JP2005160447A - 植生材およびその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 熱可塑性樹脂により小片状材料を結合した加圧成型物中に、種子および農業用添加剤からなる群から選択される少なくとも1つを含有する植生材。
【選択図】なし
Description
かかる従来の植生シートまたはマットでは、人工土壌を使用するため高価であるという欠点があった。さらに、天然繊維を使用した場合には、腐食にともない土壌が亡失されるという欠点があった。一方、合成繊維を使用しても、水溶性樹脂や生分解性樹脂を使用した場合には天然繊維を使用した場合と同じ課題が生じ、またそれ以外の合成繊維を使用した場合には環境に悪影響を与えるという課題があった。
また、特開2002−254457号には、熱可塑性樹脂により小片状材料を結合した加圧成型物が記載され、植生材料としてとして使用できる旨が記載されている。しかし、かかる植生材料は、雑草の生長を防止するために施設するボードおよび植物の保水性ボードであり、種子や植物の生育に必要な農業用添加剤を含有する植生材とは異なるものである。小片状材料を結合した加圧成型物において、種子などの小さなものや、水溶性の農業用添加剤が長期間保持され、植物の育成に寄与することは予想外の発見である。
本発明は、熱可塑性樹脂により小片状材料を結合した加圧成型物中に、種子および農業用添加剤からなる群から選択される少なくとも1つを含有する植生材を提供する。
本明細書において「植生材」とは、植物が生育する環境を提供することのできる材料をいう。その形状は限定されなるものではなく、たとえばシート、マット、ブロックなどの形状であることができる。
「農業用添加剤」とは、農業上有益な効果を提供することのできる物質をいい、たとえば、肥料、農薬、土壌改良材、水分保持材、成長促進剤、成長抑制剤、および発芽促進剤があげられる。
本発明で使用される熱可塑性樹脂は、熱可塑性を有するものであればよく、天然樹脂および合成樹脂のいずれであってもよい。また、熱可塑性を有していれば、若干の架橋を有するものであっても良い。
さらに、成型の際に高温に加熱されないため、種子、添加材に悪影響を与えることがなく、優れた植生材が得られる。
また、天然由来の小片状材料を使用すれば、環境に対して悪影響を与えることなく植生を回復することができる。さらに、本発明の植生材は従来の植生シートに比較して非常に軽く、取り扱いが容易で、施工が簡単である。
さらに成型の際に高温に加熱されないので、種子に悪影響を与えることがなく、また農薬や各種薬剤の分解や劣化を引き起こすこともない。そのため、作業環境による作業者および周囲環境に対する悪影響がなく、また種子や各種薬剤を選択する際の自由度が大きくなるという効果が得られる。また、植生材のそりなどの変形が少なく、形状における自由度が増大し、特に厚い成型品の製造が容易となる。
本発明ではホルムアルデヒドを含有しないポリマー混合物が好ましく使用されるが、その場合にはホルムアルデヒドに起因する製造工程における主として健康上の危険がなく、得られた製品での残留ホルムアルデヒドに起因する問題も生じない。
本発明により得られた植生材は、種々の用途に使用することができるが、代表的には稲作、各種植物の畑作の他、道路の傾斜地法面、牧草地、河川堤防法面、ダムなどの山間地の工事後の緑化、土砂崩れなどの災害斜面の緑化、ゴルフ場およびサッカー場などの運動場の芝、マンションベランダや屋上の緑化用材料、砂漠の緑化用資材として使用できる。
熱可塑性樹脂のエマルジョンの粘度は特に制限はなく、その固形分濃度により変わるが、作業性等の観点で200000mPa・s(23℃、ブルックフィールド粘度計(BH型)、2rpmで測定)以下が好ましい。
本発明で用いられる熱可塑性樹脂のガラス転移温度Tgは、特に制限はないが、一般的には−40〜60℃の範囲から選択される。Tgは好ましくは−20℃から60℃、より好ましくは0℃から60℃の範囲である。
ポリ酢酸ビニルとしては、例えば、酢酸ビニルモノマーを保護コロイドの存在下で乳化重合して得られるものが好適に使用できる。
ポリ酢酸ビニル系エマルジョンは、粘度が1000〜200000mPa・sであることが好ましい。又、pHは3〜8であることが好ましい。ポリ酢酸ビニルは一般に数十万から数百万の分子量を有するが、いずれのものも使用することができる。好ましくは分子量は10万以上、より好ましくは50万以上である。
