JP2005172707A - 生化学解析用カートリッジ - Google Patents

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Abstract

【課題】 精度の高いデータ読み取りが可能な生化学解析用カートリッジを提供する。
【解決手段】 カートリッジ28には、チャンバー内に生化学解析用ユニット10が収容される。チャンバーを構成する天板51cには、生化学解析用ユニット10のフロースルーエリア17と対面する位置に検出窓61が設けられている。この検出窓61には、検出装置のライトガイド33が載置されて、前記フロースルーエリア17のデータ読み取りが行われる。天板51cは、可撓性を有するシートで形成されている。このため、ライトガイド33から押圧を受けると、前記検出窓61がフロースルーエリア17と接触するように変位する。これにより、ライトガイド33を構成する各光ファイバーが、フロースルーエリア17を構成する各スポット領域14に近づくので、各スポット領域14毎の正確なデータを検出することができる。
【選択図】 図6

Description

本発明は、DNAの塩基配列などの解析に用いられる生化学解析用ユニットを収容する生化学解析用カートリッジに関する。
生体由来物質、例えばDNAの塩基配列の解析などの生化学解析を行うために、生化学解析用ユニットが使用される。生化学解析用ユニットは、基板に微細な貫通孔を複数形成し、これら各貫通孔内に多孔質材料等の吸着性物質を押し込むことで、複数の吸着性領域(以下、スポット領域と称する)を形成したものであり、基板上に複数の微細なスポット領域が配列されていることからマイクロアレイなどと呼ばれる。この生化学解析用ユニットを使用した生化学解析方法は、生化学解析用ユニットの複数のスポット領域に、試薬となる特異的結合物質(以下、プローブと称する)を点着して固定化するスポッティング工程と、スポット領域に検体となる特異的結合物質(以下、ターゲットと称する)を浸透させて特異的結合(プローブとターゲットとの結合)を生じさせる反応工程と、生化学解析用ユニットから、各スポット領域の特異的結合反応の結果を示す生化学解析用データを読み取るデータ読み取り工程と、読み取られた解析用データをパーソナルコンピュータなどで解析するデータ解析工程とを含む(例えば、下記特許文献1及び特許文献2参照)。
プローブは、ターゲットの発現情報を調べるための試薬となるものであるから、分子構造、例えば、塩基配列や組成などが既知のものが使用される。プローブとしては、例えば、生体由来物質であるホルモン類,腫瘍マーカー,酵素,抗体,抗原,アブザイム,レセプタ,その他のタンパク質,リガンド,核酸,cDNA,DNA,RNAなどであり、ターゲットと特異的結合が可能な物質である。ターゲットは、分子構造が未知のものであり、生体由来物質であるホルモン類,腫瘍マーカー,酵素,抗体,抗原,アブザイム,レセプタ,その他のタンパク質,リガンド,核酸,cDNA,DNA,mRNAなどを生体から抽出,単離して採取されたものや、この採取後に化学的処理が施されたものである。
塩基配列を調べる場合には、スポッティング工程において、生化学解析用ユニットの各スポット領域に、異なる種類のプローブが固定化される。そして、反応工程において、ターゲットを溶媒に溶かした溶液(以下、ターゲット溶液と称する)を各スポット領域に浸透させることで、ターゲットと、このターゲットと相補的な関係にあるプローブとを特異的結合させる。
特異的結合が生じたことを標識させる標識方法としては、例えば、化学発光反応による発光を利用する化学発光方式が使用される。化学発光方式においては、ターゲット反応処理、抗原抗体反応処理、化学発光反応処理の各反応処理が順に実行される。ターゲット反応処理は、ターゲットに抗原を結合させたターゲット溶液を各スポット領域に浸透させて、ターゲットとプローブとを特異的結合させる処理である。このターゲット反応処理の後、生化学解析用ユニットは洗浄されて、特異的結合が生じたスポット領域以外の部分に付着したターゲットが取り除かれる。これにより、特異的結合が生じたスポット領域にのみ、ターゲットと抗原が残留する。
このターゲットの洗浄後、抗原抗体反応処理が行われる。抗原抗体反応処理では、酵素(標識物質である化学発光基質に作用してこれを分解して発光させる)と抗体の重合体(以下、酵素抗体という)を溶媒に溶かした酵素抗体溶液を、スポット領域に浸透させて、前記酵素抗体溶液と前記抗原とを反応させることにより、前記酵素抗体と抗原とを結合させる。この抗原抗体反応処理の後、再び生化学解析用ユニットが洗浄されて、抗原と酵素抗体とが結合しなかったスポット領域から、酵素抗体を取り除く。
この酵素抗体の洗浄後、前記化学発光基質を含んだ化学発光基質溶液を、各スポット領域に浸透させることにより、化学発光反応を生じさせる。抗原と酵素抗体とが結合したスポット領域は、酵素の作用によって化学発光基質が分解されて発光する。この光を読み取ることで特異的結合の有無を検出する。検出手段としては、例えば、光学情報を読み取るCCDイメージセンサなどの撮像デバイスが使用される。
これら各反応溶液を各スポット領域に浸透させる方式としては、生化学解析用ユニットを収納した反応室(以下、チャンバーという)内に各反応溶液を注入し、注入した反応溶液をピストンやポンプなどの機械的な動力を用いて流動させることにより、スポット領域の一方の側から他方の側へ通過させるフロースルー方式が一般的になってきている(例えば、特許文献2参照)。
また、最近では、生化学解析用ユニットの取り扱いの簡便性を考慮して、このフロースルー方式の生化学解析用ユニットを収容するカートリッジが開発されている。このカートリッジを使用すれば、生化学解析用ユニットをリアクタへ装填したりそこから取り外す際に該ユニットを裸のまま取り扱わなくて済む。このようなカートリッジに対応したリアクタには、カートリッジが装填されるリアクタ本体と、前記ピストンや循環パイプなど反応溶液を循環させる循環機構とが設けられている。前記装填部は、循環機構と接続されており、カートリッジを装填部に装填するだけで、循環機構と前記チャンバーとが接続されるようになっている。
