以下、本発明のスターリングエンジンの一実施形態につき図面を参照しつつ詳細に説明する。
(第1実施形態)
本実施形態の目的は、複数の管により形成される複数の流路を通る流体と、外部熱源との間で熱交換が行われる熱交換器を備えたスターリングエンジンであって、その管群の少なくとも一部が曲げられた形状であっても、その熱交換能力の低下が抑制可能な熱交換器を備えたスターリングエンジンを提供することである。
なお、本明細書では、スターリングエンジンの加熱器のみを指して熱交換器と称する場合と、スターリングエンジンの加熱器と再生器と冷却器とを含めて熱交換器と称する場合があるが、いずれの意味で熱交換器の用語が使用されているかが明らかなように、文章中の定義や符号によって明示するものとする。また、特許請求の範囲や本明細書の一部では、スターリングエンジンの加熱器と再生器と冷却器とを含めて熱交換器を、熱交換器構成体と称する場合がある。
図1は、本実施形態のスターリングエンジンを示す正面図である。図2は、同側面図である。図1及び図2に示すように、本実施形態のスターリングエンジン10は、α型(2ピストン形)のスターリングエンジンであり、二つのパワーピストン20、30を備えている。二つのパワーピストン20、30は、直列並行に配置されている。低温側パワーピストン30のピストン31は、高温側パワーピストン20のピストン21に対して、クランク角で90°程度遅れて動くように位相差がつけられている。
高温側パワーピストン20のシリンダ(以下高温側シリンダという)22の上部の空間(膨張空間)には、加熱器47によって加熱された作動流体が流入する。低温側パワーピストン30のシリンダ(以下低温側シリンダという)32の上部の空間(圧縮空間)には、冷却器45によって冷却された作動流体が流入する。再生器46は、膨張空間と圧縮空間を作動流体が往復する際に熱を蓄える。即ち、膨張空間から圧縮空間へと作動流体が流れる時には、再生器46は、作動流体より熱を受け取り、圧縮空間から膨張空間へと作動流体が流れる時には、蓄えられた熱を作動流体に渡す。
2つのピストン21、31の往復動に伴い、作動ガスの往復流動が生じて高温側シリンダ22の膨張空間と低温側シリンダ32の圧縮空間にある作動流体の割合が変化するとともに、全内容積も変わるため、圧力の変動が生じる。2つのピストン21、31がそれぞれ同位置にある場合の圧力を比較すると、膨張ピストン21についてはその上昇時より下降時の方がかなり高く、圧縮ピストン31については逆に低くなる。このため、膨張ピストン21は外部に対し大きな正の仕事(膨張仕事)を行い、圧縮ピストン31は外部から仕事(圧縮仕事)を受ける必要がある。膨張仕事は、一部が圧縮仕事に使われ、残りが駆動軸40を介して出力として取り出される。
高温側シリンダ22及び低温側シリンダ32のそれぞれは、円筒状に形成されており、直方体の箱状に形成されたクランクケース41に直立した状態で配置される。高温側シリンダ22及び低温側シリンダ32は、クランクケース41の上面部42に固定されている。低温側シリンダ32は、その全体がクランクケース41の内部に収容されている。高温側シリンダ22は、その一部がクランクケース41の内部に収容され、残りの一部はクランクケース41の外部にまで延びるように設けられている。低温側シリンダ32の上方には、再生器46との間に冷却器45が設けられている。冷却器45には、冷却水が使用される。
加熱器47は、多管式熱交換器(shell-and-tube exchanger, tubular exchanger)により構成されている。加熱器47は、複数の伝熱管(管群)47tを有し、それらの複数の伝熱管47tが概ねU字形の形状に形成されてなるものである。各伝熱管47tの第1端部47aが高温側シリンダ22の上部に接続されている。各伝熱管47tの第2端部47bが再生器46に接続されている。
上記のように、加熱器47が概ねU字形に形成されている理由、及び、加熱器47の管群47tの少なくとも一部が曲げられた形状であってもその熱交換能力の低下を抑制するための構成については後述する。
作動流体は、その平均圧力が高い程、冷却器45や加熱器47による同じ温度差に対しての圧力差が大きくなるので高い出力が得られる。そのため、高温側シリンダ22、低温側シリンダ32内の作動流体は高圧に保持されている。本実施形態では、クランクケース41の内部全体が高圧に保持されている。即ち、クランクケース41が高圧容器として機能している。
ピストン21,31は、円柱状に形成されている。ピストン21、31の外周面とシリンダ22、32の内周面との間には、それぞれ数十μmの微小クリアランスが設けられており、そのクリアランスには、スターリングエンジン10の作動流体(空気)が介在している。ピストン21,31は、それぞれシリンダ22、32に対して空気軸受48により非接触の状態で支持されている。したがって、ピストン21,31の周囲には、ピストンリングは設けられておらず、また、一般にピストンリングと共に使用される潤滑油も使用されていない。但し、シリンダ22、32の内周面には、固定潤滑材が付されている。空気軸受48の作動流体の摺動抵抗は元々極めて低いが、更に低減するために、固定潤滑材が付されている。上記のように、空気軸受48は、作動流体(気体)により膨張空間、圧縮空間それぞれの気密を保ち、リングレスかつオイルレスでクリアランスシールを行う。
本実施形態のスターリングエンジン10は、車両においてガソリンエンジン(内燃機関)と共に用いられてハイブリッドシステムを構成する。即ち、スターリングエンジン10は、ガソリンエンジンの排気ガスを熱源として用いる。図3に示すように、スターリングエンジン10の加熱器47が車両のガソリンエンジンの排気管100の内部に配置され、排気ガスから回収した熱エネルギーにより作動流体が加熱されてスターリングエンジン10が作動する。
本実施形態のスターリングエンジン10は、排気管100の内部にその加熱器47が収容されるというように車両内の限られたスペースに設置されるため、装置全体がコンパクトである方が設置の自由度が増す。そのために、スターリングエンジン10では、2つのシリンダ22、32をV字形ではなく、直列並行に配置した構成を採用している。
加熱器47が排気管100の内部に配置されるに際しては、排気管100の内部において相対的に高温の排気ガスが流れる排気ガスの上流側(ガソリンエンジンに近い側)100aに、加熱器47の高温側シリンダ22側が位置し、相対的に低温の排気ガスが流れる下流側(ガソリンエンジンから遠い側)100bに加熱器47の低温側シリンダ32側が位置するように配置される。加熱器47の高温側シリンダ22側をより多く加熱するためである。
スターリングエンジン10の熱源は、上記のように車両のガソリンエンジンの排気ガスであり、スターリングエンジンに専用に用意された熱源ではない。そのため、それほど高い熱量が得られるわけではなく、排気ガスの例えば約800℃程度の熱量でスターリングエンジン10が作動する必要がある。そのために、スターリングエンジン10の加熱器47は排気管100内の排ガスから効率的に受熱する必要がある。
上述のように、熱交換器(加熱器47、再生器46、冷却器45,図1の符号90参照、熱交換器構成体)の体積が大きいと、無効容積が増えることとなり、スターリングエンジン10の出力が減少する。一方で、熱交換器(熱交換器構成体)の体積をコンパクトにすると、その分、熱交換が困難となり受熱量が減少し、スターリングエンジン10の出力が減少する。これらのことから、無効容積の減少と受熱量の増加とを両立させるためには、熱交換器(熱交換器構成体)の効率を上げる必要がある。そのために、加熱器47は効率的に受熱する必要がある。
排気管100内の排ガスから効率的に受熱し、かつ効率的に熱交換するためには、加熱器47の全てを過不足なく排気管100内に収容するとともに、排気ガスから受熱しないように冷却器45を排気管100の外に出す構成が必要である。このことから、排気管100においてスターリングエンジン10が取り付けられる平面である取付面100sを基準にすると、少なくとも冷却器45の高さ分だけ低温側シリンダ32の取付位置は、高温側シリンダ22よりも低い位置となる。即ち、低温側シリンダ32の上部に形成される圧縮空間の位置は、高温側シリンダ22の上部に形成される膨張空間の位置よりも低い位置となり、圧縮ピストン31の上死点は、膨張ピストン21の上死点の位置よりも低い位置となる。
本実施形態では、圧縮ピストン31と膨張ピストン21の上死点の位置を変えるために、各ピストンピン60a、60bとそれぞれのピストン31、21との間を、長さの異なる延長部(ピストン支柱部)64b、64aで連結している。膨張ピストン21の上死点の位置の方が圧縮ピストン31の上死点の位置よりも高い分だけ、膨張ピストン21に連結される延長部64aは、圧縮ピストン31に連結される延長部64bよりも長さが長い。
本実施形態では、膨張ピストン21自体と圧縮ピストン31自体の高さ(各ピストン21,31の上面と各ピストン21,31における延長部64a、64bとの連結点21c、31cとの間の距離)は同じになるように構成されていることから、長さの異なる延長部64a、64bを用いて各ピストン21,31の上死点の位置を変えている。この構成に代えて、膨張ピストン側と圧縮ピストン側とで延長部自体の長さは同じにし、膨張ピストン自体と圧縮ピストン自体の高さを変えるようにして構成することで、膨張ピストンと圧縮ピストンの上死点の位置を変える構成を採ることもできる。