また、たとえばエチレン−酢酸ビニルコポリマーをシードとして使用して酢酸ビニルをその上に乳化重合させたような共重合体も、本発明におけるエチレン−酢酸ビニルコポリマーに包含され、好適に使用することができる。
上記水溶性ポリマーを含有させる方法としては、熱可塑性樹脂のエマルジョンと水溶性ポリマーを混合したものを用いる方法の他、ポリビニルアルコール系高分子等の水溶性ポリマーを保護コロイドとして各種単量体を乳化重合することにより得られる熱可塑性エマルジョンを用いる方法が考えられる。後者の場合、乳化重合時に水溶性ポリマーと熱可塑性樹脂が一部グラフト体を形成するため植生材中に確実に水溶性ポリマーが含有される。
これらの材料は必要に応じ、破断粉砕して適当な大きさにして使用することができる。好適な小片状材料は木質材料である。
木質材料を使用する場合に、その木の種類は問わないが、松、杉、ひのき等の針葉樹、ラワン、カポール、ポプラ、ヤナギ等の広葉樹由来のものが好適に使用される。
植生材の吸湿変形を防止するために、パラフインワックス等の撥水剤を添加することもできる。また必要に応じて、充填材、溶剤、顔料、染料、防腐剤、防虫剤、消泡剤等を添加することができる。
本発明の植生材においては、種子、肥料、農薬、土壌改良材、水分保持材、成長促進剤、成長抑制剤、発芽促進剤からなる群から選択される少なくとも1つが含まれる。
種子は所望により適宜選択できる。種子は必要に応じ、各種コーティングを施すことができる。本発明においては、成型中に高温にさらされることがないので、種子に悪影響を及ぼさないという効果がある。
肥料は公知のものが使用でき、合成肥料のみならず、鶏糞、牛糞などの天然肥料も使用できる。これらは好ましくは造粒され、顆粒状の形態で加えられる。
除草剤、殺虫剤、殺菌剤などの農薬は生育する植物の種類、環境により適宜選択することができる。農薬の種類、形態、必要量は当業者が適宜選択し決定することのできる事項である。
使用される農業用添加剤の量は、あまりに多すぎると成型が困難になるので、一般的には木材チップ100重量部に対して1から20重量部程度であり、好ましくは1から10重量部である。
また、植生材中の農業用添加剤の配置は適宜選択することができる。たとえば、種子の場所と肥料の場所とを適宜調節することができる。たとえば、種子のみを有する本発明の植生材と、肥料のみを含む本発明の植生材とを別々に成型し、これを積層して1つの植生材とすることにより、種子と肥料の相対的な配置を決定することができる。
1)熱可塑性樹脂のエマルジョンまたはラテックスおよび小片状材料と混合する工程、
2)得られた混合物を乾燥する工程、
3)種子および農業用添加剤からなる群から選択される少なくとも1つをさらに混合する工程、および
4)得られた混合物を加圧成型する工程を有する、本発明の植生材を製造する方法を提供する。
熱可塑性樹脂が水溶性ポリマーを含む場合には、熱可塑性樹脂、水溶性ポリマー、および小片状材料を混合した後、得られた混合物を乾燥し、その後農業用添加剤をさらに混合し、得られた混合物を加圧成型することにより、本発明の植生材が得られる。
小片状材料に対するエマルジョンの塗布量は、材料の種類によって異なるが、例えば木材チップ(含水率5−15%)100重量部に対して、エマルジョンの固形分として5−50重量部、好ましくは10−30重量部である。樹脂量が少ないと結合力が不十分となり、樹脂量が多すぎてもそれに対応する結合力の向上を得ることができない。
成型は一般に常温において行われる。たとえば、成形は0から120℃の温度範囲で行うことができ、好ましくは0−75℃の範囲で行うことができ、より好ましくは10−75℃、さらに好ましくは20−75℃、最も好ましくは20−70℃の範囲で行うことができる。好ましくは、加熱することなく、周囲温度において成型が行われる。樹脂のTgが高い場合、混合物の水分量が低い場合、及び冬季における成形のように周囲温度の低い条件下の場合などにおいては、必要に応じ若干の加熱をすることが、成形時間を短くするために好ましい場合がある。また、加熱乾燥を行う際には、乾燥工程後、冷却することなくそのままの温度で加圧成形することが生産効率上好ましい。
