JP2005166849A - 寸法安定性を向上させたフレキシブル金属張積層板の製造方法ならびにそれにより得られるフレキシブル金属張積層板 - Google Patents

寸法安定性を向上させたフレキシブル金属張積層板の製造方法ならびにそれにより得られるフレキシブル金属張積層板 Download PDF

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Abstract

【課題】 本発明は、寸法安定性に優れたフレキシブル金属張積層板ならびにその製造方法を提供することにある。
【解決手段】 少なくとも片面に、熱可塑性ポリイミドを含有する接着層を設けた接着フィルムと金属箔とを、一対以上の金属ロールを有する熱ロールラミネート装置により貼り合わせてなるフレキシブル金属張積層板の製造方法であって、該装置の加熱ロールと被積層材料との間にポリイミドフィルムからなる保護材料を加熱ロールの一部を覆う形で配し、加熱加圧する前に接着フィルムならびに金属箔をあらかじめ加熱ロールに接触させたのちラミネートを行い、冷却後に積層板から保護材料を剥離することを特徴とする、フレキシブル金属張積層板の製造方法。ならびに、それにより得られるフレキシブル金属張積層板。
【選択図】 なし

Description

本発明は、少なくとも片面に、熱可塑性ポリイミドを含有する接着層を設けた接着フィルムと金属箔(以下、これらをまとめて被積層材料ともいう)とを、一対以上の金属ロールを有する熱ロールラミネート装置により貼り合わせて得られるフレキシブル金属張積層板、ならびにその製造方法に関する。更に詳しくは、該装置の加熱ロールと被積層材料との間にポリイミドフィルムからなる保護材料を加熱ロールの一部を覆う形で配し、更に加熱加圧する前に接着フィルムならびに金属箔をあらかじめ加熱ロールに接触させたのちラミネートを行い、冷却後に積層体から保護材料を剥離することにより得られるフレキシブル金属張積層板、ならびにその製造方法であって、好ましくはエッチングにより金属箔の少なくとも一部を除去する前後の寸法変化率が±0.04%の範囲内にあるフレキシブル金属張積層板、ならびにその製造方法に関する。
近年、エレクトロニクス製品の軽量化、小型化、高密度化にともない、各種プリント基板の需要が伸びているが、中でも、フレキシブル積層板(フレキシブルプリント配線板(FPC)等とも称する)の需要が特に伸びている。フレキシブル積層板は、絶縁性フィルム上に金属箔からなる回路が形成された構造を有している。
上記フレキシブル積層板は、一般に、各種絶縁材料により形成され、柔軟性を有する絶縁性フィルムを基板とし、この基板の表面に、各種接着材料を介して金属箔を加熱・圧着することにより貼りあわせる方法により製造される。上記絶縁性フィルムとしては、ポリイミドフィルム等が好ましく用いられている。上記接着材料としては、エポキシ系、アクリル系等の熱硬化性接着剤が一般的に用いられている(これら熱硬化性接着剤を用いたFPCを以下、三層FPCともいう)。
熱硬化性接着剤は比較的低温での接着が可能であるという利点がある。しかし今後、耐熱性、屈曲性、電気的信頼性といった要求特性が厳しくなるに従い、熱硬化性接着剤を用いた三層FPCでは対応が困難になると考えられる。これに対し、絶縁性フィルムに直接金属層を設けたり、接着層に熱可塑性ポリイミドを使用したFPC(以下、二層FPCともいう)が提案されている。この二層FPCは、三層FPCより優れた特性を有し、今後需要が伸びていくことが期待される。
二層FPCに用いるフレキシブル金属張積層板の作製方法としては、金属箔上にポリイミドの前駆体であるポリアミド酸を流延、塗布した後イミド化するキャスト法、スパッタ、メッキによりポリイミドフィルム上に直接金属層を設けるメタライジング法、熱可塑性ポリイミドを介してポリイミドフィルムと金属箔とを貼り合わせるラミネート法が挙げられる。この中で、ラミネート法は、対応できる金属箔の厚み範囲がキャスト法よりも広く、装置コストがメタライジング法よりも低いという点で優れている。ラミネートを行う装置としては、ロール状の材料を繰り出しながら連続的にラミネートする熱ロールラミネート装置またはダブルベルトプレス装置等が用いられている。上記の内、生産性の点から見れば、熱ロールラミネート法をより好ましく用いることができる。
従来の三層FPCをラミネート法で作製する際、接着層に熱硬化性樹脂を用いていたため、ラミネート温度は200℃未満で行うことが可能であった(特許文献1参照)。これに対し、二層FPCは熱可塑性ポリイミドを接着層として用いるため、熱融着性を発現させるために200℃以上、場合によっては400℃近くの高温を加える必要がある。そのため、ラミネートされて得られたフレキシブル金属張積層板に残留歪みが発生し、エッチングして配線を形成する際、ならびに部品を実装するために半田リフローを行う際に寸法変化となって現れる。
特にラミネート法は、ポリイミドフィルム上に熱可塑性ポリイミドを含有する接着層を設ける際に、熱可塑性ポリイミドの前駆体であるポリアミド酸を流延、塗布した後に連続的に加熱してイミド化を行い、金属箔を貼り合わせる際も連続的に加熱加圧を行うため、材料は張力がかけられた状態で加熱環境下に置かれることが多い。そのため、MD方向とTD方向で異なる熱応力が発生する。具体的には、張力のかかるMD方向には引張られる力が働き、逆にTD方向には縮む力が働く。その結果、フレキシブル積層板から金属箔をエッチングする際と、半田リフローを通して加熱する際にこの歪みが解放され、MD方向は収縮し、逆にTD方向は膨張してしまう。
近年、電子機器の小型化、軽量化を達成するために、基板に設けられる配線は微細化が進んでおり、実装する部品も小型化、高密度化されたものが搭載される。そのため、微細な配線を形成した後の寸法変化が大きくなると、設計段階での部品搭載位置からずれて、部品と基板とが良好に接続されなくなるという問題が生じる。
そこで、ラミネート圧力の制御や、接着フィルムの張力制御により、寸法変化を抑える試みがなされている(特許文献2または3参照)。しかしながら、これらの手段により寸法変化は改善されるものの、まだ充分ではなく、更なる寸法変化の改善が求められている。
特開平9−199830号公報 特開2002−326308号公報 特開2002−326280号公報