さらに、下記特許文献2に記載されているカートリッジでは、その本体上面に検出窓が設けられており、本体内に収容された生化学解析用ユニットの各スポット領域の状態を外部から透視できるようにしている。この検出窓は、例えば、透明なプラスチックで形成された透明板で構成される。こうすれば、生化学解析用ユニットをカートリッジから取り出すことなく、各スポット領域の状態を撮影することができる。
検出装置には、例えば、CCDイメージセンサの受光面に各スポット領域からの光を投影するレンズが設けられている。このレンズの倍率は、全スポット領域がCCDイメージセンサの受光面のサイズに合うように縮小、あるいは、拡大されて投影されるように選ばれる。このように、カートリッジに検出窓を設ければ、反応工程からデータ読み取り工程へ至るまで、生化学解析用ユニットをカートリッジに入れた状態で作業を進めることができるので、生化学解析作業がより簡便になる。
しかし、この検出装置では、レンズで投影するために、レンズ内部、CCDイメージセンサのパッケージガラス、受光面近傍などで光の拡散が起こり、あるスポット領域から発光した光が隣接するスポット領域に相当する位置にも入射してしまうため、各スポット毎の光量を正確に検出することができなかった。
こうした不具合を解消するため、検出装置には、CCDイメージセンサの受光面に各スポット領域からの光を導光するライトガイドを設けたものもある。このライトガイドは、例えば、各スポット領域の数に応じた数の光ファイバーを束ねたものである。撮影は、各光ファイバーが各スポット領域に対応するように、それらの一端を前記検出窓に載置して行われる。これによれば、各スポット領域には、それぞれ1本の光ファイバーが割り当てられるので、レンズで投影する場合と比較して、隣接領域からの光の入射を軽減することが可能になる。
特開2003−227825号公報 WO01/45843号公報
しかしながら、従来のカートリッジでは、検出窓を構成する透明板と生化学解析用ユニットの間に隙間があるため、光ファイバーを使用しても光の拡散を十分に抑えることができないため、隣接領域からの光の進入を防止することができず、精度の高い解析用データを得ることはできなかった。というのは、上述したとおり、フロースルー方式の場合には、生化学解析用ユニットの上方及び下方に反応溶液を流動させるための空間を確保しなければならないので、生化学解析用ユニットと前記透明板との間には、隙間が必要になる。この隙間があると、光の拡散により、あるスポット領域から発光した光が、それに対応する光ファイバーだけでなく、隣接する光ファイバーへも入射してしまうため、各スポット毎の光量を正確に検出することができなかった。
本発明は、精度の高いデータ読み取りが可能な生化学解析用カートリッジを提供することを目的とする。
前記目的を達成するために、本発明の生化学解析用カートリッジは、基板上に試薬となるプローブが固定化され、検体となるターゲットを含む反応溶液が浸透するスポット領域が複数個配列された配列面を備えた生化学解析用ユニットを収容するチャンバーと、このチャンバーを構成し前記配列面と対面する天板に設けられ、前記配列面の状態を外部から検出するための検出窓とを備えた生化学解析用カートリッジにおいて、前記検出窓が前記配列面に向かって変位するように、前記天板を、可撓性を有するシートで形成したことを特徴とする。
なお、前記検出窓は、例えば、前記各スポット領域に対応する位置に配置された複数の開口から構成される。この開口には、透明な材料が埋め込まれていることが好ましい。
なお、前記シートのうち前記検出窓が変位する際に撓む部分には、他の部分よりも可撓性の高い材料を使用することが好ましい。
なお、前記シートの全面を透明にしてもよい。この場合、前記シートの厚みは、20μm〜200μmの範囲が好ましく、さらに好ましくは、1μm〜20μmの範囲である。
前記生化学解析用ユニットは、前記各スポット領域に浸透した前記反応溶液が該ユニットの一方の面から他方の面へ通過可能なフロースルータイプであることが好ましい。
本発明の生化学解析用カートリッジは、基板上に試薬となるプローブが固定化され、検体となるターゲットを含む反応溶液が浸透するスポット領域が複数個配列された配列面を備えた生化学解析用ユニットを収容するチャンバーと、このチャンバーを構成し前記配列面と対面する天板に設けられ、前記配列面の状態を外部から検出するための検出窓とを備えた生化学解析用カートリッジにおいて、前記検出窓が前記配列面に向かって変位するように、前記天板を、可撓性を有するシートで形成したから、データ読み取り時に、検出装置の光ファイバーの端面とスポット領域とを接近させることができるので、精度の高いデータ読み取りが可能な生化学解析用カートリッジを提供することができる。
図1に示すように、生化学解析用ユニット10を使用した生化学解析方法は、スポッティング工程と、反応工程と、データ読み取り工程と、データ解析工程とを含む。生化学解析用ユニット10は、基板11に、微細な貫通孔12をマトリックス状に複数形成し、各貫通孔12に吸着性物質であるメンブレン13を圧入して複数のスポット領域14を形成したものであり、フロースルータイプのものである。
図2は、生化学解析用ユニット10の説明図である。生化学解析用ユニット10は、データ読み取り工程において、後述するCCDイメージセンサを含む検出装置によって光電的に読み取られる。したがって、基板11の材質としては、光の散乱を防止するために、光を減衰させる材質が好ましく、金属、セラミック、プラスチックなどが使用される。光の散乱を防止する趣旨は、あるスポット領域14で発せられた光が、基板壁を透過して、隣接するスポット領域に到達することにより、発光していないスポット領域から光があたかも光が発せられているかのように見えてしまうという誤認識を防止することにある。光を減衰させる効率が高い材質を使用することで、誤認識が防止され、信頼性の高い解析用データが得られる。光の減衰率(スポット領域から発せられる光強度の低下率)は、あるスポット領域から発せられる光強度が、隣接するスポット領域においては、1/10以下になることが好ましく、1/100以下になることがより好ましい。