木材チップ(杉材含水率約12%、粒度約4.0メッシュ通過)200gを容器にとり酢酸ビニル樹脂エマルジョン60g(商品名ボンドCX55、固形分55%、ポリビニルアルコール含有、粘度=25,000mPa・s、Tg=13℃、コニシ株式会社製)を添加して充分撹拌混合してからばらばらにして60℃で3時間乾燥させて木材チップ混合物を得た。35〜40℃に冷却後同温度でこのチップ混合物に水20gを湿らす程度加えて撹拌混合後、さらに種子(Medicago sativa中国産)を2g(約850粒)加えた種子入り木材チップ混合物を得た。この混合物を直ちに型枠(200mm×200mm)へ投入し加圧(10kg/cm2)して10分間放置し厚さ10mmの植生材を得た。
得られた植生材を土壌の上に放置し一日一回100mlの水を散布し、15日後の発芽状況を観察した。15日後の発芽数は400本であった。生育は順調で20日後にはボード表面をほぼ覆う状態にまで繁茂した。
土壌に種子を直播きして同様に観察したが発芽数は395本で、その後の生育も順調であった。
すなわち、実施例1は従来から一般的に行われている比較例1の方法と同程度の発芽と生育が得られた。
木材チップ(杉材含水率約12%、粒度約4.0メッシュ通過)200gを容器にとりエチレン酢酸ビニル共樹脂エマルジョン(商品名パンフレックスOM6000、固形分50%、ポリビニルアルコール含有、粘度=2,500mPa・s、Tg=15℃、株式会社クラレ製)を60g添加して充分撹拌混合してからばらばらにして30〜35℃で24時間乾燥させて木材チップ混合物を得た。同温度で、さらに種子(西洋芝)を2g(約5000粒)と肥料として堆肥(含水率約10〜15%、廃棄食品を醗酵処理)を10g加えた種子、堆肥入り木材チップ混合物を得た。同温度で直ちに型枠(200mm×200mm)へ投入し加圧(10kg/cm2)して10分間放置し厚さ10mmの植生材を得た。
得られた植生材を土壌の上に放置し一日一回100mlの水を散布し、15日後の発芽状況を観察した。15日後の発芽数は150本であった。発育は順調で20日後にはボード表面をほぼ覆う状態にまで繁茂した。
土壌に種子を直播きして同様に観察したが発芽数は140本で、その後の生育も順調であった。
すなわち、実施例は従来から一般的に行われている比較例の方法と同程度の発芽と生育が得られた。
Claims (8)
- 熱可塑性樹脂により小片状材料を結合した加圧成型物中に、種子および農業用添加剤からなる群から選択される少なくとも1つを含有する植生材。
- 小片状材料が木質材料である、請求項1記載の植生材。
- 農業用添加剤が、肥料、農薬、土壌改良材、水分保持材、成長促進剤、成長抑制剤、および発芽促進剤からなる群から選択される少なくとも1種である、請求項1または2記載の植生材。
- 熱可塑性樹脂が酢酸ビニル樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合樹脂、アクリル樹脂およびスチレン−ブタジエン共重合体からなる群から選択される少なくとも一つの樹脂である、請求項1から3のいずれか1項記載の植生材。
- 熱可塑性樹脂が、小片状材料の総重量の5〜50重量%で存在する、請求項1から4のいずれか1項記載の植生材。
- ポリビニルアルコール、セルロース誘導体、ポリアクリル酸誘導体、(無水)マレイン酸−ビニルエーテル共重合体、(無水)マレイン酸−酢酸ビニル共重合体、イソブチレン−無水マレイン酸共重合体、酢酸ビニル−(メタ)アリルスルホン酸(塩)共重合体からなる群より選ばれる水溶性ポリマーの少なくとも一種をさらに含有することを特徴とする請求項1から5のいずれか1項記載の植生材。
- 1)熱可塑性樹脂のエマルジョンまたはラテックスおよび小片状材料と混合する工程、
2)得られた混合物を乾燥する工程、
3)種子および農業用添加剤からなる群から選択される少なくとも1つをさらに混合する工程、および
4)得られた混合物を加圧成型する工程を有する、請求項1から7のいずれか1項記載の植生材を製造する方法。 - 工程2)の後であって、工程3)の前に、混合物を水で湿らせる工程をさらに含む、請求項7記載の方法。
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