、液滴の吐出を確認することができた。
本実施例は、圧電膜8の成膜方法としてRFスパッタリングを用いたものであり、あらかじめ圧力発生室2等を設けたSi基板からなる流路基板1上にガラス振動板6となるアルミノケイ酸ガラスSD2(HOYA株式会社製)からなるガラス基板6aを陽極接合し、圧電素子7の圧電膜8となるPZT膜を加熱して結晶化しながら成膜したものである。
まず、Si(100)基板上に異方性エッチング技術を用いてノズルとなる溝等を形成した。溝は三角柱の形状をしており、さらに、圧力発生室、オリフィス、液体供給室等が形成されている。ガラス振動板となる30μm厚のアルミノケイ酸ガラスを溝が形成されたSi基板上に陽極接合によって結合し、アルミノケイ酸ガラスを研磨にて5μmまで薄片化した。研磨によって薄片化したアルミノケイ酸ガラス上に密着層としてTiを厚さ20nm、さらにその上に上電極となるPtを厚さ150nm、RFスパッタリングにて形成した。その上に基体の温度650℃、表示Arガス圧3.0Paで、結晶化したPZT膜を3μmの厚さに成膜した。
ガラス振動板を構成するアルミノケイ酸ガラスSD2(HOYA株式会社製)は歪み点が667℃であり、650℃でPZT膜を加熱しながら成膜しても問題は発生しなかった。図3に示すように、Si基板とアルミノケイ酸ガラスは線膨張係数が高温まで非常に近く、PZT膜の成膜工程で基体の温度を650℃に昇温、保持、降温させても剥離等の問題は全く発生しなかった。その後、結晶化したPZT表面に上電極となるPtをRFスパッタにより形成した。
PZT上の下電極PtをSi基板上の溝等に合わせてドライエッチングにてパターニングを行った。さらにPtのパターンに沿ってウェットエッチングによりPZT膜をエッチングした。このようにして作製したユニモルフ型圧電素子を図4に示すような矩形波を印可してレーザードップラー変位計による測定を行ったところ、ユニモルフ型圧電素子として充分な変位を確認できた。
またこのように作製した液体吐出ヘッドにIPAを充填して図4のような駆動波形によって駆動したところ、液滴の吐出を確認することができた。
(比較例1)
比較のために、耐熱性が高くない耐熱ガラスの振動板上に圧電性を有する膜を転写によって形成し、液体吐出ヘッドの作製を行った例をあげる。
MgO基板上に、実施例1と同様にRFスパッタにて成膜を行い、Pt(111)/Ti/MgO基板とした。その上にPZT膜を厚さ3μm成膜してPZT/Pt/Ti/MgO基板とした。
形成したPZT膜を酸素雰囲気中で昇降温1℃/min、700℃で5時間アニールを行った。このPZT表面に上電極となるPtをRFスパッタにより形成しPt/PZT/Pt/Ti/MgO基板とした。
このMgO基板上に、ガラス振動板として研磨によって5μm厚に薄片化された耐熱ガラスが陽極接合によって接合され、かつ、実施例1と同様に溝等が形成されたSi基板を、エポキシ系接着剤を用いてMgO基板の上電極側に接着した。接着後に、基板を150℃にて加熱し、エポキシ樹脂を完全に硬化した後、ゆっくりと冷却した。その後MgO基板以外をレジストで保護し、熱燐酸でMgO基板の溶解を行った。しかし300μm厚のMgO基板を溶解するのに2時間以上の時間を要し、量産のスループットとしては容認できないレベルであった。さらにMgO基板は非常に高価であり、圧電素子作製のたびに溶解することはコスト上問題があった。
(比較例2)
耐熱性が高くない耐熱ガラスの振動板上に圧電膜を直接成膜によって形成し、液体吐出ヘッドの作成を試みた例を挙げる。
Si(100)基板上に異方性エッチング技術を用いてノズルとなる溝等を形成した。液体供給室、オリフィス、圧力発生室、ノズル流路等も形成されており、液体供給室の一部は貫通している。この後、振動板として30μm厚の耐熱ガラスを前述の溝等が形成されたSi基板上に陽極接合を用いて接合し、耐熱ガラスを研磨にて5μmまで薄片化した。研磨によって薄片化した耐熱ガラス上に密着層としてTiを厚さ20nm、さらにその上に下電極となるPtを厚さ150nm、RFスパッタリングにて形成した。その上に基体を無加熱、表示Arガス圧3.0Paで、アモルファスのPZT膜を3μm表面に形成した。形成したPZT膜を酸素雰囲気中で昇降温1℃/min、650℃で5時間アニールし、結晶化を行った。耐熱ガラスは歪み点が510℃であり、アニール後に振動板が原型をとどめなくなる等、プロセス上問題があった。
