JP2005171794A - 直接噴射式燃料噴射装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】運転条件の全域で好適な燃料微粒化を達成し、噴霧長を好適に設定すること。
【解決手段】燃料噴射装置3は、燃焼室2に燃料を噴射する燃料噴射弁43と、エアを噴射するエア噴射弁44とを備える。燃料噴射弁43に対応して燃焼室2に開口される一つの燃料噴孔69aと、エア噴射弁44に対応して燃焼室2に開口される複数のエア噴孔69bとが設けられる。燃料噴孔69aの形状、大きさ及び向きが特定され、エア噴孔69bの数、形状、大きさ、向き及び燃料噴孔69aに対する配置が特定される。各噴射弁43,44から燃料噴孔69a、エア噴孔69bを通じて燃焼室2へ噴射される燃料噴霧とエア噴流とは衝突する。燃料噴孔69aからエア噴孔69bまでの距離は1〜4mmの範囲の所定値に設定される。燃料噴霧とエア噴流との衝突角度は15〜75°の範囲の所定値に設定される。燃料噴射弁43に供給される燃料圧力は1〜4MPaに設定される。
【選択図】 図2
【解決手段】燃料噴射装置3は、燃焼室2に燃料を噴射する燃料噴射弁43と、エアを噴射するエア噴射弁44とを備える。燃料噴射弁43に対応して燃焼室2に開口される一つの燃料噴孔69aと、エア噴射弁44に対応して燃焼室2に開口される複数のエア噴孔69bとが設けられる。燃料噴孔69aの形状、大きさ及び向きが特定され、エア噴孔69bの数、形状、大きさ、向き及び燃料噴孔69aに対する配置が特定される。各噴射弁43,44から燃料噴孔69a、エア噴孔69bを通じて燃焼室2へ噴射される燃料噴霧とエア噴流とは衝突する。燃料噴孔69aからエア噴孔69bまでの距離は1〜4mmの範囲の所定値に設定される。燃料噴霧とエア噴流との衝突角度は15〜75°の範囲の所定値に設定される。燃料噴射弁43に供給される燃料圧力は1〜4MPaに設定される。
【選択図】 図2
Description
この発明は、燃料噴射弁から噴射される燃料と、気体噴射弁から噴射される気体とを衝突させて内燃機関(エンジン)の燃焼室へ燃料を直接噴射する直接噴射式燃料噴射装置に関する。
従来、例えば、下記の特許文献1及び2には、燃料噴射弁から噴射される燃料と、空気噴射弁から噴射される空気とを衝突させるように構成した燃料噴射装置が開示される。
特許文献1には、筒内噴射式(直接噴射式)火花点火機関において、空気噴射弁と燃料噴射弁の取付角度が、両噴射軸線が上下方向及び水平方向で交差し、かつ、噴射方向が共にキャビティ燃焼室に指向する角度に設定されることが記載される。この構成により、空気噴射軸線と燃料噴射軸線とが交差しているため、燃料の吸気行程噴射時に燃料を微粒化できること、噴射空気がキャビティ燃焼室に指向するため、キャビティ燃焼室に燃料が付着するのを抑制できてスモーク及び未燃HCの発生を低下できることが、特許文献1に記載される。
一方、特許文献2には、直接噴射式ではないが、燃料噴射式内燃機関において、燃料噴口をほぼ含む平面上で燃料噴口を両側から挟む位置に、噴射方向を相互に交差させるようにした一対のエアアシスト噴口が配置されることが記載される。この構成により、燃料噴口からの燃料流が、その両側からの空気流により狭められて全体として扁平になることが、特許文献2に記載される。
ここで、直接噴射式のエンジンで最適な燃焼性能を得るためには、エンジン運転条件の全域を通じて燃焼性を向上させるために、燃料微粒化を促進する必要がある。また、直接噴射式のエンジンでは、冷間始動や部分負荷運転に合わせた燃焼性能を得るために、噴霧貫徹距離(燃料噴射弁の噴孔から噴霧先端までの距離(噴霧長))を設定する必要がある。
ところが、上記の特許文献1に記載の機関では、成層燃焼時(主に部分負荷運転時)に、吸入空気量に相当する大量の空気を噴射して燃料に衝突させると、混合気が分散することになり、成層燃焼に必要な混合気の成層化が不可能になる。このため、成層燃焼時には、空気衝突による燃料の微粒化を好適に行えず、結果として、直接噴射式の機関で成層燃焼時に最適な燃焼性能を得ることができなかった。
また、上記の特許文献1及び2には、噴霧貫徹距離(以下「噴霧長」と言う。)の設定については何も記載されていない。このため、エンジンの冷間始動や部分負荷運転に合わせた燃焼性能を得るために、噴霧長を好適に設定することができず、燃焼性能の向上を図ることができなかった。
この発明は上記事情に鑑みてなされたものであって、その目的は、内燃機関の運転条件の全域で好適な燃料微粒化を達成し、噴霧長を好適に設定することを可能とした直接噴射式燃料噴射装置を提供することにある。
上記目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、吸気バルブ及び排気バルブを含む内燃機関の燃焼室に燃料を噴射するための燃料噴射弁と、同じく燃焼室に気体を噴射するための気体噴射弁とを備えた直接噴射式燃料噴射装置であって、燃料噴射弁を一つ含み、その燃料噴射弁に対応して前記燃焼室に開口される一つ以上の燃料噴孔が設けられることと、気体噴射弁を少なくとも一つ含み、その気体噴射弁に対応して燃焼室に開口される一つ以上の気体噴孔が設けられることと、燃料噴孔の形状、大きさ、向き及び配置が特定されることと、気体噴孔の数、形状、大きさ、向き及び燃料噴孔に対する配置が特定されることと、燃料噴孔の中心から気体噴孔の中心までの距離が1〜4mmの範囲の所定値に設定されることとを備え、燃料噴射弁から噴射されて燃料噴孔を通じて燃焼室へ噴射される燃料と、気体噴射弁から噴射されて気体噴孔を通じて燃焼室へ噴射される気体とを衝突させるように構成したことを趣旨とする。
上記発明の構成によれば、一つの燃料噴射弁から噴射される燃料が対応する一つ以上の燃料噴孔から燃焼室へ噴射されることにより、燃焼室の中に燃料噴霧が形成される。この燃料噴霧の形態は、燃料噴孔の形状、大きさ、向き及び配置が特定されることにより決定される。一方、少なくとも一つの気体噴射弁から噴射される気体が対応する一つ以上の気体噴孔から燃焼室に噴射されることにより、燃焼室の中に気体噴流が形成される。この気体噴流の形態及び燃料噴霧に与える影響は、気体噴孔の数、形状、大きさ、向き及び燃料噴孔に対する配置が特定されることにより決定される。ここで、燃料噴射弁から噴射されて燃料噴孔を通じて燃焼室へ噴射される燃料と、気体噴射弁から噴射されて気体噴孔を通じて燃焼室へ噴射される気体とを衝突させるので、気体噴流と燃料噴霧が衝突して燃料噴霧が微粒化される。また、気体噴孔から噴射される気体によって噴霧長を設定するには、燃料噴霧と気体噴流との衝突点において、気体噴流の持つエネルギーが燃料噴霧に干渉し、燃料微粒化及び噴霧長を設定できる程度に保持されていなければならない。ここで、気体噴流の持つエネルギーは、気体噴孔から遠ざかるほど小さくなる。従って、燃料噴孔の近傍に気体噴孔が配置されることにより、気体噴孔から燃料噴霧までの空気抵抗による気体噴流のエネルギー減少が少なくなり、気体噴流と燃料噴霧との衝突点が燃料噴孔付近に設定され、燃料微粒化及び噴霧長の設定が可能となる。特に、この発明によれば、燃料噴孔の中心から気体噴孔の中心までの距離が1〜4mmの範囲の所定値に設定されるので、気体噴流と燃料噴霧との衝突点が燃料噴孔付近の最適位置に設定され、同じエネルギーの気体噴流により燃料高微粒化と噴霧長の伸長が可能となる。
上記目的を達成するために、請求項2に記載の発明は、吸気バルブ及び排気バルブを含む内燃機関の燃焼室に燃料を噴射するための燃料噴射弁と、同じく燃焼室に気体を噴射するための気体噴射弁とを備えた直接噴射式燃料噴射装置であって、燃料噴射弁を一つ含み、その燃料噴射弁に対応して燃焼室に開口される一つ以上の燃料噴孔が設けられることと、気体噴射弁を少なくとも一つ含み、その気体噴射弁に対応して燃焼室に開口される一つ以上の気体噴孔が設けられることと、燃料噴孔の形状、大きさ、向き及び配置が特定されることと、気体噴孔の数、形状、大きさ、向き及び燃料噴孔に対する配置が特定されることとを備え、燃料噴射弁から噴射されて燃料噴孔を通じて燃焼室へ噴射される燃料と、気体噴射弁から噴射されて気体噴孔を通じて燃焼室へ噴射される気体とを衝突させるように構成し、燃料噴孔から噴射される燃料と気体噴孔から噴射される気体との衝突角度が15〜75°の範囲の所定値に設定されることを趣旨とする。
上記発明の構成によれば、特に、請求項1に記載の発明と異なり、燃料噴孔から噴射される燃料と気体噴孔から噴射される気体との衝突角度が15〜75°の範囲の所定値に設定されるので、燃料噴霧の方向に対する気体噴流の作用力が大きくなり、噴霧長の伸長が可能となる。
上記目的を達成するために、請求項3に記載の発明は、吸気バルブ及び排気バルブを含む内燃機関の燃焼室に燃料を噴射するための燃料噴射弁と、同じく燃焼室に気体を噴射するための気体噴射弁とを備えた直接噴射式燃料噴射装置であって、燃料噴射弁を一つ含み、その燃料噴射弁に対応して燃焼室に開口される一つ以上の燃料噴孔が設けられることと、気体噴射弁を少なくとも一つ含み、その気体噴射弁に対応して燃焼室に開口される一つ以上の気体噴孔が設けられることと、燃料噴孔の形状、大きさ、向き及び配置が特定されることと、気体噴孔の数、形状、大きさ、向き及び燃料噴孔に対する配置が特定されることと、燃料噴射弁から噴射される燃料の圧力が1〜4MPaの範囲の所定値に設定されることとを備え、燃料噴射弁から噴射されて燃料噴孔を通じて燃焼室へ噴射される燃料と、気体噴射弁から噴射されて気体噴孔を通じて燃焼室へ噴射される気体とを衝突させるように構成したことを趣旨とする。
上記発明の構成によれば、特に、請求項1に記載の発明と異なり、燃料噴射弁から噴射される燃料の圧力が1〜4MPaの範囲の所定値に設定される。ここで、燃料噴霧の粒径は、燃料圧力に対して−1/2乗に近い関係を有する。また、燃料圧力を下げることにより、気体噴流のエネルギーが燃料噴霧に対して相対的に大きくなる。従って、燃料噴霧の粒径がさほど変わらない領域内で燃料圧力を下げることで、噴霧長が変わる割合が相対的に大きくなる。
