JP2005163151A - 三次元スパッタ成膜装置並びに方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】 複雑な立体構造をもつ各種の機械部品やプラスチックボトルなどの基材の表面に、これの回転や移動をさせることなく、一組のスパッタ源から三次元的に高速かつ均一に薄膜を形成し得る新規な三次元高速スパッタ法を提供する。
【解決手段】 不活性ガスが導入される真空チャンバー2内に高周波アンテナコイル5を配置し、このアンテナコイル5を挟み込むように環状スパッタターゲット10をアンテナコイル5の両側に近接配置し、高周波アンテナコイル5に高周波電力を供給することにより真空チャンバー2内に誘導結合型高周波放電プラズマを発生させるとともに、ターゲット10にスパッタ用の直流電力を供給することによりターゲットをスパッタ蒸発させ、該高周波アンテナコイル5内のスパッタ空間に、表面が三次元形状を有する基材Sを投入して、該基材Sの表面に堆積膜を形成する。
【選択図】 図1
【解決手段】 不活性ガスが導入される真空チャンバー2内に高周波アンテナコイル5を配置し、このアンテナコイル5を挟み込むように環状スパッタターゲット10をアンテナコイル5の両側に近接配置し、高周波アンテナコイル5に高周波電力を供給することにより真空チャンバー2内に誘導結合型高周波放電プラズマを発生させるとともに、ターゲット10にスパッタ用の直流電力を供給することによりターゲットをスパッタ蒸発させ、該高周波アンテナコイル5内のスパッタ空間に、表面が三次元形状を有する基材Sを投入して、該基材Sの表面に堆積膜を形成する。
【選択図】 図1
Description
本発明は、複雑な立体構造をもつ金属加工物やプラスチック容器などの基材の表面に、金属などの種々の成膜材料からなる薄膜を三次元的に高速かつ均一に成膜するための三次元スパッタ成膜装置、並びに、三次元スパッタ成膜方法に関する。
プレナー型マグネトロンスパッタ法をはじめとする各種のスパッタ法による成膜技術は超微細加工技術や高度な表面処理技術の分野を中心に益々重要になってきている。このために従来型の各種スパッタ法を改良する他、種々の機能を付加した高性能なスパッタ法が開発されている。
例えば、平板ターゲットを用いた従来型のマグネトロンスパッタ装置のスパッタ空間に高周波コイルを設置して動作ガス圧力の下限を引き下げたり、スパッタ粒子のイオン化の割合を高めることがなされている。
また、二つの平板スパッタターゲットを対向させ、これに垂直方向の磁界を作用させて強磁性体の高速スパッタをも可能にした対向ターゲット型高速スパッタ装置が開発され、実用化している。
しかしながら、これらの高速スパッタ法では、スパッタ速度を高めるためにターゲットに密接して特別な構造を持つ磁石を配置する必要があるのでターゲット周辺部の構造が非常に複雑大型になる。しかもスパッタターゲットがプラズマを発生させるための放電電極(陰極)を兼ねているのでその形状と配置に大幅な制約がある。
これらの問題を改善するために誘導結合型高周波放電によってターゲット近傍に予め高密度プラズマを発生させるようにした高速スパッタ装置が開発され、非特許文献1に開示されている。
高周波放電プラズマを利用した高速スパッタ装置、山下睦雄:日本真空協会誌「真空」、Vol.44,No5,(2001)512〜519頁
高周波放電プラズマを利用した高速スパッタ装置、山下睦雄:日本真空協会誌「真空」、Vol.44,No5,(2001)512〜519頁
しかしながらこれまでに開発されている各種高速スパッタ装置では、スパッタ粒子がある程度の方向性(指向性)をもっている。
したがって、平面(二次元)構造をもつ基板表面への成膜には適しているが、凹凸の激しい表面や立体(三次元)構造をもつ基板、例えばプラスチックボトル、球形基板やボルトネジの全面に均一な膜厚で同時に高速成膜することは殆どできない。