上記の実施例によれば、あらかじめ液体流路を形成したSi基板上にガラス振動板となる耐熱性のガラス基板を陽極接合して研磨薄片化し、その上に貴金属等の電極層、その上に圧電性を有する膜をガラス振動板の歪み点以下で加熱結晶化しながら成膜、もしくは非加熱成膜してガラス振動板の歪み点以下でアニールして結晶化させることにより、ガラス振動板上に圧電素子を直接形成し、さらに圧電膜の上に貴金属等の電極層を形成し、ユニモルフ型圧電素子を駆動源とする液体吐出ヘッド等を作製するものであるため、従来例のように圧電素子を転写するための高価な単結晶基板を別基板として用いる場合に比べて、材料コストを大きく下げることができる。また、単結晶基板を時間をかけて溶解する工程が省かれるため、スループットの向上が期待できる。さらに、Si基板上にノズルや液体供給室を形成した後にガラス振動板を接合し、その上に圧電膜を直接成膜するものであるため、より一層高精細な液体吐出ヘッドを歩留まり良く生産することが可能となる。
図5は他の実施の形態による液体吐出ヘッドを示すもので、これは、Si基板からなる流路基板1に、圧力室2、ノズル3、オリフィス4、液体供給室5等の液体流路を形成するための溝加工を行い、その上に振動板6が陽極接合され、研磨によって薄片化され、さらに、ユニモルフ型の圧電素子7を構成する圧電膜8、電極手段である第1および第2電極9a、9bを積層して圧電アクチュエータが形成される。
圧電素子7と振動板6の間には、圧電膜8より熱膨張係数の大きな中間膜10が形成され、その上に、原子の拡散防止と電極をかねた貴金属の第1電極9aを介して圧電膜8が積層され、その上に第2電極9bが形成される。ここで中間膜10の厚さは以下の条件を満たすように設定されている。
(中間膜の熱膨張係数×ヤング率×厚さ)−(振動板の熱膨張係数×ヤング率×厚さ)
≧(圧電膜の熱膨張係数×ヤング率×厚さ)
振動板6には様々な材料を用いることができるが、中でもヤング率が低く、高耐熱性を有するガラス板が好ましく、特にSi基板と熱膨張係数が高い温度領域まで近く、陽極接合後に剥がれの発生しにくいホウケイ酸ガラスやアルミノケイ酸ガラス、アルミノホウケイ酸ガラス基板が好ましい。
圧電特性を有する誘電体薄膜である圧電膜の作成方法にはあらゆる成膜方法を用いることが可能であり、例えばRFスパッタリング、イオンビームスパッタリング、イオンプレーティング、EB蒸着、プラズマCVD、MO−CVD、レーザーアブレーションなどが挙げられる。いずれの成膜方法も酸化物の薄膜を作成することが可能であるが、圧電膜の作製においては、組成がその特性に大きく寄与するため、基板温度可変でかつガス圧により組成制御の容易なRFスパッタリングが好ましい。
圧電膜の材料には、圧電性を有する様々な薄膜材料を用いることができるが、特にPbを含むペロブスカイト構造酸化物が望ましい。例えばPb(Zr、Ti)O3 Pb、La)(Zr、Ti)O3 がその代表例としてあげられる。特にPb(Zr、Ti)O3 (いわゆるPZTと表される)は圧電特性に優れ、材料として好ましい。また最近注目を浴びているPb(Zn、Nb)O3 −PbTiO3 固溶体(いわゆるPZN−PTと表される)やPb(Mg、Nb)O3 −PbTiO3 固溶体(いわゆるPMN−PTと表される)などもPZTを大きく上回る非常に大きな圧電特性を有し、材料として好ましい。
圧電膜より大きな熱膨張係数を持つ中間膜には、熱膨張係数の大きな様々な膜を用いることができるが、特に熱膨張係数が13.0×10-6(/℃)のMgO、熱膨張係数が11.5×10-6(/℃)のZrO2 、熱膨張係数が16.8×10-6(/℃)のCuなどは、その熱膨張係数が特に大きく、また耐熱性にも優れているため、中間膜の材料として好ましい。