上記目的を達成するために、請求項4に記載の発明は、請求項1又は3に記載の発明において、燃料噴孔から噴射される燃料と気体噴孔から噴射される気体との衝突角度が15〜75°の範囲の所定値に設定されることを趣旨とする。
上記発明の構成によれば、請求項1又は3に記載の発明の作用に加え、燃料噴孔から噴射される燃料と気体噴孔から噴射される気体との衝突角度が15〜75°の範囲の所定値に設定されるので、燃料噴霧の方向に対する気体噴流の作用力が大きくなり、噴霧長の伸長が可能となる。
上記目的を達成するために、請求項5に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、燃料噴射弁から噴射される燃料の圧力が1〜4MPaの範囲の所定値に設定されることを趣旨とする。
上記発明の構成によれば、請求項1に記載の発明の作用に加え、燃料噴射弁から噴射される燃料の圧力が1〜4MPaの範囲の所定値に設定されるので、燃料圧力が相対的に下がり、気体噴流のエネルギーが燃料噴霧に対して相対的に大きくなる。従って、燃料噴霧の粒径がさほど変わらない領域内で燃料圧力が下がり、噴霧長が変わる割合が相対的に大きくなる。
上記目的を達成するために、請求項6に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、燃料噴孔から噴射される燃料と気体噴孔から噴射される気体との衝突角度が15〜75°の範囲の所定値に設定されることと、燃料噴射弁から噴射される燃料の圧力が1〜4MPaの範囲の所定値に設定されることとを備えたことを趣旨とする。
上記発明の構成によれば、請求項1に記載の発明の作用に加え、燃料噴孔から噴射される燃料と気体噴孔から噴射される気体との衝突角度が15〜75°の範囲の所定値に設定されるので、燃料噴霧の方向に対する気体噴流の作用力が大きくなり、噴霧長の伸長が可能となる。また、燃料噴射弁から噴射される燃料の圧力が1〜4MPaの範囲の所定値に設定されるので、燃料圧力が相対的に下がり、気体噴流のエネルギーが燃料噴霧に対して相対的に大きくなる。従って、燃料噴霧の粒径がさほど変わらない領域内で燃料圧力が下がり、噴霧長が変わる割合が想定的に大きくなる。
請求項1に記載の発明によれば、内燃機関の運転条件の全域で好適な燃料微粒化を達成することができ、噴霧長を相対的に長くして好適に設定することができる。
請求項2に記載の発明によれば、内燃機関の運転条件の全域で好適な燃料微粒化を達成することができ、噴霧長を相対的に長くして好適に設定することができる。
請求項3に記載の発明によれば、内燃機関の運転条件の全域で好適な燃料微粒化を達成することができ、噴霧長の変化割合を相対的に大きくして好適に設定することができる。
請求項4に記載の発明によれば、請求項1又は3に記載の発明の効果に加え、噴霧長をより長くすることができる。
請求項5に記載の発明によれば、請求項1に記載の発明の効果に加え、噴霧長の変化割合を相対的に大きくすることができる。
請求項6に記載の発明によれば、請求項1に記載の発明の効果に加え、噴霧長をより長くすることができ、噴霧長の変化割合を相対的に大きくすることができる。
[第1の実施形態]
以下、本発明の直接噴射式燃料噴射装置を具体化した第1の実施形態を図面を参照して詳細に説明する。
以下、本発明の直接噴射式燃料噴射装置を具体化した第1の実施形態を図面を参照して詳細に説明する。
図1に、本発明の直接噴射式燃料噴射装置を含む直接噴射式エンジンシステムの概略構成図を示す。自動車に搭載された直接噴射式エンジンシステムは、周知の構造を有するレシプロタイプの多気筒エンジン1を含む。エンジン1の各気筒に形成される燃焼室2のそれぞれには、直接噴射式燃料噴射装置(以下単に「燃料噴射装置」と言う。)3が設けられる。燃料噴射装置3は、燃料と空気を燃焼室2に対して直接噴射するように構成される。エンジン1は、吸気通路4を通じて吸入される空気と、燃料噴射装置3から噴射される燃料及び空気との可燃混合気を各気筒の燃焼室2で爆発・燃焼させ、その燃焼後の排気を排気通路5を通じて外部へ排出することにより、ピストン6を動作させてクランクシャフト7を回転させ、動力を得るようになっている。
吸気通路4に設けられたスロットルバルブ8は、同通路4を通じて各気筒の燃焼室2に吸入される空気量(吸気量)Gaを調節するために開閉される。このバルブ8は、運転席に設けられたアクセルペダル(図示略)の操作に連動して作動する。スロットルバルブ8に対応して設けられたスロットルセンサ21は、同バルブ8の開度(スロットル開度)TAを検出し、その検出値に応じた電気信号を出力する。スロットルバルブ8がアクセルペダルの操作に連動することから、スロットルセンサ21により検出されるスロットル開度TAには、アクセルペダルの操作が反映される。吸気通路4のサージタンク9に設けられた吸気圧センサ22は、スロットルバルブ8より下流の吸気通路4における吸入空気の圧力(吸気圧)PMを検出し、その検出値に応じた電気信号を出力する。
各燃料噴射装置3は、対応する燃焼室2の中に燃料と空気を直接噴射する。各燃料噴射装置3には、所定の燃料供給装置及び空気供給装置(共に図示略)により所定圧力の燃料と空気が供給される。各燃料噴射装置3に供給される燃料及び空気は、同装置3が作動することにより対応する燃焼室2へ噴射さる。吸気通路4には、エアクリーナ10を通じて外部から空気が取り込まれる。吸気通路4に取り込まれた空気は、各気筒の燃焼室2に取り込まれる。その空気の中に各燃料噴射装置3から燃料及び空気が噴射されて可燃混合気が形成される。
各気筒の燃焼室2にそれぞれ設けられた点火プラグ11は、イグニションコイル12から出力される点火信号を受けて点火動作する。各点火プラグ11及びイグニションコイル12は、燃焼室2において形成される可燃混合気に点火するための点火装置を構成する。
排気通路5に設けられた触媒コンバータ13は、燃焼室2から排出される排気を浄化するための三元触媒を内蔵する。排気通路5において、触媒コンバータ13の上流側に設けられた酸素センサ23は、燃焼室2から排気通路5へ排出される排気中の酸素濃度Oxを検出し、その検出値に応じた電気信号を出力する。
エンジン1に設けられた水温センサ24は、エンジン1の内部を流れる冷却水の温度(冷却水温)THWを検出し、その検出値に応じた電気信号を出力する。エンジン1に設けられた回転速度センサ25は、クランクシャフト7の回転速度をエンジン回転速度NEとして検出し、その検出値に応じた電気信号を出力する。このセンサ25は、クランクシャフト7の回転角(クランク角度)の変化を所定角度毎に検出し、その検出をパルス信号として出力する。運転席に設けられたイグニションスイッチ26は、エンジン1を始動するためにオンされたときは、始動信号を出力する。イグニションスイッチ26は、エンジン1を停止するためにオフされたときは、停止信号を出力する。
この実施の形態で、前述したスロットルセンサ21、吸気圧センサ22、酸素センサ23、水温センサ24及び回転速度センサ25等は、エンジン1の運転状態を検出するための本発明の運転状態検出手段に相当する。この実施の形態で、吸気量Gaは、吸気圧センサ22及び回転速度センサ25により検出される吸気圧PM及びエンジン回転速度NEの値から換算される。
この実施の形態で、電子制御装置(ECU)30は、スロットルセンサ21、吸気圧センサ22、酸素センサ23、水温センサ24、回転速度センサ25及びイグニションスイッチ26から出力される各種信号を入力する。ECU30は、これら入力信号に基づいて燃料噴射制御及び点火時期制御等を実行し、各燃料噴射装置3及びイグニションコイル12をそれぞれ制御する。
ここで、燃料噴射制御とは、エンジン1の運転状態に応じて各燃料噴射装置3を制御することにより、燃料噴射量、燃料噴射時期及び燃料噴霧を制御することである。点火時期制御とは、エンジン1の運転状態に応じてイグニションコイル12を制御することにより、各点火プラグ11による点火時期を制御することである。
周知のように、ECU30は中央処理装置(CPU)31、読み出し専用メモリ(ROM)32、ランダムアクセスメモリ(RAM)33及びバックアップRAM(B.U.RAM)34等を含んで構成される。ROM32には、前述した各種制御に係る所定の制御プログラム等が予め記憶される。ECU30(CPU31)は、これらの制御プログラムに従って前述した各種制御等を実行する。
図2に、燃料噴射装置3のエンジン1に対する取付状態を断面図に示す。この燃料噴射装置3は、エンジン1の燃焼室2に燃料を噴射するための燃料噴射弁43と、同じく燃焼室2に気体としてのエア(空気)を噴射するための気体噴射弁としてのエア噴射弁44とを備える。エンジン1はシリンダブロック45及びシリンダヘッド46を含む。シリンダブロック45に設けられたシリンダボア47には、ピストン6が往復動可能に設けられる。燃焼室2は、シリンダボア47と、ピストン6と、シリンダヘッド46とで囲まれた空間として構成される。図1に示すように、シリンダヘッド46には、各燃焼室2に通じる吸気ポート4a及び排気ポート5aが設けられる。各吸気ポート4aには、周知の吸気バルブ14が設けられる。排気ポート5aには、周知の排気バルブ15が設けられる。燃料噴射弁43及びエア噴射弁44は、燃焼室2に対応して取付部材49によりシリンダヘッド46に一体的に取り付けられる。燃料噴射弁43及びエア噴射弁44は、両方の中心軸線L1,L2が互いに斜めに交差するように取付部材49に組み付けられる。