基板11の厚みは、50〜1000μmの範囲であることが好ましく、より好ましくは100〜500μmの範囲である。金属としては、銅、銀、金、亜鉛、鉛、アルミニウム、チタン、錫、クロム、鉄、ニッケル、コバルト、タンタルなどを用いることができる。または、ステンレス鋼や黄銅などの合金も用いることができるが、必ずしもこれらに限定されない。また、セラミックとしては、アルミナ、ジルコニア、等があげられるが、必ずしもこれらに限定されない。
前記プラスチックとしては、ポリオレフィン類(例えば、ポリエチレンやポリプロピレンなど)、ポリスチレン、アクリル樹脂(例えば、ポリメチルメタクリレートなど)、含塩素ポリマー類(例えば、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデンなど)、含フッ素ポリマー(例えば、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレンなど)、含塩素フッ素ポリマー(例えば、ポリクロロトリフルオロエチレンなど)、ポリカーボネート、ポリエステル(例えば、ポリエチレンナフタレートやポリエチレンテレフタレートなど)、ポリアミド(例えば、ナイロン−6やナイロン−66など)、ポリイミド、ポリスルフォン、ポリフェニレンサルファイド、ケイ素樹脂(例えば、ポリジフェニルシロキサンなど)、フェノール樹脂(例えば、ノボラックなど)、エポキシ樹脂、ポリウレタン、セルロース類(例えば、酢酸セルロースやニトロセルロースなど)などが挙げられる。または、コポリマー(例えば、ブタジエン−スチレン共重合体など)、さらには前記プラスチックをブレンドしたものも挙げられるが、必ずしもこれらに限定されない。
プラスチックを基板材料に用いると貫通孔の形成が容易となり好ましいが、光の減衰が生じ難い場合もある。そこで、光をより一層減衰させるために、プラスチックに、カーボン,金属酸化物粒子やガラス繊維などの粒子を充填して、これらをプラスチック内部に分散させることが好ましい。金属酸化物粒子としては、二酸化ケイ素、アルミナ、二酸化チタン、酸化鉄、酸化銅などがあげられるが、必ずしもこれらに限定されない。
貫通孔12の形成方法は、パンチング法、放電パルス法、食刻技術法(フォトリソグラフィー法),電解エッチング法,エキシマレーザー及びYAGレーザーなどのレーザーを基板に照射する方法などがあるがこれらに限定されるものではない。これら各形成方法は、基板の材料等に応じて適宜選択される。
貫通孔12の密度を高めるために、貫通孔の開口部の面積は、5mm2 未満であることが好ましく、より好ましくは1mm2 未満であり、0.3mm2 未満がより好ましく、0.01mm2 未満がさらに好ましい。そして、最も好ましくは0.0001mm2 以上である。また、貫通孔の孔形状を略円形とした場合には、その直径が、30μm〜300μmであることが好ましい。
貫通孔12の配列ピッチ(隣接する二つの孔の中心から中心までの距離)Pは、50μm〜3000μmの範囲が好ましく、隣接する2つの貫通孔12の端部から端部までの距離Lは、10μm〜1500μmの範囲とすることが好ましい。また、貫通孔12の密度は、10個/cm2 以上が好ましく、100個/cm2 以上がより好ましく、さらに好ましくは500個/cm2 以上、さらに最も好ましくは1000個/cm2 以上50000個/cm2 以下の範囲である。
貫通孔12が形成された基板11には、洗浄効果を高めるために、表面処理が施される。基板11の材料に金属,合金(例えば、ステンレス鋼など)を用いた際には、コロナ放電,プラズマ放電または陽極酸化法などの少なくともいずれかの方法により表面処理が施される。この表面処理によって基板11には、親水性が高い表面処理槽が形成される。
表面処理が施された後、基板11のメンブレン13が圧入される面に接着剤が塗布される。なお、接着剤を塗工する方法は、特に限定されるものではないが、ロール塗布,ワイヤーバー塗布,ディップ塗布,ブレード塗布,エアナイフ塗布などにより行なうことができる。接着剤には、スチレンブタジエンゴム,アクリロニトリルブタジエンゴムが好ましく用いられるが、これらに限定されるものではない。なお、余剰の接着剤は、ブレードにより掻き落としたり、レーザー光の照射により熱分解させて除去する方法などにより行なうことが後の工程で不純物の発生を防止するために好ましい。なお、本発明において、基板の表面処理、接着剤の塗工の工程は省略することもできる。
接着剤が塗布された後、貫通孔12にメンブレン13が圧入される。メンブレン13には、多孔質材料あるいは繊維材料が好ましく使用される。また、多孔質材料と繊維材料とを併用して用いることもできる。本発明において用いられるメンブレン13は、多孔質材料(有機,無機,有機/無機)、繊維材料(有機,無機)のいずれでもよく、それらを混合して用いても良い。メンブレン13の厚さは特に限定されないが、50μm〜200μm(0.05mm〜0.20mm)の範囲のものを用いることが好ましい。また、体積空隙率Cが、10%〜90%の範囲のものを用いることが好ましく、空隙を構成する微細孔の平均孔径は0.1μm〜50μmの範囲にあるものを用いることが好ましい。体積空隙率Cは、吸着性材料の見掛け体積に対する無数の孔の体積和の百分率で示される。