図5に示す構成の液体吐出ヘッドの流路基板1として、図6に示すように、圧力室2、ノズル3、オリフィス4、液体供給室5となる溝を設けたSi基板を用いて、振動板6となるアルミノケイ酸ガラスSD2(HOYA株式会社 登録商標)を陽極接合し、その上に中間膜10として熱膨張係数の非常に大きいMgO膜をRFスパッタリングによって成膜し、さらにその上に圧電膜8となるPZT膜を非加熱成膜・後焼成し、ユニモルフ型圧電膜素子を作製したものである。
まず、Si(100)基板上に異方性エッチング技術を用いて圧力室2等の液体流路となる溝を形成した。この溝は、図6の(b)に示すように、ノズル方向から見て三角柱の形状をしている。振動板6として30μm厚のアルミノケイ酸ガラスSD2(SDガラス板)をSi基板上に陽極接合を用いて貼り付け、SD2ガラス板を研磨にて3μmまで薄片化した。アルミノケイ酸ガラスSD2の熱膨張係数は3.2×10-6/℃)、ヤング率は8.9×1010(N/m2 )である。研磨によって薄片化したアルミノケイ酸ガラス上に熱膨張係数の大きなMgOの中間膜10をRFスパッタリングにて加熱結晶化しながら厚さ1μmに成膜した。MgOの熱膨張係数は13.0×10-6(/℃)、ヤング率は20.6×1010(N/m2 )である。
その上に密着層としてTi膜を厚さ20nm、さらにその上に第1電極9aとなるPt膜を厚さ150nmにRFスパッタリングにて形成した。その上に基板ヒーターOFF、表示Arガス圧3.0Paで、圧電膜8となるアモルファスのPZT膜をRFスパッタリングにて1μmに成膜した。このアモルファスのPZT膜は650℃の後熱処理により無配向のPZT膜となる。PZTの熱膨張係数はMPB組成近傍で9.0×10-6(/℃)、ヤング率は8.0×1010(N/m2 )である。
形成したPZT膜を酸素雰囲気中で昇降温1℃/min、650℃で5時間アニールし、結晶化を行い、圧電膜8を形成した。図6の(b)に結晶化温度から室温までの各層の熱収縮の関係を示す。振動板6の熱収縮は非常に小さく他の層に対して引っ張りに働く。熱膨張係数の大きなMgOの中間膜10は引っ張りをキャンセルして圧縮方向に働こうとする。ここで、(中間膜MgOの熱膨張係数×ヤング率×厚さ)−(振動板SD2の熱膨張係数×ヤング率×厚さ)≧(圧電膜PZTの熱膨張係数×ヤング率×厚さ)、の関係を満たしており、かつ(中間膜MgOの熱膨張係数)>(圧電膜PZTの熱膨張係数)の関係にあるため、結晶化温度から室温までの温度領域で圧電膜8となるPZT膜に対して圧縮の力が働き、さらに振動板6となるガラスが3μmと薄く、振動板6が圧力室2の側に変形して圧縮の応力が失われないので、PZT膜が焼成温度から室温まで冷却される際に90°ドメインが増加するのが抑制された。また、アルミノケイ酸ガラスSD2は歪み点が667℃であり、650℃で焼成しても問題は発生しなかった。
図12にはSi基板とアルミノケイ酸ガラスSD2の温度に対する熱膨張係数変化(HOYA株式会社カタログ抜粋)を示す。Si基板とアルミノケイ酸ガラスは熱膨張係数が高温まで非常に近く、焼成によっても剥離等の問題は全く発生しなかった。その後、結晶化したPZT膜表面に第2電極9bとなるPt膜をRFスパッタリングにより形成した。
この圧電アクチュエータの電気的特性を測定したところ、電界強度と電束密度の関係であるP−Eカーブにおいて良好な角型比と高い飽和電束密度を示し、良好なヒステリシス特性を示した。
次いで、PZT膜上のPt膜をSi基板の溝に合わせてドライエッチングにてパターニングを行った。さらにPt膜のパターンにそってウェットエッチングによりPZT膜をエッチングした。このようにして作製したユニモルフ型の圧電素子を有する圧電アクチュエータを図4に示す矩形波を印可してレーザードップラー変位計による測定を行ったところ、圧電アクチュエータとして充分な変位を確認できた。