このような立体構造をもつ基板表面にスパッタ法による成膜を行う方法として、従来、複数組のスパッタ源を基板の周辺に用意するか、あるいは、基板を回転運動させたり移動させるか、さらにはこれら両者を組み合わせた大掛かりで複雑な機構を設けることが考えられているが、装置の構成が複雑且つ大型で、高価となるだけでなく、その操作性や生産性においても難点がある。
そこで、本発明は、固定した一組のスパッタ源によって、立体構造をもつ基材に対して、これを回転運動や移動をさせることなく、全面にわたって均一かつ高速に成膜し得る三次元スパッタ成膜装置ならびに方法を提供することを目的とする。
本発明は、上記目的を達成するために、次の技術的手段を講じた。
即ち、本発明の三次元スパッタ成膜装置は、真空チャンバーと、真空チャンバー内を所定圧力に保持すべく真空チャンバー内のガスを排気する排気管と、真空チャンバー内に誘導結合型高周波放電プラズマを発生させるべく真空チャンバー内に配置される高周波アンテナコイルと、該高周波アンテナコイルの軸方向両側にそれぞれ配置される環状のスパッタターゲットと、前記高周波アンテナコイルに高周波電力を供給するプラズマ励起用電源装置と、前記スパッタターゲットに直流電力若しくは高周波電力を供給するスパッタ用電源装置と、成膜を行う三次元表面を有する基材に直流若しくは高周波バイアス電圧を印加する基材用バイアス電源装置とを備え、高周波アンテナコイル内の空間に前記基材が配置されるものである。
また、本発明の三次元スパッタ成膜方法は、真空チャンバー内に高周波アンテナコイルを配置するとともに、該高周波アンテナコイルの軸方向両側に環状のスパッタターゲットをそれぞれ配置し、前記高周波アンテナコイルに高周波電力を供給することにより真空チャンバー内に誘導結合型高周波放電プラズマを発生させ、前記スパッタターゲットに直流電力若しくは高周波電力を供給することにより該ターゲットをスパッタし、高周波アンテナコイル内の空間に表面が三次元形状を呈する基材を投入して、該基材に直流若しくは高周波バイアス電圧を印加することにより、高周波アンテナコイル内に生じるプラズマ中で、前記ターゲットからのスパッタ粒子を基材の三次元表面に堆積させて堆積膜を形成するものである。
高周波アンテナコイルとしては円形コイルを好適に採用でき、その他、スパッタ空間の周りを立体的に取り囲むように湾曲させたコイルを用いることも可能である。円形コイルの巻数は、要求されるプラズマ密度が得られれば特に限定されるものではないが、巻数3〜8程度が好適である。高周波アンテナコイルの材質としては、アルミニウム、銅若しくはカーボンなどの適宜の材料を採用できる。この高周波アンテナコイルは真空チャンバー内に設置されるためにプラズマに接するが、コイルの表面近傍にはイオンシースが生じ、これによってコイルの各巻線間やコイル−接地間の電気的絶縁を直流的にも高周波的にも保つことが可能である。また、高周波アンテナコイルそれ自体、インピーダンス整合回路を構成する。なお、高周波アンテナコイルを管状部材によって形成すれば、該コイル内に冷媒を流通させることでコイルを冷却させることが可能である。環状スパッタターゲットは、必ずしも全周にわたって連続している必要はなく、周方向に複数のターゲットを配置することにより全体として環状に構成されていればよい。
プラズマ励起用電源装置は、高周波アンテナコイルに高周波電力を供給し、これによりスパッタ空間に高密度の誘導結合型高周波放電プラズマを発生させるためのものである。この電源装置の発信周波数は4MHz〜50MHz、最大出力1kW〜3kW程度とすることができ、スパッタによる成膜中にアンテナコイルに入射する電力は、放電ガスの種類、真空チャンバーの構造や大きさ、高周波アンテナコイルの特性などによって適宜のものとすることができる。
基材の三次元表面の形状は適宜のものであってよく、プラスチックボトルのように周面並びに底面を有するもの、管や棒のように周面を有するものの他、山形状のもの、凹凸溝を有する板状部材、ネジ溝を有するボルトなどを挙げることができる。