周知の電磁弁により構成される燃料噴射弁43は、ハウジング51と、ハウジング51に組み付けられたコア52と、コア52の内部に設けられた調整パイプ53と、ハウジング51とコア52との間に設けられたソレノイド54と、ハウジング51の先端側に設けられたロワボディ55と、ロワボディ55の内部に設けられたノズルボディ56と、ノズルボディ56とコア52との間に設けられた弁体部材57とを備える。弁体部材57は、先端に弁部58aを有する弁軸58と、弁軸58の基端に組み付けられたアーマチュア59とを備える。アーマチュア59と調整パイプ53との間には、圧縮スプリング60が設けられる。コア52の基端部は、燃料配管(図示略)に接続される配管コネクタ61となっている。配管コネクタ61の外周には、Oリング62が設けられる。配管コネクタ61の内部には、異物を除去するストレーナ63が設けられる。ハウジング51には、電気配線に接続される配線コネクタ64が設けられる。ここで、燃料噴射弁43とエア噴射弁44の基本構成はほぼ同じであることから、エア噴射弁44の構成については、燃料噴射弁43の構成部材と同一符号を付して説明を省略する。
図3に、燃料噴射弁43及びエア噴射弁44に係る電気配線、燃料配管及びエア配管に関する構成概念図を示す。図3に示すように、燃料噴射弁43の配管コネクタ61には、燃料配管71が接続される。エア噴射弁44の配管コネクタ61には、エア配管72が接続される。燃料配管71には、プレッシャレギュレータ73及び燃料ポンプ74が設けられる。エア配管72には、プレッシャレギュレータ75及びエアポンプ76が設けられる。各ポンプ74,76は、それぞれ対応するモータ77,78により駆動される。燃料ポンプ74が駆動されることにより、燃料タンク(図示略)の燃料が同ポンプ74から吐出され、プレッシャレギュレータ73を介して一定の高圧燃料として燃料噴射弁43へ供給される。エアポンプ76が駆動されることにより、同ポンプ76からエアが吐出され、プレッシャレギュレータ75を介して加圧エアとしてエア噴射弁44へ供給される。
図3に示すように、燃料噴射弁43の配線コネクタ64及びエア噴射弁44の配線コネクタ64は、それぞれECU30に電気的に接続される。燃料噴射弁43及びエア噴射弁44は、それぞれECU30から送られる噴射信号に基づいて動作する。ECU30からの噴射信号に基づき燃料噴射弁43が動作することにより、同噴射弁43から高圧燃料が噴射される。また、ECU30からの噴射信号に基づきエア噴射弁34が動作することにより、同噴射弁44から加圧エアが噴射される。この実施の形態で、ECU30は、燃料噴射弁43とエア噴射弁44をそれぞれ独立に制御するための本発明の制御手段に相当する。
図4に、取付部材49の先端部の拡大断面図を示す。図2〜4に示すように、ブロック状をなす取付部材49は、燃焼室2に向けられる筒部49aと、燃料噴射弁43のロワボディ55が組み付けられる第1組付穴49bと、エア噴射弁44のノズルボディ56が組み付けられる第2組付穴49cとを含む。筒部49aと第1組付穴49bは同一軸線上に配置され、隔壁49dにより仕切られる。隔壁49dの中心には、孔49eが形成される。筒部49aの中心には、孔66aを有するチューブ66が設けられる。第1組付穴49bに組み付けられたノズルボディ56には、弁部58aに対応する弁座56aが形成される。この弁座56aの弁孔56bが、上記二つの孔49e,66aに整合して一本の燃料通路67が構成される。取付部材49には、第2組付穴49cの中心から筒部49aの内側へ向かって伸びる孔49fが形成される。この孔49fは、筒部49aの中心に対して斜めに交差するよう配置される。第2組付穴49cに組み付けられたノズルボディ56には、弁部58aに対応する弁座56aが形成される。この弁座56aの弁孔56bが、上記斜めの孔49fに整合して一本のエア通路68が構成される。筒部49aの開口端には、オリフィスプレート69が固定される。このオリフィスプレート69の中心には、一つの燃料噴孔69aが燃料噴射弁43に対応して設けられる。この燃料噴孔69aは、燃焼室2に開口されると共に、燃料通路67に整合する。また、このオリフィスプレート69には、気体噴孔としての複数のエア噴孔69bがエア噴射弁44に対応して設けられる。これらエア噴孔69bは、燃料噴孔69aの近傍に配置され、燃焼室2に開口され、筒部49aの内側に連通する。従って、燃料噴射弁43から噴射される高圧燃料は、燃料通路67を通ってオリフィスプレート69の燃料噴孔69aから燃焼室2へ噴射される。また、エア噴射弁44から噴射される加圧エアは、燃料通路68を通って筒部69aの中に一旦噴射され、更にオリフィスプレート69の各エア噴孔69bから燃焼室2へ噴射される。
ここで、上記の「近傍」は、下記の噴射条件が変化した場合でも、燃料噴霧の微粒化効果や燃料の噴霧長の可変効果を得ることができる、燃料噴孔の中心から気体噴孔の中心までの距離を意味する。具体的には、一例として、図8に示すように、燃料噴孔の中心からエア噴孔の中心までの距離を「X」とすると、以下の(式1)〜(式3)の条件を満たす「X」を上記「近傍」と定義することができる。
気体噴射に関する一般的な運動理論から気体噴流の到達距離「L(m)」と噴流角度「α(°)」は以下のように表される。
L=(ρa/ρo)0.25*(d*u*t/tanα)0.5 …(式1)
tanα=0.427*(ρo/ρa)0.35 …(式2)
ここで、「ρa」は噴射気体の絶対圧力での気体密度(kg/m3)、「ρo」は筒内(噴射場)の気体密度(kg/m3)、「d」は気体噴孔の直径(又は最短幅(m))、「u」は初期気体噴射速度(m/s)、「t」は噴射後の時間(s)及び「α」は仮の噴流半角値(°)である。
L=(ρa/ρo)0.25*(d*u*t/tanα)0.5 …(式1)
tanα=0.427*(ρo/ρa)0.35 …(式2)
ここで、「ρa」は噴射気体の絶対圧力での気体密度(kg/m3)、「ρo」は筒内(噴射場)の気体密度(kg/m3)、「d」は気体噴孔の直径(又は最短幅(m))、「u」は初期気体噴射速度(m/s)、「t」は噴射後の時間(s)及び「α」は仮の噴流半角値(°)である。
上記式より衝突点における噴流速度を算出し、所定の実験値や計算値より求められた燃料噴霧微粒化や噴霧長を可変とする限定条件を付加すると、距離「X」は、
X≦a*d*Pa0.5*ρa0.35*ρo-0.85 …(式3)
と表される。ここで、「X」は近傍となる最大距離(m)、「Pa」は噴射気体の絶対圧力(Pa)である。「a」には「0.03」を当てはめることができる。
X≦a*d*Pa0.5*ρa0.35*ρo-0.85 …(式3)
と表される。ここで、「X」は近傍となる最大距離(m)、「Pa」は噴射気体の絶対圧力(Pa)である。「a」には「0.03」を当てはめることができる。
一例として、噴射気体をエアとしてエア噴射径、噴射圧力、噴射気体の絶対圧力での気体密度、筒内(噴射場)の気体密度をd≦0.0005(m)、Pa≦600000(Pa)、ρa≦7.23(kg/m3)、ρo≧1.205(kg/m3)とすると、X≦0.0199(m)=19.9(mm)となる。従って、燃料噴孔から「19.9mm」以内に気体噴孔を配置しないと、この噴射条件下では、燃料噴霧の微粒化効果や噴霧長可変効果が得られないことになる。
図5に、オリフィスプレート69の平面図を示す。図6に、図5のA−A線断面図を示す。図5,6に示すように、燃料噴孔69aは断面円形をなし、オリフィスプレート69の端面に対して垂直に貫通する。複数のエア噴孔69bは、同じく断面円形(開口端は楕円)をなし、オリフィスプレート69の端面に対して斜めに貫通する。図5に示すように、複数(この場合8個)のエア噴孔69bは、燃料噴孔69aを中心とする円周上に等角度間隔に配置される。この実施の形態で、燃料噴孔69aの内径は「0.6mm」に設定され、各エア噴孔69bの内径は「1.0mm」に設定される。
図6に示すように、燃料噴孔69aの中心線と、各エア噴孔69bの中心線は、互いに一点(以下「衝突点」と言う。)HPで交差するように設定される。すなわち、燃料噴孔69aから、この衝突点HPへ向かって燃料が噴射されることにより、燃料噴霧が形成される。また、各エア噴孔69bから、この衝突点HPへ向かってエアが噴射されることにより、エア噴流が形成される。従って、燃料噴霧と各エア噴流は、この衝突点HPを中心にして互いに衝突する。上記のように、この実施の形態では、各エア噴孔69bから噴射されるエア噴流が燃料噴孔69aから噴射される燃料噴霧に衝突するように各エア噴孔69b及び燃料噴孔69aの向きがそれぞれ設定される。
図7(a)〜(c)に燃料噴霧及びエア噴流の概念図を示す。図7(a)に示すように、燃料噴霧は正面及び側面ともほぼ同形な略円錐形をなす。この噴霧の広がり角度(噴霧角度)θ1は、オリフィスプレート69における燃料噴孔69aの内径の大きさにより決定される。図7(b)に示すように、1つのエア噴流(自由噴流)は正面及び側面ともほぼ同形な円錐形をなす。この噴流の広がり角度(噴流角度)θ2は、オリフィスプレート69におけるエア噴孔69bの内径の大きさ等により決定される。図7(c)に示すように、複数のエア噴孔69bから噴射される周囲からのエア噴流(多孔噴流)は正面及び側面ともほぼ同形な王冠形をなす。ここで、一般に、気体噴流の持つエネルギーは気体噴孔から遠ざかるほど小さくなる。そこで、この燃料噴霧における衝突点HPは、エア噴流の持つエネルギーが燃料噴霧に干渉して燃料噴霧の微粒化及び噴霧長や噴霧形状を調節できる程度にエア噴孔69bからの距離が保たれる位置に設定される。また、各エア噴孔69bから噴射されるエア噴流の衝突点HPにおける大きさ(外径(幅))は、燃料噴孔69aから噴射される燃料噴霧の衝突点HPにおける外径D1と同程度になるように設定される。ここで、燃料噴霧の外径D1と同程度になる「エア噴流の大きさ」は、図9に示すエア噴流の「噴流角β」及び「エア噴流外径b」と、図8に示すエア噴孔から衝突点HPまでの「距離c」と、所定の式「b=2*c*tan(β/2)」とから定義される。上記のようにこの燃料噴射装置3では、燃料噴射弁43から噴射される燃料と、エア噴射弁44から噴射されるエアとを燃焼室2の中で衝突させるように構成される。