また、加熱器47の全体を過不足なく排気管100内に収容するには、加熱器47の中央部47cを排気管100内に収容した状態で、加熱器47の第1端部47a及び第2端部47bの両方が排気管100の取付面100sに取り付けられる必要がある。即ち、第1端部47a及び第2端部47bのいずれかの位置が、取付面100sよりも上方であっても下方であっても、加熱器47の受熱面積を最大にすることはできない。
加熱器47の受熱面積を最大にすべく、加熱器47の第1端部47a及び第2端部47bの両方が排気管100の取付面100sに取り付けられることにより、加熱器47の第1端部47aと第2端部47bのそれぞれが取付面100sと同一面上に位置することになる。加熱器47の第1端部47aは、高温側シリンダ22の上面22aと間隔を開けずに連結され、第2端部47bは、再生器46の上面46aと間隔を開けずに連結されているから、高温側シリンダ22の上面22aは、再生器46の上面46aと同一面上に位置することになる。
加熱器47の第1端部47aと高温側シリンダ22の上面22aとは、第1端部47aの近傍に設けられたフランジ47fと高温側シリンダ22の上面22aの近傍に設けられたフランジ22bとが接合するようにボルトなどの締結手段で締結されている。同様に、加熱器47の第2端部47bと再生器46とは、第2端部47bの近傍に設けられたフランジ47gと再生器46の上面46aの近傍に設けられたフランジ46cとが接合するように締結手段で締結されている。
上記のように、高温側シリンダ22の上面22aは、再生器46の上面46aと同一面上に位置するように構成されているため、フランジ47fとフランジ22bとの接合面とフランジ47gとフランジ46cとの接合面とが同一面に位置する。このことから、排気管100の取付面100sにスターリングエンジン10を取り付ける際には、取付面100sを挟んでフランジ47fとフランジ22bとを接合するように取付面100sをも含めて一括して締結手段で締結するとともに、取付面100sを挟んでフランジ47gとフランジ46cとを接合するように取付面100sをも含めて一括して締結手段で締結することができる。以上のことから、排気管100に対してスターリングエンジン10を取り付け易い。
加熱器47において高温側シリンダ22との接続部分(横断面形状)は、高温側シリンダ22の上部(加熱器47との接続部分)の開口形状(真円)と同じ形状・大きさとされている。同様に、冷却器45において低温側シリンダ32との接続部分は、低温側シリンダ32の上部の開口形状と同じ形状・大きさとされている。冷却器45の上面(再生器46との接続部分)は、再生器46の下面と同じ形状・大きさとされている。加熱器47において再生器46との接続部分は、再生器46の上面と同じ形状・大きさとされている。即ち、加熱器47、再生器46、冷却器45の断面形状は、高温側シリンダ22及び低温側シリンダ32の開口形状と全て同じ形状・大きさに形成されている。この構成により、作動流体の流路抵抗(流通抵抗)が低減される。
なお、上記において、加熱器47の全体を過不足なく排気管100内に収容する構成を採用すると、加熱器47の第1端部47aと第2端部47bのそれぞれが取付面100sと同一面上に位置し、高温側シリンダ22の上面22aは、再生器46の上面46aと同一面上に位置することになると説明したが、以下のように変形することができる。即ち、排気管100内においてより加熱すべき部位は、加熱器47のうち高温側シリンダ22側であるから、加熱器47の第1端部47aは、過不足なく排気管100内に収容されるべく取付面100sと同一面上に位置する必要があるが、加熱器47のうち低温側シリンダ32側は、相対的に加熱の要求が低いため、加熱器47の第2端部47bは、僅かであれば排気管100の外部に出ていても問題は生じない。即ち、高温側シリンダ22の上面22aよりも、再生器46の上面46aが下方に位置しても問題は生じない。
また、上記において、スターリングエンジン10が排気管100の取付面100sに取り付けられたときに、再生器46が排気管100の外に出るように構成した例について説明したが、以下のように変形することができる。即ち、図4及び図5に示すように、再生器46も加熱器47と同じく排気管100の内部に収容されるように構成されている。再生器46において蓄積された熱が冷やされるのを防ぐためである。
加熱器47及び再生器46の全体を過不足なく排気管100内に収容するには、加熱器47の中央部47cを排気管100内に収容し、かつ加熱器47の第1端部47a及び再生器46の下面46bが排気管100の取付面100sに取り付けられる必要がある。これにより、加熱器47の第1端部47aと再生器46の下面46bが取付面100sと同一面上に位置することになる。加熱器47の第1端部47aは、高温側シリンダ22の上面22aと間隔を開けずに連結され、再生器46の下面46bは、冷却器45の上面45aと間隔を開けずに連結されているから、高温側シリンダ22の上面22aは、冷却器45の上面45aと同一面上に位置することになる。
上記と同様に、加熱器47の第1端部47aと高温側シリンダ22の上面22aとは、第1端部47aに設けられたフランジ47fと高温側シリンダ22の上面22aの近傍に設けられたフランジ22bとが接合するように締結手段で締結されている。再生器46の下面46bと冷却器45の上面45aとは、再生器46の下面46bの近傍に設けられたフランジ46dと冷却器45の上面45aの近傍に設けられたフランジ45cとが接合するように締結手段で締結されている。
上記のように、高温側シリンダ22の上面22aは、冷却器45の上面45aと同一面上に位置するように構成されているため、フランジ47fとフランジ22bとの接合面とフランジ46dとフランジ45cとの接合面とが同一面に位置する。このことから、排気管100の取付面100sにスターリングエンジン10を取り付ける際には、取付面100sを挟んでフランジ47fとフランジ22bとを接合するように取付面100sをも含めて一括して締結手段で締結するとともに、取付面100sを挟んでフランジ46dとフランジ45cとを接合するように取付面100sをも含めて一括して締結手段で締結することができる。以上のことから、排気管100に対してスターリングエンジン10を取り付け易い。
なお、上記において、加熱器47及び再生器46の全体を過不足なく排気管100内に収容する構成を採用すると、加熱器47の第1端部47aと再生器46の下面46bが取付面100sと同一面上に位置し、高温側シリンダ22の上面22aは、冷却器45の上面45aと同一面上に位置することになると説明したが、以下のように変形することができる。即ち、排気管100内においてより加熱すべき部位は、加熱器47のうち高温側シリンダ22側であるから、加熱器47の第1端部47aは、過不足なく排気管100内に収容されるべく取付面100sと同一面上に位置する必要があるが、加熱器47のうち低温側シリンダ32側は、相対的に加熱の要求が低いため、加熱器47の第2端部47bは、僅かであれば排気管100の外部に出ていても問題は生じない。即ち、高温側シリンダ22の上面22aよりも、冷却器45の上面45aが下方に位置しても問題は生じない。
熱源の種類を問わず、その熱源から効率的に受熱し、かつ効率的に熱交換するためには、加熱器は、熱エネルギーを受熱するための伝熱面積がなるべく大きく、かつ少なくとも冷却器が受熱しない場所に配置可能であるという意味において、上記実施形態及び変形例の構成が望ましい。
特に、排熱を利用する場合には熱エネルギーは管を介して排ガスとして供給される場合が殆どであることとも相俟って、例えば管の内部のように受熱可能な領域が限定されている場合に、伝熱面積が極力大きく、かつ少なくとも冷却器が受熱しない場所に配置される構成としては、上記実施形態及び変形例の構成が優れている。以下に、上記実施形態及び変形例の構成の技術的意義について更に述べる。
無効容積部分(冷却器、再生器、加熱器)が小さい方が良いことは前述の通りであるが、無効容積部分に湾曲した形状を有している場合、湾曲部の数が多いと流路抵抗が大きくなり、また湾曲部の曲率が小さいと流路抵抗は大きくなる。即ち、作動流体の圧力損失を考慮すると、湾曲部の数は単一であり曲率は大きい方が良い。この点に関し、上記実施形態の加熱器47(又は、上記変形例の加熱器47及び再生器46)は概ねU字形であり、湾曲形状となっているが、湾曲部の数は1つである。
また、図3及び図5に示すように、上記実施形態の無効容積部分の曲率に関しては、直列並行に配置された2つのシリンダ22、32の上部同士を連結し、かつ排気管100の内径寸法(上下方向の高さ)と加熱器47の端部47a、47bと中央部47cの最上部との間の高さが概ね同じ高さhになる構成に合わせて、その曲率(カーブ形状)が設定されている。排気管100の内部のような限定された空間内で排気ガスのような流体の熱源との接触面積を大きく確保するためには、上記のようなカーブ形状が望ましい。
以上の観点からすると、無効容積部分のうち加熱器は、その全体が過不足なく排気管の内部のような熱源からの熱を受ける限定された空間(受熱空間)内に収容されるとともに、その受熱空間内で、熱源からの伝熱面積を最大限に確保可能でかつ流路抵抗が最小となるように、例えばU字形やJ字形のようなカーブ形状に構成されるのがよい。