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであって、その目的は、エッチング時の寸法変化の発生が抑制されたフレキシブル金属張積層板、特にラミネート法で作製した際に寸法変化の発生を抑制できるフレキシブル金属張積層板、ならびにその製造方法を提供することにある。
本発明者らは、上記の課題に鑑み鋭意検討した結果、ラミネート直前に金属箔ならびに接着フィルムを加熱ロールに接触させて張力の影響を打ち消した後にラミネートを行うことにより、ラミネート時における熱応力の発生を緩和し、寸法変化の発生を効果的に抑制できることを独自に見出し、本発明を完成させるに至った。
即ち本発明の第1は、少なくとも片面に、熱融着性の接着層を有する接着フィルムと金属箔とを、一対以上の金属ロールを有する熱ロールラミネート装置により貼り合わせてなるフレキシブル金属張積層板の製造方法であって、該装置の加熱ロールと被積層材料との間にポリイミドフィルムからなる保護材料を加熱ロールの一部を覆う形で配して、更に加熱加圧する前に接着フィルムならびに金属箔をあらかじめ加熱ロールに接触させたのちラミネートを行い、冷却後に積層体から保護材料を剥離することを特徴とする、フレキシブル金属張積層板の製造方法に関する。
好ましい実施態様は、接着フィルムならびに金属箔が、加熱ロールに0.2〜2秒の範囲で接触していることを特徴とする、前記の製造方法に関する。
更に好ましい実施態様は、ラミネート後、保護材料とフレキシブル金属張積層板が密着している積層体を、加熱ロールに0.5〜5秒の範囲で接触させた後、冷却して積層板から保護材料を剥離することを特徴とする、前記の製造方法に関する。
更に好ましい実施態様は、保護材料を加熱ロールに1秒以上接するように配していることを特徴とする、前記の製造方法に関する。
本発明の第2は、前記いずれかに記載の製造方法により得られるフレキシブル金属張積層板に関する。
好ましい実施態様は、エッチングにより金属箔の少なくとも一部を除去する前後の寸法変化率が±0.04%の範囲内にあることを特徴とする、前記のフレキシブル金属張積層板に関する。
本発明の製造方法から得られるフレキシブル金属張積層板は、寸法変化の発生が抑制されており、特にラミネート法における寸法変化の発生も効果的に抑制できる。具体的には、エッチングにより金属箔の少なくとも一部を除去する前後の寸法変化率が±0.04%の範囲とすることが可能である。従って、微細な配線を形成したFPC等にも好適に用いることが可能で、位置ずれ等の問題を改善できる。
本発明の実施の一形態について、以下に説明する。
本発明にかかるフレキシブル金属張積層板は、後に詳述する、本発明にかかる製造方法により得られるものであり、少なくとも片面に、熱可塑性ポリイミドを含有する接着層を設けた接着フィルムと金属箔とが積層されている構造を含む積層体であれば特に限定されるものではない。
本発明にかかるフレキシブル金属張積層板の製造に用いる接着フィルムは、基材となるフィルム上に、熱可塑性ポリイミドを含有する接着層を設けることにより得られる。基材となるフィルムは、熱ラミネート工程の加熱温度に耐え得るものであり、かつ、柔軟性や可撓性を有する基板であればよいが、本発明にかかるフレキシブル積層板は、電子・電気機器用途(部品も含む)に好適に用いることができるので、絶縁性を有することが非常に好ましい。絶縁性を有するフィルム(絶縁性フィルムと称する)としては、一般的には、各種樹脂フィルムを好適に用いることができ、特に限定されるものではないが、優れた耐熱性を発揮することができ、その他の物性も優れているポリイミドフィルムが好ましく用いられる。
本発明に用いられるポリイミドフィルムはポリアミド酸を前駆体として用いて製造される。ポリアミド酸の製造方法としては公知のあらゆる方法を用いることができ、通常、芳香族酸二無水物と芳香族ジアミンを、実質的等モル量を有機溶媒中に溶解させて、得られたポリアミド酸有機溶媒溶液を、制御された温度条件下で、上記酸二無水物とジアミンの重合が完了するまで攪拌することによって製造される。これらのポリアミド酸溶液は通常5〜35wt%、好ましくは10〜30wt%の濃度で得られる。この範囲の濃度である場合に適当な分子量と溶液粘度を得る。
重合方法としてはあらゆる公知の方法およびそれらを組み合わせた方法を用いることができる。ポリアミド酸の重合における重合方法の特徴はそのモノマーの添加順序にあり、このモノマー添加順序を制御することにより得られるポリイミドの諸物性を制御することができる。従い、本発明においてポリアミド酸の重合にはいかなるモノマーの添加方法を用いても良い。代表的な重合方法として次のような方法が挙げられる。すなわち、
1)芳香族ジアミンを有機極性溶媒中に溶解し、これと実質的に等モルの芳香族テトラカルボン酸二無水物を反応させて重合する方法。
2)芳香族テトラカルボン酸二無水物とこれに対し過小モル量の芳香族ジアミン化合物とを有機極性溶媒中で反応させ、両末端に酸無水物基を有するプレポリマーを得る。続いて、全工程において芳香族テトラカルボン酸二無水物と芳香族ジアミン化合物が実質的に等モルとなるように芳香族ジアミン化合物を用いて重合させる方法。
3)芳香族テトラカルボン酸二無水物とこれに対し過剰モル量の芳香族ジアミン化合物とを有機極性溶媒中で反応させ、両末端にアミノ基を有するプレポリマーを得る。続いてここに芳香族ジアミン化合物を追加添加後、全工程において芳香族テトラカルボン酸二無水物と芳香族ジアミン化合物が実質的に等モルとなるように芳香族テトラカルボン酸二無水物を用いて重合する方法。
4)芳香族テトラカルボン酸二無水物を有機極性溶媒中に溶解及び/または分散させた後、実質的に等モルとなるように芳香族ジアミン化合物を用いて重合させる方法。
5)実質的に等モルの芳香族テトラカルボン酸二無水物と芳香族ジアミンの混合物を有機極性溶媒中で反応させて重合する方法。
などのような方法である。これら方法を単独で用いても良いし、部分的に組み合わせて用いることもできる。
本発明において、上記のいかなる重合方法を用いて得られたポリアミド酸を用いても良く、重合方法は特に限定されるのもではない。