上記本発明装置及び方法において、高周波アンテナコイルは少なくとも一対設けることができ、該対の高周波アンテナコイルを離間して対向配置することができる。環状スパッタターゲットは、対の高周波アンテナコイルの軸方向両側に配置するのがよい。基材は、対の高周波アンテナコイルの間の空間に配置するのが好ましい。これによれば、プラズマ発生源として真空チャンバー内に設けられる対の高周波アンテナコイルを採用し、この対の高周波アンテナコイルに各々高周波電力を供給することによってプラズマを励起することで、プラズマの高密度化が図られるとともに、三次元形状の基材を収容可能な大きな空間を真空チャンバーの中央部に設けることができ、かつ、この収容空間がスパッタ空間となり、該スパッタ空間にプラズマを集約させることが可能となり、プラズマの高密度化による成膜速度の高速化、広い範囲にわたってプラズマ密度を均一化することによる薄膜の高品質化を図ることができる。また、対の高周波アンテナコイルに印加する高周波電圧の位相を互いに180度変えることにより、真空チャンバー内のプラズマ密度を大幅に増加させることができる。また、両コイルに印加する高周波電圧の値を独立して変えることができ、これによれば、真空チャンバー内のプラズマ密度の分布を変えることができ、成膜速度の向上と同時に膜厚分布の制御をも行うことができる。また、ガス供給管をアンテナコイルとほぼ同径のリング状のガス導入配管により構成し、このガス導入配管を各高周波アンテナコイルの軸方向内側にそれぞれ近接配置し、リング状ガス供給管の周方向複数箇所に、高周波アンテナコイルと環状ターゲットに向けて不活性ガスを供給するガス供給孔を設けることもできる。ガス供給孔は、0.5mm程度の微小孔により構成するのがよい。
また、前記高周波アンテナコイル自体が成膜材料からなるコイルスパッタターゲットであるか若しくは高周波アンテナコイルの径方向内周側に沿って成膜材料からなるコイルスパッタターゲットを取り付け、該コイルスパッタターゲットに高周波電力と直流電力とを同時に供給するようにしてもよい。これによって、環状ターゲットのみ、またはコイルターゲットのみをスパッタするか、あるいは、これら両ターゲットを同時にスパッタすることができる。また、コイルスパッタターゲットの材料は、上記環状スパッタターゲットと同じであってもよく、異なる材料とすることもできる。これらターゲットの材質を異なるものとすれば、同時二元立体スパッタを行わせることができる。
また、前記環状スパッタターゲットに近接して該ターゲットの外面側を覆うようにプラズマ遮蔽電極を配設することが好ましく、これによれば、スパッタターゲットの外面側がスパッタされることを抑制するとともに、プラズマを環状スパッタターゲットの内部に閉じこめ、プラズマの高密度化、スパッタ成膜の高速化を図ることができる。
また、基材が配置されるスパッタ空間に、前記高周波アンテナコイルの軸心に対して平行又は垂直方向の直流磁界を印加する磁界印加装置をさらに備えていてもよい。これによって放電特性、即ちスパッタ特性の大幅な改善を図ることができる。
また、基材は棒状乃至線状の長尺部材であってよく、該基材を高周波アンテナコイルの軸心に沿って連続移送させる移送装置をさらに備えることができる。これによれば、該長尺の基材の外周面に長手方向に連続してスパッタ法によって高速に薄膜を形成することが可能である。
また、基材を、高周波アンテナコイル内のスパッタ空間、又は、対の高周波アンテナコイルの間のスパッタ空間に支持する基材支持部材を備えることができる。この支持部材は、基材をスパッタ空間に投入し及び該空間から離脱させるように往復動可能に構成することができる。これによれば、三次元形状の基材を容易にスパッタ空間に設置させることができ、成膜後も容易に取り出すことが可能となる。さらに、プラズマが安定した後に該プラズマ中に基材を投入することが可能となり、形成される薄膜の均質性の一層の向上に役立つ。
