JP2005162516A - 多孔質シリカガラス - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 第1の方向から見た断面が直径2.5mm以下の円形状であり、かつ、前記第1の方向と直交する第2の方向から見た断面が短径1.5mm以下、長径/短径比1.4以上の楕円形状である扁平球状の複数の気泡が、配向性を有し、閉気孔として存在し、気孔率が50%以上80%以下である多孔質シリカガラスを用いる。
【選択図】 図2
Description
図3に、上記のような従来のシリカガラス多孔体の概略断面図を示す。図3に示すように、従来のシリカガラス多孔体においては、通常、気泡形態は、真円度が約1.0、すなわち、ほぼ球状であり、直径がμmオーダーである微小な気泡1’が独立した閉気孔として存在していた。
例えば、特許文献3には、アーク溶融により製造した球状の気泡を包含するシリカガラスを加熱軟化させた後、所定方向に延伸することにより、該方向に配位した楕円球状の気泡を含有するシリカガラスが得られ、このように、気泡を楕円球状とすることにより、均熱効果を高めることができることが記載されている。
また、このようなシリカガラス多孔体を、上記特許文献2に記載されたように、加熱し、加圧、延伸等することにより、球状気泡を楕円球状とした場合、加熱により気泡が破裂するため、目的とする多孔体を得ることは困難であり、たとえ多孔体を得ることができたとしても、高気孔率および十分な強度のものを得ることはできなかった。
前記多孔質シリカガラスは、従来のシリカガラス多孔体よりも大きなmmオーダーの気泡を含有し、かつ、高気孔率であるにもかかわらず、気泡が扁平球状であり、配向性を有していることにより、断熱材等として用いるのに十分な強度を有している。さらに、合成シリカガラスとしての特徴である優れた耐熱性、耐薬品性だけでなく、軽量で、高純度であるという特徴をも備えているものである。
前記気泡含有シリカガラスは、上記のような連通開気孔を有していることにより、高温プロセスにおいて使用する際にも、気泡内部に存在するガスが排出されることもなく、さらに、真空状態で使用される場合においても、気泡破裂による真空破壊のおそれがなく、高温真空プロセスにおいても、耐熱性断熱材等として好適に使用することができる。
このように、配向性を有する気泡による連通開気孔を利用して、ガスまたは液体等の流通量において、異方性を発揮させることが可能であり、本発明に係る気泡含有石英ガラスは、高純度、耐熱性、化学的安定性が要求されるガスや液体のフィルタやミキサー、ガス発生装置用部材等の母材としても、好適に用いることができる。
したがって、前記多孔質シリカガラスは、半導体製造プロセスで用いられる保温材、耐熱断熱材等として、また、高純度、耐熱性、化学的安定性が要求されるガスや液体のフィルタやミキサー、ガス発生装置用部材等の母材として、好適に利用することができる。
図1に、本発明に係る多孔質シリカガラスを第1の方向から見た断面図を示す。また、図2に、前記多孔質シリカガラスを前記第1の方向と直交する第2の方向から見た断面図を示す。
本発明に係る多孔質シリカガラスに含まれる気泡1は、図1に示した第1の方向から見た断面においては、直径2.5mm以下の円形状であり、図2に示した第2の方向から見た断面においては、短径1.5mm以下、長径/短径比1.4以上(好ましくは、1.6以上)の楕円形状である扁平球状の気泡である。そして、前記複数の気泡1は、図1および図2に示したように、配向性を有する閉気孔として存在しており、該多孔質シリカガラスの気孔率は50%以上80%以下である。
ここでいう配向性とは、扁平球状の気泡の長径軸方向および短径軸方向が、いずれの気泡もほぼ同じ方向を向いていることを意味する。
また、前記気泡の形状における円形状、楕円形状とは、図1および図2に示したように、おおよその形状であり、精密な真円状、楕円状に限定されない。
一方、気孔率および気泡径が大きいほど、断熱性は向上するが、強度が低くなる。
したがって、本発明においては、気孔率および気泡径は、断熱性および強度等の観点から、上記範囲内であることが好ましい。
具体的な製造方法は、本発明者らによる特願2003−103582号に記載されている。