図10(a)〜(c)に上記衝突点HPにおける燃料噴霧の強度(噴霧強度)及びエア噴流の強度(噴流強度)の違いを概念図に示す。図10(a)に示すように、燃料噴霧は正面及び側面とも同じ分布幅を有する噴霧強度を示す。図10(b)に示すように、1つのエア噴流(自由噴流)は正面及び側面とも同じ分布幅を有する噴流強度を示す。この噴流強度は、上記噴霧強度よりも若干低い。図10(c)に示すように、複数のエア噴流(多孔噴流)による噴流強度は、正面及び側面とも同じ分布幅を有する。この多孔噴流の噴流強度は、上記1つのエア噴流の噴流強度よりも高い。このように、燃料噴霧の強度分布に対してエア噴流の強度分布が均等に重なるように設定される。ここで、噴霧強度及び噴流強度は、流速と密度との積により計算することができる。
上記のように構成したこの実施の形態の燃料噴射装置3によれば、一つの燃料噴射弁43から噴射される燃料が対応する一つの燃料噴孔69aから燃焼室2に噴射されることにより、燃焼室2の中に燃料噴霧が形成される。この燃料噴霧の形態は、燃料噴孔69aの形状、大きさ及び向きが特定されることにより決定される。一方、一つのエア噴射弁44から噴射されるエアが対応する複数のエア噴孔69bから燃焼室2に噴射されることにより、燃焼室2の中にエア噴流が形成される。このエア噴流の形態及び燃料噴霧に与える影響は、各エア噴孔69bの数、形状、大きさ、向き及び燃料噴孔に対する配置が特定されることにより決定される。
ここで、各エア噴孔69bから伸びるエア噴流軸線AL(図4参照)は、燃料噴孔69aからの燃料噴霧における最大径D1(図7(a)参照)の中央にて交差するように設定される。従って、燃料噴霧の形態に応じ、その全体に対して各エア噴流が衝突点HPを中心に衝突することになり、燃料噴霧に対するエア噴流の強度分布が同等となる。この結果、燃料噴霧につき、噴霧全体において同等でより微細な燃料微粒化を図ることができ、燃料の微粒化を促進することができる。これにより、直接噴射式のエンジン1について燃焼性能を向上させることができる。
特に、この実施の形態では、オリフィスプレート69の燃料噴孔69aが円形をなすことから、燃料噴霧が円錐形となり、その燃料噴霧の噴霧角度θ1(図7(a)参照)は、燃料噴孔69aの内径の大きさにより決定される。また、オリフィスプレート69の各エア噴孔69bが円形をなすことから、各エア噴流が円錐形となり、それらエア噴流の噴流角度θ2(図7(b)参照)は、各エア噴孔69bの内径の大きさ等により決定される。ここで、燃料噴孔69aを中心とする円周上に複数のエア噴孔69bが等角度間隔に配置され、図7(c)に示すように、各エア噴孔69bからの複数のエア噴流が一つの衝突点HPへ向けて傾けられる。従って、円錐形の燃料噴霧に対し、その周囲に複数のエア噴流が衝突し、燃料噴霧に対するエア噴流の強度分布が同等となる。これにより、燃料噴霧の形状に応じて噴霧の幅方向全体に同等にエア噴霧を衝突させることができ、特に円錐形の燃料噴霧につき、その噴霧形状を大きく変えることなく、噴霧全体に同等でより微細な燃料微粒化を図ることができ、燃料の微粒化を促進することができる。
この実施の形態では、各エア噴孔69bが燃料噴孔69aの近傍に配置される。ここで、エア噴流により燃料噴霧の噴霧長や噴霧形状を設定するには、燃料噴霧とエア噴流との衝突点HPにおいて、エア噴流の持つエネルギーが燃料噴霧に干渉し、燃料微粒化及び噴霧長や噴霧形状を設定できる程度に保たれる必要がある。このエア噴流の持つエネルギーは、各エア噴孔69bから遠ざかるほど小さくなる。従って、各エア噴孔69bが燃料噴孔69aの近傍に配置されることにより、エア噴流と燃料噴霧との衝突点HPが燃料噴孔69aの近くに設定される。これにより、燃料微粒化及び噴霧長や噴霧形状を好適に設定することができる。
この実施の形態では、各エア噴孔69bから噴射されるエア噴流の大きさが燃料噴孔69aから噴射される燃料噴霧の大きさと同程度になるように設定される。従って、燃料噴霧の形態に対応し、その全体にエア噴流が衝突することになり、燃料噴霧全体で燃料微粒化及び噴霧長や噴霧形状の好適な設定が可能となる。このため、燃料噴霧にそれと同程度の大きさのエア噴流を衝突させることにより、燃料噴霧全体でより微細な燃料微粒化を図ることができる。
この実施の形態では、燃料噴孔69a及び各エア噴孔69bが共に断面円形をなすことから、それら噴孔69a,69bの加工をポンチ等を使用した孔あけにより比較的容易に行うことができる。このため、オリフィスプレート69を比較的容易に製造することができる。また、圧力や各エア噴孔69bの形状(例えば「テーパ」)を変えるだけで、エア噴流の広がり角度(噴流角度)θ2(図7(b)参照)が変えられ、エア噴流の強度分布が調整される。更に、円形の燃料噴孔69aの内径を変えるだけで、燃料噴霧の広がり角度(噴霧角度)θ1(図7(a)参照)が変えられ、燃料噴霧の強度分布が調整される。これにより、微粒化される粒径レベルを比較的容易に任意に設定することができる。併せて、噴霧角度θ1及び噴流角度θ2の調整、燃料噴霧及びエア噴霧の向きをそれぞれ調整することにより、噴霧長や噴霧形状を比較的容易に任意に設定することができる。
図11に燃料噴霧に複数のエア噴流が衝突したときの概念図を示す。この実施の形態では、図7(a)〜(c)に示すように、一つの衝突点HPで同じ大きさと強度分布を有する複数のエア噴流を一つの燃料噴霧に衝突させるので、燃料噴霧自体の強度分布が不均一であっても、その噴霧全体に対して均一にエア噴流の影響を及ぼすことができる。これにより、燃料を好適に微粒化することができ、噴霧長等を好適に設定できることが分かる。
この実施の形態では、燃料噴射弁43及びエア噴射弁44が燃焼室2に対応して取付部材49により一体的にシリンダヘッド46に取り付けられる。従って、各噴射弁43,44を個別に取り付ける場合に比べ、燃料噴孔69aに対するエア噴孔69bの位置精度が高くなり、取付けのためのシリンダヘッド46の加工や作業が少なくなる。また、予め取付部材49に燃料噴射弁43とエア噴射弁44を組み付けてアッセンブリ化しておけば、シリンダヘッド46に取付部材49を取り付けるだけで、各噴射弁43,44が同時にシリンダヘッド46に取り付けられる。このため、燃料噴射装置の製造を簡略化することができる。
次に、上記した燃料の噴霧長、噴霧粒径及び噴霧形状を可変とするためにECU30が実行する燃料噴射制御の処理内容について説明する。図12に、その「燃料噴射制御ルーチン」をフローチャートに示す。ECU30は、このルーチンをエンジン1の運転中に所定時間毎に周期的に実行する。
先ず、ステップ201で、ECU30は、スロットルセンサ21、吸気圧センサ22、酸素センサ23、水温センサ24及び回転速度センサ25による検出信号をそれぞれ読み込む。
ステップ202で、ECU30は、上記読み込まれた検出信号に基づいてエンジン1の運転状態を判定する。この実施の形態で、ECU30は、「低温始動運転」、「部分負荷運転」及び「全負荷運転」を含む運転状態を判定する。例えば、冷却水温THWが相対的に低く、エンジン回転速度NEが相対的に低く、スロットル開度TAが相対的に小さい場合、ECU30は「低温始動運転」と判定する。また、冷却水温THWがある程度高く、エンジン回転速度NEがある程度高く、スロットル開度TAに多少の変化がある場合、ECU30は「部分負荷運転」と判定する。更に、冷却水温THWがある程度高く、エンジン回転速度NEがある程度高く、スロットル開度TAが全開へと変化する場合、ECU30は「全負荷運転」と判定する。
ステップ203で、ECU30は、上記判定された運転状態に応じた最適な燃焼パターンを決定する。この実施の形態では、各種運転状態に適した燃焼パターンが予め実験的に確認されて設定されている。図13に、運転状態と燃焼パターン等との関係を表に示す。この表から分かるように、「低温始動運転」の場合には、「暖機燃焼」が燃焼パターンとして決定される。「部分負荷運転」の場合には、「成層燃焼」が燃焼パターンとして決定される。「全負荷運転」の場合には、「均一燃焼」が燃焼パターンとして決定される。
ステップ204で、ECU30は、上記決定された燃焼パターンに応じて、燃料噴射弁43及びエア噴射弁44による「燃料噴射期間」、「エア噴射期間」及び「燃料・エアの噴射タイミング差」をそれぞれ決定する。例えば、「暖機燃焼」の場合には、図13に示すように「燃料・エアの噴射期間」が「同期間」に、燃料・エアの噴射タイミング差が「同タイミング」に決定される。また、「成層燃焼」の場合には、図13に示すように「燃料・エアの噴射期間」が「エア噴射期間を長く」に決定され、燃料・エアの噴射タイミング差が「エア噴射タイミングを先行」に決定される。更に、「均一燃焼」の場合には、図13に示すように「燃料・エアの噴射期間」が「エア噴射期間を若干長く」に決定され、燃料・エアの噴射タイミング差が「エア噴射タイミングを若干先行」に決定される。
ステップ205で、ECU30は、上記決定された「燃料・エアの噴射期間」と「燃料・エアの噴射タイミング差」から、クランク角度の変化に対応した燃料噴射弁43及びエア噴射弁44の開閉タイミングをそれぞれ設定する。例えば、「暖機燃焼」の場合には、図14(a),(b)に示すように、燃料噴射弁43及びエア噴射弁44の開きタイミングを、同様に角度a0から角度a3までの範囲に設定する。また、「成層燃焼」の場合には、図15(a),(b)に示すように、燃料噴射弁43の開きタイミングを、角度a2から角度a3までの範囲に設定すると共に、エア噴射弁44の開きタイミングを、燃料噴射弁43の角度a2より角度差ΔAだけ先行させた角度a0から燃料噴射弁43と同じく角度a3までの範囲に設定する。更に、「均一燃焼」の場合には、図16(a),(b)に示すように、燃料噴射弁43の開きタイミングを、角度a2から角度a3までの範囲に設定すると共に、エア噴射弁44の開きタイミングを、燃料噴射弁43の角度a2より角度差ΔB(ΔB<ΔA)だけ若干先行させた角度a1から燃料噴射弁43と同じく角度a3までの範囲に設定する。
そして、ステップ206で、ECU30は、上記設定された開閉タイミングに応じた燃料噴射信号及びエア噴射信号を燃料噴射弁43及びエア噴射弁44にそれぞれ出力する。