本発明によれば、高周波アンテナコイルの内部に三次元形状の基材を収容可能な大きな空間を設けることができ、かつ、この収容空間にプラズマを集約させることが可能となり、プラズマの高密度化による成膜速度の高速化、広い範囲にわたってプラズマ密度を均一化することによる薄膜の高品質化を図ることができる。また、一組のスパッタ源から複雑な三次元立体構造を持つ基材の全面に亘って膜厚が均一な薄膜を形成することができるので、装置を小型で簡単な構造にすることができ、しかも、基材の周囲で発生する高密度スパッタ粒子が基材に向かって集中しながら飛翔するので、成膜速度と成膜材料の利用効率を大幅に向上することができる。また、対の環状スパッタターゲットの間で起きる相乗効果によってスパッタ速度だけでなくスパッタ粒子のイオン化割合がより一層高くなるので、高速イオンプレーティングによる高品質の薄膜を得ることが可能となる。したがって、本発明は、研究用のみならず、大型生産用装置としても多方面へ応用することができる。
さらに、本発明は、一組のスパッタ源から平面基板表面はもとより複雑な立体構造をもつ基材の表面にこれの回転運動や移動をさせることなく金属薄膜や化合物薄膜を低温で高速且つ均一に成膜することを可能にする。これによって、金属やガラス製の各種加工製品の表面処理だけでなく加工性に優れたプラスチックその他適宜の材料からなる容器の外表面の耐気性、耐水性を確保するための処理が可能になる。したがって、例えば、ビールや炭酸飲料用プラスチックボトルや薬剤容器、並びに、今後莫大な需要が期待されているバイオ新薬用容器のバリア性向上への応用が大いに期待できる。
以下、本発明の好適な実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は本発明の一実施形態に係る三次元スパッタ成膜装置1を示し、該装置1は、真空チャンバー2と、該真空チャンバー2内にアルゴンガスなどのプラズマ発生用の不活性ガス(放電サポートガス)等を供給するガス供給管3と、真空チャンバー2内を所定圧力に保持するべく真空チャンバー2内のガスを排気する排気管4と、真空チャンバー2内に誘導結合型高周波放電プラズマを発生させるべく真空チャンバー2内に配置される高周波アンテナコイル5と、該高周波アンテナコイル5に高周波電力を供給するプラズマ励起用電源装置6と、高周波アンテナコイル5によって発生されたプラズマ中に球状やボトル状などの適宜の立体構造を有する基材Sを支持する基材支持部材7と、プラズマ遮蔽電極8と、基材Sに直流若しくは高周波バイアス電圧を印加する基材用バイアス電源装置9と、高周波アンテナコイル5の軸方向両側にそれぞれ配置される環状のスパッタターゲット10と、該スパッタターゲット10に直流電力若しくは高周波電力を供給するスパッタ用電源装置11とを備えている。
真空チャンバー2は、例えば直径300mmの円筒状を呈しており、金属、例えばステンレス鋼からなり、接地されている。ガス供給管3は、真空チャンバー2に付設したガスタンクから真空チャンバー2へサポートガスを導入するガス供給系を構成するものであり、その管構成は適宜のものであってよい。図示実施例では、ガス供給管3は、高周波アンテナコイル5の軸方向一方側で真空チャンバー2に開口形成されてなる。排気管4は真空ポンプに接続されており、真空チャンバー2内を真空吸引することにより、成膜中のチャンバー内の放電ガス圧力を0.05Pa〜20Pa程度の真空度とすることができるようになっている。