冷却器45は、熱源からの熱を受けない上記受熱空間の外部に作動流体の流路抵抗を最小限にしつつ配置するために、高温側シリンダ22と低温側シリンダ32との高さの違いに対応する位置に、低温側シリンダ32の延在方向(軸線方向)に沿って(同一軸線上に)直線状に構成される。
再生器46についても、上記冷却器45と同様に、作動流体の流路抵抗を最小限にしつつ配置するために、低温側シリンダ32の延在方向に沿って直線状に構成される。上記実施形態及び変形例の相違点として示したように、再生器46は、その特性や使用環境、目的等によって、上記受熱空間内に収容されるか、上記受熱空間の外部に配置されるかが決定される。再生器46が上記受熱空間の外部に配置される場合には、高温側シリンダ22と低温側シリンダ32との高さの違いに対応する位置に配置される。
上記のように、加熱器47の第2端部47bに連結される再生器46及び冷却器45は、いずれも低温側シリンダ32の延在方向に沿って設けられる。加熱器47の第1端部47aは、高温側シリンダ22の上部に隙間無く接続される。これらのことから、少なくとも加熱器47の第1端部47a及び第2端部47b側には、それぞれ高温側シリンダ22、低温側シリンダ32の延在方向に沿う部分を有し、加熱器47の中央部47cは、上述したようなカーブ形状を有することになる。
上述した技術的理由から、加熱器47は、直列並行に配置された2つのシリンダ22,32間で、途中で方向変換(ターン)する形状に構成されている。加熱器47は、直列並行に配置された2つのシリンダ22,32間を連結するように、少なくとも一つのシリンダ22の軸線に平行な部分と、2つのシリンダ22,32間を連結する曲線部分とを有している。
更に、上記実施形態及び変形例は、図6に示すように変形することが可能である。図6は、本変形例のスターリングエンジン10Aの要部を示す正面図である。図6に示すように、直列並行に配置されたシリンダ22A,32Aに対し、冷却器45A、再生器46A、加熱器47Aを含む熱交換器(熱交換器構成体)90Aが、2つのシリンダ22A,32Aを結ぶように、熱交換器90Aの少なくとも一部がカーブ形状を有するように構成されている。本変形例においては、膨張ピストン21Aと圧縮ピストン31Aの上死点の位置は同じである。
本変形例のスターリングエンジン10Aによれば、搭載スペースがコンパクトに抑えられ、限られたスペースに搭載される場合であっても設置の自由度が増す。更に、カーブ形状の加熱器47Aの配置に関し、受熱可能な領域が限定されている場合に、その領域に加熱器47Aのカーブ部分を対応させて配置すれば伝熱面積を極力大きく確保することができる。また、冷却器45A及び再生器46Aは、シリンダ32Aの延在方向に沿う直線状に形成されているため、例えば流路に角が形成されるような形状に比べて、作動流体の流路抵抗が低減される。熱交換器90Aの全体の流路の軸線90Bは、曲線のみから構成されている。作動流体の流路抵抗の観点からは、熱交換器(熱交換器構成体)の全体において、流路に角の部分が形成されないように、流路の軸線は直線同士の組み合わせではなく、上記実施形態及び変形例のように直線と曲線の組み合わせ、又は本変形例のように曲線のみから構成されるとよい。
次に、図7から図11を参照して、加熱器47の詳細な構成について説明する。
加熱器47(又は図6の加熱器47A、以下、これらをまとめて単に加熱器47と記す)の管群47tの少なくとも一部が2つのシリンダ22,32を結ぶようなカーブ形状を有していると、管群47tのうち相対的に外周側に位置する伝熱管47taは、相対的に内周側に位置する伝熱管47tbに比べて、長さが長くなる。上述したように、加熱器47の管群47tの長さが不均一であると、加熱器47の熱伝達能力(熱交換能力、受熱能力)が低下する場合がある。
即ち、長さの短い(以下、単に「短い」と記す)伝熱管47tb内を流れる作動流体は、長さの長い(以下、単に「長い」と記す)伝熱管47ta内を流れる作動流体に比べて、その伝熱管47tbの長さが短い分だけ、伝熱管47tb内に留まる時間が短い。このことから、短い伝熱管47tb内を流れる作動流体は、長い伝熱管47ta内を流れる作動流体に比べて、外部熱源との間で熱伝達(受熱)する時間が短い。また、短い伝熱管47tb内は、長い伝熱管47ta内に比べて、流路抵抗が小さい。そのため、短い伝熱管47tb内には、長い伝熱管47ta内に比べて、より多くの作動流体が流れる。これらのことから、各伝熱管47tの長さが一定ではない場合には、短い伝熱管47tbを介してより多量の作動流体が、より短い時間(伝熱時間)で外部熱源と熱伝達することになる。そのため、各伝熱管47tの長さが一定である場合に比べて、管群47t内の作動流体全体としての熱伝達量(管群47t内の作動流体の単位流量当たりの熱伝達量)が相対的に小さくなり、加熱器47の熱交換器としての熱交換能力が低くなる。
このように、複数の伝熱管47tの管毎の熱伝達能力にばらつきがあると、相対的に、加熱器47全体としての熱交換能力が低くなる。ここで、熱伝達能力とは、単位流量当たりの熱伝達量(受熱量)を意味する。加熱器47全体としての熱交換能力を高めるためには、加熱器47内の流体全体の平均温度を高めることが必要であり、そのためには、加熱器47全体で均一に受熱する必要がある。
そこで、本実施形態では、複数の伝熱管47tをそれぞれ流れる作動流体の単位流量当たりの受熱量が等しくなる(複数の伝熱管47tの受熱能力が等しくなる)ようにして、または、複数の伝熱管47tをそれぞれ流れる作動流体の単位流量当たりの受熱量のばらつきが抑制されるようにして、加熱器47全体の熱交換能力の低下の抑制を実現すべく、以下の構成を採用する。
なお、ここで、複数の伝熱管47tの受熱能力が等しいと、複数の伝熱管47tに対して、それぞれ同じ温度の作動流体が流入・流出し、複数の伝熱管47tの入口と出口(第1端部47aと第2端部47b)の温度が等しいことになる。
本実施形態では、複数の伝熱管47tの長さの不均一さが抑制されるように、又は、複数の伝熱管47tの長さが同一となるように、各伝熱管47tがねじられた状態に形成される。これにより、複数の伝熱管47tの受熱能力のばらつきが抑制され、又は、複数の伝熱管47tの受熱能力が同一となる。
図7に示す例では、各伝熱管47tの長さの不均一さが抑制されるように、各伝熱管47tがねじられた状態で構成されている。同図の例では、高温側シリンダ22の上面22aと再生器46の上面46aとの間に設けられた各伝熱管47tが、180°ねじられている。
図8は、図7における各伝熱管47tのねじられた状態を説明するための図であり、高温側シリンダ22の上面22a及び再生器46の上面46aのそれぞれにおける各伝熱管47tの接続部位を示している。図8に示すように、複数の伝熱管47tは、各伝熱管47tの円形の断面中心同士を結んだときに、高温側シリンダ22の上面22a又は再生器46の上面46aと同心円状となるように配置されている。
高温側シリンダ22の上面22aにおいて、図8の上部に接続される符号(1)の伝熱管47tは、ねじられた結果、再生器46の上面46aでは、図8の下部にて接続される。同様に、高温側シリンダ22の上面22aにおいて、図8の右部に接続される符号(2)の伝熱管47tは、ねじられた結果、再生器46の上面46aでは、図8の右部にて接続される。高温側シリンダ22の上面22aにおいて、図8の下部に接続される符号(3)の伝熱管47tは、ねじられた結果、再生器46の上面46aでは、図8の上部にて接続される。高温側シリンダ22の上面22aにおいて、図8の左部に接続される符号(4)の伝熱管47tは、ねじられた結果、再生器46の上面46aでは、図8の左部にて接続される。
図8において、高温側シリンダ22の上面22a上と、再生器46の上面46a上とでは、符号(1)及び(3)の伝熱管47tの位置関係が上下逆になっていることから、各伝熱管47tのねじり角が180°であることが分かる。
図7において、符号Aは、図1の符号Aに示すように、加熱器47全体としてみたときに、2つのシリンダ22,32の軸線方向に概ね直交する向きに配置され概ね直線状に形成される部分である。図7において、各伝熱管47tのうち、加熱器47全体の上記直線状部分Aに相当する部分が180°ねじられた形状とされると、管群47tの直線状部分Aにおいては、上下左右対称となるため、管群47tの直線状部分Aでの長さが互いに等しくなる。
本実施形態のスターリングエンジン10の加熱器47に適用される場合には、スターリングエンジン10がコンパクトに設計されるため、2つのシリンダ22,32間の距離が小さくなる等の理由から、伝熱管47tは、図7に示す程度の長い直線状部分Aは有さずに、伝熱管47tの大部分が曲線状に形成される。そのため、伝熱管47tの長さのばらつきを有効に抑制するためには、その曲線状部分がねじられた形状に形成される必要がある。
次に、図9から図11を参照して、伝熱管47tのねじりと、伝熱管47tの長さのばらつきについて説明する。ここでは、計算により、伝熱管47tのねじり角と、伝熱管47tの長さのばらつきとの関係について求める。
図9及び図10は、本計算を行う上での伝熱管47tの条件を示している。
図9は、高温側シリンダ22の上面22a及び再生器46の上面46aのそれぞれにおける各伝熱管47tの接続部位を示している。