本発明において、パラフェニレンジアミンや置換ベンジジンに代表される剛直構造を有するジアミン成分を用いてプレポリマーを得る重合方法を用いることも好ましい。本方法を用いることにより、弾性率が高く、吸湿膨張係数が小さいポリイミドフィルムが得やすくなる傾向にある。本方法においてプレポリマー調製時に用いる剛直構造を有するジアミンと酸二無水物のモル比は100:70〜100:99もしくは70:100〜99:100、さらには100:75〜100:90もしくは75:100〜90:100が好ましい。この比が上記範囲を下回ると弾性率および吸湿膨張係数の改善効果が得られにくく、上記範囲を上回ると線膨張係数が小さくなりすぎたり、引張伸びが小さくなるなどの弊害が生じることがある。
ここで、本発明にかかるポリアミック酸組成物に用いられる材料について説明する。
本発明において用いうる適当な酸二無水物は、ピロメリット酸二無水物、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、1,2,5,6−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、4,4’−オキシフタル酸二無水物、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、3,4,9,10−ペリレンテトラカルボン酸二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、1,1−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、1,1−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、オキシジフタル酸二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)スルホン二無水物、p−フェニレンビス(トリメリット酸モノエステル酸無水物)、エチレンビス(トリメリット酸モノエステル酸無水物)、ビスフェノールAビス(トリメリット酸モノエステル酸無水物)及びそれらの類似物を含み、これらを単独または、任意の割合の混合物が好ましく用い得る。
これら酸二無水物の中で特にはピロメリット酸二無水物及び/又は3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物及び/又は4,4’−オキシフタル酸二無水物及び/又は3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物の使用が好ましい。
またこれら酸二無水物の中で3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物及び/又は4,4’−オキシフタル酸二無水物及び/又は3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物の好ましい使用量は、全酸二無水物に対して、60mol%以下、好ましくは55mol%以下、更に好ましくは50mol%以下である。3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物及び/又は4,4’−オキシフタル酸二無水物及び/又は3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物の使用量がこの範囲を上回るとポリイミドフィルムのガラス転移温度が低くなりすぎたり、熱時の貯蔵弾性率が低くなりすぎて製膜そのものが困難になったりすることがあるため好ましくない。
また、ピロメリット酸二無水物を用いる場合、好ましい使用量は40〜100mol%、更に好ましくは45〜100mol%、特に好ましくは50〜100mol%である。ピロメリット酸二無水物をこの範囲で用いることによりガラス転移温度および熱時の貯蔵弾性率を使用または製膜に好適な範囲に保ちやすくなる。
本発明にかかるポリイミド前駆体ポリアミド酸組成物において使用し得る適当なジアミンとしては、4,4’−ジアミノジフェニルプロパン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、ベンジジン、3,3’−ジクロロベンジジン、3,3‘−ジメチルベンジジン、2,2’−ジメチルベンジジン、3,3’−ジメトキシベンジジン、2,2’−ジメトキシベンジジン、4,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、3,3’−ジアミノジフェニルスルホン、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、4,4’−オキシジアニリン、3,3’−オキシジアニリン、3,4’−オキシジアニリン、1,5−ジアミノナフタレン、4,4’−ジアミノジフェニルジエチルシラン、4,4’−ジアミノジフェニルシラン、4,4’−ジアミノジフェニルエチルホスフィンオキシド、4,4’−ジアミノジフェニルN−メチルアミン、4,4’−ジアミノジフェニル N−フェニルアミン、1,4−ジアミノベンゼン(p−フェニレンジアミン)、1,3−ジアミノベンゼン、1,2−ジアミノベンゼン、ビス{4−(4−アミノフェノキシ)フェニル}スルホン、ビス{4−(3−アミノフェノキシ)フェニル}スルホン、4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、4,4’−ビス(3−アミノフェノキシ)ビフェニル、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、3,3’−ジアミノベンゾフェノン、4,4'−ジアミノベンゾフェノン及びそれらの類似物などが挙げられる。
これらジアミン類をジアミノベンゼン類、ベンジジン類などに代表されるいわゆる剛直構造のジアミンとエーテル基、スルホン基、ケトン基、スルフィド基など柔構造を有するジアミンとに分類して考えると、剛構造と柔構造のジアミンの使用比率はモル比で80/20〜20/80、好ましくは70/30〜30/70、特に好ましくは60/40〜30/70である。剛構造のジアミンの使用比率が上記範囲を上回ると得られるフィルムの引張伸びが小さくなる傾向にあり、またこの範囲を下回るとガラス転移温度が低くなりすぎたり、熱時の貯蔵弾性率が低くなりすぎて製膜が困難になるなどの弊害を伴うことがあるため好ましくない。