例えば、軟化点が1300℃以上1700℃以下のシリカガラスからなり、平均粒子径が50μm以上500μm以下、かつ、粒子の平均円形度(粒子の像と同じ投影面積を持つ円の周囲長を粒子投影像周囲長で除した値)が0.9以上であるシリカガラス粒子を原料として、火炎溶融法により溶融部を1500℃以上に加熱し、前記シリカガラス粒子原料を0.5〜4.0kg/hr程度で供給しながら、ターゲット上に溶融堆積させる。
このような製造方法により、扁平球状の気泡が、配向性を有して形成され、本発明に係る多孔質シリカガラスを得ることができる。
上記製造方法により得られる多孔質シリカガラスは、発泡剤等を添加することなく、シリカガラス粒子を融着させることによりシリカガラス中に気泡を含有させたものであるため、高純度である。
このような気孔の構成により、より高強度の多孔質シリカガラスとすることができる。
図3および図4に示す多孔質シリカガラスは、図1および図2に示したような扁平球状の各気泡1間の薄膜状のシリカガラスの隔壁2部を開口させ、連通孔3を形成させたものである。そして、前記連通孔3は、シリカガラス表面にまで通じる開気孔として形成されている。
すなわち、前記エッチング処理により、各気泡間の薄膜状の隔壁2が除去され、開口することにより、連通開気孔が形成される。
なお、前記薄膜状の隔壁2の厚さは、4〜10μm程度であることが好ましい。
気泡間の隔壁2の厚さが上記範囲内であれば、フッ化水素酸等を用いたエッチング処理により、容易に連通する開気孔を形成することができる。
このように、配向性を有する気泡による連通開気孔を利用して、ガスまたは液体等の流通量の異方性を発揮させることが可能であり、本発明に係る多孔質石英ガラスは、高純度、耐熱性、化学的安定性が要求されるガスや液体のフィルタやミキサー、ガス発生装置用部材等の母材としても、好適に用いることができる。
前記多孔質シリカガラスの表面は、無数の開気孔が形成されており、その気孔を形成する薄層の隔壁が連続した組織構造となっている。このため、熱膨張係数の異なる他のセラミックス材により被覆した場合であっても、接着面積が大きく、しかも、熱膨張係数の差異による応力を分散させることができる。
したがって、繰り返して加熱・冷却を長時間受けた場合であっても、被膜の剥離は生じ難い。
例えば、前記多孔質シリカガラスを炭化ケイ素により被覆したものは、被膜が剥離し難いことに加えて、母材が多孔質シリカガラスであるため、軽量かつ断熱性に優れ、しかも、被膜が炭化ケイ素であるため、耐食性かつ強度に優れており、さらに、不純物拡散抑止性にも優れた材料として用いることができる。
[実施例1]
気相溶融法によって製造したシリカガラス粒子20kgを、原料供給用テーブルフィーダを用いて、供給速度1kg/hrで、水素ガス流量15.0m3/hr、酸素ガス流量7.5m3/hrの酸水素火炎中に投入し、カーボン製ターゲット上に溶融堆積させ、18kg(収率90%)のシリカガラスインゴットを得た。
前記シリカガラスインゴットは、白色で、気泡を含有していた。その密度は0.78g/cm3であった。
また、前記インゴットの一部をフッ硝酸に溶解させた後、蒸発乾固してシリカ分を揮散させ、その残渣を硝酸で溶解させた液について、ICP−AES装置を用いて、同定および定量分析を行ったところ、下記の表1に示すような結果が得られ、高純度の多孔質シリカガラスが生成していることが認められた。
この多孔質シリカガラスについて、酸素ガスにより、ガス透過量を測定したところ、前記第1の方向におけるガス透過量は7.4m3/cm3・hr・atmであり、前記第2の方向におけるガス透過量は5.7m3/cm3・hr・atmであり、第1の方向の方が、第2の方向よりもガス透過量が大きいという異方性が認められた。
原料の供給速度を3kg/hrとし、それ以外については、実施例1と同様にして、シリカガラスインゴットを製造した。
得られたシリカガラスインゴットは、白色で、気泡を含有していた。その密度は1.5g/cm3であった。
前記インゴットをスライスして、光学顕微鏡で観察したところ、含まれる気泡は、第1の方向から見た断面が直径0.31mm以上0.89mm以下の円形状であり、かつ、前記第1の方向と直交する第2の方向から見た断面が短径0.21mm以上0.60mm以下、長径/短径比平均2.23の楕円形状である扁平球状であり、これらの複数の気泡は、配向性を有して、閉気孔として存在していた。