図9に示すように、上面22a及び上面46aのそれぞれにおいては、18本の伝熱管47tが2つの同心円を描くように等間隔環状に千鳥配列されている。上面22a上には、符号0の伝熱管47tを円中心として、他の17本の伝熱管47tが環状に配置され、符号1〜6の伝熱管47tにより1つ目の同心円が形成され、その外側に符号7〜18の伝熱管47tにより2つ目の同心円が形成されるように配置されている。同様に、再生器46上には、符号Aの位置に配置される伝熱管47tを円中心として、他の17本の伝熱管47tが環状に配置され、符号B〜Gの位置にそれぞれ配置される伝熱管47tより1つ目の同心円が形成され、その外側に符号H〜Tの位置にそれぞれ配置される伝熱管47tにより2つ目の同心円が形成されるように配置されている。
図10に示すように、本計算を行う上では、計算の便宜上、伝熱管47tにおいて、図7の符号Aに示すような直線状の部分は存在せずに、伝熱管47tの全体が曲線状に形成された場合を仮定して計算が行われた。図10において、加熱器47は、位置P1を円弧中心(曲率中心)として一定の曲率半径で中心角が180°の円弧状に曲げられた形状を有している。加熱器47を構成する複数の伝熱管47tは、上記位置P1を共通の円弧中心としてそれぞれ異なる曲率半径で、中心角が180°の円弧状に曲げられた形状を有している。
図11に本計算の結果を示す。ねじり角が0°であるときとは、高温側シリンダ22の上面22a上の各伝熱管47tの配置関係が、再生器46の上面46a上の配置関係との間で左右対称になるように接続された場合に対応している。
即ち、ねじり角が0°であるときは、上面22a上において、上面46aから最も離間した側に配置される符号12〜14に示される3本の伝熱管47tはそれぞれ、上面46a上において上面22aから最も離間した側(左右対称の位置)の符号J、K、Mの位置に配置される。同様に、上面22a上において、符号3、4、17、18の伝熱管47tはそれぞれ、上面46a上において符号B、C、Q、Rの位置に配置される。同様に、上面22a上において、符号0、5、6、7、8の伝熱管47tはそれぞれ、上面46a上において符号A、F、G、H、Iの位置に配置される。同様に、上面22a上において、符号1、4、15、16の伝熱管47tはそれぞれ、上面46a上において符号B、C、Q、Rの位置に配置される。同様に、上面22a上において、符号9〜11の伝熱管47tはそれぞれ、上面46a上において、符号N〜Pの位置に配置される。
ねじり角が0°の上記配置がなされた場合には、図11に示すように、3本(符号12〜14)の各伝熱管47tの長さが最も長い長さで同じ295mm程度となり、次いで、4本(符号3、4、17、18)の各伝熱管47tの長さが2番目に長い長さで同じ273mm程度となる。次いで、5本(符号0、5、6、7、8)の各伝熱管47tの長さが3番目に長い同じ250mm程度となり、次いで、4本(符号1、2、15、16)の各伝熱管47tの長さが4番目に長い同じ230mm程度となり、次いで、3本(符号9〜11)の各伝熱管47tの長さが最も短い同じ208mm程度となる。
上記のように、ねじり角が0°であるときには、伝熱管47tの長さに、最大で約40%のばらつきがみられる。図11に示すように、ねじり角が大きくなるに連れて、伝熱管47tの長さのばらつきが低下する。ねじり角が360°であるときに、伝熱管47tの長さのばらつきは最小となる。但し、ねじり角が360°である場合であっても、図11では、長さが若干異なる4つのグループに分類されている。これは、図9に示すように、伝熱管47tが千鳥配列される結果、各伝熱管47tの断面形状の円中心を結んでできる同心円が4つ形成されることに起因している。
上記においては、加熱器47の管群を構成する全ての伝熱管47tが全て同じ角度にねじられた構成が採用されている。全ての伝熱管47tが同じ角度にねじられているのは、伝熱管47t同士の間に形成される空間が概ね同じ大きさとなるようにするためである。
上述したように、複数の伝熱管47tの長さのばらつきを抑制することは、加熱器47の熱交換能力の低下の抑制に有効であり、その複数の伝熱管47tの長さのばらつきの抑制には、伝熱管47tをねじられた形状に形成することが有効である。但し、伝熱管47tをねじられた形状にすることで、例えば伝熱管47t同士が接触してしまい、その接触した部位に熱源となる排気管100内の排気ガスが接触しない場合や、伝熱管47t同士の間に形成される空間に大小のばらつきが生じ、排気管100内の排気ガスに対して、複数の伝熱管47tが均等に接触することなく均等に加熱されない場合には、伝熱管47t内の作動流体の加熱(熱交換)が十分に行われない。
そこで、本実施形態では、伝熱管47t相互の相対的配置関係(伝熱管47t同士の間に形成される空間の大きさ)が変わらないようにするために、加熱器47の管群を構成する全ての伝熱管47tが、全て同じ角度にねじられた形状に形成されている。
上記のように、加熱器47の全ての伝熱管47tが全て同じ角度にねじられた形状に形成されたときに、図10において、加熱器47全体の任意の中心角での半径方向の断面(符号r1、r2参照)をみると、その断面での伝熱管47tは、図9に示した、上面22a及び上面46aのそれぞれでの伝熱管47tの接続部位と同様に、18本の伝熱管47tが2つの同心円を描くように、等間隔環状に千鳥配列された状態に対応する。管群47tのねじり角の大きさに依らず、それらの対応関係が成立する(但し、ねじられた形状とされたことによる各伝熱管47tの円形断面の変形は考慮しておらず、複数の伝熱管47tの円形断面の円中心の相対的位置関係のみを考えるものとする)。
上記のように、加熱器47の管群47tが全て同じ角度にねじられた状態に形成されると、加熱器47全体の任意の中心角での半径方向断面においても、図9に示したような18本の伝熱管47tが2つの同心円を描くように、等間隔環状に千鳥配列された状態となる。このことから、伝熱管47t同士の間に形成される空間の大きさは、互いに概ね同じになる。
図11を参照して上述したように、加熱器47の管群47tの長さのばらつきを抑制するためには、ねじり角を大きくする方がよい。但し、ねじり角を大きくすると、伝熱管47t同士の間に形成される空間が小さくなり、十分な熱交換に必要とされる大きさの空間を確保できない場合には、管群47tの長さのばらつき抑制による影響と、伝熱管47t同士の間の空間の大きさによる影響を総合的に判断して、加熱器47の熱交換能力の向上に有利なねじり角が選択されることができる。加熱器47を構成する複数の伝熱管47tの密集度によっては、所定値以上のねじり角にねじられると、伝熱管47t同士が接触するため、大きなねじり角を選択できない場合がある。
本実施形態においては、加熱器47が配置される周囲の構造、例えば、高温側シリンダ22と低温側シリンダ32との間の距離等によって、ねじり角の大きさと、管群47tの長さのばらつきの抑制の効果と、伝熱管47t同士の間の空間の大きさは、それぞれ変化するため、これらを総合的に判断して、加熱器47の熱交換能力が最大となるような最適なねじり角が選択されるべきである。
なお、図7、図8及び図9では、各伝熱管47tのねじられた状態の説明の便宜上、それぞれ3本、4本、18本の伝熱管47tが図示されているのみであるが、実際の加熱器47では、例えば60〜100本の伝熱管47tが使用される。
本実施形態によれば、カーブ形状に形成された加熱器47の伝熱管47tがねじられた形状に形成されることで、管群47tの長さのばらつきが抑制されるので、又は、管群47tの長さが同一となるので、加熱器47の熱交換能力の低下が抑制される。
次に、図1及び図2を参照して、ピストン・シリンダのシール構造及びピストン・クランク部の機構について説明する。
上記のように、スターリングエンジン10の熱源が車両の内燃機関の排気ガスであることから、得られる熱量に制約があり、その得られる熱量の範囲でスターリングエンジン10を作動させる必要がある。そこで、本実施形態では、スターリングエンジン10の内部フリクションを可能な限り低減させることとしている。本実施形態では、図1及び図2に示すように、スターリングエンジンの内部フリクションのうち最も摩擦損失が大きいピストンリングによる摩擦損失を無くすため、ピストンリングを使用せずに、その代わりに、シリンダ22、32とピストン21、31との間には、それぞれ空気軸受(エアベアリング)48が設けられる。
空気軸受48は、摺動抵抗が極めて小さいため、スターリングエンジン10の内部フリクションを大幅に低減させることができる。上記のように、空気軸受48を用いても、シリンダ22、32とピストン21、31との間の気密は確保されるため、高圧の作動流体が膨張・収縮の際に漏れるという問題は生じない。
空気軸受48は、シリンダ22、32とピストン21、31の間の微小なクリアランスで発生する空気の圧力(分布)を利用して,ピストン21、31が空中に浮いた形となる軸受である。本実施形態の空気軸受48では、シリンダ22、32とピストン21、31との間の直径クリアランスは数十μmである。空中に物体を浮上させる空気軸受を実現するには、機構的に空気圧が強くなる部分(圧力勾配)ができるようにする他に、後述するように高圧の空気を吹きつけるものでもよい。
本実施形態では、高圧の空気を吹き付けるタイプの空気軸受ではなく、医療用ガラス製注射器のシリンダとピストンの間で用いられている空気軸受と同じ構成の空気軸受が用いられる。