本実施例では圧電膜の上下に電極を有する圧電素子の片方の面に、振動板が貼り付けられてユニモルフ型の圧電素子が用いられているため、あらかじめSi基板上に様々な加工を施すことにより、ユニモルフ型の圧電素子を用いた様々なデバイスが作製可能である。
本実施例の液体吐出ヘッドにIPAを充填して図4に示す駆動波形によって駆動したところ、液滴の吐出を確認することができた。
本実施例は、流路基板であるSi基板上に陽極接合したアルミノケイ酸ガラスSD2上に、圧電膜としてPZT膜をRFスパッタリングを用いて、基板加熱により結晶化しながら成膜したユニモルフ型の圧電素子を圧電アクチュエータとする液体吐出ヘッドを作製したものである。
Si(100)基板上に異方性エッチング技術を用いて圧力室等となる溝を形成した。この溝の断面は三角柱の形状をしている。振動板として30μm厚のアルミノケイ酸ガラスSD2をSi基板上に陽極接合を用いて貼り付け、アルミノケイ酸ガラスSD2を研磨にて5μmまで薄片化した。アルミノケイ酸ガラスSD2の熱膨張係数は3.2×10-6(/℃)、ヤング率は8.9×1010(N/m2 )である。研磨によって薄片化したアルミノケイ酸ガラスSD2上に熱膨張係数の大きなMgO膜をRFスパッタリングにて加熱結晶化しながら厚さ1.5μmに成膜した。MgOの熱膨張係数は13.0×10-6(/℃)、ヤング率は20.6×1010(N/m2 )である。その上に密着層としてTi膜を厚さ20nm、さらにその上に第1電極となるPt膜を厚さ150nmにRFスパッタリングにて形成した。
その上に基板温度650℃、表示Arガス圧3.0Paで、PZTを結晶化しながら3μmのPZT膜を成膜した。PZTの熱膨張係数はMPB組成近傍で9.0×10-6(/℃)、ヤング率は8.0×1010(N/m2 )である。(MgOの熱膨張係数×ヤング率×厚さ)−(振動板の熱膨張係数×ヤング率×厚さ)≧(PZTの熱膨張係数×ヤング率×厚さ)、の関係を満たしており、かつ(MgOの熱膨張係数)>(PZTの熱膨張係数)の関係にあるため、結晶化温度から室温までの温度領域でPZT膜に対して圧縮の力が働き、さらに振動板となるガラスが5μmと薄く、振動板が圧力室側に変形して圧縮の応力が失われないので、PZTが焼成温度から室温まで冷却される際に90°ドメインが増加するのが抑制された。また図12に示すようにSi基板とアルミノケイ酸ガラスは高温まで熱膨張係数が非常に近く、基板温度を650℃に昇温、保持、降温させても全く剥がれは生じなかった。結晶化したPZT表面に第2電極となるPt膜をRFスパッタリングにより形成した。
この圧電アクチュエータの電気的特性を測定したところ、電界強度と電束密度の関係であるP−Eカーブにおいて良好な角型比と高い飽和電束密度を示し、良好なヒステリシス特性を示した。
次いで、PZT膜上のPt膜をSi基板の溝に合わせてドライエッチングにてパターニングを行った。さらにPt膜のパターンに沿ってウェットエッチングによりPZT膜をエッチングした。作製したユニモルフ型圧電膜素子を図4に示す矩形波を印可してレーザードップラー変位計による測定を行ったところ、圧電アクチュエータとして充分な変位を確認できた。
またこのように作製した液体吐出ヘッドにIPAを充填して図4に示す駆動波形によって駆動したところ、液滴の吐出を確認することができた。
本発明は、プリンター等の記録装置に搭載する液体吐出ヘッド以外にも、マイクロポンプ、圧電素子の駆動力を用いる各種デバイスに適用可能である。
一実施の形態による液体吐出ヘッドを示すもので、(a)はその模式斜視図、(b)は(a)のA−A線に沿ってとった断面図である。 図1の液体吐出ヘッドを製造する方法を説明する工程図である。 Si基板とアルミノケイ酸ガラスSD2等の温度に対する熱膨張変化を表わすグラフである(HOYA株式会社カタログより抜粋)。 圧電素子の評価に用いた駆動波形である。 他の実施の形態による液体吐出ヘッドを示すもので、(a)はその模式斜視図、(b)は(a)のA−A線に沿ってとった断面図である。 実施例3による圧電アクチュエータを示すもので、(a)その模式断面図、(b)は(a)のB−B線に沿ってとった断面図である。 PZT膜のX線回折パターンを示す図である。 PZT膜の結晶面(112)の面間隔を説明するグラフである。 引っ張り応力によって90°ドメインが増加する状況を説明する図である。 90°ドメインが増加した場合のPZT膜の電気的特性を示すグラフである。 90°ドメインを抑制した場合のPZT膜の電気的特性を示すグラフである。 SDガラスとSiの熱膨張を比較するグラフである。