上記のように燃料噴射弁43及びエア噴射弁44の開閉タイミングを制御するのは、燃料噴射装置3による燃料の噴霧長、噴霧粒径及び噴霧形状を制御するためである。すなわち、ECU30は、燃料の噴霧長、噴霧粒径及び噴霧形状を制御するために、燃料噴射弁43による燃料噴射タイミング及び燃料噴射期間をクランク角度の変化に対応して一定に設定した上で、エア噴射弁44によるエア噴射タイミング及びエア噴射期間の両方を、エンジン1について判定された運転状態に基づいて制御している。より具体的には、ECU30は、「暖機燃焼」を達成するために、エア噴射弁44によるエア噴射タイミングを燃料噴射弁43による燃料噴射タイミングと同じにすると共に、エア噴射弁44によるエア噴射期間を燃料噴射弁43による燃料噴射期間と等しくしている。また、ECU30は、「成層燃焼」及び「均一燃焼」を達成するために、エア噴射弁44によるエア噴射タイミングを燃料噴射弁43による燃料噴射タイミングより先行又は若干先行させると共に、エア噴射弁44によるエア噴射期間を燃料噴射弁43による燃料噴射期間よりクランク角度による角度差ΔA又は角度差ΔBだけ長くしている。
上記の燃料噴射制御によれば、図13に示すように「暖機燃焼」において、燃料・エアの噴射期間を「同期間」に、噴射タイミング差を「同タイミング」にしている。これにより、噴霧長が相対的に短く、噴霧粒径が相対的に小さく、噴霧形状が噴霧角大となる噴霧特性が得られる。図17に、この噴霧特性のイメージ図を示す。エンジン1の低温始動運転時には、ピストン6の頂面における燃料付着を防止するために噴霧長を相対的に短く、燃料蒸発を促進するために噴霧粒径を相対的に小さく、燃料を燃焼室2の全体に分散させるために噴霧形状を噴霧角大にすることが望ましい。従って、上記の「暖機燃焼」のための噴霧特性は、エンジン1の低温始動運転時に適したものとなる。
一方、図13に示すように「成層燃焼」において、燃料・エアの噴射期間を「エア噴射期間を長く」に、噴射タイミング差を「エア噴射タイミングを先行」にしている・これにより、噴霧長が相対的に長く、噴霧粒径が相対的に小さく、噴霧形状が噴霧角小となる噴霧特性が得られる。図18に、この噴霧特性のイメージ図を示す。エンジン1の部分負荷動運転時には、燃焼室2の中の気流変動等の外乱による影響を受けずに毎サイクル安定した混合気を点火プラグの周辺に集められるようにするために、強い(貫徹距離が長い)噴霧が要求される。また、ピストン6から熱を受けるため、低温始動運転時ほどの高微粒化は要求されないものの、安定した混合気を形成できるようにするために、現状より小さい噴霧粒径が望まれる。更に、噴霧の成層化に適した小さい噴霧角度をなす噴霧形状が要求される。従って、上記の「成層燃焼」のための噴霧特性は、エンジン1の部分負荷運転時に適したものとなる。
一方、図13に示すように「均一燃焼」において、燃料・エアの噴射期間を「エア噴射期間を若干長く」に、噴射タイミング差を「エア噴射タイミングを若干先行」にしている。これにより、噴霧長が相対的に中程度に、噴霧粒径が相対的に小さく、噴霧形状が噴霧角中となる噴霧特性が得られる。図19に、この噴霧特性のイメージ図を示す。エンジン1の全負荷動運転時には、低温始動運転時と同等の条件ではあるが、燃焼室2の壁面から受ける熱も期待できる。そのため、噴霧長を低温始動運転時のそれよりも長く、部分負荷運転時のそれよりも短くすることが要求される。また、安定した混合気を形成するために噴霧粒径を現状よりも小さくすることが要求される。更に、噴霧角を低温始動運転時のそれよりも小さく、部分負荷運転時のそれよりも大きくすることが要求される。従って、「均一燃焼」のための噴霧特性は、エンジン1の全負荷運転時に適したものとなる。
上記したこの実施の形態の燃料噴射制御装置によれば、燃料噴射装置3において燃料噴孔69aから燃焼室2に燃料が噴射されることにより、燃焼室2の中に燃料噴霧が形成される。一方、燃料噴射装置3において各エア噴孔69bから燃焼室2にエアが噴射されることにより、燃焼室2の中にエア噴流が形成される。この構成では、各エア噴孔69bから噴射されるエア噴流が燃料噴孔69aから噴射される燃料噴霧に衝突するように各エア噴孔69b及び燃料噴孔69aの向きがそれぞれ設定されるので、エア噴流が燃料噴霧に衝突することにより燃料噴霧の形態が変えられる。
ここで、燃料噴孔69aから噴射される燃料噴霧の噴霧長、噴霧粒径及び噴霧形状(噴霧角)を制御するために、ECU30は、エンジン1の運転状態に基づいて燃料噴射弁43とエア噴射弁44をそれぞれ独立に制御する。この制御では、ECU30は、特に、エア噴射弁44によるエア噴射タイミング及びエア噴射期間の両方を制御する。これにより、直接噴射式のエンジン1においてその運転状態の違いに応じて燃料の噴霧長、噴霧粒径及び噴霧形状(噴霧角)を変更することができ、その運転状態に最適な特性を有する燃料噴霧を得ることができる。この結果、エンジン1の燃焼室2における燃料の燃焼性能を向上させることができる。これにより、エンジン1の排気エミッションを改善することができ、エンジン1の燃費及び出力を向上させることができる。
ここで、噴霧長の制御に関するメカニズムについて説明する。噴霧長が相対的に短くなるのは、図14に示すように、燃料噴射弁43及びエア噴射弁44の開閉タイミングを制御することにより、エア噴射タイミングを燃料噴射タイミングと同じに、エア噴射期間を燃料噴射期間と同じにしたときである。これは、燃料噴霧と同時に形成されるエア噴流が、燃料噴霧の抵抗となることによるものである。一方、噴霧長が相対的に長くなるのは、図15及び図16に示すように、燃料噴射弁43及びエア噴射弁44の開閉タイミングを制御することにより、エア噴射タイミングを燃料噴射タイミングより先行又は若干先行させたときである。これは、燃料噴霧に先行又は若干先行して形成されるエア噴流が、燃料噴霧に勢いを与えることによるものである。従って、燃料噴射タイミングに対するエア噴射タイミングの先行度合いを変えることにより、噴霧長を可変にすることができる。
図20(a)〜(c)に、噴霧長に関する制御例を示す。図20(a)〜(c)は、燃料噴射装置3を使用して形成された燃料噴霧の状態を示す。図20(a)は、燃料噴射の際にエア噴射を行わない場合の燃料噴霧を示す。図20(b)は、燃料噴射に対して「1.0ms」だけエア噴射を先行させた場合の燃料噴霧を示す。図20(c)は、燃料噴射に対して「2.0ms」だけエア噴射を先行させた場合の燃料噴霧を示す。図20(a)〜(c)から明らかなように、燃料噴射に対するエア噴射の先行を早めるほど噴霧長が相対的に長くなることが分かる。
次に、噴霧粒径の制御に関するメカニズムについて説明する。噴霧粒径が相対的に小さくなるのは、図14〜図16に示すように、燃料噴射弁43及びエア噴射弁44の開閉タイミングを制御することにより、エア噴射タイミングと燃料噴射タイミングの関係、エア噴射期間と燃料噴射期間の関係をそれぞれ変えるときのすべての場合である。これは、いずれの場合も、燃料噴霧にエア噴流が衝突することにより、燃料噴霧の粒が分割されることによるものである。
次に、噴霧形状の制御に関するメカニズムについて説明する。噴霧形状(噴霧角)が変わるのは、図14〜図16に示すように、燃料噴射弁43及びエア噴射弁44の開閉タイミングを制御することにより、エア噴射タイミングと燃料噴射タイミングの関係、エア噴射期間と燃料噴射期間の関係をそれぞれ変えるときのすべての場合である。図13に示すように、「暖機燃焼」のための制御により「噴霧角大」となるのは、燃料・エアの噴射期間と燃料・エアの噴射タイミングが同じであることから、燃料とエアが衝突するときの周囲への分散が良くなるからである。図13に示すように、「成層燃焼」のための制御により「噴霧角小」となるのは、エア噴射を先行させることにより燃料噴霧が気流に乗って噴射方向へ伸びて噴霧長が長くなり、それと同時に幅方向はエアの衝突があっても長さが伸びる分だけ広がりが小さくさるからである。図13に示すように、「均一燃焼」のための制御により「噴霧角中」となるのは、エア噴射の先行度合いが「成層燃焼」のそれよりも小さいからである。
上記の「暖機燃焼」、「成層燃焼」及び「均一燃焼」のための燃料噴射制御では、燃料・エアの噴射タイミングの変更と、燃料・エアの噴射期間の変更とを互いに組み合わせた場合について説明したが、燃料・エアの噴射タイミングと、燃料・エアの噴射期間のそれぞれを個別に変更した場合には、以下のような作用効果があると考えられる。
ECU30が、エア噴射弁44によるエア噴射タイミングを燃料噴射弁43による燃料噴射タイミングより先行させた場合は、燃料の噴霧長が相対的に長くなり、かつ、燃料の噴霧粒径が相対的に小さくなり、成層燃焼に適した特性の燃料噴霧が得られる。これにより、エンジン1における燃料の燃焼性能を向上させることができる。
また、ECU30が、エア噴射弁44によるエア噴射期間を燃料噴射弁43による燃料噴射期間と等しくした場合は、燃料噴射期間の全域で燃料の噴霧粒径が相対的に小さくなる。これにより、エンジン1における燃料の燃焼性能を向上させることができる。
更に、ECU30が、エア噴射弁44によるエア噴射期間を燃料噴射弁43による燃料噴射期間より長くした場合は、燃料の噴霧長が相対的に長くなり、かつ、燃料噴霧の全域で噴霧粒径が相対的に小さくなる。これにより、エンジン1における燃料の燃焼性能を向上させることができる。
この実施形態において、各構成要素を次のような実施例1〜3に具体化することにより、特異な効果を得ることができる。
<実施例1>
図21に示すように、燃料噴孔69aから噴射される燃料噴霧とエア噴孔69bから噴射されるエア噴流との衝突角度θ3の設定により、燃料噴霧の噴霧長を相対的に短くしたり、相対的に長くしたりすることができる。
図21に示すように、燃料噴孔69aから噴射される燃料噴霧とエア噴孔69bから噴射されるエア噴流との衝突角度θ3の設定により、燃料噴霧の噴霧長を相対的に短くしたり、相対的に長くしたりすることができる。