また、空気軸受48を使用することで、ピストンリングで用いる潤滑油が不要となるので、潤滑油によりスターリングエンジン10の熱交換器(再生器46,加熱器47)が劣化するという問題が発生しない。なお、本実施形態では、ピストンリングにおける摺動抵抗と潤滑油の問題が解消されれば足りるので、流体軸受のうち油を使用する油軸受を除いた、気体軸受であれば空気軸受48に限られることなく適用することができる。
本実施形態のピストン21、31とシリンダ22、32との間には、静圧空気軸受を用いることも可能である。静圧空気軸受とは、加圧流体を噴出させ、発生した静圧によって物体(本実施形態ではピストン21、31)を浮上させるものである。また、静圧空気軸受に代えて、動圧空気軸受を用いることも可能である。
空気軸受48を用いて、ピストン21、31をシリンダ22、32内で往復運動させる際には、直線運動精度を空気軸受48の直径クリアランス未満にしなくてはならない。また、空気軸受48の負荷能力が小さいため、ピストン21、31のサイドフォースを実質的にゼロにしなくてはならない。即ち、空気軸受48は、シリンダ22、32の直径方向(横方向,スラスト方向)の力に耐える能力(耐圧能力)が低いため、シリンダ22、32の軸線に対するピストン21、31の直線運動精度が高い必要がある。特に、本実施形態で採用する、微小クリアランスの空気圧を用いて浮上させて支持するタイプの空気軸受48は、高圧の空気を吹き付けるタイプに比べても、スラスト方向の力に対する耐圧能力が低いため、その分だけ高いピストンの直線運動精度が要求される。
上記の理由から、本実施形態では、ピストン・クランク部にグラスホッパの機構(近似直線リンク)50を採用する。グラスホッパの機構50は、他の直線近似機構(例えばワットの機構)に比べて、同じ直線運動精度を得るために必要な機構のサイズが小さくて済むため、装置全体がコンパクトになるという効果が得られる。特に、本実施形態のスターリングエンジン10は、自動車の排気管の内部にその加熱器47が収容されるというように限られたスペースに設置されるため、装置全体がコンパクトである方が設置の自由度が増す。また、グラスホッパの機構50は、同じ直線運動精度を得るために必要な機構の重量が他の機構よりも軽量で済むため、燃費の点で有利である。さらに、グラスホッパの機構50は、機構の構成が比較的簡単であるため、構成(製造・組み立て)し易い。
以下に、グラスホッパの近似直線機構50について説明する。
A.ピストン・クランク機構の概要:
図12−1は、従来のスターリングエンジンにおけるピストン・クランク機構を示す説明図であり、図12−2は、本実施形態のスターリングエンジン10におけるピストン・クランク機構を示す説明図である。図12−1に示すように、従来の機構は、シリンダ110と、ピストン120と、コネクティングロッド130と、クランクシャフト140とを備えている。ピストン120と、コネクティングロッド130は、ピストン120の中央部付近においてピストンピン160で互いに連結されている。コネクティングロッド130とクランクシャフト140は、クランクピン162で連結されている。ピストン120が上下に往復運動すると、クランクシャフト140がその軸142(「駆動軸」とも呼ぶ)を中心に回転する。
図12−2は、スターリングエンジン10のピストン・クランク機構の概略構成を示している。本実施形態において、ピストン・クランク機構は、高温側パワーピストン20側と低温側パワーピストン30側とで共通の構成を採用しているため、以下では、低温側パワーピストン30側についてのみ説明し、高温側パワーピストン20側についての説明は省略する。
スターリングエンジン10のピストン・クランク機構は、シリンダ32と、ピストン31と、コネクティングロッド65と、クランクシャフト61とを備えており、さらに近似直線機構50も備えている。近似直線機構50は、上述した通り、グラスホッパの近似直線機構である。
図2及び図12−2に示すように、ピストン31には、ピストン支柱部64bが接続されている。ピストン31とピストン支柱部64bとが別体として形成されていている。このピストン31の下端部とピストン支柱部64の上端部は、ピン67によって互いに回動可能に連結されている。ピストン支柱部64は、ピストン支柱部64の下端においてピストンピン60で互いに連結されている。コネクティングロッド65とクランクシャフト61は、クランクピン62で連結されている。ピストン31が上下に往復運動すると、クランクシャフト61がその軸40(「駆動軸」とも呼ぶ)を中心に回転する。
近似直線機構50は、2つの横方向リンク52,54と、1つの縦方向リンク56とを有している。第1の横方向リンク52の一端は、ピストンピン60の位置においてピストン支柱部64の下端に回動可能に連結されている。第2の横方向リンク54の一端は、第1の横方向リンク52の中間の所定の位置において第1の横方向リンク52に回動可能に連結されている。第2の横方向リンク54の他端は、ピストン・クランク機構の所定の位置に回動可能に固定されている。縦方向リンク56の一端は、第1の横方向リンク52のピストンピン60とは反対側の端部において、第1の横方向リンク52と回動可能に連結されている。縦方向リンク56の他端は、ピストン・クランク機構の所定の位置に回動可能に固定されている。
図12−1及び図12−2において、黒丸で表されている連結部(駆動軸40など)は、その軸を中心に回転または回動するが、シリンダ32との相対位置が変化しない連結点(以下「支点」と呼ぶ)である。また、白丸で表されている連結部(ピストンピン60など)は、その軸を中心に回転または回動するとともに、シリンダ32との相対位置が変化する連結点(以下「移動連結点」と呼ぶ)である。ここで、「回転」とは360度以上の範囲で回ることを意味しており、「回動」とは、360度未満の範囲で回ることを意味している。
なお、図12−1及び図12−2では、本実施形態のスターリングエンジン10のうち、ピストン・クランク機構とシリンダ32以外は図示が省略されている。
図13の(A)〜(C)は、本実施形態のピストン・クランク機構のリンク構成を示す説明図である。図13の(A)は、シリンダ32と、ピストン31と、コネクティングロッド65と、クランクシャフト61のみを示している。また、図13の(B)は、近似直線機構50のみを示している。図13の(C)は、図12−2に示した機構と同じものであり、図13の(A),(B)の構成を組合わせたものである。
図13の(A)〜(C)においては、以下のように各種の連結点が表されている。
(1)移動連結点A:ピストンピン60(図12−2)の中心軸。
(2)移動連結点B:第1の横方向リンク52の移動連結点Aとは反対側の端部にある連結点。
(3)移動連結点C:コネクティングロッド65の移動連結点Aとは反対側の端部にある連結点。
(4)移動連結点M:第1の横方向リンク52の中間点にある連結点。
(5)支点P:クランクシャフト61の中心軸(駆動軸)。
(6)支点Q:第2の横方向リンク54の移動連結点Mと反対側の端部にある連結点。
(7)支点R:縦方向リンク56の移動連結点Bと反対側の端部にある連結点。
移動連結点Aはピストンピン60の中心軸であり、ピストン31の往復運動に伴って上下方向Z(図13の(B))に沿って移動する。本明細書において、上下方向Zとは、シリンダ32の軸方向中心線(「軸中心」とも呼ぶ)に沿った方向を意味する。移動連結点A,Bは、第1の横方向リンク52の両端の連結点である。移動連結点Bは、縦方向リンク56が支点Rを中心に回動するのに伴って、円弧状の軌跡上を移動する。また、この移動連結点Bは、第2の横方向リンク54の支点Qの上下方向位置Xとほぼ同じ上下方向位置をとるように設定されている。
なお、仮想的に縦方向リンク56の長さを無限大に設定し、移動連結点Bが、支点Qと同一の上下方向位置X上を直線的に移動するようにすれば、移動連結点Aは上下方向Zに沿って完全な直線に近い運動を行う。現実には、縦方向リンク56の長さは有限なので、移動連結点Aは直線運動からわずかにずれた軌跡上を移動する(これについては後述する)。ほぼ完全な直線運動機構は、縦方向リンク56の代わりに、移動連結点Bを直線的に案内するガイド部を採用すれば実現可能であるが、このガイド部と移動連結点Bとの摩擦が増大する。従って、摩擦の低減の観点からは、本実施形態の近似直線機構50の方が完全な直線運動機構よりも好ましい。
第1の横方向リンク52の中間にある移動連結点Mの位置は、以下の関係を満足するように設定されている。
AM×QM=BM2
ここで、AMは連結点A,M間の距離を意味し、QMは連結点Q,M間の距離、BMは連結点B,M間の距離をそれぞれ意味している。
図14−1〜図14−4は、ピストン31の移動に伴うピストン・クランク機構の形状変化を示している。近似直線機構50の3つの移動連結点A,B,Mのうちで、移動連結点A,Mはピストン31の移動に伴ってかなり大きく移動するが、縦方向リンク56の上端の移動連結点Bはあまり移動しないことが解る。図14−1には、近似直線機構50の形状変化の程度を示す指標として利用できる2つの角度θ、φが示されている。第1の角度θは、横方向Xから測った第2の横方向リンク54の角度∠MQXである。また、第2の角度φは、上下方向Zからの縦方向リンク56の傾き角で∠BRZである。これらの角度θ,φの値が取る範囲は、移動連結点Aの移動範囲(即ちピストン31のストローク)の設定と、近似直線機構50の各リンクの長さに依存する。