プラズマ励起用の高周波アンテナコイル5は、例えば銅製のパイプを螺旋状に加工してなる。アンテナコイル5は、例えば、直径100mm、巻き数5となるように螺旋状に曲げ加工してなるものとすることができる。なお、アンテナコイル5の内部には冷媒を流通させて、コイル5の冷却を行うことができる。このアンテナコイル5は、これに直流電源装置13によって直流電力を重畳することによりコイルスパッタターゲットともなるものである。また、図2に示すように、アンテナコイル5の径方向内周側に沿って例えばアルミニウム製のコイルスパッタターゲット5aを取り付け、アンテナコイル5を介してコイルスパッタターゲット5aに直流電力を重畳することにより、該ターゲット5aをスパッタすることも可能である。コイルスパッタターゲット5aは、例えば、長尺のアルミニウム板材を螺旋状に加工することにより構成されるものであり、アンテナコイル5の内面に溶接若しくは嵌め込み等の適宜の手段によって取り付けることができる。
プラズマ励起用電源装置6は、周波数13.56MHzの高周波電源装置12と、高周波アンテナコイル5にスパッタ用の直流電圧を供給するための直流電源装置13と、平衡型のインピーダンス整合回路14とを備えており、高周波アンテナコイル5は、インピーダンス整合回路14を介して高周波電源装置12に接続されているとともに、コイルスパッタターゲットをスパッタするときには直流電源装置13に接続される。高周波電源装置12と直流電源装置13との相互干渉を避ける為に、直流電源装置13には、コンデンサ15とインダクター16とで構成される低域フィルター(LPF)を直列に接続してある。直流電源装置13としては、例えば、0V〜−1000Vまで可変の電源を用いることができる。
前記基材支持部材7は、例えばステンレス鋼からなるロッド状部材からなり、プラスチックボトルSを高周波アンテナコイル5内のスパッタ空間に投入し及び該空間から離脱させるように流体圧シリンダなどの適宜の駆動装置によって往復動可能に構成されている。
前記基材用バイアス電源装置9は、直流電源装置17と、高周波電源装置18と、これら電源装置を選択的に切り替えるためのスイッチ19とを備え、基材支持部材7を介して基材Sに、例えば0〜−300Vの所定の直流バイアス電圧、若しくは、周波数13.56MHzの高周波バイアス電圧を選択的に印加し得るように構成されている。なお、高周波電源装置16にはインピーダンス整合回路(マッチングボックス)20を介して接続されるようにしている。なお、直流電源装置17と高周波電源装置18のいずれか一方のみを設けることもできる。
前記環状スパッタターゲット10は、高周波アンテナコイル5の軸方向両端部に近接して、対の環状スパッタターゲット10が対向するように設置されている。この環状スパッタターゲット10の外径は、高周波アンテナコイル5の外径とほぼ等しい100mmとすることができ、ターゲット10の中央部には、堆積膜の膜厚分布を調整するために直径30mmの孔10aが設けられ、これにより環状になっている。なお、基材Sの交換、即ち、真空チャンバー2の外部からスパッタ空間への基材Sの投入と、該基材Sのスパッタ空間からの離脱は、環状スパッタターゲット10の孔10aを通して行えるようになっている。
さらに、環状スパッタターゲット10には、スパッタ空間の中央部(本実施例では高周波アンテナコイル5内の空間の中央部)に向くスパッタ面10bが形成されており、本実施例では、このスパッタ面10bは、孔10aの内側縁部にテーパー面状に加工形成されている。なお、各ターゲット10は従来公知の適宜の手段によって水冷を行うことが好ましい。
前記プラズマ遮蔽電極8は、各環状スパッタターゲット10に近接して該ターゲット10の外面側を覆うように配設されている。これにより、ターゲット10の裏面におけるスパッタを防止すると共に、プラズマの閉じ込め効果を高めている。
前記スパッタ用電源装置11は、直流電源装置21と、高周波電源装置22と、これら電源装置を選択的に切り替えるためのスイッチ23とを備え、例えば0〜−1000Vの直流電圧、若しくは、周波数13.56MHzの高周波電力を環状スパッタターゲット10に供給し得るように構成されている。なお、高周波電源装置22はインピーダンス整合回路24を介して接続されるようにしている。なお、直流電源装置17と高周波電源装置18のいずれか一方のみを設けることもできる。