符号の説明
1 流路基板
2 圧力発生室
3 ノズル
4 オリフィス
5 液体供給室
6 ガラス振動板
7 圧電素子
8 圧電膜

Claims (13)

  1. 圧電素子の圧電駆動力によって圧力発生室内の液体を加圧し、前記圧力発生室に連通するノズルから液体を吐出する液体吐出ヘッドの製造方法であって、
    前記圧力発生室を備えた流路基板を提供する提供工程と、
    前記流路基板に振動板を陽極接合する接合工程と、
    前記振動板上に、前記圧電素子の電極層および圧電膜を積層する積層工程と、
    積層中または積層後の前記圧電膜を、前記振動板の転移点未満の温度で結晶化させる結晶化工程と、
    を有することを特徴とする液体吐出ヘッドの製造方法。
  2. 前記結晶化工程では、前記振動板の歪み点以下の温度で結晶化させることを特徴とする請求項1記載の液体吐出ヘッドの製造方法。
  3. 前記接合工程の後、前記積層工程の前に、前記振動板を厚さ10μm以下に薄片化する工程を有することを特徴とする請求項1記載の液体吐出ヘッドの製造方法。
  4. 前記圧電素子の圧電膜が、真空成膜した少なくともPbを含むペロブスカイト構造の酸化物であることを特徴とする請求項1記載の液体吐出ヘッドの製造方法。
  5. 前記振動板がNaを含むガラスからなることを特徴とする請求項1記載の液体吐出ヘッドの製造方法。
  6. 前記ガラスが、ホウケイ酸ガラス、アルミノケイ酸ガラスまたはアルミノホウケイ酸ガラスであることを特徴とする請求項5記載の液体吐出ヘッドの製造方法。
  7. 前記流路基板がシリコンからなることを特徴とする請求項1記載の液体吐出ヘッドの製造方法。
  8. 前記接合工程と前記積層工程との間に、前記振動板上に中間膜を設ける工程をさらに有することを特徴とする請求項1記載の液体吐出ヘッドの製造方法。
  9. 前記中間膜が、MgO膜、ZrO2 膜またはCu膜であることを特徴とする請求項8記載の液体吐出ヘッドの製造方法。
  10. 請求項1の製造方法によって製造された液体吐出ヘッド。
  11. 請求項8の製造方法によって製造された液体吐出ヘッド。
  12. 以下の関係が成立することを特徴とする請求項11記載の液体吐出ヘッド。
    (中間膜の熱膨張係数×ヤング率×厚さ)−(振動板の熱膨張係数×ヤング率×厚さ)
    ≧(圧電膜の熱膨張係数×ヤング率×厚さ)
  13. 圧電素子の製造方法であって、
    Naを含むガラスからなる振動板を提供する提供工程と、
    前記振動板上に、前記圧電素子の電極層および圧電膜を積層する積層工程と、
    積層中または積層後の前記圧電膜を、前記振動板の転移点未満の温度で結晶化させる結晶化工程と、
    を有することを特徴とする圧電素子の製造方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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JP2008251916A (ja) * 2007-03-30 2008-10-16 Matsushita Electric Ind Co Ltd 圧電体素子及びその製造方法
JP2009088290A (ja) * 2007-09-28 2009-04-23 Fujifilm Corp 圧電アクチュエータの製造方法、液体吐出ヘッド、及び画像形成装置

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