上記のように、ピストン31の下端部とピストン支柱部64の上端部は、ピン67によって互いに回動可能に連結されている。この構成では、ピストン支柱部64の下端の軌跡が直線から多少ずれた場合にも、そのズレが、ピストン31を傾かせる力として働かない(即ち、ピストン支柱部64の下端のズレがピストン31にほとんど影響を与えない)という利点がある。即ち、グラスホッパの機構50の往復運動時に生じる直線運動からのズレを吸収するために、ピストン31とピストン支柱部64とをリジッドにではなく、相対的に移動可能な状態(フリーな状態)で連結する。本実施形態では、一例としてピン67を用いて連結している。また、ピストンとピストン支柱部とが一体に形成されている場合に比べて、ピストンを近似直線機構及びコネクティングロッドと組み付ける作業が容易になるという利点もある。一方、図示はしないが、ピストン支柱部64とピストン31とを一体として構成した場合には、仮に何らかの原因でピストン31がシリンダ32に対して傾きかけた場合にも、ピストン支柱部64が近似直線運動を行うときに、その傾きが矯正されるという利点がある。
図15−1は、本実施形態におけるピストン・クランク機構の具体的な寸法の一例を示す説明図であり、図15−2は、移動連結点Aの軌跡とを示す説明図である。図15−1に示されている寸法は、上述した関係(AM×QM=BM2)を満足していることが解る。図15−2に示されているように、移動連結点Aの軌跡は、近似的な直線部分を含んでおり、この近似的な直線部分がピストン31のストロークの範囲として利用される。このとき、ピストン31のストロークの範囲は、上死点における直線からのズレ量が、下死点における直線からのズレ量よりも小さくなるように設定される。ここで、「直線からのズレ量」の「直線」とは、シリンダ32の軸方向中心線を意味している。図15−2の例では、上死点におけるズレ量は約5μmであり、下死点におけるズレ量は約20μmである。なお、この数値は常温で測定したものである。
上死点における移動連結点Aの直線からのズレ量が、下死点におけるズレ量よりも小さくなるように設定する理由は、上死点近傍では圧縮空気による力がピストン31にかかるからである(同様に、高温側パワーピストン20では、上死点近傍では膨張空気による力がピストン21にかかるからである)。即ち、上死点におけるズレ量が小さければ、圧縮空気による力によってピストン31に(又は膨張空気による力によってピストン21に)かかるスラスト(横方向の力)が小さくなるので、ピストン31とシリンダ32(又はピストン21とシリンダ22)との摩擦を低減することができる。一方、下死点では圧縮空気による力(又は膨張空気による力)が掛からないので、多少のズレがあっても上死点に比べて摩擦への影響は小さい。
なお、移動連結点Aの軌跡における近似的直線部分は、各リンク52、54,56の長さを大きくすることによって大きくすることが可能であるが、リンクを長くすると近似直線機構50のサイズが大きくなるという問題がある。換言すれば、上死点や下死点における直線からのズレ量と、近似直線機構50のサイズとは、トレードオフの関係にある。これらの点を考慮すると、ピストン31の上死点における移動連結点Aの直線からのズレ量は、常温で測定して約10μm以下になるように近似直線機構50を構成することが好ましい。また、下死点におけるズレ量は、約20μm以下になるようにすることが好ましい。
図15−2に示すように、ピストン31のストロークの範囲を設定した場合には、第2の横方向リンク54の角度θは、8.8°〜−17.9°の範囲の値をとる(図15−1)。角度θの最大値(8.8°)は、ピストン31が上死点にある場合(図14−1)に相当し、最小値(−17.9°)はピストン31が下死点にある場合(図14−3)に相当する。縦方向リンク56の角度φは、0°〜2.2°の範囲の値をとる。角度φの最小値(0°)は、連結点Q、A、M、Bがほぼ一直線上に並ぶ場合に相当し、最大値(2.2°)は、角度θの絶対値が最も大きくなる場合(この例では下死点)に相当する。なお、これらの角度θ、φの値の範囲は、近似直線機構50の各リンクの寸法と、ピストン31のストローク範囲の設定に依存する。
B.具体的形状例:
図16及び図17は、本実施形態におけるピストン・クランク機構の具体的な形状の一例を示している。上記の通り、ピストン31は、円柱状に形成されている。ピストン31の外周面には、ピストンリング用の溝及びピストンリングは設けられていない。ピストン31の平面視(横断面)形状は、高精度な真円状に形成されている。シリンダ32は円筒状に形成されており、シリンダ32の内周部の平面視形状は、高精度な真円状に形成されている。ピストン31の外周面とシリンダ32の内周部との間には、上記の通り、空気軸受48が設けられている。ピストン31及びシリンダ32の内周部のそれぞれの平面視形状が高精度な真円状に形成されていることにより、シール性の良い空気軸受48が実現される。
ピストンピン60とピストン31との間には、ピストンピン60とピストン31との間を所定の距離以上確保するために、ピストン支柱部64が設けられている。ピストン支柱部64によって、ピストンピン60とピストン31との間に所定距離以上開くことによって、ピストン31が往復移動する際に、ピストン31と近似直線機構50が接触しないようにすることができる。
ピストン支柱部64の長さは、ピストン31の上端からピストンピン60までの長さが、ピストン31のストロークの約1/2倍以上で1倍未満の範囲の値になるように設定されていることが好ましい。その理由は、ピストン支柱部64の長さが過度に短いと、上死点において近似直線機構50がシリンダ32又はピストン31に衝突する可能性があるためである。また、ピストン支柱部64の長さが過度に長いとその重量が増加する分だけエネルギ損失が増すためである。
図17に示すように、ピストン支柱部64と、コネクティングロッド65と、第1、第2の横方向リンク52、54とは、ピストン31が上下動したときにも互いに干渉しないように構成されている。具体的には、図17の例では、ピストン支柱部64は、シリンダ32の軸方向中心に設けられており、ピストン支柱部64の両側が、コネクティングロッド65の2枚の板状部材で挟まれている。コネクティングロッド65の外側には、第1の横方向リンク52の2枚の板状部材が配置されている。これら3種類の部材24,30,52は、ピストンピン60で連結されている。また、第1の横方向リンク52の更に外側には、第2の横方向リンク54の2枚の板状部材が設置されている。即ち、この例では、コネクティングロッド65と2つの横方向リンク52、54とは、端部が2つの板状部材に分かれた二股構造をそれぞれ有しており、中央のピストン支柱部64を両側から挟むような位置にそれぞれ配置されている。
図18は、図16からクランクが回転し、横方向リンク52、54が水平になった位置における要部縦断面図であり、図19は、図18のC−C断面図である。なお、図19では、図示の便宜上、コネクティングロッド65とピストン支柱部64とにそれぞれハッチングを付している。
図19の構成において、第2の横方向リンク54の端部は二股構造になっており、他の部材64,65,52,60の外側に配置されている。そして、近似直線機構が動作する際には、第2の横方向リンク54の二股構造の間を、第1の横方向リンク52の端部が二股構造の間を通り抜けるように構成されている。このような構成によれば、コネクティングロッド65を短くしても、第1の横方向リンク52の端部と第2の横方向リンク54の端部とが干渉することが無いので、ピストン・クランク機構の縦方向の寸法の増大を抑制することができる。
また、図19に示す構成では、第1の横方向リンクの端部と、ピストン支柱部64の下端(ピストンの下端)と、コネクティングロッド65の上端とが、1つのピストンピン60で連結されている。このような構成によれば、第1の横方向リンク52とピストン支柱部64とコネクティングロッド65とが1つのピストンピン60で連結されるので、この連結部分の構造が単純になり、コンパクトにできるという利点がある。
さらに、図19に示す構成では、第1の横方向リンク52の端部と、ピストン支柱部64の下端と、コネクティングロッド65の上端と、の3つの端部のうち2つの端部がそれぞれ二股構造を有しており、残りの1つの端部が前記2つの端部の二股構造の中心に配置されている。このような構成によれば、第1の横方向リンク52とピストン支柱部64とコネクティングロッド65との連結部分が対称な形になるので、非対称な形状とすることによるサイドフォースが発生することを防止できるという利点がある。
以上のように、上述した実施形態や変形例では、ピストン・クランク機構に近似直線機構50を設けることによって、ピストン31の下端がシリンダ32の軸中心に沿った近似的な直線状軌跡を移動するようにしたので、ピストン31の直線運動精度が高く、ピストン31のサイドフォースを実質的にゼロにすることが可能となり、ピストン31とシリンダ32との間にスラスト方向の耐圧能力の低い空気軸受48を設けても、問題が生じない。
グラスホッパの近似直線機構は、近似直線上を移動する点(移動連結点A)が機構の一方の端部近傍に偏っているので、スターリングエンジン10のピストンの運動を規制するのに特に適しており、また、コンパクトな機構で良好な直線性を得ることが可能である。