衝突角度θ3をある程度大きく(例えば「75°」)設定すると、エア噴射タイミングの設定により噴霧長を相対的に短くしたり、相対的に長くしたりすることが可能となる。例えば、燃料とエアを同時に噴射させる場合は、衝突時に発生する気流の逆流と噴霧微粒化により、噴霧−気流間の空気抵抗が増大する。この空気抵抗の増大作用が、燃料噴霧とエア噴流との衝突と重なり、エアを噴射しない場合よりも噴霧長が短くなる。その逆に、エアを燃料に先行して噴射させた場合は、衝突時に噴霧が伸びる方向にも気流が発生するため、噴霧長が相対的に長くなる。ただし、この場合の噴霧長の可変効果は、以下に説明するように衝突角度θ3を小さく設定する場合に比べて小さくなることが分かっている。
一方、衝突角度θ3を小さく(例えば「45°」)設定すると、エア噴射タイミングの設定により噴霧長を相対的に長くすることが可能になる。これは燃料噴霧が押される方向へエア噴流を燃料噴霧に衝突させるためである。燃料とエアを同時に噴射させる場合は、噴霧長が相対的に長くなり、エアを燃料に先行して噴射させる場合は、噴射時に長くなるような気流が存在するため、噴霧長が更に長くなる。この場合、噴霧長の可変量は、衝突角度θ3を大きく設定した場合に比べて大きくなるので、基本となる燃料噴霧は、燃料圧力を減少(例えば、12MPaから2MPaへ減少)させたとしても、その燃料圧力の減少による噴霧微粒化の悪化をエアブラストにより改善することができる。このため、燃料圧力を減少させたまま燃料とエアの噴射タイミングにより燃料噴霧とエア噴流を制御することにより、噴霧長を可変制御することができる。例えば、燃料とエアを同時に噴射した場合は、噴霧長を相対的に長く(燃圧を12MPaとし、エアブラストを無しにしたときより短い)することが可能となる。また、エアを燃料に先行して噴射した場合は、噴霧長を更に長くすることが可能となる(噴霧粒径は、燃圧を12MPaとし、エアブラストを無しとしたときよりも小さくできることは確認済み。)。
ここで、衝突角度θ3と噴霧長及び平均噴霧粒径との関係につき、図22に示すような実験結果を得た。この実験では、図2,3に示す燃料噴射装置3を使用し、燃料(ノルマルへプタン(n-heptane))圧力を「12MPa」に、エアブラストのエア圧力を「1MPa」に、燃料噴射量を「9.18*10-3(g/ms)」に、燃料噴孔69aからエア噴孔69bまでの距離Xを「1mm」に、エアを燃料より「1ms」だけ先行噴射にそれぞれ設定した。燃料噴射装置3であることから、燃料噴孔69aは、形状が断面円形に、大きさが内径「0.6mm」に、向きがオリフィスプレート69の端面に対して垂直に、配置がオリフィスプレート69の中央に、それぞれ設定される。また、エア噴孔69bは、数が8個に、形状が断面円形(開口端は楕円)に、大きさが内径「1.0mm」に、向きがオリフィスプレート69の端面に対して斜めに、燃料噴孔69aに対する配置が燃料噴孔69aを中心とする円周上に等角度間隔に、それぞれ設定される。この設定は、他の実施例2,3においても同じである。
図22から明らかなように、「15〜75°」の範囲の衝突角度θ3では、「105〜82mm」の範囲の有効な噴霧長が得られ、「8.5〜7μm」の範囲の有効な平均噴霧粒径が得られることが分かる。尚、上記設定条件でエア噴射を行わない場合の噴霧長は「75mm」であった。
そこで、この実施例1では、衝突角度θ3を「15〜75°」の範囲の所定値に設定する。好ましくは、衝突角度θ3を「15〜45°」の範囲の所定値に設定する。これにより、「105〜93mm」の範囲の有効な噴霧長が得られ、「8.5〜7.5μm」の範囲の有効な平均噴霧粒径が得られる。より好ましくは、衝突角度θ3を「15〜30°」の範囲の所定値に設定する。これにより、「105〜99mm」の範囲の有効な噴霧長が得られ、「8.5〜8.0μm」の範囲の有効な平均噴霧粒径が得られる。
従って、この実施例1では、衝突角度θ3が「15〜75°」の範囲の所定値に限定的に設定されるので、燃料噴霧の方向に対するエア噴流の作用力が大きくなり、噴霧長をより長くすることが可能となる。この結果、エンジン1の運転条件の全域で好適な燃料微粒化を達成することができ、併せて噴霧長を好適に設定することができる。
<実施例2>
前述した燃料噴孔69aからエア噴孔69bまでの距離Xの設定により、同じエア圧力でより高い噴霧微粒化とより長い噴霧長を得ることができる。
前述した燃料噴孔69aからエア噴孔69bまでの距離Xの設定により、同じエア圧力でより高い噴霧微粒化とより長い噴霧長を得ることができる。
ここで、距離Xと噴霧長及び平均噴霧粒径との関係につき、図23に示すような実験結果を得た。この実験では、図2,3に示す燃料噴射装置3を使用し、燃料(ノルマルへプタン(n-heptane))圧力を「12MPa」に、エアブラストのエア圧力を「1MPa」に、燃料噴射量を「9.18*10-3(g/ms)」に、衝突角度θ3を「15°」に、エアを燃料より「1ms」だけ先行噴射にそれぞれ設定した。
図23から明らかなように、距離Xが小さくなるほど噴霧微粒化と噴霧長の伸長効果が大きくなることが分かる。ここで、距離Xを半分にするだけでエア圧力を2倍にするのと同じ効果が得られることが分かっている。従って、距離Xをできるだけ小さくすることで少ないエネルギーで噴霧微粒化と噴霧長の伸長効果を得ることができる。図23から分かるように、平均噴霧粒径の曲線は、距離Xが「4mm」になる当たりで若干なだらかになっている。そして、「1〜4mm」の距離Xの範囲では、「105〜95mm」の範囲の有効な噴霧長が得られ、「約9μm」の有効な平均噴霧粒径が得られる。そこで、この実施例2では、距離Xを「1〜4mm」の範囲の所定値に設定する。尚、上記設定条件でエア噴射を行わない場合の噴霧長は「75mm」であった。
従って、この実施例2では、距離Xが「1〜4mm」の範囲の所定値に限定的に設定されるので、エア噴流と燃料噴霧との衝突点HPが、燃料噴孔69aの付近の最適位置に設定される。このように距離Xが限定的に設定されることで、エア圧力を変えることなく、同じエネルギーのエア噴流により、燃料の高微粒化を図り、噴霧長の伸長を図ることが可能となる。この結果、エンジン1の運転条件の全域で好適な燃料微粒化を達成することができ、併せて噴霧長を好適に設定することができる。
<実施例3>
燃料噴射弁43に供給される燃料圧力を所定の低圧に設定することにより、噴霧粒径を大きく変えることなく噴霧長可変量(燃料噴霧にエアを衝突させる場合(エア有)と、エアを衝突させない場合(エア無)との噴霧長の差)を大きくすることができる。
燃料噴射弁43に供給される燃料圧力を所定の低圧に設定することにより、噴霧粒径を大きく変えることなく噴霧長可変量(燃料噴霧にエアを衝突させる場合(エア有)と、エアを衝突させない場合(エア無)との噴霧長の差)を大きくすることができる。
ここで、燃料圧力と噴霧長との関係につき、図24に示すような実験結果を得た。また、燃料圧力と平均噴霧粒径との関係につき、図25に示すような実験結果を得た。この実験では、図2,3に示す燃料噴射装置3を使用し、燃料をノルマルへプタン(n-heptane)に、エアブラストのエア圧力を「1MPa」に、燃料噴射量を「9.18*10-3(g/ms)」に、衝突角度θ3を「15°」に、エアを燃料より「1ms」だけ先行噴射にそれぞれ設定した。
噴射要求特性としては、噴霧粒径、噴霧長可変量につき、燃料噴射弁の構造やエネルギーロスの観点から、燃料噴射弁に供給される燃料圧力は低い方が望ましい。このエアブラストによる噴霧微粒化は、少ないエネルギーで可能であるが、噴霧長可変量を大きくするには、エア噴射による大きいエネルギーが必要になる。従って、要求値を満足するように噴霧長可変量を設定した場合、噴霧粒径が要求値より小さくなり、無駄な微粒化エネルギーを使うことが多くなる。この場合に、燃料圧力を落とし、燃料噴霧にエアを衝突させない燃料噴霧自体の粒径を大きくすることで、噴霧粒径、噴霧長可変量の要求値を満足しながら、燃料圧力を下げることができる。この場合、燃料圧力を下げたことで、燃料噴霧自体の運動エネルギーが小さくなり、エア噴流のエネルギーが相対的に大きくなるので、噴霧長可変量はより大きくなる。
図24,25から明らかなように、エアブラスト(エア有)による噴霧微粒化効果は、平均噴霧粒径が燃料圧力に対して−1/2乗に近い関係を有する。また、噴霧長可変量は燃料圧力が低いほど大きくなることが分かる。このことから、エアブラスを使用して噴霧微粒化と噴霧長可変を両立させるには、エネルギー消費面から見て最も効率の良い燃料圧力は、噴霧長可変量が大きくなる低圧範囲であり、噴霧粒径が変極する手前の範囲にするのがよい。そこで、この実施例3では、燃料圧力を「1〜4MPa」の範囲の所定値に設定する。ここで、燃料噴霧の粒径は、燃料圧力に対して−1/2乗に近い関係を有する。また、燃料圧力を下げることにより、エア噴流のエネルギーが燃料噴霧に対して相対的に大きくなる。従って、燃料噴霧の粒径がさほど変わらない領域内で燃料圧力を「1〜4MPa」の範囲の所定値まで限定的に下げることで、燃料微粒化を達成しながら噴霧長のみを必要に応じてる大きく変えられる。つまり、平均噴霧粒径をそれほど変えずに噴霧長変化量を相対的に大きくすることができる。この結果、エンジン1の運転条件の全域で好適な燃料微粒化を達成することができ、併せて噴霧長を好適に設定することができる。
[第2の実施形態]
次に、本発明の直接噴射式燃料噴射装置を直接噴射式エンジンシステムに具体化した第2の実施形態を図面を参照して詳細に説明する。
次に、本発明の直接噴射式燃料噴射装置を直接噴射式エンジンシステムに具体化した第2の実施形態を図面を参照して詳細に説明する。
尚、この実施形態を含む以下の各実施形態において、前記第1の実施形態と同じ構成要素については同一の符号を付して説明を省略し、以下には異なった点を中心に説明する。