上記実施形態の装置を用いてプラスチックボトルSの表面に薄膜を成膜するには、まず、真空チャンバー2内を10-4Pa以下に排気した後、真空チャンバー2内にアルゴンガスを導入してそのガス圧力を所定圧力、例えば1Paとなるように調整する。次に、所定の高周波電力、例えば300Wの高周波電力を高周波アンテナコイル5に供給する。すると、真空チャンバー2内に生じる高周波エネルギーによりアルゴンガスの高周波放電が始まり、高周波アンテナコイル5の中で1012/cm3台の高密度プラズマが発生して、アルゴンガス特有の赤紫色で強く発光する。さらに、対の環状スパッタターゲット10に所定の直流電力を供給すると、対の環状スパッタターゲット間でプラズマ電子運動に関する相乗効果が生じてプラズマ密度がさらに増加し、スパッタターゲット10の内側表面で高速スパッタ蒸発が起きる。なお、上記環状スパッタターゲットに、直流電力に代えて高周波電力を供給すると、絶縁材料に対しても高速スパッタができる。
また、プラズマが安定した後、支持部材7を駆動して基材Sを高周波アンテナコイル5内の空間に投入する。上記のようにして発生した高密度のスパッタ粒子は、雰囲気ガス等との衝突によって散乱しながらも、高周波アンテナコイル5内のスパッタ空間に置かれた基材Sに向かって集中するように飛翔し、基材Sの外表面全体に亘って均一に高速で堆積する。この飛翔中にスパッタ粒子は高周波エネルギーによって発生するプラズマ電子やアルゴンイオンとの衝突によるイオン化だけでなく、準安定状態に励起したアルゴン原子からイオン化に必要なエネルギーを受け取ってイオン化するペニング効果によって非常に高い割合でイオン化する。したがって、基材Sを負電位にバイアスすると、これに入射するイオン化スパッタ粒子のエネルギーを制御しながら成膜することができ、より高品質な薄膜形成を行うことができる。
本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、適宜設計変更できる。例えば、直流電源装置13を切り離すと環状スパッタターゲットのみがスパッタされ、また、スパッタ用電源装置21,22を切り離し、環状スパッタターゲットをアース電位にするとコイルスパッタターゲットのみがスパッタされる。さらに、図3に示すように、高周波アンテナコイル5を2つに分割し、該対の高周波アンテナコイル5,5を真空チャンバー内で離間して対向配置させることも可能である。この場合、基材Sは、対の高周波アンテナコイル5,5の間の空間に配置させることができる。また、図示例では、両コイル5,5に印加する高周波電圧の位相を互いに180度変えることによって、スパッタ空間のプラズマ密度の大幅な向上を図っており、これにより、一層の成膜速度の向上が図られる。また、各アンテナコイル5の電源配線を変更することによって、同時点において磁力線の向きが逆方向となるように高周波電源装置12による高周波電圧が各高周波アンテナコイル5に印加されるとともに、磁力線が対の高周波アンテナコイル5,5の中心部に向かうように直流電源装置13によるバイアス電圧が各高周波アンテナコイルに印加されるようにすることもできる。かかる構成によれば、対のアンテナコイル5,5の間の空間では、その両側のアンテナコイル5からの高周波エネルギーが作用して、コイル径よりも大きく広がるようにプラズマが励起される。したがって、より大きな基材Sの三次元表面に対して高周波スパッタによる薄膜形成を均一かつ高速に行うことができる。