以上に述べた第1実施形態では、スターリングエンジン10は、車両の内燃機関の排ガスを熱源とすべく排気管100に取り付けた構成について説明した。但し、本発明のスターリングエンジンは、車両の内燃機関の排気管に取り付けられる形式のものに限定されるものではない。
(第2実施形態の場合)
次に、図20を参照して、第2実施形態について説明する。なお、上記第1実施形態と同じ構成については同じ符号を付してその詳細な説明を省略する。また、第1実施形態と異なる構成のみについて説明する。
上記第1実施形態では、少なくとも一部がカーブ形状に形成された加熱器47の複数の伝熱管47tの長さのばらつきが抑制されるように複数の伝熱管47tがねじられた形状にされることで、加熱器47の熱交換能力の低下が抑制されていた。これに対し、第2実施形態では、伝熱管47tにフィンが設けられることで、複数の伝熱管47tの受熱能力のばらつきが抑制されるように、又は、複数の伝熱管47tの受熱能力が同一となるように、受熱面積が設定されている。
ここで、受熱面積は、伝熱管47tの表面積とフィン70の表面積の合計である。第2実施形態では、伝熱管47tがねじられた形状に形成されることなく、また、伝熱管47tの長さのばらつきが抑制されるわけではない。
上述のように、伝熱管47tの内部の作動流体の密度・圧力は高いので熱伝達率が高く、また熱容量が大きい。また、伝熱管47tの内部の作動流体の流速が速いため、熱伝達率が高い。これに対して、伝熱管47tの外部は大気圧であるため、熱伝達率が低い。このことから、伝熱管47tにおいては、外部熱伝達率をいかに向上させるかが問題となる。
本実施形態では、上記問題を解決すべく、伝熱管47tの外部に、フィン(受熱フィン)70が設けられている。フィン70は、伝熱管47tの外部と内部とで概ね同程度の熱伝達が行われるように設けられる。フィン70は、伝熱管47tの外部側の伝熱面積を大きく確保するとともに、伝熱管47tから離間した位置の排ガスからの熱をフィン70を介して伝熱管47tの内部に伝達するために設けられる。
図20に示すように、短い伝熱管47tbには、伝熱面積の大きなフィン70bが設けられ、長い伝熱管47taには、伝熱面積の小さなフィン70aが設けられる。上述のように、短い伝熱管47tb内を流れる作動流体は、長い伝熱管47ta内を流れる作動流体に比べて、受熱時間が短いため、単位流量当たりの受熱量を同じにすべく、フィン70の伝熱面積の大きさが上記のように設定される。
また、短い伝熱管47tbは、その伝熱管47tb自体の表面積が小さい分だけ、伝熱面積の大きなフィン70bが設けられ、長い伝熱管47taは、その伝熱管47ta自体の表面積が大きい分だけ、伝熱面積の小さなフィン70aが設けられる。
カーブ形状に形成された管群47tのうち内周側の相対的に短い伝熱管47tには、伝熱面積の大きなフィン70が設けられるべく、伝熱管47t同士の間隔が大きく設定されている(相対的に短い伝熱管47tは、配置密度が疎に配置されている)。これに対して、カーブ形状に形成された管群47tのうち外周側の相対的に長い伝熱管47tには、伝熱面積の小さなフィン70が設けられればよいため、伝熱管47t同士の間隔が小さく設定されている(相対的に長い伝熱管47tは、配置密度が密に配置されている)。ここで、相対的に伝熱管47tの長い外周側において、伝熱管47t同士の間隔が小さく設定された場合においても、十分に熱交換するに必要な排ガス量が流れるのに必要な空間(間隔)は確保されている。
図20においては、上記のように、カーブ形状に形成された管群47tのうち内周側に位置し短い伝熱管47tbと伝熱管47tcとの間隔L1は相対的に大きく設定され、外周側に位置し長い伝熱管47taと伝熱管47tcとの間隔L2は相対的に小さく設定されている。
図20においては、カーブ形状に形成された管群47tのうちの各伝熱管47tの直線部分のみにフィン70が設けられているが、図21に示すように、更に、各伝熱管47tの曲線状部分にもフィン70が設けられることができる。
また、図22に示すように、排気管100内の排ガスの流動の妨げとならない位置(例えば排気管100の内壁に沿う部分であって、各伝熱管47tの第1端部47a側)には、例えば伝熱管47tを周方向に囲むような円環状のフィン71が追加的に設けられることができる。
第2実施形態では、伝熱管47tの熱伝達能力(受熱能力)が同一となるように、又はそれらのばらつきが抑制されるように、伝熱管47tの伝熱面積が設定されるべく、各伝熱管47t毎に所定の伝熱面積を有するフィン70が設けられる。これにより、加熱器47の全体の熱交換能力の低下が抑制される。
第2実施形態及び上記第1実施形態によるアプローチを比較検討すると、以下の通りとなる。
加熱器47の複数の伝熱管47tが密集して配置されていたり、加熱器47が設置される周囲の構造の関係で、伝熱管47tが十分にねじられた形状に形成されること(伝熱管47tの長さのばらつきを抑制すること)ができない等の理由から、伝熱管47tの受熱能力のばらつきを十分に抑制できない場合には、フィン70を用いて伝熱管47tの受熱能力のばらつきを抑制する方法が有効である。
但し、伝熱管47tをねじられた形状に形成して、伝熱管47tの長さのばらつきの抑制が可能である場合には、フィン70による解決法よりも、伝熱管47tの長さのばらつきを抑制する解決法の方が望ましい。フィン70を配置するためのスペースがあれば、長さのばらつきが抑制された伝熱管47tを数多く設けた方が加熱器47全体の熱交換能力が高くなるからである。
一方、これと反対に、伝熱管47tの受熱能力(又は長さ)のばらつきが十分に抑制されていない場合(十分にねじられた形状に形成されることが不可能な場合を含む)に、フィン70を用いて伝熱管47tの受熱能力のばらつきを抑制することなく、本来そのフィン70のために使用可能なスペースに、長さのばらつきの大きい伝熱管47tを設けることは、加熱器47の全体の熱交換能力の低下の抑制にはつながらない場合が多い。上述のように、加熱器47全体の熱交換能力の低下の抑制のためには、伝熱管47tの受熱能力のばらつきが抑制されていることが、有効であるためである。
勿論、長さのばらつきが抑制された伝熱管47tをスペースが許す限り数多く配置した上で、更に、熱交換能力を向上させるべく、伝熱管47tにフィン70を設けることは、加熱器47全体の熱交換能力の向上に有効である。
(第3実施形態の場合)
次に、図23を参照して、第3実施形態について説明する。なお、上記と同じ構成については同じ符号を付してその詳細な説明を省略する。また、上記と異なる構成のみについて説明する。
上述したように、長さの異なる伝熱管47tにおいて、それらの伝熱管47tの管内径の大きさが同じである場合には、短い伝熱管47tは、長い伝熱管47tに比べて、流路抵抗が小さい。そのため、短い伝熱管47t内では、相対的に作動流体が流れ易く、短い伝熱管47t内を流れる作動流体が伝熱管47t内に留まる時間(受熱時間)は、相対的に短い。
第3実施形態では、複数の伝熱管47tのそれぞれの内径の大きさを所定の大きさに設定することで、複数の伝熱管47tの受熱能力のばらつきを抑制する(又は、複数の伝熱管47tの受熱能力を同一にする)。この第3実施形態では、上記第1実施形態のように、伝熱管47tがねじられた形状に形成されることなく、また、伝熱管47tの長さのばらつきが抑制されるわけではない。
本実施形態においては、図23に示すように、短い伝熱管47tdの内径は、長い伝熱管47tfの内径に比べて、小さく設定される。この構成により、長さの異なる伝熱管47tにおいて、それらの伝熱管47tの管内径の大きさが同じである場合に比べて、以下のような作用効果が得られると考えられる。
第一に、複数の伝熱管47tをそれぞれ流れる作動流体が当該伝熱管47t内に留まる時間(受熱時間)ないし複数の伝熱管47tの流路抵抗(又は流量)のばらつきが抑制される(又は同一となる)。短い伝熱管47td内は、長い伝熱管47tf内に比べて、長さが短い分、流路抵抗が小さく、また、その流路抵抗が小さいことにより受熱時間が相対的に短い。ここで、短い伝熱管47tdの内径が、長い伝熱管47tfの内径に比べて、小さく設定されると、その内径の分、流路抵抗が増加傾向となるため、全体としては、複数の伝熱管47tの流路抵抗のばらつき、ないし受熱時間のばらつきが抑制される。
第二に、複数の伝熱管47tの受熱能力のばらつきが抑制される(又は同一となる)。即ち、短い伝熱管47tdの内径が、長い伝熱管47tfの内径に比べて、小さく設定されると、伝熱管47tの内部の断面積をSとし、伝熱管47tの周方向の長さ(周長)をLaとしたときのLa/Sの値は、長い伝熱管47tf(ここでは相対的に内径が大きい)のLa/Sの値に比べて、大きくなる。Sは内径の2乗に比例し、Laは内径に比例するためである。
上記において、Laは、伝熱管47tの伝熱面積に対応し、Sは、伝熱管47tの内部を流れる作動流体の流量に対応するから、本実施形態の上記構成により、短い伝熱管47tdを流れる作動流体の単位流量当たりの受熱面積が相対的に大きくなる。上記のように、短い伝熱管47td内は、長い伝熱管47tf内に比べて、長さが短い分、流路抵抗が小さく、受熱時間が相対的に短いが、上記構成により、短い伝熱管47tdを流れる作動流体の単位流量当たりの受熱面積が相対的に大きくなるので、全体としては、単位流量当たりの受熱量が、長い伝熱管47tfと近くなる(又は同一となる)。