この実施形態は、エア噴射弁の機能を燃料噴射弁に一体に設けた点で前記各実施形態と構成が異なる。図26にエア噴射弁一体型燃料噴射弁91の断面図を示す。この実施形態の一体型燃料噴射弁91は、そのロワボディ55の先端に筒部55aが一体的に設けられる。この筒部55aの先端にオリフスプレート85が固定される。ロワボディ55には、筒部55aに開口するエア通路92が設けられる。エア通路92には、エア配管(図示略)を通じて加圧エアが供給される。ロワボディ55の基端部には、別のソレノイド93が設けられる。ロワボディ55には、エア通路92を開閉する弁体94が設けられる。この弁体94が、ソレノイド93の励磁・消磁に基づいて動作することにより、エア通路92が開閉され、筒部55aの中に加圧エアが供給され、オリフィスプレート85のエア噴孔85bから加圧エアが噴射され、エア噴流が形成されるようになっている。また、筒部55aの中心に一体的に設けられたチューブ66の孔66aを通じて噴射される燃料が、オリフィスプレート85の燃料噴孔85aから噴射され、燃料噴霧が形成されるようになっている。
また、この実施形態でも、第1の実施形態における実施例1〜3と同様、燃料噴霧とエア噴流との衝突角度θ3を「15〜75°」の範囲の所定値に限定的に設定したり、燃料噴孔85aの中心からエア噴孔85bの中心までの距離Xを「1〜4mm」の範囲の所定値に限定的に設定したり、燃料噴射弁91に供給される燃料圧力を「1〜4MPa」の範囲の所定値に限定的に設定したりしてもよい。
従って、この実施形態では、エア噴射弁一体型燃料噴射弁91を使用することから、燃料噴射弁43とエア噴射弁44を別々に設けた前記各実施形態よりも、燃料噴射装置をコンパクトに構成することができる。この実施形態におけるその他の作用効果は、基本的には、前記各実施形態におけるそれと同じである。
[第3の実施形態]
次に、本発明の直接噴射式燃料噴射装置を直接噴射式エンジンシステムに具体化した第3の実施形態を図面を参照して詳細に説明する。
次に、本発明の直接噴射式燃料噴射装置を直接噴射式エンジンシステムに具体化した第3の実施形態を図面を参照して詳細に説明する。
この実施形態は、エア噴射弁の噴射機能を燃料噴射弁に設けた点で前記各実施形態と構成が異なる。図27に燃料噴射弁95の断面図を示す。この実施形態の燃料噴射弁95は、ロワボディがハウジング51と一体的に設けられる。このハウジング51の先端にオリフィスプレート85が直接固定される。ハウジング51の先端部には、オリフィスプレート85の燃料噴孔85aとノズルボディ56の弁孔56bとの間を連通する燃料通路96が設けられる。同じく、ハウジング51の先端部には、燃料通路96の周囲にエア通路97が設けられる。このエア通路97には、別途のエア制御弁(図示略)を通じて加圧エアが供給される。エア制御弁が制御されることにより、エア通路97を通じてオリフィスプレート85のエア噴孔85bから加圧エアが噴射され、エア噴流が形成されるようになっている。また、弁座56aに対して弁部58aが開閉することにより、燃料通路96及びオリフィスプレート85の燃料噴孔95aを通じて燃料が噴射され、燃料噴霧が形成されるようになっている。
また、この実施形態でも、第1の実施形態における実施例1〜3と同様、燃料噴霧とエア噴流との衝突角度θ3を「15〜75°」の範囲の所定値に限定的に設定したり、燃料噴孔85aの中心からエア噴孔85bの中心までの距離Xを「1〜4mm」の範囲の所定値に限定的に設定したり、燃料噴射弁95に供給される燃料圧力を「1〜4MPa」の範囲の所定値に限定的に設定したりしてもよい。
従って、この実施形態では、エア噴射弁の機能を燃料噴射弁95に設けていることから、燃料噴射弁43とエア噴射弁44を別々に設けた前記各実施形態に比べ、燃料噴射装置に関するエンジン周りの構成をコンパクトにすることができる。この実施形態におけるその他の作用効果は、基本的には、前記各実施形態におけるそれと同じである。
[第4の実施形態]
次に、本発明の直接噴射式燃料噴射装置を直接噴射式エンジンシステムに具体化した第4の実施形態を図面を参照して詳細に説明する。
次に、本発明の直接噴射式燃料噴射装置を直接噴射式エンジンシステムに具体化した第4の実施形態を図面を参照して詳細に説明する。
この実施形態の燃料噴射装置は、一つの燃料噴霧を形成するための燃料噴射弁と、複数のエア噴流のそれぞれを個別に形成するための複数のエア噴射弁とを備える点で、前記各実施形態の燃料噴射弁と構成が異なる。
図28に燃料噴射装置の概略構成に関する断面図を示す。燃料噴射弁43と二つのエア噴射弁44は、互いに基本構成を同じくしている。これら噴射弁43,44の詳しい構成は、図2に示す燃料噴射弁43のそれと同じである。この実施形態で、燃料噴射弁43に対応して設けられ燃焼室2に開口する燃料噴孔101の構成は、例えば、円形であってもよく、スリット状の矩形であってもよい。これに対し、各エア噴射弁44のに対応して設けられ燃焼室2に開口するエア噴孔102は、円形をなす複数のエア噴孔を一列に配置したものであってもよく、矩形をなすエア噴孔であってもよい。この実施形態でも、衝突点HPにおいて燃料噴霧と同じ大きさと強度分布を有するエア噴流を燃料噴霧に衝突させるように設定される。上記のようにして、この燃料噴射装置では、燃料噴射弁43から噴射される燃料と、各エア噴射弁44から噴射されるエアとを燃焼室2の中で衝突させるように構成される。
また、この実施形態でも、第1の実施形態における実施例1及び3と同様、燃料噴霧とエア噴流との衝突角度θ3を「15〜75°」の範囲の所定値に限定的に設定したり、燃料噴射弁43に供給される燃料圧力を「1〜4MPa」の範囲の所定値に限定的に設定したりしてもよい。
従って、この実施形態の燃料噴射装置においても、機能的には、前記各実施形態の燃料噴射装置と同等の作用効果を得ることができる。
[第5の実施形態]
次に、本発明の直接噴射式燃料噴射装置を直接噴射式エンジンシステムに具体化した第5の実施形態を図面を参照して詳細に説明する。
次に、本発明の直接噴射式燃料噴射装置を直接噴射式エンジンシステムに具体化した第5の実施形態を図面を参照して詳細に説明する。
この実施形態の燃料噴射装置は、第2の実施形態を変形したものである。図29にこの燃料噴射装置の概略構成を断面図に示す。図26との対比から分かるように、この一体型燃料噴射弁98は、燃料噴霧に対して片側からのみエア噴流を衝突させるように構成される。一体型燃料噴射弁98は、基本的には第2の実施形態における一体型燃料噴射弁91と同じ構成を備える。従って、この噴射弁98の詳しい構成の説明は省略する。この実施形態では、燃料噴孔85aがスリット状の矩形をなし、エア噴孔85bが矩形をなす。そして、燃料噴孔85aの片側に位置するエア噴孔85bからエア噴流が発生する。また、衝突点HPにおいて燃料噴霧と同じ大きさと強度分布を有するエア噴流を燃料噴霧に衝突させるように設定される。上記のようにして、この燃料噴射装置では、一体型燃料噴射弁98から噴射される燃料と、エア噴孔85bから噴射されるエアとを燃焼室2の中で衝突させるように構成される。
また、この実施形態でも、第1の実施形態における実施例1〜3と同様、燃料噴霧とエア噴流との衝突角度θ3を「15〜75°」の範囲の所定値に限定的に設定したり、燃料噴孔85aの中心からエア噴孔85bの中心までの距離Xを「1〜4mm」の範囲の所定値に限定的に設定したり、燃料噴射弁98に供給される燃料圧力を「1〜4MPa」の範囲の所定値に限定的に設定したりしてもよい。
従って、この実施形態の燃料噴射装置においても、機能的には、前記各実施形態の燃料噴射装置と同等の作用効果を得ることができる。加えて、この実施形態では、燃料噴孔85aの片側のみにエア噴孔85bを配置してエア噴流を発生させていることから、図29に示すように、エア噴流の衝突により燃料噴霧の向きを水平方向へ斜めに変えることができる。このため、燃焼室2の形状に合わせて燃料を微粒化することができる。
[第6の実施形態]
次に、本発明の直接噴射式燃料噴射装置を直接噴射式エンジンシステムに具体化した第6の実施形態を図面を参照して詳細に説明する。
次に、本発明の直接噴射式燃料噴射装置を直接噴射式エンジンシステムに具体化した第6の実施形態を図面を参照して詳細に説明する。
この実施形態の燃料噴射装置は、前記第2の実施形態における燃料噴射装置の機能を、一体型燃料噴射弁98でなく、別々に設けられた燃料噴射弁43とエア噴射弁44により達成しようとするものである。図30にこの燃料噴射装置の概略構成を断面図に示す。図29との対比から分かるように、この実施形態では、一つの燃料噴射弁43と少なくとも一つのエア噴射弁44がシリンダヘッド46に組み付けられる。この実施形態で、燃料噴射弁43に対応して設けられ燃焼室2に開口する燃料噴孔101の構成は、例えば、円形であってもよく、スリット状の矩形であってもよい。これに対し、各エア噴射弁44のに対応して設けられ燃焼室2に開口するエア噴孔102は、円形をなす複数のエア噴孔を一列に配置したものであってもよく、矩形をなすエア噴孔であってもよい。そして、一つの燃料噴射弁43からの燃料噴霧に対して片側からのみエア噴流を衝突させるようにエア噴射弁44が配置される。すなわち、エア噴孔102からのエア噴流の噴流軸線ALが、燃料噴射弁43からの燃料噴霧の最大径における衝突点HPで交差するように設定される。上記のようにして、この燃料噴射装置では、燃料噴射弁43から噴射される燃料と、エア噴射弁44から噴射されるエアとを燃焼室2の中で衝突させるように構成される。
また、この実施形態でも、第1の実施形態における実施例1及び3と同様、燃料噴霧とエア噴流との衝突角度θ3を「15〜75°」の範囲の所定値に限定的に設定したり、燃料噴射弁43に供給される燃料圧力を「1〜4MPa」の範囲の所定値に限定的に設定したりしてもよい。
従って、この実施形態の燃料噴射装置においても、機能的には、前記各実施形態の燃料噴射装置と同等の作用効果を得ることができる。加えて、この実施形態では、燃料噴射弁43の片側のみにエア噴射弁44を配置してエア噴流を発生させていることから、図30に示すように、エア噴流の衝突により燃料噴霧の向きを水平方向へ斜めに変えることができる。このため、燃焼室2の形状に合わせて燃料を微粒化することができる。