本発明において用いられるポリイミドフィルムは、上記の範囲の中で所望の特性を有するフィルムとなるように適宜芳香族酸二無水物および芳香族ジアミンの種類、配合比を決定して用いることにより得ることができる。
ポリアミド酸を合成するための好ましい溶媒は、ポリアミド酸を溶解する溶媒であればいかなるものも用いることができるが、アミド系溶媒すなわちN,N−ジメチルフォルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドンなどであり、N,N−ジメチルフォルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミドが特に好ましく用い得る。
また、摺動性、熱伝導性、導電性、耐コロナ性、ループスティフネス等のフィルムの諸特性を改善する目的でフィラーを添加することもできる。フィラーとしてはいかなるものを用いても良いが、好ましい例としてはシリカ、酸化チタン、アルミナ、窒化珪素、窒化ホウ素、リン酸水素カルシウム、リン酸カルシウム、雲母などが挙げられる。
フィラーの粒子径は改質すべきフィルム特性と添加するフィラーの種類によって決定されるため、特に限定されるものではないが、一般的には平均粒径が0.05〜100μm、好ましくは0.1〜75μm、更に好ましくは0.1〜50μm、特に好ましくは0.1〜25μmである。粒子径がこの範囲を下回ると改質効果が現れにくくなり、この範囲を上回ると表面性を大きく損なったり、機械的特性が大きく低下したりする可能性がある。また、フィラーの添加部数についても改質すべきフィルム特性やフィラー粒子径などにより決定されるため特に限定されるものではない。一般的にフィラーの添加量はポリイミド100重量部に対して0.01〜100重量部、好ましくは0.01〜90重量部、更に好ましくは0.02〜80重量部である。フィラー添加量がこの範囲を下回るとフィラーによる改質効果が現れにくく、この範囲を上回るとフィルムの機械的特性が大きく損なわれる可能性がある。フィラーの添加は、
1.重合前または途中に重合反応液に添加する方法
2.重合完了後、3本ロールなどを用いてフィラーを混錬する方法
3.フィラーを含む分散液を用意し、これをポリアミド酸有機溶媒溶液に混合する方法
などいかなる方法を用いてもよいが、フィラーを含む分散液をポリアミド酸溶液に混合する方法、特に製膜直前に混合する方法が製造ラインのフィラーによる汚染が最も少なくすむため、好ましい。フィラーを含む分散液を用意する場合、ポリアミド酸の重合溶媒と同じ溶媒を用いるのが好ましい。また、フィラーを良好に分散させ、また分散状態を安定化させるために分散剤、増粘剤等をフィルム物性に影響を及ぼさない範囲内で用いることもできる。
これらポリアミック酸溶液からポリイミドフィルムを製造する方法については従来公知の方法を用いることができる。この方法には熱イミド化法と化学イミド化法が挙げられ、どちらの方法を用いてフィルムを製造してもかまわないが、化学イミド化法によるイミド化の方が本発明に好適に用いられる諸特性を有したポリイミドフィルムを得やすい傾向にある。
また、本発明において特に好ましいポリイミドフィルムの製造工程は、
a)有機溶剤中で芳香族ジアミンと芳香族テトラカルボン酸二無水物を反応させてポリアミック酸溶液を得る工程、
b)上記ポリアミック酸溶液を含む製膜ドープを支持体上に流延する工程、
c)支持体上で加熱した後、支持体からゲルフィルムを引き剥がす工程、
d)更に加熱して、残ったアミック酸をイミド化し、かつ乾燥させる工程、
を含むことが好ましい。
上記工程において無水酢酸等の酸無水物に代表される脱水剤と、イソキノリン、β−ピコリン、ピリジン等の第三級アミン類等に代表されるイミド化触媒とを含む硬化剤を用いても良い。
以下本発明の好ましい一形態、化学イミド法を一例にとり、ポリイミドフィルムの製造工程を説明する。ただし、本発明は以下の例により限定されるものではない。
製膜条件や加熱条件は、ポリアミド酸の種類、フィルムの厚さ等により、変動し得る。
脱水剤及びイミド化触媒を低温でポリアミド酸溶液中に混合して製膜ドープを得る。引き続いてこの製膜ドープをガラス板、アルミ箔、エンドレスステンレスベルト、ステンレスドラムなどの支持体上にフィルム状にキャストし、支持体上で80℃〜200℃、好ましくは100℃〜180℃の温度領域で加熱することで脱水剤及びイミド化触媒を活性化することによって部分的に硬化及び/または乾燥した後支持体から剥離してポリアミック酸フィルム(以下、ゲルフィルムという)を得る。
ゲルフィルムは、ポリアミド酸からポリイミドへの硬化の中間段階にあり、自己支持性を有し、式(1)
(A−B)×100/B・・・・(1)
式(1)中、A、Bは以下のものを表す。
A:ゲルフィルムの重量
B:ゲルフィルムを450℃で20分間加熱した後の重量
から算出される揮発分含量は5〜500重量%の範囲、好ましくは5〜200重量%、より好ましくは5〜150重量%の範囲にある。この範囲のフィルムを用いることが好適であり、焼成過程でフィルム破断、乾燥ムラによるフィルムの色調ムラ、特性ばらつき等の不具合が起こることがある。
脱水剤の好ましい量は、ポリアミド酸中のアミド酸ユニット1モルに対して、0.5〜5モル、好ましくは1.0〜4モルである。また、イミド化触媒の好ましい量はポリアミド酸中のアミド酸ユニット1モルに対して、0.05〜3モル、好ましくは0.2〜2モルである。
脱水剤及びイミド化触媒が上記範囲を下回ると化学的イミド化が不十分で、焼成途中で破断したり、機械的強度が低下したりすることがある。また、これらの量が上記範囲を上回ると、イミド化の進行が早くなりすぎ、フィルム状にキャストすることが困難となることがあるため好ましくない。
前記ゲルフィルムの端部を固定して硬化時の収縮を回避して乾燥し、水、残留溶媒、残存転化剤及び触媒を除去し、そして残ったアミド酸を完全にイミド化して、本発明のポリイミドフィルムが得られる。
この時、最終的に400〜650℃の温度で5〜400秒加熱するのが好ましい。この温度より高い及び/または時間が長いと、フィルムの熱劣化が起こり問題が生じることがある。逆にこの温度より低い及び/または時間が短いと所定の効果が発現しないことがある。