有機多孔質材料は、特に限定されるものではないが、ポリマーを用いることが好ましい。ポリマーとしては、セルロース誘導体(例えば、ニトロセルロース、再生セルロース、セルロースアセテート、酢酸セルロース、酪酸酢酸セルロースなど)、脂肪族ポリアミド類(例えば、ナイロン6、ナイロン6,6、ナイロン4,10など)、ポリオレフィン類(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレンなど)、含塩素ポリマー類(例えば、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデンなど)、フッ素樹脂類(例えば、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオライドなど)、ポリカーボネート、ポリスルフォン、アルギン酸及びその誘導体(例えば、アルギン酸、アルギン酸カルシウム、アルギン酸/ポリリシンポリイオンコンプレックスなど)、コラーゲンなどがあげられ、これらポリマーの共重合体や複合体(混合体)も用いることができる。なお、本発明においては、多孔質としたナイロンを用いることが吸水性の点から好ましい。
無機多孔質材料も、特に限定されるものではないが、好ましくは、金属(例えば、白金、金、鉄、銀、ニッケル、アルミニウムなど)、金属等の酸化物(例えば、アルミナ、シリカ、チタニア、ゼオライトなど)、金属塩(例えば、ヒドロキシアパタイト、硫酸カルシウムなど)及びこれらの複合体などが挙げられる。また、活性炭などの炭素多孔質材料も好ましく用いられる。
また、有機繊維材料,無機繊維材料も特に限定されるものではない。例えば、前記セルロース誘導体類、脂肪族ポリアミド類などの有機繊維材料や、ガラス繊維、金属繊維などの無機繊維材料を用いることができる。また、メンブレン13の強度を高めるため、多孔質材料を溶解する溶媒に不溶な繊維材料を混合させても良い。
メンブレン13の圧入は、基板11とメンブレン13とを重ね合わせた状態で上下からプレス板により間欠的にプレスすることによって行われる。なお、メンブレン13に有機多孔質材料及び/または有機繊維材料を用いているときには、プレス板を加熱して、これを基板11に浸透させることで基板11の温度を上げる。これにより、メンブレン13が軟化して押込みが容易となる。また、プレス板の代わりにローラを用いてもよい。こうして、貫通孔12にメンブレン13が押し込まれることによりスポット領域14が形成される。
複数のスポット領域14が配列されたフロースルーエリア17は略矩形をしており、各スポット領域14は、所定の数毎に、輪郭が略矩形のブロック単位で規則的に区画されている。基板11のサイズは、例えば、縦が70mmで、横が90mmである。各ブロック18のサイズは、例えば、約4mm四方である。これらのブロック18は、マトリックス状に配列されており、その数は、例えば、縦が10個で横が12個である。これらブロックのサイズ及び数,各スポット領域14のサイズ及び配列ピッチなどのフロースルーエリアの仕様は、後述する検出装置31の仕様と対応するように決定される。符号19は、生化学解析用ユニット10を、後述する生化学解析用カートリッジ28に取り付ける際の位置決め穴である。なお、本例では、各スポット領域14をブロック単位で区画しているが、こうした区画はしなくてもよく、例えば、フロースルーエリア17全域に渡って、各スポット領域14を同じピッチで配列してもよい。
スポッティング工程では、スポッターを用いて、生化学解析用ユニット10の各スポット領域14に、異なる種類のプローブを含む溶液(以下、プローブ溶液という)が各々点着される。スポッターは、先端に割り溝が形成され、プローブ溶液を点着するスポットピン20を備えている。このスポットピン20により、ウエルプレート上に分注された複数種類のプローブ溶液を吸い上げ、吸い上げられたプローブ溶液を各スポット領域14に点着する。この後、各スポット領域14に紫外線などを照射することによりプローブがスポット領域14に固定される。こうして、プローブが固定された生化学解析用ユニット10は、チャンバー29を備えた生化学解析用カートリッジ(以下、単にカートリッジという)28に収容され、その形態で反応工程に送られる。
反応工程では、リアクタ21を用いて、プローブと、検体となるターゲットとを反応させる。本例では、標識方法として上述の化学発光方式を採用しており、反応工程は、ターゲット反応処理,洗浄,抗原抗体反応処理,洗浄,化学発光反応処理の5つの処理ステップからなり、これらの処理ステップはこの順番で順に実行される。
リアクタ21は、リアクタ本体22,循環パイプ23,ポンプ24,切り換え弁25,液貯蔵部26,排出槽27などからなる。カートリッジ28は、リアクタ本体22に着脱自在にセットされる。リアクタ本体22は、チャンバー29内の温度を所定の温度に保持するための保温ケースを兼ねている。実験に使用されるターゲット溶液は、反応溶液調製装置によって、抗原と結合したターゲットを溶媒に溶かし込むことにより作成される。
循環パイプ23は、ポンプ24及び切り換え弁25とともに循環機構を構成する。生化学解析用カートリッジ28には、チャンバー29へ反応溶液を供給する供給路28a及びそこから反応溶液を排出する排出路28bが設けられており、これら供給路28a及び排出路28bに前記循環パイプ23が接続される。これにより、チャンバー29内を流動する反応溶液の循環経路が構成される。また、循環パイプ23には、切り換え弁25を介して、未使用の反応溶液や洗浄液を貯蔵する液貯蔵部26と、使用済みの反応溶液や洗浄液を排出する排出槽27とが接続されている。
切り換え弁25は、循環パイプ23と、液貯蔵部26及び排出槽27とを接続して、溶液等の供給及び排出を行う供給排出位置と、循環パイプ23と、液貯蔵部26及び排出槽27とを遮断して、循環路を閉路する循環位置との間で回動自在に設けられている。切替弁25は、2つの通路を備えており、切り換え弁25が供給排出位置にあるときには、液貯蔵部26と排出槽27とが、切り換え弁25内の別々の通路を介して、循環パイプ23に接続される。このため、液液貯蔵部26から循環パイプ23に液の供給が行われると、それ以前に循環パイプ23内を満たしていた液体がチャンバー29及び排出路28bを通って排出槽27に押し出される。こうして循環経路内の液の入れ替えが行われる。