また、高周波コイル5内のスパッタ空間、乃至、対の高周波アンテナコイル5、5の間のスパッタ空間に、該コイルの軸心に対して平行又は垂直方向の直流磁界を印加する磁界印加装置をさらに備えることもできる。このような磁界印加装置としては、真空チャンバ2に内蔵若しくは付設される永久磁石や電磁石などを挙げることができる。高周波アンテナコイル5の軸心に対して垂直方向の弱い磁界、好ましくは2×10-4T程度の磁界を重畳することにより、スパッタ空間のプラズマ密度を大幅に増加させると共に動作ガス圧力の下限を10-1Pa台から10-2Pa台へ一桁程度引き下げることが出来る。スパッタ粒子が基材Sの周囲から飛来する本発明のスパッタ方式においては、このようにして動作ガス圧力を引き下げることによって形成される薄膜の膜厚の均一性を損なうことなくスパッタ粒子の輸送効率を高め、成膜速度を大きく向上させることができる。
ガス供給管3から導入されるサポートガスに、メタンガス等の原料ガスや酸素ガスなどを混合すると、スパッタによる成膜と同時に、基材表面でプラズマCVDによる気相成長を行わせることや、反応性スパッタによる金属酸化物等を成膜することも可能である。すなわち、上記実施形態に係る装置は、かかる複合機能により、酸化アルミニウム系薄膜や導電性ダイヤモンド状炭素(DLC:N又はDAC:N)膜などをも成膜可能である。
また、上記実施形態に係る装置1は、棒状乃至線状の長尺部材を基材として、その外周面に長手方向に連続して薄膜を形成することにも応用できる。かかる本発明の他の実施形態は、図4に示されており、上記実施形態と同様の構成については同符号を付して詳細説明を省略し、異なる構成、作用効果について説明する。
本実施形態では、高周波アンテナコイル5の軸心に沿って線状部材S(基材)が連続移送され、真空チャンバー2内を通過する際に、スパッタターゲット10及び/又はコイルターゲット5からのスパッタにより表面に薄膜を高速かつ均一に成膜するように構成されている。線状部材Sは繰り出しドラム25から繰り出されて真空チャンバー2内を通過し、巻き取りドラム26に巻き取られる。これらドラム25,26は適宜の回転駆動手段によって一定速度で回転駆動されるように構成され、これにより基材Sの移送装置が構成される。プラズマ遮蔽板8の中央部には、線状部材Sが通過するための貫通孔8aが設けられている。また、線状部材Sには、真空チャンバー2の内部又は外部の所定位置で基材用バイアス電源装置9の電源出力端子9aに接触され、この接触部を介して線状部材Sにバイアス電圧を印加するようにしている。
1 三次元スパッタ成膜装置
2 真空チャンバー
3 放電サポートガス供給管
4 排気管
5 高周波アンテナコイル
6 プラズマ励起用電源装置
7 基材支持部材
8 プラズマ遮蔽電極
9 基材用バイアス電源装置
10 環状スパッタターゲット
11 スパッタ用電源装置
12 高周波電源装置
13 直流電源装置
2 真空チャンバー
3 放電サポートガス供給管
4 排気管
5 高周波アンテナコイル
6 プラズマ励起用電源装置
7 基材支持部材
8 プラズマ遮蔽電極
9 基材用バイアス電源装置
10 環状スパッタターゲット
11 スパッタ用電源装置
12 高周波電源装置
13 直流電源装置
Claims (16)
- 真空チャンバーと、真空チャンバー内を所定圧力に保持すべく真空チャンバー内のガスを排気する排気管と、真空チャンバー内に誘導結合型高周波放電プラズマを発生させるべく真空チャンバー内に配置される高周波アンテナコイルと、該高周波アンテナコイルの軸方向両側にそれぞれ配置される環状のスパッタターゲットと、前記高周波アンテナコイルに高周波電力を供給するプラズマ励起用電源装置と、前記スパッタターゲットに直流電力若しくは高周波電力を供給するスパッタ用電源装置と、成膜を行う三次元表面を有する基材に直流若しくは高周波バイアス電圧を印加する基材用バイアス電源装置とを備え、高周波アンテナコイル内の空間に前記基材が配置される、三次元スパッタ成膜装置。
- 請求項1において、高周波アンテナコイルは少なくとも一対設けられ、該対の高周波アンテナコイルが離間して対向配置され、前記スパッタターゲットは、対の高周波アンテナコイルの軸方向両側に配置され、基材は、対の高周波アンテナコイルの間の空間に配置される、三次元スパッタ成膜装置。