また、フィルム中に残留している内部応力を緩和させるためにフィルムを搬送するに必要最低限の張力下において加熱処理をすることもできる。この加熱処理はフィルム製造工程において行ってもよいし、また、別途この工程を設けても良い。加熱条件はフィルムの特性や用いる装置に応じて変動するため一概に決定することはできないが、一般的には200℃以上500℃以下、好ましくは250℃以上500℃以下、特に好ましくは300℃以上450℃以下の温度で、1〜300秒、好ましくは2〜250秒、特に好ましくは5〜200秒程度の熱処理により内部応力を緩和することができる。
ポリイミドフィルムの諸特性の制御は、用いるモノマーの種類、重合時のモノマーの添加順序、選択するイミド化方法等により適宜制御することができるが、本発明において概ね以下の特性を有するように分子設計することが好ましい。
1.引張弾性率は4.0GPa以上、好ましくは4.5GPa以上、特に好ましくは5.0GPa以上
2.吸湿膨張係数は14ppm以下、好ましくは12ppm以下
3.線膨張係数は1〜20ppm、好ましくは5〜18ppm
また、本発明においては市販のポリイミドフィルムを用いてもよく、例えば、アピカル(鐘淵化学工業社製)、カプトン(デュポン社製)、ユーピレックス(宇部興産社製)が挙げられる。このうち、弾性率、線膨張係数、吸水率の点から、アピカルHP(鐘淵化学工業社製)を好ましく用いることができる。
接着層に含有される熱可塑性ポリイミドとしては、熱可塑性ポリイミド、熱可塑性ポリアミドイミド、熱可塑性ポリエーテルイミド、熱可塑性ポリエステルイミド等を好適に用いることができる。中でも、低吸湿特性の点から、熱可塑性ポリエステルイミドが特に好適に用いられる。
また、既存の装置でラミネートが可能であり、かつ得られる金属張積層板の耐熱性を損なわないという点から考えると、本発明における熱可塑性ポリイミドは、150〜300℃の範囲にガラス転移温度(Tg)を有していることが好ましい。なお、Tgは動的粘弾性測定装置(DMA)により測定した貯蔵弾性率の変曲点の値により求めることができる。
本発明に用いられる熱可塑性ポリイミドの前駆体であるポリアミド酸については、特に限定されるわけではなく、公知のあらゆるポリアミド酸を用いることができる。その製造に関しても、公知の原料や反応条件等を用いることができる(例えば、後述する実施例参照)。また、必要に応じて無機あるいは有機物のフィラーを添加しても良い。
本発明にかかるフレキシブル金属張積層板の製造に用いる接着フィルムは、上記基材フィルムの少なくとも片面に熱可塑性ポリイミドを含有する接着層を設けることにより得られる。接着フィルムの製造方法としては、基材フィルムとなるポリイミドフィルムに接着層を形成する方法、又は接着層をシート状に成形し、これを上記基材フィルムに貼り合わせる方法等が好適に例示され得る。このうち、前者の方法を採る場合、接着層に含有される熱可塑性ポリイミドの前駆体であるポリアミド酸を完全にイミド化してしまうと、有機溶媒への溶解性が低下する場合があることから、基材フィルム上に上記接着層を設けることが困難となることがある。従って、上記観点から、熱可塑性ポリイミドの前駆体であるポリアミド酸を含有する溶液を調製して、これを基材フィルムに塗布し、次いでイミド化する手順を採った方がより好ましい。この時のイミド化の方法としては、熱キュア法若しくはケミカルキュア法のどちらも用いることができるが、ケミカルキュア法は接着層を熱劣化させずに化学的転化剤等を除去する加熱条件を設定しなくてはならない場合があるという点から、熱キュア法によりイミド化する方がより好ましい。また、前記ポリアミド酸溶液には、用途に応じて、例えば、フィラーのような他の材料を含んでもよい。また接着フィルム各層の厚み構成については、用途に応じた総厚みになるように適宜調整すれば良い。また、必要に応じて、接着層を設ける前にコロナ処理、プラズマ処理、カップリング処理等の各種表面処理をコアフィルム表面に施しても良い。
本発明にかかるフレキシブル金属張積層板は、上記接着フィルムに金属箔を貼り合わせることにより得られる。使用する金属箔としては特に限定されるものではないが、電子機器・電気機器用途に本発明のフレキシブル金属張積層板を用いる場合には、例えば、銅若しくは銅合金、ステンレス鋼若しくはその合金、ニッケル若しくはニッケル合金(42合金も含む)、アルミニウム若しくはアルミニウム合金からなる箔を挙げることができる。一般的なフレキシブル金属張積層板では、圧延銅箔、電解銅箔といった銅箔が多用されるが、本発明においても好ましく用いることができる。なお、これらの金属箔の表面には、防錆層や耐熱層あるいは接着層が塗布されていてもよい。
本発明において、上記金属箔の厚みについては特に限定されるものではなく、その用途に応じて、十分な機能が発揮できる厚みであればよい。
上記接着フィルムと金属箔とを貼り合わせて、本発明にかかるフレキシブル金属張積層板を得るためには一対以上の金属ロールを有する熱ロールラミネート装置を用いる。加熱加圧成形装置としては、他にダブルベルトプレス(DBP)が挙げられるが、装置構成が単純であり保守コストの面で有利であるという点から、一対以上の金属ロールを有する熱ロールラミネート装置を用いる。ここでいう「一対以上の金属ロールを有する熱ロールラミネート装置」とは、材料を加熱加圧するための金属ロールを少なくとも一対有している装置のことを示す。
上記熱ラミネートを実施する際には、得られる積層板の外観を良好なものとするために、加圧面と金属箔との間に保護材料を配置する。保護材料としては、熱ラミネート工程の加熱温度に耐えうるものであれば良く、非熱可塑性ポリイミドフィルム等の耐熱性プラスチック、銅箔、アルミニウム箔、SUS箔等の金属箔等が挙げられるが、中でも、耐熱性、リサイクル性等のバランスが優れる点から、非熱可塑性ポリイミドフィルムを用いる。また、厚みが薄いとラミネート時の緩衝ならびに保護の役目を十分に果たさなくなるため、非熱可塑性ポリイミドフィルムの厚みは75μm以上であることが好ましい。