液貯蔵部26は、ターゲット溶液を収容するタンクT1,前記ターゲット溶液を洗浄する洗浄液を収容するタンクT2,酵素抗体溶液を収容するタンクT3,酵素抗体溶液を洗浄する洗浄液を収容するタンクT4,化学発光基質溶液を収容するタンクT5を備えており、各タンクT1〜T5は、供給管を介して切り換え弁25に接続される。各タンクT1〜T5は、供給管の分岐部から放射状に延びた枝管にそれぞれ接続されており、各タンクT1〜T5と供給管との間にはそれぞれバルブV1〜V5が設けられている。各タンクT1〜T5内の溶液や洗浄液は、上述した反応工程の各処理ステップに応じて、各バルブV1〜V5の開閉により供給管へ選択的に供給される。
チャンバー29に注入された液体は、図中、下面側から各スポット領域14に浸透して各スポット領域14を透過して、図中上面側へ流動する。ターゲット反応処理においては、タンクT1からターゲット溶液がチャンバー29へ注入されて、スポット領域14に浸透する。この浸透時に、ターゲットと相補的なプローブを有するスポット領域では、ターゲットとプローブとが特異的結合反応を生じる。各スポット領域14を透過したターゲット溶液は、排出路28bを通ってチャンバー29外へ排出される。チャンバー29から排出された反応溶液は、循環パイプ23及びポンプ24を介して、再びチャンバー29に注入される。
このターゲット反応処理の後、タンクT2から洗浄液がチャンバー29へ供給されて、この洗浄液を流動させることにより、生化学解析用ユニット10が洗浄される。この洗浄により、特異的結合反応を生じたスポット領域以外の部分からターゲットが取り除かれる。
次に、タンクT3から酵素抗体溶液をチャンバー29へ供給して、酵素抗体溶液を各スポット領域に浸透させることにより、抗原抗体反応処理が行われる。ターゲットとプローブとが特異的結合を生じたスポット領域においては、抗原抗体反応が生じ、ターゲットに結合された抗原に、前記酵素抗体が結合する。この抗原抗体反応処理の後、タンクT4から洗浄液が供給されて再び生化学解析用ユニット10が洗浄される。この洗浄により抗原抗体反応を生じたスポット領域以外の部分から前記酵素抗体が取り除かれる。
なお、この洗浄効果をさらに向上させるためには、抗原抗体反応処理を実行する前に、生化学解析用ユニット10にいわゆるブロッキング剤を浸透させておくことが好ましい。こうすれば、抗原と結合しない酵素抗体がより剥離しやすくなり洗浄効果がより向上する。このブロッキング剤と生化学解析用ユニット10との浸透についても、洗浄液と同様に、リアクタ21を用いて行うとよい。
酵素抗体溶液の洗浄が終了した後、チャンバー29には、化学発光基質を溶媒に溶かした化学発光基質溶液が供給され、この化学発光基質溶液を各スポット領域に浸透させることにより、化学発光反応処理が実行される。抗原抗体反応が生じたスポット領域においては、酵素抗体が残留しているので、酵素の作用によって化学発光基質が分解されて発光する。
この反応工程の後、リアクタ本体22にカートリッジ28を装填した状態でデータ読み取りが行われる。カートリッジ28には、後述する検出窓が設けられており、この検出窓を通してカートリッジ28内の生化学解析用ユニット10から生化学解析用データが光電的に読み取られる。
図3に示すように、検出装置31は、スポット領域14から発光される光を受光してこれを光電変換するCCDイメージセンサ34aを備えた撮像ユニット32と、これに取り付けられるライトガイド33からなる。撮像ユニット32は、CCDイメージセンサ34aをパッケージングしたCCDパッケージ34と、これを冷却する冷却ユニット36とからなる。生化学解析用ユニット10のデータ読み取りに際しては微弱な光を検出しなければならないため、CCDイメージセンサ34aは、冷却ユニット36によって0℃以下に冷却される。
冷却ユニット36は、ペルチェ素子(Peltier device)37が組み込まれたケース本体38に、ヒートシンク39を取り付けたものである。ペルチェ素子37は、周知のように、薄い金属に2種類の半導体を接合しこれに電流を流すと一方の半導体から他方へ熱が移動するという「ペルチェ効果」を利用した素子であり、可動部が無く、騒音を発生しないことからコンピュータのCPUなどの冷却に用いられている。CCDパッケージ34は、ケース本体38に収容されており、ペルチェ素子37の吸熱面と接合された伝熱板40に取り付けられている。ケース本体38には、結露を防止するために乾燥窒素が封入されている。ペルチェ素子37は、その放熱面がケース本体38に接触するように取り付けられており、吸収した熱はケース本体38及びヒートシンク39によって放熱される。
CCDイメージセンサ34aの受光面には、スポット領域14から発光される光をCCDイメージセンサ34aの受光素子へ導くライトガイド33が設けられる。ライトガイド33は、各スポット領域14の数に対応した複数本の光ファイバー33aから構成され、各スポット領域14の状態を検出する検出ヘッドとして機能する。なお、図3上、光ファイバー33aの本数は、図2に示した生化学解析用ユニット10のスポット領域14の数とは正確に対応しておらず、便宜上省略されている。
各光ファイバー33aの一端が前記受光面に、他端がスポット領域にそれぞれ対向するように配置される。生化学解析用ユニット10と対向する端部には、各光ファイバー33aの配列位置を各スポット領域14の配列に対応するように固定する位置固定部材41が取り付けられる。データ読み取りは、そのライトガイド33の一端を、生化学解析用ユニット10の読み取り面に対面させて配置して行われる。。CCDイメージセンサ34aは、各スポット領域14の発光状態を検出することにより、特異的結合反応の結果を示す画像データを取得する。データ解析工程では、この画像データを生化学解析用データとして解析する。
図4に示すように、カートリッジ28は、リアクタ本体22に装填される。リアクタ本体22は、本体基部22aと、上蓋22bとからなる。本体基部22a及び上蓋22bの内面は、カートリッジ28の外形に合わせて象られており、また、それらの側端部には、供給路28a及び排出路28bに対応する位置に切り欠きが設けられている。この切り欠きを通して供給路28a及び排出路28bがリアクタ本体22の側面から突出して、その先端部が外部に露呈される。上蓋22bは、装填されたカートリッジ28を覆うように本体基部22aの上方に被せられる。この状態で、上蓋22bと本体基部22aとは図示しない圧着機構によって圧着される。