実施例1と同じシリカガラス粒子を下記の湿式法により高純度化処理した。
すなわち、前記シリカガラス粒子をポリエチレン製の容器に充填し、王水(濃塩酸と濃硝酸を容積比3:1で混合したもの)を加えて、PTFEコートした撹拌羽根で数時間撹拌した。これを静置した後、沈殿の上澄み液を系外に排出した。
そして、純水を加えて、撹拌、静置、上澄み液の排出を繰り返した後、シリカガラス粒子を純水で洗浄した。洗浄水のpHが4を超えた時点で洗浄を中止した。
シリカガラス粒子をろ過した後、200℃で乾燥して、高純度のシリカガラス粒子を得た。
得られたシリカガラスインゴットは、白色で、気泡を含有していた。その密度は0.8g/cm3であった。
前記インゴットをスライスして、光学顕微鏡で観察したところ、含まれる気泡は、第1の方向から見た断面が直径0.45mm以上2.07mm以下の円形状であり、かつ、前記第1の方向と直交する第2の方向から見た断面が短径0.24mm以上0.95mm以下、長径/短径比平均2.1の楕円形状である扁平球状であり、これらの複数の気泡は、配向性を有して、閉気孔として存在していた。
さらに、実施例1と同様にして、前記インゴットの化学分析を行ったところ、下記の表1に示すような結果が得られた。高純度化処理したシリカガラス粒子原料を用いたため、実施例1に比べてはるかに高純度の多孔質シリカガラスが得られた。
天然のケイ石原料に窒化ケイ素を添加して加熱発泡させて、多孔質シリカガラスを製造した(特許文献1参照)。
得られたシリカガラスをスライスして、光学顕微鏡で観察したところ、含まれる気泡は、直径28〜209μmであり、長径/短径比1.15とほぼ真球状であり、各気泡は厚い隔壁に囲まれて、独立した状態であった。
また、実施例1と同様にして、前記インゴットの化学分析を行ったところ、下記の表1に示すような結果が得られ、特に、Al、Na、K、Li、Caの不純物濃度が高かった。
さらに、前記シリカガラスについて、実施例1と同様にして、フッ化水素酸によりエッチング処理を行ったが、気泡間の隔壁が厚く、長時間処理しても、一部の隔壁を残したままの状態で、連通孔を形成することは困難であった。
実施例1と同様にして、製造およびエッチング処理を施した厚さ10mmの多孔質シリカガラス板を、熱CVD法により、炉内温度1170℃、流入ガスSiCl42g/min.、C3H80.6g/min.、H2250g/min.、処理時間60min.の条件で、炭化ケイ素で被覆したところ、厚さ10μmの炭化ケイ素被膜が形成された。
この炭化ケイ素により被覆した多孔質シリカガラスについて、200℃/min.で昇降温し、常温〜1000℃の熱サイクルテストを10回連続して行った。
その結果、炭化ケイ素被膜の剥離、組成の変化は認められず、耐熱衝撃性にも優れていることが認められた。
2 隔壁
3 連通孔
Claims (3)
- 第1の方向から見た断面が直径2.5mm以下の円形状であり、かつ、前記第1の方向と直交する第2の方向から見た断面が短径1.5mm以下、長径/短径比1.4以上の楕円形状である扁平球状の複数の気泡が、配向性を有し、閉気孔として存在し、気孔率が50%以上80%以下であることを特徴とする多孔質シリカガラス。
- 第1の方向から見た断面が直径2.5mm以下の円形状であり、かつ、前記第1の方向と直交する第2の方向から見た断面が、短径1.5mm以下、長径/短径比1.4以上の楕円形状である扁平球状の複数の気泡が、配向性を有し、三次元的に連通して開気孔を形成し、気孔率が50%以上80%以下であることを特徴とする多孔質シリカガラス。
- 前記第1の方向におけるガス透過量が0.8m3/cm3・hr・atm以上9m3/cm3・hr・atm以下であり、前記第2の方向におけるガス透過量が2m3/cm3・hr・atm以上10m3/cm3・hr・atm以下であり、前記第1の方向と第2の方向とでは、ガス透過量の差が10%以上であることを特徴とする請求項2記載の多孔質シリカガラス。
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