前述の通り、熱ラミネート法は張力に由来する熱応力が発生するため、得られるフレキシブル金属張積層板に寸法変化が発生する。本発明の製造方法では、ラミネート直前に接着フィルムならびに金属箔を加熱ロールに接触させて張力を打ち消した後、ラミネートを行うため、寸法変化の発生が抑制されたフレキシブル金属張積層板が得られる。上記被積層材料を加熱ロールに接触させる手段としては、パスラインを調整して被積層材料を加熱ロールに抱かせるようにする方法、加熱ロール付近に仮圧着ロールを配置して被積層材料を加熱ロールに抱かせるようにする方法等が挙げられる。被積層材料を加熱ロールに接触させる時間は0.2〜2秒の範囲であることが好ましく、0.5〜1秒の範囲であることが更に好ましい。接触時間が上記範囲よりも短い場合、張力を十分に打ち消すことが出来ず、寸法変化の発生を抑制する効果が不十分となる可能性がある。逆に接触時間が上記範囲よりも長い場合、接着フィルムが熱融着性を発現し、ラミネート前に接着フィルムと金属箔とが部分的に接着してしまうため、積層板の外観が悪化し、寸法変化の発生も抑制できなくなる可能性がある。
仮圧着ロールの径や設置位置は、加熱ロールや装置全体のサイズにより適宜設定すれば良く、特に限定されないが、上記のように被積層材料が加熱ロールに0.2〜2秒、好ましくは0.5〜1秒の範囲で接触するようにする。また、仮圧着ロールは加熱ロールに近い位置に配置されるため、加熱ロールの熱の影響を受けやすい。従って、接着フィルムが貼り付くことを防ぐため、仮圧着ロールにはできるだけ熱伝導度の低い材質を用いることが好ましい。場合によっては、接着フィルム搬送時に支障が生じない温度以下に保つための冷却機構を仮圧着ロールに設けても良い。
また、ラミネート直後は積層板は非常に高温となっており、ラミネート前と同様に、張力の影響を受けやすい。そのため、ラミネート後すぐに加熱ロールから離すと、張力による熱応力が発生して寸法特性が悪化する可能性がある。従って、ラミネート直後の保護材料/フレキシブル金属張積層板/保護材料から成る積層体を加熱ロールに接触させ、張力の影響を受けないようにしたままある程度徐冷し、その後加熱ロールから離すようにした方が好ましい。接触時間は0.5〜5秒の範囲とすることが好ましく、1〜3秒の範囲とすることが更に好ましい。接触時間が上記範囲より短い場合、積層体の温度がほとんど低下せず、張力の影響を受けて寸法特性が悪化する可能性がある。逆に接触時間が上記範囲より長い場合、接着層が無圧のまま溶融性を保持している時間が長くなるため、積層板の外観が悪化する可能性がある。
本発明の製造方法におけるラミネート温度は非常に高温であり、室温との差が大きい。そのため、ラミネート後に材料の温度が十分に下がりきらないうちに保護材料を剥離すると、保護材料で保持されていない状態で積層板が急冷されて急激な収縮を起こし、外観ならびに寸法変化が悪化する。従って、ラミネート後は積層板に保護材料を密着させて固定したまま冷却し、ある程度積層板の温度が低下した時点で保護材料を剥離するようにする。保護材料を積層板から剥離するタイミングは、積層板の温度が接着層のガラス転移温度+50℃以下となった時点が好ましく、接着層のガラス転移温度+20℃以下となった時点がより好ましい。積層板が上記温度まで低下する前に保護材料を剥離すると、外観や寸法変化が悪化する可能性がある。
また、ラミネート温度が非常に高温であるため、保護材料をそのままラミネートに用いると、急激な熱膨張により積層板の外観や寸法安定性を悪化させる可能性がある。従って、ラミネート前に保護材料に予備加熱を施したほうが好ましい。予備加熱の手段としては、保護材料を加熱ロールに抱かせるなどして接触させる方法が挙げられる。接触時間としては1秒以上が好ましく、更に好ましくは10秒以上接触させることが好ましい。保護材料の予備加熱を行うことにより、ラミネートする際には保護材料の熱膨張が終了しているため、積層板の外観や寸法変化に影響を与えることが抑制される。接触時間が上記よりも短い場合、保護材料の熱膨張が終了しないままラミネートが行われるため、ラミネート時に急激な熱膨張が起こり、得られる積層板の外観や寸法変化が悪化する可能性がある。保護材料を加熱ロールに抱かせる距離については特に限定されず、ロールの径と上記接触時間から適宜調整すれば良い。
上記熱ラミネート手段における被積層材料の加熱方式は特に限定されるものではなく、例えば、熱循環方式、熱風加熱方式、誘導加熱方式等、所定の温度で加熱し得る従来公知の方式を採用した加熱手段を用いることができる。同様に、上記熱ラミネート手段における被積層材料の加圧方式も特に限定されるものではなく、例えば、油圧方式、空気圧方式、ギャップ間圧力方式等、所定の圧力を加えることができる従来公知の方式を採用した加圧手段を用いることができる。
上記熱ラミネート工程における加熱温度、すなわちラミネート温度は、接着フィルムのガラス転移温度(Tg)+50℃以上の温度であることが好ましく、接着フィルムのTg+100℃以上がより好ましい。Tg+50℃以上の温度であれば、接着フィルムと金属箔とを良好に熱ラミネートすることができる。またTg+100℃以上であれば、ラミネート速度を上昇させてその生産性をより向上させることができる。
上記熱ラミネート工程におけるラミネート速度は、0.5m/分以上であることが好ましく、1.0m/分以上であることがより好ましい。0.5m/分以上であれば十分な熱ラミネートが可能になり、1.0m/分以上であれば生産性をより一層向上することができる。
上記熱ラミネート工程における圧力、すなわちラミネート圧力は、高ければ高いほどラミネート温度を低く、かつラミネート速度を速くすることができる利点があるが、一般にラミネート圧力が高すぎると得られる積層板の寸法変化が悪化する傾向がある。また、逆にラミネート圧力が低すぎると得られる積層板の金属箔の接着強度が低くなる。そのためラミネート圧力は、49〜490N/cm(5〜50kgf/cm)の範囲内であることが好ましく、98〜294N/cm(10〜30kgf/cm)の範囲内であることがより好ましい。この範囲内であれば、ラミネート温度、ラミネート速度およびラミネート圧力の三条件を良好なものにすることができ、生産性をより一層向上することができる。