図5は、カートリッジ28の分解斜視図であり、図6は、カートリッジ28と、それが装填された状態のリアクタ本体22の断面図である。なお、これらの図において、生化学解析用ユニット10のスポット領域14は、図2に示したスポット領域14の大きさや数とは正確に対応しておらず、便宜上、省略されている。この省略に応じて、ライトガイドを構成する光ファイバーの本数等も省略して示している。
図5及び図6に示すように、カートリッジ28は、上半部51及び下半部52とからなる。上半部51及び下半部52には、生化学解析用ユニット10のフロースルーエリア17と対向する部位に、それぞれハウジング51a及びハウジング52aが形成されており、各ハウジング51a,52aの周壁と、フロースルーエリア17との間に所定の空間が確保されるようになっている。チャンバー29は、これら各ハウジング51a,52aを組み合わせることで構成される。
上半部51は、ハウジング51aを構成する周壁のうちその上部を構成する天板51cと、天板51cの周囲に形成される枠部51bとからなる。下半部52にも、ハウジング52aの周辺に枠部52bが形成されている。これら枠部51b,52bには、パッキン56をそれぞれ取り付けるための溝57が形成されている。これら各枠部51b,52bが生化学解析用ユニット10の周辺部を挟み込んで、該ユニット10を保持する。
また、下半部52には、ハウジング52aの脇に位置決めピンが設けられており、このピンを位置決め穴19に挿通させることによって生化学解析用ユニット10の位置決めが行われる。生化学解析用ユニット10を位置決めした状態で、その上から上半部52を被せると、生化学解析用ユニット10が、上下の各枠部51b,52bに挟まれて保持されるとともに、フロースルーエリア17がチャンバー29内に収容される。チャンバー29は、パッキン56によって、生化学解析用ユニット10と、上半部51及び下半部52とのそれぞれの隙間が埋められて、密閉される。こうして生化学解析用ユニット10を収容した上半部51及び下半部52は、断面が略コの字形の2つの留め金58によって両側から挟み込まれて固定される。
天板51cのフロースルーエリア17と対面する位置には、検出窓61が設けられている。図7に示すように、検出窓61は、スポット領域14に対応する位置に形成された複数の開口62からなる。各開口62の径は、スポット領域14の径に対応している。検出窓61は、カートリッジ28をリアクタ本体22に装填した状態で、フロースルーエリア17のデータ読み取りができるようにするためのものである。反応工程においては、図6(A)に示すように、上蓋22bによって、検出窓61を含むカートリッジ28の上面が覆われる。反応工程が終了すると、図6(B)に示すように、上蓋22bが取り外されて、検出窓61が外部に露呈される。この状態で、ライトガイド33の端面を検出窓61に載置して、各光ファイバー33aを、各スポット領域14に対応して形成された各開口62と対面させる。各光ファイバー33aには、各スポット領域14から発光される光が各開口62を通して入力される。
上半部51の素材としては、例えば、ABS(アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン)樹脂や、PP(ポリプロピレン)樹脂などのプラスチックが使用されており、上記天板51c及び枠部51bは、射出成形により一体成形される。天板51cは、厚みが約1mm程度のシート(薄板)状に形成されており、これにより可撓性が持たされている。このため、反応時においては、図6(A)に示すように、検出窓61は、反応溶液の圧力によって、上蓋22bに押し当てられて、フロースルーエリア17との間に所定の間隔が確保される第1の位置に保持される。他方、データ読み取りの際には、図6(B)に示すように、ライトガイド33の端面が検出窓61に押し当てられて、その押圧によって、枠部51bと検出窓61との間のつなぎ部63が撓んで、検出窓61がフロースルーエリア17の表面に接触する第2の位置に変位する。
このように、検出窓61を変位させることで、反応時には、フロースルーエリア17との間に反応溶液を流動させる空間を確保するとともに、データ読み取り時には、精度の高いデータが得られるようにしている。というのは、反応時においては、図8に示すように、ハウジング51aを構成する壁面と、フロースルーエリア17との間には、約100〜200μmの隙間Sを確保する必要がある。しかし、隙間Sを確保した状態、すなわち、検出窓61を第1の位置に保持した状態でデータ読み取りが行われると、各スポット領域14から発光される光線Rが拡散して、当該スポット領域14と対面する開口62以外の開口62へも放射されてしまう。こうなると、各スポット領域14毎の光量を正確に検出できなくなるため、データの精度が低下してしまう。光の拡散の度合いは隙間Sの大きさに従って大きくなるので、データ読み取り時には、隙間Sは無い方がよい。本発明では、検出窓61を変位可能としたことで、データ読み取りの際には隙間Sが無くなり、各スポット領域14からの光が対面する開口62にのみ放射されるようになるので、精度の高いデータが得られる。
なお、本例においては、天板51cの厚みT1を約1mmとしているが、もちろん、これ以外の値でもよい。この厚みT1は、光の読み取り効率を考慮すると、薄ければ薄いほどよい。しかし、薄すぎると前記シート部分の剛性が確保できない他、各スポット領域14に付着した反応溶液の残滓が開口62を通って光ファイバー33aに付着するおそれもある。また、剛性は材質によっても異なる。したがって、厚みT1の値は、上述した点を考慮して適宜選択される。