[第7の実施形態]
次に、本発明の直接噴射式燃料噴射装置を直接噴射式エンジンシステムに具体化した第7の実施形態を図面を参照して詳細に説明する。
次に、本発明の直接噴射式燃料噴射装置を直接噴射式エンジンシステムに具体化した第7の実施形態を図面を参照して詳細に説明する。
図31〜33にこの実施形態における燃料噴射装置の概略構成を断面図に示す。この実施形態の燃料噴射装置は、一つの燃料噴孔101を含む一つの燃料噴射弁43に対して少なくとも第1及び第2の二つのエア噴射弁44A,44Bが設けられる。各エア噴射弁44A,44Bに対応してエア噴孔102がそれぞれ設けられ、各エア噴孔102からのエアの噴射を選択的に切り替えるために、各エア噴射弁44A,44Bの使用を切り替えるように構成される。
また、この実施形態では、一つの燃料噴射弁43により形成される燃料噴霧に対し、その片側からのみエア噴流を衝突させるように第1及び第2のエア噴射弁44A,44Bが配置される。すなわち、衝突点HPにおいて燃料噴霧と同じ大きさと強度分布を有する第1のエア噴射弁44Aのエア噴孔102から噴射されるエア噴流を燃料噴霧に衝突させるよう設定される。同じく、衝突点HPにおいて燃料噴霧と同じ大きさと強度分布を有する第2のエア噴射弁44Bのエア噴孔102から噴射されるエア噴流を燃料噴霧に衝突させるように設定される。上記のようにして、この燃料噴射装置では、燃料噴射弁43から噴射される燃料と、各エア噴射弁44A,44Bから噴射されるエアとを燃焼室2の中で衝突させるように構成される。
更に、この実施形態でも、第1の実施形態における実施例1及び3と同様、燃料噴霧とエア噴流との衝突角度θ3を「15〜75°」の範囲の所定値に限定的に設定したり、燃料噴射弁43に供給される燃料圧力を「1〜4MPa」の範囲の所定値に限定的に設定したりしてもよい。
従って、この実施形態の燃料噴射装置においても、機能的には、前記各実施形態の燃料噴射装置と同等の作用効果を得ることができる。加えて、この実施形態の燃料噴射装置によれば、二つのエア噴射弁44A,44Bの使用を切り替えることにより、各エア噴孔102からのエアの噴射が選択的に切り替えられる。従って、この切り替えにより、燃料噴霧に対するエア噴流の衝突の形態が変えられ、燃料噴霧の形状が変えられる。すなわち、図32に示すように、燃料噴射弁43に対して第1のエア噴射弁44Aのみを選択的に使用する場合には、燃料噴霧にエア噴流を衝突させたときに、相対的に狭い範囲で衝突を生じさせることができる。一方、図33に示すように、燃料噴射弁43に対して第2のエア噴射弁44Bのみを選択的に使用する場合には、燃料噴霧にエア噴流を衝突させたときに、相対的に広い範囲で衝突を生じさせることができる。このように、燃料噴霧とエア噴流との衝突範囲の大きさを2種類に切り替えることができる。この結果、噴霧長及び噴霧形状を選択的に切り替えて使用することができ、エンジン1の運転条件に合わせて燃料の微粒化を調節することができる。
尚、この発明は前記各実施形態に限定されるものではなく、発明の趣旨を逸脱することのない範囲で構成の一部を適宜変更して次のように実施することもできる。
(1)前記各実施形態では、燃料に衝突させる気体としてエア(空気)を使用したが、空気以外の特定の気体を使用してもよい。
(2)前記第1の実施形態では、実施例1〜3において、燃料噴孔69aの形状、大きさ、向き及び配置と、エア噴孔69bの数、形状、大きさ、向き及び燃料噴孔69aに対する配置をそれぞれ所定値に特定して設定したが、これらの構成要素の特定は上記の所定値に限定されるものではなく、実施可能な範囲で適宜に変更してもよい。
(3)前記各実施形態において、燃料噴霧とエア噴流との衝突角度θ3に係る限定的な設定と、燃料噴孔の中心からエア噴孔の中心までの距離Xに係る限定的な設定と、燃料噴射弁に供給される燃料圧力に係る限定的な設定とを、一つの燃料噴射装置において適宜に組み合わせて設定してもよい。
具体的には、燃料噴孔の中心からエア噴孔の中心までの距離Xを「1〜4mm」の範囲の所定値にする限定的な設定に、燃料噴霧とエア噴流との衝突角度θ3を「15〜75°」の範囲の所定値にする限定的な設定を組み合わせたり、燃料噴射弁に供給される燃料圧力を「1〜4MPa」の範囲の所定値にする限定的な設定に、上記衝突角度θ3を「15〜75°」の範囲の所定値にする限定的な設定を組み合わせたりしてもよい。これらの場合は、いずれも燃料噴霧の方向に対するエア噴流の作用力が大きくなり、噴霧長をより長くすることができる。
また、上記距離Xを「1〜4mm」の範囲の所定値にする限定的な設定に、燃料噴射弁に供給される燃料圧力を「1〜4MPa」の範囲の所定値にする限定的な設定を組み合わせてもよい。この場合、燃料噴霧の粒径がさほど変わらない領域内で燃料圧力が下がり、噴霧長の変化割合を相対的に大きくすることができる。
更に、上記距離Xを「1〜4mm」の範囲の所定値にする限定的な設定に、上記衝突角度θ3を「15〜75°」の範囲の所定値にする限定的な設定と、燃料噴射弁に供給される燃料圧力を「1〜4MPa」の範囲の所定値にする限定的な設定とを組み合わせてもよい。この場合は、噴霧長をより長くすることができ、噴霧長の変化割合を相対的に大きくすることができる。
1 エンジン
2 燃焼室
3 燃料噴射装置
14 吸気バルブ
15 排気バルブ
43 燃料噴射弁
44 エア噴射弁
69a 燃料噴孔
69b エア噴孔
85a 燃料噴孔
85b エア噴孔
91 エア噴射弁一体型燃料噴射弁
95 燃料噴射弁
98 一体型燃料噴射弁
101 燃料噴孔
102 エア噴孔
θ3 衝突角度
X 距離
2 燃焼室
3 燃料噴射装置
14 吸気バルブ
15 排気バルブ
43 燃料噴射弁
44 エア噴射弁
69a 燃料噴孔
69b エア噴孔
85a 燃料噴孔
85b エア噴孔
91 エア噴射弁一体型燃料噴射弁
95 燃料噴射弁
98 一体型燃料噴射弁
101 燃料噴孔
102 エア噴孔
θ3 衝突角度
X 距離
Claims (6)
- 吸気バルブ及び排気バルブを含む内燃機関の燃焼室に燃料を噴射するための燃料噴射弁と、同じく燃焼室に気体を噴射するための気体噴射弁とを備えた直接噴射式燃料噴射装置であって、
前記燃料噴射弁を一つ含み、その燃料噴射弁に対応して前記燃焼室に開口される一つ以上の燃料噴孔が設けられることと、
前記気体噴射弁を少なくとも一つ含み、その気体噴射弁に対応して前記燃焼室に開口される一つ以上の気体噴孔が設けられることと、
前記燃料噴孔の形状、大きさ、向き及び配置が特定されることと、
前記気体噴孔の数、形状、大きさ、向き及び前記燃料噴孔に対する配置が特定されることと、
前記燃料噴孔の中心から前記気体噴孔の中心までの距離が1〜4mmの範囲の所定値に設定されることと
を備え、前記燃料噴射弁から噴射されて前記燃料噴孔を通じて前記燃焼室へ噴射される燃料と、前記気体噴射弁から噴射されて前記気体噴孔を通じて前記燃焼室へ噴射される気体とを衝突させるように構成したことを特徴とする直接噴射式燃料噴射装置。 - 吸気バルブ及び排気バルブを含む内燃機関の燃焼室に燃料を噴射するための燃料噴射弁と、同じく燃焼室に気体を噴射するための気体噴射弁とを備えた直接噴射式燃料噴射装置であって、
前記燃料噴射弁を一つ含み、その燃料噴射弁に対応して前記燃焼室に開口される一つ以上の燃料噴孔が設けられることと、
前記気体噴射弁を少なくとも一つ含み、その気体噴射弁に対応して前記燃焼室に開口される一つ以上の気体噴孔が設けられることと、
前記燃料噴孔の形状、大きさ、向き及び配置が特定されることと、
前記気体噴孔の数、形状、大きさ、向き及び前記燃料噴孔に対する配置が特定されることと
を備え、前記燃料噴射弁から噴射されて前記燃料噴孔を通じて前記燃焼室へ噴射される燃料と、前記気体噴射弁から噴射されて前記気体噴孔を通じて前記燃焼室へ噴射される気体とを衝突させるように構成し、前記燃料噴孔から噴射される燃料と前記気体噴孔から噴射される気体との衝突角度が15〜75°の範囲の所定値に設定されることを特徴とする直接噴射式燃料噴射装置。 - 吸気バルブ及び排気バルブを含む内燃機関の燃焼室に燃料を噴射するための燃料噴射弁と、同じく燃焼室に気体を噴射するための気体噴射弁とを備えた直接噴射式燃料噴射装置であって、
前記燃料噴射弁を一つ含み、その燃料噴射弁に対応して前記燃焼室に開口される一つ以上の燃料噴孔が設けられることと、
前記気体噴射弁を少なくとも一つ含み、その気体噴射弁に対応して前記燃焼室に開口される一つ以上の気体噴孔が設けられることと、
前記燃料噴孔の形状、大きさ、向き及び配置が特定されることと、
前記気体噴孔の数、形状、大きさ、向き及び前記燃料噴孔に対する配置が特定されることと、
前記燃料噴射弁から噴射される燃料の圧力が1〜4MPaの範囲の所定値に設定されることと
を備え、前記燃料噴射弁から噴射されて前記燃料噴孔を通じて前記燃焼室へ噴射される燃料と、前記気体噴射弁から噴射されて前記気体噴孔を通じて前記燃焼室へ噴射される気体とを衝突させるように構成したことを特徴とする直接噴射式燃料噴射装置。 - 前記燃料噴孔から噴射される燃料と前記気体噴孔から噴射される気体との衝突角度が15〜75°の範囲の所定値に設定されることを特徴とする請求項1又は3に記載の直接噴射式燃料噴射装置。
- 前記燃料噴射弁から噴射される燃料の圧力が1〜4MPaの範囲の所定値に設定されることを特徴とする請求項1に記載の直接噴射式燃料噴射装置。
- 前記燃料噴孔から噴射される燃料と前記気体噴孔から噴射される気体との衝突角度が15〜75°の範囲の所定値に設定されることと、
前記燃料噴射弁から噴射される燃料の圧力が1〜4MPaの範囲の所定値に設定されることと
を備えたことを特徴とする請求項1に記載の直接噴射式燃料噴射装置。
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