ラミネート時の接着層付き金属箔の張力は、0.1〜200N/cm、さらには1〜100N/cm、特には5〜50N/cmが好ましい。張力がこの範囲を下回ると、搬送時にたるみ等が生じるため、外観の良好なフレキシブル金属張積層板を得ることが困難となる場合があり、またこの範囲を上回ると、弾性率の高い金属箔でも張力の影響が大きくなるため、寸法安定性が劣る傾向にある。
また、ラミネート時の接着フィルム張力は、0.01〜2N/cm、さらには0.02〜1.5N/cm、特には0.05〜1.0N/cmが好ましい。張力がこの範囲を下回ると、搬送時にたるみ等が生じるため、外観の良好なフレキシブル金属張積層板を得ることが困難となる場合があり、またこの範囲を上回ると、接着フィルムがMD方向に強く引っ張られた状態でラミネートが行われることになり、得られるフレキシブル金属張積層板の寸法安定性が劣る傾向にある。
本発明にかかるフレキシブル金属張積層板を得るためには、連続的に被積層材料を加熱しながら圧着する熱ラミネート装置を用いることが好ましいが、この熱ラミネート装置では、熱ラミネート手段の前段に、被積層材料を繰り出す被積層材料繰出手段を設けてもよいし、熱ラミネート手段の後段に、被積層材料を巻き取る被積層材料巻取手段を設けてもよい。これらの手段を設けることで、上記熱ラミネート装置の生産性をより一層向上させることができる。上記被積層材料繰出手段および被積層材料巻取手段の具体的な構成は特に限定されるものではなく、例えば、接着フィルムや金属箔、あるいは得られる積層板を巻き取ることのできる公知のロール状巻取機等を挙げることができる。
さらに、保護材料を巻き取ったり繰り出したりする保護材料巻取手段や保護材料繰出手段を設けると、より好ましい。これら保護材料巻取手段・保護材料繰出手段を備えていれば、熱ラミネート工程で、一度使用された保護材料を巻き取って繰り出し側に再度設置することで、保護材料を再使用することができる。また、保護材料を巻き取る際に、保護材料の両端部を揃えるために、端部位置検出手段および巻取位置修正手段を設けてもよい。これによって、精度よく保護材料の端部を揃えて巻き取ることができるので、再使用の効率を高めることができる。なお、これら保護材料巻取手段、保護材料繰出手段、端部位置検出手段および巻取位置修正手段の具体的な構成は特に限定されるものではなく、従来公知の各種装置を用いることができる。
本発明にかかる製造方法により得られるフレキシブル金属張積層板においては、エッチングにより金属箔の少なくとも一部を除去する前後の寸法変化率が±0.04%の範囲内にあることが非常に好ましい。金属箔除去前後の寸法変化率は、エッチング工程前のフレキシブル金属張積層板における所定の寸法およびエッチング工程後の所定の寸法の差分と、上記エッチング工程前の所定の寸法との比で表される。
寸法変化率がこの範囲内から外れると、フレキシブル金属張積層板において、微細な配線を形成した後、ならびに部品搭載時の寸法変化が大きくなってしまい、設計段階での部品搭載位置からずれることになる。その結果、実装する部品と基板とが良好に接続されなくなるおそれがある。換言すれば、寸法変化率が上記範囲内であれば、部品搭載に支障がないと見なすことが可能になる。
上記寸法変化率の測定方法は特に限定されるものではなく、フレキシブル金属張積層板において、エッチング工程の前後に生じる寸法の増減を測定できる方法であれば、従来公知のどのような方法でも用いることができる。
ここで、寸法変化率の測定は、MD方向、TD方向の双方について測定することが必須となる。連続的にイミド化ならびにラミネートする場合、MD方向およびTD方向では張力のかかり方が異なるため、熱膨張・収縮の度合いに差が現れ、寸法変化率も異なる。従って、寸法変化率の小さい材料では、MD方向およびTD方向の双方ともに変化率が小さいことが要求される。本発明においては、フレキシブル金属張積層板の、金属箔を除去する前後の寸法変化率が、MD方向、TD方向共に±0.04%の範囲にあることが非常に好ましい。
なお、寸法変化率を測定する際のエッチング工程の具体的な条件は特に限定されるものではない。すなわち、金属箔の種類や形成されるパターン配線の形状等に応じてエッチング条件は異なるので、本発明において寸法変化率を測定する際のエッチング工程の条件は従来公知のどのような条件であってもよい。
本発明にかかる製造方法によって得られるフレキシブル金属張積層板は、前述したように、金属箔をエッチングして所望のパターン配線を形成すれば、各種の小型化、高密度化された部品を実装したフレキシブル配線板として用いることができる。もちろん、本発明の用途はこれに限定されるものではなく、金属箔を含む積層体であれば、種々の用途に利用できることはいうまでもない。
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されるものではない。
なお、合成例、実施例及び比較例における熱可塑性ポリイミドのガラス転移温度、フレキシブル積層板の寸法変化率、金属箔引き剥し強度の評価法は次の通りである。
(ガラス転移温度)
ガラス転移温度は、セイコーインスツルメンツ社製 DMS200により、昇温速度3℃/分にて、室温から400℃までの温度範囲で測定し、貯蔵弾性率の変曲点をガラス転移温度とした。
(寸法変化率)
JIS C6481に基づいて、フレキシブル積層板に4つの穴を形成し、各穴のそれぞれの距離を測定した。次に、エッチング工程を実施してフレキシブル積層板から金属箔を除去した後に、20℃、60%RHの恒温室に24時間放置した。その後、エッチング工程前と同様に、上記4つの穴について、それぞれの距離を測定した。金属箔除去前における各穴の距離の測定値をD1とし、金属箔除去後における各穴の距離の測定値をD2として、次式によりエッチング前後の寸法変化率を求めた。
寸法変化率(%)={(D2−D1)/D1}×100
なお、上記寸法変化率は、MD方向及びTD方向の双方について測定した。
(金属箔の引き剥がし強度:接着強度)
JIS C6471の「6.5 引きはがし強さ」に従って、サンプルを作製し、5mm幅の金属箔部分を、180度の剥離角度、50mm/分の条件で剥離し、その荷重を測定した。
(合成例1;熱可塑性ポリイミド前駆体の合成)