また、ハウジング52aの底面には、フロースルーエリア17と対面する位置に、複数のボス66が形成されている。これらのボス66は、生化学解析用ユニット10がライトガイド33からの押圧を受けたときに、該ユニット10を支えてその撓みを防止する支柱である。この支柱により撓みが防止されるので、前記押圧により、スポット領域14と各光ファイバー33aとの位置関係がずれてしまうことがない。図7及び図8に示すように、各ボス66は、各スポット領域14への反応溶液の流路を塞ぐことがないように、各スポット領域14の間に位置するように配置されている。本例では、ボス66を角筒状に形成しているが、もちろん円筒状に形成してもよい。
以下、上記構成による作用を説明する。スポッティング工程において、生化学解析用ユニット10の各スポット領域14には、異なる種類のプローブが点着して固定化される。この生化学解析用ユニット10は、カートリッジ28に収納され、その形態で反応工程に送られる。
反応工程では、まず、カートリッジ28をリアクタ本体22に装填する。カートリッジ28を装填した後、切り換え弁25を循環位置から供給排出位置に移動する。そして、バルブV1を開いて、ポンプ24を駆動することによってタンクT1からターゲット溶液をチャンバー29へ供給する。チャンバー29及び循環経路内をターゲット溶液で満たしエアーを抜いた状態で、切り換え弁25を循環位置に移動する。この状態で、ポンプ24を駆動すると、ターゲット溶液が加圧された状態で循環経路内を循環する。チャンバー29内では、フロースルーエリア17の下面から上面に向けてターゲット溶液が流動する。ターゲットと相補的な関係を有するプローブが固定化されたスポット領域14においては、特異的結合反応が生じる。他方、ターゲットと相補的な関係に無いプローブが固定化されたスポット領域14においては、特異的結合反応が生じない。
ターゲット反応処理が終了した後、切り換え弁25を供給排出位置に切り換えて、バルブV2を開いてタンクT2から洗浄液を循環経路に供給する。洗浄液が循環経路内に注入されると、循環経路内にすでに存在していたターゲット溶液が排出路28bを通って排出槽27へ順次押し出されて排出される。これにより、循環経路内の液体がターゲット反応溶液から洗浄液に入れ替えられる。循環経路内が洗浄液で満たされたら切り換え弁25を循環位置に切り換える。ポンプ24を駆動すると洗浄液が循環経路内を循環して生化学解析用ユニット10の洗浄が行われる。
洗浄が終了した後、切り換え弁25を供給排出位置に切り換えるとともに、バルブV3を開いて、タンクT3から酵素抗体溶液を循環経路に供給して、洗浄液と酵素抗体溶液との入れ替えを行う。循環経路が酵素抗体溶液で満たされたら、切り換え弁25を循環位置に戻して、ポンプ24を駆動することにより酵素抗体溶液を循環させて抗原抗体反応処理を実行する。ターゲットと抗原とが特異的結合をしたスポット領域においては、抗原抗体反応が生じて、抗原と酵素抗体とが結合する。
抗原抗体反応処理の後、上記と同様の手順で、酵素抗体反応溶液とタンクT4から新たに供給される洗浄液とを入れ替えて、生化学解析用ユニット10の洗浄を行う。この洗浄により、抗原抗体反応が生じたスポット領域以外のスポット領域から酵素抗体が取り除かれる。
この洗浄の後、上記と同様の手順で、タンクT5から化学発光基質溶液を循環経路に供給して、洗浄液と化学発光基質溶液とを入れ替える。循環経路が化学発光基質溶液で満たされたら切り換え弁25を循環位置に戻して、化学発光反応処理を実行する。抗原抗体反応が生じたスポット領域には、酵素抗体が残留しているから、酵素の作用によって化学発光基質が分解されて発光する。
こうして反応工程が終了した後、データ読み取り工程が開始される。データ読み取り工程では、まず、上蓋22bが取り外されて、図6(B)に示すように、検出窓61を含むカートリッジ28の上面が外部に露呈される。
検出窓61には、検出装置31のライトガイド33の端面が押し当てられる。ライトガイド33からの押圧により、つなぎ部63が撓んで検出窓61がフロースルーエリア17に接触する。この状態で、データ読み取りが行われる。上述したとおりターゲットとプローブとの特異的結合反応が生じたスポット領域14には化学発光反応が生じて発光し、他方、特異的結合反応が生じないスポット領域14は発光しない。この光の有無を検出装置31によって検出することで、生化学解析用データが読み取られる。この読み取りの際には、検出窓61とフロースルーエリア17とは接触しているので、光の拡散に起因するノイズが発生することはなく、精度の高いデータが得られる。また、ライトガイド33とフロースルーエリア17の間には、天板51cがあるので、フロースルーエリア17上に付着した反応溶液の残滓がライトガイド33に付着してしまうこともない。
上記実施形態では、検出窓を複数の開口で形成した例で説明している。これは、1種類の樹脂を使用した最も単純な成形法によって作成することができるので、コスト的に最も有利である。しかし、その反面、反応時においては、開口に反応溶液が流れ込むため、反応溶液の流動性が悪化してしまうデメリットもある。そこで、図9に示すカートリッジ70のように、検出窓72を構成する開口73に透明な樹脂74を埋め込んでもよい。この場合には、上半部71は、例えば、透明な樹脂74と、他の部分の樹脂とは、種類や色が異なる複数の材料を一体成形する多色成形法によって作成される。もちろん、単色成形によって上半部71の本体部を形成した後、形成された開口73に透明な樹脂74を埋め込んでもよい。こうすれば、開口による凹みが塞がれるため、反応溶液の流動性が改善される。図上二点鎖線は、データ読み取りの際の天板の状態を示す。また、上記実施形態と同一の部品については、同じ符号で示す。
また、図10に示すカートリッジ80の上半部81のように、天板82のつなぎ部83をより可撓性の高い材料で形成してもよい。上半部81は、枠部84と、天板82のうち、つなぎ部83を除く部分(検出窓85を含む)とに同種の材料が使用され、つなぎ部82のみに別種の材料が使用される。つなぎ部83の材料としては、例えば、エラストマーが使用される。この上半部81は、上記多色成形法により一体成形される。また、図11に示すように、上半部81の検出窓85の開口85aに透明な樹脂74を埋込んでもよい。