第三に、複数の伝熱管47tを流れる作動流体の単位流量当たりの受熱面積のばらつきが抑制される(又は同一となる)。即ち、短い伝熱管47tdの内径が、長い伝熱管47tfの内径に比べて、小さく設定されると、伝熱管47tの内部の断面積をSとし、伝熱管47tの長手方向の長さ(管長)をLbとしたときのLb/Sの値は、長い伝熱管47tf(ここでは相対的に内径が大きい)のLb/Sの値と近くなる(又は同一となる)。
上記において、Lbは、伝熱管47tの伝熱面積に対応し、Sは、伝熱管47tの内部を流れる作動流体の流量(伝熱管47tの内部の体積)に対応するから、本実施形態の上記構成により、複数の伝熱管47tを流れる作動流体の単位流量当たりの受熱面積のばらつきが抑制される。
実際には、La/Sの値に基づいて伝熱管47tの内径を設定した場合と、流路抵抗(又は流量)ないし伝熱管47t内に留まる時間に基づいて、伝熱管47tの内径を設定した場合と、Lb/Sの値に基づいて伝熱管47tの内径を設定した場合とでは、異なる結果となる場合があるが、それらのパラメータに基づいて、計算又は実験により、伝熱管47tの内径の最適化を図ることができる。その最適化を行う際の指標(評価関数)は、「伝熱管47tの受熱能力のばらつきが抑制されるという効果の大小」に設定することができる。
第3実施形態では、複数の伝熱管47tの受熱能力のばらつきが抑制される(又は受熱能力が同一となる)ように、伝熱管47tの内径が設定される。これにより、加熱器47の全体の熱交換能力の低下が抑制される。
(第4実施形態の場合)
次に、図24及び図25を参照して、第4実施形態について説明する。なお、上記と同じ構成については同じ符号を付してその詳細な説明を省略する。また、上記と異なる構成のみについて説明する。
第4実施形態では、複数の伝熱管47tの受熱能力のばらつきが抑制される(又は受熱能力が同一となる)ように、伝熱管47tの長さに応じて、作動流体の流動に対する圧力損失(流動損)を調整する。この第4実施形態では、上記第1実施形態のように、伝熱管47tがねじられた形状に形成されることなく、また、伝熱管47tの長さのばらつきが抑制されるわけではない。
伝熱管47tを流れる作動流体の流動に対する圧力損失には、伝熱管47tの内部を通過しているときの圧力損失と、伝熱管47tの端部(開口部)から伝熱管47tに流入する際の圧力損失とがある。これらの圧力損失のうち、大きな圧力損失となるのは、後者の方である。後者の圧力損失は、広い空間(伝熱管47tの外)から細いところ(伝熱管47tの内部)に流入するときの圧力損失であり、縮流効果に関連する。
第4実施形態では、上記のように、相対的に大きな圧力損失の作用を生じる伝熱管47tの端部にて、伝熱管47tを流れる作動流体の流動に対する圧力損失を調整して、流路抵抗を調整し、複数の伝熱管47tの受熱能力のばらつきを抑制する。
第4実施形態では、複数の伝熱管47tの端部に、圧力損失の調整用構造が設けられる。圧力損失の調整用構造とは、例えば、図24に示すように、伝熱管47tの端部(伝熱管47tにおける再生器46の上面46aとの接続部)の形状において、円弧状に形成された部分のそれぞれの曲率半径が異なる値に設定されてなるものをいう。即ち、伝熱管47tと上面46aとの接続部位における、いわゆるR取りが異なる値に設定されている。
図24において、伝熱管47tの端部(上面46aとの接続部分)の円弧状形状(符号a、b、c)において、それぞれの曲率半径の関係は、a<b<cとされている。再生器46から伝熱管47tに流入するときの圧力損失(流入し難さ)は、曲率半径が小さいほど大きくなり、a>b>cとなる。
上記のように、短い伝熱管47tは、長い伝熱管47tに比べて、長さが短い分、流路抵抗が小さく、作動流体が流れ易い(ないし、より多量の流量が流れる)。第4実施形態では、短い伝熱管47tgは、圧力損失を増大させるべく、その端部の円弧状形状の曲率半径を小さく設定し、長い伝熱管47tiは、圧力損失を低減させるべく、その端部の円弧状形状の曲率半径を大きく設定する。これにより、複数の伝熱管47tの受熱能力のばらつきが抑制される(又は受熱能力が同一となる)。
上記のように、伝熱管47tの端部の円弧状形状による圧力損失の調整用構造は、伝熱管47tの高温側シリンダ22側(第1端部47a側)の端部ではなく、伝熱管47tの再生器46側(第2端部47b側)の端部に設けられるのがよい。その理由は以下の通りである。
即ち、低温側シリンダ32側から再生器46を介して伝熱管47tに流入した作動流体が熱源から加熱されるときに、単位流量当たりの受熱量のばらつきが抑制されることを目的としているためである。このことから、伝熱管47tの端部の円弧状形状による圧力損失の調整用構造は、再生器46側から伝熱管47tに流入する際の流路抵抗(流量)を調整するため(縮流効果)、伝熱管47tの再生器46側の端部に設けられる。
上記と反対に、伝熱管47tの端部の円弧状形状による圧力損失の調整用構造が、伝熱管47tの高温側シリンダ22側の端部に設けられた場合、再生器46側から伝熱管47tに流入した作動流体の流動に対する圧力損失を増大させる作用はあまり生じず、作動流体が熱源から加熱される際の流れに対する流路抵抗の調整作用はあまり生じない。
また、高温側シリンダ22側から伝熱管47tを通って再生器46に流れる作動流体の流動に対しては、圧力損失が少ない方がよい。その意味においても、伝熱管47tの端部の円弧状形状による圧力損失の調整用構造が、伝熱管47tの再生器46側の端部に設けられた場合には、高温側シリンダ22側から伝熱管47tを通って再生器46に流れる作動流体の流動に対しては、圧力損失をあまり生じさせないという点で、好ましい結果となる。
圧力損失の調整用構造としては、例えば、図25に示すように、伝熱管47tの内部の断面積を実質的に小さくする絞り部材91やオリフィスが用いられることができる。絞り部材91は、短い伝熱管47tgでは、圧力損失を増大させるべく、作動流体に対してより大きな障害となる大きな絞り部材91aが設けられ、中間の長さの伝熱管47thでは、相対的に小さな圧力損失量に設定すべく、作動流体に対してより小さな障害となる小さな絞り部材91bが設けられ、長い伝熱管47tiでは、圧力損失を低減させるべく、絞り部材91は設けられない。これにより、複数の伝熱管47tの受熱能力のばらつきが抑制される(又は受熱能力が同一となる)。
また、圧力損失の調整用構造として、例えば、図26及び図27に示すような、いわゆるスパイラル加工が用いられることができる。図26は、伝熱管47tの一部47tpにスパイラル加工がなされたものを示す平面図である。図27は、図26のX−X線断面図である。
スパイラル加工とは、断面形状が真円状の通常一般の管(ここでは伝熱管47t)の外周面にローラRを斜め方向から(管の長手方向に直交する方向から所定角度傾斜した状態で)押し当てて、相対的に管を周方向に回転させながら管の外周面を押圧により塑性変形させるものである。
伝熱管47tの一部47tpの外周面には、スパイラル加工により螺旋状の凹部94が連続的に形成されている。そのスパイラル状の凹部94に対応するように伝熱管47tの一部47tpの内周面には、螺旋状の凸部95が連続的に形成されている。スパイラル加工により、伝熱管47tの周面が変形されるため、その分だけ伝熱管47tの伝熱面積が増加する。また、スパイラル加工により、伝熱管47tの内部の断面積及び断面形状が連続的に変化し、流れに剥離、乱流が生じ、圧力損失、流路抵抗が増加する。
図26に示すように、伝熱管47tの残りの一部47tqには、スパイラル加工はなされていない。上記圧力損失の調整用構造として、圧力損失量を増加させるべき伝熱管47tには、相対的にスパイラル加工される領域47tpを増やし(スパイラル加工されない領域47tqを減らし)、相対的に圧力損失量を小さく設定するすべき伝熱管47tには、相対的にスパイラル加工される領域47tpを減らす(スパイラル加工されない領域47tqを増やす)。圧力損失量を最も小さくすべき伝熱管47tには、スパイラル加工がなされない。
上記のように、伝熱管47tにスパイラル加工が施された部分47tpを設けることにより、伝熱管47tの圧力損失が調整されるのみならず、伝熱管47tの伝熱面積及び流路抵抗も調整される。伝熱管47tにスパイラル加工が施された部分47tpを設けることにより、これらの特性・パラメータを調整することにより、伝熱管47tの長さ等の相違に応じて、伝熱管47tの受熱能力を調整することが可能である。
上記のように、伝熱管47tの端部の絞り部材91やスパイラル加工部47tpによる圧力損失の調整用構造は、伝熱管47tの高温側シリンダ22側(第1端部47a側)の端部ではなく、伝熱管47tの再生器46側(第2端部47b側)の端部に設けられるのがよい。
第4実施形態によれば、伝熱管47tの長さに応じて、作動流体の流動に対する圧力損失(流動損)を調整することで、複数の伝熱管47tの受熱能力のばらつきが抑制される(又は受熱能力が同一となる)。
以上に述べた第1から第4実施形態は、適宜組合わせることが可能である。
なお、上記においては、熱交換器がスターリングエンジンの加熱器に適用された例を用いて、本発明の熱交換器の構成、作用、効果を説明したが、本発明の熱交換器は、スターリングエンジンの加熱器以外の用途にも容易に適用可能であり、適用された場合には、上記と同様の有用性を有する。