容量2000mlのガラス製フラスコにDMFを780g、2,2−ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕プロパン(以下、BAPPともいう。)を115.6g加え、窒素雰囲気下で攪拌しながら、BPDAを78.7g徐々に添加した。続いて、TMEGを3.8g添加し、氷浴下で30分間撹拌した。2.0gのTMEGを20gのDMFに溶解させた溶液を別途調製し、これを上記反応溶液に、粘度に注意しながら徐々に添加、撹拌を行った。粘度が3000poiseに達したところで添加、撹拌をやめ、ポリアミド酸溶液を得た。
得られたポリアミド酸溶液を25μmPETフィルム(セラピールHP,東洋メタライジング社製)上に最終厚みが20μmとなるように流延し、120℃で5分間乾燥を行った。乾燥後の自己支持性フィルムをPETから剥離した後、金属製のピン枠に固定し、150℃で5分間、200℃で5分間、250℃で5分間、350℃で5分間乾燥を行い、単層シートを得た。この熱可塑性ポリイミドのガラス転移温度は240℃であった。
(実施例1〜2)
合成例1で得られたポリアミド酸溶液を固形分濃度10重量%になるまでDMFで希釈した後、17μm厚のポリイミドフィルム(アピカルHPP,鐘淵化学工業社製)の両面に、熱可塑性ポリイミド層(接着層)の最終片面厚みが4μmとなるようにポリアミド酸を塗布した後、140℃で1分間加熱を行った。続いて、雰囲気温度390℃の遠赤炉の中を20秒間通して加熱イミド化を行って、接着フィルムを得た。得られた接着フィルムの両側に18μm圧延銅箔(BHY−22B−T,ジャパンエナジー社製)を、さらに銅箔の両側に保護材料(アピカル125NPI;鐘淵化学工業株式会社製)を図1に示すように配して、接着フィルム張力0.4N/cm、銅箔張力15N/cm、ラミネート温度360℃、ラミネート圧力196N/cm(20kgf/cm)、ラミネート速度1.5m/分の条件で連続的に熱ラミネートを行い、本発明にかかるフレキシブル金属張積層板を作製した。
(実施例3〜4)
実施例1と同様にして得られた接着フィルムの両側に18μm圧延銅箔(BHY−22B−T,ジャパンエナジー社製)を、さらに銅箔の両側に保護材料(アピカル125NPI;鐘淵化学工業株式会社製)を図2に示すように配して、接着フィルム張力0.4N/cm、銅箔張力15N/cm、ラミネート温度360℃、ラミネート圧力196N/cm(20kgf/cm)、ラミネート速度1.5m/分の条件で連続的に熱ラミネートを行い、本発明にかかるフレキシブル金属張積層板を作製した。
(実施例5〜6)
実施例1と同様にして得られた接着フィルムの両側に18μm圧延銅箔(BHY−22B−T,ジャパンエナジー社製)を、さらに銅箔の両側に保護材料(アピカル125NPI;鐘淵化学工業株式会社製)を図3に示すように配して、接着フィルム張力0.4N/cm、銅箔張力15N/cm、ラミネート温度360℃、ラミネート圧力196N/cm(20kgf/cm)、ラミネート速度1.5m/分の条件で連続的に熱ラミネートを行い、本発明にかかるフレキシブル金属張積層板を作製した。
(比較例1〜3)
実施例1と同様にして得られた接着フィルムの両側に18μm圧延銅箔(BHY−22B−T,ジャパンエナジー社製)を、さらに銅箔の両側に保護材料(アピカル125NPI;鐘淵化学工業株式会社製)を図4に示すように配して、接着フィルム張力0.4N/cm、銅箔張力15N/cm、ラミネート温度360℃、ラミネート圧力196N/cm(20kgf/cm)、ラミネート速度1.5m/分の条件で連続的に熱ラミネートを行い、フレキシブル金属張積層板を作製した。
各実施例、比較例でのラミネート条件ならびに得られたフレキシブル金属張積層板の特性を評価した結果を表1に示す。
Figure 2005166849
比較例1〜比較例3に示すように、ラミネート直前に被積層材料を加熱ロールに接触させなかった場合、張力を下げてラミネートを行っても材料に熱応力が加わり、エッチング後の寸法変化に劣る結果となった。これに対し、ラミネート直前に被積層材料を加熱ロールに接触させた実施例1〜4では、張力の影響を受けにくくなり、良好な寸法安定性が確認された。また、被積層材料を予熱したことによる接着強度の低下は確認されなかった。さらにラミネート直後も被積層材料を加熱ロールに接触させた実施例5〜6では、より良好な寸法安定性が確認された。
実施例1〜2で用いた熱ラミネート装置を示す図である。 実施例3〜4で用いた熱ラミネート装置を示す図である。 実施例5〜6で用いた熱ラミネート装置を示す図である。 比較例1〜3で用いた熱ラミネート装置を示す図である。
符号の説明
1 接着フィルム繰り出し
2 銅箔繰り出し
3 保護材料繰り出し
4 加熱加圧ロール
5 保護材料巻取り
6 フレキシブル金属張積層板巻取り
7 仮圧着ロール

Claims (6)

  1. 少なくとも片面に、熱可塑性ポリイミドを含有する接着層を設けた接着フィルムと金属箔とを、一対以上の金属ロールを有する熱ロールラミネート装置により貼り合わせてなるフレキシブル金属張積層板の製造方法であって、該装置の加熱ロールと被積層材料との間にポリイミドフィルムからなる保護材料を加熱ロールの一部を覆う形で配し、更に加熱加圧する前に接着フィルムならびに金属箔をあらかじめ加熱ロールに接触させたのちラミネートを行い、冷却後に積層体から保護材料を剥離することを特徴とする、フレキシブル金属張積層板の製造方法。
  2. 接着フィルムならびに金属箔が、加熱ロールに0.2〜2秒の範囲で接触していることを特徴とする、請求項1記載のフレキシブル金属張積層板の製造方法。
  3. ラミネート後、保護材料とフレキシブル金属張積層板が密着している積層体を、加熱ロールに0.5〜5秒の範囲で接触させた後、冷却して積層体から保護材料を剥離することを特徴とする、請求項1または2に記載のフレキシブル金属張積層板の製造方法。
  4. 保護材料をラミネート前に加熱ロールに1秒以上接するように配していることを特徴とする、請求項1乃至3に記載のフレキシブル金属張積層板の製造方法。
  5. 請求項1乃至4に記載の製造方法により得られる、フレキシブル金属張積層板。
  6. エッチングにより金属箔の少なくとも一部を除去する前後の寸法変化率が±0.04%の範囲内にあることを特徴とする、請求項5に記載のフレキシブル金属張積層板。
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