上記実施形態では、各スポット領域に対応する複数の透過部(開口や透明樹脂)によって検出窓を構成した例で示しているが、図12に示すカートリッジ90のように、全面が透明な透明シート91を天板として使用し、これを検出窓として利用してもよい。この場合には、上記実施形態と異なり、透過部が各スポット領域14毎に区画されていないので、透明シート91の厚みT2が厚いと、上述した光の散乱に起因するノイズが発生するおそれがある。したがって、各光ファイバーの端面と各スポット領域14とがなるべく近づくように、透明シート91の厚みT2はできるだけ薄い方がよい。この厚みT2の具体的な値としては、約200μm以下であることが好ましく、さらに好ましくは、20μm以下である。透明シート91の素材としては、例えば、PEN(ポリエチレンナフタレート)樹脂、アラミド樹脂などが使用される。この場合の上半部92は、枠部93,透明シート91,スペーサー94をそれぞれ別体で形成し、これらを接着や融着等により接合して作成される。
上記実施形態では、生化学解析用ユニットとして、スポット領域に浸透した反応溶液が該ユニットの一方の面から他方の面に通過可能なフロースルータイプのユニットを使用し、スポット領域内を反応溶液を通過させて反応処理を行うフロースルー方式の例で説明している。しかし、本発明の生化学解析用カートリッジは、フロースルー方式に限らず、例えば、振盪方式によって反応処理を実行する場合にも適用することができる。振盪方式とは、反応容器に生化学解析用ユニットを収容するとともに反応溶液を注入し、この反応容器をシーソーのように揺らして振盪させることにより、反応溶液をスポット領域に浸透させる方式である。
図13に示すカートリッジ100は、この反応容器として使用されるものである。生化学解析用ユニット103は、上半部101及び下半部102とによって挟持されてカートリッジ100に固定される。上半部101には、その中央部に検出窓101aが設けられている。生化学解析用ユニット103の各スポット領域が配列される配列面103aの状態は、この検出窓101aを通して読み取られる。上半部101には、前記配列面103aと対向する位置にハウジング101dが形成されている。このハウジング101dによって検出窓101aと配列面103aとの間に反応溶液105が流動する空間が確保される。また、上半部101には、供給する供給路101b及び排出路101cが形成されている。下半部102には、生化学解析用ユニット103との間に隙間を形成するハウジングは形成されておらず、該ユニット103の下面はその全域が下半部102の上面と接する。
図13(B)に示すように、反応工程では、まず、供給路101bから反応溶液105をハウジング101dへ供給する。この状態で、カートリッジ100を、例えば、振盪機を用いて振盪させる。こうして、反応溶液105をスポット領域へ浸透させて、特異的結合反応を生じさせる。この反応工程の後、排出路101cから反応溶液105を排出して、検出窓101aから配列面103aのデータ読み取りを行う。
生化学解析用ユニットを使用した生化学解析方法の全体工程を示すフローチャートである。 生化学解析用ユニットの平面図である。 検出装置31の構成図である。 リアクタ本体の分解斜視図である。 カートリッジの分解斜視図である。 カートリッジ及びリアクタ本体の断面図である。 検出窓,フロースルーエリア,ボスの拡大図である。 カートリッジ断面の拡大図である。 開口に透明樹脂を埋め込んだカートリッジの説明図である。 つなぎ部にエラストマーを使用したカートリッジの説明図である。 つなぎ部にエラストマーを使用するとともに開口に透明樹脂を埋め込んだカートリッジの説明図である。 天板に透明シートを使用したカートリッジの説明図である。 振盪方式に用いるカートリッジの例の説明図である。
符号の説明
10 生化学解析用ユニット
14 スポット領域
17 フロースルーエリア
21 リアクタ
22 リアクタ本体
28 カートリッジ
29 チャンバー
31 検出装置
33 ライトガイド
33a 光ファイバー
51 上半部
61 検出窓
62 開口
63 つなぎ部

Claims (8)

  1. 基板上に試薬となるプローブが固定化され、検体となるターゲットを含む反応溶液が浸透するスポット領域が複数個配列された配列面を備えた生化学解析用ユニットを収容するチャンバーと、このチャンバーを構成し前記配列面と対面する天板に設けられ、前記配列面の状態を外部から検出するための検出窓とを備えた生化学解析用カートリッジにおいて、
    前記検出窓が前記配列面に向かって変位するように、前記天板を、可撓性を有するシートで形成したことを特徴とする生化学解析用カートリッジ。
  2. 前記検出窓は、前記各スポット領域に対応する位置に配置された複数の開口から構成されることを特徴とする請求項1記載の生化学解析用カートリッジ。
  3. 前記開口には、透明な材料が埋め込まれていることを特徴とする請求項2記載の生化学解析用カートリッジ。
  4. 前記シートのうち前記検出窓が変位する際に撓む部分は、他の部分よりも可撓性の高い材料が使用されていることを特徴とする請求項1〜3いずれか記載の生化学解析用カートリッジ。
  5. 前記シートは、全面が透明であることを特徴とする請求項1記載の生化学解析用カートリッジ。
  6. 前記シートの厚みは、20μm〜200μmの範囲であることを特徴とする請求項5記載の生化学解析用カートリッジ。
  7. 前記シートの厚みは、1μm〜20μmの範囲であることを特徴とする請求項5記載の生化学解析用カートリッジ。
  8. 前記生化学解析用ユニットは、前記各スポット領域に浸透した前記反応溶液が該ユニットの一方の面から他方の面へ通過可能なフロースルータイプであることを特徴とする請求項1〜7いずれか記載の生化学解析用カートリッジ。
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