- 請求項2において、同時点において磁力線の向きが同方向となるように前記高周波電力が高周波アンテナコイルに供給される、三次元スパッタ成膜装置。
- 請求項2において、同時点において磁力線の向きが逆方向となるように前記高周波電力が高周波アンテナコイルに供給される、三次元スパッタ成膜装置。
- 請求項1〜4のいずれか1項において、前記高周波アンテナコイル自体が成膜材料からなるコイルスパッタターゲットであるか若しくは高周波アンテナコイルの径方向内周側に沿って成膜材料からなるコイルスパッタターゲットを取り付け、該コイルスパッタターゲットにプラズマ励起用の高周波電力とこれをスパッタするための直流電力とを同時に供給するようにした、三次元スパッタ成膜装置。
- 請求項1〜5のいずれか1項において、前記スパッタターゲットに近接して該ターゲットの外面側を覆うようにプラズマ遮蔽電極を配設した、三次元スパッタ成膜装置。
- 請求項1〜6のいずれか1項において、基材が配置されるスパッタ空間に、前記高周波アンテナコイルの軸心に対して平行又は垂直方向の直流磁界を印加する磁界印加装置をさらに備える、三次元スパッタ成膜装置。
- 請求項1〜7のいずれか1項において、基材は棒状乃至線状の長尺部材であり、該基材を高周波アンテナコイルの軸心に沿って連続移送させる移送装置をさらに備える、三次元スパッタ成膜装置。
- 真空チャンバー内に高周波アンテナコイルを配置するとともに、該高周波アンテナコイルの軸方向両側に環状のスパッタターゲットをそれぞれ配置し、前記高周波アンテナコイルに高周波電力を供給することにより真空チャンバー内に誘導結合型高周波放電プラズマを発生させ、前記スパッタターゲットに直流電力若しくは高周波電力を供給することにより該ターゲットをスパッタし、高周波アンテナコイル内の空間に表面が三次元形状を呈する基材を投入して、該基材に直流若しくは高周波バイアス電圧を印加することにより、高周波アンテナコイル内に生じるプラズマ中で、前記ターゲットからのスパッタ粒子を基材の三次元表面に堆積させて堆積膜を形成する、三次元スパッタ成膜方法。
- 請求項9において、高周波アンテナコイルは少なくとも一対設けられ、該対の高周波アンテナコイルが離間して対向配置され、前記スパッタターゲットは、対の高周波アンテナコイルの軸方向両側に配置され、基材は、対の高周波アンテナコイルの間の空間に配置される、三次元スパッタ成膜方法。
- 請求項10において、同時点において磁力線の向きが同方向となるように前記高周波電力が高周波アンテナコイルに供給される、三次元スパッタ成膜方法。
- 請求項10において、同時点において磁力線の向きが逆方向となるように前記高周波電力が高周波アンテナコイルに供給される、三次元スパッタ成膜方法。
- 請求項9〜12のいずれか1項において、前記高周波アンテナコイル自体が成膜材料からなるコイルスパッタターゲットであるか若しくは高周波アンテナコイルの径方向内周側に沿って成膜材料からなるコイルスパッタターゲットを取り付け、該コイルスパッタターゲットにプラズマ励起用の高周波電力とこれをスパッタするための直流電力とを同時に供給する、三次元スパッタ成膜方法。
- 請求項9〜13のいずれか1項において、前記環状スパッタターゲットに近接して該ターゲットの外面側を覆うようにプラズマ遮蔽電極を配設する、三次元スパッタ成膜方法。
- 請求項9〜14のいずれか1項において、基材が配置されるスパッタ空間に、前記高周波アンテナコイルの軸心に対して平行又は垂直方向の直流磁界を印加する、三次元スパッタ成膜方法。
- 請求項9〜15のいずれか1項において、基材は棒状乃至線状の長尺部材であり、該基材を高周波アンテナコイルの軸心に沿って連続移送させることにより、該長尺の基材の外周面に長手方向に連続して薄膜を形成する、三次元スパッタ成膜方法。
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